弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

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神奈川県立こども医療センター,事故委員会の報告書を公表

産経新聞「「輸血ミスと因果関係なし」 新生児死亡で神奈川県立こども医療センターが報告書」(2014年10月14日)は,次のとおり報じました.

神奈川県立こども医療センター(横浜市)で4月、血液型がA型の新生児にO型の血小板を輸血したミスがあった後、新生児が死亡した問題で、こども医療センターが外部の医師らを交えて設置した事故調査委員会は14日、「輸血ミスと死亡の因果関係はなかった」とする報告書を公表した。

 報告書は、出生時からあった心臓疾患を手術した後、血液の循環不全が起きて輸血が必要だったとし、違う血液型の血小板を輸血後も血液データに異常はなかったと指摘。手術後、別の疾患が進行して死亡したと考えられる、と結論付けた。

 ミスの原因は、新生児に少量ずつ輸血するために血小板の液体が移された注射器の筒に患者名が書かれていたが、看護師が確認せず、隣に置かれた別の患者の筒を手に取ったことにあるとした。」

振とう器の上に置かれていた、血液型の違う別の患者の濃厚血小板液を輸血した事案です.
結果と因果関係のないミスは、ミスである以上再発防止策がもとまめられますが、医療過誤ではありませんので賠償責任を生じません.



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by medical-law | 2014-10-14 22:49 | 医療事故・医療裁判

出自を知る権利

『自由と正義2014年10月号』に,日弁連の2014年6月9日の「生殖医療シンポジウム~生殖医療技術に関する法制を考える」の報告が掲載されています.

AID (Artificial Insemination by Donor,非配偶者間人工授精) は,親になりたい人の希望をかなえるために発達した技術ですが,AIDで生まれてきた子どものやり場のない不安定な気持ちも人としての存在そのものにかかわるものであることから十分配慮尊重する必要があると思います.
もちろん人の出生はすべて自然がよいというわけではありませんし,科学技術の進歩が人を幸福にしてきたことも事実ですが,ことAIDについては多様な考え方があり,社会倫理にもとづく法的枠組みがあってしかるべきではないでしょうか.
「出自を知る権利」は幸福追求権(日本国憲法第13条)に含まれる権利である,という主張もあり,AIDで生まれてきた子どもの出自を知る利益とドナーの探索されない利益を実質とする医療機関の守秘義務との比較考量で法的線引きがなされるべきではないか,と思います.

ちなみに,上記シンポジウムでコーディネーターをつとめた川村百合先生(東京弁護士会)は,私と司法修習同期です.

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by medical-law | 2014-10-13 07:07

レイフ・ヴォーン・ウィリアムズの名曲

清教徒革命でクロムウェルが禁欲主義から音楽を禁じ教会のオルガンまで破壊したからとか,ヘンリー・パーセル(Henry Purcell)が36歳で夭折しあとを継ぐ人がでなかったから,などと言われていますが,たしかにイギリスはその国力ほどには作曲家を輩出していません.

今日10月12日は,数少ないイギリスの有名作曲家の1人レイフ・ヴォーン・ウィリアムズ(Ralph Vaughan Williams)の誕生日です.
タリス幻想曲』(Tallis Fantasia),『揚げひばり』(The Lark Ascending),『グリーンスリーヴスによる幻想曲』(Fantasia on Greensleeves )等は比較的よく耳にします.


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by medical-law | 2014-10-12 20:51 | 趣味

英国医薬品庁は電子タバコを医薬品として認可する?

WSJ「インペリアル・タバコ、電子たばこの医薬品認可へ当局と協議」(2014 年 10 月 10 日)は,次のとおり,報じました.

