弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

<   2014年 08月 ( 32 )   > この月の画像一覧

ノバルティスファーマ,因果関係が否定できない重い副作用両例約2500症例を報告せず,薬事法違反

日本経済新聞「ノバルティス、2500例を放置 重い副作用の報告義務」(2014年8月29日)は,次のとおり報じました.

スイス製薬大手の日本法人ノバルティスファーマは,「白血病治療薬による重い副作用を16症例21件把握しながら国に報告しなかったなどとして、7月に厚労省から改善命令を受けた。この際、販売するすべての薬で同様の報告漏れがなかったかどうか報告するよう指示され、約1万例を調査していた。

 その結果、同社が販売する薬との因果関係が否定できない重い副作用症例は少なくとも2579例あった。白血病治療薬など抗がん剤が多く、患者の副作用は腎障害などで、死亡した事例もあったという。

 これとは別に自社薬との因果関係を調査中の副作用症例は6118例あるといい、薬事法違反の未報告事案はさらに増える可能性がある。厚労省は9月末までに全ての調査結果を報告するよう指示した。

 厚労省によると、製薬会社から報告のある副作用症例は全体で年間およそ4万例。ノバルティスは2013年に複数の症例で約8千件を報告したという。

 ノバルティスを巡っては、高血圧症治療薬ディオバンを巡る臨床データ操作事件で、法人としての同社と元社員が薬事法違反(誇大広告)罪で起訴されており、厚労省はこの件でも行政処分を検討している。

 大量の副作用症例疑いの未報告について、同社は「深く反省し、再発防止に努める」とのコメントを発表した。」

 
製薬会社には,死亡やこれまで知られていない副作用は15日以内,そのほかの重い副作用は30日以内に国に報告するよう義務付けられています.薬事法違反の疑いがあります.
そういえば,今週,ノバルティスファーマの医師への不当な便宜供与が「報じられました.

毎日新聞「ノバルティス:学会で医師71人の旅費510万円肩代わり」(2014年8月27日)は,次のとおり報じました.

「製薬会社ノバルティスファーマ(東京)が4月に開催された日本内科学会に出席した医師71人の旅費計約510万円を不当に肩代わりしたとして、業界団体「医療用医薬品製造販売業公正取引協議会」が27日、指導した。製薬会社が学会参加者の旅費を肩代わりすることは、医師への不当な便宜供与に当たるとして規約で禁止されている。

 協議会が、学会の旅費肩代わりで指導したのは初めて。

 ノ社と協議会によると、ノ社は4月13日に東京で自社製品に関する全国講演会を開催。これに出席することを条件に、同じころ東京で開催された日本内科学会総会にも参加した医師71人の宿泊費と交通費を負担した。

 ノ社のダーク・コッシャ社長は「深くおわびする。二度と起こすことがないよう、再発防止を徹底したい」とのコメントを発表した。ノ社は、降圧剤バルサルタン(商品名ディオバン)の臨床試験を巡る虚偽広告事件で、元社員とともに薬事法違反(虚偽広告)で起訴されている。【河内敏康】」


何れも,法令遵守の姿勢を欠くのは,同社の企業体質なのでしょうか.

【追記】

ノバルティスは,2014年10月1日「副作用症例の社内調査に関する報告について」で「7月31日に、国から改善命令を受けた副作用報告遅延について、薬事法の副作用要件に従い、社内で集められた情報の範囲で重篤かつ因果関係が否定できないとしてPMDAに報告したものは、3,878症例でした。」と発表しました.

谷直樹

ブログランキングに参加しています.クリックをお願いします!
  ↓

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
にほんブログ村
by medical-law | 2014-08-30 13:26 | コンプライアンス

訪問診療の院長が患者のカードを窃盗の容疑で逮捕

京都新聞「寝たきり患者宅で窃盗容疑 訪問診療のクリニック院長」(2014年8月29日)は、次のとおり報じました.

