弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

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防衛医科大学,歯科口腔外科の講師を論文データ虚偽記載で停職11日

読売新聞「防衛医大講師、論文データ虚偽記載で停職」(2013年7月22日)は,次のとおり報じました.

防衛医大(埼玉県所沢市)は22日、下あご手術に関する論文3本にデータの改ざんや捏造ねつぞうが計7件みつかったとして、同大病院歯科口腔こうくう外科の××××講師(63)を停職11日の懲戒処分にしたと発表した。

 同大によると、昨年12月、××講師の論文に虚偽記載があると指摘があり、学内の調査委員会が事実関係を調べた。その結果、海外の学術誌に昨年掲載した下あご手術に関する論文に、複数人で行った手術を「1人で実施した」と記載したほか、同大倫理委員会の承認を受けずに論文3本を発表するなど4件の捏造を行った。このほか10年以上前にかかわった手術のデータを再計算せずに協力者に無断で転載するなど3件の改ざんがみつかったという。」


時々,このように医学研究者の不正行為が報じられますが,氷山の一角でないことを願います.
懲戒解雇の例もありますが,本件は違法性が比較的軽微と判断されたのか,停職11日です.

谷直樹

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by medical-law | 2013-07-22 23:29 | コンプライアンス

東京済生会中央病院,バルサルタン(ディオバン錠)採用中止

東京済生会中央病院は,平成25年7月22日,以下のとおり,「バルサルタン(ディオバン錠)採用中止のお知らせ」をサイトに掲載しました


「すでに新聞やテレビなどのマスコミで広く報道されていますが、ノバルティスファーマ(株)が製造販売している降圧薬であるバルサルタン(ディオバン錠)に関する国内で行なわれた臨床試験の信頼性が問題となっています。

  この臨床試験はバルサルタンの市販後に医師主導臨床研究として行なわれたもので、現在、特に問題とされているのは京都府立医大が中心となって行なわれたKyoto Heart Studyです。この研究は、通常の降圧薬治療群と通常治療にバルサルタンを追加した群との間で脳卒中や狭心症などの血管障害の発生率に差があるかどうかを調べたものです。その結果、バルサルタンを加えることにより血管障害の発生率が明らかに低下するという良い結果が報告されました。しかし、今年になってこの研究に当時ノバルティスの社員であった者が身分を明かさずに参加し、しかも統計解析など試験結果を導くうえで重要な業務に関わっていたことが明らかになりました。これを受けて、この研究結果を発表した5つの論文が海外誌を含めた医学雑誌から掲載を削除されました。

 京都府立医大はこの研究の信頼性について独自の調査を行ってきましたが、7月11日に調査の結果を発表し、この研究ではデータの改ざんが行なわれた可能性があること、ならびにバルサルタンが血管障害の予防に有効であるとした結論に誤りがある可能性が高いことを発表しました。

 バルサルタンは降圧薬として降圧効果があることは間違いありません。しかし、バルサルタンの特徴とされてきた血管障害の発生を予防する効果について疑問が提出されたこと、また、Kyoto Heart Study以外にも同様の結果を発表した国内の臨床試験にやはり上記の人物が関わっていたことも明らかになっていることから、同種薬剤が多数存在する中であえてバルサルタンを処方する理由は少ないと言えます。また、特徴とされてきた効果に疑問が提出されている薬剤を漫然と使用することは倫理的にも問題がありますので、当院では8月5日(月)からバルサルタンを含むディオバン錠、コディオ配合錠、エックスフォージ配合錠の採用を中止することに決定しました。したがって、上記の薬剤を服薬中の患者さんは次回処方時より代替薬へ処方変更をさせていただきますので、ご了解のほどよろしくお願いいたします。なお、この薬剤の降圧薬としての効果と安全性には問題はありませんので、処方変更時まで服用を急に中止することは危険ですので絶対にお止め下さい。

 今回の件では多大なご心配とご迷惑をおかけして大変申し訳ありません。疑問な点がございましたら、当院薬剤部担当者、または担当医までご遠慮なくお問い合わせ下さい。」


たしかに,疑惑の薬剤を敢えて使用し続けることはありませんね.
病院の見識を示した対応と思います.


