弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

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週刊ダイヤモンドのダビガトラン(商品名プラザキサ)の記事について

b0206085_9553828.jpgダビガトラン(商品名プラザキサ)で5名が死亡し,「出血リスクを正確に評価できる指標は確立されておらず、本剤の抗凝固作用を中和する薬剤はない」(改訂後の添付文書)とされています.

◆ 週刊ダイヤモンドの記事(カラダご医見番第58回)

週刊ダイヤモンドオンラインに「血液をほどよくサラリと脳卒中予防に新薬が登場抗凝固薬─ダビガトラン」[2011年08月22日] という記事が載っています.

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「今年1月に承認された抗凝固薬のダビガトラン(商品名プラザキサ)。「血液サラサラ」状態を保ち、血液の塊が引き起こす脳卒中を予防する。一般にはなじみが薄いのでピンとこないかもしれないが、この領域では半世紀ぶりの新薬。いろいろな意味で「待望の」という枕詞がつく薬なのだ。
(中略)
ダビガトランは治療効果がワルファリンを上回り、なにより出血性の副作用が少ない。「出血を懸念して処方を控えてきた患者にも使いやすい」(内科医)のだ。今回の承認は、血栓がらみの疾患の発症リスクが高い心房細動性不整脈の患者が対象だが、今後は脳卒中の再発予防にも使われていくだろう。」


このような調子で,記事は,ダビガトラン(商品名プラザキサ)の治療効果がワルファリンを上回り、なにより出血性の副作用が少ない,と手放しで褒めています.

◆ 感想

厚労省は,8月12日,血液凝固阻止剤「プラザキサカプセル」(ダビガトランエテキシラートメタンスルホン酸塩製剤)と関連性を否定できない出血性副作用による死亡例5例があったことを公表し,添付文書改訂等を指示しました.

ブログ「厚労省,血液凝固阻止剤「プラザキサカプセル」服用患者での死亡5例公表」(8月13日)ご参照

5名の死亡例があったことと,それを受けて,添付文書が次のとおり改訂されたことは報道されていますので,週刊ダイヤモンド編集部と医学ライター井手ゆきえ氏は十分知っているはずです.

[警告]の項を新たに設け,
本剤の投与により消化管出血等の出血による死亡例が認められている。本剤の使用にあたっては、出血の危険性を考慮し、本剤の投与の適否を慎重に判断すること。 本剤による出血リスクを正確に評価できる指標は確立されておらず、本剤の抗凝固作用を中和する薬剤はないため、本剤投与中は、血液凝固に関する検査値のみならず、出血や貧血等の徴候を十分に観察すること。これらの徴候が認められた場合には、直ちに適切な処置を行うこと。
と記載されました.
このことは,読者に伝えるべきでしょう.

また,服用患者に対し,鼻出血,歯肉出血,皮下出血,血尿,血便等に注意し,出血があった場合には直ちに医師に連絡するよう,呼びかけるべきでしょう.

今回の記事は,厚労省の対応によりプラザキサの販売が減少しないようにする意図があるのかもしれませんが,危険性について報じることがなく,「出血性の副作用が少ない」などと事実に反する内容になっていますので,さらなる出血死につながる可能性があります.
すみやかに訂正した方がよいと思います

谷直樹
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by medical-law | 2011-08-22 01:41 | 医療

『アートアクアリウム展 ~江戸・金魚の涼~』

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日本橋での会議の帰りに,木村英智さんの『アートアクアリウム展 ~江戸・金魚の涼~』を見てきました.

屏風型の水槽の中を金魚が泳ぎ,照明と影が幽玄な雰囲気をつくりだしていました.
一見の価値があります.

コレド室町の日本橋三井ホール,9月12日までです.

谷直樹
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by medical-law | 2011-08-21 21:34 | 動物

夏が好き

b0206085_9224160.jpg

夏と言えば,

夏休み,夏祭り,花火,縁側,風鈴,簾,朝顔,向日葵,日傘,打ち水,川床,避暑,施餓鬼会,風炉茶,袷,単衣,浴衣,団扇,金魚,蛍,素麺,西瓜,冷奴,水羊羹,夏野菜の冷製スパゲティ,アイスティー,アイスクリーム,かき氷,ラムネ,サイダー,夏の空,夏の雲,夏の風,夏の海,夏の夜,ボサノバ,野外オペラ・・・

夏を満喫しないと.今年の夏もそろそろ終わりです.

