弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

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薬害イレッサ,毎日新聞社説「イレッサ原告敗訴 では、何が原因なのか」

毎日新聞「社説:イレッサ原告敗訴 では、何が原因なのか」(2012年5月27日)は,次のとおり,大阪高裁判決に疑問を表明しています.

「これまでの薬害訴訟でも繰り返されてきた光景ではあるが、原告全面敗訴となったイレッサ訴訟の大阪高裁判決を見ると、薬害救済における司法の壁の厚さや不可解さを感じないわけにはいかない。

「肺がん治療薬「イレッサ」訴訟の判決はこれが4度目だ。1審では大阪地裁が輸入販売元のアストラゼネカ社に賠償を命じ、東京地裁はア社だけでなく国の責任も認めた。ところが、2審になると東京高裁も大阪高裁も一転して原告の訴えを退けた。イレッサは難治性の肺がんにも有効性があり、承認当時の添付文書の副作用欄に間質性肺炎が明記されていた。だから認可した国にも販売元の会社にも責任はない、というのが大阪高裁の判断だ。

 では、販売後わずか半年で間質性肺炎によって180人が死亡、2年半で死者557人に上ったのはなぜか。「(添付文書を読めば医師は)副作用発症の危険性を認識できた」と大阪高裁判決は断定する。医師たちは危険を分かりながら副作用死を出してきたというのだろうか。」


大阪高裁は,薬害イレッサで患者・遺族側を勝たせると,製薬企業・厚労省が萎縮し新薬承認が遅延するなどと考えたのかもしれませんが,新薬承認が遅延するなどという学会の意見は,厚労省の官僚が要請し下書きしたものであることが判明しています。
司法の萎縮は,薬害被害を曖昧にし,さらなる薬害を招くことになります.

最高裁に期待します.

谷直樹
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by medical-law | 2012-05-28 00:34 | 医療事故・医療裁判

日弁連,名張毒ぶどう酒事件第7次再審請求差戻し異議審決定についての会長声明

日本弁護士連合会(日弁連)は,2012年5月25日,「名張毒ぶどう酒事件第7次再審請求差戻し異議審決定についての会長声明」を発表しました.

「本日、名古屋高等裁判所刑事第2部(下山保男裁判長)は、奥西勝氏に係る名張毒ぶどう酒事件第7次再審請求の差戻し異議審につき、再審開始決定を取り消して、再審請求を棄却する旨決定した。

本件は、三重県名張市で発生した、農薬が混入されたぶどう酒を飲んだ女性5名が死亡し、12名が傷害を負った事件であり、奥西氏は一審で無罪となったものの控訴審で逆転死刑判決を受け、最高裁判所で上告が棄却され、死刑判決が確定していた。当連合会は、1973年(昭和48年)に人権擁護委員会において名張事件委員会を設置し、以来奥西氏の救済のため最大限の支援を行ってきた。

本件は、2005年(平成17年)4月に名古屋高等裁判所刑事第1部(小出錞一裁判長)が再審開始を決定したが、検察官の異議申立てにより、2006年(平成18年)12月に名古屋高等裁判所刑事第2部(門野博裁判長)が再審開始決定を取り消し、2010年(平成22年)4月に最高裁判所が異議審決定を取り消して名古屋高等裁判所に差し戻すという経過をたどった。

最高裁判所の差戻し理由は、本件発生直後に三重県衛生研究所が行った薬物同定試験において、本件犯行に使用された農薬がニッカリンTであったとすれば、主成分であるTEPP(テップ)と共に副生成物を示すスポットが検出されるはずであるのに、本件の事件検体である飲み残りのぶどう酒からは、この副生成物を示すスポットが検出されなかったことにつき、異議審決定が「検出することができなかったと考えることも十分に可能である」とした判断は、「科学的知見に基づく検討をしたとはいえず、その推論過程に誤りがある疑いがある」というものであった。

今回の差戻し異議審決定(以下「本決定」という。)は、新証拠によって生じた疑問が解消されていないにもかかわらず、検察官も主張しておらず、鑑定人さえ言及していない独自の推論をもって、新証拠が「犯行に用いられた薬剤がニッカリンTではあり得ないということを意味しないことが明らかである」として、再審請求を棄却した。本決定は、最高裁判所が求めた科学的知見に基づく検討を放棄し、「疑わしきは被告人の利益に」の原則に反し弁護人に無罪の立証責任を転嫁するものである。

新証拠の証拠価値を正当に判断すれば、犯行に使用された毒物がニッカリンTであるとは認められず、奥西氏が犯人であることについて重大な疑いが生じていることは明らかであり、奥西氏の再審は直ちに開始されなければならない。

当連合会は、特別抗告審において本決定が取り消され、再審開始が決定されることを期するものである。当連合会は、今後とも、奥西氏が無罪判決を勝ち取り、死刑台から生還するときまで、あらゆる支援を惜しまないことをここに表明する。」


下山保男判事(64歳)は,6月4日に退官するそうです.

