弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

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少量のニコチンで記憶力がアップするという報告

b0206085_849478.jpg少量のニコチンで高齢者の記憶力がアップするという報告が報じられていましたが,これは,喫煙にも良いことがある,という意味ではありません.

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AFP「少量のニコチン、高齢者の記憶力回復に効果 米研究論文」(2012年1月12日)は,次のとおり報じました.

「バンダービルト大学(Vanderbilt University)メディカルセンターの研究チームは、平均年齢76歳で軽度の記憶力低下がある非喫煙者74人(元喫煙者を含む)を2つのグループに分け、それぞれニコチンパッチとプラセボ(偽薬)パッチをつけてもらい、約6か月間にわたって調査を行った。

 その結果、注意力や記憶力、さらには物事に対する理解の速度や確実性といった認識能力テストで、ニコチンパッチを付けたグループの方が、より優れた結果がみられたという。

 さらに調査開始から6か月後、長期記憶を調べたところ、ニコチンパッチを付けたグループでは約46%の回復がみられた一方、プラセボパッチを付けたグループでは約26%の減退がみられた。」


ニコチンから記憶力低下に対する薬剤を作ることができるかもしれない,という趣旨の報告です.
ニコチンには,依存性があり,害作用もあります.安全に長期使用できる量はこれからの検討課題です.

この記事が一般に広まって,一部で,タバコを吸うと記憶力がアップするという早飲み込みがあるようです.

しかし,この報告は,タバコ喫煙で吸収されるニコチンの量でテストしたものではありません.
研究チームのポール・ニューハウス教授によると,高齢者が喫煙することは推奨しない,とのことです.
タバコには,ニコチン以外の物質も含まれ,タバコ喫煙は発がん物質を体内に取り込むことになります.ニコチンの薬理作用を期待して,タバコ喫煙を行うということは,明らかに有害性のほうが大きいのです.

なお,ニコチンは薬理作用のある物質で,ニコチンを含むという1点だけでも,タバコは薬事法の規制下におかれるべきです.

谷直樹
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by medical-law | 2012-01-19 21:35 | 医療

笹川陽平氏,ハンセン病に対する差別的な表現があるとしてアニメ映画の製作会社に修正,削除を求める

b0206085_9465498.jpg世界保健機関(WHO)のハンセン病制圧特別大使を務める笹川陽平氏は,2012年1月18日,アニメ映画「The Pirates! Band of Misfits」の予告編に,ハンセン病に対する差別的な表現があるとして製作会社アードマン・アニメーションズ(英)とソニー・ピクチャーズ・アニメーション(米)に修正,削除を求めました.

スポニチ「映画予告編の削除要請「ハンセン病差別の表現」」は,次のとおり報じています.

「日本財団によると、映画は「The Pirates! Band of Misfits」。予告編はインターネットで公開されており、アニメキャラクターが「らい病患者(leper)」と話し、腕が落ちるシーンがある。

 同財団は「leperという表現は国連人権理事会でも差別用語として指摘され排除勧告されている。腕がとれる症状はあり得ない」と指摘。誤解や偏見、差別を助長するとしている。」


当然,本編も変更しなければならないでしょう.

【追記】
英国と米国の製作会社は,映画本編と予告編から該当箇所を削除しました.

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by medical-law | 2012-01-19 01:15 | 医療

コクラン共同計画,タミフルについて治療効果疑問,副作用は過小評価されていると報告

b0206085_107157.jpgコクラン共同計画The Cochrane Collaborationは,2012年1月17日,インフルエンザ治療薬タミフルが重症化を防ぐ効果について疑問とする報告書を発表しました.

コクラン共同計画は,1992年にイギリスの国民保健サービスの一環として始まり,ヘルスケアの介入の有効性に関するシステマティックレビューを「つくり」,「手入れし」,「アクセス性を高める」ことによって,人々がヘルスケアの情報を知り判断することに役立つことを目指す国際プロジェクトです.

