弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

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品川美容外科などで手術を受けた40人が東京地裁に提訴(報道)

TBS「「リフトアップ」で後遺症、40人が品川美容外科を集団提訴」(2014年10月30日)は,次のとおり報じました.

「 「リフトアップ」と呼ばれる美容整形手術で「後遺症が残った」などとして、男女40人が「品川美容外科」と系列病院を集団提訴しました。東京地裁での集団提訴は、4月に続いて2度目です。

 新たに集団提訴したのは、関東近郊に住む20代から60代の男女40人です。

 弁護団によりますと、原告らは「品川美容外科」とその系列病院で、シワや頬のたるみを取り除く「リフトアップ」と呼ばれる手術を受けましたが、「事前の説明が不十分で効果がほとんどなく、顔に痛みなどが残った」などとして、「美容外科」側におよそ8800万円の賠償を求めています。

 東京地裁での集団提訴は4月に続き2度目で、品川美容外科側は「訴訟手続の中で誤解を解いていく所存です」とコメントしています。」」


糸によるフェイスリフトについてご相談を希望する方は,医療問題弁護団事務局 (03-5698-8544、平日午前10時から午後4時)までご連絡下さい。


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by medical-law | 2014-10-31 05:36 | 医療事故・医療裁判

11月1日福岡,患者の権利宣言30周年記念シンポジウム「医療被害」・薬害防止と医療基本法」

今週土曜日(2014年11月1日),福岡の天神クリスタル大ホールで,患者の権利法をつくる会と九州・山口医療問題研究会の主催で,「患者の権利宣言30周年記念シンポジウム「医療被害」・薬害防止と医療基本法」」が開かれます.

患者の権利宣言30周年記念シンポジウム「医療被害」・薬害防止と医療基本法

シンポジスト:
木村壮介さん(日本医療安全調査機構事務局長)
石政秀紹さん(医療過誤原告の会)
水口真寿美さん(薬害オンブズパースン会議事務局長)
池田利恵さん(全国子宮頸がんワクチン被害者連絡会事務局長)
小林洋二さん(患者の権利法をつくる会事務局長)

コーディネーター:
木下正一郎さん(医療版事故調推進フォーラム事務局)

主催:患者の権利法をつくる会他

日程:2014年11月1日(土)14:00から17:00
場所:天神クリスタルビル 大ホール(福岡市中央区天神4-6-7)

問い合わせ:電話092-641-2150(患者の権利法をつくる会)

チラシ表

チラシ裏


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by medical-law | 2014-10-30 22:23 | 医療

鹿児島地裁平成26年10月29日判決,急性心筋梗塞診断義務違反で鹿児島市立病院に賠償命令(報道)

時事通信「鹿児島市立病院に賠償命令=誤診で女性死亡-地裁」(2014年10月/29日)は,次のとおり報じました.

 「鹿児島市立病院で2009年、女性=当時(40)=が死亡したのは急性心筋梗塞を発症していたのに適切な治療をしなかったからだとして、遺族らが鹿児島市を相手に約8000万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が29日、鹿児島地裁であった。吉村真幸裁判長は「急性心筋梗塞と診断し、適切な検査と治療を施す義務があったのに怠った」と述べ、市に約7200万円を支払うよう命じた。
 吉村裁判長は、遅くとも女性が病院に搬送された翌日には急性心筋梗塞と診断し、必要な治療をする義務があったと指摘。「義務違反がなければ、死亡という結果を回避することができた確率は非常に高い」と判断した。
 判決によると、女性は09年9月6日、強い胸の痛みや呼吸の苦しさを訴え、同病院に救急搬送された。2回目の検査で研修医が「急性心筋梗塞の疑い」と診断したが、指導医は8日に退院させた。12日に同様の症状で再度搬送され、14日未明に死亡した。
 同病院の児玉哲朗総務課長の話 判決を重く受け止め、今後については弁護士と協議し対応する。」


本判決は,急性心筋梗塞の診断義務,治療との因果関係について参考になるでしょう.
急性心筋梗塞は,放置すると死亡等の重大な結果につながりますので,除外診断しない以上は退院させずに検査を行うべきで,指導医より研修医の判断のほうが正しいでしょう.研修医にも分かることが分からない指導医には過失があると言えるでしょう.

なお,吉村真幸判事は,横浜地裁,東京地裁,東京高裁,最高裁を歴任している裁判官です.

2008年8月に鹿児島県薩摩川内市の市立下甑手打診療所に入院中だった夫と同室でアルコール依存症の男性患者に頭を殴られてけがをし障害が残った女性に対し市が解決金2千万円を支払うことで鹿児島地裁で裁判上の和解が成立(平成25年1月9日)したことが報じられていましたが,そのときの裁判長です.

谷直樹

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by medical-law | 2014-10-29 18:38 | 医療事故・医療裁判

ブリストル・マイヤーズ株式会社,長島・大野・常松 法律事務所による「調査報告書」を公表

ブリストル・マイヤーズ株式会社(BMKK)の従業員が医師主導臨床研究であるSIGN研究のデザインをほぼ作成するという不適切な役務提供を行っていたこと等に関連し,ブリストル・マイヤーズ株式会社は,2014年10月27日,独立した外部の専門家から構成される第三者機関としての長島・大野・常松 法律事務所による「調査報告書」を公表しました.

結論として「本調査において、寄付および医師主導臨床研究の実施に関し、弊社による過去の不適切な役務提供等の可能性が指摘されました。一方、薬事法違反となる副作用症例の報告義務違反、データの改ざんや有効性・安全性の不当表示、及び患者様の個人情報保護法違反は認められませんでした。」(「医師主導臨床研究に関する第三者機関調査結果について」)とのことです.

