弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

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小宮山厚生労働大臣,薬事法改正案(第三者組織)見送り報道について抗議

b0206085_3463537.jpg◆ 小宮山厚生労働大臣の発言

小宮山厚生労働大臣は,4月17日の記者会見で,次のとおり述べました.


「(記者)
 薬害の第三者機関についてですが、一部報道で今国会での薬事法改正案は…。

(大臣)
 昨日の報道ですね。それは、書いた社には間違っていると私から抗議をいたしました。(国会の)委員会で言ったのは、政府として法案を提出するのは今国会は難しいということを言ったので、今は議員立法の動きがありますので、議員立法としてこの国会に提出されるということは全く否定しているものではありません。事実関係をきちんと報道してほしいということを報道した社には申入れをしています。

(記者)
 そうすると、薬事法の改正案ということで、政府として今国会というのは難しいけれども、議員立法であれば道筋をつけるべくということですか。

(大臣)
 もちろんです。これは、第三者機関については政府として取り組めればいいのですが、いろいろな今までの経緯もありこれは超党派の議員立法でやっていただくことがいいということを私からも議員にそういうお話しをして、今はそこの動きがあるというふうに承知をしています。」


◆ 議員立法の見通しは?

審議会を新設しないとした1999年の内閣決議に,未だに拘束され続けるのは著しく不合理です.実際に例外がいくつもあります.
それなのに,厚労省が,1999年の内閣決議を楯に,医薬品行政を監視する第三者機関の創設に消極的で,薬事法改正案提出を土壇場で見送る,というは,納得できません.

第三者機関は,長妻厚生労働大臣のときからの約束ですし,議員立法での実現の見通しが具体的にあるのであれば話は多少違ってくるかもしれませんが,議員立法の目処がたっていないところで,厚生労働大臣が議員立法でおやりなさい,と述べるのは,無責任と非難されてもやむをえないのはないでしょうか.

谷直樹
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by medical-law | 2012-04-18 18:58 | 医療

名古屋高裁金沢支部平成24年4月18日判決,富山医科薬科大(現富山大)付属病院の感染症事案,患者側勝訴

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名古屋高裁金沢支部が,2012年4月18日,医療過誤事件で富山大学側の控訴を棄却したことが報じられています(チューリップテレビ).
これは,病院が設置した事故調査委員会と裁判所の判断が分かれた事案です.

◆ 事案

患者(女性,当時20歳)は,2004年9月富山医科薬科大(現富山大)付属病院で,大腸全摘出手術を受け,MRSA腸炎による敗血症性ショックで同年12月12日死亡しました.

◆ 争点と判断

病院は,遺族の要請で,医療事故調査委員会を設置し,2005年9月に「明らかな医療過誤があったとは判断できない」との調査結果をまとめました.病院側は,治療薬を投与した12月11日より早くに感染症を疑うのは困難だったなどと争いました.

患者側は,発熱や下痢などの症状があり感染症が十分に疑われるのに担当医が早期に治療薬の投与などの処置を開始する注意義務を怠った,と主張しました.

富山地裁平成23年3月30日判決は,12月4日の時点で患者には発熱や多量の下痢,脱水などの症状があったことから,感染症にかかっていた可能性が高く治療を開始すべきだった,とし,また患者の死亡と担当医の治療の過失とには相当因果関係がある,と認定し,富山大学に約7500万円の賠償を命じました.

富山大学は,平成23年4月11日,名古屋高等裁判所金沢支部に控訴していましたが,結局,このように控訴審も富山大学の主張がいれられず,患者側勝訴となりました.
やはり,発熱や下痢などの症状がある以上感染症を疑うべきで,本件は感染症に対する対応が遅れていたものと考えられるでしょう.

【追記】

最高裁第二小法廷は,富山大学の上告を退けました.


谷直樹
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by medical-law | 2012-04-18 17:54 | 医療事故・医療裁判

livedoorネットリサーチ「勤務中に喫煙で懲戒免職検討、橋下市長の意見に賛成?」

livedoorネットリサーチ「勤務中に喫煙で懲戒免職検討、橋下市長の意見に賛成?」のアンケート結果は,賛成69.3%でした.
賛成コメント,反対コメントは次のとおりです.