谷直樹

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by medical-law | 2013-07-22 20:32 | 医療

中村航氏著『星に願いを、月に祈りを』

中村航氏の『星に願いを、月に祈りを』が,最近文庫本になりましたので,移動中に読みました.
2つの話が交互に進行し,つながるところは,村上春樹氏の『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』を想起します.交互に同時進行するのは,読書と現実も同じです.電車に乗り文庫本を開くと,物語が始まり,電車が目的の駅に着くと物語は中断し,現実世界が始まり,また電車に乗ると物語が始まる・・・というように.
この本は,時間をかけ,ゆっくり読むほうがよいと思いました.

こと座α星のベガ (Vega),わし座α星のアルタイル(Altair),そして,はくちょう座α星のデネブ(Deneb)は,夏の大三角形を形作ります.
ベガとアルタイルは若い星で,それを優しく見守るデネブは白色超巨星です.
それが,この物語の構図です.

第1章は,小学5年生の大介の視点から,キャンプの不思議な一夜が語られます.中村氏の文章に引き込まれます.
星空放送局は,クリフ・エドワーズでWhen You Wish Upon A Starをかけます.

第2章は,中学生になり,野球部員となったアキオの視線から,語られます.
〝君はいつの日か、君が本当に届けたい人に、本当に届けたい何かを届けるんだ〟
アキオの使命が明かされます.

挿話を挟んで,第3章は,半袖セーラー服の見知らぬ少女(ミニー)の押す「ぽーん」で「僕」(掌ほたる)が起こされるところから始まります.
この「ぽーん」は,マーラーの交響曲第6番イ短調のハンマー?
交響曲第6番イ短調の第3楽章の主題は「亡き子をしのぶ歌」に似ています.

「うん・・・・・・、そうだね・・・・・・、と、僕はつぶやく。
うん・・・・・・、そうだよ・・・・・・、わかった、と、大切な人はつぶやく。
ありがとう・・・・・・、行くよ・・・・・・、と、僕はつぶやく。
そっか・・・・・・、そうだね・・・・・・、と、大切な人はつぶやく。」

素晴らしい第1章と第2章は,この第3章のためにあったことがわかります.

第4章は,最近の話です.

「ぽーん♪」

「ピアノの一番右の白鍵を押すと、硬い木を叩いたような音が鳴った。八十八鍵最後の響きは、最も短い時間で減衰する。だからこの音は、八十八鍵のなかで、一番寂しい音だ。一番寂しくて、一番切なくて、一番祈りに近い音だ。」

そして,23歳の里崎美紀は,モーツァルトのきらきら星変奏曲を演奏します.

「どうか君の夜空に、優しい星が流れますように-。」


谷直樹

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by medical-law | 2013-07-21 13:25 | 趣味

髙橋譲判事編著『医療訴訟の実務』

最近,商事法務から髙橋譲判事編著の『医療訴訟の実務』が出版されました.
執筆者のほとんどが医療集中部に在籍した又は在籍している判事と判事補の方々ですが,東京医科歯科大学教授の高瀬浩造氏,弁護士の児玉安司氏,弁護士の安原幸彦氏も執筆しています.
広く読まれてきた秋吉仁美判事編著『医療訴訟』(青林書院,2009年)と同様に,本書も医事訴訟にたずさわる弁護士にとっては,必読の書と言えるでしょう.

