弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

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福岡歯科大学医科歯科総合病院,患者128名分の個人情報を含むノートパソコン及びUSBメモリー盗まれる

福岡歯科大学医科歯科総合病院は,2012年10月2日「患者様の個人情報を含むノートパソコン等の盗難に関するお詫びとお知らせ」を発表し,患者128名分の個人情報を含むノートパソコン及びUSBメモリーの盗難について謝罪しました.

2012年9月30日夕刻,本院歯科医師が早良区内の駐車場に車を預け,翌10月1日に駐車場に戻ったところ、窓ガラスが割られ,中に置いていた患者様の個人情報の入ったパソコン及びUSBメモリー(1個)が盗まれていた,とのことです.

盗難に遭った個人情報は,(1)手術記録98件,(2)術後カンファレンス資料30件,(3)入院診療録表紙29件,(4)手術同意書27件,(5)術前カンファレンス資料24件,(6)病状説明16件,(7)紹介状6件,(8)手術委任状1件だそうです.

「今後は、「個人情報管理体制のガイドライン」を作成するとともに、あらためて診療情報管理について周知を図り、再発防止に向けて教職員一丸となって取り組み、情報管理のさらなる強化を徹底いたします。」とのことです.

ノートパソコンやUSBメモリーの盗難は必ず起きることですので,暗号化しない限り,個人情報をノートパソコンやUSBメモリーにコピーできないようにすることが,再発防止のために必要と思います.


ちなみに,報道によると,昨年6月以降,個人電磁情報の紛失事故は,以下の施設で起きています.

2011年 6月
慶應義塾大学病院スポーツ医学総合センター
北海道大学病院

2011年7月
医療法人 柏堤会(財団) 戸塚共立第1病院
藤田保健衛生大学病院
昭和大学歯科病院

2011年8月
筑波メディカルセンター病院

2011年9月
千葉県精神科医療センター
鹿児島大学病院

2011年10月
JA茨城県厚生連茨城西南医療センター病院
独立行政法人国立病院機構三重中央医療センター
独立行政法人労働者健康福祉機構関東労災病院
大和市立病院

2011年11月
独立行政法人国立病院機構金沢医療センター

2012年1月
医療法人聖愛会
独立行政法人国立病院機構千葉医療センター
独立行政法人国立病院機構宇多野病院
東京女子医科大学附属八千代医療センター

2012年2月
京都府立洛南病院(ただし一時紛失)
岡山大学病院
藤沢市民病院
長崎大学病院

2012年3月
日本赤十字社医療センター

2012年4月
ごう在宅クリニック(札幌)
静岡県立病院機構静岡県立総合病院
広島大学病院
福岡大学病院

2012年5月
福岡大学病院

2012年7月
日本大学歯学部付属歯科病院

2012年8月
名古屋大学医学部附属病院

2012年9月
沖縄県立中部病院
福岡歯科大学医科歯科総合病院


谷直樹

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by medical-law | 2012-10-05 22:03 | 医療

医療者の犯罪(報道)

最近,偶々ですが,医師・看護師の犯罪報道が目につきました.

◆ 窃盗

MSN産経「病院で24歳女性医師の現金盗む 32歳研修医逮捕」(2012年10月4日)は,次のとおり報じました.
 
病院で同僚の財布から現金を盗んだなどとして、警視庁渋谷署は窃盗などの疑いで、東京都世田谷区桜丘、研修医、××××容疑者(32)を逮捕した。同署によると、「8月下旬ごろから、病院内で10件ぐらい盗みをした」と供述しているという。

 逮捕容疑は9月27日午前9時45分ごろ、渋谷区恵比寿の都立広尾病院地下1階の研修医医局内で、同僚の女性医師(24)のバッグ内の財布から現金5千円を盗んだとしている。

 同署によると、××容疑者は研修のため、都内の別の病院から広尾病院に来ていた。研修医医局内で盗難が続いたことから病院側が内部調査。××容疑者が関与を認めたため、同署に通報した。」


研修医は低収入とはききますが,本件犯行については同情できません.