愛媛新聞社説「名張事件 再審認めず 司法は自白偏重を省み扉開け」(2012年05月26日)は,次のとおり述べています.
 
「事件発生から半世紀。開きかけていた再審の重い扉は、またも無情に閉ざされた。
 1961年の「名張毒ぶどう酒事件」で、名古屋高裁は元被告の再審開始を認めない決定を下した。
 7度目の再審請求も、2度にわたって再審開始決定が取り消され、退けられたことになる。弁護団は最高裁に特別抗告し、最後の望みをかけるが、今後決定的な「新証拠」を提示することは容易ではなく、再審へのハードルは限りなく高い。今回の決定は、86歳の元被告にとって、厳しい判断と言わざるを得ない。

 無罪から逆転死刑判決へ、そして再審開始決定から取り消しへ―。自白以外に決定的な物証がない中、司法判断は大きく揺れ続けた。
 いったん下した再審開始決定を、同じ名古屋高裁の別の裁判官が取り消すなど「同じ証拠に対しても、裁判官の考え次第で判断が変わってしまう」(検察関係者)異例の展開。これでは有罪とも無罪とも、万人が合理的な疑いを差し挟む余地がない判断を下せるだけの審理が尽くされた、とは到底言えない。

 やはり「疑わしきは被告人の利益に」という刑事司法の大原則に立ち返り、真相究明のために、一日も早く再審を開始すべきである。

 2002年からの第7次再審請求審の焦点は、事件に使われた毒物が、自白通りの農薬「ニッカリンT」かどうか―だった。
 差し戻し審では、高裁選任の鑑定人が成分を分析。しかし、既に数十年前に製造中止となっていたニッカリンTの再製造や、鑑定人の選考などに2年以上の時間を費やしたあげく、結果は玉虫色で、特定には至らなかった。
 この鑑定を受け、高裁決定は「弁護団の新証拠は、自白した農薬ではないと証明できない」と指摘。「自白は根幹部分で十分信用できる」と、弁護側の訴えを退けた。かつて裁判所自身も疑義を呈した「自白」に再び大きく依拠した判断になったことは、後退であり、納得できない。

 科学的な「新証拠」が、再審の重要な要件であることは理解できる。しかし、科学的証拠の不十分さは第一義的に捜査機関の責任であり、審理が長期化すればするほど提示は困難になる。

 過去の幾多の冤罪(えんざい)や近年の検察不祥事を見ても、自白偏重主義の危うさは明白。そうした強引な捜査手法を許してきた責任は、裁判所にも当然にある。真摯(しんし)な反省の下、自白の任意性や信用性を現在の基準で見直し、重大な疑いがあれば目を背けず、再審への道を開く責務があるだろう。

 元被告に残された時間は、長くはない。司法不信を拭えるのは司法の手しかないこともまた、忘れてはならない。 」


谷直樹
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by medical-law | 2012-05-28 00:29 | 司法

「患者・家族と医療をつなぐNPO法人架け橋」設立,本日午後2時から聖路加看護大講堂でシンポジウム

「患者・家族と医療をつなぐNPO法人架け橋」設立記念シンポジウムが,本日午後2時から聖路加看護大講堂で開かれます.是非,ご参加を!

毎日新聞「医療事故:被害者・家族と医師らの「架け橋」にNPO設立」(2012年5月25日)は次のとおり報じています.

