弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

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原節子さんと小津安二郎監督の『東京物語』

b0206085_1211795.jpg 今日6月17日は,原節子さんの91回目の誕生日です.

原節子さんは,1962年に引退した伝説の大女優です.

原節子さんは,黒澤明監督の『わが青春に悔なし』『白痴』,今井正監督の『青い山脈』,木下恵介監督の『お嬢さん乾杯! 』,成瀬巳喜男監督の『めし』『山の音』などにも主演しています.

小津安二郎監督には,『早春』(淡島千景さん),『彼岸花』(有馬稲子さん,山本富士子さん,久我美子さん),『お早よう』(久我美子さん),『秋刀魚の味』(岩下志麻さん)などの名作があります.

が,やはり小津安二郎監督の作品で見る原節子さんは特別ですし,小津安二郎監督が原節子さん主演で撮った6作品のうち次の「紀子三部作」(原節子さんの役名が「紀子」)は,最も小津監督らしい表現を確立した作品と思います.

『晩春』1949年
『麦秋』1951年
『東京物語』1953年

とくに,『東京物語』は,完成度の高い最高傑作と思います.
日本映画を見ると,論理的・直接的な言い方をしてほしい,と思うこともしばしばあるのですが(ちなみに,弁護士は,非論理的なものをくみとり,裁判所に通るように論理的に再構築するのが仕事です.),その時間はそのようなものとして受け容れることにすれば,日本的情緒,感性の世界に浸ることができます.
私が生まれる前の映画もあり,いずれも後になって見たのですが,小津映画のなかの日本は美しい異国で,原節子さんは美しい日本の女優でした.

北鎌倉の円覚寺には,小津監督のお墓があります.「無」の一文字が彫られています.
時がたっても,完成度の高い名作が朽ちることは無いでしょう.

谷直樹
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by medical-law | 2011-06-17 01:25 | 趣味

名古屋地方裁判所平成23年6月15日判決(抜歯感染,骨髄炎で約4000万円)

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◆ 事案


名港鈴木歯科医院で,平成16年8月,右下の親知らずを抜いた後,下あごに骨髄炎を発症し,平成17年4月以降,名大病院で骨髄炎の部分を取り除く15回の手術を受けました.患者は,痛みや発熱,不眠に苦しみ,仕事も失い,流動食しか食べられない状態が続いています.

◆ 判決

名港鈴木歯科医院は,「発熱など抜歯後感染を疑わせる症状はなく過失はなかった」などと反論し,平成16年10月に名大病院が実施した,残った親知らずの抜歯が骨髄炎を発症させた可能性が高いと主張しました.

名古屋地裁は「名大病院の治療は適切。感染可能性が最も高いのは適切な措置をしなかった被告の手術直後と考えるのが合理的」とし,「感染治療や防止のため抗菌薬投与などの適切な措置をしなかった」と注意義務違反を認め,「注意義務違反と抜歯後感染や骨髄炎は因果関係が認められる」とし,労働能力喪失率を30%と認定し,被告に約4000万円の支払いを命じました.

中日新聞「抜歯で骨髄炎、賠償命令 名古屋地裁判決、歯科医院に4千万円

◆ 感想

結果責任ではありませんので,賠償責任を認めるためには,注意義務違反の立証が必要です.
ただ,注意義務違反の特定を厳密に求めると,立証困難となり,非常識な結果になります.
本件は,名港鈴木歯科医院が感染治療や防止のため抗菌薬投与などの適切な措置をしなかったことで,注意義務違反を認めたとのことです.感染についてのこのような注意義務違反の認定は,一般人の常識と合致すると思います.

谷直樹
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by medical-law | 2011-06-16 09:14 | 医療事故・医療裁判

仏独が投与禁止したアクトス,武田薬品が後発品の製造販売差し止め求め特許侵害提訴

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◆ アクトス

アクトス(一般名,ピオグリタゾン)は,2型糖尿病治療剤です.
アクトスは,武田薬品の主力商品で,2010年度の売上は3879億円です.

◆ アクトスの心毒性,膀胱がんリスク

アクトスは,発売直後から問題が指摘されてきた薬剤です.

2000年には,TIP「正しい治療と薬の情報」誌が,アクトスの心毒性(心肥大,心筋壊死など)と骨毒性(骨量減少)および動物実験での膀胱がん多発を指摘しました.薬害オンブズパースン会議は,「ピオグリタゾン(商品名アクトス)について 販売中止と回収の緊急命令発動等を求める要望書」を発表しました.

2005年には,ヨーロッパ糖尿病学会でアクトスの2型糖尿病に対するランダム化比較試験(PROactive)の結果が発表されました.アクトスは主目標で有意の改善なし,心不全はアクトス群に有意に多く,心不全を含む全イベントはアクトス群に多い傾向あり,動物実験同様膀胱がんが臨床試験で多発,と報告されました(TIP誌2006年1月).

2010年には,米国FDAが,追跡調査の結果,アクトス服用期間が最も長い患者群や累積投与量が最も多い患者群では膀胱癌リスクが増加していた,と発表しました.