谷直樹
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by medical-law | 2011-08-21 09:23 | 休暇・休日

はしもと和クリニック,院長医師(心療内科)が自殺幇助未遂で逮捕される

b0206085_131692.jpg◆ 報道

時事通信「自殺ほう助未遂で医師逮捕=交際の元患者軽傷-徳島」(平成23年8月20日)は,次のとおり報じています.

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「交際していた元患者の女性(34)の自殺を手助けしようとしたとして、徳島県警徳島東署は20日、自殺ほう助未遂の疑いで、徳島市上八万町、医師××××容疑者(53)を逮捕した。同署によると、容疑を認めているという。
 逮捕容疑は19日午後10時15分ごろ、経営するクリニック1階のらせん階段の手すりにロープを結び、自殺を決意した女性の首に通すなどした疑い。
 同署によると、ロープが緩んで自殺は未遂に終わった。女性は首にあざが残ったが、命に別条はないという。女性が携帯電話で110番して発覚した。××容疑者は心療内科などのクリニックを経営し、女性は約10年前から通院していたという。」


◆ 感想

この心療内科の医師は,患者と交際していたとのことですが,それ自体が問題です.
心療内科の患者は,治療の過程で,過去の感情を今の治療者に向けることがあります.
そのため,患者は,過去の恋愛感情を医師,カウンセラーなどの治療者に向けることがあります.
それは,治療の一種の副作用です.
患者は,それが感情転移であることに気付かず,治療者を好きだと錯覚します.
治療者が,患者のこの錯覚につけこんで,関係をもつことは許されることではありません.
本件で,医師が10年前から通院している元患者と交際していたという報道が事実であれば,ハラスメントの一種と言えると思います.

「患者のための医療法律相談」(法学書院)の拙稿「精神科医と転移・逆転移」ご参照.

また,心療内科の患者が,死にたい,などと口にすることはよくあることです.
元患者と報道されていますが,この女性が携帯電話で110番したことも考えると,本件で,この女性に真に自殺の意思があったかはいささか疑問でしょう.

報道が事実であれば,医師としてあるまじき行いです.
厳正な捜査を期待いたします.

【追記】

MSN産経「逮捕の医師不起訴 自殺幇助未遂を傷害罪に 徳島地検」(平成23年9月9日)は,次のとおり報じました.

「徳島地検は9日までに、交際相手の女性が首をつって自殺しようとするのを手助けしたとして、自殺幇助(ほうじょ)未遂の疑いで逮捕された「はしもと和クリニック」元院長、××××医師(53)=徳島市=の罪名を傷害罪に切り替え、不起訴処分(起訴猶予)とした。処分は8日付。

 自殺は未遂に終わった。地検は不起訴の理由を「被害者が処罰を望んでおらず、社会的制裁を受けている」などとし、傷害罪への変更については「女性が自殺を決意しているという認識が認められなかったため」と説明した。

 同クリニックは、心療内科、精神科、内科の診療科があり、女性はクリニックに通院していた。」


やはり,自殺幇助ではありませんでした.「自殺を決意している」という状況ではなかったのでしょう.
本件の具体的な手段では体重を支えられないなど,殺人の実行行為性が難しかったので,また,不起訴にするため,傷害に変えたのでしょう.
医師としてあるまじき行為ですが,「被害者が処罰を望んでおらず、社会的制裁を受けている」以上,不起訴は適切だと思います.

[刑法]
第二百二条 人を教唆し若しくは幇助して自殺させ、又は人をその嘱託を受け若しくはその承諾を得て殺した者は、六月以上七年以下の懲役又は禁錮に処する。

第二百三条 第百九十九条及び前条の罪の未遂は、罰する。

第二百四条 人の身体を傷害した者は、十五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

谷直樹
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by medical-law | 2011-08-21 00:48 | 医療事故・医療裁判

市立根室病院,異型輸血事故を発表

b0206085_173534100.jpg◆ 事案

市立根室病院の看護師は,平成23年8月19日,院内規則で定める患者名の確認を怠たり,血液型AB型の患者(女性,70代以上)に対し,O型血液を点滴し,7分後に自分で間違いに気付いて止めたとのことです.輸血された血液は約5ミリリットルでした.患者の容体は安定しているとのことです.

北海道新聞「市立根室病院で患者に輸血ミス 容体は安定」ご参照

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◆ 感想

異型輸血事故は,いわゆる確認のエラーにより生じます.

