弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

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東京地裁立川支部平成23年9月22日判決(産科事故)

b0206085_16303697.jpg朝日新聞「産婦人科医に賠償命令=新生児死亡で責任認定―東京地裁支部」(2011年9月22日)は,以下のとおり報じています.

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「出産を間近に控えた妻=当時(36)、中国籍=が体調不良を訴えたにもかかわらず、適切な処置を怠ったため妻と生後間もない次男が死亡したとして、中国残留孤児2世の男性(42)らが東京都国立市の産婦人科医らを相手に、約1億1400万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が22日、東京地裁立川支部であった。市川正巳裁判長は「早期に帝王切開していれば、次男は健康な状態で生まれてくることができた」として、医師らに計約4550万円の支払いを命じた。

 判決によると、男性の妻は2005年1月28日朝から高熱や下痢、頭痛などの症状があり、劇症型感染症の疑いがあったが、産婦人科医はウィルス性胃腸炎と診断。その後、胎児の脈拍などを記録する「分娩(ぶんべん)監視装置」を妻に装着し、最高毎分190回超という異常な脈拍数を測定した際も、母体への酸素投与など必要な措置を取らなかった。

 次男はその約2時間後に仮死状態で生まれ、死亡しており、市川裁判長は「脈拍数を把握した時点で帝王切開をしていれば、次男の命は救えた」と認定した。」
 

分娩監視装置の胎児心拍基線は,110~160bpmが正常(整)脈で,本件は胎児頻脈の事案のように思われます.胎児頻脈の原因は,胎児低酸素症で,母体発熱等があり,総合的な判断を必要とします.
この判決の根拠は,胎児心拍モニターと具体的な臨床経過(劇症型感染症の疑いのある母体の状態)でしょう.
判決は,母体の感染症の事案等で参考になりますので,判例集に掲載されたら,熟読したいと思います.

谷直樹
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by medical-law | 2011-09-23 16:21 | 医療事故・医療裁判

トロイ・アンソニー・デイビスは,9月21日23時8分に処刑されました.

b0206085_2531482.jpg1989年8月,ジョージア州サバナのファストフード店の駐車場で,白人の男性警官が射殺されました.
黒人トロイ・アンソニー・デイビスが逮捕され,弁護人なしで審理され,死刑の判決を受けました.

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エイミー・グッドマン「トロイ・デイビスと死の政治」は,次のとおり述べます. 

トロイ・デイビスには、ストライクが3つ重なった。 アフリカ系アメリカ人であることで、ワンストライク。 白人の警察官殺しの嫌疑だったことで、ツーストライク。 3つ目のストライクは、ジョージア州にいたことだ。」

有罪判決後,警察官以外の証人9人のうち7人が警察に脅され無理強いされていたとして証言を撤回しました.
トロイ・アンソニー・デイビスを有罪とする物的証拠はありません.
証言を撤回していない証人の一人シルベスター・レッド・コールズが真犯人だという証人も数人います.
それでも,トロイ・アンソニー・デイビスの死刑は執行されました.

米国南部の黒人差別と,米国司法の暗黒を示唆する出来事と思います.
本当に残念です.

谷直樹
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by medical-law | 2011-09-23 02:40 | 司法

遺族,大阪府の警察官と警察医が病理解剖を制止したとして損害賠償請求訴訟を提訴

b0206085_354692.jpg

◆ 事案

新聞報道によると,経過は次のとおりのようです.

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男性(31歳)は,平成22年4月、大阪府豊中市の自宅浴室で倒れ、搬送先の病院で死亡が確認されました.
病院で大阪府警豊中南署の警察官と警察医が検視し,肺化膿症による急性呼吸不全を死因としました.
この死因に疑問を抱いた遺族が病理解剖を求めたところ、警察官と警察医から「事件性がないため解剖できない」と病理解剖を制止され,病理解剖が実施されませんでした.