◆ 賛成コメント

・一歩間違えたら「大惨事」の原因者を首にするんでしょ? 大賛成です
・喫煙、禁煙を利用者に徹底させる側の人間が自分は喫煙マナー守らないなんて大人として最悪。首が正しいかどうかわわからないが見せしめ的な効果はあると思う
・ボヤ騒ぎがあった後だからねー。大阪市、大阪市交通局・・・駄目なのばかり。
・サボリ。命令無視。常識無。 クビでいいよ。 いなくても仕事は回る。
・この質問では問題点は出てこない、喫煙が原因で非常ベルを鳴らし電車を止め会社に大きな損害を与えた事実が入れば当然クビは一般の会社なら当たり前です。公務員だから許されるはもはやだめでしょう。


◆ 反対コメント

・やはり橋下徹はファシストだ。
・この助役、危機感はないし、まったくふざけすぎているのは、事実。しかし、降格人事でヒラにしたほうが、より反省を促すことになると思うし、組織の活性化につながると思う。
「懲戒免職にしたいぐらいだ」とやっておいて、ヒラ降格人事で良いのでは?裁判になると橋下氏が負けちゃうとも思
うし。

◆ 感想

さすがに懲戒免職は重すぎ,裁判になれば,懲戒解雇は取り消されるでしょう.
橋下氏のやり方が強権的として強く反発され,禁煙運動にマイナスになることが心配です。
ただ,勤務中の喫煙が禁止させているのに,助役が喫煙して火災報知機を作動させて地下鉄を止めたことについて,7割近くの人が懲戒免職で良いと考え,反対コメントも喫煙擁護論ではないことに安心しました.

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by medical-law | 2012-04-18 00:52 | タバコ

日本の女性外科医の65%が将来展望もてず,50%が仕事を辞めるかもしれない

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東京慈恵会医科大学の川瀬和美氏は,第112回日本外科学会定期学術集会で,日本女性外科医会,米国女性外科医会,香港女性外科医会の会員へのインターネットアンケート調査の結果を発表しました.

「自分が10年後現在よりも高い職責にあったり,難しい仕事を行っていると思うか」との質問に,「はい」と回答したのは、日本35%,米国53%,香港87%でした.
それどころか,家事・育児・介護のストレスのための辞職の可能性については,日本50%,米国4%,香港25%が肯定でした.

つまり,日本の女性外科医は,今のままでは,3人に2人が将来に展望をもてず,2人に1人は仕事を辞めるかもしれない,という調査結果です.

アンケート調査には問題を感じている人が回答する,というバイアスがあるかもしれませんが,それにしても,これはゆゆしきことです.女性裁判官で調査をしたら,このような調査結果にはならないはずです.
労働者が性別により差別されることなく,働く女性が母性を尊重されつつ,その能力を十分に発揮できる雇用環境を整備することが求められています.
当然,女性外科医師が働きやすい環境を整え,昇進も平等であるべきです.
医療基本法には,このような両性の平等の観点からの規定も設けるべきでしょう.

3団体骨子案の「2 医療提供体制の充実」は「必要な医療従事者を育成し、診療科や地域による偏在を是正し、医療機関の整備と機能分化・適正配置を進め、十分に連携された切れ目のない医療提供体制を実現する。」というおのですが,その内容の一つに位置づけられると思います.

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by medical-law | 2012-04-18 00:34 | 医療

基本合意,骨格提言を反古にする野田政権,障害者自立支援法廃止見送りを決定

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政府(当時は鳩山内閣)は,自公政権下で制定された障害者自立支援法を廃止し、新たな総合的福祉制度を定めると約束し,原告団と和解し,障害者自立支援法違憲訴訟を収束したにもかかわらず,現政府(現在は野田内閣)は,自立支援法を見送りとすることを決めました.
国が,裁判所で原告団と交わした和解に反し,基本合意,骨格提言を反古にするなど,法治国家ではあり得ないことです.

