弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

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高知新聞社説「【延命治療】タブー視することなく」

2007年の「救急医学会の終末期医療に関する指針(ガイドライン)」に基づき,2年間で延命治療を中止が3件,延命治療の差し控えが14件,あることが報告されました.
これをうけて,高知新聞社説「【延命治療】タブー視することなく」(2012年7月17日)は,次のとおり,述べています.

「今回報告された全34件のうち、延命治療の中止は3件あったが、うち「呼吸器外し」は1件にとどまっている。
 特に救急患者の場合、患者本人の意思が分からないことが多く、家族は心の準備もできないまま、重い決断を迫られることになる。
 報告書の対応で14件と最も多かったのが「心肺停止などの状態になっても蘇生措置を実施しない」といった延命治療の差し控えだ。たとえ回復の見込みがないと分かっても、患者の死に直結する行為には強い抵抗がある―。混乱の中で厳しい現実を受け入れていった家族の葛藤の過程が想像できよう。
 臓器移植とともに、医療の選択肢が増えた現在、いざその時になって決断を迫られる機会が増えている。患者の生前の意思が不明な場合、残された家族が重い負担を背負うことになる。
 自分自身の納得のいく「最期」と家族の負担を軽減するためにも、家族が互いの意思を伝え合うことがこれからますます求められていくに違いない。
 これまでタブー視されがちだった延命治療を、国民的な議論に広げていくには、延命治療の意思決定までのプロセスについての情報ができるだけオープンにされることが望ましい。
 データが限られているだけに、今回、実際の対応が不明だったケースが9件あったことは惜しまれる。報告の意義の大きさについての現場の認識を高めていくことも必要だろう。」


谷直樹

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by medical-law | 2012-07-18 00:33 | 医療

中日新聞社説「難病・ALS 命の介護になぜ差が…」

中日新聞社説「難病・ALS 命の介護になぜ差が…」(2012年7月16日)は,和歌山地裁平成24年4月25日判決に言及し,次のとおり述べています.

 「日本ALS協会(本部・東京)や名古屋大の祖父江元・教授によると、ALSの国内患者は八千人余。全身の筋力が衰えて動かなくなっていく。進行がとても速い。発病者の半数が三~五年で自力呼吸もできなくなり死亡する。

 人工呼吸器や胃ろうで延命はできる。「治療法がない今『生きたい』と必死の患者にしてあげられるのは『命をつなぐ』こと」「七割の患者は迷惑をかけるからと、自らの意思で呼吸器を拒む」。現場のそんな声に、暗然とする。

 「それでも生きたい」-。そう決意した患者も、しかし、自力で動けない。昼夜を問わずタンの吸引をしないと窒息死する。公的介護の十分な支援を求める理由はそこにある。独り暮らしや老老介護の家庭ならなおさらだ。

 ヘルパーの介護時間の決定権は市町村にある。障害者自立支援法と介護保険法を基に、独自の基準をつくる。病状の程度、家庭環境や介護力などから判断する。

 ところが表向きと実態は違う。名古屋市は最大二十四時間を認めているが、同じ愛知県で半分に満たない市もある。東京都も二十三区ばらばら。どこも同じだ。「同行者が違うと、とたんに増えた」例もある。自治体の裁量で運用に差が出て公的介護といえるか。」

和歌山地裁平成24年4月25日判決は,老妻と二人暮らしの現状から1日最低21時間は必要の介護サービスが必要と判断しましたが,他の自治体においても,この判決の趣旨を尊重すべきでしょう.
さらに,国として,日本国憲法が保障する生存権を基本とする医療政策が求められていると言えるでしょう.

谷直樹

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by medical-law | 2012-07-17 00:18 | 医療

尊厳死法案への疑問

「尊厳死法制化を考える議員連盟」は,終末期の患者に対する延命措置の不開始を免責する案と,さらに延命措置の中止も免責する案について,検討しています.
同議員連盟が,2012年7月12日,障害者団体からのヒアリングを行ったところ,「終末期の医療における患者の意思の尊重に関する法律案(仮称)」(尊厳死法案)そのものに反対の意見が述べられました.

キャリアブレイン「尊厳死法案、「仕切り直し、一から議論を」- 障害者団体、終末期の定義を問題視」(2012年7月12日)は,次のとおり報じています.