◆ フランス,ドイツでは,アクトスは新規患者への投与禁止

フランス保健製品衛生安全庁は,2011年6月9日,アクトスとコンペタクト(アクトスとメトホルミンの配合剤)の新規患者への投与を禁止しました.ただし,現在投与中の患者については,医師が個別に判断するとのことです.
ドイツ連邦医薬品医療機器庁は,2011年6月10日,フランス保健製品衛生安全庁と同様に,新規患者への投与を禁止しました.
これは,疫学調査で,アクトス投与群は非投与群に比べ膀胱がんリスクが有意に高いことが確認されたためです.

◆ 武田薬品と沢井製薬の訴訟

日本国内のアクトスの物質特許は,2011年1月で切れています.

武田薬品は,併用に関する医薬特許は有効と主張しています.
沢井製薬が2010年5月に特許庁に無効審判を請求し,アクトスとα-グルコシダーゼ阻害剤との併用特許は有効,アクトスとビグアナイド系薬剤,グリメピリドとの併用特許は,ビグアナイド系薬剤については無効,グリメピリドについては有効,との審決が2011年3月にだされました.武田薬品と沢井製薬は,ともに審決を不服として知財高裁に審決取消しを求めました.

武田薬品は,2011年6月6日,アクトスとスルホニルウレア系薬剤(一般名グリメピリド)の合剤であるソニアスを発売しました.

◆ 武田薬品の後発品メーカーに対する訴訟

厚生労働省は,2011年1月,アクトス後発品を承認しました。後発品の薬価収載は6月中に行われます.
武田薬品は,併用に関する医薬特許は有効と主張し,アクトス後発品の製造承認を取得した27社のうち,和解に応じなかった18社を被告として,2011年6月15日,東京地裁と大阪地裁に,後発品の製造販売差止め訴訟を提起しました.

◆ 感想

外国では既に投与が禁止された薬剤について,その5,6日後,日本では先発品メーカーは使用継続の権利を確保しようとして提訴し,後発品メーカーは薬価収載により新たな売り込みを行おうとしています.

外国からは,薬害大国日本の奇妙な薬事情は,およそ理解不能でしょう.

「まだ仏独でしか投与禁止になっていない」ではなく,疫学調査でアクトス投与群は非投与群に比べ膀胱がんリスクが有意に高いことが確認された事実を尊重し,日本でも投与禁止とすべきでしょう.

海外で承認された薬剤が日本で承認されるまでの期間が長いと言われることがありますが,海外で投与禁止になった薬剤が日本で投与禁止になるまでのタイムラグこそ短縮していただきたい,と思います.

谷直樹
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by medical-law | 2011-06-16 00:11 | 医療

パワースポット“清正井(きよまさのい)”

b0206085_1639879.jpg事務局Iです.
花菖蒲の美しい季節となりました.

先日,明治神宮の御苑の花菖蒲を見に行きました.

御苑の入り口でボランティアの方に“清正井(きよまさのい)”という井戸が名所になっている,と言って整理券を頂きました.

パワースポットが最近はやっているらしいのですが,加藤清正が掘ったと言われる,この“清正井(きよまさのい)”も,平日の昼間にもかかわらず,たくさんの人が並んでいたので,驚きました。水がとても澄んでいて,流れ落ちる様子が美しく印象的でした.

友人曰く,この“清正井(きよまさのい)”の写真を,携帯電話の待ち受け画面に設定すると,願い事が叶うという,もっぱらの噂だそうです!

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by medical-law | 2011-06-15 16:41 | 日常

最高裁3決定の補足意見,反対意見

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第3小法廷の決定が出て,これで最高裁判所裁判官15人の意見が分かりました.
第2小法廷,第1小法廷,第3小法廷の多数意見は合憲としていますが,それぞれの補足意見を読むと,ぎりぎり合憲としたことが分かります.

東京新聞「君が代命令 三たび合憲 「賛成」判事も強制慎重」が,以下のとおり,各意見を簡潔にまとめています.

「◆3つの判決 補足意見7人、反対2人 

 君が代の起立斉唱命令をめぐる最高裁の三つの判決では、三小法廷の計十四人の判事のうち、二人が反対意見を述べた。合憲の結論に賛成した十二人の判事からも、教育現場に「寛容さ」を求めるなど七人が補足意見を述べた。憲法が保障する精神的自由の重みを印象づけた。

 強制されて起立斉唱することが、人間の「内心(思想・良心)」をどのくらい侵害するのか-。多数意見と反対意見を分けたのは、この点をめぐる判断の差だった。

 多数意見は、君が代に敬意を示せない教員にとって起立強制が精神的苦痛になると認めた上で、儀礼的行為ととらえ、内心に与える影響を重くみなかった。

 しかし、反対意見を述べた二人は、起立斉唱行為を内心の「核心」により近いものと位置付けた。

 田原睦夫判事(弁護士出身)は「斉唱命令は内心の核心的部分を侵害しうる」と指摘、宮川光治判事(同)も「斉唱する行為は教員らの歴史観で譲れない一線を越える行動で、思想・良心の核心を動揺させる」と説明。ともに、やむを得ない強制と言えるかどうか厳格に審査すべきだとし、審理の差し戻しを訴えた。

