弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

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日弁連,改めて障がいのある当事者の権利を保障する総合的な福祉法の実現を求める会長声明

国は,2010年1月7日,障害者自立支援法違憲訴訟原告団・弁護団と基本合意文書を締結し,障害者の権利に関する条約の批准も視野に入れ、障害者自立支援法を2013年8月までに廃止し,新たな総合的な福祉法制を実施する,と約束し,和解が成立しました。

日弁連も,「障害者自立支援法を確実に廃止し,障がいのある当事者の意思を最大限尊重し,その権利を保障する総合的な福祉法の制定を求める決議」を行ってきました。

ところが,国は,約束を反故にし,障害者自立支援法の一部を手直しし,名称を変えただけの 「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(障害者総合支援法)」が成立しました。

そこで,日本弁護士連合会(日弁連)は,2012年6月20日,「障害者総合支援法」成立に際して、改めて障がいのある当事者の権利を保障する総合的な福祉法の実現を求める会長声明を発表しました。

「総合支援法の内容は、障害者自立支援法の一部改正に留まり、障がいのある人の基本的人権を具体的に保障する規定が設けられていない。障がいの範囲についても、障害者の権利に関する条約が求めている「障がいが個人の属性のみではなく社会的障壁によって生じる」とする社会モデルの考え方が採用されず、そのために新たな制度の谷間を生む内容となっている。また、自己決定権に基づき個々のニーズに即して福祉サービスを利用できる制度にもなっていない。かかる総合支援法は、当連合会が従来提言してきた内容とは相容れないものである。

また、本法律は、附則に、施行後3年を目途として、常時介護を要する者に対する支援等の障害福祉サービスの在り方や支給決定の在り方等について検討を加え、所要の措置を講ずる旨の見直し規定を設けているが、本見直しに際しては、当事者参画のもとで、附則に例示された項目に限定されることなく、障がい者制度改革推進会議が取りまとめた骨格提言の内容が実現されるべきであり、障がいのある人の基本的人権を真に保障する福祉法制の実現に向けた検討が行なわれるべきである。

当連合会は、3年後見直しの際には、人権擁護大会決議に基づく内容が実現され、何人も障がいの有無により分け隔てられることなく地域で暮らせる権利が保障される福祉法制が実現されることを強く求める。」


谷直樹

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by medical-law | 2012-06-22 11:46 | 弁護士会

佐賀大学医学部附属病院,抗がん剤を過剰投与する医療事故を公表

佐賀大学医学部附属病院は,平成24年5月に抗がん剤を過剰投与する医療事故があったことを,2012年6月12日,公表しました.

同病院のサイトに掲載された,「本院で発生した医療事故について」によると,「当該医療事故については、院外の専門家を加えた調査検討委員会を設置して、原因を究明するとともに、薬剤投与に関して、医師・薬剤師・看護師によるチェック体制をより強化させ、再発防止に厳格に取り組んで参る所存ですが、この事案を過剰投与回避のための警鐘とするためにも、当該患者さまのプライバシー保護に万全を期し、個人が特定されないよう最大限配慮しながらホームページ上で公表することと致しました。」とのことです.

改善案 として,次の4点をあげています.

「① レジメン登録の徹底
② 緊急時を含む抗がん剤払い出し手順の厳格化
③ ダブルチェック体制の強化
④ 抗がん剤治療計画の共有化」

抗がん剤の過剰投与ケースは,医師が誤った量を指示し,薬剤部がその誤りに気づかず薬を出してしまい,看護師も標準的な投薬量を知らず誤りに気づかなかった,というのが多いようです.本件が,そのようなケースかはわかりませんが,医師だけに注意を求めるのでは事故を防止しきれませんので,薬剤師・看護師と情報を共有化しダブルチェック体制を強化すべきと思います.実りある事故調査を期待いたします.

