弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

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「JT、財務省、たばこ利権 ~日本最後の巨大利権の闇~」

日本で初めて受動喫煙防止条例を制定した前神奈川県知事(現参議院議員)の松沢成文氏が,「JT、財務省、たばこ利権 ~日本最後の巨大利権の闇~」(ワニブックスPLUS新書 定価800円+消費税)を書きました.
財務省とJTの癒着が分かりやすく書かれています.

目次は以下のとおりです.

第1章 日本特有の異常なたばこ利権構造
第2章 日本が守れない国際条約がある
第3章 たばこ税とJT株配当金をめぐる財務省の内幕
第4章 財務省を自在に操るJT
第5章 葉たばこ農家は生き残れるか
第6章 たばこ流通もJTの独壇場
第7章 巧妙なJTの世論操作
第8章 「侵略する」JTの海外戦略
第9章 たばこ産業の構造改革を断行せよ!

谷直樹

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by medical-law | 2013-10-22 02:08 | タバコ

ディオバン問題,JIKEI HEART Studyのカプランマイヤー曲線の誤り

イベント発生率と追跡症例数に明らかな食い違いがあり,カプランマイヤー曲線と表記しながらも,単純にイベントの発生を足し算した図がLANCET誌に掲載され,JIKEI HEART Studyのメイン結果を示すものとされていた,とのことです.


ミクス「ディオバン問題 JIKEI HEART Study LANCET誌掲載のメイン図表に重大な誤り」2013年10月21日)

「降圧薬・ディオバン(一般名:バルサルタン)をめぐり、東京慈恵会医科大学などで実施された大規模臨床試験「JIKEI HEART Study」で、医学誌「The LANCET」に掲載されたメイン図表のカプランマイヤー(Kaplan-Meier)曲線(図1)に重大な誤りがあることが明らかになった。問題となる誤りは2点。一つ目は、カプランマイヤー曲線と図中の症例数に不一致がみられること。二つ目は、この曲線が厳密にいえば、“カプランマイヤー曲線”とは言い難い点だ。本来カプランマイヤー曲線は、時間の経過に伴うリスクの推移を考慮に入れ、累積イベント発生率を検証する。つまり、予測値が含まれて累積イベント発生率が記載されるのだが、LANCET誌に掲載された図は単なるイベント発生率を示しているに過ぎなかった。このカプランマイヤー曲線は、JIKEI HEART Studyのメイン結果を示すもの。LANCET誌からこの論文が撤回されるまでの約7年間、医学界を通じ、誤った情報が提供され続けてきたことになる。


カプランマイヤー曲線と症例数に不一致が見られるのは、主要評価項目である複合心血管イベントの発生率を図示した追跡開始42~48か月時点。42か月から48か月時点はともに368例で、脱落がみられていない。一方で、48か月時点にかけ、バルサルタン群のイベント発生率は増加がみてとれる。


カプランマイヤー法では、イベントを起こした症例を分母から抜くことで、イベントを起こした人が脱落せずに追跡されているのであれば、どれくらいのイベント発生率なのか正確に見積もることが可能になる。通常、症例数の変化がみられなければ、イベントの増加はみられないことになる。


逆に、イベント発生のほか、追跡不能などによる脱落や、追跡期間を終了した場合は、症例数が減少する。つまり、イベントが発生した段階で症例数が減少しないケースは想定できないのだ。今回LANCETに掲載されたカプランマイヤー曲線は、イベント発生率と元データであるはずの追跡症例数が一致していなかった。


では、この不一致は何を意味するのか。JIKEI HEART Studyの主任研究者らがLANCETに掲載された論文を改編して作成した副次評価項目のカプランマイヤー曲線(図2・日経メディカル2007年6月号ノバルティス ファーマ提供特別広報版)をみる。主要評価項目を構成するイベントのうち、本誌が入手したカプランマイヤー曲線は、①脳卒中、②入院を必要とする狭心症の新規発症または増悪、③入院を必要とする心不全の新規発症または増悪、④解離性大動脈瘤-の4種類。このうち42~48か月の間にイベント発生率の上昇がみられたのは、脳卒中のみ。そのほかの副次評価項目のカプランマイヤー曲線には、イベント発生率の上昇は認められなかった。