◆ 道交法違反(運転免許不正取得、過労運転)

毎日新聞「運転免許不正取得:てんかん隠し自損事故 容疑の医師を書類送検 /千葉」(2012年10月3日)は,次のとおり報じました.

「持病のてんかんを隠して運転免許を更新し事故を起こした事件で、県警は1日、柏市船戸の医師、×××××容疑者(38)を道交法違反(運転免許不正取得、過労運転)容疑で書類送検した。

 送検容疑は、昨年11月の免許更新時、てんかんの発作で意識を失った経験があるのに申告せずに更新。今年3月21日、柏市内で乗用車を運転中に発作を起こし、自損事故を起こしたとしている。

 捜査関係者によると、××容疑者は同容疑で逮捕された翌日の7月5日、取り調べ中に発作を起こして釈放され、以降は任意で取り調べを受けていた。事故前、診察を受けた複数の医師から運転を禁じられていたという。【小林祥晃】」


てんかん発作の頻度,程度にもよりますが,複数の医師から指示されているのですから,持病のてんかんを隠して運転免許を不正に更新するべきではなかったでしょう.3月の自損事故後,警察が,臨時適性検査の受検や免許の自主返納を求めたとき,応じていればこのような展開にならなかった可能性があります.


◆ 麻薬取締法違反

神戸新聞「治療以外で麻薬使用 篠山で開業の医師に有罪判決」(2012年10月3日)は,次のとおり報じました. 
  
「治療以外の目的でコカインを使用したとして、麻薬取締法違反の罪に問われた篠山市の耳鼻咽喉科医院長、×××被告(42)=宝塚市南口2=の判決公判で、神戸地裁の片田真志裁判官は3日、懲役1年6月執行猶予3年(求刑懲役1年6月)を言い渡した。

 片田裁判官は「疲れやストレスを紛らわせるため、2009年ごろから多数回使用を繰り返しており、常習性は顕著」と指摘。「麻薬使用者の免許を持つ医師の立場を悪用したもので、一般の使用事案と比べてもより厳しい非難を向ける必要がある」と批判した。

 判決によると、××被告は7月28日、同医院長室で医療用コカインを鼻から吸引し、治療以外に使用した。」


患者の局所麻酔に使用するコカインを,目的外使用していたのですが,医師として,コカインの中毒性,有害性を十分知っていたはずです.どうしてこのようなことをしたのでしょうか。


◆ 覚醒剤取締法違反(所持,広告制限)

読売新聞「覚醒剤密売のネット広告掲載、容疑の看護師逮捕」20年10月2日)は,,次のとおり報じました.

「ネットゲームを通じて知り合った男女5人のグループがネットを通じて覚醒剤を密売していた事件で、密売に関する広告をネット掲示板に掲載したとして、九州厚生局麻薬取締部は2日、新たに、岡山市北区青江、看護師××××被告(25)=覚醒剤取締法違反(所持)で起訴済み=を同法違反(広告制限)の疑いで再逮捕した。

 ×被告自身もネットを通じて覚醒剤に手を染めていた。この事件では掲示板を通して全国26都道府県の主婦や会社員らに拡散しており、ネットが薬物犯罪への入り口になっている現状が浮き彫りになった。

 関係者によると、×被告は2月、覚醒剤を「アイス」という隠語に言い換え、ネット掲示板に、「全国各地にゲストをもつ安心安全迅速なアイス宅急便です!」「お気軽にお問い合わせ下さい」などと携帯電話で書き込み、覚醒剤密売の広告を掲載した疑い。」


看護師は,覚醒剤の有害性を認識していた筈です.
所持,密売の広告掲載に,規範意識のハードルはなかったのでしょうか.

谷直樹

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by medical-law | 2012-10-04 23:41 | 医療

「手術中の光源コードの先端による熱傷」医療安全情報 No.70

医療事故情報収集等事業 医療安全情報 No.70 「手術中の光源コードの先端による熱傷」が,2012年9月26日に出されました.