輸血療法の実施に関する指針」(平成21年2月一部改訂版)13頁には,つぎのとおり記載されています.

「5)チェック項目
事務的な過誤による血液型不適合輸血を防ぐため,輸血用血液の受け渡し時,輸血準備時及び輸血実施時に,それぞれ,患者氏名(同姓同名に注意),血液型,血液製造番号,有効期限,交差適合試験の検査結果,放射線照射の有無などについて,交差試験適合票の記載事項と輸血用血液バッグの本体及び添付伝票とを照合し,該当患者に適合しているものであることを確認する。麻酔時など患者本人による確認ができない場合,当該患者に相違ないことを必ず複数の者により確認することが重要である。
6)照合の重要性
確認する場合は,上記チェック項目の各項目を2 人で交互に声を出し合って読み合わせをし,その旨を記録する。」


このとおり確認していれば事故は防止できます.
異型輸血事故は重大な結果をひきおこすこともあり,実際,罰金に処せられた例もあります.

看護業務をめぐる法律相談」(新日本法規)の拙稿「輸血(血液製剤)取扱いによる事故の責任は」553頁参照

各病院で,マニュアルが定められていますが,異型輸血事故はあとを絶ちません.
医師,看護師がマニュアルをを守らないからです.

確認ルールが守られているかつねに点検し,ルーズになってきたら直ちに注意を徹底し,守らせるようにすることが大事です.

谷直樹
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by medical-law | 2011-08-20 17:32 | 医療事故・医療裁判

先行行為に基づく作為義務,調剤過誤を犯した薬剤師の場合

b0206085_1013986.jpg毎日は「女性薬剤師は「社長(小嶋会長)に叱責されるのが嫌で報告も回収もしなかった」と供述しているという。」と報じています.

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小嶋薬局事件で,今までの調剤過誤事件以上に怒りを感じるのは,調剤過誤を認識しながら放置していた点です.

自らの先行行為(調剤過誤)によって結果発生の危険(死亡の危険)を招いた場合,その人は保障人的地位に基づいて,結果発生を防止する義務(作為義務)があります.
例えば,過失によって燃えているろうそくを倒した場合,その人は消火活動を行う義務があり,保険金をかけているから燃えてもいいと思って,消火活動を行うことなく立ち去った場合,放火罪(故意犯)にあたります.
ひき逃げが,保護責任者遺棄致死罪や殺人罪にあたることがあるのも,同じ理屈です.

調剤過誤によって死亡の危険を発生させた薬剤師は,結果発生を防止する義務(作為義務)があります.ジスチグミン(商品名,ウブレチド,ウブテック)を高齢者が服用すれば死亡する危険があることは,薬剤師である以上当然認識していたと思います.したがって,ただちに誤った薬を渡した人に連絡する義務があります.そして,調剤過誤に気づいた時点で連絡をしていれば死亡が避けられたのであれば,因果関係もあります.

その薬剤師が,回収しないことで死んでもやむをえないと思った(殺人の故意あり)のか,回収しなくても体調を崩すだけで死ぬことはないだろうと思った(傷害の故意あり,殺人の故意なし)のか,は微妙ですが,本件は,単なる業務上過失致死ではなく,傷害致死罪あるいは殺人罪の成立が検討されるべき事案ではないでしょうか.

谷直樹
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by medical-law | 2011-08-20 08:49 | 医療事故・医療裁判

調剤過誤で死亡,小嶋薬局薬剤師小嶋富雄氏らが送検される

b0206085_1836385.jpgにほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
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◆ 報道

読売「調剤ミスで75歳死亡、薬剤師2人を書類送検」(平成23年8月19日)は,次のとおり報じています.

「薬の誤った調剤をして、女性患者を死なせるなどしたとして、埼玉県警は19日、「小嶋薬局本店 サンセーヌ薬局」(埼玉県越谷市)の吉田玲子・管理薬剤師(65)(千葉県野田市)を業務上過失致死容疑で、経営者の小嶋富雄・埼玉県薬剤師会長(76)(埼玉県越谷市)を業務上過失傷害容疑でさいたま地検に書類送検した。

発表によると、小嶋会長は昨年3月25日、春日部市の米沢朝子さん(当時75歳)が胃の負担を和らげる「胃酸中和剤」を医師から処方されていたのに、重症筋無力症の治療に使う「コリンエステラーゼ阻害薬」を誤って調剤して渡し、全治不詳の中毒を起こさせた疑い。

医薬品管理の責任者だった吉田薬剤師は、在庫管理の際に調剤ミスに気づいた部下の薬剤師から同4月1日にミスの報告を受けながら、米沢さんに連絡せずに放置し、薬による中毒で死なせた疑い。

米沢さんは同3月31日頃から誤って渡された薬の服用を始め、4月7日に入院先の病院で死亡した。

県警は、調剤ミスに気づいた時点で連絡をしていれば、死ななかったとみている。」


◆ 感想

毒薬に指定されている,重症筋無力症の治療に使う「コリンエステラーゼ阻害薬」は,ジスチグミン(商品名,ウブレチド,ウブテック)でしょう.