◎統計解析の専門家 「自分が解析したのであれば、違う図には気づくだろう」


このデータを見た統計解析の専門家は、主要評価項目を示したカプランマイヤー曲線について、イベント発生率と追跡症例数に明らかな食い違いが存在すると指摘。「単なるヒューマンエラーである可能性も否定はできない」とも述べた。その上で、仮に元社員が厚労省検討会のヒアリングで指摘した「異なるカプランマイヤー曲線が使用されていた」との発言に絡めて考えるならば、「他の人は気が付かなくても、自分が解析したのであれば、違う図が掲載されていることには気づくだろう」と語った。


◎もう一つの誤り、カプランマイヤー曲線とは言い難い図


一方で、この曲線が“カプランマイヤー曲線”とは言い難い図であることも明らかになった。本来カプランマイヤー曲線は、時間の経過に伴うリスクを図示したもので、リスクが起こる“予測”を含んだ形で描かれる。例えば、48週時点の累積イベント発生率を検討する場合、24週で追跡終了となった患者は分母から除き、その人が脱落せずに追跡された場合を考慮したイベント発生リスクを図示する。そのため、最終的な累積イベント発生率は、その時点までのイベントの発生を「足し算」するのではなく、起きるリスクを「掛け算」することになる。


その結果、通常カプランマイヤー曲線で示された累積イベント発生率は、実際のイベント発生率よりも大きな値となる。しかし、同試験の結果では、イベント発生率とカプランマイヤー曲線での累積イベント発生率の値が完全に一致していることが分かった。つまり、カプランマイヤー曲線と表記しながらも、単純にイベントの発生を足し算した図がLANCET誌に掲載されていたのだ。本来、カプランマイヤー曲線であるならば、図中で用いる用語も、本来“probability of events”と表記すべきである。ところがLANCET誌に掲載された図は“event rate(イベント発生率)”と記されている。これらを見ても、“統計解析の専門家”が行った解析とは考えづらい、初歩的な“ミス”が試験のメインであるはずのカプランマイヤー曲線にはあった。


【解説】大規模臨床試験のカプランマイヤー曲線をどう読み解くか


編集部ではカプランマイヤー曲線に着目して取材を行った。背景には、統計解析を実施したノバルティスの元社員は、厚労省の高血圧症治療薬の臨床研究事案に関する検討委員会(森嶌昭夫委員長)のヒアリングで、自らが研究者からの依頼で作成した図ではなく、「論文にはそれとは異なるカプランマイヤー曲線が使用されていた」と証言していることがある。


今回、JIKEI HEART Studyのカプランマイヤー曲線の誤りを指摘した。統計解析の専門家や当該試験に関わった研究者でない限り、ここに刻み込まれた意味を解読するのは難しい。編集部でも深層に迫れば迫るほど、この問題の奥深さを感じることになった。


一方で、取材を通じて、いくつかの疑問を感じるようになった。本誌が主要評価項目を構成するイベントのうち、カプランマイヤー曲線が入手できたのは、①脳卒中、②入院を必要とする狭心症の新規発症または増悪、③入院を必要とする心不全の新規発症または増悪、④解離性大動脈瘤-の4種類。時間経過を追うと、脳卒中と入院を要する心不全は、試験開始後18か月からカプランマイヤー曲線のかい離が始まる。特に脳卒中は、28~42か月までの1年以上イベントの発生がみられていない。主要評価項目のカプランマイヤー曲線で指摘したイベント発生率の増加は2例程度と、本誌取材に応じた統計解析の専門家はみる。


同試験では、通常治療にディオバンを上乗せすることで、“脳卒中発生率を40%低下する”ことが強力なメッセージとして発信された。脳卒中は日本人で発症率が高いことに加え、これまで行われてきた大規模臨床試験では達成できなかった有用性を示したからだ。


当時、ARBの脳卒中発生抑制効果を示した大規模臨床試験としてLIFE(Lancet. 2002; 359: 995-1003)とMOSES(Stroke. 2005; 36: 1218-26)の2試験があった。MOSESは、ARBとCa拮抗薬を直接比較し、ARBの優位性を示したが、脳卒中発生抑制効果は25%だった。一方で、ディオバンとCa拮抗薬・アムロジピンの効果を直接比較したVALUE(Lancet. 2004; 363: 2022-31)では、主要評価項目である複合心血管イベントでは有意差は認められず、脳卒中の発生抑制効果は、アムロジピン群を下回っている。