「DPI日本会議」の尾上浩二事務局長は、「終末期の定義が非常に不鮮明なところに根本的な問題がある」と指摘。「仕切り直して、一から改めて医療や福祉を必要とする人たちと議論をして、考えてほしい」などと述べ、法案の撤回を求めた。

また、「人工呼吸器をつけた子の親の会『バクバクの会』」の大塚孝司会長も、「わたしたちの子どもはかなり重篤な状態で生まれてきたが、30歳近くになっても人工呼吸器をつけて暮らしている。終末期を定義できないことは、わたしたちの子どもが証明している」と述べた上で、「尊厳死の法制化には強く反対する」と強調した。」

「尾上事務局長は「『死期が間近』と規定しているが、どのような状態を指すのか」などと疑問を投げ掛けた。また、6日に東京都内で開かれた尊厳死法案をテーマにした公開討論会で、日本尊厳死協会の長尾和宏副理事長が、終末期を定義することは困難との見方を示したことを引き合いに出し、「確実な判定は可能と考えているのか」とただした。
 これに対し、長尾副理事長は改めて「終末期を定義するのは困難」としながらも、「2人の医師による判断は非常に重く、この方法は十分あり得ることだと思う」と述べた。」


患者は,十分な情報提供と分かりやすい説明を受けて,自由な意思に基づき自己の受ける医療を選択する権利があります.
真に患者本人の自由な意思に基づく自己決定であることを制度的に保証するため法的整備が必要です.

日弁連会長声明(2012年4月4日)は,次のとおり指摘します.

「当連合会は、2007年8月に、「『臨死状態における延命措置の中止等に関する法律案要綱(案)』に関する意見書」において、「尊厳死」の法制化を検討する前に、①適切な医療を受ける権利やインフォームド・コンセント原則などの患者の権利を保障する法律を制定し、現在の医療・福祉・介護の諸制度の不備や問題点を改善して、真に患者のための医療が実現されるよう制度と環境が確保されること、②緩和医療、在宅医療・介護、救急医療等が充実されることが必要であるとしたところであるが、現在もなお、①、②のいずれについても全く改善されていない。

そのため、当連合会は、2011年10月の第54回人権擁護大会において「患者の権利に関する法律の制定を求める決議」を採択し、国に対して、患者を医療の客体ではなく主体とし、その権利を擁護する視点に立って医療政策が実施され、医療提供体制や医療保険制度などを構築し、整備するための基本理念として、人間の尊厳の不可侵、安全で質の高い医療を平等に受ける権利、患者の自己決定権の実質的保障などを定めた患者の権利に関する法律の早期制定を求めたものである。

本法律案は、以上のように、「尊厳死」の法制化の制度設計に先立って実施されるべき制度整備が全くなされていない現状において提案されたものであり、いまだ法制化を検討する基盤がないというべきである。」


まさしくそのとおりで,患者の権利法が制定されていない段階で,医師の免責を定める法律を制定することは,患者の真に自由な意思に決定に基づく終末期医療を妨げることになる危険があります.

谷直樹

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by medical-law | 2012-07-14 05:12 | 医療

福岡市内の病院,ガーゼの置き忘れは認めるが,請求の棄却を求める(報道)

読売新聞「念押ししたのに…鼻の中にガーゼ放置、病院提訴」(2012年7月13日)は,次のとおり報じています.
 
「福岡市内の病院で蓄のう症などの手術を受けた際、鼻の中に約8か月もガーゼを置き忘れられ、精神的苦痛を受けたとして、市内の50歳代男性が病院を運営する同市博多区の社団法人に220万円の損害賠償を求める訴訟を福岡地裁に起こした。

 男性は十数年前に別の病院で同じ被害に遭っており、「絶対に同じことが起きないようにと念押ししたのに」と憤っている。

 13日に第1回口頭弁論があり、社団法人側は請求の棄却を求めた。

 訴状によると、男性は2008年7月に手術を受け、鼻にチューブとガーゼ(長さ30センチ)10枚を詰められた。

 十数年前に別の病院で同じ手術を受けた際、約7か月後に鼻からガーゼが出てきた経験があり、同じことが起きないよう医師に念押しした。手術2日後にガーゼを取り除く時にも取り忘れがないかを尋ね、医師は「ありません」と回答した。

 だが、09年4月にチューブを除去し、一週間後にくしゃみをした際、鼻の奥からガーゼが出てきた。仕事中で放っておけず、引き抜くと大量の鼻血が出た。

 病院側は「ガーゼはチューブを固定するために残していた」と説明。チューブを外した際に置き忘れたことは認めたが、ほかの9枚と一緒に取り除くべきものではないと話したという。

