弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

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デンゼル・ワシントン『グレード・ディベーター栄光の教室』

Denzel Washington の『The Great Debaters』が無料動画 GyaOで1月21日まで観られます.
テキサス州マーシャル(南部の田舎町)のワイリー大学での実話をもとにしているそうです.1935年(昭和10年)の話ですが,教育的ディベートの本質は変わりません.

谷直樹

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by medical-law | 2012-12-31 19:16 | 趣味

がん診療連携拠点病院の相談支援の現状とがん体験者による患者支援

国は,「がん診療連携拠点病院の整備について」(厚生労働省健康局長通知)に基づき全国397箇所の病院を指定しています(平成24年4月1日現在).
がん診療連携拠点病院は,①専門的ながん医療の提供,②地域のがん診療の連携協力体制の構築,③がん患者に対する相談支援及び情報提供等を行います.

がん患者の相談にための部署が作られましたが,実際には他の部署との兼任スタッフが多く,広報活動も十分ではなく,患者がそのような相談部署があることを知らないことすら少なくありません.

毎日新聞「相談室、十分利用されず」(2012年12月31日)は,そのような現状のなか,千葉県がんセンターのがん体験者による患者支援の試みを紹介しています.

千葉県がんセンター患者相談支援室相談員の野田真由美さんは,次のとおり述べています.

「06年に当時のセンター長が「患者にしかできないことがある」として、がん体験者が悩みを聞くコーナーをがんセンター内に設けたのが始まりだった。病院が提供するサービスの一つでがん体験者による患者支援の試みとしてスタートした。」

「がん体験者には、患者と似た背景がある。もちろん経験は1人ずつ違う。しかし、体験者だと相談者の気持ちをよく理解してくれたり、説明しなくても通じたりすることがある。分かってもらえていると相談者が感じられれば、心の悩みなどを深く話すことができるようになると思う。また、先輩患者がいると、今後の治療や生活のイメージが持てる。」


がん診療連携拠点病院における医療は,単に診療だけを行えばよいというものではなく,患者・家族の心のケアも必要です.がん体験者による患者支援は,もっと注目されてよいと思います.

谷直樹

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by medical-law | 2012-12-31 07:42 | 医療

週刊現代,「「血管」を鍛えて長生きしよう」

「週刊現代」2012年11月24日号の「こうすれば「詰まらない」「切れない」 「血管」を鍛えて長生きしよう」(2012年12月30日web掲載)が動脈硬化の予防法を書いています.

「2分下半身ストレッチ」,「自治医大学附属病院推奨体操」,「かかと上げ下げ運動」,「つま先歩き」,「足裏たたき運動」など具体的に紹介しています.
なお,若返り血管がつくられる目安は3ヵ月なので,最低3ヵ月以上続けることが必要だそうです.

谷直樹

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by medical-law | 2012-12-30 20:54 | 日常

細胞検査士会の会長・副会長選挙で,なりすまし投票の疑い

日本臨床細胞学会と日本臨床病理学会の認定資格である細胞検査士によって構成される「細胞検査士会」の平成25-26年度の役員選挙で,選挙人の投票用紙を集めた「成りすまし投票」が行われた,との内部告発があったそうです.

内部告発は,「今回の会長・副会長選挙で、支部代表者が選挙人から投票用紙を集め、自分で書き込んで投票しました。私は断りましたが、そのようなやり方は公正とは言えないのではないでしょうか。誰に投票したかはわかりませんが、他人の白票用紙を集める行為自体許されることではないと思います。」というものです.

これをうけて,選挙管理委員会,臨時三役会議は,次のとおり対応しました.

「1.今回の訴えは選挙実施要綱で定められた正当な異議申立て期間内に行われたものであり、訴えのあったように未記入の他人の投票用紙を集め、氏名が公示されている選挙人に代わって、あるいは成りすまして投票するという行為が行われたとすれば、単なる投票依頼とは異なり役員選任規程で定められた「選挙人による選出」を妨げる不正な行為であると考えます。(選管では選管ニュースNo.3 にて「身代わり投票は認めない」ことは最初からお断りしておりました)

2.また、今回、投票用紙を再点検しました結果、明らかに異なる筆跡で書き直されていると疑われる票が1 票みつかりました。今回の訴え内容との直接の関係を断定することはできませんが、他人の書いた投票用紙を別の人が訂正して投票することは改竄行為になり、これも不正な行為であると考えます。