男性の両親が大阪府と警察医に計330万円の損害賠償を求める訴訟が提訴され,第一回口頭弁論期日で,被告側は請求について争う旨答弁しました.

msn産経「病理解剖制止は不当 遺族、大阪府を提訴」(平成23年9月22日)ご参照

◆ 感想

病理解剖は,医学医療の真実を明らかにするために行われます.
病理解剖は,事件性(犯罪の疑いがあること)を要件としません.
事件性がないという理由で病理解剖を制止するという論理は成り立ちません.

他方,司法解剖は,遺族の同意は不要で,事件性(犯罪の疑いがあること)を必要とし,裁判所の許可状に基づき実施します.
警察官と警察医が,この病理解剖と司法解剖を混同するとは,およそ考えられませんし,警察官らには病理解剖を制止する権限はありません.

遺族が同意し,病院が医学医療の真実を明らかにするために病理解剖を行おうとしているときに,警察官らが病理解剖を行わないよう制止するとは思えないのですが,でもあの大阪府警ですから...

谷直樹
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by medical-law | 2011-09-23 00:28 | 医療事故・医療裁判

スモークフリーキャラバン,奈良新聞等に掲載

b0206085_3165819.jpg◆ 20日滋賀県

アミンチェテレビBB「スモークキャラバン隊が来県」(平成23年9月20日)は,次のとおり報じています.

「受動喫煙防止条例の制定などを呼びかけるキャラバン隊が20日に近江八幡市立総合医療センターを訪れ、これまでの活動内容を報告しました。
この「スモークフリーキャラバン隊」は飲食店や公共施設で禁煙もしくは分煙を義務化した神奈川県の「受動喫煙防止条例」の制定を受けて発足したもので、現在兵庫県での条例制定に向けて支援活動を行なっています。
キャラバン隊は20日近江八幡市立総合医療センターで活動内容を報告し、この中でキャラバン隊のメンバーで前の神奈川県議会議員の関口正俊さんが「兵庫の次は京都、そして滋賀で受動喫煙防止条例が制定されれば」と滋賀での条例制定に向け、病院関係者らに協力を要請しました。
JT日本たばこ産業によりますとタバコの値上げと健康に対する意識の高まりで、全国の喫煙者率は年々減り続け、2009年では男性が38・9%、女性は11・9%となっています。」


◆ 21日奈良県

奈良新聞に,「受動喫煙からの解放を - 奈良などで交流/スモークフリーキャラバン隊」(2011年9月22日)と報じられました.

「全国で初めて受動喫煙防止条例(平成22年4月施行)を制定した神奈川県から、市民運動「スモークフリーキャラバンの会」の一行が21日、県庁や奈良市、橿原市、県医師会を訪れ、首長や市民と意見交換した。

 スモークフリーは「煙から解放されて自由になる」という意味で、キャラバン隊は17日に神奈川県を出発し、各府県で啓発・交流しながら、同様の条例制定を目指す兵庫県に向かっている…」


キャラバン隊長の渡辺文学さん,颱風で大変だったと思います.もう少しですので,頑張ってください.


【追記】

◆ 22日和歌山

わかやま新報「受動喫煙の防止へ 2団体が県に条例制定要望」(平成23年9月24日)は,次のとおおり,報じています.

「全国各地で受動喫煙防止条例の制定を目指す「スモークフリーキャラバンの会」(東京都、平間敬文会長)は22日、同条例を和歌山でも制定してもらおうと、仁坂吉伸知事に要望書、県議会の新島雄議長に陳情書を提出した。市民団体「たばこ問題を考える会・和歌山」(畑中孝之代表世話人)と連名。

この日、県庁を訪れた両会のメンバーら約10人は、昨年全国で初めて神奈川県が公共施設内の受動喫煙防止条例を施行したことから、「和歌山県内でも同様の条例を施行してほしい」 と要望。 畑中代表世話人(66)は、一日50本のたばこを13年間吸い続けた結果、声帯にがんができて苦しんだ経験を振り返り、「自分と同じ思いを人にしてほしくない」と力強く訴えていた。

