弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

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新潟地裁平成24年10月30日判決,大腸癌の検査義務違反で新潟医療生協木戸病院に賠償命じる(報道)

毎日新聞「がん死亡損賠訴訟:病院側過失認め、遺族勝訴−−地裁判決 /新潟」(2012年10月30日)は,次のとおり報じています.

 「妻が大腸がんで死亡したのは、通院していた木戸病院(新潟市東区)の検査や措置が不十分でがんの発見が遅れたためとして同区の男性と家族が、同病院を運営する新潟医療生活協同組合に約5300万円の慰謝料などを求めた訴訟の判決が29日、新潟地裁(三浦隆志裁判長)であった。三浦裁判長は病院側の過失を認め、計約2100万円の支払いを命じた。

 判決によると、男性の妻はめまい、頭痛などの症状を訴え、同病院に通院し、08年7月の血液検査で異常値が認められたが、超音波検査しか行われず、09年9月に別の病院でCT検査などを受けたところ、大腸がんと全身への転移が見つかった。妻は10年7月、大腸がんのため死亡した。

 三浦裁判長は判決で「(病院側は)疾患を疑い腫瘍マーカー検査を実施するほか、他の適切な医療機関に転院させるべきだった」などとして、病院側の過失を認めた。

 新潟医療生協は「判決文をよく読んで顧問弁護士と相談したい」としている。【塚本恒】」


一般に,リスク・主訴・症状→検査→診断→治療,という手順,流れで診療が行われますが,本件は「リスク・主訴・症状→検査」の部分に過誤を認めた裁判例です.

裁判所は「重大な疾患について優先的にその該当の有無が鑑別されるべきであり,主な争点として,①診療当時既に,客観的に,当該疾患を発症していたか,②当該疾患を疑うにたる主訴,症候等があったか否か,③当該疾患を疑った場合に求められる具体的な危険の選択,手順が検討される。」(秋吉仁美編『医療訴訟』279頁)という考え方に立っています.
なお,「当該疾患を疑うにたる主訴,症候」とは,当該疾患に特異的な主訴,症候のことをいうのではありません。
そもそも症状がない時点で早期発見,早期治療すべき,として健診が推奨されているような疾患では,リスクのある人にわずかでも当該疾患を疑わせる主訴,症候があれば,検査に結びつける必要があるでしょう.
早期の大腸がんの場合,自覚症状はほとんどありません。

検査にも求められる手順があり,医療過誤が問題になります.
本件は,「③当該疾患を疑った場合に求められる具体的な危険の選択,手順」の場面ですが,残念ながら「血液検査で異常値が認められたが、超音波検査しか行われず」としか報じられていませんので,判決をみないと経緯がよくわかりません.

谷直樹

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by medical-law | 2012-10-31 02:01 | 医療事故・医療裁判

重度障害児の専門医療施設で7歳の男児が高熱を出し胃からの出血で窒息死した事案,道と両親が和解(報道)

NHK「施設で男児死亡 道と両親和解」(2012年10月29日)は,次のとおり報じました.

「障害のある子どもを道の医療施設に預けた両親が「子どもが高熱を出して死亡したのは適切な対応を取らなかったためだ」として道に賠償を求めた裁判は、道が両親に和解金を支払うことなどで和解が成立しました。
この裁判は平成16年に、札幌市手稲区にあった道立の「札幌肢体不自由児総合療育センター」、現在の「子ども総合医療・療育センター」で大量の血を吐いて窒息死した7歳の男の子の両親が「高熱が続いていたのに解熱などの適切な対応を取らなかった」などとして道に7000万円余りの賠償を求めたものです。
札幌地方裁判所で続いていた裁判で、道は「過失はなかった」と主張し争っていましたが、今月に入って裁判所から和解を提案され、29日、道が両親に和解金を支払うことなどで和解が成立しました。詳しい和解の内容は明らかになっていませんが、道の担当者は「日ごろから安全管理を徹底しているが、今後も引き続き医療事故の防止に努めたい」と話しています。」


北海道新聞「男児死亡訴訟 遺族と道和解 札幌地裁」(2012年10月29日)は,次のとおり報じました.

