弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

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第2回医療事故に係る調査の仕組み等のあり方に関する検討部会

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◆ ヒアリング

「第2回医療事故に係る調査の仕組み等のあり方に関する検討部会」が,2012年3月29日,開催され,日本医師会の高杉敬久常任理事と日本医療法人協会の伊藤伸一副会長からのヒアリングが行われました.高杉敬久常任理事と伊藤伸一副会長は,それぞれ,日本医師会の「事故調査制度に関する提言」,日本医療法人協会の提案する事故調査制度を,説明しました.

◆ 意見交換

加藤良夫委員(南山大大学院教授)は,「医療の質向上や医療安全のために事故調査が必要というのは、共通認識と受け止めた」と述べました.

山口育子委員(NPO法人ささえあい医療人権センターCOML理事長)は,「患者の話を聞くと、まずは院内での説明。そこで納得いかない場合に、どこに行くかということ。次は第三者機関をどうするかを骨子に議論すべき」よ述べました.

豊田郁子委員(医療事故被害者遺族)は,「院内事故調に比重を置くのか、第三者機関をしっかりつくるのかはまだ(意見が)統一されていない。次回以降の議論では、患者が何を求めているかを取り入れてほしい」と述べました.

キャリアブレイン「医療事故調、第三者機関の位置付けが焦点に- 厚労省検討部会」ご参照

◆ 感想

医療提供者側の中には,第三者をいれることに対する消極姿勢,警戒感があるようですが,患者側をはじめ事故関係者の理解を得るためには,公正性,透明性を確保する必要があります.そのためには,第三者機関が重要と思います.

谷直樹
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by medical-law | 2012-03-31 21:28 | 医療事故・医療裁判

新型インフル特措法案が衆議院を通過,参議院へ

b0206085_1125083.jpg新型インフル特措法案は,民主党と自民党が一致しているので,日弁連,薬害オンブズパースン会議,日本ペンクラブなどの反対にもかかわらす,あっさり成立してしまいそうな危険な状況にあります.

NHK「新型インフル特措法案 衆院可決」(2012年3月30日)は,次のとおり報じています.

「毒性と感染力の強い新型インフルエンザが大流行した際、国が「緊急事態」を宣言し、予防接種の対象者を定めることなどを盛り込んだ特別措置法案が、30日の衆議院本会議で賛成多数で可決され、参議院に送られました。

この法案は、毒性と感染力の強い新型インフルエンザの流行に備えた国や地方自治体の取り組みなどを定めるものです。
法案では、新型インフルエンザが実際に発生した際には、国は対策本部を設置し、国民生活や経済に重大な影響を与えるおそれがある場合」は、「緊急事態」を宣言するとしています。
また、対策本部が予防接種の対象者や接種の優先順位などを決めるほか、都道府県知事が強制的に学校を休校にしたり、集会や催し物の開催を制限できるとしています。
この法案は、30日の衆議院本会議で採決され、最新の科学的な知見を踏まえ、被害想定が過大にならないようにするなどとした付帯決議をつけたうえで、民主党や自民党などの賛成多数で可決され、参議院に送られました。
政府は、新型インフルエンザが大流行した際に、すべての国民が予防接種を受けることができる体制の整備を盛り込んだ「行動計画」をすでにまとめていて、法案の成立後、平成25年度中に、全国民に行き渡る量のワクチンを製造できる体制の確立を目指すことにしています。」

msn産経「新型インフル特措法案 最悪想定 人権制限どこまで」(2012年.3月29日)は,次のとおり問題点を指摘しています.