「調査報告書」は,「BMKKにおいては、以下のとおり、臨床研究に対する労務提供に関するルールの整備が不十分であり、臨床研究に対する寄附に関するルールは存在したものの、その運用は必ずしも適切とはいえないものであった。」(57頁)と,社内ルールの整備不足等を指摘しています.

その背景について,「かつて販売推進目的から営業部門が過大な労務提供と寄附により臨床研究に深く関わっていた時代に培われた、医師と協働して作業して研究成果を上げることをGood Behaviorと捉える伝統的な社内文化が現場に残存していたようであり、MRを含む営業部門の現場において、臨床研究に対して労務提供を行うことの問題意識が希薄な状況が改められることはなかった。」(58頁)と指摘しています.

また,医師・医療機関の側にも今回の問題を誘発する一定の土壌があったと指摘しています.

まず、医師側には、臨床研究の実施によって薬剤に関する有用な情報を得ることができ、また、それを発表することで自己の医師としての実績になるため、臨床研究を実施したいというニーズが存在した。臨床研究にどのような利益があると見い出すかは医師によって異なるものの、何らかのメリットを感じて臨床研究を実施したい、あるいは参加したいという医師は相当程度存在したものと考えられる。

しかし、臨床研究を実施するには、検査費用等、多額の費用を要するにもかかわらず、国から医師・医療機関への研究資金の援助は十分でなく、また、臨床研究の実施には様々な書面作成等の作業が必要であるにもかかわらず、医師本人が多忙である上に、医療機関における人的資源も不足しており、純粋に医師・医療機関だけでこれを行うことは資金的にも労力的にも非常に困難であるという事情があった。

以上のような状況において、医師側には、製薬会社と協力して臨床研究を行うことにより、資金的・労力的に製薬会社の協力が得られ、寄附金の形で資金の提供がなされるため検査費用等の負担が不要となり、必要な書面作成等についても製薬会社の従業員が相当部分を分担してくれるという実態があった。他方、製薬会社側には、将来的な売上増大に繋がる臨床研究の結果を得ることに加え、臨床研究の実施それ自体により、自社製品が処方される患者を少しでも獲得し、売上を伸ばしたいというニーズがあり、双方のニーズが合致した。したがって、医師・医療機関としては、製薬会社が寄附及び労務提供をパッケージにして支援する臨床研究を広く利用する実態があった。

個々の医師の主観的な意識としても、臨床研究を介して医師側が製薬会社の資金と労務提供に大きく依存するような慣行が広く、かつ長年に亘って続いていたこともあって、製薬会社に寄附をさせたり、労務提供をさせたりすることについての問題意識が希薄になっていた側面が否定できないと考えられる。
」(61~62頁)

つまり,製薬会社に寄附・労務提供をさせることについて何とも思わず,成果物を自己の実績としようとする医師がいたわけです.
魚心あれば水心ということだったのでしょうか.


谷直樹

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by medical-law | 2014-10-29 02:22 | コンプライアンス

「睡蓮」、「かぐわしき大地」、「花がたみ」が70億画素で

ASCII.jp「モネの「睡蓮」が70億画素! Google アートプロジェクト、絶賛拡大中」(2014年10月27日)と伝えました.

「グーグルは10月27日、Google アートプロジェクトに東京国立近代美術館、三渓園など国内の美術館や施設19館が加わり、1288点の作品を閲覧できるようになったと発表した。

 同時に、グーグルが70億画素で撮影し、詳細なタッチまで拡大して見ることができるギガピクセルに、国立西洋美術館所蔵 クロード・モネ作「睡蓮」、大原美術館所蔵 ポール・ゴーギャン作「かぐわしき大地」が、加わった。」


モニター側の限界がありますが,拡大すると,絵の隅々まで筆のタッチがよく見えます.

松園の花がたみも拡大すると着物の柄の細部まもちろん,黒光りのする歯,切れ長の怖い眼までくっきり見えます.
ちなみみ,松園は,この狂女ものの製作にあたり岩倉病院に行って患者を観察したそうです.スケッチの顔はかわいらしいのですが,最終的にはこのような表情になりました.
能の照日の前は,一度は大迹皇子(後の継体天皇)と別れるのですが,継体天皇の紅葉狩りの行幸の前に花がたみを持って出ます.紅葉狩りの行幸の前に出るのは尋常ならざる振る舞いですのですので,照る日の前は狂女でなければなりません.一族の期待を背負い,ただならぬ覚悟をもって継体天皇の前に出た照日の前の表情は,こうでなければなりません.この世のものとは思えないほど美しく,怖い絵です.
継体天皇は,正気に戻った照日の前とその一行を御所に連れ帰ります.
越前の豪族であった大迹皇子が継体天皇となり,越前の関係者を呼び寄せたという背景があるのではないか,と思います.


谷直樹

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by medical-law | 2014-10-28 06:05 | 趣味

クオモNY州知事とクリスティーNJ州知事が強制隔離の方針発表

CNN「「米NY・NJ州の「強制隔離」方針、一部に批判の声も」(2014年10月26日)は,次のとおり報じました.