3.しかし、身代わり投票については、現在の選挙制度では立証は困難であり、何票がそのような不正な方法で投票されたかを特定することもできません。支部の選挙人数が最低でも3 名であり、今回の選挙結果が僅差であることも考えると、公正な選挙の方針を示すためには再選挙も考慮すべきという意見、疑わしい1 票だけを無効としても得票順位に影響はなく、今回の結果のままでよいとする意見など様々な御意見があろうかと思いますので、選管としては選挙人の皆様に事実をお知らせした上で御意見をお聞きするアンケートを実施するという方針を全員一致で決定しました。

以上の方針に基づき、11 月9 日に候補者の皆様にお集まり頂き事前に御説明した後、役員会にて事情説明を行いましたが、意見がまとまらず議長提案によって会長・副会長と選管とで協議することとなり、11 月17 日に「臨時三役会議」が開催され、次のような結論が出されました。

細胞検査士会臨時三役(会長、副会長、監事)会議報告より

臨時三役会の結論:
1.今回の選挙結果については、次期会長石井保吉氏、副会長伊藤仁、是松元子両氏が選出されたことを選管ニュース(No.33)で会員に公表している通りと決定する。
2.今後の選挙に生かすためのアンケートを実施するかは選挙管理委員会に委ねる。
3.アンケートについては、細胞検査士からの客観的な意見を広く求めるため、細胞検査士全員を対象にする方向で実施してほしい。」


今回の選挙結果に影響しない,という結論に至ったわけです.
今後,どのような改善策がとられるか注目したいと思います.

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by medical-law | 2012-12-30 19:04 | 医療

川端康成氏『伊豆の踊子』

川端康成氏は,2歳のときに医師の父栄吉氏を亡くしています.
「栄吉」という名前は,『伊豆の踊子』の旅芸人に使われています.
旅芸人の一座は,栄吉24歳,おふくろ40歳代,千代子19歳,百合子17歳,薫14歳です.

「物乞ひ旅芸人村に入るべからず」という立札は,この小説のキーワードです.
この旅芸人は異界の人たちであり,亡き父の分身である栄吉らとの旅によって孤児根性からの離脱を実現する,という解釈もありそうです.
吉永小百合さんと高橋英樹さんが主演した映画『伊豆の踊子』では,大坂志郎さんが「栄吉」を演じていて,「栄吉」の役割がよくわかります.

「道がつづら折りになって、いよいよ天城峠に近づいたと思うころ、雨脚が杉の密林を白く染めながら、すさまじい速さでふもとから私を追って来た。私は二十歳、高等学校の制帽をかぶり紺がすりの着物にはかまをはき、学生カバンを肩にかけていた。一人伊豆の旅に出てから四日目のことだった。修善寺温泉に一夜泊まり、湯ケ島温泉に二夜泊まり、そして朴歯の高下駄で天城を登って来たのだった。重なり合った山々や原生林や深い渓谷の秋に見とれながらも、私は一つの期待に胸をときめかして道を急いでいるのだった。」

『伊豆の踊子』の冒頭はこのように現在形と過去形が入り交じり,別世界が始まります.


私は,12月28日,仕事で伊豆に行ってきました.予報どおり午後3時すぎから雨になりました.

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by medical-law | 2012-12-30 02:47 | 趣味

12月22日,日本医師会医療基本法制定に関するシンポジウム

b0206085_15322167.jpgCBニュース「医療基本法の早期制定を- 日医がシンポジウム 」(2012年12月25日)は,つぎのとおり伝えました.

「日本医師会(日医)は22日、日医会館(東京都文京区)で医療の基本理念などを定める医療基本法(仮称)の制定に向けたシンポジウムを開催した。医療者と患者が対立する関係ではなく、相互参加型の医療を目指すには、同基本法で医療者と患者の権利や責務を明記すべきとの指摘などがあり、医療政策の方向性を明確にするためにも、早期制定が必要との意見が多く聞かれた。」

谷直樹

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m3.com「医療基本法は必要か、自民で温度差も 日医がシンポ開催、国会議員や官僚らが参加」(2012年12月24日)は,次のとおり伝えました.

