弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

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2人のフランツ・リスト

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◆ 刑法学者のリスト

フランツ・フォン・リスト(Franz von Liszt)は,ドイツの刑法学者です.「刑法は犯罪者のマグナカルタ」「罰せられるべきものは,行為ではなく行為者である」「最良の刑事政策とは最良の社会政策である」という言葉が知られています.
目的刑主義,主観主義刑法理論に立ち,刑事政策,社会政策を重視しましたが,同時に,犯罪とは法益の侵害であるとし,刑法の自由保障機能も重視しました.と学生時代に勉強しました.

◆ 音楽家のリスト

刑法学者のフランツ・フォン・リストの従兄弟が,音楽家のフランツ・リスト(Ferenc Liszt)です.
今年は,フランツ・リストの生誕200年にあたります.生誕200年の企画で,リストの音楽を耳にする機会も多いと思います.

リストの孫弟子であるホルヘ・ボレット(Jorge Bolet)の演奏がとくに好きです.
これみよがしな演奏ではなく,リストの音楽を本当に表現している気がします.
ホルヘ・ボレットは,1914年にハバナに生まれ,GHQの一員として日本にも来ています.

写真は9枚組のCDです.
CD 1,ハンガリー狂詩曲第12番,愛の夢第3番,メフィスト・ワルツ第1番,葬送曲第7曲,リゴレット・パラフレーズ,パガニーニ大練習曲ラ・カンパネラ
CD 2は,シューベルト歌曲のピアノトランスクリプションとさすらい人幻想曲(管弦楽伴奏版)です.
CD 3は,ピアノ・ソナタ,即興的ワルツ,愛の夢,半音階的大ギャロップです.
CD 4は,巡礼の年報第2年イタリアです.
CD 5は,巡礼の年報第1年スイスです.
CD 6は,巡礼の年報第2年補遺ヴェネチアとナポリ,エステ荘の噴水,孤独の中の神秘の祝福,バラード第2番です.
CD 7は,超絶技巧練習曲集です.
CD 8は,2つの演奏会用練習曲,3つの演奏会用練習曲,コンソレーション,ドン・ジョヴァンニの回想です.
CD 9は,ノルマの回想,死の舞踏,呪い,ハンガリー幻想曲です.

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谷直樹
by medical-law | 2011-02-28 07:30 | 趣味

イレッサ大阪判決の社説,毎日

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一日遅れですが,毎日新聞の社説がでましたので,ご紹介します.

◆ 毎日新聞「イレッサ判決 国に責任はないのか

「国については「死亡を含む副作用の危険を高度の蓋然(がいぜん)性をもって認識することができなかった。国の措置は許容される限度を逸脱して著しく合理性を欠くとは認められない」として賠償請求を棄却した。行政指導に法的な拘束力はなく、同社が間質性肺炎を添付文書に記載することに消極的な態度を示していたため被害を防ぐことはできなかったというのだ。 しかし、判決に先立って裁判所が出した和解所見では国の救済責任について認めていた。判決でも国の行った行政指導が「必ずしも万全な規制権限の行使であったとは言い難い」とも指摘している。国家賠償法の違法性を認めるまでには至らないが、国の行政指導に問題があったことを認めたと読み取るべきだろう。

 製薬会社が自社の製品にマイナスの情報を出したがらないのは過去の薬害でも繰り返されてきたことだ。だから国は適切な監督権限を行使するよう求められているのではないか。
国がもっと踏み込んで指導していればイレッサの副作用被害はここまで広がらなかったに違いない。」

添付文書に欠陥がある場合に,国が規制権限を行使しなかったことは違法ではない,という大阪地裁判決の論理は,すっきりしません.
国賠法上の国の責任を否定した大阪地裁判決について疑問を表明し,国の行政指導に問題があったことを認めた判決だと読んだ毎日新聞の社説に,共感できます.

大阪地裁判決が国の主張を認めたのは国賠法上の責任がないという1点のみです。それ以外は国の主張を認めていません.
国賠法上の責任については,東京地裁判決に期待しましょう.

