弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

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名古屋大学医学部附属病院の中心静脈カテーテル動脈誤穿刺死亡事故で日本医療安全調査機構が調査報告

名古屋大学医学部附属病院は,2014年9月12日,「中心静脈カテーテル挿入時に鎖骨下動脈を誤穿刺し死亡した事例について」を発表します.

「臨床的に急性散在性脳脊髄炎(ADEM)を発症し、名古屋大学医学部附属病院(以下「当院」という。)に入院中の患者さんが、平成24年8月、胃管から投与されていた栄養剤を大量に嘔吐したことに伴い、肺に誤嚥をきたし、重篤な状態となりました。直ちに救急内科系重症管理の専門部門であるEMICU(救急・内科系集中治療部)に搬送しましたが、搬送後に施行した中心静脈カテーテル(以下「CVカテーテル」という。)挿入の際、鎖骨下動脈にCVカテーテルが誤って留置されました。医師団は留置直後の血液ガス分析により、この誤留置に気づき、カテーテル抜去、圧迫止血を行うことで対応しました。しかし、カテーテル抜去後6時間30分が経過した時点で咳き込みを契機に胸腔内に出血をきたし、その2時間30分後にショックにより亡くなられました。

 本事例を受け、当院は、第三者による客観的な事例検証が必要と判断し、ご遺族の同意を得た上で、一般社団法人日本医療安全調査機構(以下「機構」という。)に「診療行為に関連した死亡の調査分析モデル事業:協働型」として調査を依頼しました。その結果、機構が派遣する外部委員と当院の内部委員により構成される協働調査委員会において、本事例の死因究明及び診療行為に関する医学的な評価が行われ、平成26年4月に協働調査報告書が作成されました。

 更に機構の中央審査委員会において報告書の医学的妥当性等の審査が行われ、平成26年5月に内容は妥当であるとの判断がなされました。これを受け、同年8月5日に機構からご遺族及び当院に対して調査結果等の報告がありました。

 協働調査報告書に関しましては、機構において別紙「診療行為に関連した死亡の調査分析モデル事業 評価結果報告書の概要」のとおり概略資料が作成され、今後、機構のホームページにおいて公表される予定ですが、同報告書では、本事例におけるCVカテーテルの挿入手技に関して、ガイドワイヤーが正しく内頸静脈内に留置されているかどうか確認できていない状態でダイレーター(ガイドワイヤーに沿わせて皮下に刺入することで皮下組織や目標血管を鈍的に拡張し、カテーテル挿入路を形成するための器材)を挿入した点については、当院のマニュアルのみならず、標準的なCVカテーテル挿入の手順を逸脱している、との医学的評価がなされました。

 この評価を受け、当院では、診療行為に重大な落ち度があったものと考え、深く反省するとともに、ご遺族に対して謝罪いたしました。このたび、ご遺族のお許しをいただきましたので、これまでの経緯についてあらためて皆様にご報告申し上げます。

 患者さんのご冥福を心よりお祈りするとともに、上記協働調査報告書において示された提言を真摯に受け止め、再発防止に職員一丸となって取り組む所存です。」


日本医療安全調査機構は,「診療行為に関連した死亡の調査分析モデル事業」を行っています.
解剖を行い,診療行為に関連した死亡の原因を専門家が中立的な立場で調査し,診療上の問題点と死亡との因果関係を明らかにするとともに,同様の事例が再発しないための対策(再発防止策)を検討するもので,解剖を行い,調査委員会が死因,事故原因を解明し,再発防止策を検討するものです.
北海道,宮城県,茨城県,東京都,新潟県,愛知県,大阪府,兵庫県,岡山県・愛媛県,福岡県・佐賀県の12地域に限られています.これらの地域で医療事故死が疑われる事故があった場合,ご遺族は,遺体埋葬前に機構に連絡し,解剖,原因調査を依頼されたほうがよいと思います.

調査の方法は,従前外部委員だけだったのですが,平成24年から,その病院の人も含めて調査を行う「協働型」もできました.