ジスチグミンの添付文書の警告欄には,「本剤の投与により意識障害を伴う重篤なコリン作動性クリーゼ を発現し、致命的な転帰をたどる例が報告されているので、投与に際しては下記の点に注意し、医師の厳重な監督下、患者の状態を十分観察すること」と記載されています.
薬剤師である以上,ジスチグミンの危険性については,十分認識していたはずです.

スポニチが「同薬局では昨年2月下旬~4月、約20人に計約2700錠が誤って出されたが、死亡した女性以外に不調を訴えた人はいない。」と報じたところからすると,分包器のカセット内に間違って詰めたためにおきた事故ではないか,と思います.

調剤過誤は,ときどきありますが,これはひどすぎます.

しかも,埼玉県薬剤師会会長で,つい先日まで日本薬剤師会理事だった小嶋富雄氏なのですから...

【追記】

毎日に「小嶋会長の送検容疑は、昨年3月25日、経営する埼玉県越谷市内の薬局で春日部市の無職、米沢朝子さん(当時75歳)に、胃酸中和剤を調剤するはずが、調剤用機器の設定ミスで、高齢者に重篤な副作用があり毒薬指定されているコリンエステラーゼ阻害薬を調剤し、臭化ジスチグミン中毒の傷害を負わせたとしている。」と書いてありました.

【再追記】

毎日新聞「薬局誤調剤:女性死亡 元薬剤師に禁錮1年求刑 被告、起訴内容認める /埼玉」(2012年5月30日)は,次のとおり報じています.

「間違えた薬剤を提供して女性を死亡させたとして、業務上過失致死罪に問われた越谷市内の薬20+件局の元薬剤師、吉田玲子被告(65)=千葉県野田市=の初公判が29日、さいたま地裁(小坂茂之裁判官)であった。吉田被告は起訴内容を認めた。検察側は「過失は重大で悪質」として禁錮1年を求刑、即日結審した。判決は6月15日。

 検察側は、吉田被告が監督責任がある管理薬剤師の立場だったにもかかわらず、薬の種類や分量の確認などを事務員任せにするなど職務を怠っていたと指摘。吉田被告は「(管理者としての自覚が)非常に甘かった」などと述べた。

 起訴状によると、吉田被告は10年3月25日、越谷市内の小嶋薬20+件局本店「サンセーヌ薬局」で、春日部市の無職、米沢朝子さん(当時75歳)に胃酸中和剤を調剤しようとした際、自動錠剤包装機の設定ミスなどで毒性の錠剤を調剤。さらに同4月1日に誤投薬に気付いたのに、責任追及を恐れて服用中止の指示や医師への情報提供などをせず、同7日に米沢さんを中毒死させたとしている。【狩野智彦】」


谷直樹
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by medical-law | 2011-08-19 18:13 | 医療事故・医療裁判

備前焼

b0206085_12143942.jpg事務局Iです.
結婚祝いに備前焼をいただきました.

家にある器は,頂いた物なども多いのですが,一人暮らしが長かったので,どれも,一点ずつしかありません.
二つ組のティーカップや,お皿など,次々並ぶと,新鮮に感じます.

備前焼は土を焼き締めた渋い器ですが,お料理を載せるととても映えるので,メインプレートから,ちょっとしたおつまみのようなものを載せたり,とても重宝しています.

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by medical-law | 2011-08-19 12:15 | 趣味

北九州市立医療センター,医療ミスを謝罪(乳がん誤診)

b0206085_8383288.jpg◆ 報道(共同通信)

共同通信「乳がんと誤診、乳房切除 北九州市立医療センター」(8月18日)は,以下のとおり報じました.