「道の小児専門医療施設に預けた男児=当時(7)=が死亡したのは医療過誤が原因として、札幌市の両親が道に約7200万円の損害賠償を求めた訴訟は29日、札幌地裁で道が両親に和解金を支払うことで和解が成立した。双方は金額を明らかにしていない。

訴状によると、重いてんかんなどの障害があった男児は2004年12月、短期入所先の札幌市手稲区の道立札幌肢体不自由児総合療育センター(現道立子ども総合医療・療育センター)で高熱を出し、胃からの出血が原因で窒息死したという。両親側はセンターが重度障害児の専門機関としての義務に反し、経過観察や解熱などの措置を怠ったと主張。道側は過失の有無をめぐり争っていた。

 和解を受け、原告側の弁護士は「センターは今回の事故を踏まえ、障害児のためにより良い医療・支援に努めてほしい」と話した。道は「今後も引き続き医療事故の未然防止に努めたい」とのコメントを出した。」


2004年12月の事故について裁判上の和解に至るまでこれだけの年月がかかっています.
医療過誤に基づく損害賠償請求は大変です.
ちなみに,札幌には「札幌医療事故問題研究会」という患者側の弁護士の団体があります.

谷直樹

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by medical-law | 2012-10-30 02:17 | 医療事故・医療裁判

薬害オンブズパースン会議,「登録販売者試験受験資格に関する要望書」

登録販売者は,規制緩和による平成18年改正薬事法で新設された一般用医薬品を販売するための資格です.
平成27 年5 月31 日までの間に既存配置販売業者のもとで所定の実務経験を積み当該既存配置販売業者の作成した「実務経験(見込)証明書」及び「当該証明に関する勤務簿の写し又はこれに準ずるもの」を提出すれば,登録販売者試験の受験資格を得ることができます.
ところが,平成20年からの3年間で,実務経験の証明に関し,90件の不正が判明しています.
そこで,薬害オンブズパースン会議は,2012年10月25日,厚生労働大臣に対し,「登録販売者試験受験資格に関する要望書」を提出しました.

要望の趣旨は,以下のとおりです.

「1 登録販売者試験の受験要件である実務経験に関する経過措置を定めた薬事法施行規則等の一部を改正する省令附則第2条2項から、既存配置販売業に関する記載を削除すること
2 登録販売者試験の不正受験が行われた場合の制裁として、5年以内の受験資格停止規定を設けること
3 内容虚偽の「実務経験(見込)証明書」を作成した薬局開設者等に対する制裁規定を設けること」


この問題は昨年3月に表面化しましたが,未だ対応がなされていなかったのですね.
ちなみに,東京都のサイトには,以下の注意が記載されています.

「<今後出願を予定されている皆様へ>
・出願前に受験資格をよくご確認ください。毎年、出願後に受験資格がないことが分かり受験できない方がいらっしゃいます。

「<実務経験証明書発行者の皆様へ>
・実務経験証明書の内容に誤りがないことをよくご確認ください。虚偽や不正の証明を行うと薬事法違反となります。」


谷直樹

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by medical-law | 2012-10-29 05:00 | 医療

日本脳炎ワクチン,2人の死亡前に,重い副作用104人,後遺症少なくとも8人が報告されていた(報道)

日本消費者連盟とワクチントーク全国は,2012年10月19日,日本脳炎ワクチン投与後の2例の死亡例が報告されている以上,即刻中止して徹底的に原因究明すべきとして,厚生労働大臣宛に要請書を提出しました.
その要請の趣旨は,以下のとおりです.

「1 乾燥組織培養日本脳炎ワクチンの接種を中断し、日本脳炎の今回の死亡事故の原因を徹底究明すること。ほかの事例がないかを緊急に調査すること。

2 乾燥組織培養日本脳炎ワクチンは、承認時「Vero細胞を用いて製造されるはじめての医薬品であるので、重篤な副反応に関するデータの収集及び評価を行うこと」と貴省のQ&Aに書いてあります。接種開始後の予防接種の副作用について詳細に公表すること

3 日本脳炎ワクチン接種に必要性について、広く市民の意見を聴く場を設け、乾燥組織培養日本脳炎ワクチンの定期接種や勧奨を中止すること」


日本脳炎は,人から人には感染しない病気で,媒介するコガタアカイエカにさされて,抵抗力のない人に発生する疾患です.

要請書は,「2000年に国立感染症研究所が同ワクチンに接種者、非接種者を対象に行った抗体保有率調査では、9歳から20代前半の接種者では90パーセントを超える抗体、非接種者でも80パーセント弱の抗体を保有しており、自然感染で抗体を獲得して発症していません。その後、必ずしも自然感染獲得の抗体価が高くないので、ワクチン接種が必要であるとの論文が発表されていますが、一般的に、日本人と日本脳炎という病気には共生関係ができていると言え、ワクチン接種の必要性には疑問があります。」と必要性に疑問を投げかけていました.