本件は,その協働型の1例で,調査の結果,「ガイドワイヤーが内頸静脈に正しく留置された保証がない場合は、全ての挿入操作をやり直すか、ガイドワイヤーを一旦抜いて外套管にシリンジを装着し、血液の逆流を確認する必要があった。ガイドワイヤーが内頸静脈に留置されていると推測し、ダイレーターを挿入した時点で、ガイドワイヤーは内頸静脈を貫通し(あるいは内頸静脈を完全に外れ)、右鎖骨下動脈に挿入され穴が開いたと考えられる。CVカテーテルが動脈に留置された場合、外科医に連絡するなど抜去処置には万全をきたす必要があるが、右内頸動脈の分枝に留置されたと判断し、圧迫止血で対応できると考えたことは誤っていた。ダイレーター挿入操作について前述のマニュアル内には、「安全確認の上で最重要、省略してはいけない!」事項として外套管が静脈内に入っていることの確認法を記載している。さらに、『内頸静脈内にガイドワイヤーが挿入できたら、穿刺針外套をガイドワイヤーに沿って根元まで血管内に送り込み、ガイドワイヤーを一旦抜去し、外套に注射器をつけて静脈血がスムースに逆流することを確認する。エコーガイド下穿刺においても、この段階は最も重要であり、決して省略してはならない。なぜなら、静脈を貫いて動脈内にガイドワイヤーの先端がある可能性もあり、その場合に、もしエコー画像上でガイドワイヤーが静脈にあると確実にわかっているからとこの段階を省略してしまうと、最終的に静脈を貫いて動脈内にCVカテーテルを留置してしまうことになる。実際にそのような状況となってしまい、外科的処置を要したという報告がなされている。エコーはあくまで一断面での評価であることを忘れてはならない』と特に注意を呼びかけている。また、『穿刺中に少しでも不安を感じたときは、CVカテーテルやダイレーターを挿入する前に動静脈の判別をしなければならない。』との記載もある。ガイドワイヤーが正しく内頸静脈内に留置されているかどうか確認できていない状態でダイレーターを挿入した点については、同マニュアルのみならず、標準的なCVカテーテル挿入の手順を逸脱している。」と指摘されたわけです.


谷直樹

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by medical-law | 2014-09-13 05:54 | 医療事故・医療裁判

東京地裁平成26年9月10日判決,東京女子医科大学病院造影検査怠り下大静脈フィルター抜去で賠償命令

読売新聞「患者死亡「検査怠った」東京女子医大に賠償命令」(2014年9月10日)は,次のとおり報じました.

「東京女子医大病院(東京都新宿区)で2011年、大腸がんで入院して死亡した男性(当時64歳)の遺族が、大学側に約3000万円の損害賠償を求めた訴訟で、東京地裁は10日、大学側に約400万円の賠償を命じる判決を言い渡した。

 近藤昌昭裁判長は「肺塞栓症の防止に必要な検査を怠った」と述べた。

 判決によると、男性は、腹部の静脈にできた腫瘍の塊が肺に移動して肺塞栓症を起こすのを防ぐため、静脈に器具を挿入する措置を受けた。器具の除去直後に肺塞栓症になり、約2か月後に死亡した。

 大学側は「器具は適切に取り除き、死亡との因果関係もない」と主張。判決は死亡との因果関係は否定する一方で、医師は除去の際に必要な検査を怠ったと指摘し、「除去が肺塞栓症を引き起こした可能性も相当程度ある」と認定した。」


本件は,東京女子医科大学病院で下大静脈フィルターを抜去したところ,その数分後に肺塞栓症に陥り,多臓器不全により死亡した患者の遺族が,損害賠償を求めた事案です。
下大静脈フィルター回収キットの添付文書には,「下大静脈フィルターの回収前には,血管造影等を行い,捕獲した血栓の評価を行うこと」などと記載されています.
ところが,東京女子医科大学病院の医師は,血管造影検査等を行わずに,下大静脈フィルターを抜去しました.本判決は,その点について医師の注意義務違反を認めています.
フィルターに捕獲されていた腫瘍の塊がフィルター抜去により肺動脈にとび,肺塞栓症を発症したとみるのが理にかなっていると思いますが,本判決は,フィルター抜去後数分の間に新たに腫瘍の塊(塞栓子)がとんだ可能性もあるとして,死亡との因果関係について高度の蓋然性を認めず,相当程度の可能性が認められるとしました.
本判決が注意義務違反を認めた点は正しく,因果関係について相当程度の可能性にとどまるとして高度の蓋然性を認めなかった点は不相当であると考えます.