谷直樹

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by medical-law | 2012-06-21 22:40 | 医療事故・医療裁判

熊本大学医学部附属病院,乳児の足の甲に刺した点滴から電解質液が漏出し親指が壊死した事故発表

読売新聞「生体肝移植中に医療ミス、乳児の足指が壊死」(2012年6月20日)は,次のとおり報じています.

「熊本大付属病院(熊本市)は20日、熊本県内の男の乳児に対して今年2月に行った生体肝移植手術の際、点滴液が血管から体内に漏れ出し、親指の先が壊死する事故があったと発表した。

 猪股裕紀洋病院長は「非常に申し訳ない。補償を含めて誠意を持って対応していきたい」と話している。

 病院長によると、点滴はカルシウムや水分補給などが目的で、右足の甲から行った。10時間を超す手術終了後、スタッフが右足の親指が腫れているのに気づいた。症状は悪化し、約2か月後に第1関節から先が欠落。点滴の薬液に含まれていた塩化カルシウムが、親指の壊死の原因になった可能性があるとみている。

 男児は術後の観察のため入院している。」


乳児の血管は弾力に乏しく圧迫に弱いうえ,本件は足の甲から点滴を行っていますので,漏出のリスクが高かった症例です.カルシウムなどの電解質液は,細胞膜の働きを阻害して皮膚障害をきたすので,漏出に要注意です.
当然事前に血管内に適切に挿入されたか確認しているはずですが,術中も,漏出の危険性を意識して観察し,早めに漏出に気づいてほしかった事案です.

谷直樹

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by medical-law | 2012-06-21 02:05 | 医療事故・医療裁判

埼玉県消費生活支援センター,美容医療のトラブルが深刻化

msn産経「美容医療のトラブルが深刻化 県消費生活支援センターが注意呼びかけ 埼玉」(2012日6月20日)

 「埼玉県内の消費生活センターに寄せられる美容医療に関する相談のうち、顔のしわ取りや二重まぶた化などで「(体に)傷が残った」など深刻な内容の相談が近年増加していることが19日、県消費生活支援センター(川口市)への取材で分かった。同センターでは「手術などを勧められても結論を急がないで、いったん持ち帰って考えてほしい」と呼びかけている。

 同センターによると、県内の消費生活センターに寄せられる美容医療に関する相談は年間90件前後。相談者は20代が最も多く、最近は50代、60代も増加。女性が76%で、契約金額は100万円以上500万円以下が29%を占めている。

 相談のうち、全体の約8割と最も多いのが契約内容や違約金、返金などをめぐるトラブルだ。このほかに多いのが、思ったような施術結果が得られなかったケースや、医師から「簡単なのですぐ手術を」と勧められてカウンセリングを十分に受けないうちに施術に至ったというもの。中でも、「まぶたに傷が残った」や「顔面がまひした」などの相談が、平成21年は12件、22年は18件、23年は20件と増加傾向にあるという。

同センターによると、ある60代の女性は、新聞のチラシを見て両頬のシワを取りたいと思い、美容整形外科を訪れた。医師からは「手術は簡単で、出血もしない。穴を開けてつるすだけなので大丈夫」と、いきなりその場で手術を勧められ、断り切れずに契約。手術のデメリットを記した書面は、その後に見せられたという。女性には手術後、頬が突っ張ったり、筋が入って目立つなど経過がよくないという。

 同センターでは、「美容医療は消費者が施術法を選択できる医療である」と強調。その上で、(1)施術を受けるかどうかや医師、医療機関の選択にはさまざまな情報を収集して判断する(2)リスクを事前に確認し、いったん家に書類を持ち帰って他の方法と比較検討する(3)トラブル発生に備え、施術前後の写真を撮り、医師とのやり取りのメモや資料を保管しておく-などの対策を呼びかけている。」


美容医療は,医学的見地からの必要性,緊急性が他の医療行為に比べて乏しい,という特徴があります.また,美容医療においては結果と患者の主観的希望とが一致することが求められます.
これらのことから,美容医療を行う医師は,手術前に十分時間をかけて説明し,検査を行い,新潮に手術を行うでき義務があり,美容医療を行う医師は,他の医療行為を行う医師に比べ,高度の注意義務が課せられています.

