弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

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銀座眼科元院長に禁固3年求刑

b0206085_19573013.jpg2008年10月以降感染報告が続きましたが,銀座眼科元院長は消毒などの感染予防を行わず,その結果67人の患者が2009年2月までに感染しました.
また,元院長の説明,手術内容にも問題があったようです.

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元院長は,2019年12月7日逮捕され,同月27日業務上過失傷害罪で起訴されました.立件は7人の患者に絞り込まれています.今日,その事件の求刑がありました.

なお,医師を逮捕し,起訴することについては反対する意見もありますが,元院長は証拠隠滅を図っていましたので逮捕は正当で,また悪質な行為内容・重大な加害結果から起訴も相当と考えます.

◆ 報道

msn産経「レーシック手術集団感染 元院長に禁固3年求刑 東京地裁」(平成23年9月1日)は,次のとおり報じています.

「近視矯正のレーシック手術で患者7人に感染症を発症させたとして、業務上過失傷害罪に問われた銀座眼科(閉鎖、東京都中央区)元院長で医師、××××被告(49)の論告求刑公判が1日、東京地裁(近藤宏子裁判官)で開かれた。検察側は「ずさんかつ軽率な診療を行い、過失は極めて重大」として、禁錮3年を求刑した。判決は28日に言い渡される。

 検察側は論告で、××被告が患者の増加に伴い医療器具の洗浄方法などを変更し、十分な滅菌を行わなくなったと指摘。昨年12月の逮捕前には関係者の口止めや証拠隠滅工作を行ったとして、「情状は悪質」と主張した。

 弁護側は最終弁論で、これまでに重大な医療事故を起こしていないことや被害弁償の意向を示していることなどを挙げ、寛大な判決を求めた。

 論告求刑に先立って、被害者参加制度に基づき、患者らによる被告人質問も行われた。利益優先で衛生管理が後回しになっていたことについて患者から問われ、××被告は「経営を続けるうちに、悪魔の気持ちが芽生えた」などと答えていた。」


◆ 感想

「被害弁償の意向を示している」というのは,事件が発覚してだいぶ時間が経っているのに被害弁償を未だに行っていないことを意味します.被告人が単に被害弁償の意向を示しただけでは,寛大な判決につながらないでしょう.
行為態様は悪質ですし,加害結果は重大ですので,元院長にはそれ相応の刑がふさわしいように思います.
厳正な判決を期待します.

谷直樹
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by medical-law | 2011-09-01 19:45 | 医療事故・医療裁判

埼玉県,今日から地域がん登録開始

b0206085_1848292.jpg埼玉県は1日から、「地域がん登録」を始める,と報じられて」います.

同様に地域がん登録を今年度から始める東京都と連携して,情報を共有しあうことで十分なデータの収集に努め,データの分析は国立がん研究センターにも協力してもらう方針とのことです.

読売新聞「埼玉県、がん患者のデータ集約 医療機関、都と連携」ご参照

都道府県レベルの「地域がん登録」では,参加しない地域が残りますので,日本国民のがん患者の実態を把握するため,本来,国レベルで取り組むべき事業と思います.
なお,個人情報保護法と抵触する問題ではありません.

谷直樹
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by medical-law | 2011-09-01 18:28 | 医療

甲府市立甲府病院,推奨基準を超える量のテクネチウムを投与,子どもが内部被曝

b0206085_18325100.jpg朝日新聞「検査で子ども150人が過剰被曝 甲府の病院」(平成23年8月31日)は,次のとおり報じています.

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「甲府市立甲府病院(小沢克良〈かつら〉院長)の放射性物質(放射性同位元素)を使った検査で、日本核医学会などが勧告する基準を超える同位元素が投与され、子ども約150人が過剰に内部被曝(ひばく)していたことがわかった。同病院は1日、会見を開き、調査結果を公表する予定。

 複数の関係者によると、原因は放射性物質「テクネチウム」を使った検査。これが入った検査薬を患者に静脈注射する。

 同病院で1999年から今年までにこの検査を受けた15歳以下の子どもに同医学会や日本放射線技師会など複数の推奨基準を超える量のテクネチウムが投与された。うち40人が10倍以上だった。

 過剰投与された子どもたちの全身の内部被曝線量を算出すると生涯の推計で平均約30ミリシーベルト。多い子で150ミリシーベルト以上だった。

 患者に何らかの利益がある医療被曝と何の利益もない原発事故の被曝は単純に比較できないが、福島県による東京電力福島第一原発周辺の住民の検査では、これまで全員が生涯の内部被曝線量(推計)が1ミリシーベルト未満だった。

 全身の被曝線量が100ミリシーベルトを超えると成人でもがんのリスクが高まる恐れがある。子どもは放射線の健康影響を3倍以上受けやすい。ただし、今回は間隔をあけて複数回の検査を受けた子も含まれることなどから、検査直後に健康被害が出る被曝線量ではないとみられている。 」



今日の会見を待ちましょう.