谷直樹

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by medical-law | 2014-09-10 21:54 | 医療事故・医療裁判

司法試験合格者1810人、うち予備試験からの合格者は163人

読売新聞「司法試験合格者、8年ぶり2千人下回る…大幅減」(2014年9月9日)は、次のとおり報じました.

法務省の司法試験委員会は9日、今年の司法試験合格者を発表した。

 合格者は1810人で前年比239人の大幅減となり、2006年以来8年ぶりに2000人を割り込んだ。合格率は前年から4・19ポイント減の22・58%と、法科大学院修了者の受験が始まった06年以降で最低。法科大学院を修了しなくても受験資格が得られる予備試験を経た合格者は、昨年から43人増えて過去最多の163人に上った。

 合格者数が大幅に減ったのは、政府が昨年、弁護士の就職難などを背景に、合格者を「年間3000人」に増やすとした当初目標を撤回した影響で、試験委員会が合格ラインを厳しく設定したためとみられる。

 今回、予備試験組の合格者は大学や大学院の在学生が120人と7割を占めた。合格者数は法科大学院でトップの早稲田大(172人)、2位の中央大(164人)に次ぐ人数で、合格率は昨年の71・86%より下がったものの、3年連続でどの大学院よりも高い66・8%を記録した。

 予備試験は、経済的に余裕がなくて法科大学院に通えない学生や社会人らの受験を想定し、「例外ルート」として11年に始まった。しかし、現役学生の間で、2~3年の在籍期間が必要で合格率も低迷する法科大学院を敬遠し、予備試験を選ぶ傾向が強まっている。」


法務省「平成26年司法試験の結果」によれば、
合格者の年齢別構成(本年12月末現在)は、
平均年齢 28.2歳、 最高年齢 65歳、最低年齢 22歳とのことです.
男性 は1,402人(77.46%)、女性 は408人(22.54%)でした.

法科大学院別合格者数は、早稲田大35.1%(172人)、中央大34.5%(164人)...でした.

予備試験からの合格者が多いことが注目されますが、実務家教育に徹することができない中途半端な法科大学院に行くより、予備試験を経由して1年でも早く司法試験に合格するほうを選択するのは当然と思います.
合格者が2000人を切ったことについて記事は3000人増員の御旗を降ろしたことの影響とみています.そのような見方も否定はできませんが、むしろ、年々法曹希望者が減り優秀な人材を集められないことの影響(質の低下の反映)とみたほうが正しいのではないでしょうか.

日本では弁護士に対するニーズが少ないのですから、(裁判官を大幅増員しないかぎり)今後、さらに合格者を減らす必要があると思います.
法科大学院は、本来法曹実務家になるための教育をおこなうためにあり、司法試験に合格するためのものではありません.法科大学院のための試験制度ではありませんので、予備試験を本則とし、法科大学院を経由しても不利にならない、というシステムに変えるほが、優秀な人材を集められる可能性が大きいと思いますが、いかがでしょうか.
比較的長い年月をかけて合格した人のなかにも,法曹として優秀な人材がいることを忘れてほしくないと思います.


谷直樹

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by medical-law | 2014-09-09 23:42 | 司法

名古屋市立東部医療センター,手術室で男性医師が女性医師に不適切な性的発言

読売新聞「手術室で同僚の女性医師に性的発言、医師を注意」(2014年09月09日)は,次のとおり報じました.

「名古屋市立東部医療センター(名古屋市千種区)の男性医師が同僚だった女性医師に不適切な性的発言を行ったとして、口頭注意を受けていたことが8日わかった。

 市病院局によると、5月30日午後、同センターの手術室で、手術前に男性医師が手術とは直接関係ないことを女性医師に話しかけた会話の中で、性的発言があったという。

 6月2日、女性医師から同センターに相談が寄せられ、当時周囲にいた職員ら関係者から事情を聞いたところ、不適切な発言があったことが確認された。このため、同27日、同センター病院長が口頭注意を行った。その後、男性医師と女性医師はそれぞれ依願退職したという。」


このような職場環境では,女性医師は定着しません.
セクハラ発言をする医師はいやですね.
患者からすると,医師は真剣に手術に集中してほしいと思います.