読売新聞「タミフル、インフルエンザ治療効果に疑問」(2012年1月18日)は,次のとおり報じています.

「報告書は、製薬会社に有利な結果に偏る傾向がある学術論文ではなく、日米欧の規制当局が公開した臨床試験結果など1万6000ページの資料を分析。

 タミフルの使用で、インフルエンザの症状が21時間ほど早く収まる効果は確認されたものの、合併症や入院を防ぐというデータは見つからなかった。

 報告書は「当初の症状を軽減する以外、タミフルの効果は依然として不明確」と結論、「副作用も過小報告されている可能性がある」と指摘した。」


コクラン共同計画の報告ですから,信頼性は極めて高いです.

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by medical-law | 2012-01-18 21:13 | 医療

フランスの国立保健医学研究所の調査,原発周辺5キロ圏内の子どもの白血病発症率は2倍

b0206085_10133356.jpgフランスの国立保健医学研究所(INSERM)が,2002~07年に国内の原発19カ所の5キロ圏内に住む15歳未満の子どもを調査したところ,14人が白血病と診断された。これは他の地域と比べて2倍の発病率だったことが報じられていました.(ロイタ-「原発付近に住む子ども、白血病の発病率が2倍=仏調査」(2012年1月11日)

小出裕章氏によると,そういう研究はもう山ほどある,原子力施設周辺で白血病が多い,ガンが多いということは,かなりのデータがすでにもう蓄積してきている,とのことです.

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by medical-law | 2012-01-17 22:48 | 脱原発

妊娠中の抗うつ薬SSRI服用にご注意を

b0206085_8514029.jpgAFP「抗うつ薬SSRI、妊婦の服用で子の肺高血圧症リスク増化」(2012年1月16日)は,ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル(BMJ)の報告を紹介しています.

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ストックホルムのカロリンスカ研究所の薬剤疫学研究チームは,1996年~2007年にデンマーク,フィンランド,アイスランド,ノルウェー,スウェーデンで生まれた単胎児160万人について調査した結果,乳児の肺高血圧症の発症率は通常1000人に1.2人ですが,妊娠20週以降にSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)を服用した妊婦1万1000人から生まれた赤ちゃんでは1000人に約3人と、リスクが2倍以上に跳ね上がった,とのことです.

抗うつ薬SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)は,フルボキサミン(デプロメール,ルボックス)、パロキセチン(パキシル),セルトラリン(ジェイゾロフト),エスシタロプラム(レクサプロ)などです.

薬害オンブズパースン会議の「抗うつ剤パキシル錠の妊婦への使用に関する要望書」(2009年10月21日)も,「パキシルを妊娠初期に妊婦が服用した場合、胎児に先天異常を起こす危険性(心房中隔欠損や心室中隔欠損のリスクが1.5倍増加する)があります。妊娠20週以降にパキシルを含むSSRIを服用した場合、新生児薬物離脱症候群及び新生児遷延性肺高血圧症のリスクが増加するというデータがあります。」と指摘しています.

同会議は,「患者が妊娠に気づいたときには、先天異常のリスクの高い妊娠初期を過ぎている可能性があり、パキシルには依存性があることを考慮すると、妊婦だけではなく、妊娠可能な患者に対するパキシルの使用を原則として禁止すること、やむを得ず使用する場合であっても、患者にリスクを十分説明し同意を得ることが必要です。」としています.

妊娠中はもちろん,妊娠可能性のある人が,パキシルに限らず,抗うつ薬SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)を服薬するのは,ハイリスクを伴います.なお,自己判断での服薬中止もリスクを伴いますので,医師と相談するのがよいでしょう.