「ニューヨーク、ニュージャージー両州がエボラ出血熱の流行地域から帰国する医療従事者に最大21日間の強制隔離を義務付けたことに対し、連邦当局や医療支援団体から批判的な声が上がっている。

クオモ・ニューヨーク州知事とクリスティー・ニュージャージ州知事は24日に突然、強制隔離策を発表、施行した。対象となるのは両州の空港から入国する乗客のうち、西アフリカのエボラ熱流行地域で患者と直接接触した人。接触はなくても流行地域への渡航歴がある人は積極的な観察対象とし、必要に応じて隔離する。

ニューヨーク州では23日、流行国ギニアでのエボラ熱治療活動から帰国した医師の感染が確認されたばかりだった。

米連邦当局者が匿名で語ったところによると、米疾病対策センター(CDC)は両知事の発表に驚き、流行国へ向かおうとする医師や看護師らがいなくなる事態を心配しているという。

ニューヨーク市当局者も匿名で、「市に事前の相談はなかった。衝撃的だ」と述べた。

国際医療支援団体、国境なき医師団(MSF)は声明で、両州が発表した指針には不明点が多いため、詳細の確認を急いでいると述べた。そのうえで、「西アフリカに手を差し伸べようとするボランティアの意欲をそぐ結果になることだけは避けたい」との立場を示した。」


アンドリュー・クオモ・ニューヨーク州知事は,父親もニューヨーク州知事で,民主党員です.クリス・クリスティー・ニュージャージ州知事は,ソコリッチ・フォートリー市長の選挙戦における対応への報復としてジョージ・ワシントン橋を4日間閉鎖した疑惑があり,共和党員です.
この民主党のクオモ・ニューヨーク州知事と共和党のクリスティー・ニュージャージ州知事が協調して,エボラ熱流行地域から帰国する医療従事者等に対する最大21日間の強制隔離を方針を発表したのです.
しかし,感染症に対する水際作戦には限界があります.ケネディ,ニューアーク両空港以外に,ワシントン,シカゴ,アトランタの各空港ルートから入国する人もいますから,完全に防止することはできません.最大21日の強制隔離は,実質的に出入国に対する制限として過大ではないでしょうか.
エボラ熱に対する効果的な対策は,流行地域の流行を国際的支援によって沈静化することです.元から絶つのが有効な対策です.欧州連合(EU)はエボラ熱の感染拡大を食い止めるため10億ユーロの拠出を決めた,と報じられています.
今回のエボラ熱流行は,世界保健機関(WHO)によると,無能な職員や官僚的な組織体質から初動に失敗し感染拡大を食い止められなかった,アフリカ地域事務局長とWHOのチャン事務局長との意思疎通もなかった,とのことです.エボラ熱が空気感染型に変異したという説は否定されています.対応を誤ったことによる人為的な流行と言えるのではないでしょうか.そうであれば,適切な対応(国際的支援)で流行を沈静化することは可能なはずです.

CNN「エボラ熱流行 感染者1万人を超える、4922人死亡」(2014年10月26日)は,次のとおり報じました.

「西アフリカ諸国で大流行しているエボラ出血熱の問題で世界保健機関(WHO)は25日、疑い例を含む感染者数が1万141人と1万人の大台を超えたことが確認されたと報告した。

死者数は計4922人。感染者はほぼ全員がリベリア、シエラレオネとギニアで出ている。WHOによると、シエラレオネでは全ての地区で、リベリアでは1地区を除いた全地区で少なくとも1件の感染例が報告された。

エボラ熱に感染した医療従事者数は世界規模で計450人。ほぼ全員が西アフリカ諸国で発生した。このうちの死亡者は244人となっている。

一方、モーリタニア政府は24日、隣国マリでエボラ熱の初の死者が出たことを受け、感染拡大の予防措置として東部の国境線を閉鎖したと発表した。モーリタニアの国営通信によると、同国は既にエボラ熱の被害が判明した諸国からの旅行客の入国を禁止している。

また、アフリカ東部のエチオピア政府はエボラ熱対策で西アフリカ諸国に医療従事者200人を派遣する計画を発表した。アフリカ連合(AU)が1週間前に出した医療関係者派遣の緊急要請に応じた。」


攻撃は最大の防御なり"Attack is the best form of defense",と言います.流行地域への人的・物的援助こそ,最も有効なエボラ熱対策だと思います.

その後ニューヨーク州は2強制隔離を自宅からの外出禁止措置に緩和すると発表しました.た。

Dallas Hospital Had the Ebola Screening Machine That the Military Is Using in Africa

The military is using an Ebola screening machine that could have diagnosed the Ebola cases in Texas far faster, but government guidelines prevent hospitals from using it to actually screen for Ebola.
It’s a toaster-sized box called FilmArray, produced by a company called BioFire, a subsidiary of bioMérieux and it’s capable of detecting Ebola with a high degree of confidence — in under an hour.


さすが米軍です.

Emergency authorization: FDA approves two new Ebola-detection kits

The US medical watchdog has issued an emergency authorization for the use of two new diagnostic toolkits by BioFire Defense designed to detect Ebola virus in people showing signs of infection or those who could have been exposed to the virus.

これで民間でも迅速に検査ができまるようになるでしょう.

【追記】

ロイター「エボラ関連の医療従事者隔離で新指針、米CDCが発表」(2014年 10月 28日)は,次のとおり報じました.T

「米疾病対策センター(CDC)は27日、エボラ出血熱が流行している西アフリカから帰国した医療関係者に対して一部の州で強制隔離が行われて物議を醸していることを受け、新たな指針を発表した。

CDCのフリーデン所長は、最も感染リスクの高い人については自主的な自宅待機を求めるとする一方、流行国であるリベリア、ギニア、シエラレオネから帰国した医療従事者については、隔離せずに毎日体調を監視することが求められるとの見解を示した。

新指針では感染リスクを4段階に分類。流行地域から帰国した医療従事者の大半は「一定のリスク」、米国の施設で患者の治療にあたった医療従事者は「低いがゼロではないリスク」に区分される。

隔離については、西アフリカで感染防止活動にあたった軍要員を、感染の兆候が見られなくても隔離すると軍が表明したほか、シエラレオネで患者の治療にあたった看護師がニュージャージー州で強制隔離され、陰性の判定を受けた後も2日間隔離を継続された。

こうした事態に、公衆衛生の専門家や国連、医療慈善団体、ホワイトハウスなどから、強制隔離は科学的に正当化されるものではなく、西アフリカでの活動の妨げになるとの批判が高まっていた。」


谷直樹

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by medical-law | 2014-10-27 00:22 | 医療

最高裁平成26年10月23日判決,雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法の解釈

平成24年(受)第2231号 地位確認等請求事件,最高裁(一小)平成26年10月23日判決は,次のとおり,女性労働者につき労働基準法65条3項に基づく妊娠中の軽易な業務への転換を契機として降格させた事業主の措置をめぐり,雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律9条3項の解釈について違法があるとして,原審(広島高裁)判決を破棄し,差し戻しました.