スモークフリーキャラバンの会は17日に横浜市を出発し、23日の神戸市まで全国9府県を回った。」



スモークフリーキャラバン,9月17日横浜を出発,神戸へ向かいます」ご参照

谷直樹
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by medical-law | 2011-09-22 14:30 | タバコ

茨城県医師会,早稲田大学医学部新設誘致に反対表明

b0206085_13561986.jpg読売新聞「医学部誘致なら医師不足に…という医師会の理屈」(平成23年9月22日)は,次のとおり報じています.

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「医学部誘致を公約とする茨城県の橋本知事が早稲田大学(鎌田薫総長)に新設医学部の誘致を打診したことについて、県医師会(斎藤浩会長)は21日、水戸市の県メディカルセンターで記者会見を開き、教員確保で全国の医師不足に拍車をかけるなどとして、医学部の新設・誘致は不適当と批判した。

 斎藤会長は18日に知事に会い、「おやめなさい」と進言したことも明らかにした。

 医学部の新設・誘致に反対する理由として、県医師会は「教員確保のために医師を集めれば全国の医師不足に拍車をかける」「既存医学部で入学定員の増加を図っている」「中小医療施設や有床診療所などの経営に影響する」「医学生は卒業後に出身地へ戻る可能性もあり県の医師不足解消にならない」の四つを挙げた。

 県医師会によると、医学部の入学定員は、1981~84年度に年8280人だったが、その後の抑制政策で2003~07年度は年7625人に減少した。04年度に始まった臨床研修制度で大学に医師が残らず、都市部の医療機関などに流れたことで地方の医療機関への医師配置システムが崩壊し、各地で医師不足が顕在化した。

 県内の医師数(2008年)は人口10万人当たり162・1人で、埼玉県に次いでワースト2位。二次医療圏別では、筑波大のあるつくば医療圏の同342・3人に対し、県北の常陸太田・ひたちなか医療圏は同90・9人と3分の1にも満たず、偏在も問題になっている。医師確保を県の喫緊の課題とする橋本知事は、09年8月の知事選で医学部誘致を公約とした。

 一方、国は08年度から医学部の入学定員の増員や、地域枠などを設ける医師確保策を講じており、県医師会の小松満副会長は「ハコモノを造れば壊すことはできない。融通性のある既存のシステムを維持すべき」と述べた。また、少子高齢化や人口減少の影響にも触れ、斎藤会長は医学部を新設すれば医師過剰になる恐れもあるとし、「大きな禍根を残す」と批判した。

 早大誘致を巡っては、橋本知事が6月下旬、鎌田総長に宛てて、医学部新設の際の県内立地を求める文書を提出。中央病院、こころの医療センター、リハビリテーションセンターなど県立の医療施設が近接する笠間市の県畜産試験場跡地(約35ヘクタール)をキャンパス候補地に挙げ、教育、研究に各施設を活用してほしいとの協力姿勢を示している。」


これは,さんざん言い尽くされた理屈です.
医師会は,では,他にどのような方法で,茨城県の医師不足を解消するのか,具体的な提案をしていただきたい,と思います.
医師偏在の解消策と医師総数の増員策は,どちらかではなく,両方が必要と思います.
医学部を誘致してもどうせ茨城県に医師は残らない,と決めつけるのではなく,どうすれば茨城県に医師が残るのか,を対策を考えることが必要と思います.

谷直樹
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by medical-law | 2011-09-22 13:23 | 医療

プラザキサ,間質性肺炎で注意喚起

b0206085_2371775.jpg

キャリアブレイン「プラザキサ、間質性肺炎で添付文書改訂- 厚労省指示」(平成23年9月20日) は,次にとおり報じています.