「寝たきりの患者宅に訪問診療し、クレジットカードを盗んだとして、警視庁昭島署は29日までに、窃盗の疑いで、拝島駅前クリニック(東京都昭島市)の院長で医師の××××容疑者(52)=東京都板橋区中丸町=を逮捕した。

 昭島署によると、××容疑者は「カードを使い、ホームセンターやデパートでペット用品やお茶などを買った」と容疑を認めている。

 逮捕容疑は7月9日午後2時ごろ、昭島市に住む男性患者(80)の自宅からクレジットカード1枚を盗んだ疑い。(共同通信)」


「患者さんにとってご自宅は、安心でき最もリラックスすることができる療養環境です。」と、この院長は、クリニックのサイトに書いています.その院長が、よりによって寝たきりの高齢者から窃盗するとは.
生活に困窮しての犯行ではないと思います.



谷直樹

ブログランキングに参加しています.クリックをお願いします!
  ↓

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
にほんブログ村
by medical-law | 2014-08-30 01:11 | 医療

子宮頸がんワクチンの副作用追跡調査へ

薬害根絶デーに提出した、全国薬害被害者団体連絡協議会の厚生労働大臣げの「要望書」は、次のとおりです.

「1、HPVワクチンの副作用に関する積極的実態把握を行うとともに、被害者の救済をすすめてください。また、積極推奨の差し控えの継続はもちろんのこと、予防接種法の本来の主旨をふまえ、この子宮頸がんワクチンを定期接種としていること自体を見直してください。

2、薬事食品衛生審議会における、審議参加にかかる利益相反ルールと運用状況を検証し、厳格化を図ってください。

3、医薬品副作用被害救済制度の充実について
(1)抗がん剤等による健康被害の救済に関する検討会が抗がん剤副作用の救済制度の導入を見送りましたが、「政府は引き続き実現可能性について検討を続けるべき」しています、検討状況について説明してください。
(2)胎児救済については、関連法令との整合性の観点から困難であるとの事でしたが、例えば胎児を失った場合の母体に対する救済については検討の余地があるとの見解が示されました。胎児を失った母体に対する救済に関する検討状況を教えてください。
(3)去る6月12日付医薬食品局長通知(都道府県知事宛)で示された副作用報告の医療機関報告様式の変更が救済制度の利用促進において意義深いことを評価するとともに、企業報告様式においても同様の変更を加えることで、制度周知・活用促進に関して製薬企業(MR)と医療機関(医師)の連携を促し、より多くの重篤副作用患者の救済を図っていただきたい。

4、薬害教育について
中学生向け薬害教育に関する副読本「薬害を学ぼう」が配布されていますが、教育現場でこれを利用して薬害について教える際に、映像教材があったほうが良いという、現場の声が寄せられています。つきましては、薬害教育に使用するビデオ教材を作成し、全国の中学校に副読本とともに配布してください。

5、第三者監視・評価組織について
「薬害肝炎事件の検証及び再発防止のための医薬品行政のあり方検討委員会」の最終提言において必要性が示された、第三者監視・評価組織を速やかに設置してください。

6、添付文書の取り扱いについて
本年度施行される「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」において、最新の論文その他により得られた知見に基づき作成されるべきものとされたが、既存の医薬品の添付文書が最新の知見に基づいたものであることを、検証する仕組みを検討してください。」



薬事日報「【薬害被害者団体】厚労相に再発防止訴え要望書‐HPVワクチン被害救済を」(2014年8月27日)は、次のとおり報じました.

「全国薬害被害者団体連絡協議会(薬被連)は「薬害根絶デー」の25日、子宮頸癌予防ワクチンの副作用に関する積極的実態把握、薬事食品衛生審議会における利益相反ルールの厳格化、添付文書の取り扱いなどを盛り込んだ要望書を田村憲久厚生労働相に手渡した。
 要望書では、HPVワクチン接種後の副反応で被害者が出ていることから、厚生労働省が積極的な接種勧奨を差し控えている現状に言及し、HPVワクチンの副作用に関する積極的な実態把握と被害者の救済を進めるよう要望。積極的な接種推奨の差し控え継続と共に、予防接種法の主旨を踏まえ、HPVワクチンの定期接種化を見直すよう求めた。」



TBS「子宮頸がん副作用、専門的治療可能な病院整備へ」(2014年8月29日)は次のとおり報じました.

