弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

<   2012年 04月 ( 77 )   > この月の画像一覧

総務省「法曹人口の拡大及び法曹養成制度の改革に関する政策評価書」に関する日弁連コメント

b0206085_5474945.jpg
日本弁護士連合会(日弁連)は,2012年4月20日,総務省「法曹人口の拡大及び法曹養成制度の改革に関する政策評価書」に関する日弁連コメントを発表しました.

「本日、総務省より、「法曹人口の拡大及び法曹養成制度の改革に関する政策評価書」が公表された。同評価書についての当連合会のコメントは、以下のとおりである。

本政策評価書は、司法制度改革の下に始められた法曹人口の拡大及び法曹養成制度の改革に関する法務省及び文部科学省の政策を対象としたものであるが、実地調査及び意識調査の実施にあたっては当連合会も調査対象として協力しており、現在の弁護士の実情を一定程度反映したものとなっている。

特に、法曹人口の拡大については、一方で、いわゆるゼロワン地域の解消や国選弁護人契約の増加等、地域的にも、また社会の様々な場面でも法曹の活躍が広がったとしつつ、他方で、司法制度改革審議会意見書が予見したほどの法曹・法的サービスへの需要の拡大や顕在化を確認することはできなかったとした上、司法試験合格者3000人目標未達成による支障は認められず、現状の2000人規模の合格者数でも就職難の発生やOJT不足などの課題が指摘されていると述べて、数値目標の見直しを勧告した。政府機関が法曹人口の政策目標の見直しを勧告した意義は大きい。当連合会も、ほぼ同様の認識の下、本年3月に司法試験合格者数の減員を求める意見を公表したところであり、今後の法曹養成制度、法曹人口に関する議論において本政策評価は十分参照されるべきである。

法科大学院の教育については、社会人の積極的な受入れや理論と実務の架橋を意識した法律実務基礎教育など法曹養成制度改革の理念に沿った取組が見られるとされた一方、教育の質の向上、とりわけ未修者教育の一層の強化を推進すること、成績評価と修了認定の厳格化を一層推進すること、共通的な到達目標モデルを踏まえた到達目標を速やかに策定することなどが勧告されている。これらの点も、概ね当連合会の見解と共通するものである。

法科大学院の入学定員については、各法科大学院における入学定員の適正化が進んだものの、定員充足率が80%を下回った法科大学院が増加したことを受けて、実入学者に見合った更なる入学定員の削減や、さらには、法曹養成制度の理念、地域バランス等も勘案しながら、他の法科大学院との統廃合を検討すること、定員削減にあたっては未修者の確保を配慮することなどが勧告されている。当連合会としても、地域適正配置と学生の多様性確保の観点を踏まえた統廃合と定員削減を提言しており、上記のほか大都市の大規模校についても大幅な定員削減を求めている。

司法試験については、情報提供の更なる推進が指摘される一方、5年以内3回の受験回数制限の見直しについては勧告が見送られた。当連合会は現在の合格率の低迷の下で、当面5年以内5回等への受験回数制限の緩和を緊急提言している。

なお、当連合会は、すでに2011年1月25日付けの「『法科大学院(法曹養成制度)の評価に関する研究会報告書』に対する意見書」で、法曹養成制度の改革に関する政策は法科大学院と司法試験だけでなく、その後の司法修習や資格取得後の研修等の法曹養成過程全体を視野に入れなければ適切な評価はできず、法務省及び文部科学省の施策に対する政策評価では限界があることを指摘していることを付言する。」


※ 法曹人口及び法曹養成制度の改革に関する政策評価<評価の結果及び勧告


谷直樹
ブログランキングに参加しています.クリックをお願いします!
  ↓

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
にほんブログ村
by medical-law | 2012-04-21 00:23 | 弁護士会

日弁連,大飯原子力発電所の運転再開に反対する会長声明

b0206085_622155.jpg日本弁護士連合会(日弁連)は,2012年4月20日,大飯原子力発電所の運転再開に反対する会長声明を発表しました.