JIKEI HEART Studyの共同主任研究者であるBjorn Dahlof氏は「カプランマイヤー曲線の解釈には慎重さが必要だ」(日経メディカル2007年6月号ノバルティス ファーマ提供特別広報版)と語っている。私も取材を通じて実感した。カプランマイヤー曲線だけで、臨床試験の全てを読み解くことはできない。


ただ、大切なことは、今回LANCETに掲載された論文の中で、メインの結果であるカプランマイヤー曲線に重大な誤りがあった点だ。例えヒューマンエラーであったとしても見逃すことはできない。何故なら、このカプランマイヤー曲線は、医学界を通じ、様々な場所で紹介され、その結果として臨床医が処方を選択する上での決め手の1つとなってきたからだ。


厚労省検討委員会の中間報告や東京慈恵会医科大学JIKEI Heart Study調査委員会(橋本和弘委員長)の報告書は、サイエンスからの視点が乏しい。これ以上の真相究明には、根拠となる全てのデータを入手しない限り不可能とも言える。一連のディオバン問題を紐解くカギ。それは、サイエンスが握っているといっても過言ではない。今回のJIKEI HEART Studyの問題を解明する一歩として、サイエンスの視点からこのデータの真相究明を進めるために一石を投じたい。
(Monthlyミクス編集部 望月英梨)」



なお,カプランマイヤー曲線については, 新谷歩氏(米国ヴァンダービルト大学准教授・医療統計学)の解説がわかりやすいです.



谷直樹

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by medical-law | 2013-10-21 09:41 | コンプライアンス

PRACがritodrine等の短時間作用型β刺激薬について産科領域での適応制限を勧告

日本では、切迫流・早産に、ウテメリン錠5mg(一般名リトドリンritodrine)が用いられています.

EUでは、短時間作用型β刺激薬fenoterol,hexoprenaline,isoxsuprine,ritodrine,salbutamol,terbutalineに早産防止の適応があります.

EMAのファーマコビジランス・リスク評価委員会(PRAC)が,これらの短時間作用型β刺激薬について検討した結果、2013年9月6日、早産防止や過度の分娩収縮の抑制などの産科適応において,経口剤または坐剤の短時間作用型β刺激薬Aを今後使用すべきではない、と勧告しました.

国立医薬品食品衛生研究所・安全情報部の「医薬品安全性情報(海外規制機関 )Vol.11 No.21」(2013年10月10日」は、次のとおり伝えています.

「短時間作用型β刺激薬を,早産防止薬として特に長時間(48時間以上)使用した場合の心血管リスクとベネフィットのバランスに関して,懸念が提起された。
PRACは臨床研究,市販後報告および公表文献の入手データを評価し,関連する治療ガイドラインを検討した。PRACは,短時間作用型β刺激薬を産科適応で使用した場合,母親,胎児ともに重篤な心血管系副作用のリスクがあると結論した。また,データは,これらのリスクの多くが長時間使用で生じることを示唆していた。
産科適応での経口剤および坐剤の使用については,心血管リスクがあることと,早産防止薬として短時間または長時間使用した場合のベネフィットを支持するデータが非常に少ないことから,リスクがベネフィットを上回るとPRACは結論し,今後,産科適応で経口剤および坐剤は使用すべきではないと勧告した。」


厚生労働省はどのように対応するのでしょうか.

谷直樹

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by medical-law | 2013-10-21 02:49 | 医療

愛媛大学医学部附属病院,腹腔鏡補助下で腸管を逆向きにつないだことが約1年わからなかった事案(報道)

毎日新聞「手術ミス:小児の腸管、逆向き接続 10カ月症状改善せず−−愛大病院」(2013年10月19日)は,次のとおり報じました.