「日本医師会は「医療基本法(仮称)に関するシンポジウム」を12月22日、都内で開催した。医療基本法の制定に向けた活動に取り組む医師、国会議員ら計4人が異口同音に同法の重要性を指摘、これまでの議論の過程や同法の考え方やその骨子を紹介した。その一方で、「指定発言」をした国会議員と厚生労働省幹部はその実効性を疑問視したり、さらなる議論の必要性を指摘するなど、温度差が見られる展開となった。日医の医事法関係検討委員会は2012年3月に「医療基本法」の制定に向けた具体的提言を行うなど(『「医療基本法」の制定を提言、日医委員会』を参照)、医療基本法をめぐる動きは活発化しているが、その要否、制定する場合には法律の基本的考え方や内容など、検討すべき事項が多々あることが浮かび上がった。」

九州合同法律事務所のブログでは「日本医師会医療基本法制定に関するシンポジウムの報告」(2012年12月25日)は,つぎのとおり伝えました.

「日本医師会は、今年3月に医事法関係検討委員会が「『医療基本法』の制定に向けた具体的提言」を発表しています。日医関係者がこの提言に触れるとき、あくまでも日医としてではなく、その一委員会としての「医事法関係件等委員会」の答申、との留保がついています。まだまだ日本医師会所属医師共通の認識には至っていないということでしょう。
 今回のシンポジウムは、会員に広く医療基本法とは何か、何を求めてこのような提言を始めているのかを知ってもらい、やがて日医として、医療基本法制定運動に積極的に関わっていくための足がかりとなるものと思われます。これから、全国の医師会で同様のシンポジウムが企画されるようです。」

「何よりも日本医師会において、患者を中心においた医療基本法についてのシンポジウムが開催されたことそのこと自体が画期的なことだと思います。医療基本法において、何を重視するのか、各論者においてややニュアンスは異なり、細かい論点のすりあわせは難しいところもあるように思いましたが、健康と生命を守る大切な医療を、この国においてどう位置づけ、あるべき姿に育てていくのか、今後各地で開催される医師会主催のシンポジウムの動きにも注目したいと思います。」


◆ 日医会長横倉義武氏の発言

「シンポジウムの冒頭にあいさつした横倉義武・日医会長は、「医療とはどうあるべきかについては、皆さまがそれぞれ多様な考えや思いを持っていると思うが、大前提として医療提供者と患者との信頼関係の下に成り立つものであるという点は、異論がないだろう。しかし、ここ十数年来、医療提供者と患者の信頼関係は必ずしも満足できる状況でない。ここには、医療に関する法制度や医療政策全般に理念の欠如がある、というのも重要な視点ではないか」と述べ、同基本法制定の重要性を強調した。日医は今年3月、「医療基本法の制定に向けた具体的提言」を公表し、同基本法への考え方を示した。」(CBニュース)

「 「医療とはどうあるべきかについては多様な考えがあるだろうが、大前提として医療提供者と患者との信頼関係の上に成り立つことについては異論がないだろう。ここ数十年来、医療提供者と患者との信頼関係は、必ずしも満足でききる状況ではなかった。医療提供側にも反省すべき点があったが、患者や国民にも考えてもらいたかったことがあった。さらに法制度の不備や、医療制度全般にわたる理念の不備が存在した」との認識を示した。横倉氏は、日医の医事法関係検討委員会での検討の結果、医療政策の理念や根本原則を定めた医療基本法の提言に至った経緯を説明、「既にさまざまな団体でシンポジウムが開催されているが、医療提供側として、患者や国民、行政、国会議員なども含め、幅広く議論を展開したいという趣旨で今日のシンポジウムを開催した」と挨拶した。」(m3.com)


◆ 日本病院会顧問の大井利夫氏の発言

「医療基本法をどのように位置付けるかについて、憲法13条の個人の尊厳の保持と幸福追及権、25条の生存権を具現化するための法律になり、医療法などを束ねる親法になるとした。」(CBニュース)

「個人的見解と断りつつ、「医療の個別法と憲法との間を媒介する親法としての位置付けが医療基本法であり、医療者と患者の信頼関係を構築するためには医療基本法は必要」と述べた。読売新聞論説委員の田中秀一氏も、医師の地域偏在の是正などの医療提供体制の充実、自由標榜制の見直しや信頼できる専門医制度の確立をはじめとする医療の質と安全の確保のほか、患者の権利の保障、国民皆保険制度の維持という課題を実現する拠り所として医療基本法の制定が必要だとした。」(m3.com)