「手術中、光源装置や手術用照明器を使用した際に、電源が入ったままの光源コードの先端を患者のサージカルドレープ(手術用覆布や手術用不織布など)の上に置いたことにより、熱傷を生じた事例が5件報告されている,とのことです.

「事 例 1
患者を右側臥位にし、左大腿骨骨切り術を開始した。術野を照らすために光源付き開創器を使用した。開創器使用後、光源と開創器との接続をはずし、光源コードをサージカルドレープの上に置いた。その後、しばらくして光源の電源を切っていないことに気がつき、電源を切った。手術終了後、サージカルドレープをはずしたところ、患者の右大腿内側に約1.5cmの熱傷が形成されていた。

事 例 2
経尿道的尿管結石砕石術の手術中、光源コードを一時的に取りはずした時に、光源コード
の電源が入ったままの状態でサージカルドレープの上に置いた。手術の終了後、患者の左
恥骨部に約2.5×2cmの熱傷と、使用したサージカルドレープが高温により焼けた痕跡を看護師が発見した。

事例が発生した医療機関の取り組み
・光源装置などを使用していない時は、光源コードの先端の光量に注意する。
・光源コードは、術野付近に置かない。

総合評価部会の意見
・強力な光を出射している光源コードの先端は高温になるため、可燃物の上に置くと燃えたり熱傷を生じたりするおそれがあります。使用しないときは消灯しましょう。」


光源コードの先端が高温になり熱傷を引き起こすという意識が薄いと,このような事故がおきます.使用しないときは消灯するのが確実です.


谷直樹

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by medical-law | 2012-10-04 22:43 | 医療事故・医療裁判

日本医師会,平成24年12月22日「医療基本法(仮称)制定に関するシンポジウム」開催

日本医師会は,平成24年12月22日(土)14時00分~16時30分,日本医師会館大講堂で,一般公募および医師会関係者を対象に「医療基本法(仮称)制定に関するシンポジウム」を開催するとのことです.
医療基本法制定への動きも加速してきました.

開催趣旨
医療に関する基本法を制定すべきとする議論は、日本医師会が昭和43年に公表した「医療基本法第一草案」および平成24年3月にとりまとめられた医事法関係検討委員会報告書においても一貫して述べられている。
同様の議論は、近時、患者の権利法制定をめざす市民団体や、医療政策に関する研究グループ等からも相次いで示され、これに関するシンポジウムも各所で開催されているが、医療提供者側からの情報発信は未だ十分とは言えない。
本シンポジウムは、このように議論が活発になりつつある医療基本法制定に関する問題について、日本医師会の主催のもとに、国会議員や政策担当者も交えて意見交換し、医療提供者と患者の信頼関係を強固なものとする医療基本法の制定をめざすものである。

〈第一部>
開会挨拶 横倉会長
報 告
・小西洋之(参議院議員・医療基本法議連)
・大井利夫(日本病院会顧問・医事法関係検討委員会副委員長)
・伊藤雅治(全国社会保険協会連合会理事長・患者の声を医療政策に反映させるあり方協議会副代表世話人)
・田中秀一(読売新聞東京本社論説委員)

〈第二部>
指定発言
・古川俊治(参議院議員)
・厚生労働省担当者(依頼中)
総合討論 
総括 羽生田副会長
進行 ・鈴木勝彦(静岡県医師会長・医事法関係検討委員会委員長)・今村定臣常任理事



なお,その1か月ほどまえの11月10日には,
医療基本法シンポジウム「患者も医療者も幸せになれる医療をめざして」
が開かれます。
こちらの基調講演は,今村定臣さんと鈴木利廣さんです.