「愛媛大医学部付属病院(愛媛県東温市志津川)は18日、昨年10月に実施した小児患者の胆道再建手術で、腸管を逆向きにつないでいたと発表した。今年8月に気づき、正しくつなぎ直す手術をした。小児は回復し同月末に退院したが、この間の約10カ月は症状が改善せず、不要な2回の開腹手術を受けるなどした。

同院によると、小児は腹痛とおう吐で昨年9月に別病院に入院。同10月に転院で受け入れ、当時の担当医らが、疾患のある胆管を取り除き、小児自身の腸管の一部をつなぐ胆道再建手術をした。しかし、向きを間違えていたため回復が進まず、薬物治療や今年4月までに原因を探る2度の開腹手術をした。今年5月交代した担当医が、造影検査などでミスの可能性に気づいた。

同院は「腹腔鏡を使って手術していたが、切開口が小さく、腸管の膨張もあって十分な確認ができなかった」と説明。「多大な迷惑とご心労をかけ心よりおわびする。第三者委での調査を踏まえ、再発防止に努める」と謝罪した。【中村敦茂】」


愛媛大学医学部附属病院は,2013年10月18日,「平成25年8月に判明した医療過誤について(報告)」を発表しました.原因と再発防止策について,以下のとおり述べています.

「【医療過誤に至った原因】
1回目の手術時に、腸管が膨張していたことに加え,当時の担当医は,小さな切開創で手術を行う豊富を選択していたために、腸管の一などを十分確認できない状況でした。
そのため、胆管の代わりとして用いた腸管を逆向きにつなぐこととなりました。」

「【再発防止策】
小さい切開創で手術を行う場合、十分な視野が確保できない時は、大きく切開して手術操作部位を十分確認し、また、通常の経過ではない患者さんの治療方針は、担当チームだけの判断ではなく、関連の診療科チームとも情報を広く共有し、意見を交換して決定します。
今後、医療の安全管理意識を高める教育をより充実させ,このような事故の再発防止に努めて参ります。」



本件は,平成24年10月に1回目の手術を行っていますが,平成25年5月に担当医が変わるまで1回目の手術において腸管を逆向きにつないだ疑いは浮上しなかったようです.
もし担当チームだけではなく,関連の診療科チームとも情報を広く共有し,意見を交換することができていたなら,原因を探る2度の回復手術は不要だったと考えられます.
通常の経過ではない場合の診療について教訓とすべき事案と思います.

谷直樹

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by medical-law | 2013-10-20 04:22 | 医療事故・医療裁判

東京医科歯科大学医学部附属病院の医師,個人情報の不適正使用

東京医科歯科大学は,2013年10月18日,「個人情報の不適正使用について」を発表しました.

「1.経緯
本院医師が、学会において、患者さんの個人情報が含まれた複数の電子カルテ画面をスクリーンに投影しながら、発表したことが平成25年9月25日(水)に判明しました。当院に調査委員会を設置し、10月10日(木)にその結果をとりまとめました。

2.個人情報の内容
電子カルテ画面には、氏名、患者番号、生年月日、年齢、性別等が含まれていました。なお、住所、電話番号は掲載されておりませんでした。
現時点において患者さんの個人情報が流用されたなどの事実は報告されておりません。

3.該当する患者さんへの対応
関係の皆様にはお詫び状をお送りし、事情の説明と謝罪を行いました。

4.再発防止に向けた今後の取り組み
今回の事態を深く反省し、職員に対して個人情報保護の重要性を再度徹底させ、再発防止に努めてまいります。」


大学の発表では,このようなことがおきた原因については全くふれていません.
学会発表の準備fが大変で,医師は,映写するカルテ画面の点検まで十分できなかったのかもしれませんが,医師一人で準備していたのでしょうか.

谷直樹

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by medical-law | 2013-10-19 11:48 | コンプライアンス

「○○センター」という名称と日弁連規程

最近,インターネット上に弁護士会が運営する本家本元の「弁護士会の法律相談センター」以外にも,「○○法律相談センター」,「○○弁護士法律相談センター」,「○○無料法律相談センター」というような名称をみかけます.

弁護士あるいは弁護士法人が「○○法律相談センター」,「○○弁護士法律相談センター」,「○○無料法律相談センター」というような名称を使用したサイトを開設することは,日本弁護士連合会(日弁連)の規程上問題ないのでしょうか.

弁護士あるいは弁護士法人が,登録している「○○法律事務所」「弁護士法人○○」という名称以外に,別の名称を使用することは「複数の事務所名称を付すること」となり,許されていません.