【追記】

朝日新聞「過剰被曝「チェック態勢、機能せず」 甲府病院副院長」 (平成23年9月1日)は,下記のとおり報じました.

「放射性物質(放射性同位元素)を使った検査で子どもが基準を超える放射性物質を投与され、過剰に内部被曝(ひばく)していた問題で、甲府市立甲府病院(小沢克良〈かつら〉院長)は1日、検査薬のチェック態勢が機能していなかったことを認めた。

 また、山梨県が8月31日、放射性物質の検査薬の使用記録簿の管理に不備があるとして、指導していたことがわかった。

 同病院では、50歳代の男性放射線技師が責任者として担当しており、独自の判断で、日本核医学会などの推奨する基準を超える放射性物質が入った検査薬を投与していたという。

 過剰投与が10年以上続いていた背景について、医療安全担当の渡辺健二副院長は記者団の質問に対し「監査システムがうまく機能していなかった。台帳に投与量を記載することになっているが、保険請求上の数値を書いていたため、わからなかった」と話している」。


読売新聞「子どもへ基準超す放射性物質投与…市立甲府病院」(平成23年9月1日)は,下記のとおり報じました.

「甲府市立甲府病院(甲府市増坪町)が1999年5月から今年4月にかけて、腎臓疾患を患っている15歳以下の子どもへの放射性物質を使った検査で、日本核医学会が推奨する基準値を超える放射性物質を投与していたことが1日、同病院への取材で分かった。

 過剰投与を受けていたのは84人。同学会などが定めるガイドラインでは投与量を医師が決めることになっているが、50歳代の男性の放射線技師が独断で決めていた。

 小沢克良院長らによると、検査に使われたのは人工の放射性物質「テクネチウム99m」を含んだ薬剤。薬剤は腎臓に集まりやすい性質があり、患者の静脈に注射し、放射性物質を投影するカメラで撮影すると、画像から腎臓の形などがわかる。成人に対する日本核医学会の推奨投与量は最大185メガ・ベクレルで、15歳未満に対しては年齢によって量を減らすことになっている。

 しかし、技師は医師に相談せず、15歳以下の患者84人に対し、成人に対する推奨量を超えるテクネチウム99mを投与していた。このうち、年齢に応じた投与推奨量の10倍を超えていた子どもは41人いた。全身の内部被曝(ひばく)量は最大180ミリ・シーベルトが予測される子どももいたという。」
 

この放射線技師は,危険性について無警戒で,基準を超えることについて何も考えていなかったようです.
そもそも,放射線技師が決めていたということにも,驚きました.
注意義務違反の程度は,きわめて重大です.

【再追記】

読売新聞「「放射性薬剤投与」改ざん、12年気づかず…山梨 市立甲府病院長 技師任せ謝罪」(平成23年9月2日)は,次のとおり報じました.

「12年間にわたり、基準値を超える「テクネチウム99m」が15歳以下の子ども84人に投与されていた山梨県甲府市立甲府病院では1日、小沢克良院長が記者会見を開き、謝罪した。

 責任者の男性放射線技師(54)が独断で投与量を決め、医師が実態を把握せずに現場任せとなっていたことも明らかになった。

 小沢院長は会見の冒頭、厳しい表情を浮かべながら「医療被曝(ひばく)を減らすよう努力するのが病院の使命なのに組織体制が不十分だった。患者とその家族には心からおわびを申し上げたい」と頭を下げた。

 会見に同席した野方容子放射線部長は「私が現場に任せきりだったのが一番問題だったと思う。投与する時に確認すべきだった」と釈明した。今後の対策として、日本核医学会のガイドラインに基づいて検査薬品の基本投与量を決めるとともに、医師が適正な投与量を指示するように改めるという。男性技師は現在、現場を離れて事務作業を担当しているといい、今後の処分については市に一任するという。病院は、過剰投与が明らかになった84人のほかに、放射性物質を使った検査を受けていた61人の子どもについても通知を出し、無料の個別相談を受け付ける方針だ。

 宮島雅展・甲府市長は、市立甲府病院で不適切な検査が行われていたことについて、「患者とご家族の皆様に心配をおかけし、心からおわび申し上げる。個別に健康相談などを実施し、管理態勢を強化したい」とのコメントを発表した。

専門家「常軌逸した量」
 核医学検査に詳しい専門家らからは、「核医学検査の信頼を失いかねない」などと危機感を募らせる声が相次いだ。核医学検査と被曝の関係に詳しい埼玉医大総合医療センター放射線科の本田憲業教授によると、子どもの場合、放射性物質の投与量は年齢や体格から個別に計算するが、基本的には必ず医師が関与しており、放射線技師が独断で行うことは考えにくいという。本田教授は「検査による被曝は診断が可能な画質が得られる最低限の線量に抑えるのが大原則。今回のような事態は、核医学検査の信頼性を失いかねない深刻な事態」と語った。