実行委員会には福岡県医師会、福岡県保険医協会、福岡県歯科保険医協会、医療過誤原告の会、患者納得の会INCA、医療の良心を守る市民の会、大阪HIV薬害訴訟原告団、東京HIV訴訟弁護団、薬害オンブズパースン会議、医療問題弁護団、NPO法人患者の権利オンブズマン、医療事故防止・患者安全推進学会、患者の権利オンブズマン東京等が名を連ねています。

日時 2012年11月10日14時~17時
場所 ガスホール(福岡市博多区千代1-17-1パピヨン24ビル3F)

谷直樹

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by medical-law | 2012-10-03 23:34 | 医療

甲府地裁平成24年10月2日判決,山梨赤十字病院内にあるリハビリ施設介護職員の自殺で因果関係肯定(報道)

読売新聞「日赤に7000万円賠償命令…介護職員自殺」(2012年10月3日)は,次のとおり報じています.

 「介護職員だった男性(当時43歳)が自殺したのは、勤務先の施設を運営する山梨赤十字病院(富士河口湖町船津)が注意義務を怠ったことが原因だとして、県内に住む男性の妻ら遺族が同病院を運営する日本赤十字社(東京都港区)を相手取り、約8895万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が2日、甲府地裁であった。

 林正宏裁判長は「時間外労働の減少に向けた適切な指示をせずに漫然と放置していた」として病院側の責任を認定し、約6991万円を支払うよう命じた。

 判決によると、男性は2005年8月から、山梨赤十字病院内にあるリハビリ施設「あかまつ」に勤務していた。施設の責任者に就任したことに伴って業務量が増加し、07年4月頃からうつ病の症状が出始め、同月24日、施設内の浴室で首をつって自殺した。男性の自殺については09年12月、都留労働基準監督署が労災認定した。

 判決は男性の時間外労働について、自殺するまでの6か月間の1か月平均は99時間30分、自殺直前の1か月に限れば166時間を超えていたと認定。「施設の責任者に就任することで、男性の業務量は過重なものであった」とし、「業務と自殺に因果関係を認めることができる」と判断した。

 さらに、病院側はタイムカードで男性の勤務状況を把握できたにもかかわらず、タイムカードの確認をせず、「労働者の心身の健康に配慮し、適切な業務遂行をなし得るような十分な支援態勢を整える注意義務を怠った」と指摘した。

 遺族側は、男性の妻に対して約4447万円の支払いを求めていたが、判決は「遺族補償年金などを受給し、損害が補填(ほてん)されている」として約2544万円を支払うよう命じたため、支払い命令の総額は請求を下回った。

 山梨赤十字病院の今野述(のぶる)院長は「判決の中身を詳細に検討した上で今後の対応を考える」とのコメントを発表した。」


本来,人の生命と健康のためにある施設が,その職員の生命と健康に注意をはらわなかったのは,義務違反にあたり,予見可能性は肯定できるでしょうし,上記の時間外労働時間を考えれば,自殺と因果関係有りとの認定は適切と思います.
なお,遺族基礎年金,遺族厚生年金は,逸失利益に限って,損益相殺の対象になります.他の財産的損害,精神的損害との関係では控除できません(最高裁平成11年10月22日判決,判例時報1692巻50号).


【追記】

毎日新聞「山梨赤十字病院の職員自殺:過労認定 赤十字社が控訴 賠償命令判決に不服」(2012年10月18日)は,次のとおり報じました.

「山梨赤十字病院(富士河口湖町)の職員の男性(当時43歳)が自殺したのは過労によるうつ病が原因として日本赤十字社(東京)に約7000万円の賠償を命じた甲府地裁判決について、日本赤十字社は17日までに判決を不服として控訴した。

 控訴は16日付。甲府地裁は今月2日の判決で、男性が亡くなる前1カ月の時間外労働は166時間余りに上ると認定。病院側の対応を「心身の健康に配慮し、支援する注意義務を怠った」などと指摘していた。控訴について山梨赤十字病院は取材に「コメントを差し控える」とした。【片平知宏】」


【再追記】

NNN「梨赤十字病院の過労自殺訴訟が和解」(2013年4月26日) は,次のとおり報じました.