「医療事故の被害者・家族と医療従事者が、ともに医療現場の信頼構築を目指すNPO法人「架け橋」を設立し、27日午後2時から聖路加看護大講堂(東京都中央区)で設立シンポジウムを開く。被害者と事故を起こした医療者や、医療紛争に詳しい法律家らが集まるNPOは全国的にも珍しく、患者の視点を生かした病院の相談体制整備を呼びかける。

 会の理事長には、03年に長男(当時5歳)を医療事故で亡くし、今は新葛飾病院(東京都葛飾区)で患者相談や医療安全管理に携わる豊田郁子さん(44)が就任した。豊田さんを含む18人の理事のうち6人が、医療事故にあった患者の家族。ほかに医療者や、医療安全やコミュニケーションに詳しい研究者らが参加する。会は患者・家族と医療者をつなぐ人材育成を重点に掲げ、病院で患者の相談にあたる担当者向けの研修会や、医療機関の支援などに取り組む。

 豊田さんは「医療者の倫理と、コミュニケーションを高める取り組みが遅れたことで、患者との溝が深まっている。不安や不満に応える相談体制の充実を後押ししたい」と話す。」


読売新聞 「患者・家族と医療をつなぐNPO法人 架け橋」設立シンポジウム」(2012年5月17日)は,次のとおり報じています.

「27日午後2時、東京都中央区の聖路加看護大学本館講堂。浅野史郎・前宮城県知事の講演など。無料。申し込み不要。問い合わせは、架け橋事務局(ファクス03・3697・1501)。」


≪テーマ≫ 

 自身の体験から院内患者サポートに求めるもの

≪プログラム≫

 14:00 開会の辞・NPO設立の経緯

 14:30 基調講演 「自身の体験から院内患者サポートに求めるもの」

       講演者: 浅野史郎氏 慶応義塾大学政策学部 教授 / 前 宮城県知事

 15:15 ― 休憩 ―

 15:30 シンポジウム 「自身の立場から院内患者サポートに求めるもの」

       司会: 大熊由紀子氏 国際医療福祉大学大学院 教授

       シンポジスト:

        浅野史郎氏 慶応義塾大学政策学部 教授 / 前 宮城県知事

        鮎澤純子氏 九州大学医学研究院 基礎医学部門

                医療経営・管理学講座准教授

        内野直樹氏 全国 社会保険協会連合会 社会保険相模野病院 病院長

        尾藤誠司氏 東京医療センター教育研修部 臨床研修科 医長

        宮本哲也氏 厚生労働省医政局総務課 医療安全推進室 室長

        立花榮之氏  医療事故被害者遺族

16:50   閉会の辞


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by medical-law | 2012-05-27 11:13 | 医療事故・医療裁判

薬害イレッサ,大阪高裁平成24年5月25日判決,全面敗訴

薬害イレッサ訴訟の,大阪高裁平成24年5月25日判決は,大阪地裁が認めたアストラゼネカ社の法的責任すら認めず,全面敗訴判決を言い渡しました。
大阪高裁平成24年4月12日判決(関西水俣病認定訴訟逆転敗訴)もありましたが,大阪高裁は妙な判決が続いています.

薬害イレッサ弁護団のサイトに,大阪高裁判決全文が掲載されています.
大阪高裁判決の「論理」は ,基本的に東京高裁判決と同じです.
たった19症例,たった11人が死亡しただけでは危険性が予見できないというわけですが,何人死ねば危険性が予見できると言うのでしょう.

薬害イレッサ弁護団の声明は,以下のとおりです.

「本日,大阪高等裁判所は,薬害イレッサ訴訟の判決を言い渡し,国,アストラゼネカ社の法的な責任を否定した。

判決は,承認前の副作用報告について,その濃淡を問題にして,副作用報告が発している危険性のシグナルを不当に低く評価している。また,イレッサを使用するのは肺がん治療医であるとして,注意喚起としては,重大な副作用欄の記載で足りるとする。

大阪高裁判決の認定によっても,19症例の副作用報告・そのうち11例の死亡例が報告されていたのであり,仮にその因果関係に濃淡があったとしても,医薬品の安全対策としては,いったん発症すると半数以上が死亡するという重篤性をもった副作用であるとの前提で安全対策する必要があったのである。2002年10月15日の緊急安全性情報も,まさにこうしたイレッサの間質性肺炎の重篤性に基づいて発せられたものであり,少なくとも同様の注意喚起が承認時にもなされる必要があったことは明らかである。

判決にしたがえば,市販後に未曾有ともいうべき多くの副作用被害が生じ,それが安全対策の都度,如実に減少していったことを全く説明できない。判決の論理は,不当な東京高裁判決と同一のものであり,薬害・公害の歴史から導き出された予防原則を根底から否定すると共に,製薬企業・国の医薬品安全確保義務を著しく軽視して,副作用被害発生の要因を医療現場の医師等の責任に矮小化して押しつけるものに他ならない。