日本弁護士連合会の「法律事務所等の名称等に関する規程及び外国法事務弁護士事務所の名称に関する規程の解釈及び運用の指針」(2013年3月14日理事会議決)は,「複数の事務所名称を付することに該当する例」として,「登録されている事務所名称と別に取扱い分野を表示する方法として「○○センター」、「○○相談所」等の表示を用いること。」をあげています.
したがって,弁護士あるいは弁護士法人が,登録されている事務所名称と別に「○○センター」「○○相談所」等別の組織,施設等の名称を用いることは,法律事務所等の名称等に関する規程第6条もしくは第13条又は外国法事務弁護士事務所の名称に関する規程第6条の複数名称の禁止に違反することになります.

また,平成24年3月15日の日本弁護士連合会の理事会決議による広告指針でも,「○○交通事故相談センター」「○○遺言相続センター」等別の組織、施設等の名称を用い、法律事務所等の名称等に関する規程第6条もしくは第13条又は外国法事務弁護士事務所の名称に関する規程第6条の複数名称の禁止に違反する広告」が,日本弁護士連合会の「弁護士の業務広告に関する規程」(平成十二年三月二十四日会規第四十四号)」に違反することが確認されています.

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by medical-law | 2013-10-19 08:41 | 弁護士会

タバコの危険性(受動喫煙を含む)は135年前からチャールズ・ドリスデール医師によって指摘されていました

WIRED NEWS「タバコの危険性は135年前から指摘されていた 」(2013年10月16日)は,次のとおり,伝えました.

「1878年にあるイギリス人医師が、タバコの害について警告を発していた。しかし、問題が真剣に取り上げられるまで80年以上待たねばならなかった。

1962年にイギリス王立内科医会(Royal College of Physicians)が『喫煙と健康』というリポートを発表したことが、医学史とタバコの歴史における転換点となった。すでにしばらく前から、医師たちは喫煙の習慣を憂慮していた。しかしイギリスのリポートによって、タバコとがんや気管支炎、さまざまな心臓脈管系疾患との関係が、詳細に調査され始めた。タバコを健康に対する脅威とみなさなければならないことはもはや明らかだったが、社会全体の関心が向けられるようになった。

2年後にはアメリカも同じ結論に達し、『喫煙と健康:アメリカ医務総監諮問委員会報告書(Smoking and Health: Report of the Advisory Committee to the Surgeon General of the United States)』が発表された。しかし喫煙の危険性は、その80年以上前から指摘されていた。

1878年9月25日、イギリスのMetropolitan Free Hospitalの医師、チャールズ・ドリスデールは、『Times』の編集者たちに、一通の手紙を送った。その中で彼は、喫煙習慣の危険性について注意を促していた。そして、彼が警告を発したのは初めてのことではなかった。彼は以前からこのために研究を行い、冊子を執筆していた。そしてこのとき、再挑戦して、警告的な内容の手紙を書いたのだ。

「噛んだり、嗅いだり、ふかしたりするタバコに含まれるアルカロイドは、極度に毒性が強い。タバコを噛む人は、少量のニコチンを吸収するが、これは非常に有害で、1本の葉巻に含まれるニコチンの量は(編注:不純物なしで摂取すれば、と冊子では説明している)、2人の人間を殺すことができるほどである。そして、喫煙者は唾液や口の粘膜からさまざまな有毒性のアルカリを少量吸収するが、これらもニコチンに劣らず生命にとって危険である」。

従ってドリスデールは、ニコチンについて指摘して、タバコを「非常に魅力的であると同時に健康にとって危険」なものにしている物質であると語りながら(エヴェレット・クープが1988年に注目することになるニコチンの依存効果も先取りして指摘していた)、タバコの煙の中には健康の害になる物質がほかにも存在することにも注意していた。彼が記述したタバコを吸う人、噛む人への影響は、声のかすれ、歯の黒ずみ、心臓の鼓動の異常、歯茎の腫れ、口の炎症、がんだ。

しかし彼は、受動的な喫煙も無害とは考えていなかった。彼はこう書いている。「バーのホールや喫煙室で待っている女性たちは、自分たちではタバコを吸わなくても、煙を絶えず吸い込むことによって起きる中毒から逃れることができない」。

歴史がわたしたちに教えているように、ドリスデールのような人物の発した警告にもかかわらず、タバコの害が意識されるようになるのは、ずっとあとのことになる。彼はタバコを「わたしたちの時代の退行的な影響のなかで最も明白なもののひとつ」と、きっぱり定義していた。」


タバコの危険性は135年前から指摘されていた.未だに,タバコ会社はそれを認めず,タバコを積極的に販売しています.
国は,タバコ広告・販売に規制をかけ,人々の健康を守るべきでしょう.