危険性について,要請書は,「09年1月に阪大微研製の「ジェービック」が承認され6月より接種開始されました。承認時に提出された「審査報告書」やその後の追加報告でも、新ワクチンは量が少なくてもアレルギー反応による髄膜刺激症状や大脳機能の変調をきたす危険性が危惧されていました。」と指摘しています.

要請書は,予防接種後副反応報告書では2010年度(22年度)148件(そのうち脳炎・脳症3件、けいれん12件、運動障害3件、その他の神経障害4件),薬事法上の副作用報告では承認時より2010年1月5日までに21件(そのうちADEM1件、小脳性運動失調1件、けいれん4件、顔面神経麻痺1件など神経系障害7件)が報告されている,と指摘しました.

この時点では,上記の程度の情報しか公開されていなかったためです.

東京新聞「日本脳炎ワクチン 重い副作用104人 未回復、後遺症も」(2012年10月28日)は,次のとおり報じました..

「現行の日本脳炎ワクチン接種が始まった二〇〇九年六月から今年六月までに、医療機関の情報を基にした製薬企業から、百四人が接種後にけいれんや脳炎など重い副作用を起こしていたと報告されていたことが厚生労働省などへの取材で分かった。 

 今月十七日に岐阜県美濃市で男児(10)が接種後に急死したことを受け、厚労省は三十一日に「日本脳炎に関する小委員会」を開催。美濃市の男児と七月に死亡した子どもの経緯を公表し、副作用の事例も説明する。

 百四人の内訳は十歳未満が九十一人、十代が十二人、二十代が一人。症状は延べ百九十八件。このうち最多は発熱の四十一件で、「熱性けいれん」と「けいれん」がともに十五件、嘔吐(おうと)が十二件、急性散在性脳脊髄炎が十件など。過剰なアレルギー反応を示す「アナフィラキシー反応」と「アナフィラキシーショック」は計五件。回復していなかったり後遺症がある患者は少なくとも八人いる。

 薬事法は製薬企業に対し、医療機関から副作用が疑われる症例を知った時は、医薬品医療機器総合機構への報告を義務付けている。厚労省も医療機関などへ市町村を通じた報告を求めているが、法的義務はない。

 日本脳炎ワクチンの定期接種では、〇四年に女子中学生が急性散在性脳脊髄炎にかかり、厚労省は「接種との因果関係が否定できない」として翌年に「積極的な勧奨」を控えた。〇九年六月からは、マウスの脳を利用して作られた旧ワクチンに代わり、動物の脳が使われず副作用が少ないとされる乾燥ワクチンが使われている。

◆情報発信を迅速に

 厚労省で予防接種に関する委員を務める国立成育医療研究センター・加藤達夫名誉総長(小児科)の話 市町村を通じて医療機関や被害者から厚労省に報告される内容は、毎年十二月に前年度一年分を一度にチェックする仕組みになっており、緊急な検討ができない。厚労省に直接的に連絡でき、年に三、四回の頻度で検証する体制をつくり、迅速に詳しい情報を発信する必要がある。」


2人の死亡前に,重い副作用104人,後遺症少なくとも8人という事実が知らされていなかったことは,大きな問題です.この情報に基づき検討評価が行われていれば,2人の死亡は防止できたかもしれなかったのです.

日本脳炎ワクチンがもともと必要性に乏しい,必要性が疑問視されているワクチンであることからすれば,たとえわずかの副作用でもあれば接種の積極勧奨は止めるべきでしょうし,少なくとも,選択のために,日本脳炎ワクチンを接種するリスクと接種しないリスクを具体的な数字で知らせるべきでしょう.
また,現行システムは,日本脳炎ワクチンの安全性・危険性を即時に検討評価するものではないので,改める必要がある,と考えます.

谷直樹

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by medical-law | 2012-10-28 14:19 | 医療事故・医療裁判

公立南丹病院,筋弛緩剤エスラックス紛失(報道)

筋弛緩剤エスラックスは,薬事法で毒物に指定され施錠した場所での保管が定められています.

毎日新聞「筋弛緩剤:公立南丹病院でを紛失、3人分の致死量 /京都」(2012年10月27日)は,次のとおり報じました.

「南丹市の公立南丹病院(梶田芳弘院長)は26日、薬事法で毒薬指定されている麻酔用筋弛緩(しかん)剤「エスラックス」の50ミリグラム入り瓶1本を紛失したと発表した。成人3人分の致死量に当たり、病院は同日、南丹署に遺失物届を出した。

 病院によると、今月17日夜に数を確認した際、台帳上より実際の本数が少なかったため判明した。確認は毎晩しており、この日従事していた医師ら44人への聞き取りや手術室を探すなどしたが、見つからなかったという。

 普段、エスラックスの保管は手術室内の保冷庫でしており、手術がない夜間は施錠し、鍵は看護師長が管理しているという。関係者以外が立ち入れる場所ではなく、盗難の可能性は低いとみている。

 再発防止として、日中も保冷庫を施錠することや複数でのチェックを徹底するなどの対策を取るという。【入江直樹】」


相変わらず,筋弛緩剤の紛失事故が報じられています.
以下のとおりです.
他院での事故が報じられたときに,自院の管理を見直すことはなかったのでしょうか.