「厚生労働省は、子宮頸がんワクチンの副作用を訴える患者のため、専門的な治療を受けられる医療機関を全都道府県に整備する事を決めました。

 子宮頸がんワクチンを打った後に歩けなくなるなど重篤な副作用を訴えた人は、これまでに176人が報告されています。

 29日、田村厚労大臣は副作用への新たな対応として、専門的な治療を行う医療機関を現在の23病院から大幅に増やし、全都道府県に整備すると発表しました。自治体や病院と連携し患者が複数の病院を転院した場合でも、追跡調査を続け、症状がどの様に変化したか情報収集します。

 さらに、医療関係者などから「副作用の報告数に漏れがあるのではないか」との指摘があったため、過去に症状が出た事がある人も調査するという事です。集めた情報は専門家が分析し、今後の対応を検討します。


msn産経「子宮頸がんワクチンの追跡調査強化へ 厚労省、医療機関に要請」(2014年8月29日)は、次のとおり報じました.

「慢性的な全身の痛みが続くなどの症例が報告され積極的な接種勧奨が控えられている子宮頸(けい)がんワクチンについて、田村憲久厚生労働相は29日、慢性疼痛(とうつう)や運動障害などの症例について患者の追跡調査を強化する考えを明らかにした。患者が適切な治療を受けられるよう全県に協力医療機関を整備し、痛みなどの副作用が疑われる症例についても、過去にさかのぼって報告するよう医療機関に求める。

 厚労省は9月にも、子宮頸がんワクチン接種後の報告すべき副作用について、医師が予防接種との関連が高いと判断した場合、新たに「接種後の広範な疼痛や運動障害を中心とする多様な症状」との項目を追加。こうした症状を訴えた患者の回復状況についても追跡調査を行う。患者が転院した場合も、市町村が新たに通う医療機関から報告を求めるという。

 また、現在は専門治療を行う医療機関は18都道府県23カ所に限られるが、今後は全県に窓口となる協力医療機関を拡大する。田村厚労相は「発生頻度を明らかにし、その後の回復などについて国民に適切な情報提供をできるようにする目的だ」と述べ、調査体制を強化した上で、改めて接種の積極的勧奨の再開について専門部会の判断を仰ぐ考えだ。

 子宮頸がんワクチンは昨年4月に定期接種となったが、慢性頭痛などこれまで知られていなかった副作用の報告が相次ぎ、昨年6月に接種呼び掛けが中止された。専門部会は今年1月、副作用は接種時の痛みがきっかけとなって不安や緊張などが体の不調として現れる「心身の反応」が原因としたが、接種呼び掛け再開の見通しはたっていない。」


薬害をめぐる動きには目を離せません.
子宮頸がんワクチンのう副作用は、心身反応で片付けられるものではないでしょう.


谷直樹

ブログランキングに参加しています.クリックをお願いします!
  ↓

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
にほんブログ村状が出た事がある人も調査するという事です。集めた情報は専門家が分析し、今後の対応を検討します。」
by medical-law | 2014-08-29 23:59 | 医療

大阪市立大学医学部附属病院,カテーテルが血管外に突き抜け,患者が心停止して低酸素脳症となる事故発生

大阪市立大学医学部附属病院は,2014年8月28日,ホームページに,「大阪市立大学医学部附属病院における医療事故の発生について」をアップしました.

「大阪市立大学医学部附属病院において、平成26 年7 月21 日(月)午前9 時頃、入院患者の中心静脈カテーテルを入れ替えた際、カテーテルが血管外に入り点滴が胸腔内に溜まったことにより心停止を起こし、救命できたものの低酸素脳症に至る医療事故が発生しました。