谷直樹

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by medical-law | 2014-09-09 18:24 | 医療

金沢大学病院の外部調査委員会が,倫理指針に反し先進医療の臨床試験を実施した問題について中間報告

北陸朝日放送「倫理指針違反で金大附属病院が中間報告」 (2014年9月8日)は,つぎのとおり報じました.

「金沢大学附属病院が行ったがん治療の臨床試験で、国が認めた倫理指針に違反していた問題で、病院側がこれまでの中間報告を発表しました。
この問題は金大附属病院が、がん治療の先進医療として、6年前から行っていた「カフェイン併用化学療法」について、厚生労働省が定めた試験期間を過ぎても、研究を実施していたものです。
病院側は、外部の有識者による調査委員会を設置し、8日、これまでの中間報告を発表しました。
調査委員会の報告では、臨床試験の正式な手続きをせずに、治療された患者が114人いることが分かりました。
調査委員会は「担当の整形外科の医師が、臨床試験以外でも治療を名目にカフェイン治療が実施できると誤解した、認識の甘さが根本的な問題だ」と指摘しました。
またこの化学療法では、2010年に骨肉腫で入院していた当時16歳の少女が急性心不全で死亡。抗がん剤の副作用による医療ミスの疑いがあるとして、整形外科の男性教授ら3人が5月に業務上過失致死の疑いで、書類送検されています。
少女の死亡との因果関係について、調査委員会では「この治療で患者に何が起きたか、再度検討していくべきだ」としたうえで、「明確な結果が出るまでは、この治療法を再開すべきでない」との見解を示し、臨床研究の担当部門の整備など、再発防止策を提言しました。」


整形外科の教授が,臨床試験期間中に臨床試験外に治療と称しカフェイン療法を実施し,臨床試験期間終了後にも治療と称しカフェイン療法を実施した事案です.
倫理指針を意図的に無視逸脱したのではなく,治療としてならできると誤解していたという報告ですが,有効性と安全性が確立していない「実験的療法」が治療として実施できないことくらいは,普通分かるはずです.医師に被験者の権利を尊重する姿勢があれば,倫理指針を正しく理解できたはずです.

【追記】

朝日新聞「業務上過失致死容疑の金沢大病院医師ら3人を不起訴処分」(2015年10月11日)は,次のとおり報じました.

「2010年に金沢大付属病院の先進医療を受けていた骨肉腫の少女(当時16)が死亡したのは医療ミスの疑いがあるとして、業務上過失致死の疑いで書類送検されていた当時の50代男性医師ら3人について、金沢地検は不起訴処分にした。7日付。「起訴するに足りるだけの証拠が集められなかった」としている。

 少女は「カフェイン併用化学療法」を受けていたが、急性心不全で死亡。遺族が12年、石川県警に告訴した。

 この化学療法をめぐっては、病院の倫理審査委員会の承認を受けるといった正式な手続きをせずに治療された患者が08~13年に106人いたとの報告書を、病院の調査委員会が昨年12月にまとめた。金沢大は今年3月、厚生労働省の倫理指針に違反していたとして、治療していた教員ら4人を文書訓告や学長による口頭注意の処分とした。」


 刑事手続きは,ハードルが高いようです.


谷直樹

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by medical-law | 2014-09-09 01:12 | コンプライアンス

中秋の名月とスーパームーン

今日は中秋の名月で,明日はスーパームーンです.中秋の名月は新月を含む日から数えて15日目ですので,今年は満月ではありません.
生憎の天候ですが,東京タワーをはじめイベントが予定されています.

月が地球に最も近づいたときの満月または新月がスーパームーンです.月が大きく明るく見えます.
スーパームーンに出産が多いと言われますが,本当のところどうなんでしょうか.

なお,ジャズ・スタンダードのイッツ・オンリー・ア・ペーパームーン( It's Only A Paper Moon)の
But it wouldn't be make believe
If you believed in me
を「信じれば本物になる」と訳したのは誤訳という説が有力です.
たしかに,信じても本物にはなりません.
直訳すれば,でも君がぼくを信じるとしてもぼくは絶対に信じない,になるのではないでしょうか.