 一方、補足意見を述べた七人の多くが、命令に従わない教員の処分などに慎重さを求めた。「思想・良心の自由」が憲法上、厳しく守られる基本的人権である上、起立を強いる行政と反発する教員との対立が子どもに悪影響を与えるのを憂慮したからだ。

 須藤正彦判事(弁護士出身)は「教育は、強制でなく自由闊達(かったつ)に行われるのが望ましい。強制や不利益処分は可能な限り謙抑的であるべきだ」とし、教育行政に「寛容の精神」での工夫、配慮を求めた。

 ともに裁判官出身の千葉勝美、大谷剛彦両判事は、君が代斉唱は「自発的な敬愛」に基づいて行われるべきだと強調。金築誠志判事(裁判官出身)も教育環境が悪化し、生徒らに影響を及ぼす恐れを念頭に「すべての教育関係者の慎重、賢明な配慮が必要だ」とくぎを刺した。」


谷直樹
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by medical-law | 2011-06-15 09:00 | 司法

最高裁判所第3小法廷平成23年6月14日決定(日の丸.君が代事件)裁判官田原睦夫の反対意見

谷直樹
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裁判官田原睦夫の反対意見を紹介いたします.

私は,多数意見が本件上告のうち,東京都人事委員会がした裁決の取消請求に関する部分を却下するとの点については異論はない。しかし,多数意見が,本件各職務命令は上告人らの思想及び良心の自由についての間接的な制約となる面はあるものの,職務命令の目的及び内容並びにその制約の態様等を総合的に較量すれば,その制約を許容し得る程度の必要性及び合理性が認められるとして,本件各職務命令は,上告人らの思想及び良心の自由を侵すものとして憲法19条に違反するとはいえないと解するのが相当であるとして,上告人らのその余の上告を棄却するとする点については,以下に述べるとおり,賛成し難く,本件は更に審理を尽くさせるべく,原審に差し戻すのが相当であると考える。

第1 本件各職務命令と憲法19条との関係について

1 本件各職務命令の内容

上告人らに対して各学校長からなされた本件各職務命令の内容は,入学式又は卒業式における国歌斉唱の際に「起立して斉唱すること」というものである(多数意見は,本件各職務命令の内容を「起立斉唱行為」を命ずる旨の職務命令として,起立行為と斉唱行為とを一括りにしているが,私は,次項以下に述べるとおり,本件
各職務命令と憲法19条との関係を検討するに当たっては,「起立行為」と「斉唱行為」とを分けてそれぞれにつき検討すべきものと考えるので,多数意見のように本件各職務命令の内容を「起立斉唱行為」として一括りにして論ずるのは相当ではないと考える。)。なお,多数意見にても指摘されているとおり,本件町田市通達
には「教職員は式典会場の指定された席で国旗に向かって起立し国歌を斉唱すること」も含まれていたが,X1に対する職務命令には,「国旗に向かって」の部分は含まれていない。

この「起立して斉唱すること」という本件各職務命令の内容をなす「起立行為」と「斉唱行為」とは,社会的事実としてはそれぞれ別個の行為であるが,原判決の認定した事実関係によれば,本件各職務命令は,それら二つの行為を一体として命じているように見える。

しかし,上記のとおり起立行為と斉唱行為とは別個の行為であって,国歌斉唱時に「起立すること」(以下「起立命令」という。)と「斉唱すること」(以下「斉唱命令」という。)の二つの職務命令が同時に発令されたものであると解することもできる。

そして,本件各職務命令に違反する行為としては,①起立も斉唱もしない行為,②起立はするが斉唱しない行為(これには,口を開けて唱っている恰好はするが,実際には唱わない行為も含まれる。),③起立はしないが斉唱する行為,がそれぞれあり得るところ,本件の各懲戒処分(以下「本件各懲戒処分」という。)では,上告人らが本件各職務命令に反して国歌斉唱時に起立しなかった点のみが処分理由として取り上げられ,上告人らが国歌を斉唱したか否かという点は,記録によっても,本件各懲戒処分手続の過程において,事実認定もなされていないのである。

そこで以下では,本件各職務命令を「起立命令」部分と「斉唱命令」部分とに分けて,その憲法19条との関係について検討するとともに,本件各職務命令における両命令の関係について見てみることとする。

2 起立命令について

私は,多数意見が述べるとおり,公立中学校における儀式的行事である卒業式等の式典における,国歌斉唱の際の教職員等の起立行為は,一般的,客観的に見て,これらの式典における慣例上の儀礼的な所作としての性質を有するものというべきであって,上告人らの主張する歴史観ないし世界観を否定することと不可分に結び付くものではなく,したがって,上告人らに対して,学校の卒業式等の式典における国歌斉唱の際に起立を求めることを内容とする職務命令を発することは,直ちに上告人らの歴史観ないし世界観を否定するものではないと考える。

また,「起立命令」に限っていえば,多数意見が述べるとおり,上告人らの思想及び良心の自由についての間接的な制約となる面はあるものの,職務命令の目的及び内容並びにその制約の態様等を総合的に較量すれば,なお,若干の疑念は存するものの,その制約を許容し得る程度の必要性及び合理性を有することを肯認できると考える。