大飯原子力発電所3号機及び4号機についての運転再開は時期尚早であり、原子力発電所の安全規制の仕組みからみても手続的に正当なものといえない。よって、当連合会は、政府に対し、再稼働を妥当とする判断を直ちに撤回し、同原子力発電所の運転再開をしないよう強く求める,という内容です.

会長声明は,以下の問題点を指摘しています.


◆ 暫定的な安全性の基準について

「(1) 全電源を喪失しても事態の悪化を防ぐ安全対策ができていること」について

「(1)に関する緊急安全対策は、既存の電源とは別の電源を確保するというものにすぎず、これは、これまでの電源確保対策の延長線上の対策であって、福島原子力発電所事故直後の応急処置にすぎない。また、仮に電源が確保されても、配電盤や海水ポンプが破壊されれば冷却機能の確保は図れないことは、福島原子力発電所事故が示したとおりである。」

「(2) 東日本大震災並みに想定値を超えた地震・津波に襲われても、核燃料が損傷しないことを政府が確認していること」について

「(2)については、まず、「東日本大震災並みに想定値を超えた地震・津波」とは、果たしてどのような地震・津波を指すのか明らかでない。また、これについて、安全評価(ストレステスト)の一次評価をもって基準を満たしたとしているが、原子力安全委員長自身が、一次評価では安全性が保障されるわけではないと述べている。」

「(3) 電力会社が、さらに安全を向上させる対策をいつまでに実施するか計画を作っていること」について

「(3)については、実施済みであることを確認するのではなく、いつまでに実施するのか計画を示せば足りるとされており、これでは意味がない。福島原子力発電所事故においてその有用性が示された免震施設の建設や、フィルター付きベントの設置など、事故時の影響を低減する重要な対策は後回しにされている。計画を策定しても、現にその計画が実施されなければ安全性は向上しないことは明らかである。」


◆ 耐震設計審査指針などの見直しがなされていないこと

「福島原子力発電所事故は、事故が起きないようにするためには原子力発電所の耐震安全性の確保こそが重要であることを示したにもかかわらず、その耐震設計審査指針などの見直しは全く実現していない。」



◆ 専門家による検討・国民的議論を経ていないこと

「上記の新しい安全性の基準なるものは、経済産業省及び原子力安全・保安院が実質的に主導し、これに基づき首相及び関係三閣僚によって決定されたものである。公正な専門家による検討や国民的議論を経たものではなく、当然、原子力発電所周辺、さらに広域の地方自治体の合意と理解も得られていない。」



◆ 他の代替手段の検討がなされていないこと

「原子力発電所の再稼働が必要な理由、すなわち、原子力発電所を再稼働しなければならない電力需要上の必要性があるのか、利用可能な電源設備、夏の電力使用ピーク時の電力使用削減策など他の代替手段は全くないのかについての検討も真剣になされたとはいい難い。」

谷直樹
ブログランキングに参加しています.クリックをお願いします!
  ↓

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
にほんブログ村
by medical-law | 2012-04-20 21:26 | 脱原発

大阪市立大学医学部付属病院,蘇生用バッグの組み立てミス,患者は低酸素脳症に

日刊スポーツ「医療ミスで女性意識不明 器具の弁逆に」(2012年4月20日)は次のとおり報じています.

大阪市立大は20日、医学部付属病院で、白血病で入院中の女性患者(45)の肺に酸素を送るための蘇生器具の使用を誤り、一時心肺停止し、低酸素脳症になる医療ミスがあったと発表した。意識不明の状態が続いており、回復しても脳に障害が残る可能性がある。

 市立大によると、女性は10日夜、自発呼吸ができない状態になり、午後9時45分ごろから約30分間、手動で肺に酸素を送り込む「蘇生用バッグ」を使用。だが、酸素を送り込む弁を誤った部分に取り付けていたため、十分に送れておらず、約15分間心肺が停止した。

 市立大によると、バッグは3月19日に別の患者に使用した後、3人の看護師が分解して洗浄。再度組み立てる際に誤り、酸素が送れるかどうかの確認をしていなかった。

 女性は2009年3月に白血病と診断。昨年11月に細胞を血液に移植する手術を受けたが、今年3月ごろから肺に水がたまるなど呼吸が困難な状態になっていた。

 病院は、19日に大阪府警阿倍野署に事故を届け出た。今後、外部の専門家による調査委員会を立ち上げて原因を調べる。(共同)」


大阪市立大学医学部附属病院における医療事故の発生について」ご参照


調査委員会による原因究明と再発防止策を期待いたします.
たしかに,バッグが正しく組み立てられていても,低酸素脳症になった可能性はありますから,因果関係は未だ不明ですが,重大な事故です.