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「北九州市立医療センターは18日、福岡県行橋市の50代女性患者を乳がんと誤診し、乳房を切除する医療ミスがあったと発表した。

 医療センターによると、女性は「乳房にしこりがある」と訴えて来院。50代の男性医師が2月に針を使った細胞検査をした際「細胞の増殖性が強い」として、乳がんとの診断結果をカルテに記載した。

 女性は3月15日に片方の乳房を切除したが、退院後、切除部分の組織検査で良性の腫瘍であったことが判明。医療センターは女性に経緯を説明し、謝罪したという。

 北九州市は今月16日付で男性医師を厳重注意処分とした。」


◆ 報道(NHK)

NHK「乳がんと誤診 乳房を摘出」(8月18日)は,以下のとおり報じました.

「ことし3月、北九州市の市立医療センターで検査を受けた50代の女性が誤って乳がんと診断され、片方の乳房を摘出されていたことが分かり、病院はミスを認めて女性に謝罪しました。

北九州市の市立医療センターによりますと、福岡県内に住む50代の女性がことし3月、胸にしこりがあるのに気づき、医療センターで検査を受けたところ、胸に腫瘍が見つかり、「乳がん」と診断されました。女性は片方の乳房をすべて摘出する手術を受けましたが、手術から2週間後に行った検査で、女性の腫瘍はがんではなく、乳房を摘出する必要がなかったことが分かりました。病院は、診断にミスがあったとして、手術からひとつき後に担当した50代の男性医師が女性に対していきさつを説明するとともに謝罪したということです。病院によりますと、腫瘍は悪性か良性かどうかの区別がつきにくいもので、担当した医師は、これまでの経験から悪性と判断しましたが、病院では結果的に診断ミスだったとして、医師を口頭で厳重注意としました。市立医療センターの有馬透副院長は「ミスが起きてしまい遺憾です。今後は診断を確実に行い、市民に安心して医療を受けていただけるよう努めます」と話していました。」


◆ 感想

本件のように,乳がんであると診断して切除後に乳がんでないことがわかり,医療過誤かどうか問題になることが,時々あります.他方,乳がんでないと診断し,乳がんを見逃したとして,医療過誤が問題とされることもあります.
どちらの場合も,結果的に間違っていたから医療過誤として賠償責任を負う,というものではありません.

本件は,難しい症例なのに,組織診を行わないで,細胞診だけで診断したことが問題でしょう.
また,その細胞検査をもとに,そのように診断したことが医学的に不合理でないか,も問題とされます.

本件は,腫瘍は悪性か良性かどうかの区別がつきにくいもので,担当した医師はこれまでの経験から悪性と判断したとのことですが,細胞診だけでは区別がつきにくいことがあり,また一人の医師の経験には限界があります.

たとえば,非浸潤がんと良性の乳頭腫・乳腺症との鑑別診断は難しいときがありますが,医学的に判断が難しいから過誤ではない,とは言えません.

医学的に難しいものは複数の医師で慎重に検討すべきですから,一人の医師だけで決めてしまわないことが大切だと思います.
多くの場合,病理学的検査(細胞診,針生検)とマンモグラフィ,超音波検査の所見を総合的に判断して確定診断をつけていると思いますが,判断に迷う難しい症例では,組織診を行い,外科医,病理医を含め,複数の医師で検討し,それでもわからないときは,より専門的な別の病院の医師にコンサルトすることも必要でしょう.

もし,どうしても確定診断ができない場合は,その旨患者に告げるべきでしょう.
このように慎重に検討すれば,厳密な意味での確定診断ができなくても,進行転移との兼ね合いで,切除という判断が合理的とされる場合もあります.(たとえば,子宮肉腫の可能性を7割と判断した場合,切除することが合理的な判断であり,むしろ切除せずに経過を見ていたことが注意義務違反になると思います.)

もちろん,本件で,医師がいきさつを説明し,医療ミスを認め,謝罪したのは,正しい対応だと思います.

【追記】

読売「悪性と誤診 乳房全摘、北九州市立医療センター」(8月19日)は,次のとおり報じました.

市病院局によると、3月15日、市立医療センター外科で、乳がんの疑いがある行橋市の女性(50歳代)を手術し、腫瘍がある片方の乳房を全摘した。しかし、その後の組織検査で、乳がんではなく、全摘する必要がなかったことが判明し、7月、女性側に謝罪した。
 病理診断科の男性医師が2月、採取された腫瘍の組織を検査した際、「増殖性が強いので悪性」と誤診し、外科医に伝えたという。今月16日に男性医師を口頭で厳重注意した。
 再発防止策として、病理診断で良性か悪性かの判断が難しい場合は、いずれの可能性もあることを伝えるよう徹底する。


毎日「誤診:乳房切除、50代女性と示談交渉へ--北九州市立医療センター /福岡」(8月19日)は,次のとおり報じています.