読売新聞「自立支援法廃止見送り」(2012年4月17日 読売新聞)

障害者「約束ないがしろ」 弁護団、来月にも集会
政府がいったん約束した、障害者自立支援法の廃止を見送り、改正にとどめる方針を決めたことから、県内の障害者や違憲訴訟の埼玉原告・弁護団が「約束違反だ」と批判を強めている。改正案は「障害者総合支援法」と名称変更し、福祉サービスの対象に難病患者を含めることを盛り込んで、民主、自民、公明の3党合意により今国会で成立する見通し。原告弁護団は5月にも集会を開き、今後の対応を協議する。

 「“国約”がないがしろにされた。認めるわけにはいかない」。長女・育代さん(39)が重度の障害を抱える川口市の新井たかねさん(65)は声を荒らげた。

 育代さんは蓮田市の障害者支援施設「大地」に入所して9年。当初は施設利用料として月額3万4100円を負担していたが、2006年の自立支援法施行以降、食費や水道使用量、光熱費が実費となり、毎月5万円前後の出費が重くのしかかるようになった。

 新井さんと夫は既に現役を退き、月8万円弱の障害基礎年金でまかなうのは容易ではない。「私たちがいなくなったら、いったい誰がこの子を守っていくのか」。新井さんは不安げに話す。

 新井さんは、3月13日の閣議決定の前に開かれた、訴訟原告団向けの説明会に参加した。新井さんによると、約300人の参加者の中で政府の提案に賛同する人はおらず、「(政府が廃止の約束を受け、新法制定に向けてまとめた)骨格提言が、まったく生かされていない」と主張したが、「これが事実上の廃止」と説明されたという。

 新井さんは「信じられなかった。政府は私たちの意見をどう受け止めているのか」と憤りを隠さない。

 厚労省の担当者は、「廃止にして新法にすると、現在受け入れているサービス事業者の指定などを一からやり直すことになり、自治体や事業者が混乱を起こす」と説明する。

 同省によると、10年4月から低所得者の自己負担を原則無料としたことで、総給付費1兆6000億円のうち、3~5%だった障害者の負担率は0・38%に引き下がったといい、「(自立支援法は)実質的には廃止」とする。

 だが、現行法下では、低所得者かどうかは配偶者の収入も考慮して判断される。同省の担当者は「日本の法体系では、扶養義務の考えが根幹にあり、自立支援法だけを切り離して考えることはできない」としている。

 弁護団の柴野和善弁護士は「難病患者まで対象を広げたことは評価できるが、基本合意は守られていない。これからも世論に訴えていく」と話している。

◆障害者自立支援法◆ 身体、知的、精神の各障害種別で分かれていた制度を一本化した、医療・福祉サービスの総合法。障害者の人格を尊重し自立を促す目的で、自民党政権下の2005年10月に成立、06年4月に施行された。

 福祉サービスを受けるのに、原則1割が自己負担となることなどから、「憲法の保障する生存権の侵害だ」などとして、08年10月~09年10月、全国の障害者ら71人が計14地裁に違憲訴訟を起こした。

 同法廃止をマニフェストにうたった民主党に政権が移り、10年1月、当時の鳩山内閣が「13年8月までに同法を廃止し、新たな総合的福祉制度を定める」などとする基本合意を原告側と締結。同年3月のさいたま地裁を手始めに、14地裁すべてで和解が成立していた。」


谷直樹
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by medical-law | 2012-04-17 20:18 | 福祉

富山刑務所視察委員会,搬送の遅れ指摘し説明と再発防止を求める

b0206085_6343814.jpg富山刑務所で,搬送が遅れ受刑者死亡」の続報です.

刑務所の対応に問題がある事案で,富山刑務所視察委員会は,説明と再発防止を求める意見書を刑務所に提出しました.

読売新聞「出所直前、受刑者が急死…救急車要請まで5時間 」(2012年4月17日)は,次のとおり報じています.

