弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

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厚労省,不適切な臨床研究118件

朝日新聞「不適切な臨床研究118件 全国調査、データ捏造は1件」(2013年9月30日)は,次のとおり報じました.

「高血圧治療薬の臨床研究論文の不正問題を受け、厚生労働省と文部科学省が全国の臨床研究の拠点117施設に対し自主点検を求めた調査で、不適切な研究が計118件あったことがわかった。8月下旬、2009年度以降に始めた研究2万4414件について報告を求めていた。

 27日時点での報告によると、データの捏造(ねつぞう)などがあり、信頼性が損なわれた研究は1件。東邦大元准教授が麻酔薬に関する論文でデータを改ざんした事例だった。不適切な研究の大半の103件は、厚労省が定める臨床研究に関する倫理指針違反だった。「研究機関の長への進捗(しんちょく)状況や終了の報告を忘れていた」が最多の80件。他に「利益相反についての報告が不十分」が14件あった。 」


利益相反を報告しない例は,研究結果の信憑性が疑われます.


谷直樹

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by medical-law | 2013-10-04 17:56 | コンプライアンス

日弁連、特定秘密保護法案に反対する会長声明

日本弁護士連合会(日弁連)は、2013年10月3日、特定秘密保護法案に反対する会長声明を発表しました.

「政府は、9月26日、特定秘密保護法案(以下「本件法案」という。)の内容を明らかにした。この時期の公表は、秋の臨時国会への提出及び成立を目指したものである。

当連合会では、民主党政権下において情報公開法の改正と併せて秘密保護法制に関する検討が始められた当初から、秘密保護法制の立法化に対しては疑問を呈し、法案の国会提出に強く反対してきた。そして、同月3日から始まった特定秘密保護法案概要に関するパブリックコメントにも、同月12日に当連合会として法案概要の問題点を詳細に指摘した意見書を提出した。

本件法案には、手続面及び内容面において重大な問題がある。

本件法案の内容は、統治機構の在り方、国民主権及び国民の諸権利に重大な影響を与えるものであるにもかかわらず、政府は、この問題について国民に秘したまま7年以上にわたり水面下で検討しながら、ようやく1か月前に突如法案の概要を示し、更にまたパブリックコメントの期間を僅か2週間しか設けないという国民不在の手続を強行した。国民主権の否定につながるこのような手法は断じて許されるべきではない。

それにもかかわらず、パブリックコメントには、約9万件の意見が寄せられ、しかも、約8割が法案概要に反対するものであったとのことである。政府としては、パブリックコメントに寄せられた意見を分析し、法案の内容を再検討し、さらには法案の提出の断念をも検討すべきであった。ところが、パブリックコメント終了後わずか12日目に本件法案を公表した。寄せられた国民の意見を検討できるはずもなく、またこれを子細に検討し法案に反映させようとの姿勢は全く窺えない。

そして、本件法案の内容をみても、当連合会が指摘した問題点がそのまま残されている。すなわち、特定秘密の範囲が広範かつ不明確で、違法秘密や疑似秘密(政府当局者の自己保身のための秘密)の危険性もそのままであり、適性評価におけるプライバシー侵害の問題や、重罰化、共謀・独立教唆の処罰による取材活動の萎縮や知る権利の制約の問題も解消されていない。

また、行政機関の長が特定秘密情報を提供することができる要件について、国会の議院等(以下「国会等」という。)に対しては、行政機関の長の幅広い裁量権が規定されているのに対して、外国の政府や国際機関に提供する場合については、国会等への提供の場合よりも明らかに緩やかなものになっている。そのうえ、国会等に特定秘密を提供した場合に、議員がその情報を議員活動でどのように利用できるかについても不明確なままであり、これでは、国会が国権の最高機関であることを無視するものというほかない。全国民を代表する国会議員によって構成される国会が行政を監視するのではなく、逆に行政によって国会が支配されかねない構造となっており、わが憲法下の統治機構の在り方を根底から蝕むものである。