谷直樹
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by medical-law | 2012-01-17 00:57 | 医療

橋下市長,生活保護受給者の過剰診療が疑われる場合は検診命令を発令し,従わないときは保護停止も

b0206085_16295457.jpgにほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
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読売新聞「生活保護受給者の受診機関を独自認証、大阪市が検討 過剰診療の排除図る」(2012年1月13日)は,次のとおり報じました

「大阪市の橋下徹市長が、過剰診療などの不正請求対策として、受給者が診療できる医療機関を、市が独自に認証する制度を検討していることがわかった。不正請求を繰り返す悪質な医療機関を排除するのが狙い。過剰診療が疑われる場合は、別の医療機関で診療させる「検診命令」を発令し、従わない場合は保護停止も辞さない構えだ。

 医療扶助は、受給者が自己負担なしで診療や投薬を受けられ、費用は全額公費で支払われる。医療機関側が不正請求を重ねても発覚しにくく、意図的に過剰診療を繰り返す例があるなど、モラルハザード(倫理の欠如)を招きやすいとの指摘がある。

 生活保護受給者が約15万人(昨年12月)と全国最多の大阪市では、2010年度の医療扶助費が、生活保護費全体の約45%にあたる約1292億円に上り、財政を圧迫している。

 新制度では、国が指定する保険医療機関や生活保護法に基づく指定医療機関とは別に、市が独自に医療扶助の利用に適切な病院、診療所などを認証することを想定。認証された医療機関のみに医療扶助を支払う仕組みを目指すという。

 また、受給者の通院日数や1件あたりの診療報酬が突出している際には、別の医療機関での診療を命じ、過剰診療や不適切診療を防ぎたいとしている。市内最多の西成区では、ほぼ4人に1人が受給者で、橋下市長は同区での先行実施も視野に入れている。

 ただ、認証する医療機関や過剰診療の基準設定が難しく、関係法との整合性などから制度設計が難航する可能性もある。」


認証医療機関の基準・数はどうするつもりなのでしょうか.診療報酬が多いだけでは,「過剰診療」「不適切診療」とは言えないでしょうから,診療の内容を公正に検討する基準・仕組みがないと,今度は,不当な診療抑制につながりかねません.本当に不正な過剰診療を行われているなら,保険医の取り消しなどを含め,その医療機関にペナルティを課すべきで,生活保護者だけ受診抑制するのは,疑問です.
検診命令は,生活保護者の健康のために認められている制度であり,このような使い方は制度の趣旨を逸脱しています.医療費抑制だけに目を奪われ,患者の医療を受ける権利が損なわれることになると,重大な人権侵害になります.
角を矯めて牛を殺すことのないように願います.

谷直樹
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by medical-law | 2012-01-16 10:44 | 医療

日弁連,視覚障がい者の付添い不許可に関する人権救済申立事件で,練馬区長に勧告,厚労大臣に要望

b0206085_931511.jpg日本弁護士連合会は,2012年1月12日,視覚障がい者の付添い不許可に関する人権救済申立事件で,練馬区長に人権侵害が生じていると勧告し,厚生労働大臣に,各自治体の地域生活支援事業の運用実態につき調査を実施し,国としてのナショナルミニマム(最低基準)を提示するとともに,各自治体の相互連絡・研究を可能とする体制を整備する等の適切な措置をとるよう要望しました.

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◆ 事案

カトリック関町教会は,住宅街にあり,曲がり角をいくつも曲がらないといけない上,教会に至るまでの道には点字ブロックもないため,視覚に障がいのある人が単独で教会に通うことは相当困難があった.
そこで,カトリック関町教会に所属する視覚障がい者が,2008年7月頃,練馬区に,月1回程度のカトリック教会への礼拝のために,教会への往復にガイドヘルパーの付添いを依頼しました.
練馬区は,当初は「勧誘(布教活動)でなければ良いでしょう」との話でしたが,最終的に,宗教にかかる活動は,布教を目的とするものか,単に礼拝のみを目的とするものかの確認ができないため,目的に関わらず「練馬区移動支援事業実施要領(以下「実施要領」という)」。の視覚障害者等ガイドヘルプ事業の給付対象とはできないと判断して,ガイドヘルパーの付添いを認めませんでした。