「富士河口湖町の病院で職員が自殺したのはうつ病が原因だとして、遺族が病院側に損害賠償を求めた裁判が26日、東京高裁で和解が成立した。
 裁判は山梨赤十字病院に勤務していた職員が2007年、病院内で自殺し、遺族が病院を運営する日本赤十字社を相手取りおよそ8900万円の損害賠償を求めていた。去年10月、甲府地裁は過労自殺と認め6990万円の支払いを命じたが、病院側が判決を不服として控訴していた。
 病院の今野述院長は「高裁の前向きな提案を受け入れた。ご冥福をお祈りしたい」とコメントしている。」



谷直樹

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by medical-law | 2012-10-03 20:19 | 医療事故・医療裁判

富士宮市立病院,医師が誤って膀胱の一部を切除した事案で和解(報道)

毎日新聞「医療過誤訴訟:富士宮市が和解金 2500万円で合意 /静岡」(2012年10月3日)は,次のとおり報じています.
  
「09年8月に富士宮市立病院で患者だった当時1歳3カ月の男児がぼうこうの一部を切り取られる医療過誤があり、同市は2日、男児と母親が静岡地裁沼津支部に起こしている約4800万円の損害賠償訴訟について、市側が2500万円の和解金を支払うことで合意に達したことを明らかにした。この日和解金を盛り込んだ補正予算案を市議会9月定例会に追加提出した。

 原告側代理人などによると、同病院で09年8月、同市内に住む男児がそけいヘルニアの手術を受けた際、男性医師(40代)が誤ってぼうこうの一部を切り取った。現在男児は4歳で、後遺症が残っているという。【西嶋正信】」


原告が富士宮市に住み,被告が富士宮市ですから,管轄は本来静岡地方裁判所富士支部になるのですが,富士支部は民事裁判担当1名,刑事裁判担当1名の支部ですので,合議事件は静岡地方裁判所沼津支部で審理されます.医療事件は複雑でので裁判官3名の合議で審理されることが多いです.本件が,静岡地方裁判所沼津支部で審理されたのは,医療事件だったからでしょう.
医師がヘルニア手術で腸と誤って膀胱の一部を切除したのは,かなり明白なミスと思います.富士宮市は,どのような主張をして争ったのでしょうか.

谷直樹

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by medical-law | 2012-10-03 18:45 | 医療事故・医療裁判

社会医療法人「鴻仁会」岡山中央病院で出産時の医療過誤提訴(報道)

MSN産経「出産で措置怠り障害 両親が病院を提訴 岡山」(2012年10月2日)は,次のとおり報じています.
 
「女児(1)の出産時に適切な蘇生(そせい)措置を怠ったため、脳性まひによる重い障害が残ったとして、岡山市の両親らが1日、出産した岡山中央病院(岡山市北区)を運営する社会医療法人「鴻仁会」と担当医を相手取り、計約1億6千万円の損害賠償を求める訴えを岡山地裁に起こした。

 訴状などによると、母親(32)は女児を昨年8月30日に出産。陣痛中にへその緒が胎児の首に巻き付き、心拍数が低下して危険な状態だったにもかかわらず監視を怠り、帝王切開の判断が遅れた。さらに、仮死状態で出生後も、他の医療機関の医師が到着するまで気管挿管など適切な蘇生措置を行わず、女児には脳性まひによる重い障害が残ったという。

 提訴後、市内で会見した母親は「病院の措置に問題があったと分かり、悲しみと怒りがこみ上げてきた。再発防止のためにも病院は過失を認めて安全な出産体制を整えてほしい」と訴えた。原告代理人弁護士によると、新生児の約1割は本格的な蘇生措置を必要とするが、「機器は備えられていても使える人やシステムが整っておらず、体制の不備によって起きた人災だ」と主張。同病院は「訴状を確認できておらずコメントできない」としている。」


報道によると,(1)監視を怠り帝王切開の判断が遅れたこと,(2)仮死状態で出生後他の医療機関の医師が到着するまで気管挿管など適切な蘇生措置を行わなかったこと,を注意義務違反と主張するようです.

