弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

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日本顎顔面インプラント学会の調査,インプラント治療3年間421件の重篤な医療トラブル

NHK「インプラント 重篤トラブル400件余」(2012年5月31日)は,次のとおり報じています.

「あごの骨に金属を埋め込んで人工の歯を取り付けるインプラント治療で、手術の際に神経を傷つけてしびれが残ったなどの重篤な医療トラブルが去年までの3年間に全国で400件余り起きていたことが、専門の歯科医師などで作る学会の初めての実態調査で明らかになりました。

この調査は、インプラント治療を巡るトラブルが後を絶たないことを受けて「日本顎顔面インプラント学会」が、口くう外科がある病院や歯科大学の付属病院など、地域の拠点となっている全国の79の施設を対象に初めて行ったもので、9割を超える74施設から回答がありました。

それによりますと、歯科医院などでインプラントの手術を受けたあと再治療が必要になった重篤な医療トラブルは、去年までの3年間で合わせて421件報告されました。
このうち、あごの骨の中を通る神経を傷つけて、しびれやマヒなどが残ったケースが158件で最も多く、全体の4割近くを占めました。
また、インプラントが上あごの骨を貫通し、誤って眼の下にある「上顎洞(じょうがくどう)」と呼ばれる空洞内に入ったケースが63件。
このほか、経過観察を十分しなかったため骨粗しょう症の治療薬の影響などでインプラント周辺のあごの骨がえ死したケースが10件報告されました。

実態調査を行った「日本顎顔面インプラント学会」の瀬戸理事長は「インプラント治療が急速に広がるなか、歯科医師は、基本的な技術や知識を身につける必要がある。患者の側も、手術のリスクや、服用している薬の影響などについて十分説明してくれる歯科医師を選んでほしい」と話しています。

学会は、今回の実態調査の結果を詳しく分析して再発防止策を検討するとともに、来月1日から安全対策の1つとして、インプラントの手術日をはじめメーカーの名前や種類、それに、服用している薬の名前などを歯科医師が記入して患者に渡す「インプラント手帳」の取り組みを全国に79か所ある学会の「認定医療機関」で始めることにしています。」


インプラントの被害については,医療問題弁護団(東京03-5698-8544)への相談をお奨めいたします.

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by medical-law | 2012-05-31 21:53 | 医療事故・医療裁判

高松地裁平成24年5月30日判決,事前の説明と異なる手術が施されたとして北海道大学病院側に660万円賠償命令

日本経済新聞「北大病院側に660万円賠償命令 高松地裁」(2012年5月30日)は,次のとおり報じています.

「北海道大病院で受けた手術で、首から下の感覚まひなど深刻な後遺障害を負ったとして、香川県さぬき市の女性と夫が大学側に計約2億4千万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、高松地裁は30日、大学側に計660万円の支払いを命じた。女性側は控訴する方針。

 判決理由で横溝邦彦裁判長は「事前の説明とは異なる手術をする可能性やその際のリスクについて説明義務を怠り、手術における患者の選択権を侵害した」と指摘した。

 判決などによると、女性は動脈と静脈が毛細血管などを介さず直接つながってしまう病気を発症。1996年に北大病院で診療を受け、事前の説明と異なる手術が施された。

 判決後、女性側の代理人を務める久保和彦弁護士は「主張が認められた部分も多いが、手術で症状が悪化したという女性側の主張が認められなかったことは遺憾」とコメントした。

 久保弁護士によると、2004年の提訴時は計約1億1600万円を求めたが、その後発生した静脈瘤(りゅう)を病院が見落とし、症状が悪化したとして、請求額を増やした。〔共同〕」


裁判所の土地管轄は,病院所在地の裁判所,患者の住所地の裁判所,いずれにもありますので,原告は選択ができます.ですから,このように,国立大学法人北海道大学を被告にして高松地裁に提訴することもできます.

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by medical-law | 2012-05-31 00:58 | 医療事故・医療裁判

企業法務ナビ,【イレッサ訴訟】原告敗訴は妥当だったのか?

企業法務ナビ,「【イレッサ訴訟】原告敗訴は妥当だったのか?」(2012年5月30日)は,次のとおり,「すれすれの敗訴」と評価しています,

「今月25日、大阪高裁は一審での判決を退け、国と会社の責任はないとした。高裁によれば、「添付文書の不備」はなく、「記載を読み取れなかった医師の問題」であるとした。(「」は筆者)この敗訴によって、国とア社から遺族二人への1760万円の賠償支払い判決は退けられた形になった。」

「添付文書の不備云々はすれすれの判断だ。原告は最高裁に持ち込む考えであり、裁判所側は高度な司法判断が問われる。800名以上の死者が出ている深刻な事件であり、歴史に残る裁判なのは間違いない。いずれにせよ、慎重を期した司法判断を望むところである。」
とまとめています.