◆ 全国社会保険協会連合会理事長(元厚生労働省医政局長)の伊藤雅治氏の発言

「「患者の声協議会副代表世話人」の立場で発言し、患者の声を医療政策に反映させるために同基本法の制定が必要との見解を示した。」(CBニュース)

「自身の厚労省時代を振り返り、「我が国の医療政策の決定プロセスが、あまりにも医療提供側中心の仕組みになっている」と指摘。伊藤氏は現在、「患者の声を医療政策に反映させるあり方協議会」の副代表世話人も務めており、「患者の声をいかに医療政策の決定プロセスに反映させるか、という議論の過程で、医療基本法の必要性が浮かび上がった。高度経済成長期では、医療政策における合意形成は容易だったが、予算や税収が限られている中での合意形成には従来の政策決定プロセスを見直す必要がある」と述べ、今回の衆院選に当たっても各党に医療基本法制定に関するアンケートを実施した経緯を紹介。」(m3.com)

「医政局長として医療政策の決定に関わった経験から、患者・市民代表のかかわりがなかったこと、仮にあったとしたらどのように変わっていただろうか、という問題意識から、最大の課題は国民的な合意形成であり、医療政策の決定プロセスに患者=国民が参加していく仕組みをつくりあげる必要があると考え、患者の声を医療政策に反映させるあり方検討会を立ち上げたこと、医療制度の根幹について国民的合意を形成し、それに基づく医療基本法を制定することが、皆保険制度を基盤とした医療の再構築のためには必要であると報告し、今年4月に発表したあり方協議会、患者の権利法をつくる会、H−PACの共同骨子案を紹介しました。」(九州合同)


◆ 読売新聞社論説委員の田中秀一氏の発言

「H−PACの一員として関わった立場から、深刻な医師不足の実態とその原因、フランスやドイツなど地域や診療科ごとに必要な医師数を国家が決めて適正配置をしている例を紹介し、医療供給体制の充実、医療の質と安全の確保のため、患者の権利を保障するため、そして国民皆保険制を維持するためにも、医療基本法は必要であると報告しました。」
(九州合同)


◆ 自民党参院議員の古川俊治氏の発言

「医療基本法の制定の意義について、「バラバラに発展して複雑化した医療に関する法令領域を、新たな価値観の基に整理統制し、医療に関する政策に一定の方向付けをする」などと述べる一方、同基本法により過剰な規制が行われた場合、医療従事者を萎縮させる恐れがあるとの懸念も指摘した。」(CBニュース)

「「医療基本法に意義はあるが、これまでの議論を聞くと、“やや薄い”という印象を受けた」と述べ、一定の評価をしつつ、疑義を呈したのが、自民党の参議院議員の古川俊治氏。「自民党内では、医療基本法についてまだ議論していない」と説明。その上で、古川氏は、「バラバラに発展して複雑化した医療関係の法令を新しい価値観の下に整理統制し、医療に関する政策に一定の方向性を持たせる点では意義がある」と認めつつ、「単なる理念法であれば、現行の医療法と大差はないのではないか」と実効性に疑問を呈し、「医療は専門性が高く、本来専門職の倫理規定や自主基準によって統制されるべきではないか。法規制が医療の内容に及ぶ場合、専門家としての良心、裁量に抵触する危険性はないか」との懸念を呈した。」(m3.com)

「既に医療法の改正により医療基本法として提言されている条項のうち、一定のものは法文化されているのではないか、と述べました。」(九州合同)


◆ 民主党参院議員小西洋之氏の発言

「「例えば、終末期医療の在り方は国民的な議論が必要だが、どうあるべきかを考えていく上で、医療基本法が必要になってくる」との見解を示した。」(CBニュース)

「「日本には約1900の法律があり、そのうち43が基本法。国政の重要分野には政策の基本理念を定めた基本法があるが、医療にはない」と指摘した上で、憲法13条に定める個人の尊厳、幸福追求権、25条に定める生存権を具体化するため、また約90ある医療関係の法律に齟齬を来さないためにも医療基本法が必要だと主張。2011年2月には民主党内に医療基本法議連が設立されたことを説明、「終末期医療の在り方など国民的問題への対処、患者の権利法制の検討など構造的な対立論点への対処、さらには政権交代などの政治的弊害の回避のためにも、医療基本法が必要。社会保障制度改革国民会議の議題に乗せ、超党派で議論していくべき」と訴えた。」(m3.com)

