弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

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抗がん剤情報収集に関するアンケート調査

ミクス「情報少なく新薬処方できず 約半数の医師が経験 抗がん剤治療で」(2013年3月25日)は,次のとおり報じました.

がん治療を行なっている医師を対象に「抗がん剤情報収集に関するアンケート」調査を、市場調査のインテージが実施し、3月21日発表した。処方薬剤を検討する際に最も困っているのは「診療ガイドライン通りの処方が最適なのかどうか迷うケースがある」(74.7%)で、次いで「エビデンスの少ない新薬についての情報が少ないため、なかなか新しい薬剤の処方ができない」(47.4%)だった。ガイドラインやエビデンスだけでは対応が難しい日常診療をサポートする情報の必要性が示された。

調査は、グループ会社アンテリオのドクターウェブパネルを利用し、がん患者を10名以上診療している全国のがん拠点病院および一般病院の勤務医95名を対象とがん患者を10人以上診療している全国のがん拠点病院と一般病院の勤務医95人を対象にインターネットで行ったもの。

処方判断を迷った時、最先端の医療機関(国立がんセンター、がん研有明病院など)での処方例の情報提供が受けられるとしたら、受けたいかを尋ねたところ、「是非、利用したい」 (26.3%)、「利用したい」(53.7%)と、約8割が受けたいとの意向を示した。

処方薬剤を検討する際、医師が参考にしている情報のトップ3は「エビデンス、治療成績」(94.7%)、「診療ガイドライン」(92.6%)、「論文、文献」(69.5%)だった。」


多くの医師がガイドラインを参考にしていることが分かります.医師が診療ガイドライン通りの処方が最適なのかどうか迷ったときに,最先端の医療機関に相談できるシステムがあるとよいですね.

谷直樹

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by medical-law | 2013-03-26 02:38 | 医療

日弁連,新型インフルエンザ等対策特別措置法施行令(案)に対する会長声明

b0206085_1434967.jpg日本弁護士連合会(日弁連)は,2013年3月22日,新型インフルエンザ等対策特別措置法施行令(案)に対する会長声明を発表しました.

「本年2月18日、政府は、新型インフルエンザ等対策特別措置法施行令(案)の概要(以下「施行令案」という。)を発表した。

新型インフルエンザ等対策特別措置法(以下「特措法」という。)について、当連合会は、2012年3月22日、科学的根拠に疑問がある上、人権制限を適用する要件も極めて曖昧なまま、各種人権に対する過剰な制限がなされるおそれを含むものであるとして、成立に反対する会長声明を発している。特措法は第180回国会において可決成立したが、参議院において、「本法の規定に基づく私権の制限に係る措置の運用に当たっては、その制限を必要最小限のものとするよう、十分に留意すること。」、「新型インフルエンザ等緊急事態宣言を行うに当たっては、科学的根拠を明確にし、恣意的に行うことのないようにすること。」との附帯決議がなされており、人権の制限が過度にわたることのないよう厳格な運用が求められる。ことに、特措法は、人権制限の具体的要件の定めを大幅に政令に委任していることから、政令は、人権を制限する権力行使を適切にコントロールしうるものとすることが重要である。

しかるに、施行令案は、特措法において多くの人権制限の前提となっている新型インフルエンザ等緊急事態の具体的要件を定めているが、その内容は極めて緩やかであり、かつ曖昧不明確であって、過度の人権制限を招来する危険性が高い。」

まず、特措法の定める、新型インフルエンザ等が「国民の生命及び健康に著しく重大な被害を与えるおそれがあるもの」であるという要件について、施行令案は、その具体的要件を、当該新型インフルエンザ等にかかった場合における肺炎、多臓器不全又は脳症その他厚生労働大臣が定める重篤である症例の発生頻度がいわゆる季節性インフルエンザにかかった場合に比して「相当程度高いと認められること」としているが、「相当程度高い」との要件は極めて緩やかかつ曖昧に過ぎる。また、「認められる」との要件についても、どの程度情報の蓄積が得られた段階で、どの程度の確度を要求するのか明らかでない。新型インフルエンザについては病原性を早期の段階で判断することは不可能であることが専門家により指摘されているところであり、国内発生初期の情報の不十分な時点で、明確な科学的根拠のないまま本要件に該当するとの判断がなされるおそれがある。特措法の上記要件は、極めて病原性の強い新型インフルエンザが発生した場合に限定する趣旨と考えられるが、施行令案の定める具体的要件はそのような場合に限定する機能を果たしていない。