谷直樹

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by medical-law | 2013-07-18 22:13 | 医療事故・医療裁判

シダーズ・サイナイ医療センター,プライバシーの侵害を理由にスタッフ6名を解雇

O・J・シンプソン事件裁判の弁護人弁護士ロバート・カーダシアン氏の娘でタレントのキム・カーダシアン氏は,LAのシダーズ・サイナイ医療センター(Cedars-Sinai Medical Center)で先月長女を出産しました.一泊4000ドル以上のスイートルームに少なくとも3泊すると報じられていました.AFP「キム・カーダシアン、出産費用は総額で1億円以上に?!」参照

Los Angeles Timesは,シダーズ・サイナイ医療センターは, キム・カーダシアン氏を含む患者14人分の医療記録についてのプライバシー侵害行為を理由として,スタッフ6名を解雇した,と伝えたそうです。

同病院は,過去にも有名人の医療記録への不正アクセス事件がありましたから,病院の信用を守るために解雇は必要だったのでしょう.


谷直樹

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by medical-law | 2013-07-16 20:13 | コンプライアンス

けいゆう病院,患者情報が記録されたノートパソコンの盗難

一般財団法人神奈川県警友会けいゆう病院のサイトに,2013年7月16日,「患者情報が記録されたノートパソコンの盗難について」が掲載されました.

「当院の医師が、平成25年7月6日土曜日未明、駐車中のマイカーの中からノートパソコンを盗まれる事案に遭いました。
このパソコンには、パスワードが設定されていましたが、当院等の患者様約300名のID、氏名、年齢、性別などがパソコン内のハードディスクに記録されておりました。所轄の警察署に被害届を提出しましたが、パソコンは現在まで発見されておりません。

このことについて、該当する患者様には、説明とお詫びをしております。また、緊急の対策会議を開催した後、監督官庁である横浜市等へ報告しました。

今回の事案を厳粛に受け止め、二度とこのような事が起きないよう、全職員に対して、個人情報の取扱いに関する指導を周知徹底してまいります。」


他の病院でも,以下のとおり個人電磁情報の紛失事故が報じられています.安全のために費用をかけ,システムを整備することが必要でしょう.


◆ 2011年6月以降の個人電磁情報の紛失事故

2011年 6月
慶應義塾大学病院スポーツ医学総合センター
北海道大学病院

2011年7月
医療法人 柏堤会(財団) 戸塚共立第1病院
藤田保健衛生大学病院
昭和大学歯科病院

2011年8月
筑波メディカルセンター病院

2011年9月
千葉県精神科医療センター
鹿児島大学病院

2011年10月
JA茨城県厚生連茨城西南医療センター病院
独立行政法人国立病院機構三重中央医療センター
独立行政法人労働者健康福祉機構関東労災病院
大和市立病院

2011年11月
独立行政法人国立病院機構金沢医療センター

2012年1月
医療法人聖愛会
独立行政法人国立病院機構千葉医療センター
独立行政法人国立病院機構宇多野病院
東京女子医科大学附属八千代医療センター

2012年2月
京都府立洛南病院(ただし一時紛失)
岡山大学病院
藤沢市民病院
長崎大学病院

2012年3月
日本赤十字社医療センター
国立大学法人高知大学医学部

2012年4月
ごう在宅クリニック(札幌)
静岡県立病院機構静岡県立総合病院
広島大学病院
福岡大学病院

2012年5月
福岡大学病院

2012年7月
日本大学歯学部付属歯科病院

2012年8月
名古屋大学医学部附属病院

2012年9月
沖縄県立中部病院
福岡歯科大学医科歯科総合病院

2012年10月
医療法人社団恵仁会セントマーガレット病院
東京医科大学病院
昭和大学病院附属東病院
浜松医科大学医学部付属病院,浜松医療センター

2012年11月
九州大学病院
東京慈恵会医科大学附属柏病院

2013年2月
札幌医科大学附属病院

2013年3月
東京医科歯科大学歯学部附属病院

2013年4月
昭和大学歯科病院

2013年5月
市立岸和田市民病院

2013年7月
順天堂大学医学部附属順天堂医院
東京女子医科大学病院
一般財団法人神奈川県警友会けいゆう病院

谷直樹

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by medical-law | 2013-07-16 19:28 | コンプライアンス

クリムトの『哲学』『医学』『法学』の喪失

7月14日は,グスタフ・クリムトの誕生日です.