「小西さんは、憲法13条の定める個人の尊厳、25条を医療の根本理念としてつなげる医療基本法の必要性を、自身が政権与党において様々な法律案の作成にかかわった経験から報告し、大井さんは同じく憲法と医療関連諸法規をつなぐ親法としての医療基本法のあり方について触れながら、医療提供者と患者の信頼関係を構築することが医療基本法の目的であるという立場から、その必要性について報告されました。」(九州合同)


◆ 厚生労働省医政局総務課長の吉岡てつを氏の発言

「関係者の間で議論が進められることが必要。医療基本法は基本的な理念を定義するだけに、政府が提出する法律ではなく、議員立法による対応が適当ではないかと考えている。厚労省としても、必要な調整など役割は果たしていきたい」(CBニュース)

「1972年の“保険医総辞退”の騒動の後、1972年に医療基本法案が国会に提出されたが、審議未了で廃案になり、その後は方針を転換し、医療提供の基本的理念は医療法に追加して対応してきた経緯を説明。「最近、医療基本法をめぐる動きが活発化している」としたものの、「その内容をみると、医療の基本理念を定めることを念頭に置くものから、患者の権利を定めるものまで多様。関係者の間でさらに議論を進めることがまず必要」との認識を示した。「高齢化の進展の中、医療の充実を図っていくことが必要。またその前提として社会保障改革推進法では医療の効率化を図ることが定められている。どんな充実、あるいは効率化を図っていくのかを考える上でも、医療の基本が国民合意の下に、双方的な視点、さまざまな権限への配慮もされた上で定められるのであれば、望ましく、厚労省としても必要な調整、協力はしていく」(吉岡氏)。」(m3.com)

「現在の医療基本法への関心が、ハンセン病問題に関する検証会議の提言に基づく再発防止検討会報告書を受けたものであることを紹介しながら、現在は厚労省のもとに設置した様々な問題に関する検討会において患者代表に参加してもらっており、一定は政策形成過程に患者が参加していることを紹介し、しかし医療の基本理念はきわめて幅広いので、関係者において議論を進めるべきで、議員立法により提案されることが適当ではないかと考えるが、国民的合意が形成されれば、医療基本法の制定に協力することはやぶさかではない旨を述べました。」(九州合同)


◆ ディスカッション

ディスカッションでフロアから出た質問の一つが、「日医案には賛成だが、現状の医療を追認しており、諸問題を解決する方針が見当たらない。応召義務があるが、結果が悪い場合には医療水準に達していないと訴追されるため、救急医療のたらい回し、救急医の疲弊が起きている。また医療行為に対する刑事介入の結果、危険な診療科からの医師の退避が続く上、報道被害も生じる。医師への労働基準法の適用などの問題もあり、病院医療を続けて行く上での困難な状況の解決策を医療基本法に含めることが必要ではないか」という提起だ。

 大井氏は、「病院医療がさまざまな問題を抱えていることは十分承知している。しかし、今議論しているのは個別の問題への対応ではなく、医療の基本理念を定めること。総括する理念を示した上で、(個別の問題は)個別の法律の中で議論していくべき。(既存の)個別法で手に余るのであれば、また個別法を作ればいい。しかし、基本的な理念を作らなければ、一歩も前に出ることができない」と回答。

 そのほか、「日医案には、患者の権利は書かれているが、医師は責務だけを負い、権利がない。責務に対しては必ず権利が付きまとう。若い人に医療への夢を与えるためにも、医師の権利を書くべきではないか」「権利があれば義務がある。我々は義務を強いられる中で、患者が全く放任されていいのか。療養指導を守るなど患者の義務もあるのではないか」など、医師の権利あるいは患者の義務の規定を求める声も挙がった。