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「厚生労働省は9月20日、抗凝固薬プラザキサ(日本ベーリンガーインゲルハイム)や抗血小板薬プラビックス(サノフィ・アベンティス)など13件について、添付文書の「使用上の注意」を改訂するよう関係企業に指示した。「重大な副作用」の項に、プラザキサは「間質性肺炎」を、プラビックスは「胃・十二指腸潰瘍」をそれぞれ追記するよう求めた。

 プラザキサは今年3月14日の発売以降、「間質性肺炎」7例(うち因果関係が否定できない症例2例)、これによる死亡4例(同0例)が報告された。
 プラザキサをめぐっては、発売から8月11日までに、因果関係の否定できない出血性副作用による死亡が5例報告されたため、同月に添付文書に「警告」の項を新たに設け、注意喚起を行っている。

 プラビックス(2006年5月発売)については、直近3年で「胃・十二指腸潰瘍」36例(同20例)の報告があった。死亡例はなかった。」


プラザキサは,アメリカ,カナダに続いて日本で承認されました.日本は世界で3番目にプラザキサを承認した国です.申請から承認までわずか10か月というのも,異例でした.

経口直接トロンビン阻害薬ダビガトラン(商品名プラザキサ)は,出血死が報告され,添付文書が改訂され,出血リスクを正確に評価できる指標は確立されていない等の記載がなされたばかりです.さらに,今度は,間質性肺炎についても注意喚起が求められました.

プラザキサの出血死の症例については,医師が注意し慎重に使用しても回避できないようなものも含まれているように思います.日本ベーリンガーインゲルハイムの言い分を鵜呑みにはできないと思います.

厚労省,血液凝固阻止剤「プラザキサカプセル」服用患者での死亡5例公表」ご参照

週刊ダイヤモンドのダビガトラン(商品名プラザキサ)の記事について」ご参照

谷直樹
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by medical-law | 2011-09-22 01:43 | 医療

日病,「診療行為による死亡・事故の原因究明制度の在り方に関する中間報告」を近日発表

b0206085_19744.jpg◆ 報道

キャリアブレイン「医療事故調は三部構成、日病が近く中間報告」(平成23年9月20日)は次のとおり報じています.

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「日本病院会(日病、堺常雄会長)は9月17日の常任理事会で、医療安全確保推進委員会がまとめた、診療行為による死亡・事故の原因究明制度の在り方に関する中間報告案について議論した。中間報告案では、制度の基本的な考え方を示し、死亡・事故の原因を究明する「医療事故調査委員会」については、院内、外部(地方)、常設委員会の三部構成とした。この日の議論を踏まえ、同委でさらに検討を進めた後、近く中間報告が公表される予定。

 中間報告案では、▽医療事故・死等の原因を医学的に究明し、結果を教訓として医療事故防止を追求することは医療者の社会的責務である▽医学的な原因究明と再発防止を制度の趣旨とし、司法の判断、賠償問題の判断は別組織に委ねる―とする制度の基本的な考え方を明示した。
 また、医療事故調査委員会については、▽院内医療事故調査委員会(事故の当該医療機関として詳細な報告書を作成する)▽外部(地方)事故調査委員会(事故を外部の医療従事者や専門家が分析・評価する)▽中央事故調査委員会(常設組織。医療関係者以外の意見も加え、最終的に事故を分析・評価する)―の3段階とする方向性を打ち出した。
 常任理事会後の記者会見で堺会長は、「これをまとめたのは、無過失補償制度の話が出る前で、それに関しては別途検討する必要がある」との考えを示した。」


◆ 感想

日病(社団法人日本病院会)は,正会員数2,394病院(平成23年8月)で,日本の病院の全ての経営主体が参加する組織です.
その日病が,中間報告案であっても,「医療事故・死等の原因を医学的に究明し、結果を教訓として医療事故防止を追求することは医療者の社会的責務である」と認めたことは,大きな意味があると思います.