また、警察庁長官が、都道府県警察が保有する特定秘密の提供を求めることができるものとしている。これは、警察組織の更なる中央集権化を推し進める役割を果たし、戦後の警察組織の民主化を大きく後退させることにつながりかねない。

一方、法案の第20条に「報道の自由」に配慮する旨の規定が盛り込まれたが、「報道の自由」は判例上確立しているから、その文言を改めて規定する意味は特にないのであって、幅広い処罰規定を設け、過失犯まで処罰するという本件法案の重罰化がもたらす憲法の保障する自由権に対する深刻な萎縮効果は何ら拭えないのである。

このような法案は、今国会に提出されるべきではない。その前に、重要な公的情報を適正に保管するための公文書管理法の改正、及び国民の知る権利を充実させるための情報公開法の改正こそが行われるべきである」


谷直樹

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by medical-law | 2013-10-04 01:49 | 弁護士会

CDC「手洗いが命を救う」,先生,ここへ来る前に手を洗ったかどうか尋ねてもよろしいですか

WSJ「病院はなぜ患者から医師に「手を洗いましたか」と尋ねさせるのか」(2013年 10月 2日)は,次のとおり伝えています.

「CDCは「手洗いが命を救う」という題名のビデオを1万6000本作り、患者が入院時に見せるようにしている。ビデオでの一つのシナリオでは、医師が病室に入ってくると、患者の妻が「先生、大変失礼ですが、ここへ来る前に手を洗ったかどうか尋ねてもよろしいですか」と言うと、医師は「部屋に入る直前に手を洗いました」と答える。すると妻はさらに、「できましたら、もう一度私の前でしていただけませんか」と頼んでいる。」

「一部の病院では「手洗いが済んだかどうか私に聞いてください」と書かれたポスターやプラカードを貼ったり、スタッフにバッジを付けさせたりしている。」

「とてもシンプルな要求だが、病院の一室で弱さや恐怖、居心地の悪さを感じる患者やその家族にとっては、この問題はとても脅威となり、「手を洗いましたか」などとは言い出せない場合がある。」

「84%の親は感染症のリスクを承知しているが、病院スタッフに手を洗うよう求めるとしているのは67%止まりだった。これは、そんなことを言うのが失礼に見えたり、スタッフの権威を損ねたりするのではないかとの懸念が主な理由だった。」

「Infection Control and Hospital Epidemiology誌に載った研究では、ピッツバーグ大学医療センター(UPMC)の患者の3分の1は医師が手を洗わなかったのを見たと答えたが、3分の2近くの患者は手の衛生状態について医師に何も言わなかったとしている。この研究によれば、ほとんどの患者は医師に手洗いを求めるのが自分たちの役割だとは考えておらず、これを要求した場合の医師からの報復を恐れているという。」



「一部の病院では、厳しい手洗い規則を導入して順守率を100%近くにまで高め、また一部では、指定されたスタッフが同僚の衛生管理状態を監視している。病院の共同購入事業を行うプレミアのジーナ・パグリース氏によると、一部の病院は手洗いの改善は規則順守や、これを無視する医師に対する勤務資格の一時停止などによるものだとしている。2010年の研究によると、ケンタッキー大学医療センター(レキシントン)の医師の勤務資格停止を含む罰則の導入によって順守の度合いが高まったという。」

「UPMCの研究では、患者らは感染症や手洗いに関する情報を受ける代わりに、むしろ病院スタッフが手を洗ったかどうかを示すボタンやライトを身に付けてくれた方がいいと思っていることも明らかになった。UPMCはスタッフが手洗いをしたかどうか測定・追跡できるシステムや、スタッフが病室に入る前に手洗いをしたかどうか尋ねることを患者に喚起させるコンピューター音声システムの開発を進めている。」


米国でさえこのような状況ですから,日本では,医師に「手を洗いましたか」と尋ねるのはかなり難しいでしょう.
感染症予防には,システムによる対策が有効でしょう.