 これに対し、大井氏は、「多くの場合に随伴しているのは確かだが、権利と義務は表裏一体のものではないと思う。医療基本法で、医師の権利をうたうことは危険であり、医師の権利をことさら大きく取り上げていくことが難しいのでないか。医療の現場では患者は弱い立場であり、義務以上に権利を保障しなければ、相互参加型の医療は構築されない。そのために、日医案には患者の権利を盛り込んでいる」と説明、日医案には患者の責務として、「診療に協力する義務」「秩序ある受療をする責務」を盛り込んでいると補足した。」(m3.com)

「医師には応召義務が課されている一方で、救急医療の場で高い注意義務が求められ、民事責任や場合によっては刑事責任まで問われるのはどうか、また、それに関する報道のあり方はどうかという質問に対し、大井さんは、医師の労働環境の保障は日医の法案にうたってあり、個別の問題は親法である基本法の下、個別法の中で議論していくことができると述べました。

また、田中さんは、報道機関の立場から、医療事故の取材が、医療に詳しいとはいえない司法記者によっておこなわれていることも問題のひとつだと指摘し、刑事司法の介入は医療者にとっても患者にとっても幸せなことではないので、ぜひ新政権のもと、医療事故調の議論を進めてほしいとの期待を述べました。

 また、九州から参加した医師から、日医の法案には患者の責務も規定されているが、医師については責務だけあって権利はない、責務に権利はつきまとうものだから、医療側の権利も書いてもらいたいとの発言に対しては、大井さんから、気持ちは分かるが、医療の中において患者が弱者であることにかんがみると医師の権利を強調することはむしろ危険であり、相互参加型の医療の構築のためにも不適切である、医療は患者中心のものたるべきで、個人主義、民主主義の基本的理念、個人の権利を強くうたわざるを得ないという発言がありました。

 これに関連して、患者にも一定の義務が認められるべきではないか、という会場発言があり、大井さんから、日医の法案は「患者等の権利と責務」という項立てになっており、診療に協力する義務、秩序ある受療をする責務をうたいこんでいるとの説明がありました。」(九州合同)


◆ 弁護士鈴木利廣氏の会場発言

「司会の今村さんからの呼びかけに応えて、鈴木利廣弁護士がマイクを握り、今日の報告の中には明確には出ていなかったと思うが、医療基本法の提案の背景には、今までの医療感、医療価値観の転換が必要だという考えがある。医制発布以来、医療を民業に任せて、その民業を政府が規制するという民業規制型の法体系となっているが、そのひずみが生じている。公共性という観点から医療を再構築していくべきではないか。そうであれば患者も役割を果たすべきであり、公共の医療をつくりあげて行く中で果たすべき責務があると考える。医師と患者は対立関係ではなく協力関係に立つという価値観の転換が必要であり、そのことを前提に演者の話を聞くと共通理念が見いだせるとの発言がありました。」(九州合同)

それぞれ細かくみれば相違はありますが,根本的な対立があるわけではなさそうですので,一致した意思形成が可能なように思います.

谷直樹

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by medical-law | 2012-12-28 02:26 | 医療

被留置者が自弁のものを使用し、又は摂取することが許される物品から、「煙草」を除く改正案,パブコメ募集

警察庁は,留置施設内における被留置者及び留置担当官の受動喫煙を防止すること等を目的として,留置施設内を禁煙とするための「国家公安委員会関係刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律施行規則の一部を改正する内閣府令」の制定を検討しています.

国家公安委員会関係刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律施行規則(平成19年内閣府令第42号)の一部を改正し、被留置者が自弁のものを使用し、又は摂取することが許される物品から、「煙草」を除く(施行期日 平成25年4月1日)というものです.

パブリックコメント募集は2013年1月19日までです.
詳細は,電子政府のサイト

谷直樹

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by medical-law | 2012-12-26 23:38 | タバコ

タバコ喫煙で余命8~10年短縮,ただし35歳未満で禁煙すると死亡リスクはほとんど上昇せず

共同通信「喫煙で余命8~10年短縮  欧米研究と同水準」(2012年12月25日)は,次のとおり報じました.
 