主 文

原判決を破棄する。
本件を広島高等裁判所に差し戻す。

理 由

上告代理人下中奈美,同鈴木泰輔の上告受理申立て理由(ただし,排除されたものを除く。)について

1 本件は,被上告人に雇用され副主任の職位にあった理学療法士である上告人が,労働基準法65条3項に基づく妊娠中の軽易な業務への転換に際して副主任を免ぜられ,育児休業の終了後も副主任に任ぜられなかったことから,被上告人に対し,上記の副主任を免じた措置は雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(以下「均等法」という。)9条3項に違反する無効なものであるなどと主張して,管理職(副主任)手当の支払及び債務不履行又は不法行為に基づく損害賠償を求める事案である。

2 原審の確定した事実関係等の概要は,次のとおりである。

(1) 被上告人は,医療介護事業等を行う消費生活協同組合であり,A病院(以下「本件病院」という。)など複数の医療施設を運営している。
上告人は,平成6年3月21日,被上告人との間で,理学療法士として理学療法の業務に従事することを内容とする期間の定めのない労働契約を締結し,本件病院の理学療法科(その後,リハビリテーション科に名称が変更された。以下,名称変更の前後を通じて「リハビリ科」という。)に配属された。

(2) 上告人は,その後,診療所等での勤務を経て,平成15年12月1日,再びリハビリ科に配属された。その当時,リハビリ科に所属していた理学療法士は,同科の科長を除き,患者の自宅を訪問してリハビリテーション業務を行うチーム(以下,「訪問リハビリチーム」といい,その業務を「訪問リハビリ業務」という。)又は本件病院内においてリハビリテーション業務を行うチーム(以下,「病院リハビリチーム」といい,その業務を「病院リハビリ業務」という。)のいずれかに所属するものとされており,上告人は訪問リハビリチームに所属することとなった。

(3) 上告人は,平成16年4月16日,訪問リハビリチームから病院リハビリチームに異動するとともに,リハビリ科の副主任に任ぜられ,病院リハビリ業務につき取りまとめを行うものとされた。
その頃に第1子を妊娠した上告人は,平成18年2月12日,産前産後の休業と育児休業を終えて職場復帰するとともに,病院リハビリチームから訪問リハビリチームに異動し,副主任として訪問リハビリ業務につき取りまとめを行うものとされた。

(4) 被上告人は,平成19年7月1日,リハビリ科の業務のうち訪問リハビリ業務を被上告人の運営する訪問介護施設であるB(以下「B」という。)に移管した。この移管により,上告人は,リハビリ科の副主任からBの副主任となった。

(5) 上告人は,平成20年2月,第2子を妊娠し,労働基準法65条3項に基づいて軽易な業務への転換を請求し,転換後の業務として,訪問リハビリ業務よりも身体的負担が小さいとされていた病院リハビリ業務を希望した。これを受けて,被上告人は,上記の請求に係る軽易な業務への転換として,同年3月1日,上告人をBからリハビリ科に異動させた。その当時,同科においては,上告人よりも理学療法士としての職歴の3年長い職員が,主任として病院リハビリ業務につき取りまとめを行っていた。

(6) 被上告人は,平成20年3月中旬頃,本件病院の事務長を通じて,上告人に対し,手続上の過誤により上記(5)の異動の際に副主任を免ずる旨の辞令を発することを失念していたと説明し,その後,リハビリ科の科長を通じて,上告人に再度その旨を説明して,副主任を免ずることについてその時点では渋々ながらも上告人の了解を得た。
その頃,上告人は,被上告人の介護事務部長に対し,平成20年4月1日付けで副主任を免ぜられると,上告人自身のミスのため降格されたように他の職員から受け取られるので,リハビリ科への異動の日である同年3月1日に遡って副主任を免じてほしい旨の希望を述べた。
上記のような経過を経て,被上告人は,平成20年4月2日,上告人に対し,同年3月1日付けでリハビリ科に異動させるとともに副主任を免ずる旨の辞令を発した(以下,上告人につき副主任を免じたこの措置を「本件措置」という。)。

(7) 上告人は,平成20年9月1日から同年12月7日まで産前産後の休業を
し,同月8日から同21年10月11日まで育児休業をした。被上告人は,リハビリ科の科長を通じて,育児休業中の上告人から職場復帰に関する希望を聴取した上,平成21年10月12日,育児休業を終えて職場復帰した上告人をリハビリ科からBに異動させた。その当時,Bにおいては,上告人よりも理学療法士としての職歴の6年短い職員が本件措置後間もなく副主任に任ぜられて訪問リハビリ業務につき取りまとめを行っていたことから,上告人は,再び副主任に任ぜられることなく,これ以後,上記の職員の下で勤務することとなった。上記の希望聴取の際,育児休業を終えて職場復帰した後も副主任に任ぜられないことを被上告人から知らされた上告人は,これを不服として強く抗議し,その後本件訴訟を提起するに至った。

(8) 被上告人は,被上告人が運営する病院,診療所等の各部及び各科に配置する管理者の任務,権限,責任及びその任免について,「管理職務規定」を定めており,同規定が対象とする管理者の範囲は,部長,科長,課長,師長,医長,主任又は副主任の職位にある者とされている。また,被上告人の職員の給与については,その職種,経験,学歴,勤続年数等に応じて決定される基本給のほか,扶養手当,管理職手当等の諸手当があり,管理職手当の金額は,その職位ごとに定められており,副主任の場合は月額9500円とされていた。