◆ 日弁連の勧告

「月1回程度の教会への礼拝のための外出が「社会通念上」移動支援事業を適用することが適当でない外出とは到底いえないことは明らかであることから,本件について貴区がガイドヘルパーの付添いを認めなかったことは,貴区が,実施要領の解釈・運用を誤り,もって申立人の公的ないし社会的な支援を受けて移動する権利を侵害するものであり,憲法13条,14条,22条1項及び25条に反する重大な人権侵害が生じている。

また「宗教にかかる活動」について,およそ全ての活動を視覚障害者等ガイドヘルプ事業の対象としないという運用は,申立人のみでなく,他の障がいのある人の人権を侵害するおそれが極めて大きく,障害者自立支援法の趣旨にも,障がいのある人の権利条約の趣旨にも反する運用である。さらに,信教の自由(憲法20条1項)への配慮にも欠けるものである。

そもそも実施要領5条1項(3)の規定は,括弧内の例示事由については,およそ無条件に移動支援事業の適用対象外であるといった,障害者自立支援法の本来の趣旨にもとる誤解を招きかねない体裁・表現であり,人権侵害を招くおそれがあるので,同条項の改正を含め,今後,障害者自立支援法の本来の趣旨にのっとり,障がいのある人が,その有する能力及び適性に応じ自立した日常生活又は社会生活を営むことができるような制度を実施すべきである。
以上勧告する。」


◆ 厚生労働大臣への要望

「国は,障害者自立支援法に基づき,地域生活支援事業について「適正かつ円滑に行われるよう,市町村及び都道府県に対する必要な助言,情報の提供その他の」, 援助を行わなければならない(同法2条3項)とする責務を負っているところ視覚に障がいがある人に対する移動支援事業である地域生活支援事業について,国として最低限度守るべき基準,いわゆるナショナルミニマムを提示すらせず,その運用を各自治体に完全に委ね,その運用実態の把握すらも行なっていない。

このような現状は,上記の障害者自立支援法が定める責務を放棄している状態であるといわざるを得ず,そのために,各自治体の地域生活支援事業の不適切な運用や地域間格差により,居住地によっては障がいのある人の公的ないし社会的な支援を受けて移動する権利(憲法13条,14条,22条1項及び25条)が侵害されるおそれがある。

したがって,国として,直ちに各自治体の地域生活支援事業の運用実態調査を行い,ナショナルミニマムを作成・提示した上で,各地方自治体に必要な助言,情報の提供その他の援助を行ない,各自治体の担当者レベルで判断に迷う事例等についての相互連絡・研究を可能とするような体制を整備する等の適切な措置をとるよう要望する。」


◆ 感想

練馬区は,政教分離を形式的厳密に考えたのかもしれませんが,障がいのある人の人権を侵害することになり,信教の自由の趣旨を侵害することにもなります.勧告は当然のことです.
これが,練馬区だけのことではない,ということで,厚生労働大臣へ要望したのでしょう.
本件は,2008年2月27日に受け付けられた申し立てであり,2008年3月調査委員間にて問題点の検討,同年5月13日申立人から電話による聴取を実施,同年6月13日申立人から弁護士会館における聴取を実施,2009年1月7日厚生労働省に対する照会を実施,同年1月7日練馬区以外の都内の特別区(22区)及び県庁所在地の自治体に対する照会を実施,同年3月10日練馬区への照会を実施,同年7月29日練馬区への再照会を実施という経過を経て勧告がだされたものです.聴取と照会だけで,事実を認定し,判断するので,慎重になるのは分かりますが,勧告はもうすこし早くだされてもよかったように思います.

谷直樹
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by medical-law | 2012-01-16 01:48 | 弁護士会

佐世保市総合病院,酒気帯び運転で衝突事故の医師を懲戒免職とせず

b0206085_1861465.jpg◆ 報道

朝日新聞「酒気帯び諭旨免職」(2012年1月14日)は,次のとおり報じています.