谷直樹法律事務所への相談でも,美容医療はすくなくありません.なかには損害等の立証が困難なものもありますが,損害の立証が可能な事案では,手術前には無かった醜状痕,傷跡等が生じたり,意図した結果が生じなかった場合などは,医療側からそれがやむを得ない結果であることが合理的に説明できない限り,原則として医師に過失があり,損害賠償責任がある,と考えるべきでしょう.

谷直樹

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by medical-law | 2012-06-20 17:44 | 医療事故・医療裁判

今日は,清水陽一先生の命日です.

早いもので,新葛飾病院院長清水陽一先生が亡くなり,享年62歳で,2011年6月19日に逝去し,1年になります.もう随分昔になりますが,清水先生が,この私の事務所にいらっしゃって,熱く語っていたときのことを思い出します.

「清水陽一さんの一周忌をしのぶ会 シンポジウム-ほんとうのことを知るのがなぜ難しい?-」が,2012年6月17日,東京赤坂で開かれました.

新聞赤旗「「うそ」なしで信頼の医療へ 東京でシンポ」(2012年6月18日)は,次のとおり報じています.

「患者と医療者が手をつなぐためにすべきこと うそをつかない医療の実現に向けて」をテーマに17日、東京都内でシンポジウムが開かれ、約80人が参加しました。主催は医療の良心を守る市民の会(永井裕之代表)。

 弁護士、ジャーナリストなど4人が報告しました。

 神奈川県の社会保険相模原病院の内野直樹院長は、「患者と職員の信頼関係を築くことで医療安全が確立されると考えている」と発言。「約200床のごく普通の病院だが、病院がまずできることは常に真実を説明すること」とのべ、「常に真実をお話しします」との「宣言」(4項目)を院内各所に掲示し、カルテやデータなどすべてを患者に渡していると紹介しました。正直に話した職員を大切に守る「職員保護規定」のもと、「宣言」後2年の最近の調査で職員の9割が「方針が定着した」と回答したといいます。

 医療事故被害者遺族の川田綾子さんは、真相究明と再発防止や医療レベル向上などへ向け、中立的調査機関の必要性を訴えました。また患者・家族と医療をつなぐNPO法人「架け橋」の発足と活動内容を報告しました。

 パネルディスカッションで医療過誤原告の会の宮脇正和会長は、カルテのコピーを毎朝患者に配っている病院や、事故の詳細な情報を病院のホームページに載せている例などを紹介。「こうした動きが広がっていけば安心できる医療へつながるという希望をもっている」と話しました。」


上記報道には御名前がでていませんが,シンポジストの弁護士とは,清水先生の盟友鈴木利廣先生です.シンポジストのジャーナリストは,国際医療福祉大学大学院教授の大熊由紀子さんです.

谷直樹

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by medical-law | 2012-06-19 00:36 | 医療

厚労省,難病研究・医療ワーキンググループ(第3回)

厚労省の難病研究・医療ワーキンググループ(第3回)が,2012年6月18日,開かれ,意見書がまとめられました.

NHK「難病の医療費助成の拡大を」(2012年6月18日)は,次のとおり報じています.

「難病の患者への支援策の見直しを検討している厚生労働省の専門家会議は、現在は56の難病の患者に限られている医療費助成の対象を広げたうえで、症状が重い患者を重点的に支援する新たな制度を設けるべきだという意見書をまとめました。

これは、専門家や患者団体などでつくる厚生労働省の専門家会議がとりまとめました。
厚生労働省は患者の数がおおむね5万人未満と少なく原因が明らかになっていない病気を難病と指定し、現在は130の病気について、治療法の研究費用を助成しているほか、特に治療が難しい56の難病患者を対象に医療費を助成しています。
しかし数百種類あるといわれる難病の一部だけが医療費助成の対象となっているのは不公平だという指摘が相次いだため、厚生労働省が専門家会議を設置し対策の見直しを進めています。
18日にまとまった意見書では医療費を助成する対象を他の難病にも広げたうえで、中でも症状が重い患者を重点的に支援する新たな制度を設けるべきだとしています。
診断は専門の医療機関が行い、患者の情報を集めて治療法の開発にもいかしていくことが必要だとしています。
18日に出された意見を受けて、厚生労働省は年内にも新たな難病対策をまとめることにしています。」

患者の視点で,難病患者支援が行われることを期待いたします.