3 原審は,上記事実関係等の下において,要旨次のとおり判断して,上告人の請求をいずれも棄却すべきものとした。
本件措置は,上告人の同意を得た上で,被上告人の人事配置上の必要性に基づいてその裁量権の範囲内で行われたものであり,上告人の妊娠に伴う軽易な業務への転換請求のみをもって,その裁量権の範囲を逸脱して均等法9条3項の禁止する取扱いがされたものではないから,同項に違反する無効なものであるということはできない。

4 しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,以下のとおりである。

(1)ア 均等法は,雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保を図るとともに,女性労働者の就業に関して妊娠中及び出産後の健康の確保を図る等の措置を推進することをその目的とし(1条),女性労働者の母性の尊重と職業生活の充実の確保を基本的理念として(2条),女性労働者につき,妊娠,出産,産前休業の請求,産前産後の休業その他の妊娠又は出産に関する事由であって厚生労働省令で定めるものを理由として解雇その他不利益な取扱いをしてはならない旨を定めている(9条3項)。そして,同項の規定を受けて,雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律施行規則2条の2第6号は,上記の「妊娠又は出産に関する事由」として,労働基準法65条3項の規定により他の軽易な業務に転換したこと(以下「軽易業務への転換」という。)等を規定している。
上記のような均等法の規定の文言や趣旨等に鑑みると,同法9条3項の規定は,上記の目的及び基本的理念を実現するためにこれに反する事業主による措置を禁止する強行規定として設けられたものと解するのが相当であり,女性労働者につき,妊娠,出産,産前休業の請求,産前産後の休業又は軽易業務への転換等を理由として解雇その他不利益な取扱いをすることは,同項に違反するものとして違法であり,無効であるというべきである。

イ 一般に降格は労働者に不利な影響をもたらす処遇であるところ,上記のような均等法1条及び2条の規定する同法の目的及び基本的理念やこれらに基づいて同法9条3項の規制が設けられた趣旨及び目的に照らせば,女性労働者につき妊娠中の軽易業務への転換を契機として降格させる事業主の措置は,原則として同項の禁止する取扱いに当たるものと解されるが,当該労働者が軽易業務への転換及び上記措置により受ける有利な影響並びに上記措置により受ける不利な影響の内容や程度,上記措置に係る事業主による説明の内容その他の経緯や当該労働者の意向等に照らして,当該労働者につき自由な意思に基づいて降格を承諾したものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するとき,又は事業主において当該労働者につき降格の措置を執ることなく軽易業務への転換をさせることに円滑な業務運営や人員の適正配置の確保などの業務上の必要性から支障がある場合であって,その業務上の必要性の内容や程度及び上記の有利又は不利な影響の内容や程度に照らして,上記措置につき同項の趣旨及び目的に実質的に反しないものと認められる特段の事情が存在するときは,同項の禁止する取扱いに当たらないものと解するのが相当である。
そして,上記の承諾に係る合理的な理由に関しては,上記の有利又は不利な影響の内容や程度の評価に当たって,上記措置の前後における職務内容の実質,業務上の負担の内容や程度,労働条件の内容等を勘案し,当該労働者が上記措置による影響につき事業主から適切な説明を受けて十分に理解した上でその諾否を決定し得たか否かという観点から,その存否を判断すべきものと解される。また,上記特段の事情に関しては,上記の業務上の必要性の有無及びその内容や程度の評価に当たって,当該労働者の転換後の業務の性質や内容,転換後の職場の組織や業務態勢及び人員配置の状況,当該労働者の知識や経験等を勘案するとともに,上記の有利又は不利な影響の内容や程度の評価に当たって,上記措置に係る経緯や当該労働者の意向等をも勘案して,その存否を判断すべきものと解される。
均等法10条に基づいて定められた告示である「労働者に対する性別を理由とする差別の禁止等に関する規定に定める事項に関し,事業主が適切に対処するための指針」(平成18年厚生労働省告示第614号)第4の3(2)が,同法9条3項の禁止する取扱いに当たり得るものの例示として降格させることなどを定めているのも,上記のような趣旨によるものということができる。

(2)ア これを本件についてみるに,上告人は,妊娠中の軽易業務への転換としてのBからリハビリ科への異動を契機として,本件措置により管理職である副主任から非管理職の職員に降格されたものであるところ,上記異動により患者の自宅への訪問を要しなくなったものの,上記異動の前後におけるリハビリ業務自体の負担の異同は明らかではない上,リハビリ科の主任又は副主任の管理職としての職務内容の実質が判然としないこと等からすれば,副主任を免ぜられたこと自体によって上告人における業務上の負担の軽減が図られたか否か及びその内容や程度は明らかではなく,上告人が軽易業務への転換及び本件措置により受けた有利な影響の内容や程度が明らかにされているということはできない。
他方で,本件措置により,上告人は,その職位が勤続10年を経て就任した管理職である副主任から非管理職の職員に変更されるという処遇上の不利な影響を受けるとともに,管理職手当の支給を受けられなくなるなどの給与等に係る不利な影響も受けている。
そして,上告人は,前記2(7)のとおり,育児休業を終えて職場復帰した後も,本件措置後間もなく副主任に昇進した他の職員の下で,副主任に復帰することができずに非管理職の職員としての勤務を余儀なくされ続けているのであって,このような一連の経緯に鑑みると,本件措置による降格は,軽易業務への転換期間中の一時的な措置ではなく,上記期間の経過後も副主任への復帰を予定していない措置としてされたものとみるのが相当であるといわざるを得ない。
しかるところ,上告人は,被上告人からリハビリ科の科長等を通じて副主任を免ずる旨を伝えられた際に,育児休業からの職場復帰時に副主任に復帰することの可否等について説明を受けた形跡は記録上うかがわれず,さらに,職場復帰に関する希望聴取の際には職場復帰後も副主任に任ぜられないことを知らされ,これを不服として強く抗議し,その後に本訴の提起に至っているものである。
以上に鑑みると,上告人が軽易業務への転換及び本件措置により受けた有利な影響の内容や程度は明らかではない一方で,上告人が本件措置により受けた不利な影響の内容や程度は管理職の地位と手当等の喪失という重大なものである上,本件措置による降格は,軽易業務への転換期間の経過後も副主任への復帰を予定していないものといわざるを得ず,上告人の意向に反するものであったというべきである。
それにもかかわらず,育児休業終了後の副主任への復帰の可否等について上告人が被上告人から説明を受けた形跡はなく,上告人は,被上告人から前記2(6)のように本件措置による影響につき不十分な内容の説明を受けただけで,育児休業終了後の副主任への復帰の可否等につき事前に認識を得る機会を得られないまま,本件措置の時点では副主任を免ぜられることを渋々ながら受け入れたにとどまるものであるから,上告人において,本件措置による影響につき事業主から適切な説明を受けて十分に理解した上でその諾否を決定し得たものとはいえず,上告人につき前記(1)イにいう自由な意思に基づいて降格を承諾したものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するということはできないというべきである。