事故発生後に実施した調査・検証内容をもとに、平成26 年8 月27 日の医療安全協議会で審議した結果、医療過誤と判断したため公表させていただくことになりました。

当該患者は誤嚥性肺炎で入院し、首から中心静脈カテーテルを入れて栄養補給を行っていましたが、挿入部から点滴が漏れて痛みを訴えられたためカテーテルの入れ替えを実施しました。
入れ替えは前日の夜間当直の医師Aと当日の日勤当直の医師Bが超音波装置で血管を確認しながら行いましたが、実際は血管内に入っていませんでした。挿入後はレントゲン等で確認しましたが、血管内に入っているものと誤認してしまいました。
午前11 時過ぎに患者が胸部の違和感を訴えられたため、医師Bは心電図と呼吸状態を確認して異常なしと判断しました。18 時頃より、呼吸状態が悪くなったため酸素投与を開始し、19 時頃には、担当医師Cが診察しましたが、大きな変化はないと判断しました。さらに21 時にも胸痛と呼吸苦の訴えがあり、夜間当直の医師Dが診察しましたが、心電図で不整脈は認めなかったため経過観察としました。
その後、呼吸状態がさらに悪化したため酸素を増量しましたが、23 時過ぎに呼吸苦と発汗があり、医師Dが血液検査を実施しました。その結果、肺塞栓症が疑われたためCT検査を実施したところ、カテーテルが血管外に入っており、点滴が胸腔内に溜まっていることが判明しました。治療を行うため病棟に戻った直後に心停止となったため、直ちに蘇生処置を実施して心拍が再開しましたが低酸素脳症となり、現在も懸命に治療にあたっています。」



毎日新聞「医療事故:カテーテル血管外に、意識不明 大阪市大病院」(2014年8月28日)は,次のとおり報じました.

「大阪市立大付属病院(大阪市阿倍野区、石河修院長)は28日、入院患者の心臓につながる血管にカテーテルと呼ばれる細い管を入れた際、誤って血管外に挿入したため、患者が心停止して低酸素脳症となる事故があったと発表した。

 病院によると患者は入院中の60代の女性。事故は7月21日午前9時ごろ、栄養補給のために首から血管にカテーテルを挿入する際に起きた。20代の医師2人が挿入したカテーテルが血管外に出て点滴液が胸腔(きょうくう)にたまり、女性はこの日午後11時過ぎに心停止した。女性は現在治療を受けているが、意識不明の状態だという。

 女性は午前11時過ぎに胸の違和感を訴えたが、別の医師は心電図などから異常はないと判断。午後6時ごろには呼吸が乱れ始め、酸素吸入で対応した。さらに別の医師が1時間後に診察した際も異常に気付かず放置した。女性は同9時ごろに再び胸痛を訴えたため、夜間当直の別の医師が心電図を使って診察したが、不整脈などはなく経過観察にとどめた。結局、女性は午後11時ごろ容体が悪化し、血液とCTの検査などで事故が分かった。蘇生措置で心拍が再開したが、低酸素脳症の状態が続いている。

 石河院長は会見で「深くおわびします。今後、再発防止に努めたい」と謝罪した。【斎藤広子、松井聡】」


東京新聞「カテーテル誤挿入で心停止後に意識不明 大阪市立大病院」(2014年8月28日)は,次のとおり報じました.

「大阪市立大附属病院は28日、60代女性の患者のカテーテルを入れ替える際に誤って血管外に挿入し、そのまま点滴を続けたため、女性が一時心停止に陥り、蘇生後も意識不明の状態が続いていると明らかにした。

 附属病院によると、女性は誤嚥性肺炎で入院しており、7月22日午前9時ごろ、医師2人が中心静脈のカテーテルの入れ替えを実施。超音波装置やレントゲンで血管を確認しながら挿入したが、実際には血管内には入っていなかった。

 女性は午前11時過ぎから胸部の違和感などを訴え始め、複数の医師が診察したものの、心電図などに異常が認められなかったため経過観察とし、呼吸の悪化に対してのみ酸素投与を続けたという。

 約14時間後の午後11時過ぎ、さらに呼吸苦と発汗が認められたため血液検査を行った結果、肺塞栓症の疑いがありCT検査を実施した。そこで初めて、カテーテルが血管外に入り、点滴が胸腔内に溜まっていることが判明。直後に心停止となり、直ちに蘇生処置を施して心拍は再開したものの低酸素脳症に陥った。そのまま、約1カ月後の現在も意識不明の状態だという。

 附属病院は事故発生後に行った調査をもとに「医療過誤と判断」して今回、公表した。「今後、医療事故調査委員会を催して再発防止策を早急に実施する」としている。」


読売テレビ「カテーテル外れ点滴漏れ 女性患者意識不明」(2014年8月28日)は,次のとおり報じました.