谷直樹

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by medical-law | 2012-06-19 00:11 | 医療

弁護士フェルディナント・フォン・シーラッハ氏の小説『犯罪』

事務局Iです.
フェルディナント・フォン・シーラッハ(Ferdinand von Schirach)氏の著作,『犯罪』を読みました.
ドイツの刑事事件の弁護士さんが書かれた,刑事事件を題材にした小説です.

主人の買ってきた本で,偶然手にしたのですが,読んでみると期待以上で,端的な文章にも関わらず内容も濃密で,短編集なのですが,一作ずつ予想外に切り開かれる展開も面白く,また,哲学的でもあり…
実際に扱った事件をもとにアレンジしているそうですが,本来,残酷で下世話な事件を,淡々とした語り口で,氏独特の美的な視点で捉え大胆に表現し,昇華しています.

世界30ヵ国以上で翻訳され,数々の文学賞を受賞したそうですが,納得の芸術的内容でした.
第二作の『罪悪』を読みすすめていますが,こちらも,とても深い物語です.

谷直樹法律事務所 事務局I

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by medical-law | 2012-06-18 11:08 | 趣味

日弁連,リビアにおける国際刑事裁判所の弁護士・職員の拘束を懸念し,即時の釈放を求める会長声明

日本弁護士連合会(日弁連)は,2012年6月15日,以下のとおり,「リビアにおける国際刑事裁判所の弁護士・職員の拘束を懸念し、即時の釈放を求める会長声明」を発表しました.

Statement Concerning the Detention in Libya of Defense Counsel and Staff Members of the International Criminal Court and Urging Their Immediate ReleaseJapanese

On June 7, 2012, four staff members of the International Criminal Court (ICC) including defense counsel, Melinda Taylor, of the Office of Public Counsel for Defense (OPCD) were detained in Libya. Counsel was appointed by the ICC to defend a suspect, Saif Al-Islam Gaddafi, who is the second son of Colonel Gaddafi and whom ICC issued an arrest warrant against after the UN Security Council referred the situation in Libya to the ICC in 2011. Defense counsel and staff members were visiting Libya to meet the suspect as he had been detained there. While it is reported that the grounds of their detention are that counsel tried to deliver to the suspect documents unrelated to the case, according to the ICC, their travel to Libya is to be protected by privileges for ICC duties. The ICC published a statement on June 9 to call on the Libyan government to cooperate for their immediate release.

In the background of the detention is the fact that the ICC has requested the Libyan government to transfer the suspect to the ICC in accordance with its arrest warrant, but that the government refused to transfer the suspect, claiming that it would prosecute the suspect through its own justice system. The OPCD of the ICC was established to protect the human rights of suspects in criminal proceedings as interim counsel in situations referred to the ICC and cases in which arrest warrants were issued, until an official counsel is selected for the suspects.

The “Basic Principles on the Role of Lawyers”(1990) adopted by the Eighth Crime Prevention Congress of the UN guarantees lawyers’ activities, providing “[g]overnments shall ensure that lawyers ( a ) are able to perform all of their professional functions without intimidation, hindrance, harassment or improper interference; ( b ) are able to travel and to consult with their clients freely both within their own country and abroad; and ( c ) shall not suffer, or be threatened with, prosecution or administrative, economic or other sanctions for any action taken in accordance with recognized professional duties, standards and ethics.” The detention of counsel for the ICC is not only in clear violation of the Basic Principles, but also creates a serious situation in which human rights advocacy by lawyers becomes impossible. If such situations go untouched, it would be very difficult to perform counsels’ duties to realize fair trials in international criminal proceedings that become more important in the international community.