しかし,後に検討する本件各職務命令における起立命令と斉唱命令との関係からすれば,本件各職務命令の内容をなす起立命令の点のみを捉えて,その憲法19条との関係を論議することは相当ではなく,本件各職務命令の他の内容をなす斉唱命令との関係を踏まえて論ずべきものと考える。

3 斉唱命令について

(1) 斉唱命令と内心の核心的部分に対する侵害

国歌斉唱は,今日,各種の公的式典の際に広く行われており,かかる式典の参加者が国歌斉唱をなすこと自体が,斉唱者の思想,信条の告白という意義まで有するものでないことは,前項で述べた起立の場合と同様である。また,多数意見が指摘するように,本件各職務命令当時,公立中学校の卒業式等の式典において国歌斉唱が広く行われていたことが認められる。

しかし,「斉唱」は,斉唱者が積極的に声を出して「唱う」ものであるから,国歌に対して否定的な歴史観や世界観を有する者にとっては,その歴史観,世界観と真っ向から対立する行為をなすことに他ならず,同人らにとっては,各種の公的式典への参加に伴う儀礼的行為と評価することができないものであるといわざるを得
ない。

また,音楽専科以外の教諭である上告人らにおいて,学校の卒業式等の式典における国歌斉唱時に「斉唱」することは,その職務上当然に期待されている行為であると解することもできないものである。なお,多数意見の指摘するとおり,学習指導要領では,「入学式や卒業式などにおいては,その意義を踏まえ,国旗を掲揚す
るとともに,国歌を斉唱するよう指導するものとする」と定めているが,その故をもって,音楽専科以外の教諭である上告人らにおいて,入学式や卒業式における国歌斉唱時に,自ら国歌を「唱う」こと迄が職務上求められているということはできない。

以上の点よりすれば,国歌に対して否定的な歴史観や世界観を有する者に対し,国歌を「唱う」ことを職務命令をもって強制することは,それらの者の思想,信条に係る内心の核心的部分を侵害するものであると評価され得るということができる。

(2) 斉唱命令と内心の核心的部分の外縁との関係

憲法19条が保障する思想及び良心の自由には,内心の核心的部分を形成する思想や信条に反する行為を強制されない自由が含まれることは当然である。

また,それには,自らの思想,信条に反する行為を他者に求めることを強制されない自由も含まれると解すべきものと思われる。そして,その延長として,第三者が他者に対して,その思想,信条に反する行為を強制的に求めることは許されるべきではなく,その求めている行為が自らの思想,信条と一致するか否かにかかわら
ず,その強制的行為に加担する行為(加担すると外部から捉えられる行為を含む。)はしないとする強い考え,あるいは信条を有することがあり得る。

上記のような強い考え,あるいは信条は,憲法19条が保障する思想,信条に係る内心の核心的部分そのものを形成するものではないが,その外縁を形成するものとして位置付けることができるのであり,かかる強い考え,あるいは信条を抱く者における,その確信の内容を含む,上記外縁におけるその位置付けの如何によっては,憲法19条の保障の範囲に含まれることもあり得るということができると考える(最高裁平成16年(行ツ)第328号同19年2月27日第三小法廷判決・民集61巻1号291頁(以下「ピアノ伴奏事件判決」という。)における藤田宙靖裁判官の反対意見参照)。

ところで本件では,「斉唱命令」と憲法19条との関係が問われているのであり,(1)で論じたとおり,「斉唱命令」は上告人らの内心の核心的部分を侵害するものと評価し得るものと考えるが,仮に,本件各職務命令の対象者が,国歌については価値中立的な見解を有していても,国歌の法的評価を巡り学説や世論が対立し
ている下で(国旗及び国歌に関する法律の制定過程における国会での議論の際の関係大臣等の答弁等から明らかなとおり,同法は慣習であるものを法文化したものにすぎず,また,同法の制定によって,国旗国歌を強制するものではないとされている。),公的機関が一定の価値観を強制することは許されないとの信条を有している場合には,かかる信条も思想及び良心の自由の外縁を成すものとして憲法19条の保障の範囲に含まれ得ると考える。

4 本件各職務命令と起立命令,斉唱命令との関係

1に述べたとおり,本件各職務命令は,「起立命令」と「斉唱命令」の二つの職務命令が同時に発令され,本件各懲戒処分では,「斉唱命令」違反の点は一切問われていないことからして,そのうちの「起立命令」違反のみを捉えてなされたものと解し得る余地が一応存する。

しかし,原判決が認定する本件各職務命令が発令されるに至った経緯からすると,本件各職務命令は「起立して斉唱すること」を不可分一体の行為と捉えて発せられたものであることがうかがわれ,また,上告人らもそのようなものとして捉えていたものと推認される。