また、特措法の定める、当該新型インフルエンザ等が「全国的かつ急速なまん延により国民生活及び国民経済に甚大な影響を及ぼし、又はそのおそれがある」との要件については、施行令案は、①確認された新型インフルエンザ等の感染者(症状等から感染が疑われる者も含む。)に対し新型インフルエンザ等を感染させた原因が特定できない場合、または②新型インフルエンザ等の感染者が不特定の者に対して新型インフルエンザ等を感染させる行動をとっていた場合その他の新型インフルエンザ等の感染が拡大していると疑うに足りる正当な理由のある場合、のいずれかに該当することで足りるとしている。すなわち、感染原因を特定できない感染者が1人でもいたり、感染後に人混みを歩いたり混雑した電車に乗ったりした感染者が1人でもいれば要件を充たすことになるが、新型インフルエンザ等の発生時にかかる事態が発生しない方が稀と考えられるのであり、これでは、特措法が新型インフルエンザ等緊急事態を限定するために前記のような要件を課した意味が全くない。

以上のとおり、施行令案の要件が緩やかかつ不明確であることにより、特措法の定める上記要件を逸脱する場合にまで新型インフルエンザ等緊急事態の成立が認められかねないものとなっている。これは、前記の参議院附帯決議の趣旨にも反する。

施行令における新型インフルエンザ等緊急事態の具体的要件については、極めて病原性の高い新型インフルエンザ等の感染が大規模に発生する差し迫った危険が生じた場合に適切に限定されるよう、より厳格かつ明確な要件を定めるべきである。」


重大な人権侵害のおそれ施行令なのに,反対の盛り上がりに欠けるのが気になります.


谷直樹

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by medical-law | 2013-03-25 02:29 | 人権

経鼻経管栄養チューブ誤挿入後に患者死亡,業務上過失致死容疑で捜査(報道)

b0206085_1461358.jpg
日本経済新聞「チューブ誤挿入後に男性死亡 仙台の病院、肺炎に」 (2013年3月23日)は,次のとおり報じました.

 
「仙台市の脳神経疾患専門病院で昨年10月、入院していた70代の男性が胃に栄養剤を入れるチューブを気管に誤って挿入された後に肺炎で死亡し、宮城県警捜査1課が業務上過失致死容疑で捜査していることが23日、捜査関係者らへの取材で分かった。

 チューブは自力で食事ができない人に、鼻からのどを通して胃に挿入する。県警はチューブの誤挿入が死亡につながった疑いがあるとみて、担当だった看護師らから事情を聴いている。

 捜査関係者らによると、男性は脳疾患の手術を受けて集中治療室(ICU)に入っていたが、昨年10月17日に肺炎で亡くなった。病院側は同日、異状死として県警に届けた。病院側は取材に「警察が捜査中でコメントできない」としている。

 2005年に千葉県、06年には新潟市の病院で、いずれも栄養剤のチューブを誤って気管支や肺に挿入された患者が死亡している。06年には福岡市の病院で、逆に気管に入れるべきチューブを食道に誤って挿入し患者が死亡するなど、各地で同様の事故が起きている。

 医療関係者によると、チューブがきちんと挿入されているかどうかは、胃液の吸引や気泡の音を確認するなど複数の方法があり、使用するチューブの種類などに合わせてマニュアルを作成している病院もあるという。〔共同〕」


安易な経鼻経管栄養が行われていますので,経鼻経管栄養の事故はもっとあると思います.


谷直樹

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by medical-law | 2013-03-24 03:36 | 医療事故・医療裁判

広島大学病院,また個人情報を含むUSBメモリを紛失

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国立大学法人広島大学は,平成25年3月22日,「個人情報を含むUSBメモリの紛失について」を発表しました.

今回は,広島大学病院の医師が,平成25年3月,広島大学病院の患者265名分の個人情報を含むUSBメモリを紛失したというものです.
「当該医師が,臨床研究に活用するため,電子カルテを参考に資料を作成し,論文や実験データと併せて,USBメモリに保存しておりました。平成25年2月28日(木),当該医師がUSBメモリを研究室で使用後,院内において紛失したものと思われます。当該医師からの報告に基づき,紛失したと思われる場所を探してまいりましたが,現時点において発見に至っておりません。」とのことです.