 男性側はカルテに「ガーゼ9枚全抜去」と記載されている点を指摘。置き忘れを心配していた男性に説明しなかったことも不自然で、医師が枚数確認を怠ったことが原因、と主張する。

 社団法人は取材に対し、「係争中でコメントは差し控える」と話している。」


この福岡市内の病院が,チューブを外した際に置き忘れたことは認めた,のが事実であれば,それは過失(注意義務違反)にあたりますから,損害の範囲,損害額を争うにしても,慰謝料はゼロではありませんから,請求の棄却を求めるのは不合理でしょう。

谷直樹

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by medical-law | 2012-07-14 04:39 | 医療事故・医療裁判

横浜市立市民病院,排出用と経腸栄養用チューブを誤用,曲がったチューブが食道貫通で示談(報道)

msn産経「横浜市立市民病院で医療事故1件、ヒヤリ・ハットは4308件」(2012年7月13日)は,次のとおり報じています.
 
「横浜市は13日、平成23年度に市が運営する市民病院(保土ケ谷区)や脳血管医療センター(磯子区)で起きた医療事故などの集計結果を発表した。市民病院で医療事故が1件発生。事故につながる恐れのあった「ヒヤリ・ハット事例」の数は両病院で22年度と比べ5件多い4308件だった。

 市によると、市民病院で起きた医療事故は昨年6月22日に発生。呼吸器系の病気で入院した70代の男性の鼻から胃に挿入していた栄養を注入するための直径(外径)4・7ミリ、長さ122センチのポリ塩化ビニール製チューブを医師が取り出す際、チューブがひっかかり抜けなくなった。

 内視鏡などで確認したところ、曲がったチューブが食道を貫通していた。男性は「胸が痛い」と不快感を訴え、同日から発熱があったという。同月28日にチューブを取り除いた。抗生剤による治療後、発熱は収まったが、男性は肺疾患の悪化で7月27日に同病院で死亡した。事故と死亡との因果関係はないという。

 市の調査で、5月18日にチューブを男性に入れた際、胃から液を排出するためのチューブを誤って栄養を注入する目的で使っていたことが判明。排出用チューブの使用期限2週間も越えていた。また、同病院でチューブで栄養剤投与を受けている33人の患者のうち、1人に使われていたチューブが栄養用ではなく排出のためのものだったことも分かった。

 病院は男性の家族に説明し謝罪。約1カ月入院期間が長引いたとして慰謝料を家族に支払い、示談が成立しているという。」


神奈川新聞「横浜市立市民病院で医療器具誤用して患者の食道に穴、「死亡との関係なし」(2012年7月13日)は,次のとおり報じています.

「横浜市立市民病院(保土ケ谷区岡沢町)で昨年6月、70代の男性患者の胃に入れる管の種類を間違え、管を引き抜く際、食道に穴を開ける医療事故を起こしていたことが13日、分かった。患者は肺の持病が悪化して昨年7月に死亡したが、同病院は事故との因果関係はないとしている。

 同病院によると、患者は昨年4月に急性肺炎で入院。5月18日に栄養剤投与のため鼻から管を挿入し、6月22日に引き抜こうとしたところ、変形した管が食道に刺さった。炎症が治まるのを待って6月28日に管を抜いた。

 管は直径4・7ミリメートル、長さ1・2メートルのプラスチック製。管には胃液などを採取する「排液用」と栄養剤を投与する「経腸栄養用」の2種類あり、本来は長期間入れられる経腸栄養用を使うところを、誤って短期間で使われる排液用にしたため、管が釣り針のように変形していたという。

 担当した女性医師と看護師は2種類を使い分ける必要性を認識していなかった。別の診療科でも管の種類を間違えているケースが1件確認されたという。

 同病院は「マニュアル作成や管を入れる袋の変更などで再発防止を図りたい」と話している。」


N-Gチューブ注入用胃管と排出用胃管があります.
長期間使用の経腸栄養用チューブと短期間使用の排液用チューブの違いがわかっていないのは,お粗末というしかありません.

谷直樹

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by medical-law | 2012-07-14 04:25 | 医療事故・医療裁判

日弁連,東京電力値上げ申請についての会長声明

東京電力は,家庭用電気料金の10.28%の値上げを申請しました.
その算定根拠が不合理であることは各方面から指摘されています.

日本弁護士連合会(日弁連)は,2012年7月12日,「東京電力値上げ申請についての会長声明」を発表し,次のとおり指摘しました.