こうした判決を残すならば,薬害の連鎖を断ち切ることなど到底かなわず,私たちの後の世代に大きな禍根を残すことになる。私たちは,本日の大阪高裁判決に対し断固として抗議すると共に直ちに上告し,薬害イレッサ事件の全面解決を勝ち取るまでさらに奮闘する所存である。

さらなるご支援をお願いする。」


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by medical-law | 2012-05-25 20:14 | 医療事故・医療裁判

前橋地裁平成24年5月18日判決,財団法人老年病研究所の医師の転医・相談義務違反を認める(報道)

毎日新聞「医療ミス訴訟:老年病研究所に220万円賠償命令−−前橋地裁判決」(2012年5月19日)は,次のとおり報じています.

「前橋赤十字病院に入院していた女性(当時77歳)が06年2月、脳腫瘍(しゅよう)で死亡したのは、同院の担当医が適切な時期にMRI検査などを行わず、経過観察中に診断した財団法人老年病研究所(前橋市)の担当医も適切な措置を取らなかったためだとして、遺族が両病院を相手取り計2200万円の損害賠償を求めた訴訟で、前橋地裁(西口元裁判長)は18日、同研究所に対し、計220万円を支払うよう命じる判決を言い渡した。

 判決によると、同研究所の担当医は05年2月の診察で脳腫瘍を発見していたが、女性に対し早期に赤十字病院を受診するよう促さなかったと認定。前橋赤十字病院への請求は退けた。【塩田彩】」


前橋地裁は,医師が2005年2月の診察で脳腫瘍を発見しながら,早期に赤十字病院を受診するよう促さなかったことが,注意義務違反にあたるとしたわけです.

ちなみに,秋吉仁美編著「医療訴訟」は,転医・相談義務の具体的判断基準として以下の要素をあげています.
(a)重大で緊急性が高く,進行すれば予後不良であるなど,これに対する診療が必要な疾患が存在すること
(b)医師が上記(a)(病名は特定できなくともよい)を現に認識し又は認識し得るこ  と
(c)患者の疾患が医師の専門外又はその疑いがあるか,当該医療機関では人的・物的設備が十分でなく,当該患者に求められる診療が困難であること
(d)患者の疾患について,より適切な診療が存在し,それが医療水準に照らして是認されること
(e)転医先が時間的・場所的に搬送可能な場所に存在すること
(f)転医先が患者の受入れを許諾していること
(g)患者が転医のための搬送に耐え得ること
(h)転医することによって患者に重大な結果の回避可能性があること

本件は,私が担当した事件ではありませんので,上記報道からわかる範囲での判断になりますが,いずれも充たすと考えられます.

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by medical-law | 2012-05-25 19:44 | 医療事故・医療裁判

横浜地裁平成24年5月24日判決,足柄上病院新生児室で発生した集団感染で抗菌剤投与の遅れを認める(報道)

神奈川新聞「院内感染で後遺症、県立病院に賠償命じる/横浜地裁判決」(2012年5月25日)は,次のとおり報じています.
 
「2000年2月に県立足柄上病院(松田町)で出生した新生児が院内で細菌感染し、下半身に後遺症を負ったのは、病院が適切な治療を怠ったことなどが原因として、両親らが県に対し約7350万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、横浜地裁(鶴岡稔彦裁判長)は24日、訴えの一部を認め、病院に約2600万円の支払いを命じた。

 鶴岡裁判長は、感染は、当時、病院の新生児室で発生した集団感染の一環だったとしたが「病院の感染防止対策に不備があったとは認められない」とした。

 その上で「感染の症状を完全に止めることは難しかったと考えられるが、医師がもっと早い段階で抗菌薬を投与していれば、程度を軽くできる可能性は十分にあった」とし、治療義務に一部、違反があったことを認めた。

 病院側は「判決内容をよく検討した上で、今後、対応していきたい」とコメントした。」


「神奈川県立足柄上病院,今年もまた,消毒0分の内視鏡を使用する事故」でも書きましたが,2010年6月手術室で使用していた気管支内視鏡の消毒が不十分で31人に感染リスクが生じましたが,2012年4月25日,同様の事故がおきています.
2000年2月のこの新生児の院内感染事故といい,感染予防,感染への対処をしっかり行っていただきたい,と思います.