【追記】

朝日新聞「出生児の蘇生遅れ訴訟/病院側、争う姿勢」(2012年11月6日)は,次のとおり報じました.

 「長女(1)の脳性まひは出産時の蘇生措置の遅れなどが原因だとして、岡山市に住む両親が、岡山中央病院(岡山市北区)を運営する社会医療法人鴻仁(こう・じん)会と主治医に約1億5930万円の損害賠償を求めた訴訟の第1回口頭弁論が5日、岡山地裁(古田孝夫裁判官)であった。病院側は争う姿勢を示した。

 両親は訴状で、長女が仮死状態で生まれてから気管挿管による人工呼吸の措置を受けるまで、13分かかったことなどが長女の脳性まひの原因だと主張した。

 病院側は答弁書で「出生直後から、日本産婦人科学会のガイドラインに基づいた蘇生措置や心臓マッサージをした」と反論。気管挿管の遅れが後遺症につながったわけではない、とした。

 また、原告側の「長女の心拍数が低下していたのに帝王切開の決断が遅かった」との主張には、「速やかな決断、実施で法的注意義務違反はない」とした。

 この日は原告の両親とベビーカーに乗った長女が出廷した。長女はまだ首が座らず、つばものみ込めないという。母親(32)は「娘の将来を考えると、絶望を感じることも多い」と吐露した。「病院には、適切な時期での帝王切開、気管挿管により、今後助けられる子がいることを考えてほしい」とも述べた。(藤原学思)」

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by medical-law | 2012-10-02 05:07 | 医療事故・医療裁判

被災者健康支援連絡協議会,医師不足はないvs震災前から医師不足

CBニュース「被災地の医師不足めぐり意見交換- 被災者支援連絡協」(2012年10月1日)は,次のとおり報じています.

 「35の医療・介護団体などで構成する被災者健康支援連絡協議会(代表=横倉義武・日本医師会長)は1日、東日本大震災の被災地での医師不足の現状をめぐって意見交換した。この中で、医師不足が震災によるものなのかどうかや、医療法上の基準を満たせなくなっているのかどうかを確認した上で、支援の在り方を検討すべきだとの声が上がった。
 この日の協議会では、冒頭にあいさつした顧問の足立信也・民主党参院議員が、「(これまでの協議会で)被災県の意見を聞いてきて、おおむね2月あたりからは『心のケア』の分野を除いて医療従事者の不足はあまりないような印象を持っているが、報道では『全く足りない』という話がずっと出ている」と指摘。その上で、「われわれが拾えていない情報があるのではないか」との懸念を示した。
 これに対し、事務局長を務める嘉山孝正・全国医学部長病院長会議相談役は、取材に対して医師不足を訴えている病院の病院長からも、「医師は足りている」との回答を得ていると強調。こうした病院長に対し、12月に開く次の協議会への出席を求め、震災前から医師が不足しているのか、被災によって医師が足りなくなっているのかを確認したいとの考えを示した。
一方、全日本病院協会の西澤寛俊会長は、「もともと(医師が)足りない地域なので、(震災前の医師数に戻っても)足りていなかったら足りないと言うのは当たり前。理解してあげなければならないのではないか」と述べた。
 また、日本精神科病院協会の山崎學会長は、「医師が足りているかどうかの問題を論じる場合、医療法上、足りているのか、労働量として絶対数が足りないのかを分けて検討しなければならない」と指摘。その上で、「(震災の発生から)1年半たっても医師、看護師、薬剤師が足りないと言っているのに、なぜ国家試験を(年に)2回に増やさないのか」と問題提起した。これについて足立氏は、「今までの経緯からいっても、考えにくいと思う」と応じた。【高崎慎也】」


嘉山孝正氏・足立信也氏は,医師は不足していない,と述べ,他方,西澤寛俊氏は,医師不足は震災の影響ではない,と述べ,原因分析以前に,現状認識(あるいは「医師不足の定義」)から異なっています.

谷直樹

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by medical-law | 2012-10-02 04:49 | 医療