「【ロンドン】英たばこ大手インペリアル・タバコ  IMT.LN -1.99% は、電子たばこの医薬品認可取得に向けて英保健当局と協議を進めている。同社幹部が明らかにした。

 大手たばこ会社の間では、電子たばこに対して政府の後ろ盾を得ようとする動きが相次いでおり、インペリアル・タバコもこの流れに沿った格好だ。

 インペリアル・タバコの複数の幹部によると、同社が非たばこ製品の開発会社として昨年設立したフォンテム・ベンチャーズが、英国医薬品庁(MHRA)と医薬品認可の条件を交渉している。

 業界アナリストらは、実現すれば電子たばこが世界で初めて医薬品としての承認を取得することになると指摘した。禁煙を支援するニコチンガムやニコチンパッチ同様、電子たばこをたばこの代替品として売り出すことができるほか、医師による処方も可能になる。」

電子タバコも決して安全ではありません.
日本では,タバコ販売には財務省の後ろ盾があり,タバコ販売規制より医薬品販売規制のほうが厳しいので,英国と同じような動きにはならないかもしれませんが,注目です.

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by medical-law | 2014-10-11 00:14 | タバコ

ニューヨークといえば・・・

札幌の高橋智先生の音頭で,有志が明日11日から19日までニューヨークへ視察に行くそうです.
私の周囲でも,医療問題弁護団の弁護士が複数参加しています.

音楽ではAutumn In New York New York State of MindEnglishman in New Yorkニューヨーク・シティ・セレナーデ(Best That You Can Do),Empire State Of Mind・・・等も想起しますが, ニューヨークといえば,シャンナ・スウェンドソン著『ニューヨークの魔法使い』シリーズ(創元推理文庫)です。田舎からでてきた平凡な女性が,魔法に免疫があり魔法にかからない体質を活かして活躍するファンタジーです.何事もトントン拍子にすすみますので,読んでいて気持ちがよいです.


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by medical-law | 2014-10-10 11:57 | 趣味

札幌高裁平成26年9月25日判決、除斥期間について疾患(うつ病)発症時点から起算(報道)

北海道新聞「釧路PTSD訴訟、うつ病発症時から起算 控訴審、3千万円賠償命令」(2014年9月25日)は、次のとおり報じました.

約30年前の幼少期の性的虐待で心的外傷後ストレス障害(PTSD)とうつ病になったとして、釧路市出身の女性が親族の男性に約4100万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、札幌高裁は25日、うつ病に対する慰謝料などとして男性に約3千万円を支払うよう命じた。20年間の除斥期間が経過したとして請求を退けた一審判決から1年5カ月。女性は「性的虐待を受けた子供が被害を自覚し、声を上げることは難しい。その実情を踏まえた判決であり、本当にうれしい」と喜びをかみしめた。

 2013年4月の一審釧路地裁判決は、PTSDとうつ病を一連の症状ととらえ、最後の虐待行為があった1983年を起算点と認定。既に除斥期間が経過しているため、損害賠償請求権が消滅したと判断した。これに対し、二審判決はPTSDについては一審判決と同様の判断をしながらも、「うつ病については除斥期間の起算点は発症した06年9月であり、損害賠償請求権は消滅していない」と結論付けた。<どうしん電子版に全文掲載>」



朝日新聞「「性的虐待でうつ病」3千万円支払い命じる 札幌高裁」(2014年9月25日)は、次のとおり報じました.

「幼少期に親族の男性から受けた性的虐待により心的外傷後ストレス障害(PTSD)などの精神障害を発症したとして、40代の女性がこの男性を相手取り、4175万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が25日、札幌高裁であった。岡本岳裁判長は「性的虐待でうつ病を発症させた」として、女性の請求を棄却した一審・釧路地裁判決を変更し、男性に3039万円の支払いを命じた。

 判決は、女性が1978~83年に性的虐待を受け、同年ごろにPTSDと離人症性障害を、2006年ごろにうつ病をそれぞれ発症したと認定。うつ病以外は、一審判決と同様、不法行為から20年で賠償請求権が消滅する除斥期間が過ぎているとした。だが、うつ病は一定の潜伏期間後に症状が現れるとし、発症した06年を除斥期間の起算点とするのが相当だとした。