佐賀大学医学部付属病院で平成22年12月(但し公表は平成23年6月)に1本
独立行政法人国立病院機構名古屋医療センターで平成23年1月に10本
独立行政法人国立病院機構千葉医療センターで平成23年9月に1本
愛知厚生連海南病院で平成23年9月に1本
有田市立病院で平成23年9月に10本
浜松医療センターで平成23年9月に1本
NTT東日本札幌病院で平成23年12月に2本
社会福祉法人恩賜財団済生会熊本病院で平成23年12月に3本
市立室蘭総合病院で平成24年3月に1本
地方独立行政法人福岡市立病院機構福岡市立こども病院・感染症センターで平成24年7月に1本
公益財団法人田附興風会医学研究所北野病院で平成24年7月に5本
熊本大学医学部附属病院で平成24年7月に1本
公立南丹病院で平成24年10月に1本

谷直樹

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by medical-law | 2012-10-27 16:27 | 医療

長崎市立市民病院,人工呼吸器の部品を逆向きに装着し約15分間無酸素状態で意識不明に(報道)

日テレニュース「人工呼吸器の装着ミス…男性が意識不明」(2012年10月26日)は,次のとおり報じています.

「長崎市の市立病院で医療事故です。人工呼吸器の装着ミスで救急搬送された男性が意識不明となっていることがわかりました。

意識不明となっているのは、長崎市の80代の男性です。男性は10月21日の朝、急性心不全の疑いで市立病院に救急搬送され、心臓に管を入れて行う心臓カテーテルの検査を受けました。その際、医師と看護師が人工呼吸器を装着しましたが、部品を逆にし、酸素が行きとどかないまま、およそ15分間処置をしていました。男性は一時、心肺停止の状態となり、現在は集中治療室で意識不明のまま治療を受けています。市立病院は男性の意識の回復に向けた治療と再発防止に向け、さらに事故の詳しい調査を行う方針です。」


人工呼吸器の部品を逆向きに装着しないように部品の向きを確認するという注意義務があります.
2004年にも菊名記念病院で人工呼吸器の部品を逆向きに接続し,患者が死亡した事故がおきています.人は同じ過ちを繰り返しますので,再発防止策が大事と思います.

谷直樹

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by medical-law | 2012-10-26 22:18 | 医療事故・医療裁判

東京地裁平成24年10月25日判決,児の心疾患を見逃しカルテ改竄の清水産婦人科クリニックに賠償命令(報道)

医療法人社団清雅会清水産婦人科クリニック(江戸川区)のホープページには,『産婦人科病院を選ぶコツ』が載っています。

「まず一番に大事なポイントは「安全」であるということです。(中略)出産の危険は、妊娠中のどの時期にも起こる可能性があり、最後まで気が抜けません。「万が一」の事態が迫ったことを的確に早く把握し、迅速に対処出来るのが「安全性」に優れた産婦人科病院です。そして、その「安全な産婦人科病院」としての機能が、診療時間内だけやベテランの産婦人科医がいる間だけではなく、24時間、365日保たれていることが重要です。夜間や休診日には、産婦人科医がいなかったり、いたとしても経験の浅い医師が一人だけだったり、というのでは「安全な産婦人科病院」とはいえません。

また、お母さんだけでなく生まれてきた赤ちゃんに対する「安全」も大きなポイントです。
元気な赤ちゃんや多少の問題は、産婦人科で十分に対応できますが、その範囲を超えてしまった場合には小児科、生まれたばかりの赤ちゃんを専門にしている新生児科が必要となってきます。特にNICU(新生児集中治療室)があれば、そこは、大学病院も赤ちゃんを送ってくるかもしれないほどの「最高レベルの産婦人科病院」と考えてよいでしょう。
清水産婦人科クリニックには、NICUを2床備えておりますので、未熟児も安心して管理することが出来ます。」


東京地裁民事30部は,平成24年10月25日,その清水クリニックの医療過誤とカルテ改竄を認める判決を下しました.