「富山刑務所(富山市)で2月、70歳代の男性受刑者が容体急変後に死亡し、同刑務所の外部委員会が16日、「死亡に至る過程に多くの不適切な点があり、深刻な事案」と指摘する意見書を刑務所に提出したことが、関係者への取材でわかった。

 刑務所が救急搬送を要請した5時間以上前に容体が急変しており、「直ちに救急車を要請すべきだった」と批判している。意見書は、説明と再発防止策、それらの公表を求めている。

 調査していたのは、同刑務所視察委員会(委員長・福島武司弁護士)。視察委員会は、刑務所運営の透明性を確保するため、2006年から各刑務所に設置され、地域の弁護士や医師らで組織されている。

 意見書や刑務所への取材によると、男性は昨年6月に入所。糖尿病などの持病があり、脳梗塞で体が不自由で、単独室で寝起きしていた。1月下旬から自分で食事ができなくなり、刑務官らが介助をしていた。

 死亡した2月5日は、朝から何も食べられず、液体の栄養剤も吐き出した。日曜で休みだった常勤看護師が呼び出されたが、「30分ごとの動静確認」を指示して午前中に帰宅した。

 男性は午後5時頃に意識がもうろうとなり、同5時28分、午前の診察で1分間に50だった脈拍が38まで低下。同8時35分頃には、声かけに返事がなかったが、監督当直者の刑務官は「昨年12月に低血糖障害で昏倒(こんとう)したときよりも症状は軽く、生命に別条はない」と判断したという。容体がさらに悪化した後、刑務所は午後9時30分に再び看護師を呼び出していた。

 当直者が救急搬送を要請したのは午後10時35分。男性は搬送先の病院で午後11時52分に死亡した。刑務所では昨年11月に常勤医が退職し、医師がいなかった。

 意見書は、刑務所に対処マニュアルがなく、午前中の様子から急変を予想できたのに「備えがまったくなされなかった」とし、脈拍低下以降に4回、救急搬送要請や医師への相談など措置を取るべき機会を逸したと指摘。「男性は、翌月には刑期満了を迎えるというタイミングで死亡しており、結果は重大」としている。」


【追記】

朝日新聞「富山刑務所「適切に医療措置」受刑者死亡 視察委に回答」(2012年8月29日)は,次のとおり報じています.
 
「富山刑務所(富山市西荒屋)で2月、持病のある受刑者が死亡し、同刑務所の視察委員会(福島武司委員長)が「死亡に至る過程で不適切な点がある」とする意見書を刑務所に提出していた問題で、同刑務所が「対応が明らかに不適切であったとは考えていない」などと回答していたことがわかった。

 同委員会は4月中旬、死亡受刑者の健康管理上の問題点を明らかにし、再発防止策を定めることなどを意見書で求めていた。


 同刑務所の回答書は5月30日付で、それによると、死亡受刑者が入所から死亡に至るまでの間、「医師らにより適切な医療上の措置が講じられていた」とし、健康管理上の問題はなかったとしている。


 再発防止策では、これまで急患発生時に監督当直者は職員3人を確保した上で救急車を要請していたが、今後は救急車要請を優先する▽現在は非常勤の医師が交代で診察しているため、夜間や休日の急患発生時には富山市の救急医療センターに迅速に相談などし、「引き続き常勤医師の確保に努める」としている。


 この回答について福島委員長は「回答は医師の意見が入ったものではなく、医療の素人だけで作成されたもの。今後は毎年、年度末にまとめている意見書で再度見解を伝えることになる」と話した。」


刑務所側は,弁護士や医師で構成された委員会の意見書を否定し,明確な根拠を示すこと亡く適切と主張しています. このような感覚こそが問題です.

 
谷直樹
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by medical-law | 2012-04-17 17:21 | 医療

福岡地裁平成24年3月27日判決,脳梗塞の前兆の発作非専門医でも診断義務あり,村上華林堂病院に賠償命令

医療は専門化していますので,医師が他科の疾患を疑うことができたか(疑い診断)かが,よく争いになります.

福岡地裁平成24年3月27日判決が報道されていますので,ご紹介いたします.

本件は,素人である飲食店の店主が脳梗塞を疑って救急車を呼んだにもかかわらず,救急搬送先の村上華林堂病院の医師が脳梗塞の疑い診断を行わなかった事案です.脳梗塞の疑いが除外診断されたために,診断が15日後になってしまった事案です.