大学病院に限れば2件ですが,広島大学全体では,個人情報を含むUSBメモリ・ノートパソコンの紛失がたびたび起きています。

平成20年3月15日,広島大学留学生センターの教員が,749名の学生の個人情報が入った大学の備品のノートパソコンをベルギーで電車移動中に盗難により紛失しました。

平成22年8月1日,広島大学大学院教育学研究科の教員が,834名分の個人情報を含む個人所有のUSBメモリを紛失しました。

平成24年4月16日,広島大学病院の看護師が,広島大学病院の入院患者(285名分)及び看護師(30人名)等の計315名分の個人情報を含むUSBメモリを病院内で紛失しました.
「当該病院の看護師が,患者さんの病床管理を行うことを目的として資料を作成し,これらのデータをUSBメモリに保存しておりました。平成24年4月16日(月)夕方,当該看護師がUSBメモリをスタッフステーション内のパソコンに接続して資料作成をした後,紛失したものと思われます。」とのことです.

同年同月同日,広島大学ナノデバイス・バイオ融合科学研究所の教員が,ベルギーで昼食中に,1,005名分の個人情報を含む,大学の備品のノートパソコンを盗難により紛失しました。

同年11月,広島大学大学院理学研究科の教員が,帰省中に,203名分の個人情報が含まれているUSBメモリを紛失しました.


広島大学による「再発防止への取り組み」は,その都度以下のとおり発表されています.

◆ 平成20年4月4日

「本学としては、当該教員に対して訓告を、当時の上司に対して文書による厳重注意の処分を行いました。
また、今後、個人情報の適正な取扱いについて一層の注意喚起のため、研修等を強化し、再発防止に努めます。」


◆ 平成22年9月14日

「(1)本日付けで,個人情報の管理の徹底について,教職員に対し注意喚起を行ったところです。
(2)これまで,全教員に対してセキュアUSBメモリを配付してきましたが,さらに,その使用について徹底してまいります。
(3)引き続き,研修等を通じて,教職員に対して個人情報の適切な取扱いについて法令遵守を徹底してまいります。」


◆ 平成24年4月27日

「当該病院の保有する患者さんの個人情報の保護につきましては,かねてより教職員に対し,厳正な取扱いの周知徹底を図っておりましたが,このような事態が二度と起こらないよう,個人情報の適正な管理について,以下のとおり教職員にあらためて注意喚起等を行いました。今後も継続して再発防止に取り組む所存です。
(1) 4月27日付けで,個人情報の管理の徹底について,教職員に対し注意喚起を行いました。特に,当該病院の教職員・院生等に対しては,4月23日付けで病院長から,個人情報の取扱いについて注意喚起を行いました。
(2) これまで,全教員に対してセキュリティを強化したUSBメモリを配付してきましたが,さらに,その利用範囲の拡大と使用の徹底を図ります。
(3) 引き続き,教職員の研修等を通じて,法令を遵守した個人情報の適切な取扱いに万全を期してまいります。」


◆ 平成24年5月11日

「(1) 本日付けで,再度,個人情報の管理の徹底について,教職員に対し注意喚起を行いました。
(2) 引き続き,研修等を通じて,教職員に対して個人情報の適切な取扱いについて法令遵守を徹底してまいります。」


◆ 平成24年11月16日

「(1)本学では,セキュアUSBメモリの教職員への配布や在学生・教職員への情報セキュリティ教育を進めて参りましたが,本日付けで,再度,個人情報の管理の徹底について,教職員に対し注意喚起を行いました。
(2)引き続き,研修等を通じて,教職員に対して個人情報の適切な取扱いについて法令遵守を徹底してまいります。」


◆ 平成25年3月22日

「当該病院の保有する患者さんの個人情報の保護につきましては,かねてより教職員に対し,厳正な取扱いの周知徹底を図っておりましたが, このような事態が二度と起こらないよう,個人情報の適正な管理について,以下のとおり教職員にあらためて注意喚起等を行いました。今後も継続して再発防止策に取り組む所存です。
(1)3月21日付けで,病院長から当該病院の教職員・院生等に対し,個人情報の管理徹底について,注意喚起を行いました。
(2)大学全体としては,本日付けで,個人情報の管理の徹底について,教職員に対し注意喚起を行ったところです。これまで,セキュアUSBメモリの配付対象教職員の範囲を拡げ,在学生・教職員への情報セキュリティ教育を通じて,個人情報管理の徹底を図ってまいりましたが,引き続き,研修等を通じて,教職員等に対して個人情報の適切な取扱いについて法令遵守を徹底してまいります。」


アメリカでは,個人情報の紛失事故は高額の民事賠償責任を生じます.
実効的な再発防止策を検討すべきではないでしょか.
USBメモリへコピーすると自動的に暗号化されるソフトを導入するなど,実効的な再発防止策が必要と思います.