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by medical-law | 2013-10-17 09:22 | タバコ

甲府市立甲府病院の放射性物質過剰投与問題,第三者委員会が医師から聞き取り(報道)

毎日新聞「甲府病院の放射性医薬過剰投与:医師ら7人聞き取り−−第三者委」(2013年10月16日)は,次のとおり報じました.

「甲府市立甲府病院(同市増坪町)が検査用の放射性物質を子供らに過剰投与していた問題で、市が設置した第三者委員会は15日、当時の医師や放射線技師ら計7人に対する聞き取り調査を行った。委員会側は、内容について調査途中であることを理由に明らかにしなかった。患者やその家族らにも12月中旬に聞き取りを行う方針。

 記者会見した長尾能雅委員長(名古屋大医学部付属病院副院長)によると、長尾氏を含む委員5人が、過剰投与を行ったとされる技師長補佐(昨年に死亡)と関わっていた医師や技師を対象に聞き取り調査した。12月1日にも別の技師ら計8人から聞き取りを行うなどし、今年度末を目標に報告書をまとめるとしている。

 過剰投与問題は2011年9月に発覚。技師長補佐は1999〜2011年、日本核医学会などの推奨基準の2〜40倍の放射性物質テクネチウムを含む検査薬を子供ら84人に投与していたとされる。【屋代尚則】」


甲府病院の放射性医薬過剰投与が明らかになってから,かなりの時間が経過しています.できるかぎり,迅速な対処を期待します.

谷直樹

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by medical-law | 2013-10-17 09:06 | 医療事故・医療裁判

40歳以上の5.8%が緑内障,年に1度は検査を

毎日新聞「10月→目 今週は緑内障 眼圧正常でも発症、検査を」(2013年10月17日)は,次のとおり伝えています.

「視野がどんどん狭くなり、症状が悪化すると失明する恐れがある緑内障は、日本人の失明原因のトップだ。眼圧が高いことが原因とされてきたが、2000年代前半の調査で正常な眼圧でも発症例が多いことが判明した。だが、「正常眼圧緑内障」への理解はなかなか広がっておらず、注意が必要だ。

 川崎市に住む女性(38)は9年前、コンタクトレンズを購入するため眼科を受診した。その際、医師に「眼底に異常があるかもしれない」と指摘され、市内の大学病院で検査を受けたが、眼圧は正常値(10〜21mmHg)の範囲内だった。それにもかかわらず、視神経が損傷している兆候があり、自覚症状はないものの視野に軽度の異常が見つかった。診断結果は緑内障だった。

 女性の場合、早期発見だったため手術の必要はなく、点眼薬だけで症状の進行を抑えられている。

 ●放置すると失明も

 緑内障は、視神経が損傷することによって網膜からの視覚情報を伝える「神経節細胞」が死んでしまうことで発症する。一般に、視野が徐々に狭くなり、放置すると失明する。

 日本緑内障学会が00年から2年かけて実施した大規模調査から、国内の緑内障の患者数を推計したところ、40歳以上の5・8%(約300万人)に上った。厚生労働省の調査では、緑内障は健康な人が失明する原因のトップ(20・7%)。糖尿病網膜症(19・1%)や網膜色素変性症(13・7%)を上回っている。

 ●遺伝など複合要因

 緑内障の原因の一つは、眼圧が高いことだ。しかし、川崎市立多摩病院の上野聡樹(さとき)院長によると、「眼圧が正常でも、複合的な要因で視神経の障害が起きることが少なくない。身内に緑内障の人がいると発症する可能性が高いなど遺伝的な要素もある。眼圧だけが原因ではないが、あまり知られていない」という。実際、同学会の調査では、眼圧が正常なタイプの緑内障は、40歳以上の2・04%いると考えられ、眼圧が高いタイプ(同1・37%)よりも多かった。

 ●早期発見で薬治療

 上野院長は「眼圧検査の結果が正常でも安心しないでほしい」と指摘する。視野が狭くなるなどの自覚症状は、症状がかなり進まないと出ない。「早期発見のためにも定期的に眼底検査も受け、結果によっては視野の検査なども受けた方が安心だ」と、上野院長はアドバイスする。」


症状を自覚する前に受診し,検査・診断・治療することが望ましい病気です.
まして,すこしでも見えにくいなどと感じたら,年のせいと考えずに,緑内障専門医師のいる眼科で精密検査を受けるのがよいと思います.
年に1度の検査をお奨めします.