偶然ですが,今日は横浜地裁第4民事部の期日のため横浜に行きます。お昼は裁判所向かいの東電ビル1階のサンドウィッチでしょう.ここはお奨めです.

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by medical-law | 2012-05-25 08:11 | 医療事故・医療裁判

東邦大准教授,医学論文193本捏造の疑い

朝日新聞「医学論文193本、捏造の疑い 東邦大准教授、退職処分 」(2012年5月23日)は,次のとおり報じています.
 
「日本麻酔科学会員の麻酔科医が国内外の専門誌に発表した論文に捏造(ねつぞう)の疑いがあるとして、学会が調査していることが23日、わかった。対象は共著のものを含め23の学術誌に掲載された193の論文。この医師が准教授として在籍していた東邦大学は2月、8本の論文に関する研究について倫理規範違反があったとして、諭旨退職処分にした。

 学会が調査しているのは、元東邦大学准教授の藤井善隆医師の論文。海外の複数の専門誌が「データに捏造の疑いがある」との論説を掲載したことを受け、学会が3月に調査特別委員会を設置。藤井医師が1991年以降に在籍した医療機関に聞き、論文の根拠となった症例が実在したか調べている。藤井医師は不正を否定しているという。

 捏造の疑いを2月に指摘した英国の専門家の論説によると、藤井医師が91~2011年7月に発表した麻酔薬の投与量などに関する論文の169の試験データを統計的に分析したところ、対象者の体重や年齢、身長、血圧などの数値が特定の範囲に偏っていた。通常起こりうる分布と大きく異なっていた。

 東邦大学も藤井医師が在籍中に発表した9本の論文について調査。うち8本で、義務づけられている病院内の倫理委員会の承認を得ていなかった。藤井医師は事実を認め、8本の論文については撤回している。」

研究者として致命的なことなのに,論文データの捏造は,絶えることがありません.
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by medical-law | 2012-05-23 20:24 | 医療

岡崎市民病院,冠動脈のバイパス手術後の死亡事案で裁判上の和解(報道)

中京テレビ「医療ミス認め、賠償金支払いへ 岡崎市」(2012年5月21日)は,次のとおり報じています.

「愛知県岡崎市の市民病院で12年前、当時60代の男性が手術後に死亡したことについて、岡崎市がミスを認めて2500万円の賠償を支払うことになった。これは12年前、当時60代の男性が岡崎市民病院で冠動脈のバイパス手術後に死亡したことをめぐり、男性の遺族が医療ミスだったと訴えていたもの。岡崎市は当初、ミスはなかったとしたが、今年2月に裁判所から和解勧告を受け、対応を検討した。その結果、「手術後、腹部のレントゲンを撮った際、消化器内科や外科に意見を求めるべきだった」としてミスを認め、2500万円の賠償を支払うことになった。」

手術後の腹部のレントゲンを消化器内科や外科がみれば,異常に気づくことができた,ということなのでしょう.

【追記】
毎日新聞「岡崎・男性死亡事故:2500万円支払いで病院と遺族和解」(2012年5月22日)は,次のとおり報じています.

「愛知県の岡崎市民病院で00年に狭心症の手術を受けた無職男性(当時60歳)が死亡する事故があり、同病院は21日、病院側の過失を認め、遺族に損害賠償2500万円を支払うことで和解したと発表した。

 病院によると、男性は00年7月4日、冠動脈バイパス手術を受けた。8月11日に腹痛を訴え、同15日に腹痛が悪化し、心臓血管外科医がレントゲン検査で腸閉塞(へいそく)と診断した。同16日のCT検査で、せん孔性腹膜炎と分かり、緊急手術をしたが、同20日に多臓器不全で死亡したという。

 遺族は10年7月、レントゲン検査でせん孔性腹膜炎の診断を怠ったことなど注意義務違反があったとして、名古屋地裁に総額約5260万円の損害賠償を求め提訴した。病院は当初「特段の落ち度はない」としていたが、裁判所の和解勧告を受け「8月15日の時点で消化器内科や外科などに意見を求めるべきで、そうすれば救命できた可能性があった」と認めた。【丸林康樹】」


「8月11日に腹痛を訴え、同15日に腹痛が悪化し」たのですから,消化器疾患が疑われます.専門外の疾患(消化器疾患)については専門家(消化器専門医)の意見を聞くべきでしょう.