「東京電力はホームページにおいて、経済産業省令「一般電気事業供給約款料金算定規則」に則って算定したものと反論している。

しかし、東京電力は、同社に大きな帰責がある原発事故に起因する賠償責任を負い、既に原子力損害賠償支援機構から、2.4兆円もの資金交付を受け、さらに1兆円の資本注入がされ、形式的に債務超過を免れているに過ぎない状況である。したがって、同社の従来株主も新株主である国も、消費者の負担増によって配当を受けることはもちろん、内部留保によって株価が上昇することを期待することはできないのであるから、東京電力においては、もともと配当と内部留保の原資として認められている自己資本報酬を原価算入する根拠を欠いているのである。

したがって、現在の東京電力において、平時の電力料金算定ルールである上記規則に基づいて、自己資本報酬を電気料金原価に算入することは正当化できないことはいうまでもなく、消費者委員会が強く疑問を呈しているのは当然である。

さらに、東京電力及び経済産業省は、実質的な事業報酬計上の必要性として、特別負担金の拠出を挙げている。すなわち、福島原発事故の損害賠償を国が資金交付という形で肩代わりした分を、事業報酬により得た利益で返還するという。
しかし、現実には、事業報酬に相当する金額を特別負担金として拠出するといった明確なルールは、どこにも存在しない。

仮に、自己資本報酬相当額の電気料金算入を認める場合には、少なくとも自己資本報酬相当額が、同社の利益に回らず、特別負担金の拠出に充てられることが明確に約束される必要があるが、この点について、消費者委員会が今後の課題として「事業報酬と資金調達コストの差分や経営努力の結果生じた原価と実績の差分については最優先で特別負担金の返済に充てられることを事前に確認し、また事後にも検証を行う」と指摘しているとおりである。

しかし、現時点では東京電力及び経済産業省はその明確化を拒んでいるのであるから、自己資本報酬の電力料金原価への算入を認めることはできないことも当然である。

最後に、他人資本報酬率についても、東京電力は、過去10年にわたり、現実に1.61%もの利息を支払った形跡がなく、さらに現状においては国の支援無くして東京電力が融資を受けることは不可能である。国の保証を前提にした利子率を前提とする1%強まで利率を圧縮すべきである。実質破たん企業である東京電力において、貸し手責任を免れた債権者の利息相当額の全額を消費者が負担する合理性は存在せず、国の保証によって利息を極小化できる以上、その範囲でしか電気料金への算入は認められない。

当連合会は、以上の理由により、今回の値上げ申請においては、事業報酬のうち2、000億円余りについては、明らかに電気料金原価への算入を認めるべきではなく、これを考慮すれば値上げ率を更に圧縮できると考える。よって、経済産業大臣に対し、消費者委員会及び上記当連合会の指摘を十分に踏まえた上で、判断を行うことを求める。」


谷直樹

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by medical-law | 2012-07-13 17:53 | 弁護士会

福岡高裁平成24年7月12日判決,個人情報漏洩で病院の責任を認める(報道)

毎日新聞「患者情報漏えい:病院責任、2審は認定」(2012年07月13日)は,次のとおり報じています。

「難病の少女の病状を看護師から他人に漏らされて精神的苦痛を受けたとして、大分市の母親が同市内の整形外科病院の院長に、慰謝料など330万円の支払いを求めた訴訟で、福岡高裁(犬飼眞二裁判長)は12日、請求を棄却した1審・大分地裁判決を変更し、病院側に110万円の支払いを命じた。

 判決によると、母親は同市内で飲食店を経営。娘が難病のユーイング肉腫で病院に入院していた08年夏、店の男性客から突然「娘さん、あと半年の命なんやろ」と言われた。母親からの苦情を受け、病院側が調査した結果、この客は少女の担当看護師の夫で、看護師が病状を漏らしたことが分かった。少女は同年12月、19歳で亡くなった。

 大分地裁は、病院が個人情報の管理規程を作り、看護師に守秘義務に従うよう誓約書を提出させていたことから「病院に過失はない」と請求を退けたが、福岡高裁は「看護師が夫に患者の個人情報を漏らしていたのは今回だけではなく、病院側の指導や注意喚起が不十分だった」と判断した。【遠藤孝康】」


看護師は,患者情報の漏洩について不法行為責任(民法709条)を負い,病院は使用者としての責任(民法715条1項)が問題になります。

民法715条1項は,「ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。」と定めています。

(1)使用者(病院)が被用者(看護師)の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたか,(2)相当の注意をしても損害が生ずべき場合でであったか,が問題になります。これらの立証責任は使用者(病院)側にあります。
例えば,病院が,個人情報保護法に従って内規を設けていても,それだけでは,相当の注意をしたことにはなりません。
誓約書だけで監督について相当の注意をしたという大分地裁の判断は,使用者責任についての裁判判に照らし,相当ではありません。福岡高裁の判断が適切です。