◆ 2011年6月以降の個人電磁情報の紛失事故

2011年 6月
慶應義塾大学病院スポーツ医学総合センター
北海道大学病院

2011年7月
医療法人 柏堤会(財団) 戸塚共立第1病院
藤田保健衛生大学病院
昭和大学歯科病院

2011年8月
筑波メディカルセンター病院

2011年9月
千葉県精神科医療センター
鹿児島大学病院

2011年10月
JA茨城県厚生連茨城西南医療センター病院
独立行政法人国立病院機構三重中央医療センター
独立行政法人労働者健康福祉機構関東労災病院
大和市立病院

2011年11月
独立行政法人国立病院機構金沢医療センター

2012年1月
医療法人聖愛会
独立行政法人国立病院機構千葉医療センター
独立行政法人国立病院機構宇多野病院
東京女子医科大学附属八千代医療センター

2012年2月
京都府立洛南病院(ただし一時紛失)
岡山大学病院
藤沢市民病院
長崎大学病院

2012年3月
日本赤十字社医療センター
国立大学法人高知大学医学部

2012年4月
ごう在宅クリニック(札幌)
静岡県立病院機構静岡県立総合病院
広島大学病院
福岡大学病院

2012年5月
福岡大学病院

2012年7月
日本大学歯学部付属歯科病院

2012年8月
名古屋大学医学部附属病院

2012年9月
沖縄県立中部病院
福岡歯科大学医科歯科総合病院

2012年10月
医療法人社団恵仁会セントマーガレット病院
東京医科大学病院
昭和大学病院附属東病院
浜松医科大学医学部付属病院,浜松医療センター

2012年11月
九州大学病院
東京慈恵会医科大学附属柏病院

2013年2月
札幌医科大学附属病院

2013年3月
広島大学病院

谷直樹

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by medical-law | 2013-03-24 02:22 | コンプライアンス

総務省が厚労省に勧告,「医薬品等の普及・安全に関する行政評価・監視結果に基づく勧告」

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総務省は,2013年3月22日,「医薬品等の普及・安全に関する行政評価・監視結果に基づく勧告」を公表しました.

総務省の行政評価・監視は,医薬品等の供給の迅速化の推進,後発医薬品の普及促進及び医薬品等の安全性の確保の観点から,医薬品等の承認審査の実施状況、治験実施体制の整備状況,後発医薬品の普及施策の実施状況、医薬品等の副作用等報告の実施状況等を調査したものですが,とくに「適切な副作用等報告の徹底」について,厚労省に改善を求めた部分は注目されます.

「厚生労働省は、医薬品又は医療機器の副作用等による保健衛生上の危害の発生又は拡大を防止する観点から、以下の措置を講ずる必要がある。

① 医療機関に対し、厚生労働大臣への安全性情報報告が励行されるよう当該報告制度の趣旨の周知徹底を図るとともに、引き続き、医薬品等製造販売業者が行う情報収集活動への協力を促すこと。

② 地方厚生局に対し、病棟薬剤業務実施加算の対象となる副作用の判断基準を示した上で、適時調査の際には同加算の届出を行った医療機関における一元管理等の加算要件の適合状況を確認し、適合しない場合は当該医療機関への指導を徹底させること。

③ 意識障害等の副作用報告がある医薬品の全ての添付文書を点検し、使用上の注意に意識障害等の副作用が発現する旨の記載のみで、自動車運転等の禁止等の記載がないものに対して、自動車運転等による事故を未然に防ぐため、当該医薬品の服用と自動車事故との因果関係が明確でない場合であっても、自動車運転等の禁止等の記載を検討し、記載が必要なものについては速やかに各添付文書の改訂を指示すること。
また、添付文書の使用上の注意に自動車運転等の禁止等の記載がある医薬品を処方又は調剤する際は、医師又は薬剤師からの患者に対する注意喚起の説明を徹底させること。」


総務省の勧告の前提となった調査結果は,次のとおりです.

「安全性情報報告の実施状況」について,次のとおり指摘しています.