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谷直樹
by medical-law | 2011-02-27 11:16 | 医療事故・医療裁判

平成23年2月23日~25日の医療事件の判決

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最近の医療事故,医療過誤等の医療事件の判決を,報道に基づき要約しご紹介します.
なお,限られた字数の報道のため,注意義務違反の内容,根拠は詳細に記載されていないことが多いので,(全てではありませんが)下級審判決についてはしばらくして最高裁ホームページ,判例雑誌に判決文全文が掲載されますので,そちらで詳細を確認してください.

◆ 最高裁平成23年2月25日判決(期待権訴訟逆転敗訴)

昭和63年左足を骨折し山口県内の病院で手術を受けた患者が,左足の腫れを訴えて平成9年,平成12年,平成13年に再受診したが執刀医師は深部静脈血栓症を疑わず治療を行わず,後遺症が残った事案です.
平成9年の時点では既に適切な治療法はなく,また下肢の手術に伴い深部静脈血栓症を発症する頻度が高いことが我が国の整形外科医において一般に認識されるようになったのは平成13年以降です.

広島高裁は,平成9年の時点で専門医に紹介するなどの義務を怠り,患者は,これにより,約3年間,その症状の原因が分からないまま,その時点においてなし得る治療や指導を受けられない状況に置かれ,精神的損害を被ったということができるから,その当時の医療水準にかなった適切かつ真摯な医療行為を受ける期待権が侵害されたとし,300万円の賠償責任を認めていました.

最高裁第2小法廷判決は,「期待権の侵害を理由とした患者への賠償責任は、医療行為が著しく不適切だった場合に限って検討されるべき」,「医師はレントゲン検査を行っており、著しく不適切だったとは言えない」とし,広島高裁判決を破棄し請求を棄却しました.

判決文は以下のとおりです.
「被上告人は,本件手術後の入院時及び同手術時に装着されたボルトの抜釘のための再入院までの間の通院時に,上告人Y2に左足の腫れを訴えることがあったとはいうものの,上記ボルトの抜釘後は,本件手術後約9年を経過した平成9年10月22日に上告人病院に赴き,上告人Y2の診察を受けるまで,左足の腫れを訴えることはなく,その後も,平成12年2月以後及び平成13年1月4日に上告人病院で診察を受けた際,上告人Y2に,左足の腫れや皮膚のあざ様の変色を訴えたにとどまっている。これに対し,上告人Y2は,上記の各診察時において,レントゲン検査等を行い,皮膚科での受診を勧めるなどしており,上記各診察の当時,下肢の手術に伴う深部静脈血栓症の発症の頻度が高いことが我が国の整形外科医において一般に認識されていたわけでもない。そうすると,上告人Y2が,被上告人の左足の腫れ等の原因が深部静脈血栓症にあることを疑うには至らず,専門医に紹介するなどしなかったとしても,上告人Y2の上記医療行為が著しく不適切なものであったということができないことは明らかである。患者が適切な医療行為を受けることができなかった場合に,医師が,患者に対して,適切な医療行為を受ける期待権の侵害のみを理由とする不法行為責任を負うことがあるか否かは,当該医療行為が著しく不適切なものである事案について検討し得るにとどまるべきものであるところ,本件は,そのような事案とはいえない。したがって,上告人らについて上記不法行為責任の有無を検討する余地はなく,上告人らは,被上告人に対し,不法行為責任を負わないというべきである。」

適切な治療受ける「期待権」訴訟、原告逆転敗訴」(読売新聞)ご参照

◆ 大津地裁平成23年2月25日判決(手術の残遺物)

守山市民病院で平成10年3月腹部の化膿部分を取り除く手術を受けた女性が「ペンローズドレーン」(シリコン製の長さ約10センチの管)を体内に残され,2006年に別の病院のレントゲン検査で発見,摘出手術を受けた事案です.

大津地裁判決は,「基本的な注意義務を怠った病院の過失は重大だが、女性が主張するほどの痛みが続いたとは認められない」とし,約85万円の損害賠償義務を認めるにとどまりました.