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by medical-law | 2012-05-30 21:34 | 医療事故・医療裁判

薬害イレッサ,院内集会「薬害イレッサの全面解決を求めて~大阪高裁判決を受けて」

薬害イレッサ原告・弁護団は,2012年5月29日,院内集会「薬害イレッサの全面解決を求めて~大阪高裁判決を受けて」を開きました.
民主党の,川内博史議員,三宅雪子議員,初鹿明博議員,田代郁議員,橋本勉議員,みんなの党の川田龍平議員が出席したそうです.

キャリアブレイン「イレッサ訴訟「救済の投げ捨ては許せない」- 原告・弁護団が抗議集会」(2012年5月30日)は,次のとおり報じています.

「肺がん治療薬「イレッサ」の副作用をめぐる訴訟の原告・弁護団は29日、国とアストラゼネカ社に損害賠償を求める原告の訴えを全面的に棄却した大阪高裁の判決に抗議する集会を衆院第二議員会館で開いた。冒頭、あいさつした西日本弁護団の中島晃団長は、「弱者保護、被害者救済という方向性を取ってきたことで、日本の裁判所は国民の信頼を得てきたが、判決はそうした考え方を投げ捨てた点で許せない。最高裁で勝利を勝ち取るため、最後まで全力を尽くす」と強調した。

 また、西日本弁護団の永井弘二事務局長は、「こういった判決を確定させてしまうと、わたしたちの国から薬害をなくすことはできない」と述べた。また、「裁判所の判断とは別に、行政は同じ被害を繰り返さないために、一体何をすればいいのか。被害が生じてしまった原因は何だったのかを明らかにして、改めて予防していかなければならない」と主張した。
 このほか、集会には国会議員も参加。みんなの党の川田龍平参院議員は、「(イレッサ訴訟は)この国の行政そのものを変えていかなくてはいけないという裁判。勝つためにも皆さんと頑張り続けたい」と参加者に呼び掛けた。

 同訴訟をめぐっては、昨年11月の東京高裁判決でも、国とアストラゼネカ社に賠償責任はないと判断。国とア社に対し、遺族2人に計1760万円の支払いを命じた一審判決を取り消し、原告の訴えを全面的に棄却した。東京高裁判決を受け、原告は既に上告しており、25日の大阪高裁判決を受けて、原告は来週中にも上告する予定だ。【津川一馬】」


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by medical-law | 2012-05-30 21:21 | 医療事故・医療裁判

アナフィラキシーショックによる死亡事案で,損害賠償請求訴訟を前橋地裁に提訴しました

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風邪と診断した患者に適応のない抗生剤を点滴し,アナフィラキシーショックによって死亡した事案で,2012年5月29日,前橋地方裁判所に損害賠償請求訴訟を提訴しました.

朝日新聞「「点滴で夫死亡」医療法人を提訴 妻子,160万円賠償請求」(2012年5月30日)は,次のとおり報じています.

「県内の50代男性が死亡したのは,医師らが観察義務を怠るなどしたためだとして,妻子3人が29日,○○内科(高崎市××町)を運営する医療法人に対し,損害約8千万円のうち160万円の賠償を求める訴訟を前橋地裁に起こした。

訴状によると,男性にはじんましんやアレルギー性鼻炎があった。昨年1月,かぜで○○内科を受診し,抗生剤の点滴注射を受けた約5分後,「アナフィラキシーショック」と呼ばれる薬物過敏反応で苦しんでいるのを別室から戻った看護師が発見。医師の処置後も改善されずに救急車で転院し,2日後に死亡したと主張している。
原告側は「医師はアナフィラキシーショックの危険性がある抗生剤の点滴を指示するにあたり,看護師に少なくとも5分間は異変がないか観察するよう指示する義務があった」と主張。提訴後に会見した代理人の谷直樹,岡村香里の両弁護士は「5分以内に救急処置をとったかが予後を左右する」とした2004年の最高裁判決を根拠に挙げた。

これに対し,被告側代理人の坂本正樹弁護士は「医師や看護師は重篤なアナフィラキシーショックが起こると予見できたわけではない。また,発症後も適切な治療を行った」と反論している。」


記事中の「2004年の最高裁判決」とは,最高裁平成16年9月7日判決(判例時報1880号64頁)のことです.最高裁平成16年9月7日判決は,アナフィラキシーショック症状を引き起こす可能性のある薬剤を投与する場合には,点滴静注開始後5分間の観察義務を認めました.