「調査した23 医療機関における平成20 年4月から23 年11 月までの安全性情報報告の実施状況についてみたところ、収集した副作用等の情報を厚生労働大臣に報告していない機関が5機関みられた。当該5機関では、いずれも保健衛生上の危害の発生又は拡大を防止するため必要があると認める場合は直接厚生労働大臣へ報告する必要があることは、制度として承知しているとしている。

しかし、当該5機関では、副作用等を知った場合に厚生労働大臣へ報告義務がある医薬品等製造販売業者に対し情報提供すれば、当該業者からPMDAを経由して報告がなされるはずであるため、収集した副作用等の情報の多くを自ら直接報告は行わず、医薬品等製造販売業者へ情報提供していた。
さらに、前述の5医療機関のうち2機関では、収集した副作用等の情報について、一部の情報は、厚生労働大臣への報告及び医薬品等製造販売業者への情報提供のどちらも行っていなかった。



「 医療機関における安全性情報の管理体制の整備状況」について,次のとおり指摘しています.

「調査した23 医療機関のうち20 機関で、医薬品安全性情報等管理体制加算の届出がなされていたが、このうち2機関においては、医師、薬剤師、看護師等が把握した副作用情報等が、医薬品情報管理室へ報告されていない場合があり、当該加算の要件となっている副作用情報等の一元管理等が適切に実施されていないと考えられる状況がみられた。

また、厚生労働省は、地方厚生局が行う当該加算の適時調査において、適合状況を確認する際の一元管理等の対象となる副作用については、安全性情報報告を行った副作用としているものの、地方厚生局にはこの内容を示していない。」


「添付文書の使用上の注意の記載状況等」について,次のとおり指摘しています.

「医薬品の副作用は、皮膚障害、神経系障害、肝胆道系障害等服用者に直接被害をもたらすものであり、場合によっては重篤な症状を引き起こすものもある。このような副作用のうち、神経系障害等の中には、意識レベルの低下、意識消失、意識変容状態、失神、突発的睡眠(以下これらを総称して「意識障害等」という。)が報告されている。当該医薬品を服用することにより、自動車の運転、機械の操作、高所作業等危険を伴う作業(以下「自動車運転等」という。)に従事している最中に意識障害等が発現し事故が発生した場合は、第三者へ危害を及ぼす危険性があることから、このような医薬品の使用に当たっては、特段の注意が必要であると考えられる。

PMDAに対する意識障害等及び事故関連の副作用報告(以下「意識障害等の副作用報告」という。)について、平成15 年11 月から24 年6月までの状況をみたところ、一般用医薬品37 成分を含む751 成分において計6,205 件報告されている。また、意識障害等の副作用報告が多かった上位50 成分のうち、販売中止となったものや過量投与等による意識障害等を除いた46 成分中21 成分で計110 件の医薬品服用による自動車事故が報告されている。

当省において、当該46 成分の添付文書についてみたところ、24 成分については、使用上の注意に意識障害等の副作用が発現する旨の記載があり、かつ、発現状況に応じ自動車運転等の禁止又は自動車運転等の際は注意が必要とする旨(以下「自動車運転等の禁止等」という。)が記載されている。

なお、当該24 成分中17 成分で計102 件の自動車事故が報告されており、残りの7成分については、報告されていない。

しかし、その他の22 成分の添付文書については、使用上の注意に意識障害等の副作用が発現する旨の記載があるものの、自動車運転等の禁止等が記載されておらず、また、当該22 成分中4成分で計8件の自動車事故が報告されている状況がみられた。

これに対しPMDAでは、意識障害等の副作用が報告されている医薬品については、当該医薬品によって同副作用が発現する状況が異なるため、一律に自動車運転等を制限することは社会的影響も大きく適切ではないが、医薬品ごとの発現状況に応じた自動車運転等の禁止等の記載の必要性は認識しており、医薬品の服用と自動車運転等による事故との因果関係が明確な場合は、自動車運転等の禁止等を記載するが、前述の4成分における計8件の自動車事故については、明確に因果関係があるとはいえないため、添付文書に自動車運転等の禁止等の記載は不要としている。

しかし、因果関係が明確でないため添付文書に自動車運転等の禁止等が記載されていない医薬品であっても、明らかに因果関係が認められない場合は別として、医薬品の服用との因果関係が明確でない場合であっても、自動車運転等による事故を未然に防ぐため、添付文書に意識障害等の副作用が記載されているものについては、意識障害等の発現状況に応じた注意喚起は必要であると考えられる。
現に、使用上の注意に意識障害等の副作用が発現する旨の記載があり、自動車運転等の禁止等が記載されている医薬品の中には、自動車運転等による事故が報告されていないものもある。

さらに、前述の46 成分のうち1成分において、使用上の注意に自動車運転等の禁止等を記載した添付文書に改訂されたものの、改訂後も10 件の自動車事故が発生しており、うち1件の発生例の場合について、PMDAでは、医師又は薬剤師から患者に対し、医薬品の服用に際し自動車運転等の禁止等の説明がなされていないと考えられるとしている。」


なお,神戸地裁平成14年6月21日判決は,上部消化管内視鏡検査の際にドルミカムを静注したのに,患者に数時間自動車運転が危険であることを説明しなかった事案で,説明義務違反を認定し607万549円の損害賠償を命じています.添付文書の記載如何では厚労省,製薬企業の責任が生じ得ますし,説明義務違反があれば医師の責任が生じ得ます.