賠償命令:市民病院医療ミスで守山市に--地裁判決 /滋賀」(毎日新聞)ご参照

◆ 神戸地裁姫路支部平成23年2月25日判決(患者虐待)

佐用共立病院の元看護師が,平成20年12月~平成21年1月,入院中の男女6人(70~90代)の胸を手で強く押して肋骨を折る重傷を負わせたほか,男性の入院患者(当時80)の右目をボールペンの先で突くなどして1週間のけがを負わせたとして起訴された事案です.

神戸地裁姫路支部は,「仕事のいら立ちを患者にぶつけ解消しようとした」「痛みを申告できない人を狙うなど残忍で衝撃的な犯行。社会に与えた影響も大きい」として,懲役10年を言い渡しました.

兵庫の元看護師に懲役10年 高齢患者への傷害で判決」(共同通信)ご参照

◆ 大阪地裁平成23年2月25日判決(イレッサ薬害大阪訴訟)

イレッサ投与後に間質性肺炎で死亡した3名の遺族と,死の危険に曝された1名が,国と製薬会社に損害賠償を求めた裁判です.

大阪地裁判決は,平成14年7月の輸入承認当時,製造物責任法上のいわゆる指示・警告上の欠陥があったと認められるとし2名の遺族と生存原告に対する製薬会社の責任を認め,他方,国賠法上の違法を認めることはできないとして国の賠償責任を認めませんでした.

◆ 東京高裁平成23年2月24日判決(腸管を傷付けた医師を特定できず)

筑波メディカルセンター病院で腹腔鏡手術を受けた患者の腸管に穴が開き,腹膜炎を発症し重度の排便障害が残った事案です.患者の冨田善弘さん は平成12年6月に提訴しましたが,平成18年に病院前で焼身自殺しました.

東京高裁判決は,手術ミスを認め,逸失利益を見直すなどして1520万円の賠償義務を認めました.医師3人のうち誰が傷つけたかは特定できず,医師個人の責任は認められませんでした.

判決後,遺族の冨田将史さんは「事故の真相を知りたくて裁判を起こしたが、どこからも出てこなかった。上告はせずに、中立の立場で医療事故の原因究明をし、再発の防止に役立てる組織作りに向け活動したい」と話したそうです.

ガン医療事故手術ミス認定 賠償増額 控訴審判決 医師個人の責任認めず」(読売新聞)ご参照

◆ 熊本地裁平成23年2月23日判決(血清ナトリウム濃度の低下)

氷川町の病院で,平成17年11月,肺に異常があったことから検査入院した85歳の男性患者の血清ナトリウムの濃度が低下しましたが,医師が食塩水を輸液するなどの適切な治療を実施せず,同年12月に意識を失うなど急変し,平成18年2月に転院先の病院で死亡した事案です.

熊本地裁判決は,約1500万円の賠償義務を認めました.

「氷川の医療過誤訴訟:1500万円支払い命じる--地裁判決 /熊本」(毎日新聞)ご参照

◆ 広島地裁平成23年2月23日判決(扁桃摘出手術直後の大量出血)

中国労災病院で,平成19年2月,扁桃肥大と睡眠時無呼吸症候群の治療のため扁桃摘出手術を受けた女性患者が,直後に大量出血を起こし,担当医は女性に全身麻酔薬と筋弛緩薬を投入し再挿管による呼吸の確保を図りましたが,出血で視野が得られず,窒息による低酸素脳症のため障害が残った事案です.

広島地裁判決は,「全身麻酔を導入すれば患者の嚥下機能が消失し、気道閉塞の危険を高めることが容易に想像できる」「自発呼吸を温存し意識がある状態で、麻酔導入を試みるべきだった」と約8660万円の賠償義務を認めました.

損賠訴訟:労災病院過失に賠償命令 術後脳障害、呉の女性側に8660万円 /広島」(毎日新聞)ご参照

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谷直樹
by medical-law | 2011-02-27 10:26 | 医療事故・医療裁判

イレッサ大阪判決の社説,読売,朝日,神戸,高知,西日本,南日本,日経

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新聞各紙の社説を抜粋紹介します.1紙以外は適切です.