「◆数少ない専門医 佐世保市処分
 嘆願受け懲戒免見送り

 佐世保市は13日、酒気帯び運転で罰金30万円の略式命令を受けた市総合病院管理診療部長の医師(51)を同日付で停職6カ月の懲戒処分とした。併せて本人から出された辞職願を受理し、諭旨免職にした。

 市によると、医師は今月3日夜、自宅でビールを飲んで乗用車を運転し、交差点で接触事故を起こした。

 同市は飲酒運転をした職員は原則として懲戒免職とする方針を定めている。軽い処分とした今回の決定について江口勝美病院長は、この医師が県内に2人しかいない小児血液疾患の専門医で、患者や家族からは処分を軽くしてほしいと求める嘆願書が出ていると説明。「引き続き専門医療に携われるよう特例として判断した」と述べた。

 医師は市側におよそ94万円の退職金を返上する意思も示しているという。 」


◆ 感想

2006年の福岡市職員による飲酒運転死亡事故に端を発し,酒気帯び運転で懲戒解雇処分を行う地方自治体が増えました.
人事院は,2008年4月,酒酔い運転で人身事故を起こした場合は一律免職,その他のケースでは免職,停職,減給とする方針を示しましたが,酒気帯び運転で懲戒解雇処分となることが少なくありません.

しかし,もともと,業務外のことを理由に使用者が処分を行うのは例外です.
一口に酒気帯び運転といっても,その態様はまちまちです.
酒気帯び運転は悪いことですが,つねに懲戒解雇という重い処分が相当とはいえません.
裁判所は,具体的な態様に応じて,処分の合理性を判断しています.懲戒解雇処分が取り消されるケースが相次いでいます.

本件は,衝突事故を起こしていますが,人身事故ではありません.また,呼気1リットル当たり0・15ミリグラムを著しく超えるアルコールを検出したとは報じられていません.この件で,仮に懲戒解雇処分を行ったとすれば,裁判では取り消される可能性が高かったと思います.佐世保市が懲戒解雇処分としなかったことは適切な判断だと思います.

数少ない専門医であることから特別に配慮したように報じられていますが,普通の医師であっても,普通の公務員であっても,人身事故を起こさず悪質性も高くない事案では,裁判例を尊重し,同様に懲戒免職とすべきではない,と思います.

谷直樹
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by medical-law | 2012-01-15 11:59 | 医療

昭和伊南総合病院,縫合不全,腹膜炎の対処の遅れで示談

b0206085_981150.jpg昨年12月のことですが,中日新聞「患者死亡で3000万円賠償 胃がん摘出 処置ミス 駒ケ根の昭和伊南総合病院」(2011年12月22日) は,次のとおり報じていました.
.
「長野県駒ケ根市、飯島町、中川村、宮田村でつくる伊南行政組合が運営する昭和伊南総合病院(駒ケ根市)で2007年10月、胃がん摘出手術を受けた県内の60代男性患者が術後9日目に死亡した医療事故があり、組合議会は21日、遺族に対し示談金として3千万円の損害賠償を支払う議案を全会一致で可決した。

 病院によると、男性患者は同10月17日、腹腔(ふくくう)鏡手術で胃がんを摘出したが、手術から6日後に体調が急変。再手術の結果、摘出した部分の縫合が不完全だった上、腹膜炎の症状も見られ、男性は同26日、敗血症で死亡した。

 病院は、原因は分からないとしたものの「後になってみると、対処が若干遅れた感は否めない」と一部ミスを認め「再発防止に努めたい」とコメントした。執刀したのは、経験を積んだ外科医だったという。」


縫合不全,腹膜炎への対処が遅れたことを認め,示談したわけです.
古い裁判例には縫合不全ケースでも無責としたものがありますが,今は,縫合不全の発生責任(手技),術後の検査・経過観察の不十分さなどのいずれかで責任が認められます.