救急患者を受け入れている病院の医師は,専門外の疾患といえども,せめて重大な疾患の疑い診断ができる程度の能力は必要でしょう.

日本経済新聞 「非専門医にも診断義務 脳梗塞の前兆発作で福岡地裁判決」(2012年4月17日)は,次のとおり報じています.

「脳梗塞の前兆の発作を医師が見逃し治療を怠った結果、脳梗塞で半身まひなどの後遺症を負ったとして福岡市の70代女性が、救急搬送先の同市の村上華林堂病院側に約8千万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、福岡地裁は16日までに440万円の支払いを命じた。

 消化器などの担当医が対応したため、専門外でも脳梗塞を疑う発作と診断する義務があったかが争われ、増田隆久裁判長は「発作は一般的な医学文献に載っており、非専門医でも診断すべきだった」と判断した。判決は3月27日に言い渡され、確定した。

 判決によると、女性は2009年3月、飲食店での支払時に硬貨を何度も落としたため、店主が脳梗塞を疑って119番通報し搬送されたが、同病院の医師は発作と診断せず、15日後に別の病院で脳梗塞と分かった。

 判決は、発作だと診断していても脳梗塞を完全には防げないとしたが、重篤な後遺症の発生を免れた可能性はあったと認定した。

 病院側は「十分な診療をしたと考えているが、紛争の長期化を避けるため控訴しないことにした」とコメントしている。〔共同〕」


谷直樹
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by medical-law | 2012-04-17 08:47 | 医療事故・医療裁判

日本医療機能評価機構 医療安全情報[No.65],救急カートに配置された薬剤の取り違え

日本医療機能評価機構は, 2012年4月16日,医療安全情報[No.65](救急カートに配置された薬剤の取り違え)を公表しました.

一刻を争う救急の現場では,単にラベル表示しただけでは取り違えミスが起きることを示しています.
救急カートの薬剤を取り違えるミスは,他の医療機関でも生じ得ることです.

ラベルと薬剤の位置関係を一定にし,一目瞭然の状態にしておくことは,有用でしょう.
また,口頭指示は,言い違え,聞き違え,思い違えがありますので,「ジゴシンですね」「セルシンですね」と確認する必要があるでしょう.

医療安全情報[No.65]の「事例」と「事例が発生した医療機関の取り組み」は,以下のとおりです.

◆ 事 例 1

気管支鏡検査の際、看護師は止血目的でボスミン生食を準備するため、救急カートからボスミンを取り出した。その際、救急カートの薬剤の仕切りのボスミンというシールを見たが、急いでいたためアンプルの薬剤名の確認はしなかった。
検査後、救急カートの確認を行ったところ、ボスミンと硫酸アトロピンの本数が合わないことに気付き、ボスミンと表示をはさんで配置が隣り合っていた硫酸アトロピンを使用したことが分かった。

◆ 事 例 2

患者が痙攣を起こしたため、医師は、看護師に「セルシン」と口頭で指示した。看護師は救急カートの表示を見て、ジゴシンをセルシンと思い込み、準備した。医師は用意された薬剤を確認せず注射した。

◆ 事例が発生した医療機関の取り組み

・救急カート内の薬剤名が識別しやすいように医療機関で工夫し、その方法を院内で標準化する。
・救急カートから薬剤を取り出す際や注射器に準備する際に、薬剤名を確認する。


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by medical-law | 2012-04-17 08:22 | 医療事故・医療裁判

全国医師ユニオン,「勤務医労働実態調査2012」の実施要領を発表

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キャリアブレイン「勤務医の労働実態把握し、改善策提言-医師ユニオンが調査実施要領を発表」(2012年4月16日)は,次のとおり報じています.