先月、大阪市立大学医学部附属病院で、カテーテルが血管から外れて点滴が漏れ、60代の女性患者が意識不明となっていることがわかった。医療ミスがあったのは大阪市阿倍野区の大阪市立大学医学部附属病院。先月21日、夜間当直の20代の男性医師らが肺炎で入院していた60代の女性患者に対し、栄養補給のため心臓に近い血管に入れていたカテーテルを挿入し直した。患者は胸の痛みを訴えたが医師らは異常なしと判断。挿入からおよそ14時間後に、カテーテルが血管から外れ胸に点滴が溜まっていることがわかった。その後、患者は心停止し、救命措置で心拍は再開したものの、低酸素脳症で現在も意識が戻らないという。病院は、経験の浅い医師だけで当直体制がとられていたことで医療ミスに気付くのが遅れたと謝罪していて、外部委員を含む調査委員会を作り、再発防止に取り組むとしている。」

経過を読む限り,ミスにミスを重ね,事故が発生したように思います.
本件は,このような結果が発生しないよう気づいて対処する機会はあったように思います.

医療事故のスイスチーズモデルというのがあります.孔の開いたスイスチーズをイメージしてください。スライスして何枚か重ねたとき偶然孔が重なった場合に事故になる,というものです.4から5の過誤が重なって事故になると言われています.本件は,そのスイスチーズモデルがあてはまるのではないでしょうか.ただ,全くの偶然ではなく,過誤の背景には共通する土壌があるように思います.


谷直樹

ブログランキングに参加しています.クリックをお願いします!
  ↓

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
にほんブログ村
by medical-law | 2014-08-28 20:38 | 医療事故・医療裁判

岩手県立中央病院麻酔科医師,麻薬取締法違反罪で在宅起訴

時事通信「麻酔薬抜き取り、自分に注射=医師を在宅起訴―盛岡地検」(2014年8月28日)は,次のとおり報じました.

「麻薬成分を含む麻酔薬を自分の身体に使用したとして、盛岡地検は28日までに、麻薬取締法違反罪で、岩手県立中央病院麻酔科の30代の男性医師=盛岡市=を在宅起訴した。男性医師は手術のため患者に投与される麻酔薬を抜き取って使っていたという。
 病院などによると、6月8日午後に行われた緊急手術中、勤務外だった男性医師は手術室に入り、麻酔薬のチューブのつなぎ目に注射器を挿入。数ミリリットル抜き取って持ち去り、病院内のトイレで自身の右腕に注射した。」


msn産経「手術中に麻酔薬抜き取り、自分で使用 医師を在宅起訴」(2014年8月28日)は,次のとおり報じました.

「岩手県立中央病院の30代の男性医師が、手術中の患者に点滴していた麻酔薬を注射器で抜き取り、自分で使用したとして、麻薬取締法違反罪で在宅起訴されたことが28日、病院への取材で分かった。起訴は25日付で、患者に影響はなかったという。

 医師は「十数回ほど手術中に麻酔薬を抜き取ったことがある。ストレスを解消できると思った」と話しているという。

 病院によると、医師は6月8日、担当外の外科手術に立ち会い、成人の男性患者に点滴していた麻酔薬をチューブの連結部分から数cc抜き取り、院内のトイレで自分に注射した。

 手術チームの看護師が、医師が注射器をポケットにしまうのを目撃して上司に相談。本人が院長に対して使用を認めたため、警察に連絡した。

 病院によると、麻酔薬は鎮痛効果のある「フェンタニル」という薬剤で、麻薬に指定されている。」



患者に使用されている麻酔薬を一部とは言え抜き取る行為は,かなり悪質ではないでしょうか.

野本麻酔科学会のサイトには,「一回でも社会規範から逸脱した目的や方法で、薬物を自己摂取すると乱用になり、それが継続されて自分でコントロールできなくなった状態が依存症である。麻酔科医が陥るのは、乱用と依存症の両者が考えられる。特に問題となる状況は依存症に陥った場合である。
 一旦依存症に陥った場合、これは進行性の病気であり、回復したように見えてもその過程は薬物を止め続けている状態であり、「依存症に関しては完全治癒はあり得ない」というのが現在の考え方である。そうなると、一旦依存症に陥った麻酔科医は麻酔を続けることはできない、という厳しい考え方に立って対処する必要がある。
 したがって、興味本位や、現実逃避、ストレスなどから乱用した場合、その早い時点で発見し、依存症に陥らない状況で救済する必要がある。
 法的な面からは、薬物の入手方法が違法であれば、それを発見した時点で刑事告発もやむをえないと思われるが、施設内でまず検討するなど、法的手段に関しては慎重に対処すべきである(日本ではまだDrug Courtの考え方は広まっておらず、実施している裁判所もない)。」
と記載されています.