谷直樹
ブログランキングに参加しています.クリックをお願いします!
  ↓

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
にほんブログ村
by medical-law | 2012-04-20 18:14 | 医療事故・医療裁判

静岡地裁沼津支部,裾野の男児O157訴訟和解報道を読んで

b0206085_5425614.jpg毎日新聞「裾野の男児O157損賠訴訟:発症で不適切処理」県など3者と和解成立 病院側600万円支払い /静岡」(2012年04月19日)は,次のとおり報じています.

「裾野市で06年、幼稚園に通っていた当時3歳の男児が腸管出血性大腸菌O157を発症し、幼稚園を経営する学校法人、治療を受けた病院の医療法人と県の3者に計約9575万円の損害賠償を求めた訴訟は、地裁沼津支部で和解が成立していたことが分かった。

 和解は3月26日付。医療法人が600万円、学校法人が120万円を支払い、県は「迅速で効果的な子どもの感染症対策に取り組む」と表明する内容。県議会は18日の臨時会で、和解案を承認することを議決した。

 訴状によると、男児は06年6月、幼稚園で下痢を発症し早退。保健所はO157の発生の可能性を幼稚園に伝えたものの必要な対策を取らず、幼稚園は男児の保護者に速やかに連絡せず、病院はO157の疑いがありながら不適切な投薬を行い、重い後遺症が残ったとしていた。

 男児の母親(40)は「コメントを差し控えたい」と話した。【西嶋正信、野島康祐】」


「病院はO157の疑いがありながら不適切な投薬を行い、重い後遺症が残った」というまとめでは,注意義務違反の内容とと因果関係と具体的な障害がわかりません.
ただ,この600万円という和解金額から推測すると,治療に問題があるが,仮に適切な治療が行われたとしても結果回避の高度の蓋然性があったとは言えない事案かもしれません.

谷直樹
ブログランキングに参加しています.クリックをお願いします!
  ↓

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
にほんブログ村
by medical-law | 2012-04-20 05:48 | 医療事故・医療裁判

大分大学医学部附属病院の元講師と前医学部長が著者となっている学術論文に不正

b0206085_351498.jpg

大分放送「大分大学病院の元講師論文で画像の不正流用」(2012年4月19日)は,次のとおり報じています.

「大分大学は医学部附属病院の元講師の男性が学術論文の中で不正に写真を流用していたとする調査結果を発表しました。
論文に不正な写真を使用していたとされたのは大分大学医学部附属病院の元講師の男性です。
この元講師は2000年に前医学部長ら4人と共同で腎臓疾患に効果がある科学物質についての論文を発表し、医学博士を取得しました。
しかし論文に不正な写真が使われた疑いが指摘され、大分大学が調査委員会を設置して調べていました。
大分大学は19日調査結果を発表し、元講師が論文の中で、化学物質を投与したラットの腎臓の写真として、何も投与していないラットの写真を流用しねつ造していたと明らかにしました。
大分大学では元講師と前医学部長の処分を検討しています。」


ねつ造と言うからには,写真の不正利用は故意なのでしょう.
論文の価値にも影響するでしょう.元講師の研究者としての信用にも影響するでしょう.

谷直樹
ブログランキングに参加しています.クリックをお願いします!
  ↓

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
にほんブログ村
by medical-law | 2012-04-20 02:58 | 医療

青森市民病院のロタウイルス性胃腸炎による女児死亡訴訟和解報道を読んで

b0206085_312754.jpg毎日新聞「青森市民病院の女児死亡訴訟:市が和解金支払いで合意 /青森」(2012年4月19日)は,次のとおり報じています.