そして,上告人らにとっては,2,3において検討したとおり,上告人らの思想,信条に係る内心の核心的部分との関係においては,「起立命令」と「斉唱命令」とは明らかに異なった位置を占めると解されるところ,本件各職務命令が,上記のとおり「起立して斉唱すること」を不可分一体のものとして発せられたものであると上告人らが解しているときに,その命令を受けた上告人らとしては,「斉唱命令」に服することによる上告人らの信条に係る内心の核心的部分に対する侵害を回避すべく,その職務命令の一部を構成する起立を命ずる部分についても従わなかったと解し得る余地がある(本件では,上告人らが,国歌を「斉唱」する行為につき如何なる考えを抱いていたか,国歌斉唱の際の起立行為と斉唱行為との関係をどのように関係付けていたかについて,原審までに審理が尽くされていない。)。

また,仮に本件各職務命令が「起立命令」と「斉唱命令」の二つの職務命令を合体して発令されたものであり,二つの職務命令を別々に評価することが論理的に可能であるとしても,本件各職務命令が発令された経緯からして,上告人らが本件各職務命令が「起立して斉唱すること」を不可分一体のものとして命じたものと捉えたとしても無理からぬものがあり,本件上告人らとの関係において,本件各職務命令違反の有無の検討に当たって,本件各職務命令を「起立命令」と「斉唱命令」とに分けることは相当ではないといわなければならない。

5 小括

以上検討したとおり,本件各職務命令は,「起立して斉唱すること」を一体不可分のものとして発せられたものと解されるところ,上告人らの主張する歴史観ないし世界観に基づく信条との関係においては,本件各職務命令のうち「起立」を求める部分については,その職務命令の合理性を肯認することができるが,「斉唱」を求める部分については上告人らの信条に係る内心の核心的部分を侵害し,あるいは,内心の核心的部分に近接する外縁部分を侵害する可能性が存するものであるといわざるを得ない。

本件において,上告人らが本件各職務命令にかかわらず,入学式又は卒業式の国歌斉唱の際に起立しないという行為(不作為)を行った理由が,国歌斉唱行為により上告人らの信条に係る内心の核心的部分(あるいは,内心の核心的部分に近接する外縁部分)に対する侵害を回避する趣旨でなされたものであるとするならば,かかる行為(不作為)の,憲法19条により保障される思想及び良心の自由を守るための行為としての相当性の有無が問われることとなる。

しかし,原審までの審理においては,「起立命令」,「斉唱命令」と上告人らの主張する信条との関係につきそれぞれを分けて検討することはなく,殊に「斉唱命令」と上告人らの信条との関係について殆ど審理されていないのであり,また,本件各職務命令と「起立命令」,「斉唱命令」との関係や,「斉唱命令」に従わない
こと(不作為)と「起立命令」との関係,更には,上告人らの主張する信条に係る内心の核心的部分(あるいはその外縁部分)の侵害を回避するための行為として,上告人らとして如何なる行為(不作為)をなすことが許されるのかについての審理は,全くなされていないといわざるを得ない。

第2 本件における職務命令とピアノ伴奏事件判決における職務命令との関係について

私は,本件に係る先例としてしばしば論議される,市立小学校の校長が音楽専科の教諭に対し,入学式における国歌斉唱の際に「君が代」のピアノ伴奏を行うことを命じた職務命令が憲法19条に違反するか否かが問われた前記ピアノ伴奏事件判決において,同職務命令は憲法に違反するものではないとした多数意見に同調しているところから,同事件の多数意見につき私が理解するところと,本件における私の反対意見との関係につき,以下に両事件の相違点を踏まえて,若干の説明をすることとする。

1 ピアノ伴奏事件判決における職務命令の対象者

ピアノ伴奏事件判決における職務命令の対象者は,公立小学校の音楽専科の教諭である。小学校における音楽専科の教諭は,音楽を学習する各クラスの児童に対して専科として音楽の授業を行うほか,クラブ活動の指導や,学校行事として行われる入学式,卒業式,運動会,音楽会等の諸行事において,ピアノの伴奏をなし,あるいは,歌唱の指導を行うこと等が求められる。

音楽専科の教諭に対して各クラスに対する音楽の授業以外に,学校の行事等に関連して音楽専科の教諭としての技能の行使が求められる上記の職務の内容は,小学校における教育課程の一環として行われるものである以上,それらの職務の遂行は音楽専科の教諭としての本来的な職務に含まれると解される。したがって,同事件において,校長が音楽専科の教諭である同事件の上告人に対して,入学式において参列者一同による歌唱の際にその伴奏を命じることは,音楽専科の教諭としてなすべき当然の職務の遂行を命じるもの
にすぎない。

2 音楽専科の教諭の職務

同事件の論点は,ピアノ伴奏の対象が「君が代」であり,同事件の上告人が「君が代」を唱ったり,ピアノ伴奏したりすることが,同上告人の思想及び良心の自由を侵害するとの理由でそのピアノ伴奏を拒否することができるかという点であった。

ところで,公立小学校の音楽専科の教諭は,小学校の教科書に採択されている曲目はもちろんのこと,教科書に採択されていなくとも,一般に公立小学校において諸行事の施行等の際に演奏がなされ又は歌唱される曲目について,そのピアノ演奏やピアノ伴奏をなすことは,通常の職務の範囲に属するものといえる。