「処罰」のみならず「救済」も必要と考えますが,犯罪を黙視するわけにはいかないでしょうし,薬物濫用,薬物依存は麻酔科医に限りませんので,麻酔科医だけ特別に軽く扱う合理的理由はありませんので,依存性のある薬物事犯共通の問題として考える必要があるでしょう.ドラッグ・コートは,薬物依存症の治療を法的に義務付けるもの(強制的治療)で,再発防止効果が実証されていると言われています.薬物事犯についてドラッグ・コートは検討されてよいと思います.


谷直樹

ブログランキングに参加しています.クリックをお願いします!
  ↓

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
にほんブログ村
by medical-law | 2014-08-28 20:35 | 医療事故・医療裁判

日本医療機能評価機構,医療事故情報収集等事業平成25年年報,医療事故過去最多

NHK「医療事故 過去最多の2700件余」(2014年8月27日)は,次のとおり報じました.

「大学病院など全国の主な医療機関から去年1年間に報告された医療事故の件数は2700件を超え、これまでで最も多くなったことが日本医療機能評価機構のまとめで分かりました。

医療事故の分析などを行っている日本医療機能評価機構によりますと、大学病院など全国の主な医療機関274か所から去年1年間に報告された医療事故は2708件でした。
平成16年に調査を開始して以降、報告件数は毎年、増え続けていて、去年の件数は前の年を173件上回り、これまでで最も多くなりました。
このうち、医療事故との因果関係は分からないものの患者が死亡したケースは前の年より36件多い216件だったということです。
また、事故の内訳はベッドからの転落や食べ物をのどに詰まらせるなど入院中に起きた事故が1023件と最も多く、全体の38%を占めたほか、体内へのガーゼの置き忘れなど治療中の事故も全体の27%起きていました。
日本医療機能評価機構の後信理事は、「制度が定着し、医療機関側が事故を報告するようになり、件数が過去最多となったのではないか。集まった情報はホームページなどで公開しているので、再発防止に役立ててほしい」と話しています。」



報告義務対象医療機関274から平成25年1月から12月に2708件の医療事故情報の報告があったとのことです.
任意参加の医療機関は691ありますが,報告はわずか341件しかありません.これは,事故が少ないのではなく,報告が少ないと考えたほうがよいでしょう.
また,それなりの規模の医療機関で,事故報告が全くないのは,事故がないのではなく報告がない,とみたほうが正しいように思います.

医療事故情報収集等事業平成25年年報」は,
【1】アドレナリンの希釈の呼称に関連した事例
【2】リツキシマブ製剤投与後のB型肝炎再活性化に関連した事例
【3】胸腔穿刺や胸腔ドレーン挿入時に左右を取り違えた事例
【4】医療機関と薬局の連携に関連した医療事故
【5】薬剤の自動分包機に関連した医療事故
【6】造血幹細胞移植に関するABO式血液型の誤認
【7】はさみを使用した際、誤って患者の皮膚や医療材料等を傷つけた事例
について,背景・要因の分析,再発防止のための改善策等を分析しています.

谷直樹

ブログランキングに参加しています.クリックをお願いします!
  ↓

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
にほんブログ村
by medical-law | 2014-08-27 23:15 | 医療事故・医療裁判

岡山市立せのお病院の副院長が「病気が悪くなったのは○○医師の責任です。」との手紙を送付し処分される

時事通信「患者家族にうその手紙=市立病院副院長を処分-岡山」(2014年8月26日)は,次のとおり報じました.