この最高裁判決は,看護師が平成2年7月25日午後10時ペントシリン(合成ペニシリン製剤)とミノマイシン(テトラサイクリン系抗生物質製剤,ミノペン点滴静注用の一般名)の点滴静注を開始し,その直後の10時02分ころ病室から退出した事案です.

最高裁平成16年9月7日判決は,
「医学的知見によれば,薬剤が静注により投与された場合に起きるアナフィラキシーショックは,ほとんどの場合,投与後5分以内に発症するものとされており,その病変の進行が急速であることから,アナフィラキシーショック症状を引き起こす可能性のある薬剤を投与する場合には,投与後の経過観察を十分に行い,その初期症状をいち早く察知することが肝要であり,発現した場合には,薬剤の投与を直ちに中止するとともに,できるだけ早期に救急治療を行うことが重要であるとされている。」
「あらかじめ,担当の看護婦に対し,投与後の経過観察を十分に行うこと等の指示をするほか,発症後における迅速かつ的確な救急処置を執り得るような医療態勢に関する指示,連絡をしておくべき注意義務があり,Y2が,このような指示を何らしないで,本件各薬剤の投与を担当看護婦に指示したことにつき,上記注意義務を怠った過失があるというべきである。」
と判示し,破棄差し戻しとしました.

この最高裁判決から,医師には,看護師に風邪に適応がなくアナフィラキシーショックの危険性がある抗生剤の点滴静注を指示をするにあたり,点滴静注開始後少なくとも5分間は風邪の患者(蕁麻疹・アレルギー性鼻炎がある)のそばを離れず,異変がないか観察することを指示する義務がある,と考えます.
また,医師は,異変後に点滴ルートを抜去せずに(○○内科では点滴ルートが抜去されボスミン静注ができませんでした.),すみやかにボスミン静注を実施するなどアナフィラキシーショック発症後5分内に迅速かつ的確な救急処置を執る義務がある,と考えます.

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by medical-law | 2012-05-30 11:59 | 医療事故・医療裁判

薬害肝炎全国原告団/全国弁護団,「医薬品行政監視・評価第三者組織の設置に関するご報告および要請」

薬害肝炎全国原告団(代表山口美智子),薬害肝炎全国弁護団(代表鈴木利廣)は,2012年5月28日,「医薬品行政監視・評価第三者組織の設置に関するご報告および要請」を総理大臣,厚生労働大臣,各政党に提出しました。

共同通信「第三者組織「政府法案で」 肝炎訴訟原告が意見書」(2012年5月29日)は,次のとおり報じています.

「薬事行政を監視する第三者組織の設置法案を、民主党が議員立法で今国会に提出する方針を示したのを受け、薬害肝炎訴訟の全国原告・弁護団は28日、「国が薬害を繰り返してきた反省を踏まえ、議員立法ではなく、政府法案として提出することが大切だ」との意見書を、野田佳彦首相と小宮山洋子厚生労働相あてに提出した。

 第三者組織をめぐっては、厚労省の検討会が(1)委員は自ら審議事項を発議できる(2)厚労省に資料提出を求め、製薬会社や医療機関の外部情報も収集させる(3)厚労省に薬害防止措置を勧告する-などの権限を盛り込んだ提言と法案を示していた。

 意見書は民主党案では発議権や外部情報収集権などが明示されていないと指摘。「提言を骨抜きにする内容で、私たちが望む組織とかけ離れている」と批判している。」


「医薬品行政監視・評価第三者組織の設置に関するご報告および要請」は,次のとおり述べています.