ウィーン大学の天井画として政府から依頼された『学部の絵』3部作『哲学』『医学』『法学』は,西欧的知を賞賛するものではなかったため,激しい論争を巻き起こし,クリムトの側から契約解除を申し出,他に売却されましたが,後にナチスにより没収され,ナチスの親衛隊撤収の際の放火により焼失しました.
人間と思考に向き合う哲学,病と死に向き合う医学,罪と不正に向き合う法学を,それぞれ絵画にすれば,このような表現になるのもわかる気がします.
モノクロの写真では暗い印象をうけますが,クリムトの独特の色彩は人を惹きつけたことでしょう.
3部作が失われたことはとても残念なことです.

谷直樹

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by medical-law | 2013-07-14 19:18 | 趣味

いちごのカレー

昨日,宇都宮地裁で尋問がありました.帰りに,「いちごのカレー」を買いました.
冒険ではありますが,酸っぱいものが好きな人なら大丈夫でしょう.


谷直樹

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by medical-law | 2013-07-12 22:00 | 出張

東京女子医科大学病院,患者の個人情報が記録されたUSBメモリー所在不明

東京女子医科大学病院のサイトに,2013年7月9日,「患者さんの個人情報が記録されたUSBメモリーの所在不明について」が掲載されました.

「このたび、患者さんの個人情報が記録されたUSBメモリーが院内において、平成25年7月1日より所在不明となる事例が発生いたしました。所在不明のUSBメモリー内には、腎臓内科において平成13年9月3日から平成25年7月1日までの期間における4,292人の入院患者情報(患者氏名、登録番号、入院病名、入院目的、入退院日、担当医)が記録されていることが判明しております。但し患者さんの生年月日、住所および電話番号の情報については、記録されておりません。」
「今後、全病院職員に対し個人情報の取扱いに関して、再度の周知徹底を図るとともに、当該者には院内規程に基づき、厳正に対処致しました。」


パスワードによるアクセス制限,ファイルの暗号化は,行われていたのでしょうか?
「所在不明」という発表ですが,捜索は徹底的に行われたのでしょうか?
患者の個人情報が記録されたUSBメモリーの紛失が,その個人の責任というより,病院の情報管理システムの問題と思います。
その意味で,個人対する厳正対処は疑問です.周知徹底だけで,再発防止が可能とは思えません.
再発防止策のための管理システム上の改善(例えば,自動的に暗号化されるシステムにするなど)は検討されているのでしょうか?
過去にも,以下のとおり個人電磁情報の紛失事故が報じられています.システムそのものの改善が必要でしょう.


◆ 2011年6月以降の個人電磁情報の紛失事故

2011年 6月
慶應義塾大学病院スポーツ医学総合センター
北海道大学病院

2011年7月
医療法人 柏堤会(財団) 戸塚共立第1病院
藤田保健衛生大学病院
昭和大学歯科病院

2011年8月
筑波メディカルセンター病院

2011年9月
千葉県精神科医療センター
鹿児島大学病院

2011年10月
JA茨城県厚生連茨城西南医療センター病院
独立行政法人国立病院機構三重中央医療センター
独立行政法人労働者健康福祉機構関東労災病院
大和市立病院