「市病院局などによると、女性患者は乳房にしこりを感じて行橋市内の医院を受診、同センターで精密検査を受けることになり2月、男性医師が針生検という検査で「悪性」と診断した。これに基づき3月、別の外科医が手術で乳房を切除し、確認したところ悪性ではなかったという。同センター事故調査委の調査を経て、医療安全管理委が医療ミスと認定した。

 誤診した男性医師は今月16日、市病院局長から口頭で厳重注意を受けた。市は再発防止策として、がん検査で良性か悪性かの判断が難しい場合は、報告書にその旨を記載し、本人や家族と相談するという。同センターの有馬透副院長は「このような事態を招き遺憾に思う。今後は一例一例確実な診断と治療を行いたい」と述べた。」


読売からは,病理医の判断であったこと,毎日からは,事故調査が行われたことが,それぞれわかります.

谷直樹
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by medical-law | 2011-08-19 01:44 | 医療事故・医療裁判

薬事・食品衛生審議会一般用医薬品部会,アレギサールなどのスイッチOTC承認

b0206085_2214750.jpgキャリアブレイン「アレギサールのスイッチOTC承認を了承- 薬食審一般用医薬品部会 」(8月18日)は,次のとおり報じています.

「厚生労働省の薬事・食品衛生審議会(薬食審)一般用医薬品部会は8月18日、田辺三菱製薬の抗アレルギー薬アレギサールのスイッチOTC(医療用から一般用への転用)など3品目の承認の可否を審議し、承認を了承した。

 医療用のアレギサールの用法・用量は、アレルギー性鼻炎に対して1回5mgを1日2回、気管支喘息に対して1回10mgを1日2回となっている。今回スイッチOTCとして承認された効能・効果は「花粉・ハウスダスト(室内塵)などによるくしゃみ、鼻みず、鼻づまりなど鼻のアレルギー症状の緩和」で、用法・用量は1回5mgを1日2回。承認条件は3年間の市販後安全性調査。

 このほか、一般用医薬品部会が承認を了承したのは、抗アレルギー成分のケトチフェンに血管収縮成分のナファゾリンを配合した、新配合の点鼻薬パブロンアレスト点鼻/パブロン点鼻クイック(大正製薬)と、解熱鎮痛成分であるイブプロフェンの1日最大服用量を600mgとした新一般用医薬品の内服薬ナロンホワイト600/イブプロフェン600大正(大正製薬、販売名を変更することが承認条件)。

 また、厚労省は胃酸分泌抑制薬オメプラゾール、糖吸収抑制薬アカルボースなどのスイッチOTCに対する医学会の反対意見を15日に公表したが、担当者は、部会での審議日程について「できれば11月の部会に間に合わせたいが、現時点では未定」と話している。」


スイッチOTCの勢いは加速しているようです.
ちなみに,一般用医薬品部会の委員は下記のとおりです.

阿曽幸男 国立医薬品食品衛生研究所薬品部第二室長
岩月進 (有)ファーマケア、ヨシケン岩月薬局代表取締役
生出泉太郎 社団法人日本薬剤師会副会長
小澤明 東海大学医学部専門診療学系皮膚科学教授
川原信夫 独立行政法人医薬基盤研究所薬用植物資源研究センター長
鈴木邦彦 社団法人日本医師会常任理事
宗林さおり 独立行政法人国民生活センター商品テスト部長
西澤良記 公立大学法人大阪市立大学理事長・学長
橋田充 国立大学法人京都大学大学院薬学研究科教授
廣江道昭 独立行政法人国立国際医療研究センター病院循環器科・内科部門診療部医師
福島紀子 慶応義塾大学薬学部社会薬学教授、附属薬局長
藤原英憲 つちばし薬局代表取締役
村島温子 独立行政法人国立成育医療研究センター妊娠と薬情報センター長・母性医療診療部長
◎望月正隆 東京理科大学薬学部教授
望月眞弓 慶應義塾大学薬学部医薬品情報学教授
吉山友二 北里大学薬学部教授
 (敬称略,五十音順)
 ◎ 部会長 

谷直樹
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by medical-law | 2011-08-18 22:07 | 医療