【追記】

薬事日報「「全規格揃えの見直しを」後発品施策等で改善要求‐厚労省に勧告 総務省」(2013年3月25日)は,次のとおり報じました.
 
「総務省は22日、後発品を普及させるため全規格揃えを見直したり、病棟薬剤業務実施加算の算定要件となっている適切な副作用等報告を徹底するよう厚生労働省に勧告した。同省が行政評価を行うために実施した調査結果で、医薬品の安全対策や後発品使用促進の取り組みに改善の余地があると判断された。

調査は、2011年12月から今年3月まで、厚労省、医薬品医療機器総合機構(PMDA)、都道府県、医療機関等を対象に実施されたもの。新薬の迅速な提供や安全対策、後発品使用促進が適切に進められているかどうか評価した。

その結果、後発品の使用促進に関しては、調査対象の医薬品製造販売業者13社から、全規格揃えについて「需要が少ない規格もあり、非効率的な生産になっている」と見直しを求める意見が聞かれ、医療機関や薬局からも、「在庫管理費の増大につながる」「ほとんど調剤機会がない」等の声が多かったことから、必要な医療の確保を前提に、全規格揃えの見直しを関係団体の意見を踏まえながら検討するよう厚労省に勧告した。

また、医療機関と薬局で後発品への「変更不可」処方箋の発行状況を見たところ、それぞれの割合は平均11・9%、22・8%だったが、1医療機関では64・0%、4薬局では50%以上だったことから、後発品への変更に差し支えがあると判断した場合を除き、医療機関は処方箋の「変更不可」欄にチェックしないよう周知することを厚労省に求めた。さらに、医師と患者に後発品の使用への理解が進むよう、さらなる施策の検討も促した。

病棟加算要件に不適切例‐副作用情報の管理徹底を

一方、安全性情報の一元管理に関して、届け出のあった2施設で医師、薬剤師等が把握した副作用情報が医薬品情報管理室に報告されておらず、病棟薬剤業務実施加算の要件となっている副作用情報の一元管理が適切に実施されていないことが判明。また、厚労省は、地方厚生局に加算の適合調査で対象となる副作用内
容を示していないことも明らかになった。

こうした状況を踏まえ、総務省は厚労省に対し、地方厚生局に加算対象となる副作用の判断基準を示した上で、要件となる届け出医療機関の一元管理状況を確認し、適合しない場合は指導を徹底するよう勧告した。

また、医薬品の副作用情報を厚労省に報告していない医療機関5施設が判明し、薬事法に定められた義務が果たされていない事態が発覚したことから、医療機関に対して厚労大臣への副作用報告を徹底するよう求めた。さらに、意識障害の副作用報告が多かった上位46成分中21成分で自動車事故が報告されているが、22成分の添付文書には、使用上の注意に自動車運転の禁止等が記載されていないことが判明。因果関係が明らかでない場合でも記載を検討し、記載が必要なものについては速やかに添付文書の改訂を指示するよう促した。」



谷直樹

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by medical-law | 2013-03-23 04:31 | 医療

東京都公式スマートフォン用アプリ「まもれ!シューマ&エルメ」をリリース!

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東京都は,若者に対する新たな情報発信ツールとして、スマートフォン用無料ゲームアプリ「まもれ!シューマ&エルメ」を開発し,3月25日から配信する,とのことです.

東京都の消費生活部長から密命をうけた「シューマ&エルメ」が東京を守るために立ち上がった・・・
シューマは,「まっすぐで正義感が強い元気者。ちょっとおっちょこちょい。」
エルメは,「おっとりタイプで、冷静に物事を判断できる。パソコン、インターネットが得意で、知恵者。」

「ゲーム画面の上部に、若者への最新の注意喚起情報や消費者被害情報、通報に基づく架空請求事業者名などをリアルタイムで配信」
これが狙いなんですね.
医療消費者への注意喚起情報もほしいですね.