そして,音楽専科の教諭が,その行事の式次第においてかかる曲目の歌唱をなすことが定められた場合に,そのピアノ伴奏を求められれば,それをなすべきものであり,そのピアノ伴奏につき職務命令まで発令された場合には,その命令に従うべき義務を負うものというべきものである。

3 音楽専科の教諭と思想及び良心の自由

ピアノ伴奏事件判決において,同事件の上告人は,「君が代」を公然と唱ったり,ピアノ伴奏することは,同上告人の歴史観ないし世界観に反し,そのピアノ伴奏をなすことは同上告人の思想及び良心の自由を侵害するものである旨主張したが,同判決の多数意見が述べるとおり,公立小学校における入学式や卒業式におい
て国歌斉唱として「君が代」が斉唱されることが広く行われていたことは周知の事実であり,客観的に見て,入学式の国歌斉唱の際に「君が代」のピアノ伴奏をするという行為自体は,音楽専科の教諭として通常想定され,期待される行為であって,その伴奏行為自体が当該教諭が特定の思想を有することを外部に表明する行為であると評価され得る類のものではなく,殊に職務上の命令に従ってなされる場合には,当該教諭が特定の思想を有することの外部への表明と評価することは困難なものであり,したがって,かかる伴奏行為については,憲法19条により保障されるべき行為であるとはいえないものというべきである。

また,公立小学校の音楽専科の教諭は,前記のとおり,教科書に採択され,あるいは,一般に小学校の行事等で広く演奏され,又は唱われている曲目については,たとえその音曲の演奏をなすことが音楽家としての信条に反し,そのピアノ演奏をなすこと自体が心理的苦痛を伴うものであったとしても,そのピアノ演奏は職務と
しての演奏であって芸術としての演奏ではないから,その演奏行為をもって,当該教諭の思想及び良心の自由についての制約に当たるものと評価されるべきものではなく,したがって,憲法19条により保障される範囲に含まれるとはいえないのである。

4 本件とピアノ伴奏事件判決との相違点

ピアノ伴奏事件判決は,上記のとおり公立小学校の音楽専科の教諭に対し,本来の職務に属するピアノ伴奏をなすことを求めて職務命令が発せられたものであるのに対し,本件各職務命令は,入学式や卒業式に出席するという公立中学校の教諭としての本来の職務を滞りなく遂行しようとしていた上告人らに対して,更にその職務に付随して発せられた命令であり,その職務命令に服従しない行為と憲法19条による保障との関係が問われている点において,事情を大きく異にするのである。

第3 裁量権の濫用について

本件では,論旨においては,専ら本件各職務命令の合憲性の有無のみが主張の対象とされ,本件における各学校長が本件各職務命令を発令したことが学校長に認められる裁量権の濫用に当たるか否か,また,都教委が上告人らに対してなした本件各懲戒処分が裁量権の濫用に当たるか否かという点は論旨に含まれていない。

もっとも,本件においては,本件各職務命令と上告人らの思想及び良心の自由との関係が問われているのであるから,本件各職務命令が憲法19条との関係においてその合憲性が肯定される場合であっても,同条との関係において本件各職務命令及び本件各懲戒処分が裁量権の濫用に当たるか否かが問題となり得るのであって,本件においては,かかる観点からの検討を加える余地も存したのではないかと考えるので,それ自体が法令違反の有無として当審の審判の対象となるものではないものの,以下その点について若干付言する。

1 職務命令の発令と裁量権の濫用

公立中学校の校長が,その学校に所属する教諭や職員に対して,学校教育法等の法令に基づいて職務命令を発することができる場合において,その職務命令には,その内容に応じて質的に様々の段階のものがある。

例えば,学校における校務運営上教職員が職務命令に従って行為することが不可欠であり,その違反は校務運営に著しい支障を来すところから,その違反に対しては,懲戒処分による制裁をもって臨まざるを得ない性質を有するものから,その職務命令に係る対象行為それ自体の校務運営上の重要性や必要性の程度,あるいはその行為を職務命令の相手方自身によって遂行させる必要性の有無等からすれば,通常は指導としてなされ,また,それをもって足りるものであるが,指導に代えて職務命令を発令しても違法とはいえない程度にとどまるものまで様々のものがあり得る。

そして,公立中学校の校長が,通常は相手方に対する指導をもって対応すれば足りる行為につき職務命令を発令したときには,裁量権の濫用が問題となり得る。

殊に,職務命令の対象とされる行為が,その相手方の思想及び良心の自由に直接関わる場合には,職務命令を発令すること自体,より慎重になされるべきである。

2 職務命令違反と制裁

公立中学校の校長が,学校における校務運営上発令することができる職務命令のうち,通常は,教職員に対する指導をもって十分に対応することができるものの,職務命令を発令しても違法ではないという程度の職務命令に対する違反行為については,その違反の内容がその質において著しく到底座視するに耐えないものであるとか,その違反行為の結果,校務運営に相当程度の支障を生じさせるものであるなどの事情が認められない限り,かかる職務命令に違反したとの一事をもって懲戒処分をなすことは,原則として裁量権の濫用に当たるものといえよう。殊に,職務命令の対象行為が,職務命令を発する相手方の思想及び良心の自由に関わる場合には,なおさらであろう。