谷直樹

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by medical-law | 2014-09-08 18:19 | 日常

言の葉の庭も閉鎖

新海誠監督の『言の葉の庭』は,雨の新宿御苑が重要な舞台となっています.
新海誠監督の作品は美しい.木々はもちろん,雨滴,池面,ビル群でさえも生き生きとして美しいです.
ストーリーは,古典的な約束事の上になりたっています.
今の人が絶対に言わない会話がかわされます.
国語の先生は,柿本人麻呂の問答歌を引きます.

雷神  小動  刺雲  雨零耶  君将留
(なるかみの 少しとよみて さし曇り 雨も降らぬか 君を留めむ)     

雷神  小動  雖不零  吾将留  妹留者
(なるかみの 少しとよみて 降らずとも われは留らむ 妹し留めば)

新宿御苑は,入園料がかかりますので混雑せず,落ち着いた雰囲気のなか季節の木々草花を楽しむことができます.
新宿御苑を訪れた人の感染は確認されていませんが,環境省は,デング熱感染の拡大を予防するため,9月7日から新宿御苑を閉鎖しました.環境省は先手を打って対策をとったのです.

代々木公園や新宿中央公園を訪れたことがなく海外への渡航歴もない60代の男性の感染が新たに確認されましたが,この男性は明治神宮外苑や外濠公園で蚊に刺されたとのことです.

【追記】

NHK「初のデング熱感染者の行動 正確に把握せず」(9月10日)は次のとおり報じました.

「デング熱に感染する患者が相次いでいる問題で、先月、最初に感染が判明した女性は、ダンスなどの練習で訪れた東京の代々木公園の複数の場所で蚊に刺されていたことがNHKの取材で分かりました。感染が判明したあと、東京都は、公園内の1か所だけで蚊の駆除を行いましたが、感染者の行動がきちんと把握されなかったことから、感染拡大を防止する対策が不十分になった可能性が出ています。

この問題では、埼玉県に住む10代の女性が東京の代々木公園で友人とダンスなどの練習をしている最中に蚊に刺され、デング熱に感染したことが判明して以降、感染者が全国で相次いでいます。
この最初に感染した女性がNHKの取材に応じ、当時の状況などを詳しく語りました。女性は、先月20日、自宅で40度の高熱を出し、意識を失って救急車で病院に運ばれ入院して治療を受けました。
その後も熱が下がらず、病名も特定できないため、母親がインターネットで調べたところ、デング熱と症状が一致していたことから詳しい検査が行われ、先月25日にデング熱と診断されたということです。
また、女性は、症状が出る前の8月中に6回にわたって代々木公園を訪れ、午後1時すぎから午後10時ごろまで滞在し、多いときには30か所以上蚊に刺されたとしています。
この際、女性は、公園の南側にある「渋谷門」近くと、300メートルほど離れた「原宿門」近くの2か所で練習をしていたほか、移動中も含め複数の場所で蚊に刺されたと証言しています。
一方、東京都は、女性の感染が判明した3日後に「渋谷門」周辺の半径75メートルだけで蚊の駆除作業を行いましたが、今月3日に蚊を採集して調べた結果、デング熱のウイルスを持つ蚊が依然、生息していることが裏付けられました。
感染の拡大を防ぐためには、蚊に刺された場所を詳しく特定する必要がありますが、女性から聞き取りを行った地元の保健所は「渋谷門」しか把握していませんでした。
東京都も、その報告のまま駆除を行っていたということで、感染者の行動がきちんと把握されなかったことから、感染拡大を防止する対策が不十分になった可能性が出ています。
東京都健康安全部の中谷肇一部長は「渋谷門以外にも蚊に刺された場所が情報としてあれば、より広いエリアでの対策も検討できた。今後、聞き取りの方法を検証したい」と話しています。」


msn産経「新たに青山公園と台東区内で感染か 千葉市の男性は代々木公園と同じウイルス」(2014.9.10)は,つぎのとおり報じました.