 「新型インフルエンザに対する危機管理の取り組みを定めた「新型インフルエンザ対策特別措置法案」が国会に提出されている。新型インフルなどが大流行した場合、その影響を最小限に抑えることが狙いで、危機管理上、住民の行動制限なども要請できることになるが、ここに来て、日本弁護士連合会(日弁連)などから「人権が過剰に制限されている」などとして反対の声が上がった。「危機管理」と「人権制限」をどう考えればいいのか。

 法案によると、政府は新型インフルエンザや新型の感染症が発生し、国民の生命や健康に深刻な被害を与える恐れがあるときには、首相が区域や期間を定めて「緊急事態」を宣言。外出の自粛や休校、人の集まる施設を使わないなど、住民の行動制限の要請や指示ができる。

 ■命令違反に罰則

 必要な医薬品や食品などを確保するための保管命令に業者が従わなかった場合などは30万円以下の罰金など罰則規定も設けた。

 これに対し「法案は危険だ」との声を上げたのが、日弁連だ。22日には反対する会長声明を出した。特に問題視しているのは、感染防止のために強いられる人権制限が過大である点だ。

厚労省は、新型インフルで考え得る最悪の被害を、大正7(1918)~8年に流行したスペイン風邪並みの致死率2%で計算し64万人が死亡する可能性があると想定。特措法もこの想定を念頭に置いて作られた。

 しかし、日弁連は「当時と現在では国民の健康状態、衛生状態や医療環境の違いは歴然としている」と指摘。科学的根拠のない過大な被害想定に基づき、集会の自由が制限され、制限の適用要件も曖昧などと批判する。

 感染症の専門家はどのように捉えているのか。

 「確かにスペイン風邪の時代に比べれば、衛生状況や薬、ワクチンが良くなっている側面はある」。国立感染症研究所の岡部信彦・感染症情報センター長は、被害想定が過大とする批判に一定の理解を示す一方、「当時に比べ、逆に人口密度は高くなり、交通機関の発達などで人の移動も活発になるなど不確定要素も多く出てきた」と指摘。「新しいものを想定するときには学問的根拠だけで全てを議論できない。実際に過去に被害があったなら、その被害に備えなければいけないだろう」としている。

 国立成育医療研究センターの加藤達夫総長も「海外でも同様の措置を講じている。国家が危機管理をする際、最大限の被害想定をしないのは無責任。“備えあれば憂いなし”でいいと思う」と話す。

■“水際”必要?

 一方で、対策そのものに問題があるとする関係者もいる。特に批判が多いのは海外からのウイルス持ち込みを防ぐ目的で行われる、空港での“水際作戦”だ。

 亀田総合病院(千葉県鴨川市)の小松秀樹副院長は「21年の新型インフルで行われた水際作戦では、8人の患者を発見する間に100人がすり抜けたという計算もある」と指摘。その上で「政府は『ウイルスの国内侵入を遅らせる』とするが、遅らせることもできない上、医療側が疲弊して疾病対応能力を奪ってしまう」として、より医療現場に即したルール作成を行うべきだと訴える。

 これに対し、法案をまとめた内閣官房新型インフルエンザ等対策室は「ウイルスが入り込むのを完全に防げるとは思わないが、蔓延(まんえん)のスピードを少しでも遅らせ、対策を取る時間を稼ぐ意味がある」と説明。「あくまでも初期段階の対応。合理性がなくなれば措置を縮小する」としている。(豊吉広英)

 ■新型インフルエンザ 
 鳥類や豚など動物のインフルエンザウイルスが変異し、人から人への感染拡大が可能になって起こるとされる。ほとんどの人が免疫を持たないために、爆発的に拡大し、パンデミック(世界的大流行)を起こす可能性がある。2009(平成21)年4月に豚由来といわれた新型インフルエンザが米国やメキシコで最初に確認され、瞬く間に世界的大流行となった。」


日本ペンクラブの「「新型インフルエンザ特措法」に反対する緊急声明」は,次のとおりです.