なお,最高裁平成14年7月11日判決(宇治市住民基本台帳漏洩事件)は,宇治市が乳幼児検診システムの開発を民間業者に委託したところ,再々委託先のアルバイト従業員が住民21万人分の台帳をコピーして名簿業者に渡した事案で,住民一人あたり1万円の損害賠償が認めました。
ちなみに,弁護士,裁判官は,家庭内で仕事の話をしません。NHKのドラマで,裁判官が妻に事件の内容を話す場面がありましたが,現実にはあり得ません。
法律事務所の事務局は,守秘義務を厳正に守る人というのが,採用の絶対必要条件です.

谷直樹

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by medical-law | 2012-07-13 11:33 | 医療

福岡大学病院,また個人情報を含むノートパソコン盗難

福岡大学病院では,呼吸器内科の男性医師(30歳代)が無断で持ち出した個人情報を記録したUSBメモリーが,2012年4月27日夜,駐車場にとめてあった車の中から持ち出される,という盗難事故がありましたが,今度は,医学部の建物にある自室に置いていた医師個人所有のノートパソコンの盗難事故がおきました。

福岡大学病院長山下裕一氏作成の,平成24年6月27日付の「ノートパソコン盗難について」は,以下のとおりです。

このたび、患者個人情報を含むノートパソコンの盗難が発生いたしました。盗難に遭ったのは当院の医師で、ノートパソコンには当院を受診された患者の皆様125人分の個人情報が含まれていました。

当院においては、個人情報の取扱いに関する規則を定め、個人情報の適切な管理に努めてまいりましたが、このたび、ノートパソコンの盗難があり、皆さまには多大なご迷惑とご心配をおかけしますことを深くお詫び申し上げます。なお、現在までのところ、不正利用の報告は受けておりません。
関係の皆様方にお詫びするとともに今回の経緯についてご報告申し上げます。

1 盗難の経緯
平成24年5月30日(水) に医師が、医学部の建物にある自室に置いていた個人所有のノートパソコンがないことに気が付きました。盗難に遭った可能性が高いとの判断から6月6日(水)に報告がありました。
同医師は、6月7日(木)に警察に届け出を行いました。

2 ノートパソコンに保存されていた情報
このパソコンには、125人分の患者個人情報が含まれていました。個人情報の内容は、氏名、年齢、性別、ID番号、病名の略語(23人分のみ記載があり、残り102人分は空欄)、計測結果で、住所や電話番号は含まれておりませんでした。なお、パソコンにはログインパスワードを設定していました。

3 患者の皆様に対する当院の対応
該当する患者の皆様に対し、電話により経緯を説明し謝罪をしています。

4 再発防止に向けた取り組み
全職員に対し、あらためて注意喚起等を行いました。今後も再発防止に努めてまいります。
(1) パソコンを設置している部屋が不在となる場合は施錠する。
(2) パソコンにセキュリティーワイヤーを設置する等の盗難防止策を徹底する。
(3) 各部屋や非常口・通用口の施錠を再度徹底し、警備巡回の強化を図ります。
(4) 定期的に会議や職員の研修等を通じて、防犯の徹底と個人情報の適切な取扱いについて周知を図っていきます。」



ちなみに,報道によると,昨年6月以降,個人電磁情報の紛失事故は,以下の施設で起きています.

2011年 6月
慶應義塾大学病院スポーツ医学総合センター
北海道大学病院

2011年7月
医療法人 柏堤会(財団) 戸塚共立第1病院
藤田保健衛生大学病院
昭和大学歯科病院

2011年8月
筑波メディカルセンター病院

2011年9月
千葉県精神科医療センター
鹿児島大学病院

2011年10月
JA茨城県厚生連茨城西南医療センター病院
独立行政法人国立病院機構三重中央医療センター
独立行政法人労働者健康福祉機構関東労災病院
大和市立病院

2011年11月
独立行政法人国立病院機構金沢医療センター

2012年1月
医療法人聖愛会
独立行政法人国立病院機構千葉医療センター
独立行政法人国立病院機構宇多野病院
東京女子医科大学附属八千代医療センター

2012年2月
京都府立洛南病院(ただし一時紛失)
岡山大学病院
藤沢市民病院
長崎大学病院

2012年3月
日本赤十字社医療センター

2012年4月
ごう在宅クリニック(札幌)
静岡県立病院機構静岡県立総合病院
広島大学病院
福岡大学病院

2012年5月
福岡大学病院

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by medical-law | 2012-07-12 19:42 | 医療