「国内での感染が広がるデング熱で、厚生労働省は10日、これまで感染推定地とされていた東京・代々木公園(渋谷区)など都内の4公園以外での感染が疑われる患者が2人いたと発表した。感染が推定されるのは、都立青山公園(港区)と台東区松が谷地区。港区と台東区が周辺で蚊の調査を行うなど対策を進めている。

 また、9日に千葉市稲毛区周辺で感染が確認された男性のウイルスは、東京・代々木公園の患者と同じ遺伝子配列だったことも確認された。代々木公園を中心に、ウイルスを持った蚊の生息域が拡大している可能性が高い。

 厚労省によると、新たな感染場所が疑われる患者は千葉県の50代男性と神奈川県の20代男性。千葉県の男性は発症する前まで東京都台東区松が谷の会社に勤務しており、そこで蚊に刺されたという。また、神奈川県の男性は8月下旬に外濠(そとぼり)公園と都立青山公園に行っており、青山公園の南地区で蚊に刺されたという。

 厚労省はこの2人以外にも、新たに神奈川県と東京都で海外渡航歴のない6人の感染が確認されたと発表。5人は代々木公園周辺を訪れており、1人は新宿中央公園を訪れていた。これで、国内での感染者は15都道府県で96人となった。

 また、代々木公園のある渋谷区に隣接する区の公園で行っている蚊のウイルス調査では、戸山公園(新宿区)▽菅刈公園(目黒区)▽西郷山公園(同)の3公園で蚊を採取したが、デングウイルスは発見されなかった。

 デング熱はデングウイルスを持つ蚊に刺されることで高熱や関節痛、発疹などが出る感染症で、人から人へは感染しない。厚労省は「蚊に刺された後に高熱や目の痛みなどの症状が出た人は、早めに医療機関に相談してほしい」としている。」



【再追記】

NHK「新宿御苑も蚊からウイルス確認」(2014年9月19日)は,次のとおり報じました.

「東京の代々木公園周辺などでデング熱の感染が相次ぐなか、調査のために今月7日から閉鎖していた東京の新宿御苑でも捕獲された蚊からウイルスが確認されたことが分かり、環境省は20日、園内の蚊の駆除作業を行うことにしています。

デング熱を巡っては、先月以降、東京・渋谷の代々木公園やその周辺などを訪れた人の感染が相次いでいるため、環境省は今月7日から東京の新宿御苑を閉鎖し、ウイルスを持った蚊がいないかどうか確認する調査を行っていました。
その結果、園内の10か所で捕獲したおよそ300匹のヒトスジシマカのうち2か所で捕獲された蚊からデング熱のウイルスが確認されたということです。
このため、環境省は新宿御苑の閉鎖を続けたうえで20日、園内で薬剤を散布して蚊の駆除作業を行うことにしています。
環境省は「新宿御苑の営業の再開は駆除作業の効果や今後の国内での感染の状況を見ながら判断したい」としています。」



谷直樹

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by medical-law | 2014-09-08 03:45

三菱神戸病院,緑内障の手術必要ないと断った事案で提訴される

産経新聞「緑内障の手術「必要ない」断られ失明 1億8000万円賠償求め提訴」(2014年9月6日)は,次のとおり報じした.

「三菱神戸病院(神戸市兵庫区)に緑内障の治療で通院していた同市垂水区の女性(64)が、失明したのは医師が手術など適切な措置を施す注意義務を怠ったためとして、病院を運営する三菱重工業(本社・東京都)を相手取り、約1億8千万円の損害賠償を求める訴訟を神戸地裁に起こしていたことが5日、わかった。

 提訴は7月24日付。

 訴状によると、女性は平成16年5月から緑内障の治療のために同病院に通院。17年3月以降、眼圧が高くなり、20年6月、別の病院で診察を受けた際、「失明する可能性があるので、すぐに手術が必要」とされた。これを受けて女性は同月、三菱神戸病院の主治医に手術を依頼したところ、「必要はない」と断られた。その後、女性が強く申入れ、同年10月と21年1月に同病院で手術を受けたが、失明したとしている。