「政府は「新型インフルエンザ等対策特別措置法」を三月六日に閣議決定し、今国会での成立をめざしています。
 しかし、その内容は、感染症対策に名を借り、国民の基本的人権、移動や集会の自由、言論・表現の自由を一方的に制限するなど、あまりに重大な問題を含んでいます。要綱段階で出された反対意見を踏まえ、法案では一部文言の修正がはかられましたが、法案が有する問題点はまったく解消されていません。
 例えば、同法案は、世界保健機関(WHO)が新型インフルエンザの流行を確認した場合、首相が緊急事態宣言を発することができるとし、都道府県知事に対して、住民の外出制限、公共・商業施設の使用制限、集会等の中止を求める権限を与えています。さらに、住民に対して強制的な予防接種も行えるとしています。
 これは、事実上、超法規的な戒厳令であるにもかかわらず、この発動の要件は政令で定めるとされており、厚生労働省の一部の決定のみで私たちの生存と権利と自由を制限することを可能としています。
 新型インフルエンザへの対応は不可欠ですが、誰もが当事者となりうる事態に冷静に対処するためには、危険性の実態や進行の段階、その対処の仕方など、確実で透明性の高い情報の公開が必要であることは、先の福島第一原発事故の教訓であったはずです。その際に見せた〈政〉と〈官〉の不手際を検証もせず、いたずらに危機感をあおり、危機管理対策のみを突出させた本法案を制定することは、新型インフルエンザの対策にならないばかりか、民主主義の諸原理を蹂躙するものと言わざるを得ません。
 日本ペンクラブは、政府がこの法案を撤回し、国民が新型インフルエンザ対策として熟議し、合意形成できる内容に根本的に改めるよう、強く要望します。
  
ニ〇一ニ年三月三〇日
日本ペンクラブ会長 浅田次郎」


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by medical-law | 2012-03-31 02:50 | 医療

山形刑務所で昨年投薬ミス注意5件,ただし国家公務員法の懲戒処分ではないとして非公表

b0206085_1111579.jpg読売新聞 「投薬ミス 昨年また5件 山形刑務所 06~10年にも11件 問われる体質」(2012年3月30日)は,次のとおり報じています.

「山形刑務所(山形市)で昨年、受刑者らに間違った薬を渡すなどしたとして、職員が注意処分を受けたケースが計5件あったことが29日、わかった。

 同刑務所では昨年4月、受刑者らへの誤投薬が続発していた事実が発覚したが、依然として同じミスが繰り返されている。

 同刑務所などによると、就寝前の投薬時、薬袋に書かれている呼称番号や居室をよく確認しなかったため、間違って別の受刑者の薬を渡した誤投薬があった。また、受刑者から就寝前の薬服用の申し出を受けた職員が、薬袋の表示を確認しなかったため、間違って朝食後に服用する薬を投与した事例もあった。

 同様に確認を怠り、昼食後用の薬を渡すべき受刑者に対して、翌日の朝食後用の薬を投与したケースもあった。

 誤飲した受刑者や刑事被告人に目立った健康被害は確認されておらず、誤投薬をした職員は、いずれも注意処分を受けたという。

 同刑務所を巡っては、2008年~10年に計9件の誤投薬があったことが、昨年4月に発覚した。

 その後、読売新聞が調べたところ、06年と08年に新たに1件ずつの誤投薬があったことも判明した。ほぼ毎年のように確認されているが、いずれも注意処分で、同刑務所は「国家公務員法の懲戒処分ではない」として、公表していない。

 同刑務所の斎藤幸治総務部長は取材に対し、誤投薬の事実を認め、「間違った原因を分析して、職員の研修を行い、再発防止に努めていきたい」としている。

 法務省は、山口刑務所(山口市)や岩国刑務所(山口県岩国市)で職員による薬の配布ミスが相次いで発覚した04年、全国の矯正施設に対し、投薬ミスの再発防止に努めるように書面で通知。具体的には、「薬を入れる包装紙の色分け」「投薬時に本人確認を徹底する」「受刑者らに異変があれば、速やかに医療関係職員らに報告する」などを指示している。

 被収容者の人権問題などに取り組むNPO法人「監獄人権センター」(東京都)の事務局長を務める田鎖麻衣子弁護士は「誤投薬が繰り返されているのは、薬局や病院では考えられず、被収容者に対する意識の低さの表れだ」と厳しく指摘する。」


具体的な健康被害が生じなかったからよいというものではありません.
受刑者に対し適切な医療をしようとしない姿勢が,時折表面化する,刑務所における医療事故と通底するものと思います.

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by medical-law | 2012-03-31 02:25 | 医療

横浜簡裁,神奈川県立がんセンターで麻酔器の酸素供給管が外れ低酸素脳症となった事故で,略式不相当

b0206085_11484041.jpg神奈川新聞「県立がんセンターの医療事故、正式裁判へ、医師の「略式不相当」/神奈川」(2012年3月30日)は,次のとおり報じています.