(2013年4月24日19時54分 読売新聞)
フジテレビ「0歳児診察で心疾患見落とし認め、約6,000万円賠償命令 東京地裁」(2012年10月25日)は,次のとおり報じました.

「生後1カ月の赤ちゃんがずさんな診察で死亡したなどとして、両親が病院に損害賠償を求めていた裁判で、東京地方裁判所は病院に対して、およそ6,000万円の支払いを命じた。
この裁判は、2007年に死亡した生後1カ月の赤ちゃんをめぐって、東京・江戸川区の「清水産婦人科クリニック」が適切な診察を行わず、心疾患を見落としたうえ、カルテを改ざんしたなどとして、両親が病院を相手におよそ6,000万円の損害賠償を求めていたもの。
25日の判決で、東京地裁は「カルテの記載は不自然な点が多く、極めて信用性に乏しい」と、カルテの改ざんを認めたうえで、「医師は適切な診断を怠り、専門病院での疾患の治療の機会を逸しさせた」などとして、請求を全面的に認め、病院に対しておよそ6,000万円の支払いを命じた。」


読売テレビ「乳児死亡 病院の疾患見落とし認める判決」(2012年10月25日)は,次のとおり報じました.

「生後1か月の長女が死亡したのは、病院が疾患を見落としたのが原因だとして、両親が病院側を訴えていた裁判で、東京地裁は25日、両親の訴えを全面的に認める判決を言い渡した。

 07年に生後1か月で死亡した優華ちゃんは、解剖の結果、心臓に疾患があったことがわかった。しかし、死亡する前、東京・江戸川区の清水産婦人科クリニックは「異常なし」と診断していて、両親は疾患の見落としがあったと訴えていた。

 優華ちゃんの母親は会見で「優華にたくさんの心配なことが出ても『大丈夫、大丈夫、この子の個性なんだから』と言われ続け、全然大丈夫じゃなかったのに、一刻を争う状態だったのに」と述べた。

 25日の判決で東京地裁は、「病院側が提出したカルテは信用できない」とした上で、病院側の過失を認め、5800万円の支払いを命じた。病院側は「判決文を読んでいないのでコメントできない」としている。」


テレビ朝日「0歳女児死亡で病院側に6000万円支払い命じる判決」(2012年10月25日)は,次のとおり報じました.

「0歳の女の子の死亡を巡って医療過誤が問われた裁判で、両親側が全面勝訴です。

 母親:「助けられたはずの優華を失ったのですから、これからも悲しみは変わりません」
 2007年、都内の産婦人科医院で生まれた優華ちゃんが、退院後、先天性の心臓の病気のため、生後38日で死亡しました。優華ちゃんの両親は、医師が聴診を適切に行わず、病気を見落としたことが死亡の原因だとして、損害賠償を求める訴えを起こしました。医院側は、カルテの記載から、「病気の所見はなかった」と主張していました。判決で、東京地裁は「適切な診断を行う義務を怠った」として、医院側に約6000万円の支払いを命じる判決を言い渡しました。」



時事通信「0歳児死亡、医療過誤認める=両親が勝訴-東京地裁」(2012年10月25日)は,次のとおり報じました.

「心不全のため生後1カ月余りで死亡した女児の両親が、死亡は診療ミスによるものだとして、清水産婦人科クリニックを経営する医療法人社団清雅会(東京都江戸川区)に損害賠償を求めた訴訟の判決が25日、東京地裁であり、菅野雅之裁判長は「死亡はクリニック側の注意義務違反によるものだ」として、請求通り計約5800万円の支払いを命じた。
 判決は、聴診を行うなどすれば心雑音の異常を聞き取ることができ、適切な診断が可能だったと指摘。遅くとも1カ月健診時には、体重の増加不良やその他の症状の観察によって心疾患と診断し、専門病院に転送すべき注意義務があったのに、クリニック側はこれを怠ったとした。
 その上で、適切な診断が行われていれば、命を救えた可能性があると判断した。」


毎日新聞「医療過誤:0歳児死亡で賠償請求全額認める 東京地裁」(2012年10月25日)は,次のとおり報じました.