「1 私たちの望む第三者組織
   私たちは,「最終提言」に示された,薬害再発防止のために活動する,独立性・専門性・機動性を備えた第三者組織を望んでいます。真に薬害を根絶するためには,第三者組織の形だけを作るのではなく,薬害再発防止に向けて役割を果たす,実効性のある組織とする必要があります。

 2 政府提出法案とすることの意義
   厚生労働省(旧厚生省を含む)は,薬害が発生する都度,被害者に謝罪し再発防止を誓ってきました。しかし,残念ながら薬害は繰り返し引き起こされてきました。
   抜本的にこの状況を変えるには,政府の過去の薬事行政に対する反省を踏まえ,厚生労働省が,自らの責任で,自らを監視・評価する第三者組織を設置(すなわち,政府提出法案により設置)することが大切です。そのことが,これまでの薬害発生・拡大に対する反省につながり,薬害再発防止を実効あらしめます。そうでない限り,私たち国民の信頼できる薬事行政にはなりません。
   歴代の厚生労働大臣も,これまで,国と私たちとの基本合意に基づく大臣協議において,今国会に第三者組織を設置するための法案を提出することを,約束してきました。

 3 議員立法案の問題点
   議員立法案は,私たちの望まない内容の法案です。後記表①~⑫のとおり,最終提言が具体的に明示した第三者組織を骨抜きにしています。薬害再発防止の目的もなければ,独立性・専門性・機動性にも問題があり,薬害再発防止に向けた役割を果たせるとは思えません。このような形ばかりの組織を作っても,行政の隠れ蓑になるだけで,薬害の再発防止はできません。
   議員立法案の定める組織は,私たちの望んでいる第三者組織ではありません。」


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by medical-law | 2012-05-30 08:44 | 医療

「日本難病・疾病団体協議会(JPA),患者の視点で難病対策はつくられるべきだ

新聞赤旗「JPA 国会内で議員要請」(2012年5月29日)は,次のとおり報じています.

「日本難病・疾病団体協議会(JPA・伊藤たてお代表理事)は28日、難病や長期慢性疾患、小児慢性疾患の患者に対する医療・福祉・年金・介護・就労支援など総合対策を求めて国会内で議員要請を行いました。要請にあたって、78万人分の署名を提出しました。

 要請行動に先立ち開かれた集会で、伊藤代表理事は厚生労働省が難病対策のあり方について検討していることにふれ、「患者の視点で難病対策はつくられるべきだ」と強調しました。

 小児慢性疾患治療研究事業の対象患者は、完治しなくても成人になると国の医療費助成制度の対象外となります(キャリーオーバー問題)。

 小児慢性疾患の一つ、1型糖尿病の女性(24)は、体調のコントロールがきかず就労できずにいます。「20歳過ぎて国の難病対策の対象から外され障害福祉の対象でもなく、何の保障もないのがつらい。合併症の予防もままなりません」と声を詰まらせながら訴えました。

 全国脊髄小脳変性症・多系統萎縮症友の会の立木?代(いくよ)理事は、医療費助成制度の特定疾患治療研究事業対象者が、認定の更新時に必要な文書に4000円から6000円ほどかかると訴えました。伊藤代表は「厚労省内の議論では、難病の診断を専門医だけがすべきだとするものもある。そうなれば、患者は遠方から専門医のもとへ通わなければならなくなり、より負担が増える」と指摘し、患者の実態を訴えて総合的な難病対策を求めようと呼びかけました。

 日本共産党の田村智子参院議員があいさつしました。」


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by medical-law | 2012-05-29 23:51 | 医療

日医ニュース,第191回世界医師会(WMA)プラハ中間理事会の模様を掲載

日医ニュース第1218号に,2012年4月26日~28日,プラハで開かれた第191回世界医師会(WMA)中間理事会の模様が報じられています.

横倉義武会長,羽生田俊副会長,石井正三常任理事並びにアドバイザーとして畔柳達雄参与が出席した,とのことです.
畔柳達雄先生は,第二東京弁護士会の大先輩で,十数年前になりますが,鎌倉の料亭や藤沢のバーで貴重なお話しを聞かせていただいたことがあります.お元気でご活躍のご様子,たいへんよろこばしいことです.

とくにヘルシンキ宣言の修正スケジュールと2014年の記念行事が注目です.
ヘルシンキ宣言の修正は,6月にロッテルダム(オランダ)で作業部会,12月にケープタウン(南アフリカ)で第一回専門家会議,2013年4月初旬に東京で第二回専門家会議が決まったとのことです.
また,ヘルシンキ宣言採択50周年に当たる2014年に記念行事を開催することも決定したそうです.

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by medical-law | 2012-05-29 20:36 | 医療

薬剤イレッサ,東京新聞社説,医薬品の安全性を高める責任は免れない

東京新聞社説「抗がん剤訴訟 安全高める努力続けよ」(2012年5月29日)は,次のとおり,(1)添付文書のチェックを法的に位置付け監視を強めること,(2)薬害肝炎訴訟の原告らと合意した,薬事行政を監視する第三者組織の設置,(3)副作用による健康被害の救済制度を抗がん剤にも適用することを述べています.