「県立がんセンター(横浜市旭区中尾)で2008年、手術中に麻酔器の酸素供給管が外れ、女性患者が意識不明の重体となった医療事故で、横浜区検は30日、業務上過失傷害の罪で麻酔担当の男性医師(42)を略式起訴したが、横浜簡裁(岩田和壽裁判官)は同日、「略式不相当」と判断した。今後、医師は正式な裁判で審理される。

 起訴状によると、医師は08年4月16日、乳がん治療で乳房部分切除などの手術を行うに当たり、女性患者=当時(44)=に全身麻酔を施した後、患者の状態を注視しなければいけない立場にありながら怠り、手術室を退室。麻酔器の酸素供給の管が患者から外れたにもかかわらずその状態を18分間放置し、女性を低酸素脳症に陥らせ、完治不能の高次脳機能障害と四肢不全麻痺(まひ)の傷害を負わせた、とされる。

 同事故をめぐっては、11年1月、県警が医師と、手術全体を統括していた男性執刀医(39)の2人を業務上過失傷害の疑いで書類送検していた。区検は、執刀医については「嫌疑不十分」として不起訴処分とした。」


この麻酔医は,同時並行で複数の患者の麻酔を行っていたので,麻酔後に手術室を長時間離れていました.酸素の管が外れたのですが,執刀医はそのことに気づかず,患者は低酸素状態が続いたために,重度の障害を負いました.この結果が重大なので,略式不相当,という判断になったのだと思います.

しかし,本件は,神奈川県立がんセンターの麻酔医が不足し,過重な仕事をさせていることが背景にあっておきた事故です.検察官と刑事裁判官は,京都大学エタノール事件がそうであったように,表層的にしか事件を見ていないことがあるように思います.

本件刑事手続きでは,麻酔医の責任のみが問われているのですが,私は,麻酔医一人の責任とするのは適切ではないと思います.麻酔医にこのような仕事をさせていた管理責任者等の責任を追及すべきであった,と思います.

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by medical-law | 2012-03-31 01:10 | 医療事故・医療裁判

平成24年3月26日横浜地裁判決,横浜市立大学医学部教授に121万円の賠償を命じる

b0206085_19432100.jpgスポニチ「横浜市大教授に賠償命令 学生に土下座させ暴行」(2012年3月26日)は,次のとおり報じています.

「横浜市立大医学部の男子学生が50代の男性教授から「女子学生にストーカー行為をしている。おまえは犯罪者だ」などと罵倒されて土下座を命じられ、頭を足で踏み付けられたとして、330万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、横浜地裁は26日、教授に121万円の支払いを命じた。

 内田貴文裁判官は判決理由で「十分な裏付けをせずに一方的に犯罪者呼ばわりした上、暴行したのは悪質。落ち度のない学生が、教授という影響力のある立場の者から、退学などと罵倒された精神的打撃は甚大だったと推察される」と述べた。

 判決によると、教授は女子学生から嫌がらせの相談を受け、うわさ話から当時2年だった原告の学生がストーカー行為をしたと思い込み、2011年2月、他の学生がいる学期末試験会場で「おまえは犯罪者だ」などと発言。その後、教授室で学生を土下座させ、頭を踏み付けるなどした。

 男子学生はストーカー行為について事実無根で、精神的苦痛を受けたとして同3月、大学のハラスメント防止委員会に被害を申し出た。大学は同7月、教授を停職3カ月の懲戒処分にした。 」


教授は,横浜簡裁で,名誉毀損と暴行の罪で罰金50万円に処せられています.
121万円は安い気がしますが,今回の判決は,さらに停職3カ月の懲戒処分にされていることも考慮し,この程度の賠償額に減じているわけです.

教授が事実を確認しないで学生をストーカーと軽率に誤信したこと,教授が正規な手続きを践んでいないこと,教授の行為は本当のストーカーに対してでも違法な行為にあたることを考えれば,判決は当然と思います.