◆ 読売新聞「イレッサ訴訟 副作用の警告を重んじた判決

「世界に先駆けてイレッサが日本で承認された2002年当時、ア社は、副作用が少ないことをホームページなどで強調する一方、間質性肺炎を発症する危険性は公表していなかった。」

「イレッサは、医師や患者の間では、副作用の少ない『夢の新薬』との期待が広がっていた。
判決が指摘するように、イレッサは化学療法の知識・経験が乏しい医師も使用する可能性があった。しかも患者が自宅で服用できる飲み薬のため、副作用への警戒が薄いまま広く用いられた。
そうした状況であったのなら、ア社はなおさら、詳しい副作用情報を提供すべきだったろう。」

製薬会社には、新薬の長所ばかりでなく、負の情報である副作用についても、医師や患者に十分に開示する責任がある。そう指摘した判決は、製薬業界への重い警鐘となろう。判決は国の対応に“お墨付き”を与えたものではない。副作用情報の記載に関する厚生労働省の行政指導については、『必ずしも万全な規制権限を行使したとは言い難い』と批判している。」

◆ 朝日新聞 「イレッサ判決―情報はなぜ届かなかった

「死亡例が相次いだことを受けて、承認の3カ月後に緊急安全性情報が出た。添付文書の冒頭に『警告』として目立つ形で間質性肺炎の危険を書くと、被害は減った。

文書のあり方が問われたのはこれが初めてではない。厚生省(当時)はイレッサ承認の5年前、重要事項を前の方に記載することなどを求めた局長通達を出している。企業はなぜこれを守らなかったのか。国も、なぜもう一歩踏み込んで、企業に働きかけなかったのか。釈然としない思いが残る。

『読むのは専門家なのだから』という言い分もあるだろう。だが当時、医学雑誌などを通じて、イレッサには副作用が少ない良薬とのイメージが広がっていた。判決が『平均的な医師』像を前提に、治療に必要な情報の提供義務を企業に課したのは当然であり、国民の思いに沿うものといえよう。

「法的責任は免れたとはいえ、判決で『必ずしも万全の対応であったとは言い難い』と指摘された厚生行政もまた、くむべき教訓は多い。」

◆ 神戸新聞「イレッサ判決/後退した印象は免れない」 

「判決が、イレッサの発売当初の添付文書には副作用情報が十分示されていなかったと判断したことを是としたい。」

「判決は、副作用情報の出し方に問題があったと企業の過失に限定し、国の責任には踏み込まなかった。
 踏み込むと国の新薬審査を萎縮させ、手続きに悪影響を及ぼすとでも考えたのだろうか。国の責任を認めた和解勧告から後退した印象は免れない。」

 「抗がん剤はがん患者の治療になくてはならない。しかし、どんな副作用があるか慎重に見極めないと命取りになる。

 イレッサは今も危険な薬である。昨年9月までの死亡例は819人に上る。それでも使われるのは、一部の患者には劇的に効果があるからだ。専門医のもとで治療が見込まれる人だけに使われるようになって副作用の報告も減った。

 新薬として承認される段階では、すべての危険情報が把握されているとは限らない。副作用などの情報をつかんだ時点で、国と企業は速やかに医師に示し、正しく使用できるように努めることだ。
過去の薬害で繰り返し指摘されてきた。
 薬の取り扱い情報は患者の命を守るためのものである。忘れてはならない。

 和解勧告について、日本医学会が懸念を表明した文案を、厚生労働省が作成し、渡していた。国と医学界が手を組んだような印象を与えるのはよくない。
 判決は国の責任を否定したが、抗がん剤で多くの患者が死亡した事実は残る。副作用への救済の手だては必要だ。」

◆ 高知新聞 「【イレッサ訴訟】被害救済に全力を尽くせ

イレッサの場合、800人以上が死亡した事実は重い。同地裁は国の違法性は認めなかったが、国には企業に対する指導、監督責任がある。双方が被害者救済に全力を尽くすべきだ。