The Japan Federation of Bar Associations, due to the grounds stated above, is deeply concerned about the detention of counsel and staff members of the ICC in Libya, and urges the Libyan government to take measures for their immediate release. At the same time, the JFBA requests the government of Japan, a state party to the ICC Statute and the biggest donor to the ICC, to take actions towards the release of counsel and staff members of the ICC.

June 15, 2012
Kenji Yamagishi
President
Japan Federation of Bar Associations



谷直樹

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by medical-law | 2012-06-16 03:58 | 人権

香川県立中央病院,肺がん見落とし事案5000万円で和解(報道)

香川県立中央病院のサイトに,2012年6月14日,以下の「お詫びとお知らせ」が掲載されました.

「当院において、がん治療後、継続して外来診療を受けられていた患者様に関し、胸部レントゲン写真及びCTの画像・検査報告書を確認していなかったため、肺がんの発見が遅れた事故がありました。

 この事故を受け、検査結果や検査報告書の確認の徹底を図るとともに、検査結果の確認漏れの有無を担当医師が閲覧することができるよう電子カルテシステムを改善するなどの対策を講じました。

 患者様のご冥福をお祈り申し上げますとともに、ご遺族の皆様に心よりお詫び申し上げます。また、今回のことを重く受け止め、安全で質の高い医療の提供により一層努めて参ります。」


これだけでは,事態がよくわかりませんが,以下の報道のとおり,検査を指示した整形外科医,産婦人科医は検査画像を見ることなくすぎたようです.また,異常陰影を指摘した放射線医のレポートは,翌年まで読まれることがありませんでした.

◆ 読売新聞の報道

読売新聞「肺がん見逃し 遺族質問まで説明せず…香川県立中央病院」(2012年6月15日)は,次のとおり報じました.

「県立中央病院(香川県高松市)で14日、肺がん発見の機会を2度も見過ごすというずさんな診療経緯が明らかになった。

 胸部のエックス線写真やコンピューター断層撮影法(CT)検査の結果確認を2人の担当医が怠る単純なミスが重なり、50歳代の女性が死亡。病院側は遺族が問い合わせるまで、こうした経緯を説明しておらず、県庁で記者会見した松本祐蔵院長らは苦しい弁明に追われた。

 記者会見には、松本院長と、山地耕太郎事務局長が出席。「重大な医療事故だった」とミスを認めて陳謝し、経緯を説明した。

 松本院長らによると、エックス線撮影は女性の腕の骨折治療を担当した整形外科医が、CT検査は治療済みの子宮頸がんの経過観察として、産婦人科医が実施を決めた。いずれも肺に異常な影が写っており、電子カルテで簡単に閲覧できたが、2人とも一度も目を通していなかった。

 理由について、整形外科医は「(心機能の事前チェックが必要な)全身麻酔での手術を予定していたが、結果的に部分麻酔で行ったため、画像を見なかった」と説明。産婦人科医は「検査を行ったことを忘れていた」と話したという。

 CT検査で肺の影に気付き、報告書に記載した放射線科の医師も、産婦人科医に直接知らせておらず、松本院長は「病院全体のチェック体制に問題があった」との認識を示した。

 この報告書は、2009年6月に女性が肺がんと診断された直後に見つかり、その1か月後には、医療ミスとして松本院長にも報告されていた。しかし、病院側は女性側に伝えず、10年10月に亡くなった後も、遺族の問い合わせを受けるまで知らせていなかった。

 報道陣から「問い合わせがなければ、隠していたのか」とただされた松本院長は「当初は『患者の負担になる』と判断した。その後、院内での協議が続いて遺族に十分な対応ができなかったが、隠し通すつもりはなかった」と釈明した。

 再発防止策として、同病院は、検査結果が閲覧されない場合、電子カルテを見る画面上に警告が出るようシステムを変更。しかし、ほかに放置されている検査結果がないかどうかは「データが膨大で、すべてはチェックできていない」としている。(小野隆明)」


◆ 産経新聞の報道

msn産経「確認ミス がん発見遅れ死亡 香川県立中央病院 ■遺族に5000万円賠償へ」(2012年6月15日)は,次のとおり報じました.