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by medical-law | 2012-01-14 10:05 | 医療事故・医療裁判

大学病院の医師が患者の勤務先の総合病院にHIV検査結果を漏示し,患者(看護師)が退職させられた事案,提訴

b0206085_9285862.jpg◆ 事案

msn産経「HIV感染、無断で勤務先に通知 看護師が病院提訴」(2012年1月13日)は,次のとおり報じています.

「訴状によると、看護師は福岡県内の総合病院に勤務していた昨年6月、目に異常を感じて複数の病院を受診。8月に同県内の大学病院でのHIV検査で陽性反応が出て、医師から「患者への感染リスクは小さく、上司に報告する必要もない」と言われた。ところが、原告側が両病院に情報開示を求めた資料によると、大学病院の別の医師が看護師に無断で、勤務先の病院の医師にメールで検査結果を知らせていた。

 看護師はその後、上司から「患者に感染させるリスクがあるので休んでほしい」と告げられ、休職後、11月末に退職した。」


◆ 提訴

この看護師は,2012年1月11日,両病院を経営する2法人を被告に慰謝料など計約1100万円の損害賠償を求める訴訟を福岡地裁久留米支部に起こしました.
西日本新聞によれば「看護師の代理人の小林洋二弁護士は「診療内容は特に保護を要する個人情報なので、守秘義務違反に当たる。HIVを理由に休職を求めることは合理的な理由がなく違法だ」と主張。」しています.

◆ 感想

大学病院の医師の守秘義務違反は明らかです.

医師が業務上取り扱ったことで知った情報を漏示したのであれば,刑法第百三十四条「医師、薬剤師、医薬品販売業者、助産師、弁護士、弁護人、公証人又はこれらの職にあった者が、正当な理由がないのに、その業務上取り扱ったことについて知り得た人の秘密を漏らしたときは、六月以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。」の秘密漏示罪にあたりますので,刑事責任も問題になります.

勤務先の総合病院の上司が,看護師に求職を求めたのは,「職場におけるエイズ問題に関するガイドライン」に反し,違法です.医療従事者であっても,HIV感染を理由に不利益に扱うことは許されません.

なお,原告代理人弁護士は,「小説医療裁判 ある野球少年の熱中症事件」(法学書院)の著者の小林洋二先生です.
石川順子先生と私が編集した「患者のための医療法律相談」(法学書院)にも執筆いただいております.


【追記】

毎日新聞「HIV:看護師と検査病院和解 勤務先に感染通告」(2013年4月19日)は,次のとおり報じました.

「HIV(ヒト免疫不全ウイルス)の検査をした大学病院が、陽性結果を無断で勤務先の病院に伝え退職を余儀なくされたとして、看護師が両病院を経営する2法人に慰謝料など計1100万円の損害賠償を求めた訴訟で、看護師とHIV検査をした大学病院との和解が19日、福岡県内の地裁支部で成立した。実質、原告勝訴の内容。看護師と勤務先の病院との訴訟は継続している。

 原告側代理人によると、和解で大学病院側は「検査結果を紹介元(勤務先の病院)に提供するにあたり、原告の意思確認が不十分だったことを認め、真摯(しんし)に謝罪する」としたうえで、「診療情報を紹介元に提供する際は、患者本人の意思確認を徹底することを約束する」との再発防止策も盛り込んだ。大学病院は和解金100万円を原告側に支払う。

 訴状によると、看護師は総合病院に勤めていた11年8月、勤務先の紹介で受診した大学病院でHIV感染が判明。大学病院の担当医師からは「患者へ感染させるリスクは小さく、上司に報告する必要もない」と言われ出勤した。だが、勤務先の病院には大学病院から検査結果が伝わっており、勤務先の幹部から「感染のリスクがあるので休んでほしい」などと言われ休職。同年11月退職した。

 原告側代理人は「大学病院が再発防止についても言及したことを評価したい」と話している。

 一方、看護師が勤務していた病院側は「退職を強要したわけではない。患者への感染リスクはある」などとして、請求棄却を求めている。【金秀蓮】」


谷直樹
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by medical-law | 2012-01-14 01:29 | 医療事故・医療裁判