 「確かに、販売当初の文書の副作用欄には、下痢などに次いで4番目に間質性肺炎が記されていた。だが、それだけで死に至るかもしれない深刻さが伝わるだろうか。
 実際、国が緊急安全性情報を出した02年10月、肺炎は文書冒頭の赤枠の警告欄に引き上げられている。当初からそう記載し、致死性についても具体的に触れておくべきではなかったか。
 そもそも、イレッサを医薬品として承認したことの是非も問われた。
 厚労省が審査期間5カ月という異例の早さで承認した背景には、他国で効果が認められた薬の販売が遅れる『ドラッグラグ』も指摘されている。新薬を待ち望む患者のため、その解消に取り組みたい方針は分かる。しかし、それはあくまで一定の安全性を確保することと並行して行われねばならない。
 多くの犠牲者を出した上、今も副作用に苦しんでいる患者を『リスクはやむを得ない』と切り捨てる。そんな医療行政であっていいはずがない。

◆ 西日本新聞 「イレッサ判決  国はやるべきことがある

「当時をふり返ると、イレッサは副作用が少ない『夢の新薬』と前評判が高かった。通常1年余りかかる国の審査を5カ月余りでパスし、承認された。
 これがイレッサに対する過剰な期待を生んだ。もし副作用の怖さがきちんと認識されておれば、無理に服用せず、自然の成り行きに任せた患者もいただろう。」

医療情報は氾濫しているが玉石混交だ。正しい情報の提供では行政の役割が大きい。イレッサを教訓にしてやるべきことは多い。

◆ 南日本新聞「 [イレッサ訴訟] 新薬の承認過程見直せ

判決は『承認当時、添付文書への副作用の記載が不十分だった』と販売会社の責任を認めた。国は賠償責任こそ免れたが、承認した抗がん剤が裁判所から『安全性を欠いていた』と指摘された事実を重く受け止めるべきである。

「国と販売会社は『副作用欄に記載があれば『致死的となり得る』という意味』と主張したが、致死性を明記したり、副作用欄の上位に記載したりするべきだったとの指摘は当然である。
国は承認に当たって、使用する医師や医療機関を制限した上で、副作用を監視するといった手法もとれたはずだ。02年10月に緊急安全性情報を出すまで、副作用の危険性の認識が不十分なまま広く使用される状況を招いたことは否定できない。」

新薬を待ち望む患者の期待に応える姿勢は大切にしたいが、今回の判決を機に、副作用の周知方法や新薬の承認過程の総点検に力を注ぐべきである。

◆  日本経済新聞「イレッサ判決が求めるもの

「欧米で高い評価を得ていても国内承認が遅いため治療に使えない薬がある。「ドラッグラグ」と呼ばれる問題だ。イレッサは申請から5カ月の迅速な審査で世界に先駆けて国内で販売が承認され、遅れの解消につながると期待された。製薬産業と国は今回の判決を教訓にドラッグラグ解消の努力を続けてほしい。

 抗がん剤は強い副作用を伴うことが多い「両刃の剣」だ。しかし、他に治療法がない患者にとり、新薬は危険を承知の上の「頼みの綱」でもある。副作用の心配を明記し慎重な使用を促したうえ承認すればよい。市販後も追跡・監視し問題が生じたら敏速に対応することだ。

 イレッサは「夢の新薬」と承認前に報道され、使いやすい錠剤でもあるため、最初の3カ月で約7千人が服用し問題を大きくした。抗がん剤の専門知識に乏しい医師が処方した例もあったとされる。医師の不勉強があったのなら、それは問題だ。」

日本経済新聞は,どうなっているのでしょうか.
イレッサは,欧米で高い評価を得ている薬ではありません.
判決は,危険を承知の上で承認し問題が生じたら対処したらよい,などと乱暴なことは言っていません.
被告国,被告製薬企業は.イレッサ被害を医師のせいだと主張しましたが,判決は,添付文書の欠陥を認め,被告らの主張を退けています.臨床現場の医師への情報提供に欠陥があったのですから,臨床現場の医師に責任転嫁するのは正当ではありません.