「香川県立中央病院(高松市)は14日、胸部レントゲン検査などで肺に異常があったのに医師の確認ミスで県内に住む50代の女性の肺がんの発見が遅れ、その後死亡したとして、遺族に5千万円の損害賠償を支払い和解することで合意したと発表した。

 女性は平成18年6月に同病院で子宮頸がんの手術を受け、その後も外来を受診。20年2月に手首を骨折した際の治療で胸部のレントゲン撮影を行い、同年8月には子宮頸がんの経過確認のために腹胸部のCT(コンピューター断層撮影)検査を受けた。いずれも肺に異常陰影があったが、整形外科と産婦人科の担当医師はともに画像の確認を怠っていたという。

 女性は別の医療機関で受けた検査で肺に異常がみられ、中央病院で改めて検査し21年6月に肺がんが発見された。同病院で入院治療を行ったが、22年10月に死亡。同病院は肺がんが見つかった段階で医師の確認ミスに気づいたが、昨年1月に遺族から診療行為の問い合わせを受けるまで事実を伝えていなかった。

 同病院は、早く治療を始めていれば5年生存率が30~40%上がっていたと分析しており「病院全体でチェックする体質が不十分だった。心からおわび申し上げたい」と話した。」


◆ 朝日新聞の報道

朝日新聞「がん見逃すミス、遺族に5千万円賠償へ 香川県立病院」(2012年6月15日)は,次のとおり報じました.
 
「香川県立中央病院(高松市、松本祐蔵院長)は14日、2008年に2度にわたり50代の女性患者の肺がんを見逃すミスがあり、女性が10年10月に死亡したと発表した。遺族との和解のため、県は遺族に5千万円の損害賠償を支払う議案を21日開会の県議会に提出する。

 病院によると、女性が08年2月に手首を骨折し、手術前にX線画像を撮ったところ、肺に影があったのに整形外科の男性医師が見逃した。さらに同年8月、別の治療の経過観察で女性の胸と腹のCT検査をした放射線科の担当者が「肺に異常陰影がある」との所見を付けて電子カルテを更新したのに、産婦人科の男性医師が気づかずに放置した。

 09年6月に女性が別の病院で検査を受けて、肺がんが見つかった。女性は県立中央病院に入院。このとき病院はCT検査結果の放置について把握したが、女性側に伝えず治療を続けた。女性の死亡後に遺族の求めに応じて院内の医療事故調査委員会が調べた結果、X線画像の見逃しも含めて2度のミスが確認された。松本院長は会見で「家族への説明が遅れたことは申し訳なかった」と謝罪した。

 関係する2人の医師を処分するかどうかは今後、県が判断するという。(細川治子)」


◆ 四国新聞の報道

四国新聞「県立中央病院医療ミス/がん見落とし、賠償へ」(2012年6月15日)は,次のとおり報じました.

「香川県立中央病院20+ 件(松本祐蔵院長)は14日、2度にわたってエックス線写真などの確認を怠り、香川県内の50代女性患者の肺がん発見が遅れて死亡したとして、遺族に慰謝料など損害賠償金5千万円を支払うと発表した。

 同病院によると、女性は2008年2月、左手首の骨折手術の際、エックス線で胸部を撮影。同年8月には以前手術した子宮頸(けい)がんの術後経過を見るため、胸腹部のコンピューター断層撮影(CT)検査を受けた。どちらも肺に異常な陰影が写り、CT検査結果には技師の異常所見も付いていたが、整形外科と産婦人科それぞれの男性医師が画像などを確認していなかった。