2011年11月
独立行政法人国立病院機構金沢医療センター

2012年1月
医療法人聖愛会
独立行政法人国立病院機構千葉医療センター
独立行政法人国立病院機構宇多野病院
東京女子医科大学附属八千代医療センター

2012年2月
京都府立洛南病院(ただし一時紛失)
岡山大学病院
藤沢市民病院
長崎大学病院

2012年3月
日本赤十字社医療センター
国立大学法人高知大学医学部

2012年4月
ごう在宅クリニック(札幌)
静岡県立病院機構静岡県立総合病院
広島大学病院
福岡大学病院

2012年5月
福岡大学病院

2012年7月
日本大学歯学部付属歯科病院

2012年8月
名古屋大学医学部附属病院

2012年9月
沖縄県立中部病院
福岡歯科大学医科歯科総合病院

2012年10月
医療法人社団恵仁会セントマーガレット病院
東京医科大学病院
昭和大学病院附属東病院
浜松医科大学医学部付属病院,浜松医療センター

2012年11月
九州大学病院
東京慈恵会医科大学附属柏病院

2013年2月
札幌医科大学附属病院

2013年7月
東京女子医科大学病院


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by medical-law | 2013-07-12 05:27 | コンプライアンス

静岡市立清水病院,カテーテル抜去時の脳空気塞栓症発症を公表せず,訴訟へ(報道)

読売新聞「 患者死亡、医療ミスか 静岡市立清水病院」(2013年7月10日)は次のとおり報じました.

「静岡市立清水病院(静岡市清水区)で今年1月、透析治療を受けていた静岡市の無職男性(当時83歳)の首の静脈に挿入された管(カテーテル)を抜き取る際、誤って静脈に空気を注入させる医療事故が起きていたことがわかった。男性は約1か月後、脳空気塞栓(そくせん)症で死亡。同院は遺族に医療ミスを認め、慰謝料など計約2000万円を支払う意向を示しているが、事故を公表していない。遺族は同院に損害賠償を求める訴訟を起こすとともに、県警に業務上過失致死容疑で刑事告訴する方針だ。

 同院が遺族に提出した資料によると、今年1月21日、急性腎不全を患い同院に入院していた男性の透析治療を終わらせるため、首の静脈に挿入されたカテーテルを抜いた。男性は約10分後、病室へ戻る途中に意識を失い、検査の結果、脳空気塞栓症と診断された。男性は市内の別の病院に搬送され、治療を受けたが意識は戻らず、2月22日に死亡した。搬送先の病院が作成した死亡診断書では、死因は「透析用カテーテルを抜いた時に発症した脳空気塞栓症」だった。

 遺族の代理人の青山雅幸弁護士によると、遺族は3~4月頃、市立清水病院側から「カテーテルを抜いた際の事故と考えている」と説明され、謝罪された。そのうえで、慰謝料や葬儀代を含む計約2000万円の賠償金を提示され、「今回の事故は和解でお願いしたい」と求められたという。

 同院医療安全管理室は9日、読売新聞の取材に対し、男性が院内で脳空気塞栓症を発症し、死亡した事実は認めたが、「個別の患者に関するコメントは差し控えたい」とした。

 同室によると、同院では医療事故の公表基準が明文化されておらず、公表するか否かは「調査結果を踏まえ、院長が判断する」という。今回の事案については「総合的に判断した結果、公表しなかった」と説明した。

 一方、男性の長男は「別の病院へ搬送する対応も遅かった。医療事故を慰謝料で片付けようとしている。『県警に事故を届け出る』と伝えても公表せず、誠実な対応ではない」と話している。

《脳空気塞栓症》 外傷や手術で傷付けられた血管から大量の空気が入り血行を止める症状。静脈にカテーテルを抜き差しする際、カテーテルを固定するクリップや患者の姿勢などの手順を誤ると空気が入りやすくなるため、マニュアルを策定する病院が多い。」


病院がすすんで医療事故を公表していれば,こうはならなかったでしょう.
約2000万円の金額に不服というより,病院の対応そのものに憤りを覚えたのでしょう.
なお,83歳無職男性ですから,慰謝料が大きな部分を占めると思いますが,生きていれば受け取ることができた年金については(生活費控除率を何%とみるかの問題はありますし,遺族年金を引かねばなりませんが)逸失利益が認められると思います.


【追記】

msn産経「市立清水病院で医療事故 死亡男性の遺族 「無念だったと思う」」(2013年7月11日) は,次のとおり報じました.