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谷直樹
by medical-law | 2011-02-26 15:06 | 医療事故・医療裁判

海外委託技工問題訴訟と争訟性の要件

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全国保険医団体連合会のホームページに「海外委託技工問題訴訟の最高裁の不当判決に断固抗議する」が掲載されました.

◆ 海外委託技工問題訴訟

海外で,無資格者・無登録技工所で指示書も無いまま入れ歯や差し歯が作られ輸入される,という実態があり,厚労省はそれを容認し「国外で作成された補綴物等の取扱いについて」という通達を平成17年に出しました.

国民のために安全で良質な歯科技工物を確保するために,
原告は歯科技工士80名,被告は国の,
「1 原告らと被告との間で, 原告らに海外委託による歯科技工が禁止されることにより歯科技工士としての地位が保全されるべき権利があることを確認する。
2 被告は,原告らに対し,各自10万円及びこれに対する平成19年7月4日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。」
という訴訟が,平成19年6月22日,東京地裁に提訴されました.

東京地裁平成20年9月26日判決,東京高裁平成21年10月14日判決,最高裁平成23年2月15日決定は,歯科技工士の業務独占は,一般的公益としての公衆衛生の保持を目的とするものであり,個々の歯科技工士に対し具体的な法律上の利益として歯科技工業務を独占的に行う利益を保障したものではないとして,法律上の争訟及び確認の利益等が認められないと判断しました.

◆ 「法律上の争訟」

司法は,具体的な争訟について,法を適用し,宣言することにより,これを裁定する国家作用です.
「具体的な争訟」とは,「法律上の争訟」(裁判所法3条)のことで.「法令を適用することによつて解決し得べき権利義務に関する当事者間の紛争」とされています.

本件では,原告である歯科技工士80名と国との間で,具体的な権利義務ないし法律関係の存否に関する紛争であるかが問題となりました.海外委託によってその80名の歯科技工士の権利が損害されたかが問題になり,歯科技工業務を独占的に行う利益が否定され,争訟性をクリアすることができなかったということなのです.

海外委託業務問題は,司法の限界と判断されたのですから,行政あるいは立法により解決されるべきです.

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谷直樹
by medical-law | 2011-02-26 12:08 | 医療事故・医療裁判

イレッサ,大阪地裁は企業の賠償責任だけを認めました

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イレッサ訴訟で,大阪地方裁判所は,製薬会社に約6000万円の賠償を命じる判決を下しました.
意外なことに,薬を承認した国の責任を認めませんでした.
その論理は,おおよそ以下のとおりです.(判決要旨)

「1 イレッサの有効性
イレッサの有効性は,平成14年7月の輸入承認時及び現在のいずれにおいても,肯定することができる。

2 イレッサの輸入承認時における間質性肺炎等についての認識可能性
平成14年7月のイレッサの輸入承認当時,治験その他の臨床試験の結果等から,死に至る可能性がある間質性肺炎等を発症する危険性についての認識可能性があった。

3 イレッサの有用性
イレッサは,平成14年7月の輸入承認時及び現在のいずれにおいても,また,セカンドライン及びファーストラインのいずれにおいても,その有用性を肯定することができる。

4 被告会社の責任
被告会社は,少なくとも第1版添付文書の重大な副作用欄の最初に間質性肺炎を記載すべきであり,また,イレッサとの関連性が否定できない間質性肺炎が致死的な転帰をたどる可能性があったことについて警告欄に記載して注意換気起を図るべきであった。そのような注意換起が図られないまま販売されたイレッサは,抗がん剤として通常有すべき安全性を欠いていたといわざるを得ず,平成14年7月当時のイレッサには,製造物責任法上のいわゆる指示・警告上の欠陥があったと認められる。

5 被告国の責任
平成14年7月の輸入承認当時,イレッサの有用性を認めることができ,また,輸入承認前後の安全性確保についての被告国の対応が著しく合理性を欠くものとは認められないから,被告国には,イレッサの輸入を承認したことや承認前後に必要な安全性確保のための権限を行使しなかったことについて国家賠償法上の違法はない。

6 因果関係
死亡した3名のうち2名の患者及び1名の原告の間質性肺炎の発症等とイレッサの服用との相当因果関係は認められる。」

MSN産経ニュース「国の『不作為責任」』は認めず 大阪地裁『合理性認められる』」によると,以下のとおりです.