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by medical-law | 2012-03-31 00:41 | 司法

平成24年3月30日新潟地裁判決,新潟大学医歯学総合病院,1年後の内視鏡検査義務に違反

b0206085_1383989.jpg平成24年3月30日新潟地裁判決は,内視鏡検査で萎縮性胃炎など胃がんの発生しやすい状態だったことなどから,その1年後の内視鏡検査義務を認めた判決です.

胃がんは,早期であればあるほど,まったく症状を呈さないものが多い疾患ですので,内視鏡検査(胃カメラ検査)が重要です.上部消化管のがんのクリーニングについては,定期的な上部消化管内視鏡を行うべきでしょう.

本件患者は定期的に新潟大学医歯学総合病院に通院していたのに,同病院の医師は,2006年の内視鏡検査(萎縮性胃炎あり)以後,2009年4月のまで,一度も内視鏡検査を行わなかったのですから,注意義務違反は明らかと思います.

◆ 毎日新聞の報道

毎日新聞「新潟大病院の内視鏡検査損賠訴訟:新潟大に1635万円支払いを命じる--地裁判決 /新潟」(2012年3月30日)は,次のとおり報じています.


「新潟大学医歯学総合病院(新潟市中央区)で06年に内視鏡検査を受けてから約2年7カ月にわたり検査が行われなかったことから胃がんの発見が遅れ、胃の3分の2の切除を余儀なくされたとして、新潟市西区の男性(62)が同大に対して約1930万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が29日、新潟地裁であった。草野真人裁判長は、同大に約1635万円の支払いを命じた。

 草野裁判長は判決で、06年当時、胃がんは発見されなかったが、萎縮性胃炎など胃がんの発生しやすい状態だったことからすると「担当医は約1年後に内視鏡検査を行うなどして検査すべき義務があった」と指摘。その上で「07年に内視鏡検査をしていれば、胃がんを早期発見でき、3分の2を切除する必要はなかった」とした。

 同病院の内山聖病院長は「主張が認められず残念。判決内容をよく見た上で関係部署と協議しながら対応したい」とコメントした。【川畑さおり】」


◆ 朝日新聞の報道

朝日新聞「「がん検査怠った」1635万円支払い命令」(2012年3月30日)は,次のとおり報じています.

「胃がんだったにもかかわらず、新潟大学医歯学総合病院(新潟市)が検査を怠って胃の3分の2の切除を余儀なくされたとして、新潟市の60代男性が、病院を運営する新潟大に約1930万円の損害賠償を求めた訴訟で、新潟地裁(草野真人裁判長)は29日、医師の注意義務違反を認め、大学に約1635万円の支払いを命じる判決を出した。


 男性は2006年9月に別の医院の内視鏡検査で胃がんの疑いと診断されたが、紹介を受けた新潟大医歯学総合病院の内視鏡検査では発見されなかった。その後、定期的に同病院に通院したが、09年4月の内視鏡検査で胃がんが発見されるまで一度も内視鏡検査をせず、発見時は内視鏡手術のみで対応できない状態だったという。」


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by medical-law | 2012-03-30 19:34 | 医療事故・医療裁判

大阪地裁(岩倉広修裁判長),大阪地検元特捜部長大坪弘道さんに有罪判決

日経新聞「元特捜部長らに有罪判決 懲役1年6月執行猶予3年」 (2012年3月30日)は,次のとおり報じています.

「大阪地検特捜部の捜査資料改ざん・隠蔽事件で犯人隠避罪に問われた元特捜部長、大坪弘道被告(58)と元副部長、佐賀元明被告(51)の判決公判が30日、大阪地裁で開かれた。岩倉広修裁判長は2人にいずれも懲役1年6月、執行猶予3年(求刑懲役1年6月)を言い渡した。2人は無罪を主張していた。

 検察への信頼を根幹から揺るがした一連の事件は、捜査資料を改ざんした元検事も合わせ、起訴された3人の元検事がいずれも有罪認定される前代未聞の事態となった。

 元部長と元副部長は2010年2月、郵便料金不正事件の主任だった前田恒彦元検事(44)=証拠隠滅罪で実刑確定、服役中=が証拠品のフロッピーディスク(FD)のデータを意図的に書き換えたと知りながら、同僚検事らに口止めし、当時の地検トップに虚偽報告したとして起訴された。