「長女が生後1カ月余りで死亡したのは産科診療所の診療に誤りがあったためとして、両親が診療所を経営する医療法人社団に計5880万円の損害賠償を求めた訴訟で、東京地裁は25日、両親の請求を全て認める判決を出した。菅野(かんの)雅之裁判長は「適切な時期の診断と治療で救命する可能性があった。請求額は社会通念上、妥当だ」と指摘した。

 判決によると、母親(36)は07年9月、東京都江戸川区の「清水産婦人科クリニック」で長女を出産。退院後も通院したが、長女は先天的な心臓疾患で血液の流れが悪く、同11月に急性心不全で死亡した。

 両親は「毎日の聴診をしていれば簡単に発見できた症状なのに、見落とされた。死亡後にカルテも改ざんされていた」と提訴した。

 菅野裁判長は「実際に聴診を行うか、真剣に聴こうとすれば異常を聴取でき、専門病院に転送もできた」と診療所側のミスを認定。さらに「カルテの記載には不自然、不合理な点が多く、信用性は極めて乏しい」と疑問を投げかけた。

 判決後、父親(37)は「ずさんな診療で命が奪われた。長女に良い報告ができる」と話した。【鈴木一生】」


これも,患者側代理人弁護士は医療問題弁護団の弁護士です.
これは控訴審があるでしょう.気を抜かず,がんばってください.


【追記】

控訴審判決言渡しは,2013年4月24日(水)13時30分,東京高裁817号法廷(8階)です.

読売新聞「1か月女児死亡、2審も産院の過失認める」(2013年4月24日)は,次のとおり報じました.

「生後1か月の娘が死亡したのは産院が先天性の心疾患を見過ごしたためだとして、栃木県の両親が東京都江戸川区の産院側に約5800万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審で、東京高裁(坂井満裁判長)は24日、請求全額の支払いを命じた1審・東京地裁判決を支持し、産院側の控訴を棄却する判決を言い渡した。

 産院側は上告した。

 控訴審で産院側は、「非常にまれな疾患で、発見するのは不可能。手術しても救命の可能性は低かった」と主張したが、高裁は「注意深く聴診していれば、心臓の異常音を把握でき、専門病院での適切な治療で救命できる可能性が十分あった」と退けた。

 判決後、東京・霞が関で記者会見した母親(36)は「裁判所が訴えをすべて認めてくれて感謝している」と話し、代理人の沢藤統一郎弁護士は「新生児を扱う医療機関は、専門知識を持つ医師を置かねばならないことを示した判決だ」と評価した。一方、産院側は「正しい医学的知見に基づかない判決だ」とコメントした。」



静岡新聞「二審も病院が全面敗訴 心疾患見落とし、乳児死亡」(2013年4月24日)は,次のとおり報じました.

「生後1カ月余りの女児が死亡したのは医師が先天性の心疾患を見落としたためだとして、栃木県の30代の両親が清水産婦人科クリニック(東京都江戸川区)の運営法人に5880万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、東京高裁は24日、一審東京地裁判決に続き全額の支払いを命じた。
 判決によると、女児は07年11月、大動脈弁狭窄症で死亡した。病院側は「産婦人科医には診断が困難な心疾患だった」と過失を認めなかったが、坂井満裁判長は「遅くとも1カ月健診で心雑音を聴けば、適切に診断して他の病院に転送できた」と否定した。
 父親は「ずさんな診療が命を奪った」と病院側の対応を批判した。」


日本経済新聞「新生児死亡、二審も病院に賠償命令 東京高裁」(2013年4月24日)は,次のとおり報じました.
 
「長女が生後1カ月余りで死亡したのは医師が先天性の心疾患を見落としたのが原因として、栃木県の両親が、清水産婦人科クリニック(東京・江戸川)を経営する医療法人社団「清雅会」に損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が24日、東京高裁であった。坂井満裁判長は請求通り5880万円の支払いを命じた一審・東京地裁判決を支持、病院側の控訴を棄却した。病院側は即日上告した。

 控訴審で病院側は「非常にまれな疾患で、発見は困難だった」と主張した。判決理由で、坂井裁判長は「聴診で心雑音を聞き取れる状態だった」と判断。長女には多呼吸などの全身症状もあり、「遅くとも1カ月健診時には心疾患だと診断できた」と病院側の過失を認定した。

 判決によると、長女は同クリニックで生まれ、2007年11月、大動脈弁狭窄(きょうさく)症で死亡した。

 判決後に記者会見した母親(36)は「このような医療事故は二度と起きてほしくない」と涙ながらに訴えた。同クリニック側は「正しい医学的知見に基づかず、産科医療の現場の実情を顧みない誤った判決だ」とコメントした。」


中日新聞「二審も病院が全面敗訴 心疾患見落とし、乳児死亡」(2013年4月24日)は次のとおり報じました.