「判決は、ア社作成の初版の添付文書で、市販後に続発した『間質性肺炎』が2ページ目の4番目に記載されたことを重視し、冒頭・赤枠の警告欄に載せなかったことで『抗がん剤としての安全性を欠いていた』と指摘。イレッサが承認・市販された平成14年7月から、肺炎の記載を警告欄に引き上げた同年10月15日までの期間で製造物責任法上の『指示警告の欠陥』を認定し、原告のうち9人の請求を認めた。
一方で、国がそれ以前に行政指導しなかった点については「当時の医学的知見からは一応の合理性が認められる」と判断し、原告側が主張した『不作為責任』を退けた。」


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谷直樹
by medical-law | 2011-02-25 16:35 | 医療事故・医療裁判

「手術数でわかるいい病院2011」(週刊朝日MOOK)

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週刊朝日MOOKの「手術数でわかるいい病院」は結構読まれているようです.

手術の症例数を調査してランキングを決めることには,抵抗を感じる医師,医療機関も多いと思いますが,患者にとっては分かりやすい参考指標です.
手術数の多い病院は,患者が集まっている病院で,いい病院だから患者が集まっている,また同種手術経験を積んだ医師がいる,という推定は,あながち間違いではないでしょう.
これで決めるというのではなく,「参考」という見方をするかぎり,また手術をするその医師の経験に注目するかぎり,有用と思います.

取材に応じ,「Q 医療事故にあったらどうすればいいの?」に対し,(弁護士に相談するのは知っていると思いますので)「A 弁護士への相談以外にも解決できる方法がある」という答えをしました.事故調査委員会,医療ADRという解決方法もあることをお話しました.
私の話は287頁に載っています.機会があったら見てください.

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谷直樹
by medical-law | 2011-02-25 14:18 | 医療

2月26日第8回日本小児科学会倫理委員会公開フォーラム

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明日2月26日,第8回日本小児科学会倫理委員会公開フォーラムが開かれるそうです.
重篤な疾患を持つ子どもの治療方針決定のあり方─話し合いのガイドラインの提案─」がテーマです.

事前申し込み不要で,誰でも参加できます.

日時:2011年2月26日(土曜日)13時30分~17時(開場:13時)
会場:早稲田大学総合学術情報センター 国際会議場 井深大記念ホール
主催:日本小児科学会倫理委員会


第I部 日本小児科学会終末期医療ガイドラインワーキンググループ(13時30分~14時50分)

司会:加部 一彦(恩賜財団母子愛育会総合母子保健センター愛育病院)・河原 直人(早稲田大学総合研究機構・研究院)

加部 一彦(恩賜財団母子愛育会総合母子保健センター愛育病院)
「重篤な疾患を持つ子どもの医療をめぐる話し合いのガイドライン」:提案までの経過
鍛冶 有登(大阪市立総合医療センター救命救急センター)
「子どもの死と向き合う-救急の立場から」
辰井 聡子(明治学院大学法学部)「小児終末期医療と法」
野辺 明子(先天性四肢障害児父母の会)「子どものいのちを守り、家族を支えるために」

第II部 指定討論(成育医療研究委託費「小児における看取りの医療に関する研究」班)(15時~15時50分)

司会:伊藤 龍子(独立行政法人国立看護大学校)

西畠  信(総合病院鹿児島生協病院)「小児の看取りの医療に関する調査報告 一次・二次調査結果」
清水 称喜(兵庫県立子ども病院)「小児の看取りの医療における看護」
阪井 裕一(国立成育医療研究センター・主任研究者)「小児の看取りの医療に関する提言に向けて」

第III部 総合討論(16時~17時)

司会:加部 一彦(恩賜財団母子愛育会総合母子保健センター愛育病院)・河原 直人(早稲田大学総合研究機構・研究院)

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谷直樹
by medical-law | 2011-02-25 08:55 | 医療

イレッサ,厚労省が案を書いた医学会声明

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医学会は,イレッサについて和解に反対の声明文を発表していましたが,厚労省が医学会に声明文の案を送っていたことが報じられています.