「全国医師ユニオン(植山直人代表)は15日、年内にまとめる「勤務医労働実態調査2012」の実施要領を発表した。5月中旬から調査を開始し、10月にも結果を発表する。植山代表は、「単にアンケートの結果発表でなく、労働実態が改善されていなければ、具体的な提言を要請していく」と述べた。各医療団体などにも協力を要請し、全国規模のアンケート調査を目指す。

 今回の勤務医労働実態調査は、これまでの診療報酬改定などを通じた勤務医の負担軽減策の効果を検証するため、日本医療労働組合連合会(医労連)が5年前に実施した「医師の労働実態調査」をベースに質問項目を作成する。アンケート調査の対象は、3000人程度を目標にしている。

 このアンケート調査の質問には、▽夜間、休日の救急医療や重症者対応の勤務体制▽宿直明け後の勤務の有無▽医事紛争の経験の有無▽精神的なストレスについて▽特定看護師制度に賛成か反対か―などが盛り込まれる見通し。

 全国医師ユニオンは同日に、このアンケート調査の実行委員会を立ち上げた。同実行委員会の世話人には、植山代表の他に、本田宏氏(済生会栗橋病院院長補佐)、中原のり子氏(中原過労死裁判原告)、住江憲勇氏(全国保険医団体連合会会長)らが名を連ねている。」


勤務医の過重労働問題は,医療における人権保障の問題であり,医療の根幹の問題です.
労基法違反の事実がどれくらいあるのか,明らかにしていただきたいと思います.

提言では,医療費を増やすべきと主張できるか,医療秘書を含め医療従事者の増加の必要性を訴えることができるか,医療施設の集約化,偏在解消の具体策に踏み込めるか,注目したいと思います.

谷直樹
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by medical-law | 2012-04-16 23:45 | 医療

政府・民主党,薬害肝炎原告団との約束を守らず,薬事法改正案を国会提出見送り

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「第三者組織」は,最終提言に基づくものであり,政府=民主党はそのための薬事法改正を準備し,今国会提出を約束していました.ところが,政府=民主党,消費税法案を通すために,薬事法改訂案の提出を見送る,というのです.

msn産経「薬事法改正案、今国会提出を断念 政府・民主 薬害肝炎原告団との約束を反故」(2012年4月16日)は,次のとおり報じています.

「政府・民主党は15日、医薬品行政を監視・勧告する「第三者組織」の設置を盛り込んだ薬事法改正案の今国会への提出を断念した。野田佳彦首相が「政治生命を懸ける」と表明した消費税増税関連法案の審議を優先させるためだが、平成20年の薬害肝炎訴訟を教訓に、民主党の歴代厚生労働相は薬害肝炎原告団に対し「今通常国会への法案提出」を約束していただけに、関係者からは批判が出ている。

 「第三者組織」は、国家行政組織法第8条に基づき、薬害の発生や拡大を未然に防ぐために設置する。20年に原告団と舛添要一厚労相(当時)が交わした基本合意書に、設置することが盛り込まれていた。

 政権交代後の22年には、長妻昭厚労相(同)が原告団との公開協議で「24年の通常国会に法案を提出できるよう制度設計を詰める」と表明。23年には細川律夫厚労相(同)も「薬事法改正案を24年の通常国会に提出する」と述べていた。

 ところが、小宮山洋子厚労相は今年3月の衆院厚生労働委員会で「今国会の法案提出は難しい」と述べた。小宮山氏は、衆参両院への設置が見込まれる社会保障と税の一体改革に関する特別委員会に常時出席する可能性が高く、民主党国対幹部は「薬事法改正案の審議まで手が回らなくなる」と指摘する。

 政府・民主党は、衆院選マニフェスト(選挙公約)に記した後期高齢者医療制度の廃止法案についても今国会での審議を見送る方針で、消費税法案の審議の影響を受ける法案は今後続出しそうだ。

 「第三者組織」設置の見送りについて、山口美智子原告団長は産経新聞の取材に対し「首相には国民の命を思う姿勢がない」と批判している。」


政府・民主党が約束を守らないのは,これに限ったことではありませんが,薬害肝炎弁護団との約束を反故にすることは許されることではありません.

また,薬害肝炎救済立法は5年の時限立法ですが,医療機関に保存されているカルテなどの記録調査は遅々としてすすんでいませんので,今国会で期限延長を成立させる必要があります.

谷直樹
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by medical-law | 2012-04-16 14:19 | 医療