女子力あれこれ

事務局Hです.
最近,女子力という言葉を頻繁に耳にしますし,
私も女子力を上げなくちゃ!と思っていたのですが,
知り合いの年上の女性が,
「子供の頃から女性として普通に生活していれば女子力は自ずと身に付くもの.それが出来ていないから,いい年になって女子力をつけようと躍起になる.付け焼き刃の女子力は本物ではない.女子力をつけようと必死になるのはむしろみっともない.」
と力説していたのを聞いて,確かになぁ・・・と納得してしまいました.

女子校育ちだからか,私自身,女子力が高いと言っていただくことが多いのですが,
知り合いの男性が,
「女性は化粧でいくらでも化けるし,いくら部屋が汚くても綺麗に着飾って出ていくから恐ろしい.」
と言っていたのを思い出すと,
内面から滲み出る品を身に付けるため,人に見せない部分にも気を遣うようにしないとなぁと思いました.

谷直樹法律事務所 事務局H
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by medical-law | 2012-07-12 18:15 | 日常

「抗がん剤等による健康被害の救済に関する検討会」大詰めへ

「第10回抗がん剤等による健康被害の救済に関する検討会」が,2012年7月13日10時から開催されますが(傍聴希望は11日なで),抗がん剤の副作用で被害を受けた患者を救済する制度の創設が見送られる,という見方が報道されています.

薬害イレッサ訴訟原告団・弁護団は2012年7月10日,小宮山洋子厚労相と同検討会の森嶌昭夫座長に,救済制度創設に向けた具体的な検討を続けるよう求める要望書と試案を提出しました.13日の検討会の議論に注目したいと思います.

キャリアブレイン「抗がん剤の副作用被害救済制度で試案- 「検討継続を」とイレッサ弁護団など」 (2012年7月10日)は,次のとおり報じています.

「抗がん剤による副作用被害の救済制度を議論してきた厚生労働省の検討会が、制度の創設の提案を見送る可能性が高まる中、薬害イレッサ訴訟の原告団、弁護団などは10日、制度創設に向けた具体的な検討を続けるよう求める要望書と同制度の試案を、小宮山洋子厚労相と同検討会の森嶌昭夫座長あてに提出した。

 同試案では、死亡に至った副作用か、入院が必要な重篤な副作用を救済対象に設定。ただ、抗がん剤が対象外となっている現行の副作用被害救済制度では、入院8日以上か未満かで医療手当の給付額が違うことに考慮し、8日未満の入院は対象から外した。また、医療費・医療手当、遺族一時金・葬祭料の給付額は現行制度の範囲内とした。
 このほか、抗がん剤が適正に使用されたかどうかの判定などについては、承認内容から外れた適応外使用の場合でも、抗がん剤治療におけるエビデンスを踏まえた個別判断で判定されるべきとした。これについて、弁護団などは「現行の抗がん剤治療に不当な委縮をもたらすものとは考え難い」と説明している。
 ただ、試案と共に提出した要望書では、「もとより、よりよい制度設計が可能であれば試案にこだわるものではない」としており、あくまでも制度創設に向けた検討の継続を第一に訴えている。

 同日の記者会見で、東日本訴訟弁護団の阿部哲二事務局長は「検討会を傍聴していて、具体案に基づき、どういう場合にどういう問題があるかという討議がされていないと感じる。この試案を基に、改めて審議を継続するよう強く望んでいる」と述べた。
 また、弁護団の小池純一弁護士は「(検討会の委員で)制度が不要と言う人はいないが、多くの人がマイナスの影響があるのではないかと発言していたが、制度をつくることで、プラスの効果の観点もぜひ考えてほしい」とした。具体的には、副作用を減らすために製薬企業側が副作用情報を積極的に提供することなどによる、がん医療の安全性の向上を挙げた。

 抗がん剤の副作用被害救済制度をめぐっては、6月に開かれた同検討会の前回会合で、今後の議論の方向性について話し合ったものの、「制度設計を急ぐと、かえってがん医療を委縮させてしまう」など、慎重論が相次いだ。13日に開かれる次回会合では、検討会としての取りまとめに向けた検討が行われる予定となっている。【津川一馬】」


谷直樹

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by medical-law | 2012-07-11 02:28 | 医療