「岡山市立総合医療センターは26日、市立せのお病院の50代の男性副院長が、患者の家族に虚偽の内容の不適切な手紙を送付したとして停職3カ月の処分にしたと発表した。副院長は同日付で辞職した。
 同センターによると、副院長は、3月末まで勤務していた市立市民病院に入院していた患者の家族に「病気が悪くなったのは○○医師の責任です。このままだとますます悪くなります。もう黙っておけないスタッフより」などと、虚偽の内容を記した手紙を7月6日付で送付した。
 患者家族から相談を受けた同センターが調査を進めたところ、副院長が市民病院の電子カルテを閲覧していたことが発覚。事情を聞いたところ、手紙送付を認め、「事実と異なることを書いてしまった。申し訳ないことをした」と話したという。同センターは患者の経過確認のため、副院長が市民病院を異動後も、電子カルテにアクセスできるIDを渡していたという。
 せのお病院の津下宏院長の話 医師らに対し、倫理観を持つよう注意する。」


KSB瀬戸内海放送「岡山市立せのお病院の副院長を処分」(2014年8月26日)は,次のとおり報じました.

「岡山市立せのお病院の男性副院長が、以前勤務していた病院の入院患者の自宅に不適切な手紙を送ったとして、停職3カ月の処分を受けました。停職3カ月の処分を受けたのは、岡山市立せのお病院の男性副院長(50代)です。病院を経営する総合医療センターによりますと、副院長は7月、以前勤務していた岡山市民病院の入院患者の自宅に手紙を送りました。手紙には患者の診療に携わっていた医師を中傷する内容が書かれていたということです。患者の家族から相談を受けたセンターが副院長から話を聞いたところ事実を認めました。副院長は「患者への注意喚起のつもりで書いたらエスカレートした」と話し、26日付で辞表を提出し受理されました。また、40代の主任放射線技師がけがをした長男と義母に医師の指示なくエックス線などの撮影をしたとして、停職1カ月の処分を受けました。」


「地方独立行政法人岡山市立総合医療センター」という法人(病院ではない)が,「岡山市立市民病院」と「岡山市立せのお病院」を運営しています.
「岡山市立せのお病院」の副院長が,以前勤務していた「岡山市立市民病院」の患者家族に「病気が悪くなったのは○○医師の責任です。このままだとますます悪くなります。もう黙っておけないスタッフより」などと記した手紙を7月6日付で送付したことは発覚し,「地方独立行政法人岡山市立総合医療センター」から処分を受けたというニュースです.

内部告発者が告発内容が真実であると信じるについて十分な合理的根拠があり,告発の目的に公益性があって,告発の方法等が適切であれば,その告発内容が真実でなくても,内部告発者への処分は許されません.また,この要件を一部欠くときであっても,総合考慮により処分が違法とされることもあります.

本件は,方法が適切とは言い難いところに問題があります.


谷直樹

ブログランキングに参加しています.クリックをお願いします!
  ↓

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
にほんブログ村
by medical-law | 2014-08-26 22:39 | 医療

大垣市民病院,アレルギー歴のある薬を確認せず投与し死亡した事案で示談(報道)

中日新聞「大垣市民病院が医療事故 遺族に400万円賠償へ」(2014年8月25日)は,次のとおり報じました.
 
「岐阜県大垣市民病院は25日、今年2月に肺がんで入院中に死亡した女性=当時(85)=に対し、医師がアレルギー歴のある薬を確認せず投与し続けて女性を苦しめ、死期を早めた可能性があるとして、女性の長女に400万円の賠償金を支払うと発表した。

 病院によると、昨年7月、肺炎で呼吸器内科に入院した女性に抗菌薬を点滴したところ、体に発疹などが現れたため、電子カルテにアレルギーの疑いがあると登録した。しかし、退院後の今年1月31日、救急で運ばれた女性に、別の医師が同じ薬を1日2回投与。2月2日午後1時ごろ、発疹が出たり呼吸困難の症状が悪化したりしたため、この医師がカルテを確認、アレルギー歴があることに気付いて処置を施したが、午後8時すぎ、女性は死亡した。

 同病院は「死因としては肺がんの可能性が大きいが、最期の時間を苦しめてしまった」とすでに長女に謝罪した。電子カルテは、アレルギーの可能性がある薬が登録されていればピンク色に点滅するシステムになっているが、「担当した医師が確認を怠った」としている。

 大垣市は9月市議会に関連議案を提出する。」


医師には,投薬に際しアレルギー歴のある薬を確認する注意義務があります.
その確認を怠り,投与し続けたのは,注意義務違反にあたります.
注意意義無違反と2月2日の死亡との因果関係については,肺がんが進行していれば高度の蓋然性があるという立証は困難ですが,少なくとも相当程度の可能性が認められる場合であれば,400万程度の賠償義務が発生するものと考えられます.