目先の訴訟防衛,刑事責任回避を旨として制度設計を行っていたら,医療の質が低下し,患者の安全が損なわれ,さらなる訴訟防衛,刑事責任回避を必要とする悪循環に陥ります.その意味で,「医学的な原因究明と再発防止を制度の趣旨とし、司法の判断、賠償問題の判断は別」というのも正しい方向だと思います.

日病の中間報告に期待いたします.

谷直樹
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by medical-law | 2011-09-21 00:58 | 医療

10月22日,患者の権利法をつくる会設立20周年記念シンポジウム~みんなの医療基本法

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基調報告 設立20年の歩みと患者の権利
報告者 小林洋二さん(弁護士、患者の権利法をつくる会事務局長)

パネルディスカッション
 コーディネーター 
   鈴木利廣さん(弁護士、明治大学法科大学院教授)

 シンポジスト
   伊藤雅治さん(社団法人全国社会保険協会連合会理事長)
   加部一彦さん(愛育病院新生児科部長)
   小西洋之さん(参議院議員)
   桜井なおみさん(NPO法人HOPEプロジェクト理事長)
   辻純一郎さん(昭和大学教授、医薬品企業法務研究会)

開場:13時00分
時間:13時30分~16時30分
会場:明治大学駿河台キャンパス・リバティタワー1011
主催:患者の権利法をつくる会


是非,ご参加を!

谷直樹
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by medical-law | 2011-09-20 16:21 | 医療

「診療行為に関連した死亡の調査分析モデル事業」,佐賀県でも開始

b0206085_17393229.jpg朝日新聞「医療ミス?第三者の目 客観評価で再発防止期待 佐賀」(2011年09月20日)は,次のとおり報じています.

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「病院で医療行為中に患者が死亡した場合、医療ミスかどうかの判断を裁判や警察などにゆだねず、第三者の評価委員会が医療行為の是非を検証する「診療行為に関連した死亡の調査分析モデル事業」が今月、県内でも始まった。まだ適用はないが、遺族は医療ミスの有無や死因を客観的に知ることができ、医療機関は再発防止策を取ることができると期待されている。

 2日夜、佐賀市新中町の県医師会。福岡県で事業の世話人を務める福岡東医療センター研究教育部長の居石(すえ・いし)克夫医師(66)が、医師や弁護士を前に講演した。「患者は『医療は完全なもので、予期せぬ結果は医療ミス』と思っている。患者の不信感を招くと、(医療者と)コミュニケーション不足になり、悪循環だ」。中立的な機関が介入する必要性を語った。

 事業は2005年、厚生労働省の補助事業として始まり、九州では07年に福岡県で導入された。今年8月末までに、全国の10地域で145件の症例を扱った。一般社団法人「日本医療安全調査機構」が担う。

 死亡事案が起きた場合、医療機関が機構に依頼して事業が始まる。中立性を保つため、解剖は患者が死亡した所とは別の病院で行う。県内では、死体の画像診断ができる佐賀大医学部付属病院(佐賀市)のAi(エー・アイ)センターを利用することもある。結果は報告書にまとめてホームページで公開し、再発防止につなげる。費用は全て機構が負担する。

 県内での司法解剖件数の増加も、事業が始まった背景の一つだ。医療ミスによる死亡で解剖が必要な場合、警察は司法解剖で捜査に当たる。県警によると、10年の司法解剖数は62体。年々増加傾向にあるが、県内にいる嘱託解剖医は1人だけ。事業で病理解剖をすることで、司法解剖医の負担を軽くする。
 時間を短縮する効果もある。医療過誤の訴訟は判決まで数年かかることが少なくないが、事業なら平均10カ月で報告書ができる。

 評価委のメンバーには医療者も含まれるが、これまでの報告書では「電子カルテの記載が簡潔すぎる。もう少し詳細に記載した方がよい」「手技(医療技術)の改善が望まれる」など、厳しい意見もあった。