 公判の最大の争点とされたのは、元検事によるFDデータの書き換えを2人が「故意」と認識していたかどうか。中でも、最高検側が「元検事が元副部長に初めて故意の改ざんを告白した」とする10年1月30日夜の電話については、その有無を巡っても双方が争った。

 最高検側は公判で、元検事や、電話の場に立ち会ったとされる別の検事らを証人申請。「元検事が故意に改ざんしたことを2人は認識していた」との主張に沿う証言を引き出し、論告では「2人は組織防衛、自己保身のために隠蔽行為に及んだ」と厳しく指摘した。

 元副部長は「1月30日に元検事と電話しておらず、後日、『データを誤って書き換えたかもしれない』と聞いた」と反論。元部長も「『過失』との報告を信じた」とし、「最高検のストーリーは破綻している」と批判していた。

 当時の通話記録は残っておらず、物証は元副部長の執務記録などわずかだった。2人は捜査段階での供述調書の作成に一切応じず、法廷での供述や証言の信用性と執務記録などの証拠を裁判所がどう評価するかが焦点となっていた。

 一連の事件を受け、当時の大林宏検事総長ら検察幹部が引責辞任。再発防止のため、特捜部の体制見直しや取り調べの録音・録画(可視化)が一部導入されるなど、検察改革が進められている。」


物証がないのにこのような判決がなされたことは,非常に残念です.控訴審に期待いたします.

谷直樹
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by medical-law | 2012-03-30 13:32 | 司法

旧倉敷森下病院が必要な検査を行わず投薬も不適切だったため死亡したと,医療法人と岡山県などが訴えられる

b0206085_19365290.jpg山陽新聞「遺族が賠償求め病院や県提訴 旧倉敷森下病院」(2012年3月30日)は次のとおり報じています.
 
「倉敷市の精神科病院・倉敷森下病院(2月に経営譲渡、改称)で2010年1月、肺炎で死亡した男性=当時(64)=の遺族が、医師が適切な治療を行わず、県が指導監督を怠ったことが死亡につながったとして、病院を経営していた医療法人や県などに1100万円の損害賠償を求めて29日、岡山地裁に提訴した。

 訴状によると、男性は当時の院長=11年9月に86歳で死亡=に精神疾患と診断され、09年11月から入院。肺炎を発症した男性に対し、胸部レントゲン撮影など必要な検査を行わず投薬も適切でなかった上、自院では肺炎の治療が難しいのに他院へ搬送しなかった、としている。

 県は07年ごろから同病院への監査体制を強化するなど、入院患者への不適切な処遇を把握していながら、精神保健福祉法に基づく改善命令によって入院制限措置を取る義務を怠った、としている。

 遺族は「発症後早い段階で、適切な治療や強い行政指導が行われていれば、死亡することはなかった」と主張している。

 倉敷森下病院を経営していた医療法人は「コメントできない」、県は「訴状を見ておらずコメントできない」としている。」


倉敷森下病院は,カルテが不備であったり,人権侵害と思われる行為が行われていたと指摘された病院です.
カルテが不備なことなどから患者側の立証のハードルは高いでしょうが,この病院ならさもありなんと思う経過ですし,改善命令がもっと早くに行われていたら,とも思います.立証に期待します.

また,第2,第3の倉敷森下病院をださないために,行政には,このような疑いのある病院への監督と早期の指導をお願いしたい,と思います.

谷直樹
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by medical-law | 2012-03-30 09:56 | 医療事故・医療裁判

秋田大学医学部,2教授を処分

b0206085_19484951.jpg毎日新聞「秋田大:医学部教授を処分へ 経費二重取りの疑いで--評議会 /秋田」(2012年3月29日)は,次のとおり報じています.