「喫煙が健康に悪いのは常識だが、吸い続けると命は何年縮むか。放射線影響研究所 (広島市)の坂田律・副主任研究員らのチームは、20歳までに吸い始めた喫煙者の余命は男性8年、女性は10年短縮するとの大規模研究を英医学誌に発表した。
 過去の国内の研究では、余命短縮はこの半分程度とされていたが、今回の数字は欧米の研究結果とほぼ同水準になった。
 チームは、1950年に広島と長崎で始まった原爆被爆者を含む健康追跡調査の対象者約12万人のうち、喫煙習慣の情報が得られた約6万8千人(男性約2万7千人、女性約4万1千人)を平均23年間追跡した。
 分析の中心は20~45年生まれの人たち。「喫煙者」「禁煙者(過去に喫煙)」「非喫煙者」の3群に分け死亡率などを比較。他の習慣や被ばく線量を考慮した解析も行い、結果は妥当と確認した。
 死亡率は20歳までに吸い始めた喫煙者が最も高く、非喫煙者に比べ男性は2・21倍、女性は2・61倍になった。
 20歳までに吸い始め、1日平均23本を吸い続けた男性は、70歳時点で72%が生存していた。これに対し、非喫煙者で生存率が同じ72%になるのは78歳。喫煙による余命短縮は8年と推定された。同様に女性は、10年短縮するという結果だった。
 だが男女とも35歳未満で禁煙すると、死亡リスクはほとんど上昇せずに済むことが判明。35~44歳の禁煙でもリスクの多くは避けられるという。
 過去の国内研究で、喫煙による余命短縮の影響が小さかった理由についてチームは、より古い世代は喫煙開始年齢が高く、本数も少ない傾向があるため、その影響も考えられるとしている。
 国内の最近の喫煙率は男性32・4%、女性9・7%(2011年国民健康・栄養調査)となっている。」
 
 6万8000人を23年間追跡したデータですので信頼できるでしょう.
 もちろん,35歳までは吸い続けてよいという結論ではありません.

谷直樹

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by medical-law | 2012-12-26 23:13 | タバコ

日弁連,精神保健福祉法の抜本的改正に向けた意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は,2012年12月20日,「精神保健福祉法の抜本的改正に向けた意見書」を,厚生労働大臣に提出しました.ご一読をお奨めいたします.

「現行法は,保護者に過重な負担を負わせ,特に保護者の同意を要件とする医療保護入院制度は,地域精神医療及び保健福祉態勢等が十分でない中で保護者に入院の責任を負わせる構造になっている。そもそも,患者の意思に基づかない強制入院制度は,患者から自由を奪い,患者の地域で生活する権利を侵害するものであることから,患者が長期入院によって地域で生活できなくなるような事態にならぬよう必要最小限のものとして設定されなければならない。このような患者の権利擁護の観点から,現行の医療保護入院制度に対する反省を踏まえて,本意見書は,現在厚生労働省で検討されている医療保護入院制度の改正について警鐘を鳴らすとともに,保護者の義務負担の軽減,精神医療審査会の充実,地域精神医療及び保健福祉態勢
の充実など,精神保健福祉法の抜本的改正を求めるものである。

なお,当連合会は,現行法上の措置入院制度及び緊急措置入院制度についても,社会的入院さらには保安処分になりかねない重大な問題を含むものとして,かねてより強制入院制度を一本化の上,その改善を求める意見を述べているところであるが,今回の意見書は,改正が検討されている医療保護入院制度についてのみ対象とするものである。」


「精神保健福祉法の抜本的改正に向けた意見書」の趣旨は以下のとおりです.

「1 現行精神保健福祉法は、保護者に過重な負担を負わせるだけでなく、患者を強制的に入院させるという制度の責任の所在を曖昧にし、事実上保護者の不同意により退院できずに社会的入院が生じているという現状に鑑み、保護者の義務規定及び医療保護入院における保護者同意の要件を速やかに廃止すべきである。

2 保護者同意の要件を廃止した後に想定すべき入院制度(以下「改正入院制度」という。)は、精神疾患の治療は通院治療によることが原則であることを踏まえ、慎重に制度設計がされることが不可欠であり、(病識がないこと等から医療の必要性を判断できない患者に対しても)医療を受ける権利を保障し、通院治療により地域で生活できる状態の回復を図ることを制度の目的とし、この目的達成のための必要最小限のものとすべきである。

3 したがって、改正入院制度は、入院時の審査として、次の実体的要件及び手続的要件を満たさなければならない。

(1) 実体的要件
① 精神疾患が重篤であり、判断力が阻害されていること。
② 治療反応性があることを前提に、入院治療させなければ病状が悪化し、自己決定権の行使が長期間困難になることが見込まれる場合であること。