 一審判決は「うつ病はPTSDに付随して発症したと理解され、性的虐待を受けていたころから症状の一部が生じていた」として、いずれの精神障害も除斥期間が過ぎていると認定、3269万円の損害賠償を求めた女性の請求を棄却した。女性は、治療費などを追加し、請求額を4175万円に増額して控訴していた。」


20年の除斥期間は高いハードルですが、この札幌高裁判決のように発病時点から起算すると救済されるケースもあるでしょう.発病をいつと認定するかは問題となりますがが.
...
最高裁判所第三小法廷平成21年4月28日判決(民集第63巻4号853頁)が、被害者を殺害した加害者が被害者の相続人において被害者の死亡の事実を知り得ない状況を殊更に作出したため相続人がその事実を知ることができなかった場合における上記殺害に係る不法行為に基づく損害賠償請求権と民法724条後段の除斥期間裁判要旨  被害者を殺害した加害者が被害者の相続人において被害者の死亡の事実を知り得ない状況を殊更に作出し,そのために相続人はその事実を知ることができず,相続人が確定しないまま上記殺害の時から20年が経過した場合において,その後相続人が確定した時から6か月内に相続人が上記殺害に係る不法行為に基づく損害賠償請求権を行使したなど特段の事情があるときは,民法160条の法意に照らし,同法724条後段の効果は生じない、と判示したように、除斥期間については、上級審で制限的な方向で解釈されることもあります.

緑のオーナー事件の大阪地裁平成26年10月9日判決は、機械的に除斥期間を適用しましたが、控訴院、上告審ではなんらかの制限的な解釈が示される可能性がないとはいえないでしょう.


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by medical-law | 2014-10-10 01:11 | 司法

大阪高裁平成26年9月30日判決、双方控訴を棄却、外科医による鼓膜損傷約15万5千円の賠償確定(報道)

紀伊民報「鼓膜損傷の医療訴訟で両控訴棄却 紀南病院」(2014年10月9日)は、次のとおり報じました.

「紀南病院(和歌山県田辺市新庄町)に耳の違和感で救急受診した市内の女性(62)が、病院の過失で鼓膜を損傷したとして約265万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審で、大阪高裁が紀南病院組合に約12万円の支払いを命じた一審・和歌山地裁田辺支部の判決を支持し、病院組合と女性の控訴を棄却していたことが分かった。

 病院組合が8日、組合議会に経過を報告し、賠償金や裁判費用など67万円の補正予算案を提出、可決した。高裁の判決は9月30日に出た。

 病院組合によると、女性は2009年4月に右耳の違和感で緊急受診。当直の外科医が耳内に虫を確認し、除去を試みたが取り出せず、当日中に耳鼻咽喉科を受診するよう指示した。女性は当日、市内の耳鼻咽喉科を受診し、鼓膜の損傷が分かった。

 その後、病院組合と女性は数回の話し合いをしたが、合意に至らず、女性は12年4月に和歌山地裁田辺支部に提訴した。病院組合は適正な医療行為で注意義務違反に当たらないと主張していた。

 高裁の判決では、虫までの距離を目視で把握することは困難で、挿入した器具の位置や動きが確認できない場合は専門医の受診を促すべき注意義務があるとしている。

 また、女性の鼓膜損傷については、自然閉塞(へいそく)で完治する小さなもので、日常生活に支障を来すものでない。精神的苦痛を感じたとの主張は認められないとした。

 病院組合は慰謝料や通院交通費など合計約15万5千円を支払う。」


当直の外科医が耳内の虫除去を試み鼓膜を損傷した事案です.
虫までの距離を目視で把握することは困難で、挿入した器具の位置や動きが確認できない場合は専門医の受診を促すべき注意義務があるとした点は、参考になります.