「生後1カ月余りの女児が死亡したのは医師が先天性の心疾患を見落としたためだとして、栃木県の30代の両親が清水産婦人科クリニック(東京都江戸川区)の運営法人に5880万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、東京高裁は24日、一審東京地裁判決に続き全額の支払いを命じた。

 判決によると、女児は07年11月、大動脈弁狭窄症で死亡した。病院側は「産婦人科医には診断が困難な心疾患だった」と過失を認めなかったが、坂井満裁判長は「遅くとも1カ月健診で心雑音を聴けば、適切に診断して他の病院に転送できた」と否定した。

 父親は「ずさんな診療が命を奪った」と病院側の対応を批判した。
(共同)」


TBS「新生児死亡、2審も両親の訴え認める判決」 (2013年4月24日)は次のとおり報じました.

「適切な診断をせず心臓病の症状を見逃したために生後1か月の乳児が死亡したとして、両親が東京都内の産婦人科医院に損害賠償を求めた裁判の控訴審で、東京高裁は1審と同じく両親の訴えを認める判決を言い渡しました。

 この裁判は栃木県に住む夫婦の長女、優華ちゃんが、2007年に生後1か月で死亡したのは、医師が適切な診断を怠り重い心臓病の症状を見落としたためだとして、両親が東京・江戸川区の「清水産婦人科クリニック」に損害賠償を求めたものです。

 1審の東京地裁が両親の訴えを全面的に認め、およそ6000万円の賠償を命じたのに対し、医院側は「産婦人科医では病気の発見は困難だった」と主張し控訴していました。24日の判決で東京高裁は、「1か月検診で総合的に診断すれば重い心臓病と分かり救命できた可能性は高い」として医院側の控訴を退けました。

 「一度も診察してくれなかったこと裁判所にわかってもらえた。このような医療過誤は二度とおきてほしくない」(母親)

 医院側は即日、上告受理の申し立てをしたということです。」



l控訴人は,ASではなくCritical ASである,Critical ASはまれな疾患で診断不可能,と主張したようです.Critical ASでもASでも,心拍出量が保たれている限り聴診による診断ができますし,全身状態悪化からも,心疾患を疑って専門医へ搬送する事案でしょう.判決は正当と思います.


谷直樹

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by medical-law | 2012-10-26 04:08 | 医療事故・医療裁判

フジテレビ「とくダネ!」社会福祉法人仁生社江戸川病院事件を伝える

フジテレビ「とくダネ!」で,江戸川病院事件が取り上げられました.実は「とくダネ!」には早い時期に別に内部告発があり,1年近くも取材していたそうです.

JCAST「医療ミス「認めぬ江戸川病院、逃げ回る医師」内部告発で火葬直前に警察解剖」(2012年10月25日)は,次のとおり伝えています.

カテーテル抜去数分後に倒れ死去―執刀医は「よくあること」

死亡したのは60代の男性で、重度の腎不全で昨年10月29日に妹をドナーに腎移植手術を受けた。11月3日に医師がカテーテルを抜いた直後に心肺停止状態となり7日に死亡した。家族によると、手術の経過はよく、男性がベッドに座って家族と話をしていたとき、執刀の医師が来て首についていた透析カテーテルを抜いた。男性はその数分後に倒れ込み、心臓マッサージなどをしたが回復しなかった。医師は家族に「よくあること」といっていたという。

死亡診断書には「肺梗塞」とあったが、原因は空欄だった。遺族は患者の最後の様子から「医療ミスではないか」と主治医に聞いたが、「医療事故なんかじゃありません」と否定され、そのまま解剖もせず火葬に回された。

ところがその直前、匿名で「医療事故です。いますぐ警察に司法解剖を依頼してください」と遺族に通報があって、火葬を中止して警察に知らせた。解剖の結果は肺動脈空気塞栓症。血管に空気が入って毛細血管に達すると、血流が止まり肺組織が壊死する。これが「肺梗塞」で病院の死因と同じだったが、解剖では原因は「カテーテルの抜去」とされた。」

専門家によると、カテーテルは太いので空気の流入を避けるため、通常は座ったままでは行なわないという。医療ミスが疑われるケースだが、取材に病院は一切答えなかった。主治医も答えず、いまは鹿児島にいる執刀の医師(カテーテルを抜いた)も電話に「不適切ではなかった」とだけしかいわない。」


透析カテーテルを座位で抜去→血管に空気が入り血流が止まり肺組織が壊死(肺梗塞)→死亡,という事態になったのです.これを,「よくあること」,「医療事故なんかじゃありません」,「不適切ではなかった」という医師はどうなんでしょう.

江戸川病院は,院内での密告者探しが行なわれて,電子カルテを開いた記録を洗ったりした,」とのことです.

司会の小倉智昭氏と療ジャーナリストの伊藤隼也氏は,次のとおりコメントしました.