 居石医師によると、約7割の遺族が報告書に納得するという。しかし一部には、報告書を不満として訴訟になったケースもある。佐賀大医学部病因病態科学講座の徳永蔵(おさむ)教授(64)は「司法解剖では詳細な結果は全て公表されないが、事業で結果を明らかにし、医療の透明化が進むことを期待したい」と話している。

 過去の報告書は、機構のHP(http://www.medsafe.jp/index.html)で公開中。問い合わせは、佐賀支部事務局がある県医師会(0952・33・1414)へ。(伊豆丸展代)」


「医療ミス?・・・」という標題はあまり適切とはいえません.

医療の質の向上と患者の安全のためには,診療行為に関連した死亡について,臨床面及び法医学・病理学の両面からの解剖所見に基づいた正確な死因の究明と,診療内容に関する専門的な調査分析とに基づき,診療上の問題点と死亡との因果関係とともに,同様の事例の再発を防止するための方策が専門的・学際的に検討され,広く改善が図られていくことが必要です.
そのための事業が,「診療行為に関連した死亡の調査分析モデル事業」で,北海道,宮城,茨城,東京,新潟,愛知,大阪,兵庫,岡山,福岡で行われてきました.
1件100万円弱かかるということで,本年4月に北海道と東京に縮小しようとの動きもありましたが,その意義から継続となった経緯があります.

私は,相談者が「報告書」をもってきた例もいくつか経験しており,事実が解明され,病院側と遺族に事実についての共通の認識が得られたことで,紛争化の防止にも役立ちました.

この事業は,地域を拡大し,さらにすすめていってほしいと思います.

もし,内科学会を中心とするモデル事業が頓挫すると,警察庁が「犯罪死の見逃し防止に資する死因究明制度の在り方に関する研究会」を立ち上げていますので,警察が犯罪死か否かの観点から死因究明を行うことになるでしょう.

谷直樹
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by medical-law | 2011-09-20 15:34 | 医療

世界保健機関報告書,生活習慣や喫煙,飲酒に起因する非伝染性疾患に警鐘

b0206085_1744882.jpgCNN「生活習慣に起因する疾患、世界の筆頭死因に WHO」(2011年9月19日)は,次のとおり報じています.

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「世界保健機関(WHO)は18日、がんや糖尿病など生活習慣に起因する非伝染性疾患に関する報告書を発表した。こうした疾患による死者を減らすため、たばことアルコールに対する課税、公共の場の禁煙区域設置、食品に含まれる塩分とトランス脂肪酸の削減、健康的な食生活と運動を促すキャンペーンの推進を各国に提言している。

報告書では、生活習慣や喫煙、飲酒に起因する非伝染性疾患の患者は富裕国でも貧困国でも発生していると警鐘を鳴らした。

心疾患、がん、肺疾患、糖尿病による死者は世界で年間3600万人に上り、死亡原因の筆頭になっている。世界経済フォーラムと米ハーバード大学公衆衛生校の研究によると、もしこのままのペースが続いた場合、低・中所得の国々が2011~25年にかけて被る損失は推定約70兆円に上る恐れがある。

低・中所得の国々では栄養不良や感染症も問題になっており、WHOの専門家は「医療費負担のために毎年1億人が貧困に追い込まれている」「医療費の大半を、心臓血管系の疾患や脳卒中、肺疾患、糖尿病、がんなどの非伝染性疾患が占める」と指摘する。

国連総会は19日と20日の2日間にわたり、この問題について討議する。健康問題が議題になるのは、国連総会史上これが2度目だという。」


生活習慣という言葉は便利に使われていますが,(1)喫煙,(2)飲酒,(3)食品に含まれる塩分とトランス脂肪酸の削減,(4)健康的な食生活と運動について具体的に考えることが重要と思います.

谷直樹
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by medical-law | 2011-09-20 01:48 | タバコ