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by medical-law | 2014-10-10 00:53 | 医療事故・医療裁判

『四月は君の嘘』

フジテレビ 10月9日(木) 25時15分(2回目以降は25時20分)から,アニメ『四月は君の嘘』が始まります.
ピアノを弾かないピアニストの少年と病気のヴァイオリニストの少女の物語.ベタでも,期待できます.

「母の死をきっかけにピアノが弾けなくなった元天才少年・有馬公生。モノクロームだった彼の日常は、一人のヴァイオリニストとの出逢いから色付き始める! 傍若無人、喧嘩上等、でも個性あふれる演奏家・宮園かをり‥少女に魅せられた公生は自分の足で14歳の今を走り始めた--。」

ところで,今日10月9日は,サンサーンス(Saint-Saëns)の誕生日です.
ヴァイオリン・ソナタ第1番ニ短調はマルセル・プルーストの好きな曲です.


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by medical-law | 2014-10-09 07:19 | 趣味

登米市民病院の不適切麻酔で刑事告訴(報道)

河北新報「「不適切麻酔で意識障害」女性が医師告訴」(2014年10月8日)は,次のとおり報じました.

「登米市民病院(登米市迫町)で手術中に不適切な麻酔をされ、重い意識障害を負ったとして、同市の主婦(73)が7日までに、業務上過失致傷の疑いで、男性麻酔科医=石巻市=を宮城県警佐沼署に告訴し、同署が受理した。病院は調査委員会を設置して麻酔科医のミスが原因と判断したが、公表していない。
 告訴状によると、麻酔科医は2013年6月20日、自宅玄関先で転んで右手首を骨折した主婦の骨を固定する手術を担当。人工呼吸器(麻酔器)の操作を誤った上に気管挿管に失敗し、主婦を低酸素脳症に陥らせた業務上過失致傷の疑いがあるとしている。
 病院は手術の3週間後に調査委を設け、ことし2月に報告書をまとめた。(1)麻酔科医が麻酔器の始業点検で外した部品を戻し忘れ、酸素が漏れた状態で麻酔薬を投与した(2)酸素を送るチューブを食道に挿入した-の二つの過失が原因だったと結論付けたが、これまで明らかにしていない。
 病院側は「医療事故の公表基準がなく、主婦の家族の心情に配慮して公表を控えた。麻酔科医が告訴されたことについては事実関係を把握しておらず、コメントできない」と説明している。
 主婦は低酸素脳症により自力での移動や食事、会話などができず、現在も入院している。成年後見人に選任された弁護士が告訴状を提出した。
 麻酔科医は東北大病院(仙台市青葉区)からの派遣で、非常勤だった。」


本件にかぎらず,一般に刑事告訴の是非については議論があるところでしょう.
弁護士によって考え方は分かれるでしょうが,私は,原則として刑事告訴は行いませんが,きわめて悪質なケースでは行うこともないではありません.

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by medical-law | 2014-10-08 09:48

「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」の策定で意見対立

日刊薬業「監査規定で意見食い違い、事務局が調整へ  臨床・疫学の統合指針案」(201410月7日 )は,次のとおり報じました.

「厚生労働省と文部科学省は7日、臨床研究と疫学研究の両倫理指針を統合した新たな「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」の策定に向けて合同会議を行った。パブリックコメントに基づき加筆・修正する最終確認を行い、指針案についておおむね了承したが、監査の規定を削除するよう求める意見が上がるなど、意見の相違や認識の不一致も浮上した。このため、事務局は「監査」の表現や書きぶりについて、福井次矢委員長(聖路加国際病院長)らと調整を行う方向だ。・・・」

田代志門委員(昭和大研究推進室講師)が指針案の監査の規定を全て削除するべきと主張し,門脇孝委員(東京大医学部付属病院長)は監査を消したら新指針は骨抜きになってしまうと監査に関する規定の必要性を述べたとのことです.

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by medical-law | 2014-10-08 09:35 | 医療