イレッサ副作用死:投薬訴訟 国が声明文案提供 医学会に『和解勧告を懸念』 」(毎日新聞)

「毎日新聞が入手したのは、厚労省が作成した『肺がん治療薬イレッサ(の訴訟にかかる和解勧告)に対する声明文』。文案では『(和解勧告は)医薬品の開発期間がむやみに延長し、必要としているがん患者のアクセスを阻害することになりかねない』などと指摘。『医薬品にはリスクはあり、それを理解した上で医師は医薬品を使用している。(和解勧告の)決定は、医師の役割を軽んじるものだ』として懸念を示す内容になっている。」

「医薬食品局の佐藤大作・安全対策課安全使用推進室長は「日本医学会の会長が和解勧告に懸念を表明する意向であると聞いたため、サービスとして提供しただけ」と釈明した。
 一方、毎日新聞の取材に対し、高久会長は『全く要請していないのに厚労省が文書を持ってきた。私の見解は独自に作成しており、(産科で導入されているような)無過失補償制度を作る必要性を強調したものになっている』とコメントした。」(毎日新聞)

高久会長は独自に作成と言っていますが,報道された表現は医学会の声明文と同じで,全体のトーンも同じです.医学会は,厚労省のシナリオどおり,和解反対の声明を発表したと言えるでしょう.
自ら声明案を作成し,医学会に声明を発表させて,和解を潰していく,というのが,厚労省のやり方だったんですね.

「原告団の水口真寿美弁護士は『日本医学会以外にも文案を提供していた可能性がある。自分たちの主張にあう世論形成のため、厚労省が医療界に働きかけたと思われても仕方がない』と批判した。」(産経「イレッサ訴訟 厚労省が医学会に働きかけ 和解勧告批判の文案作成」)とのことです.

【追記】

2011年02月24日 20:40 キャリアブレイン 「イレッサ和解勧告の見解,『厚労に頼まれた』 医学会-高久会長」は,以下の点を報じています.

高久会長は、「厚労省側が面会を申し入れてきて、『これで見解を出してくれないか』と文書を持ってきた」といい、見解を発表したのは厚労省からの依頼があったためだと説明。「それまで出すつもりはなかったが、長い付き合いもあり、もともと関心のある問題でもあったので」見解を出すことにしたという。依頼の意図について、厚労省側から特に説明はなかったというが、「和解勧告が厳しい内容だったので、和らげてほしかったのではないかと思う」と述べた。

細川律夫厚労相は2月24日の衆院予算委員会でこの問題に触れ、「指摘されたような事実があるかどうか、しっかり調査したい。その結果に基づいてわたしなりの判断をしたい」と述べた。共産党の高橋千鶴子氏の質問に答えた。(以上,キャリアブレインの記事より)

【再追記】

小林正夫政務官を責任者に.足立信也前厚労政務官,同省監察本部外部有識者の柳志郎弁護士(元日弁連事務局次長)による検証チームをが置されました.

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谷直樹
by medical-law | 2011-02-24 17:46 | 医療事故・医療裁判

語学学習

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事務局Iです.

最近,通勤時間などを活用して,学生時代以来ぶりに,英語の勉強を再開しました。
特に,最も苦手な英会話を重点的に勉強しています.

英会話のテキストも最近は,ずいぶんくだけた内容になっていて,楽しんで読むことができます.

そうはいっても,ずいぶんブランクがあり,覚えていたはずの単語や言い回しすら,なかなか思い出せなくなってはいるのですが….

英会話が得意な友人には「上達するには,とりあえず,英語圏の国に行って,ひたすらしゃべること」と言われたのですが,海外旅行はなかなか大変なので,自宅近くの語学学校やサークルなどを利用しようしてみようかと思っています.

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事務局I
by medical-law | 2011-02-24 13:14 | 日常