次に,その職務命令を発令することは適法であり,その発令の必要性が肯定される場合であっても,その職務命令の内容が相手方の思想及び良心の自由に直接関わる場合には,懲戒処分の発令はより慎重になされるべきであり,かかる場合に職務命令の必要性やその程度,職務命令違反者が違反行為をなすに至った理由,その違反の態様,程度,その違反がもたらした影響等を考慮することなく,職務命令に違反したことのみを理由として懲戒処分をなすことは,裁量権の濫用が問われ得るといえよう。

ところで,本件各職務命令との関係についていえば,第1にて検討したとおり,本件各職務命令は起立行為と斉唱行為とを不可分一体のものとしてなされており,斉唱行為を命じる点は,上告人らの思想,信条に関わるところから,裁量権の濫用以前の問題である。しかし,その点は別として,多数意見の立場に立ってみるに,本件各職務命令のうち国歌斉唱時における「起立命令」のみを取り上げれば,入学式あるいは卒業式の式典の進行を,あらかじめ定められた式次第に従い秩序立って運営することを目的とするものであると解され,かかる行事が,式次第に従って秩序立って進行が保たれることが望ましいことであり,その必要性,相当性が認められる。

しかし,式典の進行に係る秩序が完全に保持されることがなくとも,その秩序が大きく乱されない限り,通常は,校務運営に支障を来すものとはいえないものであり,他方,上告人らがその職務命令に反する行為をなすに至った理由が,上告人らの思想及び良心の自由に関わるものであることからすれば,懲戒処分が裁量権
の濫用に当たるか否かにつき判断するには,上告人らの職務命令違反行為の具体的態様如何という質の問題とともに,その職務命令違反によって校務運営に如何なる支障を来したかという結果の重大性の有無が問われるべきものと考える。

第4 結論

以上第1において詳述したとおり,原審は,本件各職務命令が入学式又は卒業式等の式典における国歌斉唱の際に「起立すること」と「斉唱すること」を不可分一体のものとして命じているものであるか否か,また,国歌の「斉唱命令」が上告人らの信条に係る内心の核心的部分と直接対峙し,侵害し得る関係に立つものであるのか否か,あるいは内心の核心的部分との直接対峙関係には立たないものの,その核心的部分に近接する外縁を成し,その侵害は,なお憲法19条によって保障されるべき範囲に属するといえるか否かという諸点について審理し,判断をなすべきところ,かかる諸点について十分な審理を尽くすことなく判決をなすに至ったものといわざるを得ない。

よって,本件は,原判決を破棄の上,更に上記諸点について審理を尽くさせるべく,原審に差し戻すのを相当と思料する次第である。
by medical-law | 2011-06-15 08:37 | 司法

法の支配指数(Rule of Law Index)発表

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World Justice Projectは,6月13日,年次報告書「Rule of Law Index2011」 (法の支配指数2011)を発表しました.

AFP「「法の支配」実態調査,露中米などに問題指摘」によると,「法の支配」指数が最も高かったのはスウェーデンとノルウェーとのことです.

ロシアは,抑制均衡が政府各省庁で深刻に不足しており(55位),結果として汚職や刑事免責,政治介入などに特徴づけられた体質がもたらされていると指摘されました.また,言論の自由や結社の自由,プライバシーの恣意的な侵害など,基本的人権の侵害もみられると評価されました.

中国は,法制度の質や効率,説明責任が「大幅に改善」されたと評価.一方で,司法の独立という領域ではさらに改善が必要だと指摘されました,また,労働権(61位),集会の自由(66位),言論の自由(66位)など,基本的人権の指標が弱かった,とのことです.

米国は,ランクが高く,特に抑制均衡や,市民的自由の保障,司法制度の独立性などが高く評価されました.一方で,司法制度の利用の点で所得による差がみられ,一般的な認識として,少数民族や外国人が警察や裁判所で不平等な待遇を受けている点も指摘された,とのことです.

日本については,AFPは報じていません.
そこで,報告書をみると...

Japan is one of the highest-ranking countries in 
the East Asia and Pacific region. The country’s
institutions and courts rank among the best in
the world. Japan places 2nd in the region and 4th
globally for the effectiveness and transparency of
its regulatory agencies. Security is high (ranking
4th in the world) and the criminal justice system is
effective (ranking 11th), although concerns remain
regarding due process violations. Japan’s lowest
score is in the area of accessibility and affordability
of civil procedures, mainly because of high litigation
costs. The high costs imposed by courts and lawyers,
for instance, place Japan 44th out of 66 countries
in terms of accessibility and affordability of civil
procedures.

刑事司法制度は,適正手続き違反の問題がありますが,実効的で,11番目に格付されています.
他方,裁判費用と弁護士費用が高額なため,民事裁判へのお手頃なアクセスでは,66国中44位となっていると指摘されています.

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by medical-law | 2011-06-14 16:12 | 司法

『燃えつきるまで』

b0206085_9243262.jpg事務局Hです.
普段,恋愛小説はあまり読まないのですが,
友人に勧められて,唯川恵さんの「燃え尽きるまで」を読みました.