谷直樹

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by medical-law | 2013-10-03 12:08 | 医療

緑色の「ガーゼ」が2013年度グッドデザイン賞受賞

2013年度グッドデザイン賞が,2013年10月1日,発表されました.この受賞100点のなかから,大賞が選ばれます.

2013年度グッドデザイン賞を受賞した医療機器 [GGアブソーテック]は,内視鏡外科手術用の緑色の「ガーゼ」です.

内視鏡外科手術中に白色の被写体が画像内に入ると,画白色の被写体に自動的に露出が合うため,臓器の画像が一気に暗くなってしまうという問題があり,血液と補色の緑色に染色めた「ガーゼ」にすることで,その問題を解決したとのことです.

緑色のガーゼは血液を吸収すると黒色になるため、血液を吸収すると赤色に変色し臓器との見分けが付かなくなる白色ガーゼのもう一つの欠点も解決している。内径12mm以上のトロカールからの挿入・抜去を容易にするために、形状を三角形にする工夫もある。」(審査委員の評価)とのことです.

これまでガーゼの色を変えるアプローチがなかった理由は、ガーゼは「純綿糸を平織りした原布を脱脂し漂白したもの」と薬事法で決められているからということもわかった。そのため当内視鏡外科手術用ガーゼは、ガーゼではなく血液吸収目的のスポンジと位置づけることによって緑色の染色を実現したという。」(審査委員の評価)

平成17年の日本薬局方の改正により,ガーゼ,滅菌ガーゼ,脱脂綿,精製脱脂綿,滅菌脱脂綿,滅菌精製脱脂綿が医薬品から削除され,「医療機器」に区分変更されました.
その後の平成17年6月30日の「医療ガーゼ・医療脱脂綿の基準について」(薬食機発第0630001号)の別紙に「綿繊維とは、Gossypium属の種子の毛を脱脂し、漂白したものである。」と記載されています.


緑色の「ガーゼ」の発想は,固定観念を打ち破る大変優れたものだと思います.

谷直樹

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by medical-law | 2013-10-02 03:14 | 医療

選択型実務修習プログラム

東京の弁護士会では,各委員会に委託して,選択型実務修習プログラムを実施しています.
私は,昨日,消費者委員会からの要請で,「医療と人権」というテーマでお話しました.
患者側弁護士の4つの活動(事件活動,無償のボランティア活動,研究活動,教育普及活動)は,いずれも人権と正義のためであることをお話しました.
事前に,パワーーポイントで作成したファイルを送っておいたのですが,なぜか配布されておらず,受講生のみなさまにはご迷惑をおかけしました.

谷直樹

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by medical-law | 2013-10-01 09:41 | 人権

米国の判事は、大型案件の供述書の分析等を外部の特別マスターに委託

wsj「米国の判事、事務作業を積極的に外注」(2013年 9月 30日)は、次のとおり報じました.

「米国各地の数千人の患者が、米ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)(JNJ)の子会社が製造した人工股関節には欠陥があるとして同社を提訴した。キンケード判事には、数百万ページに及ぶ証言をまとめ、世界各地からの数十件の供述書の指針を定めた上で、弁護士の顧問料金をめぐる争いを解決する責任がある。

 キンケード判事はすぐにこの案件を専門家に委託した。ダラス地裁では訴訟事件一覧表がびっしり詰まり、職員が大量の作業を抱え込んでいることを挙げ、「当方にはこのような大型案件を扱うだけの資源がない」と述べた。

 キンケード判事は本件の特別マスターに弁護士で元州裁判事のジェームズ・スタントン氏(36)を指名した。スタントン氏は基本的にキンケード判事の代役として供述書の分析や公判前の事務処理を行う。」


「裁判所命令が特別マスターの任務を設定するが、広範な責任を担う場合もある。ただし訴訟の最終的な権限は判事にあり、判事は特別マスターの判断に従う必要はない。特別マスターは訴訟当事者から収入を得る。訴訟の当事者は通常、迅速な処理によって訴訟費用を節約したいと考えている。

 特別マスターの数についての包括的なデータはほとんどないが、今や原告が複数の管轄区域にまたがる案件や知的所有権をめぐる大型案件では、特別マスターが重要な役割を果たしている。

 弁護士や仲裁役、退職した裁判官にとっては、大きな事業機会となる。顧問料は1時間当たり約300〜1000ドル。当事者や裁判所との交渉によって決まる。特別マスター自身の経験や個人で請け負った場合の顧問料、案件の性質などによっても変わってくる。」


日本の最高裁で調査官が行っているような作業を,米国では,外部の「特別マスター」に委託しているようです.