谷直樹

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by medical-law | 2013-03-23 03:50 | 日常

第11回医療事故に係る調査の仕組み等のあり方に関する検討部会

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CBニュース「医療事故調の第三者機関の権限で平行線-厚労省検討部会」(2013年3月22日)は,次のとおり報じました.

「厚生労働省の「医療事故に係る調査の仕組み等のあり方に関する検討部会」は22日に会合を開き、同検討部会の見解を取りまとめるための議論を続けたが、病院の外に置く第三者機関に調査権限を与えるかどうかで、必要性を主張する法曹界側委員と、不要だとする医療者側委員の意見が対立した。また、病院内に設置する事故調査委員会(院内事故調)のメンバーに第三者を加えるかどうかで、法曹界側委員は必要だと主張したが、医療者側委員は反対した。

 昨年2月に初会合を開催した同検討部会の会合は、この日で11回目を数えた。前回会合までに、論点ごとの議論を終え、医療事故調査制度の独自案をまとめた四病院団体協議会などからのヒアリングが一巡したことから、意見集約を目指しているが、依然、委員間の意見の隔たりは大きく、同検討部会としての見解を取りまとめられるかは不透明な状況だ。

 この日は、これまで議論で合意した点と、意見が分かれている点を整理した。医療事故を調査する目的については、原因究明および再発防止であることを改めて確認。第三者機関が調査する対象は、診療行為に関連した死亡事例を原則とし、それ以外は段階的に拡大していくとした。死亡事例が生じた場合に、第三者機関に届ける事例の範囲については、議論が尽くされていなかったが、再度検討した結果、事例ごとの線引きが難しいことから、全例報告にすることにした。

 第三者機関のあり方については、独立性・中立性・透明性・専門性を有する民間組織にする方向でほぼ合意したが、その組織に付与する権限で、委員の意見は割れた。弁護士で南山大大学院教授の加藤良夫委員は、「自主的に調査協力するのが理想だが、中には非協力的な医師もいる。一切、カルテも出さないような時に、調査権限は絶対に必要」と強調した。これに対し、医療者側委員は総じて否定的で、「強制的な権限はよくない。特殊な例には、特殊な対応をすればいい」(飯田修平・練馬総合病院長)などと反論した。

 また、院内事故調の構成メンバーについても意見が割れた。法曹界側委員は、第三者の参加を求めたが、医療者側委員を中心に、最終的に再発防止が目的であることを理由に、院内事故調に参加するのは院内スタッフや医療者に限るべきとした。現在、想定している事故調の仕組みでは、院内事故調に対して遺族などの訴えがあれば、病院外の第三者機関が調査することになるため、院内事故調に第三者がいなくても、第三者性が担保されるとの意見もあった。【君塚靖】



なかなか進みませんね.原因は第三者が入ることへの不信感でしょうか.

谷直樹

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by medical-law | 2013-03-22 21:38 | 医療事故・医療裁判

21世紀出生児縦断調査及び21世紀成年者縦断調査特別報告の概況

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厚労省は,2013年3月21日,「21世紀出生児縦断調査及び21世紀成年者縦断調査特別報告の概況」を発表しました.

◆ 結婚

就業形態が無職、パート・アルバイト、派遣社員、契約社員・嘱託では、正規雇用の者に比べ、男女とも結婚を「絶対したい」と思う者が少ない

学卒直後の就業形態が無職だった場合、正規雇用の者に比べ男女とも20-29 歳では結婚が起
きにくい

男女とも、収入が高くなるほど結婚しやすい、特に男性の30 歳以上で顕著


◆ 第1子出生

妻の就業形態がパート・アルバイトや派遣社員・契約社員・嘱託では、正規雇用の者に比べ、第1子出生が起きにくい

妻の職場で育児休業制度がない又は育児休業制度があるかわからないと答えた者は、育児休業制度があると答えた者に比べ、第1子出生が起きにくい


◆ 第2子出生

第1子出生後に夫の育児参加が多いほど第2子出生が起きやすい傾向

第1子出生後に妻の子育ての不安や悩み・育児負担感が大きいほど第2子出生が起きにくい

結婚当初の希望子ども数を実現する割合は約7 割



マクロにみれば,出生率の低下は雇用・経済等の環境要因によることがわかります.

谷直樹
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by medical-law | 2013-03-22 03:35 | 福祉

3月21日「世界ダウン症の日」に,日本ダウン症協会が学会に要望書を提出

b0206085_2237471.jpg財団法人日本ダウン症協会は,2013年3月21日の「世界ダウン症の日」に,日本産科婦人科学会の『母体血を用いた新しい出生前遺伝学的検査に関する指針』の指針に関して学会に要望書を提出しました.