谷直樹

ブログランキングに参加しています.クリックをお願いします!
  ↓

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
にほんブログ村
by medical-law | 2014-08-26 00:48 | 医療事故・医療裁判

ディック・ブルーナ氏の言葉

8月23日は,ミッフィーで知られるオランダのデザイナー・絵本作家ディック・ブルーナ氏の誕生日です.
ミッフィー(日本では「うさこちゃん」とも呼ばれ,オランダでは「ナインチェ・プラウス」と呼ばれます)は,擬人化された,世界で二番目に有名なうさぎです.CMや切手などでミッフィーを見たことがある方は多いでしょう.このシンプルなデザインは,マティス,モンドリアンなどから影響を受けたそうです.

「絶対に絶対に描きすぎてはいけない,複雑にしすぎてはいけない。そして,僕の作るものはシンプルでいて,見る人にイマジネーションを働かせるものでなくてはならない。」
ディック・ブルーナ氏の言葉です.
たしかに,複雑な世界をシンプルに描くことは,難しいことです.

サンリオの「キャシー」は,あの×(口と鼻を表現しているらしい)が○に変わり,リボンがくわわっているなどの違いはありましたが,ミッフィーと微妙に似ていました.サンリオが著作権と商標権を侵害しているとして提訴されましたが,裁判は2011年に和解し東日本大震災の復興のために15万ユーロが寄付されました.
ディック・ブルーナ氏は,日本の子どもたちに向け,大粒の涙を流す色のないミッフィーを描きました.「愛する人との別れは悲しいことです。でも『あなたの人生はこれからも続いていくんだよ』と伝えたかったのです」とのことです.

Dick Bruna at workで,ディック・ブルーナ氏のミッフィー作画の様子が見られます.耳と顔の輪郭の次は×を描いて,それからさかさまにして目を描いています.
先月,創作活動の停止が発表されましたので,残念ながらミッフィーの新作はありませんが,ミッフィーはこれからも人々に愛され続けることでしょう.


谷直樹

ブログランキングに参加しています.クリックをお願いします!
  ↓

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
にほんブログ村
by medical-law | 2014-08-24 17:08 | 趣味

患者の権利オンブズマン東京・2014秋季研修会講演「がん患者や家族のこころのケア」

患者の権利オンブズマン東京・2014秋季研修会講演
「がん患者や家族のこころのケア」~精神腫瘍科医として向き合う~
講師:大西秀樹先生

(医師・埼玉医科大学国際医療センター精神腫瘍科教授)

日時:2014年9月20日(土)13時30分~15時30分
(13時受付開始 定員40名 先着順です)

場所:東京ボランティア・市民活動センター
飯田橋駅西口徒歩2分(セントラルプラザ10階)

☆みなさんは「精神腫瘍科」という診療科をご存知ですか?
がんは患者さんの身体だけでなく、その心、そしてご家族の心にも大きな影響を与えます。がん患者の心のケアを考える医療を「サイコオンコロジー(精神腫瘍学)」といい、大西先生はその第一人者です。遺族の心のケアにも光を当て、「遺族外来」という言葉を創りだし、普及させたのも大西先生です。

☆大西先生に精神腫瘍科の基本からお教えいただき、日本の病院の現状や問題点、がん患者さんの心の状態が治療方法選択などの意思決定に及ぼす影響などについて、ご講義いただきます。患者さん、ご家族、ご遺族のこころのケアについて学びたい方にとって必聴のお話です。

主催:患者の権利オンブズマン東京
http://kanjakenri.com/ 03-5363-2052谷直樹法律事務所内

どなたでも参加できます 事前申込は不要です  参加費無料


谷直樹

ブログランキングに参加しています.クリックをお願いします!
  ↓

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
にほんブログ村
by medical-law | 2014-08-23 01:54 | 医療