 原告側は「20年6月に手術を受けていれば失明しなかった。病院は適切な治療を実施する注意義務を怠った」と訴えている。

 三菱重工側は「訴状の内容を確認中のため、コメントは差し控える」としている。」


緑内障は,日本人の失明原因のトップです.
40歳以上の人の5%が緑内障です.
緑内障は眼圧上昇により(他の要因とあわさり)視神経が障害される病気ですので(なお,他の病気の結果緑内障となる続発緑内障もあります),その治療は,眼圧を下げることです.
薬物療法,レーザー治療を行っても眼圧が下がらず,緑内障が進行している場合には,手術が行われます.
本件で,手術は必要ないと医師が判断した根拠は何だったのでしょうか.
本件では20年10月に手術を行っても失明していますのですが,それはなぜだったのでしょうか.
20年6月に手術を行わなかったことと失明とに因果関係はあるのでしょうか.
本訴訟に注目したいと思います.


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by medical-law | 2014-09-06 18:58 | 医療事故・医療裁判

がん診療連携拠点病院の4割が新要件を確保できず,来春の指定更新困難

読売新聞「がん拠点病院4割適さず…来春、指定取り消しも」(2014年9月6日)は,次のとおり報じました.

「国が指定するがん診療連携拠点病院(全国407病院)の4割が、治療件数などの点で厳格化された新要件を満たしていないことが、国立がん研究センターが今月公開した拠点病院の最新情報を読売新聞が分析し、判明した。

 「拠点」に求められる医療の質を確保できず、来春の指定更新時に看板を返上する病院が多く出る可能性がある。

 拠点病院は、2001年から指定が始まったが、治療実績が少なく、十分機能していない病院があると指摘されていた。このため、厚生労働省の有識者検討会で昨年議論し、〈1〉がん手術年間400件以上〈2〉化学療法のべ患者年間1000人以上〈3〉放射線治療のべ患者年間200人以上〈4〉常勤病理医の必須化――など、要件の厳格化が決まった。」


専門事件については,同種事件を多数取り扱っている経験豊富な弁護士のほうが,そうでない弁護士より,一般的に質の高い役務を提供できます.
がん診療など専門的医療についても同様のことが言えると思います.
米国などに比べると日本は国土が狭く交通網も発達していますので,がん治療のような高い質の医療を必要とするものについては,重点的に質の高い病院を配置するほうが適していると思います.


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by medical-law | 2014-09-06 07:54 | 医療

福岡高裁平成26年9月4日判決,嘔吐下痢症ではない可能性を考え検査する義務を肯定し逆転認容判決

毎日新聞「医療過誤:休日夜間こども診療所などの責任認定 福岡高裁」(2014年9月4日)は,次のとおり報じました.

「腸管梗塞(こうそく)で次男(当時12歳)が死亡したのは誤診のためだったとして、佐賀市の両親が、同市と民間2病院に総額約7600万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審の判決が4日、福岡高裁(一志泰滋裁判長)であった。高裁は両親側の請求を退けた1審・佐賀地裁判決を取り消し、市と1病院に約2000万円の支払いを命じた。

 判決によると、次男は2006年3月25日、嘔吐(おうと)などをしたため、市の「休日夜間こども診療所」を受診した。嘔吐下痢症と診断され、治療を受けたが改善せず、26日にロコメディカル江口病院(佐賀県小城市)と同診療所、別の病院を受診し27日未明に腸管梗塞で死亡した。

 一志裁判長は26日の診療所と江口病院の対応について「処置をしても嘔吐が止まっておらず、嘔吐下痢症ではない可能性を考えて血液検査をすべきだった。検査で異常所見が得られ高次医療機関で腸切除手術が可能だった」と過失を認定した。

 別の病院については、訪問時点で救命の可能性はほとんどなかったとして賠償責任を認めなかった。

 両親側は次男は腸にポリープができる疾患の既往歴があり、それに伴う嘔吐の可能性を考えることは容易だったなどと主張していた。父親(46)は「息子の死後、つらかったり、悔しかったりしたが、少しホッとした」と語った。佐賀市は「主張してきたことが認められず残念」とコメントした。【山本太一】」


佐賀新聞「腸重積症の男児死亡 佐賀市と病院に賠償命令」(2014年9月5日)は,次のとおり報じました.