(2)手続的要件
① 医師は、患者に対して現在の病状並びに治療の方針、効果及び見通しを説明すること。
② (1) の要件判断は指定医2名による判定を必要とし、うち1名は当該入院先精神科病院の常勤又は非常勤の医師でない者によること。
③ 急を要する場合、入院時には少なくとも1名の医師による判定で足りるが、入院から72時間以内に2名の医師によって判定がなされること。
④ 前記の指定医2名の「判定意見」、入院先精神科病院作成による「治療計画及び退院計画の記載された入院届」を、入院時から10日以内に当該都道府県に設置された精神医療審査会に提出するものとし、同審査会は、入院届の提出から1週間以内に入院の必要性について審査し結論を出すこと。
この審査においては、審査会の構成員が患者から直接意見を聴取しなければならないこと。
⑤ 入院に当たっては、患者に必ず代弁者を付けること。


4 改正入院制度における入院期間の設定は、当初は3か月以内とし、3か月を超えて入院させる必要がある場合には、当初の治療計画及び退院計画の修正が必要な理由、修正後の治療計画及び退院計画の提出を受け、再度、前項の精神医療審査会の審査を受けるものとすること。
再審査によって入院継続が認められた場合の入院期間は、当初の入院時から最長1年間を超えることができないものとすること。

5 入院患者に対しては、入院直後から退院のための環境整備に向けた専門家を付け、具体的に退院に向けた活動がなされること。

6 改正入院制度における実効性ある審査のため、現在の各都道府県の精神医療審査会の態勢を抜本的に拡充し、審査会の機動性及び権限強化を図るとともに、審査会の決定に対する裁判所への不服申立制度を創設する等、審査手続における患者の適正手続の保障を全うすること。

7 改正入院制度の費用負担は公費によることを明らかにし,患者から徴収しないこと。

8 患者の地域で暮らす権利を実質的に保障し,入院を必要以上に長期化させないため,患者が地域で生活できるよう居住環境を具体的に整備し,また,アウトリーチ支援を充実させるなど,地域精神医療体制や保健福祉政策を充実させるよう,地域精神医療及び保健・福祉の総合的な計画を企画・遂行すること。」


谷直樹

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by medical-law | 2012-12-25 22:04 | 弁護士会

新宿クリニック博多院の,韓国の人への幹細胞投与問題(報道)

毎日新聞は,ソウルのバイオベンチャー「RNLバイオ」は,韓国では禁じられている幹細胞投与を希望する患者ら約3700人を,福岡市博多区の「新宿クリニック博多院」に紹介した,と報じました.韓国政府は事実関係を確認した上で「法令違反があれば、適切な措置を取る,とのことです.

毎日新聞「幹細胞投与:韓国政府がバイオ企業調査へ…現地紙報道」(2012年12月24日)は,RNLバイオ社の主張を次のとおり伝えています.

「R社は同紙(朝鮮日報)に対し「日本の医療機関への紹介は容疑なしとされた。無許可で医薬品を使用した点に関してのみ現在も捜査中だ」と説明。さらに「当時は幹細胞を韓国で培養したことが問題になった。今回は日本で培養しているため、韓国の薬事法には触れない」と話している。」

「R社は24日、▽自社の幹細胞治療剤は安全性が確認されており、有効性に関する確証試験中だ▽幹細胞の培養・投与は日本では禁止されていない▽韓国の医療法が禁じているのは「国内の病院へのあっせん、紹介」だけだ▽日本の病院に協力金を支払ってはいない−−などと主張する文書を発表した。」


しかし,博多院はR社側から協力金を受け取って投与していることを認めています.

博多院の榎並寿男医師は,「日本人は治療していない。韓国の人で勉強させてもらっている。医学の追究ですよ。利益なんてしれているが、山中先生は大した人ですけど(治療した人は)ゼロですが、僕なんか喜んだ患者をいっぱい診ている。副作用は考えていないが、長い意味で何年後にどうだと聞かれたらそこまでは分からない。」と述べています.

日本の法規制の甘さ(医療裁量の広さ)を衝かれた事件です.
規制を急ぐ必要があると思います.

谷直樹

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by medical-law | 2012-12-25 01:16 | 医療