 日本放射線技師会長の中沢靖夫・昭和大学統括放射線技術部長は「画像が見えにくい場合は専門医師に相談して、投与量を増やすかどうか決めるのが原則。放射線技師が単独で薬を増やすということはあり得ず、これほどの異常な被曝線量になることは考えられない」と話し、日本放射線技師会として調査委員会を設置する考えを示した。

 推奨量の10倍のテクネチウム99mが投与されていたことについて、山梨県立中央病院の宮崎旨俊・放射線技師長は「(10倍は)常軌を逸した数字。健康への影響については専門家の間でも意見が割れており、現時点での評価は難しい」としている。」


どうしてこのようなことが起きたのか,日本放射線技師会が設置する調査委員会の調査に期待いたします.
また,病院は,個別に,どの患者がどの程度の被曝をしたのかを明らかにしてほしい,と思います.
そして,それぞれの内部被曝量をもとに,健康被害への影響がどの程度予測されるのか,これからできる健康被害を最小にする方法はあるのか,専門家がきちんと答えをだしてほしいと思います.

谷直樹
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by medical-law | 2011-09-01 09:52 | 医療

「産科医療補償制度」でわかってきたこと

b0206085_971031.jpg弁護士は,訴訟で本人を代理するだけの人ではありません.
患者側弁護士は,訴訟よりむしろ訴訟前に解決すること目差しています.
さらに,医療事故をなくすることを目的として活動しています.
そして,「産科医療補償制度」は,事故防止に役立ちそうで,期待がたかまっています.

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読売新聞医療情報部・高梨ゆき子氏が,「[解説] 産科医療補償制度…診療の基本、逸脱次々  事例検証重ね再発防止を」(平成23年8月31日)を書いています.

事例の多くで基本的な診療に問題があることがわかり,全国の医療機関に報告書が配布され、注意喚起されたことが,事故を減らすための第一歩になったのではないか,と述べています.一部を紹介いたします.

「今回検討の対象となったのは、10年末までに補償が決まった108件のうち分析が終わった15件。その結果、〈1〉胎児心拍数の確認など出産の安全管理が不十分(8件)、〈2〉新生児蘇生法に問題(7件)、〈3〉陣痛促進剤の使い方が日本産科婦人科学会の診療指針を逸脱(6件)――などの問題があった。複数の問題が指摘された事例もある。

 報告書をまとめた再発防止委員会の池ノ上克(いけのうえつよむ)委員長(宮崎大病院長)は「極めて基本的なことがきちんと守られていない」と話した。これらの問題が、脳性まひの原因とは必ずしも言えないが、「守っていれば、危険にもっと早く気づけたかもしれない」(池ノ上委員長)と指摘がある通り、基本の順守が安全性を高めるであろうことは明らかだ。

 陣痛促進剤の使い方など、これまでも同学会が指針順守を求めてきたにもかかわらず、守られていない。現場では、必ずしも指針通りでない臨機応変な対応が必要となる場面もあるだろうが、第三者の専門家から見ても納得のいくものでなければならない。

 この15例のうち2例は、同じ医療機関で起きたという。前例に学び診療を見直していれば、少なくとも2度目は起こらずに済んだ可能性がある。これについても、さらに十分な検証が行われるべきだ。

 制度ができる前、「産科は特に、診療に問題がなくても結果が悪いと訴えられる」という医療側の嘆きをしばしば耳にした。それが、無過失補償制度が検討されるきっかけとなった。

 しかし、今回の事例を見る限り、必ずしもそうとばかりは言えないようだ。一般に、精いっぱいの診療をしたのに不幸な結果となる事例はあるだろうが、防止策を講じる余地のある事例もあるということではないか。

 当初、医療事故の患者団体からは「補償金で黙らせようという制度では解決にならない」と反発があった。実際、制度導入後も、補償対象であるのにかかわらず訴訟になった事例がある。

 原告の一人は「医師は、産科医療補償制度で原因究明されるので、そちらに任せたいと言うばかりで、ほとんど事実関係の説明をせず、不信感を持った。本当のことを知る手段は裁判しかないと思った」と語った。事故そのものより事故対応への不信が根底にあることをうかがわせる。加えて、制度が信頼を得られていない結果とも言えそうだ。

 個々の原因を公正に分析し、実効性ある再発防止策に生かす――このことなくして、制度の成功はない。対象範囲が重い脳性まひのみと限定的なことや、今のところ予想より大幅に対象者が少なく多額の剰余金が出ていることなど課題も多いが、事例検証を重ね、悲しい結果に至るお産を減らし、医療側と患者側の溝を埋める有効な仕組みに育てていく必要がある。(医療情報部・高梨ゆき子)」


産科医療補償制度により,学会のトップクラスの先生たちにも,産科事故の実態を知ってもらえたことは大きな成果だと思います.

医学医療の不確実性,限界のために,回避できないケースもあるでしょうが,普通にやるべきことをやるだけで十分回避できる産科脳性麻痺も少なくないと思います.
原因分析に基づく再発防止に期待いたします.

谷直樹
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by medical-law | 2011-09-01 02:12 | 医療事故・医療裁判