イ また,上告人は,前記のとおり,妊娠中の軽易業務への転換としてのBからリハビリ科への異動を契機として,本件措置により管理職である副主任から非管理職の職員に降格されたものであるところ,リハビリ科においてその業務につき取りまとめを行うものとされる主任又は副主任の管理職としての職務内容の実質及び同科の組織や業務態勢等は判然とせず,仮に上告人が自らの理学療法士としての知識及び経験を踏まえて同科の主任とともにこれを補佐する副主任としてその業務につき取りまとめを行うものとされたとした場合に被上告人の業務運営に支障が生ずるのか否か及びその程度は明らかではないから,上告人につき軽易業務への転換に伴い副主任を免ずる措置を執ったことについて,被上告人における業務上の必要性の有無及びその内容や程度が十分に明らかにされているということはできない。
そうすると,本件については,被上告人において上告人につき降格の措置を執ることなく軽易業務への転換をさせることに業務上の必要性から支障があったか否か等は明らかではなく,前記のとおり,本件措置により上告人における業務上の負担の軽減が図られたか否か等も明らかではない一方で,上告人が本件措置により受けた不利な影響の内容や程度は管理職の地位と手当等の喪失という重大なものである上,本件措置による降格は,軽易業務への転換期間の経過後も副主任への復帰を予定していないものといわざるを得ず,上告人の意向に反するものであったというべきであるから,本件措置については,被上告人における業務上の必要性の内容や程度,上告人における業務上の負担の軽減の内容や程度を基礎付ける事情の有無などの点が明らかにされない限り,前記(1)イにいう均等法9条3項の趣旨及び目的に実質的に反しないものと認められる特段の事情の存在を認めることはできないものというべきである。したがって,これらの点について十分に審理し検討した上で上記特段の事情の存否について判断することなく,原審摘示の事情のみをもって直ちに本件措置が均等法9条3項の禁止する取扱いに当たらないと判断した原審の判断には,審理不尽の結果,法令の解釈適用を誤った違法がある。

5 以上のとおり,原審の判断には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨はこの趣旨をいうものとして理由があり,原判決は破棄を免れない。そして,上記の点について更に審理を尽くさせるため本件を原審に差し戻すべきである。
よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。なお,裁判官櫻井龍子の補足意見がある。

裁判官櫻井龍子の補足意見は,次のとおりである。

上告人が妊娠中の軽易業務への転換を請求したことに伴う本件措置が均等法9条3項に違反する措置であるか否かの判断については,以上の法廷意見のとおりであり私も賛同するものであるが,本件の第1審,原審では,育児休業から復帰後の配置等が同項等に違反するか否かについても争われ,判断の対象とされているものであり,予備的請求原因として位置付けられるため当審における判示の対象には含まれていないものの,上告受理申立て理由の一つとして主張されていることも踏まえ,その点に関し,以下,念のため,私の意見を補足的に申し述べておきたい。

1 原審認定事実によると,被上告人は,上告人が平成21年10月12日に育児休業から復帰した際も副主任の地位に復帰させていないが,この措置(以下「本件措置2」という。)について,原審は,上告人が配置されるなら辞めるという理学療法士が2人いる職場があるなど復帰先が絞られ,軽易業務への転換前の職場であったBが復帰先になったところ,Bには既に副主任として配置されていた理学療法士がおり,上告人を副主任にする必要がなかったのであるから,均等法等に違反するものでも人事権の濫用に当たるものでもない旨判示する。