 女性は、09年6月に他の病院で肺の異常を指摘され、香川県立中央病院20+ 件を受診。肺がんが見つかり、摘出手術を受けたが、10年10月に死亡した。

 同病院は肺がんを見つけた時点で、CT検査の確認ミスに気付いていたが、11年1月に遺族から治療に関する問い合わせがあるまで説明していなかった。2月に事実関係を確認した上で遺族に経緯を説明し謝罪。和解協議の末、5千万円の支払いで合意した。同病院を運営する香川県は、21日開会の6月定例香川県議会に関係議案を提出する。

 松本院長は、早期に治療を行っていれば5年生存率は30~40%上昇していた可能性があったと説明。「病院のチェック体制が不十分だった。心からおわびを申し上げたい」と謝罪し、確認漏れをチェックする電子カルテシステムを改めるなど再発防止に徹底して取り組む考えを示した。

 香川県立病院では、過去10年間に100万円以上の損害賠償となった医療ミスは4件ある。」


◆ 感想

報道から,経過をまとめてみます.
患者は,平成20年2月に胸部のレントゲン検査を受け,同年8月に腹胸部のCT検査を受けた.いずれの画像でも,肺に異常陰影があった.
整形外科と産婦人科の担当医師はともに画像の確認を怠っていた.
平成21年6月に肺がんが発見され,入院治療を行ったが,22年10月に死亡した.

肺がんの種類にもよるのでしょうが,本件は,10月から1年4月の遅れがなければ,5年生存率は30~40%上昇していた可能性があった,として,5000万円で和解しています.

私も,肺がんの見逃し事件を担当していますので,参考にさせていただきます.

谷直樹
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by medical-law | 2012-06-15 20:49 | 医療事故・医療裁判

民主党の「薬事行政監視の第三者組織設置法案」の内容

msn産経「薬害事件への反省を前文に明記方針 薬害監視委法案で民主」(2012年6月14日)は,次のとおり報じています.

「民主党は13日、超党派の議員立法で提出を目指す薬事行政監視の第三者組織設置法案について、薬害肝炎事件など過去の薬害事件への反省を前文に明記する方針を固めた。「薬害の発生・拡大を未然に防止する」との立法目的が不明確との指摘を踏まえた。ただ委員を非常勤とする規定などは見直さない方針で、政府法案の提出見送りに反発する薬害被害者らの理解を得られるかは不透明だ。

 薬害防止に向けた第三者組織の設置は、相次ぐ薬害事件の発生を受けて肝炎や薬害エイズ、肺がん治療薬「イレッサ」の被害者団体などが求めている。これを踏まえ、民主党は国家行政組織法第8条に基づく医薬品等行政評価・監視委員会を厚生労働省に設置する法案をまとめた。

 だが、法案は第三者組織創設を求めた同省の薬害肝炎検証委員会の最終提言にあった「薬害の発生、拡大を防止する」との目的が明記されていないなど、被害者団体から「骨抜き」との批判が出ている。

このため民主党は法律前文に過去の薬害事件の反省を踏まえる趣旨を明記する。表現は関係者と慎重に調整するとしているが、現時点での案では再発防止を「国民全ての願い」とするだけで国の責務としていない。反省の対象を「薬害肝炎事件をはじめさまざまな薬害事件」としたことも他の被害者団体の反発を招きそうだ。

 一方、薬害被害者らが批判する他の項目については修正を行わない方針。同党の見解文書によると、監視委の委員が自らの判断で審議事項を提案できる規定がないとの指摘に対しては「監視委の事務に『厚労相の諮問に応じて』との定めはなく、自ら発議する権限がないとはいえない」と反論。患者や企業からの情報収集も「関係行政機関の長から依頼を行うことで対応可能」とした。

 委員の常勤化については国家公務員の兼職禁止により引き受け手がいなくなると退けたほか、会議資料・議事録の公開についても監視委の判断に委ねる考えを示している。」


「薬事行政監視の第三者組織設置法案」に骨はあるのでしょうか.

谷直樹
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by medical-law | 2012-06-14 21:44 | 医療