「秋田大は28日、臨時教育研究評議会を開き、同大医学部の60代教授が06年から10年までの間に、出張旅費請求▽講演等の兼業届▽奨学寄付金の使用--について、大学の就業規則に反したとして懲戒処分する方針を固めた。【坂本太郎】

 同教授は、出張先の主催者から交通費を受け取ったにもかかわらず大学にも旅費を請求して二重に受け取るなどした疑いが指摘されたため、同大が昨年12月に調査委員会を設立。調査委は教授や関係者に事情聴取するなどして調査報告書をとりまとめ、評議会で報告された。同大は報告書の詳細を明らかにしていない。同大は評議会の内容を教授に伝え、4月10日まで異議申し立てを受け付ける。

 また、同大は別の60代医学部教授が県内の民間病院への医師派遣の見返りに現金を受け取ったとされる問題で、学内の就業規則と倫理規定に反したとして28日付でこの教授を停職1カ月の懲戒処分としたことも明らかにした。同大によると、教授は06年12月21日に由利本荘市の民間病院院長から現金100万円を受け取った。同教授は「奨学寄付金という認識だった」と主張したが、正式な手続きをせず、現金を使用する際も記録や領収書を残さないなど、処理が適正でなかった。

 同大の熊田亮介副学長は2件の懲戒事案について「大変申し訳ないと思っている」と述べ、来年度のできるだけ早い時期に再発防止策をまとめる考えを示した。」


前者の教授については,処分は確定ではありません.
後者の教授については,100万円を受領の趣旨が,医師派遣の見返り,つまり賄賂なのかかが立証困難として,検察は不起訴としていますが,大学の処分は,刑事手続きとは別です.
再発防止に期待します.

【追記】

河北新報「旅費二重取り問題の秋田大教授 学外での兼業500回以上」(2012年3月30日)は,次のとおり報じています.
 
「秋田大医学部の60代男性教授が旅費を二重に受け取ったとされる問題で、教授が2006~10年度、同大以外で働く兼業を秋田県内の病院で計500回以上、合計で4000万円を超える報酬を受け取っていた可能性が高いことが、29日分かった。
 複数の病院で同時刻に働く重複を調べた大学の調査委員会も、兼業の多さを問題視。調査委の報告を受けた同大は12年度、教授を含む各学部の幹部を対象に年間の兼業の報酬に、上限を設ける方針を決めた。
 教授の代理人の弁護士が報道関係者に配った資料や大学関係者によると、教授は5年間、県内7病院で患者を診療したり、病院の医師を指導したりするなどした。各病院で8~186回非常勤医師として勤務し、1回8万~10万円の報酬を受け取ったとみられる。
 中には1日3病院の兼業を掛け持ちしたケースも判明。07年4月6日、午前9時半から潟上市の病院で勤務し、午前11時10分から秋田市の病院で勤務。午後1時半からは由利本荘市の病院で患者を診察したという。3病院とも教授が勤務したことを認めている。報酬は合わせて約25万円。
 教授が兼業している病院は「忙しいと思い、患者を減らして対応している。まさか掛け持ちまでして兼業しているとは思わなかった」と驚く。別の病院は「来てもらっても患者が少ないから、病院にとっては赤字。本当は兼業を断りたい」と打ち明ける。
 こうした実態を踏まえ、吉村昇学長は「各学部の幹部クラスには、大学の業務に力を入れてもらう必要がある」と強調。兼業の報酬に上限を設ける考えを示している。」


【再追記】

読売新聞「秋大病院長旅費不正で処分 停職1か月 本人「重すぎる」(2012年4月12日)は,次のとおり,報じました.

「秋田大学は11日、同大医学部付属病院の××××病院長(61)が2007年6月~08年10月の出張5件で、同大から旅費計約45万円を不正に受給したとして、停職1か月の懲戒処分にしたと発表した。

 発表によると、××氏は出張で関西空港から新大阪駅までタクシーに乗った際、製薬会社からもらったタクシーチケットを使ったにもかかわらず、同大に鉄道を利用したと申請し、鉄道運賃を受給した。教職員3人を連れて自分の親族の葬儀に参加した際は、他大学との研究打ち合わせに参加するためとして旅費を受給していた。

 同大では、出張後に原則領収書を付けて旅費精算請求書を提出することになっているが、茆原氏は普段から領収書を添付していなかったという。

 同大は匿名の情報提供があったことなどから、昨年12月、学内に調査委員会を設置し、関係者からの聞き取りなどを実施。不正受給があったと認定し、就業規則に基づいて先月、××氏に処分内容を伝えた。××氏は今月6日、「手続き上のことで故意ではなく、金額も多額ではない。処分は重すぎる」と申し立てていた。