「今年1月に静岡市立清水病院で人工透析治療を受けた直後に意識不明となり、約1カ月後に死亡した同市の男性(83)の遺族が10日記者会見し、透析終了後に静脈からカテーテルを抜き取る際、誤って静脈に空気が注入される医療事故があったと訴えた。病院側は医療事故を認めて謝罪し、男性の遺族に慰謝料など約2千万円を支払うことで和解を申し出たが、事故の公表について拒否したという。

 遺族側の説明によると、男性は昨年12月に急性腎不全で同病院に入院。人工透析などの治療で順調に回復し、退院も決まっていた。しかし、1月21日に透析治療を受けた後、病室へ戻る途中で意識を失ったという。男性は血管に空気が入って血流が遮断される「脳空気塞栓(そくせん)症」と診断され、治療設備のある市内の別の病院へ搬送されたものの意識が戻らず、約1カ月後の2月22日に死亡した。

 死亡した男性の長男は「父は1カ月間植物状態になった。無念だったと思う」と怒りをあらわにし、遺族側の青山雅幸弁護士も「医療ミスによる死亡事故を起こしながら、警察や行政機関への届け出がなく、公立病院としての姿勢を疑う」と批判。病院側の説明を聞いた上で、業務上過失致死容疑での刑事告訴も検討するという。

 同病院の医療安全管理室の担当者は、医療事故を認めた上で、「市には医療事故の公表に関して基準がなく、今回は院長の判断で公表しなかった。カルテなどの情報開示請求があれば応じていきたい」と話した。]


読売新聞「救急車、別病院に到着…清水病院医療事故」(2013年7月11日)は,次のとおり報じました.
 
「静岡市立清水病院(清水区)で静岡市の男性(当時83歳)が医療ミスのために死亡した事故で、同院が意識不明となった男性を別の病院に搬送しようと市消防局に通報した際、連絡ミスで救急車が誤って市立静岡病院(葵区)に到着していたことが10日、市消防局への取材でわかった。男性の搬送は約10分遅れたという。同院と市消防局は遺族に「救急指令に誤りがあった」と認めて謝罪している。

 事故は今年1月、透析治療を受けていた男性の首から静脈に挿入された管(カテーテル)を抜き取る際、同院のミスで血液中に空気が入り込み、男性が脳空気塞栓(そくせん)症を発症し、約1か月後に死亡したもの。

 市消防局などが遺族に開示した記録によると、今年1月21日、同院は男性が意識不明に陥ってから約1時間半後に同症と診断。専門治療が可能な市内の別の病院へ搬送するため市消防局の一般電話に通報した。この際、対応した市消防局の職員から「市立静岡(病院)か」と念押しされ、同院は「そうです」と間違えて返答したという。市消防局は、救急車が市立静岡病院に到着後に間違いに気付き、別の救急車を出動させた。

 県内の複数の医師によると、同症は意識不明に陥ってから2~3時間以内に専門治療を施せば効果的とされる。記録によると、男性は意識不明になってから約3時間後、搬送先の病院で専門治療が始められた。

 男性の長男は「医療ミスが起きた後、迅速な対応がされていれば、父は助かったかもしれない」と話している。

■静岡市長が定例会見「誠意もって対応」

 静岡市の田辺信宏市長は10日の定例記者会見で、静岡市立清水病院で起きた医療事故について「とにかく遺族に誠意をもって対応したい。医療事故後の危機管理について検討を深めなければいけない」と述べた。

 田辺市長は、同院が事故から約半年間、事実を公表しなかったことにも言及。「今までの公表基準にのっとって病院側が対応したと信頼している」との考えを示した。「院長が総合的に判断する」という同院の医療事故の公表基準の見直しについては「検討しておく」と述べるにとどめた。」



谷直樹

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by medical-law | 2013-07-10 07:24 | 医療事故・医療裁判