2 しかしながら,本件措置2についても,以下のとおり,原審の判断は十分に審理が尽くされた上での判断とはいえないといわざるを得ない。

(1) 育児休業,介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律
(以下「育児・介護休業法」という。)は,育児休業,介護休業制度等を設けることにより,子の養育又は家族の介護を行う労働者の雇用の継続等を図り,その職業生活と家庭生活の両立に寄与することを目的とする(1条)ものであり,そのため,労働者が育児休業申出をし,又は育児休業をしたことを理由として,解雇その他不利益な取扱いをしてはならない(10条)と定めるものである。
同法10条の規定が強行規定と解すべきことは,法廷意見において均等法9条3項について述べるところと同様であろうし,一般的に降格が上記規定の禁止する不利益な取扱いに該当することも同様に解してよかろう。
本件の場合,上告人が産前産後休業に引き続き育児休業を取得したときは,妊娠中の軽易業務への転換に伴い副主任を免ぜられた後であったため,育児休業から復帰後に副主任の発令がなされなくとも降格には当たらず不利益な取扱いには該当しないとする主張もあり得るかもしれないが,軽易業務への転換が妊娠中のみの一時的な措置であることは法律上明らかであることからすると,育児休業から復帰後の配置等が降格に該当し不利益な取扱いというべきか否かの判断に当たっては,妊娠中の軽易業務への転換後の職位等との比較で行うものではなく,軽易業務への転換前の職位等との比較で行うべきことは育児・介護休業法10条の趣旨及び目的から明らかである。
そうすると,本件の場合,主位的請求原因に係る本件措置の適否に関する判断が差戻審において改めて行われるものであるが,予備的請求原因に係る本件措置2の適否に関する判断の要否は措くとしても,本件措置2については,それが降格に該当することを前提とした上で,育児・介護休業法10条の禁止する不利益な取扱いに該当するか否かが慎重に判断されるべきものといわなければならない。

(2) もとより,法廷意見が均等法9条3項について述べるところを踏まえれば,そのような育児休業から復帰後の配置等が,円滑な業務運営や人員の適正配置などの業務上の必要性に基づく場合であって,その必要性の内容や程度が育児・介護休業法10条の趣旨及び目的に実質的に反しないと認められる特段の事情が存在するときは,同条の禁止する不利益な取扱いに当たらないものと解する余地があることは一般論としては否定されない。
そして,上記特段の事情の存否に係る判断においては,当該労働者の配置後の業務の性質や内容,配置後の職場の組織や業務態勢及び人員配置の状況,当該労働者の知識や経験等が勘案された上で検討されるべきことも同様であろう。

(3) とりわけ,育児・介護休業法21条及び22条が,事業主の努力義務として,育児休業後の配置等その他の労働条件についてあらかじめ定めておき,労働者に周知させておくべきこと,また,育児休業後の就業が円滑に行われるよう,当該労働者が雇用される事業所の労働者の配置その他の雇用管理等に関し必要な措置を講ずべきことを定め,さらにこれらの運用に係る指針(平成16年厚生労働省告示第460号。平成21年厚生労働省告示第509号による改正前のもの)において,育児休業後には原則として原職又は原職相当職に復帰させることが多く行われていることを前提として他の労働者の配置その他の雇用管理が行われるように配慮すべきことが求められているなど,これら一連の法令等の規定の趣旨及び目的を十分に踏まえた観点からの検討が行われるべきであろう。これらの法令等により求められる措置は,育児休業が相当長期間にわたる休業であることを踏まえ,我が国の企業等の人事管理の実態と育児休業をとる労働者の保護の調整を行うことにより,法の実効性を担保し育児休業をとりやすい職場環境の整備を図るための制度の根幹に関わる部分である。
本件においては,上告人が職場復帰を前提として育児休業をとったことは明らかであったのであるから,復帰後にどのような配置を行うかあらかじめ定めて上告人にも明示した上,他の労働者の雇用管理もそのことを前提に行うべきであったと考えられるところ,法廷意見に述べるとおり育児休業取得前に上告人に復帰後の配置等について適切な説明が行われたとは認められず,しかも本件措置後間もなく上告人より後輩の理学療法士を上告人が軽易業務への転換前に就任していた副主任に発令,配置し,専らそのゆえに上告人に育児休業から復帰後も副主任の発令が行われなかったというのであるから,これらは上記(2)に述べた特段の事情がなかったと認める方向に大きく働く要素であるといわざるを得ないであろう。
3 なお,上告人は育児休業を取得する前に産前産後休業を取得しているため,本件措置2が育児・介護休業法10条の禁止する不利益な取扱いに該当すると認められる場合には,産前産後休業を取得したことを理由とする不利益な取扱いを禁止する均等法9条3項にも違反することとなることはいうまでもない。

(裁判長裁判官 櫻井龍子 裁判官 金築誠志 裁判官 横田尤孝 裁判官 白木勇 裁判官 山浦善樹)


女性が妊娠した場合,軽易な業務に替わるのは医学的に合理的で必要なことですし,女性がそれを希望するのは当然です.ただ,軽易な業務に替わることで,降格,減収となると,軽易な業務を希望することを躊躇することになるでしょう.ひいては,そのような取り扱いは妊娠出産についての障害となり得ます.ですから,妊娠した女性が軽易な業務に替わっても不利益をうけないように,役職,給与について十分配慮しなければいけないでしょう.法の趣旨を正しく解釈すると,本最高裁判決のように原則禁止,例外的に許容となるはずです.

原審の裁判官は,原則・例外の位置づけをせずに,人事権の裁量の範囲を広く認めた点に問題があるでしょう.

また,本判決は,妊娠した女性のみならず,種々の事情で一時的に軽易な業務に移らざるをえない労働者の待遇,給与についても影響を及ぼすのではないか,と思います.

谷直樹

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by medical-law | 2014-10-26 03:20 | 人権

西澤班の「議論の整理」

産経新聞「【医療事故調】研究班が中間報告 具体論盛り込まず」(2014年10月23日)は,次のとおり報じました.

「来年10月から始まる「医療事故調査制度」で、調査手法などを検討する厚生労働省の研究班が23日、中間報告を公表した。報告では病院による自己調査(院内調査)の実施体制の重要性が確認されたが、第三者機関への届け出基準などの具体論については今後の検討課題とし、盛り込まれなかった。研究班は今年度内に報告書をまとめる。

 一方、厚労省は近く、有識者で構成する検討会を立ち上げる予定で、研究班の議論を踏まえた上で運用指針を完成させる予定。

 制度は全国約18万カ所の病院や診療所、助産所が対象。診療行為に関連した患者の「予期せぬ死亡」があった際、病院は民間の第三者機関に届け出る。その上で病院が自ら調査し、結果を遺族と第三者機関に報告する。遺族に不服があれば、第三者機関に再調査を依頼することができる。

 報告では、届け出基準について「病院の管理者ではなく(医療行為の)当事者が『予期しない』ことを考慮すべき」などの意見が列挙されたが、集約には至らなかった。また、病院から遺族へ院内調査結果を説明する際は、個人の責任追及につながらないよう匿名化などを検討するとした。」


産経新聞「「予期せぬ死亡」後絶たず 年間最大2千件と推計」(2014年10月23日)は,次のとおり報じました.