 同大は11日の教育研究評議会で検討し、「処分を覆すような問題提起ではない」として処分を決定した。同大は××氏に不正受給額の返還を求めるという。

 同大の熊田亮介副学長は「大学の名誉を傷つけ、信用を失墜させる行為で許されるものではない。再発防止のため、必要な措置を講じたい」と話した。」


【再々追記】

読売新聞「教授を諭旨退職…秋田大付属病院で検査機器不正導入」(2012年11月15日)は,次のとおり報じました.

「秋田大学医学部付属病院(秋田市)の中央検査部が検査機器を不正導入したとされる問題で、同大は14日、同学部医学系研究科の××××教授(62)が、同機器を不正に導入した上、パワーハラスメント行為をしていたとして、××教授を諭旨退職の懲戒処分にすることを決めた。定例の教育研究評議会で、「大学の名誉を傷つけ、信用を失墜させた」として処分を決め、記者会見で発表した。

 同大で現職教授への諭旨退職処分の決定は初めて。××教授から28日までに異議申し立てがない場合、再度評議会を開き、処分を確定する。

 発表によると、××教授は、同病院の中央検査部長だった2008年、国費を財源とする貸付金で、貸し付け条件外の動物用実験機器などを導入した。この機器を含むシステム全体は、約4億5000万円だった。また、××教授は大学職員2人に対し、2年以上にわたって同僚の前で侮辱したほか、私用で外出する際に車で送迎させ、精神疾患にさせた、としている。

 ××教授は「処分を厳粛に受け止めている」とのコメントを出し、同機器の不正導入について、「客観的事実に間違いはない。ただ、研究・発展に必要不可欠なもの」とした。パワハラ行為は「指導監督の行為で齟齬(そご)があり残念。事実認定の一部に争いがあり、異議申し立てを慎重に検討する」とした。

 同大は、不正導入で生じる違約金について、××教授への賠償請求も検討している。」

【再々々追記】

河北新報「旅費二重取り 前付属病院長を諭旨退職処分 秋田大」(2012年12月01日)は,次のとおり報じました.

秋田大は30日、医学部付属病院前中央検査部長の男性教授(61)を諭旨退職処分とした。10日以内に退職しない場合は懲戒解雇とする。
 大学によると、前部長が選定、導入に関わった診療用システムに目的外の機器が含まれていた問題や部下2人へのパワーハラスメント行為を処分の理由とした。
 前部長は付属病院の前院長で、ことし4月、旅費を二重に受け取っていたなどとして停職1カ月の懲戒処分を受けている。
 吉村昇学長は「極めて遺憾。業務の公共性および透明性を確保し、信頼回復に努める」とのコメントを出した。」


谷直樹
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by medical-law | 2012-03-29 23:33 | 医療

合衆国最高裁判所が医療保険制度改革法に違憲判断を下す,と予測されています

b0206085_11324044.jpg合衆国最高裁判所(USSC,United States Supreme Court)は,医療保険制度改革法を違憲と判断するとみられています.
USSCは,Chief Justiceと8人のAssociate Justicesで構成されますが,現在,共和党の大統領が指名した判事が5人,民主党の大統領が指名した判事が4人で,勢力が拮抗しています.

ロナルド・レーガン大統領が指名したアンソニー・M・ケネディ(Anthony M. Kennedy)判事は,ときに,民主党が指名した判事らに同調することがあり,中間派としてキャスティング・ヴォートを握ることが多くなっています.

そのアンソニー・M・ケネディ判事は,医療保険制度改革法を違憲と考えている,とみられていますので,USSCは5対4で医療保険制度改革法を違憲と判断する,と観測されています.

そうしますと,民主党大統領が指名したユダヤ系の女性判事らが少数意見を書くことになるでしょう.
違憲判決は,オバマ大統領の医療改革に大きな影響を及ぼすでしょう.

谷直樹
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by medical-law | 2012-03-29 01:17 | 医療