もちろん最終的な権限が判事にあるのですが,実際に記録を丹念に読んでいない判事は、事実上特別マスターが示した方向で判決を下さざるをえないでしょう.
とは言え,事件に追われている判事にとっては,特別マスターはなくてはならないものでしょうし,米国では,大型集団事件、専門事件に迅速に対応するためには、特別マスターが必須なのでしょう.

日本でも,「消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律」(日本版クラスアクション)が成立すると,米国の状況に近似することになるのはないでしょうか.

日本でも,いずれ,TPP(環太平洋戦略的経済連携協定,Trans-Pacific Partnership)によって,「特別マスター」を導入することになるかもしれませんね.日本の裁判遅延によってアメリカの企業の権利が侵害されている,迅速な裁判のために裁判の一部外注化をはかるべきだと言われそうです.

専門訴訟の専門委員に特別マスターの萌芽がある,とも言えるでしょう.

特別マスター制度が導入されれば,当事者が特別マスターの費用を負担することになりますが,すでに医事訴訟では,当事者が鑑定費用を負担しています.
日本の専門委員,鑑定人と,米国の特別マスターは,五十歩百歩と思います,


谷直樹

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by medical-law | 2013-10-01 03:02 | 司法

群馬大学医学部付属病院、患者2人の個人情報を共有サイトにアップした医師を医師を懲戒解雇

弁護士毎日新聞「群馬大:患者2人の個人情報をネットに 医師を懲戒解雇」(2013年9月30日9は、次のとおり報じました.

「群馬大は30日、医学部付属病院の患者2人の個人情報をインターネット上に流出させたとして、同病院の30代の男性非常勤医師を懲戒解雇し、在籍する同大大学院も退学処分にした。群馬県警は9月上旬、この医師を国立大学法人法(秘密保持義務)違反容疑で前橋地検に書類送検している。

 同大によると、医師は今年1月、研修医だった2007〜08年に担当した患者2人の氏名や病歴、治療経過などが書かれた「病歴要約」をファイル共有サイトにアップロードし、インターネット上で閲覧できる状態にした。同大の調査に対し、医師は故意で行ったことを認めたが、「なぜ流出させたかはよく覚えていない」と話しているという。【喜屋武真之介】」


国立大学法人法 第十八条は 「国立大学法人の役員及び職員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も、同様とする。」と定めています.

同法第三十八条は「第十八条(第二十六条において準用する場合を含む。)の規定に違反して秘密を漏らした者は、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。」と定めています.


本ブログ「群馬大学医学部附属病院の患者個人情報流出,故意の可能性(報道)」ご参照

医療等に関する情報の機微性を踏まえれば、漏洩の被害は重大ですが、過失による漏洩すべてについて刑事罰を科することになれば、医療等の情報の利活用に対する萎縮につながる可能性があると考えられ、過失による情報漏洩一般について、刑事処罰規定はありません.
ちなみに医師法第三十三条は「第三十条の規定に違反して故意若しくは重大な過失により事前に試験問題を漏らし、又は故意に不正の採点をした者は、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。」と定め重過失による試験問題漏洩を処罰する規定をおいていますが、これは医師の試験問題に限った例外的な規定です.

本件の医師が患者の個人情報を故意にインターネットにアップしたとされてますが、どうしてそのようなことをするのか不可解です.

谷直樹

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by medical-law | 2013-10-01 01:30 | コンプライアンス