「厚生労働省によると、医療行為に伴う「予期せぬ死亡事故」は年間1300~2千件と推計される。近年も医療事故に伴うとみられる死亡例は後を絶たない。

 東京女子医大病院(東京都新宿区)では2月、あごのリンパ管腫の手術を受け、人工呼吸器をつけて経過観察中だった男児(2)の容体が急変、3日後に死亡した。その後、病院側が集中治療室(ICU)で人工呼吸中の子供への投与が禁じられている鎮静剤「プロポフォール」を使用していたことが判明。成人への基準値の2・5倍が投与された疑いもあり、警視庁が捜査している。

 千葉県がんセンター(千葉市中央区)では、24年9月~今年2月、同一の執刀医による腹腔鏡下手術を受けた3人のがん患者が、術後2週間以内に死亡。同様の事故が計9件に上ることが明らかとなり、専門家らによる第三者委員会が調査をしている。」


西澤班の「議論の整理」は,医療事故調査制度の運用方法を定めるガイドライン案について多くが残された検討課題になっています.


谷直樹

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by medical-law | 2014-10-24 20:32 | 医療事故・医療裁判

ソブリアードカプセルとの因果関係が否定できない高ビリルビン血症に関連した国内死亡例が3例で安全性速報

厚生労働省は、2014年10月24日、C型慢性肝炎治療薬「ソブリアードカプセル100mg」について、ソブリアードカプセルとの因果関係が否定できない高ビリルビン血症に関連した国内死亡例が3例報告されたことから、添付文書の「使用上の注意」を改訂し警告欄等に注意事項を追記するとともに、「安全性速報(ブルーレター)」により、医療関係者等に対して速やかに注意喚起を行うよう、製造販売業者に指示しました.

「【今回の医療関係者に対する注意喚起のポイント】
本剤投与により血中ビリルビン値が著しく上昇 し、肝機能障害、腎機能障害等を発現し、 死亡に至った症例が報告 されているので、次の事項に注意すること。

1.本剤投与中は定期的に血中ビリルビン値を測定すること。
2. 血中ビリルビン値の持続的な上昇等の 異常が認められた場合には 本剤の投与を中止し、適切な処置を行う こと。
3. 本剤投与中止後も血中ビリルビン値が上昇 することがあるので、 患者の状態を注意深く観察 すること。
4. 患者に対し 、本剤投与後に眼球・皮膚の黄染、褐色尿、全身倦怠感等 がみられた場合は、直ちに受診するよう指導 すること。

【ソブリアードカプセルを服用中の患者の皆様へ】
ソブリアードカプセルを服用中の方は、眼球・皮膚の黄染、褐色尿、全身倦怠感等の症状があらわれた場合、直ちに医師又は薬剤師にご相談下さい。これらの兆候がない場合に自己判断で投与を中止せず、心配な場合は医師又は薬剤師にご相談ください。


死亡例3例というのは、ソブリアードカプセルとの因果関係が否定できない高ビリルビン血症に関連した国内死亡例が3例報告されている、という意味です.くわえて、敗血症、脳出血でも少なくとも3人が死亡しています.


谷直樹

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by medical-law | 2014-10-24 19:46 | 医療

生後4週の子連れ出廷の女性弁護士を裁判官が叱責

CNN「やむなく子連れで出廷した弁護士を叱責、裁判官に非難の声」(2014年10月22日)は,次のとおりじました.

「米アトランタの裁判所で、生後4週間の子どもを法廷に連れて来た女性弁護士を裁判官が叱りつける場面があった。弁護士によれば、産休中だったために裁判の期日の変更を求めたが認められず、やむなく子連れで出廷したという。この裁判官に対して全米の女性から怒りの声があがっている。

子連れで出廷したのは移民担当弁護士のステイシー・エーリスマンミクルさん。本人がCNNに語ったところでは、裁判の途中で子どもが泣き出したため、J・ダン・ペレティエ裁判官に「不適切だと思わないんですか?」ととがめられたという。

エーリスマンミクルさんは、自分は子どもと自宅にいるべきだと思ったので、期日の変更を求めたとやり返した。

トラック運転手をしている夫は州外にいて、家族や親類も近くにおらず、生後間もない子どもは保育所にも預けられない。別件を担当する裁判官2人は、産休を理由とする期日の変更を認めてくれたという。

エーリスマンミクルさんはペレティエ裁判官の発言に「法廷で侮辱された」と感じ、移民局の担当機関に苦情を申し立てた。

この一件について子育て事情に詳しいアビタル・ノーマン・ナスマンさんは、「さまざまな理由で裁判の期日が変更されるのは日常茶飯事。産休を理由とする変更が認められないのは論外で、職業的にも人格的にも弁護士をさげすむ行為だ」と裁判官を批判する。

CNNのケリー・ウォレス記者は「子どもをもつ親の状況が職場で理解され、仕事と家庭を完全に切り離すことが不可能な場合もあると理解されるまでには、まだほど遠い状況にある実態が浮き彫りになった」と解説している。」

ディープサウス(Deep South)のジョージア州アトランタの裁判官ですから,保守的な南部の方なのでしょう.


谷直樹

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by medical-law | 2014-10-23 06:43 | 司法