「07年に青森市民病院で当時1歳の女児が医療過誤で死亡したとして、両親が青森市に損害賠償を求めた青森地裁(浦野真美子裁判長)の訴訟で、市が原告側に和解金を支払うことで合意したことが18日分かった。

 原告側代理人によると、原告は同病院が適切な処置を行わなかったとして、約4500万円の損害賠償を請求していた。和解金は市議会の承認を経て7月ごろ支払われる予定。和解の合意は16日で、金額は明らかにされていない。

 訴状によると、女児は07年3月24日、青森市の母の実家で嘔吐(おうと)し、同病院で点滴を受けた。その後も嘔吐や下痢があり、25日に再受診したが、「嘔吐が止まれば下痢があっても来診する必要はない」と嘔吐止めを処方された。下痢は26日も続き、市内の別の病院で「大変危険な状態」と診断され、市民病院に救急搬送されたが、同日夜に多臓器不全で死亡したとしている。【宮城裕也】」


3月24日に,嘔吐による脱水に対し点滴で対処したのは,普通です.

3月25日の「嘔吐が止まれば下痢があっても来診する必要はない」と嘔吐止めを処方された,というのは,もう少し慎重な説明であるべきと思います.
吐くものがなければ嘔吐は一応治まりますが,下痢が続いて,元気がない,ぐったりしている,うとうとしている,などの状態であれば,緊急受診の必要があるでしょうから,慎重な説明をすべきでしょう.

提訴時の報道では,3月26日にも市民病院に行っているのですが,診てもらえず,個人病院を受診して,市民病院に救急搬送され,ロタウイルスによる重い脱水症状を合併したウイルス性胃腸炎と診断されています.
市民病院の医師は,「3月」「1歳の小児」「嘔吐」「下痢」から,ロタウイルス性胃腸炎の可能性も考えたでしょうし,脱水の危険もわかっているはずですから,3月26日には,患児を診るべきでしょう.

日本ではロタウイルス性胃腸炎で年間10~20人死亡していると推定されていますので,入院治療しても必ず救命できたとまでは言えませんが,本件は適切な医療を受けられていないことが明らかです.

谷直樹
ブログランキングに参加しています.クリックをお願いします!
  ↓

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
にほんブログ村
by medical-law | 2012-04-20 02:19 | 医療事故・医療裁判

ベリタス病院,予防接種で乳児2人に同針使用,河西市に報告せず

b0206085_3221461.jpg毎日新聞「医療ミス:予防接種で乳児2人に同針使用−−川西・ベリタス病院 /兵庫」(2012年4月19日)は,次のとおり報じています.

「川西市は18日、同市新田1のベリタス病院で今月5日、BCGの予防接種で同じ針を2人の乳児に使うミスがあったと発表した。乳児2人の血液検査の結果、ウイルスの感染はなかったという。

 市と病院によると、同日午後、40代の男性小児科医が生後3カ月の男児に注射後、専用の針を廃棄せず、約20分後に生後3カ月の女児にも同じ針を使ったという。同病院では注射した医師が針を廃棄するルールだったが、この小児科医は看護師が捨てると誤解していたという。

 市はベリタス病院に予防接種を委託。同病院は市にミスの報告をせず、保護者が16日、市に健康相談をしたことで発覚した。【高瀬浩平】」


病院は,この小児科医に,注射した医師が針を廃棄することを,きちんと伝えたのでしょうか.もし,きちんと伝えていないとしたら,小児科医よりむしろ病院のほうに責任原因があるように思います.

また,病院が,ミスを市に報告していないのは,再発防止の観点からも良くないと思います.

そういえば,アラームが鳴ったのに,夜勤の看護師3人がすぐに対応せず,患者は呼吸が停止して意識がなくなり死亡した事案で,神戸地裁平成23年9月27日判決は,アラームへの対応を優先すべきだった,と過失を認めましたが,それがこのベリタス病院でした.

谷直樹
ブログランキングに参加しています.クリックをお願いします!
  ↓

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
にほんブログ村
by medical-law | 2012-04-19 18:28 | 医療事故・医療裁判

山形地裁米沢支部で,カルテの保存期間を誤解し廃棄したと答弁した医療法人

b0206085_3321918.jpg

読売新聞「保存必要なカルテ廃棄 医療法人「勘違い」(2012年4月18日)は,次のとおり報じています.