物語は,31歳の主人公が,5年交際した男性から突如別れを告げられるところから始まります.

失恋の痛手から,男性を忘れてすっきりと立ち直るまでを描いた作品なのですが,
立ち直るまでの過程が,元恋人を取り戻そうと躍起になったかと思えば,忘れるために一夜限りの恋をしてみたり,落ち込むあまり仕事でミスを連発し異動の危機にさらされたり,男性の新恋人に復讐をしたりと,なかなか展開が早いハードな内容になっています.

元恋人を取り戻そうとするあまり,仕事も男性並にこなす強い主人公が惨めな女に成り下がってしまう描写は,読んでいるこちらも辛いものがありましたが,
私は,あまり主人公に感情移入することができず,
復讐シーンでは,「不法侵入」「窃盗」「器物損壊」「ストーカー」という単語が頭の中をぐるぐるしてしまいました.
恋愛体質の女性なら,感情移入して楽しめると思います.

結婚を考えていた相手と別れた女性が荒れる気持ちは想像できますが,
ここまでするかと驚くシーンが盛りだくさんで,
先が気になるあまり,1時間ほどで一気に読み終えてしまいました.

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by medical-law | 2011-06-14 09:19 | 趣味

札幌市消防局,救急搬送指示ミスで病院到着10分遅れ,患者死亡

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◆ 事案

平成23年6月11日,「夫が『胸が痛い』と言っている」と119番通報があり,間もなく救急隊が到着し心肺停止状態の50代男性の搬送を始めました.
指令員は,救急隊に誤った搬送先を指示し,そのため搬送距離は約6キロ長くなり,病院到着が約10分遅れました。
指令員は「119番が相次いであり,混乱して間違えた」とのことです.
なお,死亡との因果関係は不明です.

◆ 感想

さぞかし御遺族は無念でしょう.

札幌市では,その前日6月10日に,救急隊が道を間違い,現場へ到着するのに約6分遅れた,とのことです.
横手市消防本部でも,6月3日,道を誤り,病院到着が10分遅れたと報じられています.
救急隊が道を誤るケースは,カーナビ等で解決できそうな気がするのですが.結構あるようです.

本件は,指示自体を誤ったケースです.
119通報が相次ぐことも当然ありますから,そのようなときでも,指令員が混乱せず的確な指示ができるよう,事故の経過を調べ,再発防止策を具体的に検討していただきたく思います.

毎日新聞「搬送ミス:病院名間違え到着遅れ、男性患者死亡 札幌」ご参照
朝日新聞「搬送先病院名を誤って指示 救急隊の到着遅れる」ご参照
毎日新聞「救急搬送ミス:横手市消防本部、80代女性患者を /秋田」ご参照


谷直樹

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by medical-law | 2011-06-14 00:03 | 医療事故・医療裁判

大阪市立大学医学部附属病院,「異型輸血事故に関する医療事故調査報告書」発表

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外部委員を含めた医療事故調査委員会により,大阪市立大学医学部附属病院における異型輸血事故に関する医療事故調査報告書が,平成23年6月10日,完成しました.
調査報告書の概要は,以下のとおりです,

◆ 事案

患者は,50才男性.
結腸静脈瘤からの下血で近医受診するも出血源が特定できず,平成23年1月14日に市大病院に転院.
同月18日,血管造影室において,B-RTO実施中に大量の下血があり,治療を行っていた救命救急センターの医師がECUにいた医師に血液製剤(B型:RCC)を持って来るよう指示しました.
その際,ECUの看護師が保冷庫から別患者の血液製剤(A型:RCC)を誤って取り出し,連絡を受けた医師が血管造影室へ運びました.
その後,血管造影室の看護師が,患者の血液製剤であることを確認しないまま輸血(2単位:280CC)を投与しました.

◆ 事故原因

本件事故は,事故防止のために設けている複数の確認手順が全く実施されなかったため,発生したものです.
その原因は,事故当時者の単なる注意不足だけではなく,その背景には様々なヒューマンファクター,病院情報システム,マニュアルや職員研修などの要因が影響していることが分かりました.

◆ 再発防止のための提言

事故発生後,各種の再発防止策が実施されていますが,調査委員会は,さらに以下の再発防止策について提言を行いました.

①医療者2名によるダブルチェックの実施
②血液製剤の保管方法の統一
③電子カルテの研修体制についての見直し
④電子カルテの認証作業と実施入力の分離
⑤血管造影室の看護師配置の見直し
⑥チーム医療におけるコミュニケーションの確立

◆ 感想

マニュアルが定められていますが,異型輸血事故はあとを絶ちません.

今回の事故報告書と提言が,今後の事故防止に役立つことを切に願います.

なお,事故調査は,異型輸血事故がなかったらその患者が生きられたのか,という因果関係を調べることが目的ではありません.また,医学的科学的な厳密な因果関係が不明でも,法的な因果関係の判断はそれとは別です.

谷直樹
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by medical-law | 2011-06-13 14:55 | 医療事故・医療裁判