「小倉氏 「カテーテルの抜き方に問題があったわけですよね」
伊藤氏「重力がありますから寝かして慎重に抜くのが基本。委員会も構成メンバーに問題があったり、当の医師が出て来ていないとか。守秘義務を振りかざしたりもしている」
小倉氏「しかも(内部告発の)犯人探しをしてる」
伊藤氏「ミスを認めて改善するという常識がない。告発の電話がなければ、お葬式して終わりだった」」


表面化していないだけで,このような医療事故がさらに隠れている可能性を感じます.

谷直樹

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by medical-law | 2012-10-26 03:13 | 医療事故・医療裁判

カナダの研究,Night Work and the Risk of Cancer Among Men夜勤をしている男性の発がんリスク

あなたの健康百科「夜勤者のがんリスク、未経験者の2~3倍 男性対象のカナダ研究」(2012年10月24日)は,次のとおり,伝えています.

「カナダ・ケベック大学州立科学研究所のMarie-Élise Parent氏らは、男性を対象にした研究から、夜勤はこれまで指摘されていた以外のがんの発症とも関連すると、10月3日発行の米医学誌「American Journal of Epidemiology」に発表した。夜勤をしている男性では、夜勤未経験の男性に比べてがんリスクが2~3倍高かったという。」
「夜間に光にさらされると、夜間に濃度がピークに達するはずのメラトニン(睡眠に関係するホルモン)の分泌が抑制されてしまう。メラトニンの抑制は概日リズム(サーカディアンリズム)や生殖ホルモンなどを障害するほか、がん発症に影響を及ぼすことが指摘されている。」

Am J Epidemiol. 2012 Oct 3に掲載された「Night Work and the Risk of Cancer Among Men」をみると,胃がん,食道がん,腎臓がん,メラノーマでは,有意差がなかったものの,前立腺がん等のリスクは以下のとおりでした。

prostate cance前立腺がん2.77 (95% CI: 1.96, 3.92)
non-Hodgkin's lymphoma非ホジキンリンパ腫2.31 (95% CI: 1.48, 3.61)
rectal cancer膵臓がん2.27 (95% CI: 1.24, 4.15)
rectal cancer直腸がん2.09 (95% CI: 1.40, 3.14)
colon cancer結腸がん2.03 (95% CI: 1.43, 2.89)
lung cancer肺がん1.76 (95% CI: 1.25, 2.47)
bladder cancer膀胱がん1.74 (95% CI: 1.22, 2.49)


この数字をみると,夜更かしは避けたいという気持ちになります.

谷直樹

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by medical-law | 2012-10-25 09:56 | 医療

森口尚史氏のiPS治療問題に医療ジャーナリストがコメント

週プレNEWS 「iPS治療だけじゃない! 医療業界にはびこる“研究ロンダリング”の実態」(2012年10月24日)で,医療ジャーナリストがコメントしていました.

医療ジャーナリストで写真家の伊藤隼也氏は,次のとおりコメントしました.

「森口氏に問題があるのは言うまでもありませんが、メディアの報道姿勢もおかしい。そもそも騒動の発端は、彼の荒唐無稽な話を読売新聞が1面で大きく報道したこと。読売だけでなく、大手各紙が過去に彼の話だけを鵜呑みにして記事を書いてきた。今回もきちんと検証報道をしていれば、すぐに嘘だとわかるケース。そこをまず反省すべきだと思います」
「特任研究員というのはいわばパートタイマーのようなもので、組織や研究チームの責任者にとって都合のいい人物が任命されるケースもある。その結果として、彼のようにムチャクチャな人が医療研究の現場にはいくらでもいるんです」(
「大雑把に言うと、研究費を取得したいから。リスクを冒してまでデータの改竄や論文の捏造をするのは、実体以上に自分や組織の成果を大きく見せるため。そうすれば、しかるべきところからお金が落ちてきますから」


医療ジャーナリストで医学博士の森田豊氏は,次のとおりコメントしました.

「共同研究者と認めていて、組織のボスがその研究の中身を知らなかったというのはおかしい。仮に共同研究者および所属している研究チームが論文や学会発表を増やすためだけに名前を貸していただけだとすれば、無責任な話です。結局、研究の現場でも、その研究が正しいかどうか、間違った方向にいっていないか、信頼性に富んでいるかどうか、チェックする機能が働いていないということ。今の日本の研究現場システムを変えないかぎり、同じことが繰り返される可能性はあります」

ときどき報じられる論文データ捏造問題などには,このような土壌があるのですね.
なお,森口尚史氏は,イレッサ研究にも関与し,「業績」を残しているそうです.

谷直樹

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by medical-law | 2012-10-25 02:51 | 医療