「肺の抗がん剤「イレッサ」の副作用死をめぐる訴訟で大阪高裁は、被告の国と製薬会社の責任を認めなかった。東京高裁判決に続く原告敗訴だ。だが、医薬品の安全性を高める責任は免れない。

 イレッサは、肺がん患者の「最後の命綱」として二〇〇二年、日本で最初に販売が始まった。治療の有効性から今も使われている。

 当時、使用が広まると副作用の間質性肺炎による死亡例が続いた。副作用死の可能性は八百人を超え、患者・遺族が国と製薬会社に損害賠償請求訴訟を起こした。

 主な争点は、死亡するような副作用の情報を医療機関向けの添付文書に目立つように表示するなど注意喚起を十分にしたかどうか。

 一審の東京地裁は国、製薬会社双方の、大阪地裁は製薬会社の責任を認めた。ところが昨年十一月に東京高裁は一転、注意喚起に「欠陥があったとはいえない」と原告敗訴の判決を出した。

 今回の大阪高裁判決も、専門の医師には添付文書の記載方法で欠陥はなかったと結論付けた。

 だが疑問は残る。厚生労働省の指示で製薬会社は販売開始から三カ月後に緊急情報を出し、添付文書も副作用情報が目立つよう改訂した。その後に死亡者は減った。

 もっと被害を抑える記載方法があったのではないか。患者や遺族には納得できない判決だろう。

 国や製薬会社は判決で「責任なし」となっても、患者が薬を安全に使用し治療に専念できる十分な策をとる責務はある。

 イレッサ副作用被害を受け厚労省は、添付文書のチェックを法的に位置付け監視を強める方針だ。関連法改正案を今国会に出す予定だが遅れている。

 〇八年には、薬害肝炎訴訟の原告らと薬事行政を監視する第三者組織の設置で合意した。薬による健康被害の発生や拡大を防ぐ手だてとして期待されている。今国会で法改正する約束だが、動きは鈍い。早急に実現すべきだ。

 患者の救済策も足踏み状態だ。副作用による健康被害の救済制度を抗がん剤にも適用するよう厚労省の有識者会議が検討しているが、慎重な姿勢のままだ。専門家は知恵を絞ってほしい。

 医療現場もマイナス情報を患者にしっかり理解してもらっていたか再点検を忘れるべきではない。

 薬の安全性を高める対策や患者の救済策が実現しないのでは、健康被害に苦しむ患者や家族は二重に救われない。」


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by medical-law | 2012-05-29 07:40 | 医療事故・医療裁判

医薬品行政を監視する第三者組織,議員立法で

読売新聞「薬害監視委の創設、民主が議員立法で提出へ」(2012年5月27日)は,次のとおり報じています.

「薬害を防ぐことを目的に医薬品行政を監視する第三者組織を創設するため、民主党が検討している法案の概要が26日、明らかになった。

 民主党は議員立法として今国会への提出を目指し、近く野党に協議を呼びかける方針だ。

 薬害エイズや、肝炎、肺がん治療薬イレッサなどの薬害を巡る問題が相次いでいる。民主党の法案によると、専門家らによる「医薬品等行政評価・監視委員会」を厚生労働省に新設する。委員会は、医薬品や医薬部外品、化粧品、医療機器について、安全性を確保する施策が実施されているかどうかを評価・監視する。安全性に問題があった場合には、委員会が厚労相や独立行政法人医薬品医療機器総合機構に資料提出要求のほか、提言・勧告を行うとした。」


「第三者組織」は,「薬害肝炎事件の検証及び再発防止のための医薬品行政のあり方検討委員会」の「最終提言」に基づくもので,政府はそのための薬事法改正を準備し,今国会提出を約束していました.ところが,政府は,消費税法案を通すためという口実で薬事法改正案の提出を見送りました.行政を監視するには監視対象からの独立性が保障されなければなりませんが,それには閣議決定が障害になるとのことで,議員立法で,となったわけですが,「最終提言」の趣旨をふまえた第三者組織を本気で実現する必要があります.
今の段階で検討されている議員立法の内容が「最終提言」とかけはなれた内容になっていることが,大きな問題です.

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by medical-law | 2012-05-28 00:57 | 医療