「南陽市の70歳代の女性患者が、「自分の病気のカルテ(診療録)を見ることができない」として、同市で診療所を経営する医療法人を相手取って、カルテの開示と慰謝料など50万円の損害賠償を求めた民事訴訟の第1回口頭弁論が17日、山形地裁米沢支部(上原卓也裁判官)であり、被告側は争う姿勢を見せた。訴訟の中で、医療法人側が、本来は保存が必要なカルテを廃棄していたことが判明した。

 医師法は、患者の初診から診療が完了するまでのカルテについて医療機関が完了時から5年間保存するように定めているが、被告は直近5年間のカルテしか残していなかったという。このため、県置賜保健所から昨年2月に改善を求める行政指導を受けた。

 行政指導について、被告は答弁書で、「カルテの保存期間は、さかのぼって5年間であると勘違いしていた」と説明。同保健所などによると、この医療法人の管理者は昨年3月、「今後はカルテを5年以上保存する」という改善報告書を提出したという。

 訴状によると、原告は1995年10月が初診で、2009年1月まで被告の診療所で高血圧症の治療を受けたが、95年以降のカルテの開示請求に対し、05年以降の分しか開示されなかったという。このため、「医療記録を知る権利を侵害された」などと訴えている。

 一方、被告は「04年以前のものは廃棄処分した。存在する全てのカルテは開示しており、理不尽な開示拒否 一方、被告は「ではない」などと主張。被告側代理人の弁護士は取材に対し、「主張は答弁書の通り」とコメントした。」


上記記事は診療の完結から5年の根拠として医師法をあげていますが,療担規則第9条をあげるのが適切と思います.

保険医療機関及び保険医療養担当規則(昭和三十二年四月三十日厚生省令第十五号)第九条は「保険医療機関は、療養の給付の担当に関する帳簿及び書類その他の記録をその完結の日から三年間保存しなければならない。ただし、患者の診療録にあつては、その完結の日から五年間とする。」と定めています.

保険医療機関である被告がカルテの保存期間についての保険医療機関及び保険医療養担当規則第九条を誤解し,同規則に違反して,カルテを破棄したために,原告が医療記録を知る権利を侵害されたのですから,要件はすべて充たしており,被告は損害賠償責任を負うはずです.
04年以前のものは廃棄処分したという主張は,カルテ開示請求に対する抗弁になります(カ04年以前のカルテの開示は不可能ですから,開示義務はありません)が,損害賠償請求に対する抗弁にはなりません.

谷直樹
ブログランキングに参加しています.クリックをお願いします!
  ↓

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
にほんブログ村
by medical-law | 2012-04-19 04:21 | 医療事故・医療裁判

静岡県立病院機構静岡県立総合病院,1万6810人の患者の個人情報入りUSBメモリーを紛失

b0206085_3295943.jpg静岡県立病院機構静岡県立総合病院は,患者の病歴管理データ16,810件(患者ID、氏名、性別、年齢、病名、手術名、手術日、入院日、退院日、在院日数、主治医名)入りのUSBメモリーの紛失事故を公表しました.

静岡県立病院機構静岡県立総合病院のサイトの「個人情報の紛失についてのご説明とお詫び」では,「平成24年4月11日(水)、職員がUSBメモリの紛失に気付き、病院、自宅、外出先などを探したが見つからなかったため、4月12日(木)に上司へ紛失の報告をした。その後、15日(日)まで所属課職員で執務室等を探したが見つからなかった。」というだけですが,報道は「病院側の説明では、事務担当職員が6日、入院患者の個人情報が記載された病歴管理台帳を私物のUSBメモリーに保存して自宅に持ち帰って作業。10日に病院の執務室で使用した後、11日になってUSBメモリーの紛失に気づいたという。」と伝えています(MSN産経「入院患者の個人情報、県立総合病院が紛失 静岡」(2012年4月19日)).