日本ダウン症協会の見解は要約すると以下の3点です.

・母体血を用いた出生前遺伝学的検査は今後あらゆる遺伝子の変化を対象に広げうるものであるにもかかわらず,3つのトリソミーのみを対象として指針が作成されたことに対し異議を唱え、改めて国民すべてに開かれた議論がなされることを望みます。

・ダウン症のある人の普通の生活の姿を知らずに、ダウン症であることが「不幸」であるという誤った認識を正すよう努力してきましたし、これからも努力を続けていきます。

・当協会は、この検査が現に生きているダウン症のある人の差別につながることを強く危惧しています。

日本ダウン症協会の要望は要約すると以下のの2点です.

・ピアカウンセリングの実施を推進

・ダウン症のある人々の実生活を知るための医師向けセミナー等の企画・実施


谷直樹

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by medical-law | 2013-03-22 03:12 | 医療

日本人の糖尿病の食事療法に関する日本糖尿病学会の提言

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一般社団法人日本糖尿病学会は,2013年3月18日,「日本人の糖尿病の食事療法に関する日本糖尿病学会の提言 ~糖尿病における食事療法の現状と課題~」を発表しました.

交通手段の発達などによる身体活動の低下に加えて,脂質栄養の過剰摂取が日本人における肥満そして糖尿病の増加に大きく関与しているのではないかと考えられている,とのことです.

「生活習慣病の食事療法を論じるに際しては、日本人の身体活動度の変化と、食生活の変容を総合的に考慮しなければならない。その上で、患者が家族をはじめとする社会生活の中で、食を楽しみながら食事療法を実践・継続していくことを勘案すると、現時点では日本人がこれまで培ってきた伝統的な食文化を基軸にして、かつ現在の食生活の変化にも柔軟に対応していくことが重要である。
また、日本人の糖尿病の病態が欧米化しつつある現在、日本人の病態と嗜好性に相応しい食事療法の継続的な検討が必要である。食事療法は実行され、継続できなければ意味をなさない。」
と現実的です.

「栄養素組成のみにとどまらず、食事療法の実践を促すマテリアルあるいはチームケアの在り方についても、さらに調査・研究を要する。
食事療法は、患者の病態・嗜好性に応じて、医師・管理栄養士などの医療従事者が患者と共に考え、それが有効かつ安全に実践されていることを常にモニターしていく必要があり、その中から、新しいエビデンスを構築していかなければならない。」
とまとめています.

炭水化物ダイエットについては,「総エネルギー摂取量を制限せずに、炭水化物のみを極端に制限して減量を図ることは、その本来の効果のみならず、長期的な食事療法としての遵守性や安全性など重要な点についてこれを担保するエビデンスが不足しており、現時点では薦められない。」としています.

基本的には,「糖尿病における三大栄養素の推奨摂取比率は、一般的には、炭水化物50~60%エネルギー(150g/日以上)、たんぱく質20%エネルギー以下を目安とし、残りを脂質とする。」とのことです.

個別の考慮もなされており,以下のとおりです.

「身体活動量が多い場合には、炭水化物の摂取比率を60%エネルギー以上に高めることも考慮されるが、食後高血糖や単純糖質の過剰摂取などには十分な注意が必要である。」

「腎障害や脂質異常症の有無に留意して、たんぱく質、脂質の摂取量を勘案し、大きな齟齬がなければ、患者の嗜好性や病態に応じて炭水化物の摂取比率が50%エネルギーを下回ることもありうる。」


つまり,患者の嗜好性も考慮の一つにはいったのです.

「脂質摂取比率の上限は可能な限り25%エネルギーとするが、n-3系多価不飽和脂肪酸の摂取量を増やし、トランス脂肪酸の摂取を抑えるなど、脂肪酸構成にも十分な配慮が必要であり、その場合の総脂質摂取量については検討を要する。」

「たんぱく質については、糖尿病患者の高齢化に伴い、潜在的な腎障害の合併例が増していることに留意し、CKDにあってはその指針に従う。」

「炭水化物摂取量の多寡によらず、食物繊維は20g/日以上の摂取を促す。」

「食塩制限は、高血圧合併例では6g/日未満とする。」

「これらの基準は2型糖尿病を対象としたものであって、1型糖尿病では病態に合わせて別個に検討を要する。」


谷直樹

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by medical-law | 2013-03-22 02:30 | 医療