谷直樹

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by medical-law | 2013-10-17 08:47 | 医療

産科医療補償制度運営委員会、現行「在胎週数33週以上」を「在胎週数28週以上」に変更を議論

CBニュース「補償対象週数の拡大提案に「根拠が必要」- 産科医療補償制度運営委」(2013年10月16日)は、次のとおり報じました.

 「医療機能評価機構の産科医療補償制度運営委員会(委員長=小林廉毅・東大大学院教授)が16日開かれ、同制度の見直しに向けて補償対象となる脳性まひの基準について専門家からヒアリングを行った。現行の補償対象基準は、一般審査で「在胎週数33週以上かつ出生体重2000グラム以上」としているが、専門家は補償対象の在胎週数を広げることを提案した。これに対して、委員から反対はなかったが、具体的な週数の提示については根拠を示すべきとの意見が上がった。

 ヒアリングで、同制度医学的調査専門委員会の岡明委員(東大大学院教授)は、制度発足後の周産期医療の進歩と変化や、脳室周囲の白質に起こる虚血性脳病変である脳室周囲白質軟化症(PVL)の発生頻度が28週以上早産児で減り、これに伴い脳性まひ発生頻度も減少していることなどを挙げ、「補償対象の週数区分の見直しが必要」と主張。現状に対応して、例えば一般審査で在胎週数28週以上を原則として補償対象とするのが妥当と提案した。

 日本周産期・新生児医学会の田村正徳理事長は、在胎週数28週以上の早産児が脳性まひになる可能性は低下しており、「(一般審査で補償対象を)33週で区切ることには無理がある」と指摘。その上で、新生児医療の現場で「(在胎週数33週を基準に)未熟性による脳性まひと説明するのは困難」とし、補償対象週数の調整の必要性を訴えた。

 議論では、一般審査での在胎週数33週以上とする現行の補償対象週数を広げることに異論はなかった。ただ、岡委員が示した「在胎週数28週以上」とする案に対して、今村定臣委員(日本医師会常任理事)は、「なぜ、28週以上なのかをきちんと説明できなければならない」とし、その根拠を示すべきとの考えを示した。【松村秀士】」


28週に拡大することについて一応の根気を示すことは可能と思います.
対象範囲を拡大すべきと思います.

【追記】

NHK「産科医療補償の対象拡大を」(2013年10月17日)は,次のとおり報じました.

「出産時の事故で重い脳性まひになった子どもに補償金を支払う「産科医療補償制度」について、制度の見直しを議論する日本医療機能評価機構の委員会が開かれ、専門家からは、原則、妊娠33週以上での出産としている現在の制度を緩和し、補償対象を拡大すべきだとする意見が多く出されました。

産科医療補償制度は、出産時の事故で重い脳性まひになった子どもを対象に、医療機関に過失があるかどうかに関係なく、3000万円の補償金が支払われる制度で、来年、導入から5年目となるのに合わせ制度の見直しが行われています。

16日開かれた委員会では、補償対象を原則、妊娠33週以上で生まれた体重2000グラム以上の子どもとしている点について、小児科などの専門医から意見を聞きました。
その結果、複数の専門医から、「今の医学から考えると対象は28週以上で生まれた子どもにすべきだ」などと、補償対象を拡大するのが望ましいとする意見が多く出されました。

また補償対象を妊娠33週から28週にした場合には、およそ430人、体重2000グラムという条件をなくした場合には、およそ80人、それぞれ対象となる子どもが増えるといった試算も示されました。
日本医療機能評価機構では、年内をめどに制度の具体的な見直し案をまとめることにしています。」



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by medical-law | 2013-10-17 02:44 | 医療事故・医療裁判