「■福岡高裁逆転判決「適切対応怠った」 

 腸管がふさがれる「腸重積症」を起こしやすい遺伝性疾患を持つ佐賀市の男児=当時(12)=が不適切な医療処置で死亡したとして、両親が「休日夜間こども診療所」を運営する同市などに損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、福岡高裁(一志泰滋裁判長)は請求棄却した一審佐賀地裁判決を取り消し、両親側の訴えの一部を認めて市と、休日担当医で男児を診断した小城市の民間病院に計約2千万円の支払いを命じた。

 賠償額のうち佐賀市は300万円を民間病院と連帯で支払う内容。両親側の弁護士は「休日夜間の小児外来でも医師は慎重な診断や大病院への転送など適切な対応が求められることを示した判決」と評価した。

 判決によると、男児は2006年3月、嘔吐(おうと)と下痢の症状で、休日・夜間対応のこども診療所や民間病院を受診。いずれも嘔吐下痢症と診断されたが、入院先の別の医療機関で容体が悪化し、数日後に腸重積症で死亡した。

 原告側は、担当医師は遺伝性疾患を疑うべきだったと主張したが、一審判決は「診察時に特段の腹部所見はなく、腸重積を疑うべき症状は認められない」として退けた。

 同高裁の一志裁判長は判決理由で、男児が受診を繰り返しても症状の悪化が続き、点滴後も改善せず水を飲むと血の塊を吐くなどした状況を指摘。「医師は血液検査を行って慎重に原因を探り、高次医療機関に転送すべき義務があったのに怠った」と被告側の過失を認定した。男児の救命可能性を考慮してそれぞれの賠償額を決めた。

 両親は「つらく悔しい日々だったが、ようやく息子に顔向けできる。同じ子どもを二度と出さないよう医師は親身になって診察してほしい」と話した。佐賀市の秀島敏行市長は「主張が認められず残念」とのコメントを出した。病院側の弁護士は「判決文をよく読み、当事者と話し合って上告するか検討する」とした。」


このように地裁と高裁の判決が真逆になることが時々あります.
地裁の敗訴判決が不当で,逆転の可能性があると考えられるときは,控訴して争うべきでしょう.

代理人として実際に本件を担当した弁護士が書いた「九州合同法律事務所のブログ」もお読みください.

【追記】

佐賀市は上告する方針とのことです.
民事訴訟法第312条は,次のとおり定めています.  

「上告は、判決に憲法の解釈の誤りがあることその他憲法の違反があることを理由とするときに、することができる。
2  上告は、次に掲げる事由があることを理由とするときも、することができる。ただし、第四号に掲げる事由については、第三十四条第二項(第五十九条において準用する場合を含む。)の規定による追認があったときは、この限りでない。
一  法律に従って判決裁判所を構成しなかったこと。
二  法律により判決に関与することができない裁判官が判決に関与したこと。
二の二  日本の裁判所の管轄権の専属に関する規定に違反したこと。
三  専属管轄に関する規定に違反したこと(第六条第一項各号に定める裁判所が第一審の終局判決をした場合において当該訴訟が同項の規定により他の裁判所の専属管轄に属するときを除く。)。
四  法定代理権、訴訟代理権又は代理人が訴訟行為をするのに必要な授権を欠いたこと。
五  口頭弁論の公開の規定に違反したこと。
六  判決に理由を付せず、又は理由に食違いがあること。
3  高等裁判所にする上告は、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があることを理由とするときも、することができる。」

佐賀市は,本判決が何号の上告事由にあたると考えているのでしょうか.

【再追記】
産経新聞「死亡男児の両親、勝訴確定 佐賀」(2015年6月16日)は,次のとおり報じました.

「佐賀県で平成18年、男児=当時(12)=が腸管梗塞で死亡したのは佐賀市立診療所などの誤診が原因として、両親が損害賠償を求めた訴訟で、最高裁第2小法廷(山本庸幸裁判長)は15日までに、市と同県小城市の病院の上告を退ける決定をした。12日付。計約2千万円の支払いを命じた2審福岡高裁判決が確定した。」

当然でしょう.

谷直樹

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by medical-law | 2014-09-04 22:38 | 医療事故・医療裁判