再発防止策について,同院のサイトでは「今後、このような事態を二度と起こさぬため、すべての職員に対して改めて個人情報保護の周知・教育を実施するとともに、情報管理の強化・徹底に努め再発防止に万全を期します。」と述べています.

個人情報保護の周知・教育だけでは,紛失事故は防止できません.
情報管理の強化が重要だと思います.
たとえば,愛媛大学医学部付属病院は,2012年2月より,USBデバイスをサーバーで一元管理して個別に認証し,かつUSBデバイスにコピーしたファイルを強制的に暗号化するソフトを導入しました.このような情報漏洩対策ソフトで患者の個人情報を管理する必要があると思います.

ちなみに,報道によると,昨年6月以降,個人電磁情報の紛失事故は,以下の施設で起きています.

2011年 6月
慶應義塾大学病院スポーツ医学総合センター
北海道大学病院

2011年7月
医療法人 柏堤会(財団) 戸塚共立第1病院
藤田保健衛生大学病院
昭和大学歯科病院

2011年8月
筑波メディカルセンター病院

2011年9月
千葉県精神科医療センター
鹿児島大学病院

2011年10月
JA茨城県厚生連茨城西南医療センター病院
独立行政法人国立病院機構三重中央医療センター
独立行政法人労働者健康福祉機構関東労災病院
大和市立病院

2011年11月
独立行政法人国立病院機構金沢医療センター

2012年1月
医療法人聖愛会
独立行政法人国立病院機構千葉医療センター
独立行政法人国立病院機構宇多野病院
東京女子医科大学附属八千代医療センター

2012年2月
京都府立洛南病院(ただし一時紛失)
岡山大学病院
藤沢市民病院

2012年3月
日本赤十字社医療センター

2012年4月
ごう在宅クリニック(札幌)
静岡県立病院機構静岡県立総合病院


個人情報紛失事故は,全国どこの施設でも起きることです.情報漏洩対策ソフトで患者の個人情報を管理することをお奨めいたします.


谷直樹
ブログランキングに参加しています.クリックをお願いします!
  ↓

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
にほんブログ村
by medical-law | 2012-04-19 02:59 | 医療

厚労省保険局,日本医療機能評価機構運営委員会での産科補償制度改定検討に反対,厚労省での改定検討を表明

b0206085_3543755.jpg2012年4月18日の社会保障審議会医療保険部会で,厚労省保険局は,日本医療機能評価機構運営委員会が産科医療保障制度の改善を検討していることに疑問を示し,保険者側の立場からの制度改定を(日本医療評価機構ではなく)厚労省で検討する考えを示しました。
産科医療保障の支払件数が当初推定より少ないので,掛け金を少なくしようという保険者側の圧力に,厚労省保険局が同調したようです.

しかし,現在,制度を動かしている日本医療機能評価機構の運営委員会を無視して保険者側の立場からの制度改定を進めることは問題です.脳性麻痺の診断を待っている患者もいますし,現行の補償範囲・補償金額の引き上げが望まれます.

キャリアブレイン「産科補償の新制度、厚労省でも検討へ- 掛け金の水準などテーマに」(2012年4月18日)は,次のとおり報じています.
 
「医療保険部会では保険者から、日本医療機能評価機構の運営委員会で新制度を検討することを問題視する声が上がった。小林剛委員(全国健康保険協会理事長)は、これまでに補償対象になった件数が当初の想定を大きく下回っていることに触れ、「支払準備金の余剰の状況によっては、掛け金の見直し、保険者への払い戻しを検討してほしい」との考えを改めて示した上で、「掛け金や補償対象など、制度の根幹にかかわる見直しについては、公的な場で議論する必要がある」と述べた。

 こうした意見を受け西辻課長は、「財源は保険財政なので、そこで議論するのはいかがなものかと思っている」と述べ、厚労省でも新制度について検討する場を設ける方針を示した。
 具体的な検討の場については、同制度の関係者を専門委員に任命して医療保険部会で議論するか、同制度の関係者や保険者などで構成する新たな会議を設置するかを医政局と相談するという。」

谷直樹
ブログランキングに参加しています.クリックをお願いします!
  ↓

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
にほんブログ村
by medical-law | 2012-04-19 02:21 | 医療