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by medical-law | 2012-05-22 00:59 | 医療事故・医療裁判

小山記念病院,職員がプロサッカー選手に関しtwitterに不適切な書き込みをしたことを謝罪

医療法人社団善仁会小山記念病院は,2012年5月21日,「twitter(ツイッター)における弊院職員による不適切な書き込みについて」を発表しました.

弊院の女性職員が2012年5月18日、弊院にご来院されたプロサッカー選手に関し、twitter(ツイッター)に不適切な書き込みをなし、流出させていたことが、2012年5月19日に判明しましたのでお知らせ致します。
尚、今回の件につきまして、書き込まれた内容以外の情報(住所、電話番号等)の漏洩、私的利用はございませんでした。
又、弊院に受診歴のある患者様の個人情報漏洩及び私的利用の事実もございませんでした。

【経緯】
5月18日、twitter(ツイッター)上に複数回にわたり診療録の存在事実を投稿、弊院に匿名による指摘があり、投稿内容の確認をしました。
5月19日、投稿内容について本人へ事実を確認、ご迷惑をお掛けした選手、チームに対して、ご報告の上、お詫び致しました。
 
【本人への聴取について】
5月19日、弊院から本人及び関係者への事実確認を行ったところ、診療録の整理をしていた際、偶然プロサッカー選手の診療録を発見。帰宅後、twitter(ツイッター)上に複数回にわたり診療録の存在事実を書き込んだと話している。

【処分に関して】
弊院として、重大且つ極めて深刻な案件と判断し、弊院運営会議にて、該当職員の処分を決定する予定です。

【再発防止に向けた今後の対応策】
1.ソーシャルメディアサービスにおける不適切な書き込み防止委員会(委員長:田中直見院長)の即時立ち上げ及び啓発活動の実施。
2.顧問弁護士と連携し、弊院職員へのソーシャルメディアサービス利用に関する講習会の実施
3.ソーシャルメディアサービス職員利用規程の策定及び周知徹底
4.顧問弁護士と連携し、個人情報保護に関する講習会の実施

【院長、田中直見コメント】
弊院職員がtwitter(ツイッター)に不適切な書き込みをし、流出させていたという極めて深刻な事態を引き起こしたことを、心よりお詫び申し上げます。
また、ご迷惑をお掛けした選手、チーム、関係者の皆様に対し、心よりお詫び申し上げます。
今回のtwitter(ツイッター)への不適切な書き込みについて、医療機関及び医療従事者として、あるまじき行為であり、この事態を厳粛且つ真摯に受け止め、今後このようなことが繰り返されないよう、院を挙げて再発防止を徹底してまいります。
同選手、同選手のご家族様をはじめ、関係チームの皆様、ファンの皆様、弊院を受診されている様々な皆様にも多大なるご迷惑とご心配をおかけしましたこと、深くお詫び申し上げます。」


事務職員は,診療情報管理士とのことです.診療情報管理士とは,四病院団体協議会(日本病院会,全日本病院協会,日本医療法人協会,日本精神科病院協会)などが付与する民間資格です.

これは,善悪の区別もつかない者が診療記録を取り扱っていたわけで,本件は非常に特殊な例なのでしょうが,重大な問題です.

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by medical-law | 2012-05-21 22:25 | 医療

ドクターズマガジン2012年6月号に「総胆管内の結石除去術における過失の推認」を書きました

b0206085_938746.jpgDOCTOR‘S MAGAZINE(ドクターズマガジン)2012年6月号に,医療過誤判例集Vol11 総胆管内の結石除去術における過失の推認」を書きました.

那覇地裁平成23年6月21日判決(判例時報2126号105頁,判例タイムズ1365号214頁)を紹介,コメントしました.

この判決は,結石を除去する手術で除去に失敗したことについて,経胆のう管法は一般的な手法であること,総胆管切開手法まで行って結石除去ができないのは稀であること,その他の原因が認められないこと等から,医師の操作上の誤りを認定し,担当医の過失を認めた判決です.
①一般的な手術方法で,②不成功が稀で,③不成功の原因について合理的な説明ができない場合は,手術結果は操作上の誤りに起因するものと推認されることを確認した判決です.

詳細は,DOCTOR‘S MAGAZINE(ドクターズマガジン)2012年6月号をお読みいただきたく,お願いいたします.

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by medical-law | 2012-05-20 15:26 | 医療事故・医療裁判