弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

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日本医療機能評価機構、「医療事故情報収集等事業第39回報告書(平成26年7月~9月)」

公益財団法人日本医療機能評価機構は、平成26年12月25日、「医療事故情報収集等事業第39回報告書(平成26年7月~9月)」を発表しました.

今回の個別のテーマの検討は、【1】職種経験1年未満の看護師・准看護師に関連した医療事故、【2】皮膚反応によるアレルギーテスト実施時の試薬に関する事例、【3】内視鏡の洗浄・消毒に関連した事例です.


◆ 職種経験1年未満の看護師・准看護師に関連した医療事故(100~144頁)

「第37回報告書では、職種経験1年未満の看護師・准看護師に関連した医療事故事例とヒヤリ・ハット事例を概観し、第38回報告書では、それらの中でも、「薬剤」と「輸血」の事例について分析しました。本報告書では、「治療・処置」「医療機器等」「ドレーン・チューブ」「検査」の事例を取り上げて分析しています。
「治療・処置」の医療事故事例のうち、職種経験1年未満の看護師・准看護師では、「手術」の「開腹」(ガーゼの体内残存の事例)、「一般的処置(チューブ類の挿入)」の「中心静脈ライン」「尿道カテーテル」が複数回報告されていました。一方、職種経験1年以上のそれらの職種の事例では、「末梢静脈ライン」や「尿道カテーテル」などの「一般的処置(チューブ類の挿入)」の報告がもっとも多く、「開腹」以外の「手術」の事例や「血液浄化療法(血液透析含む)」など「その他の治療」を選択している事例も多数報告されていました。
このことから、職種経験1年未満の看護師・准看護師には、まだ経験していない、あるいは関わりを限定されている治療や処置があることが伺えました。
「医療機器等」に関する医療事故事例は、職種経験1年未満の看護師・准看護師の報告は少なく、「酸素療法機器」「心電図・血圧モニタ」「人工呼吸器」などの事例が報告されていました。
「ドレーン・チューブ」に関する医療事故は、職種経験1年以上の看護師・准看護師では「気管チューブ」の事例が多かったのに対し、職種経験1年未満のそれらの職種では「末梢静脈ライン」の点滴漏れや患者による抜去、「栄養チューブ」の患者による抜去の事例が多く報告されていました。「検査」に関する事例は、職種経験1年未満の看護師・准看護師の医療事故事例の報告が3件あり、その内容は「患者取り違え」が2件、「検体のラベルの貼り間違い」が1件でした。これらの報告された医療事故事例とヒヤリ・ハット事例のうち主な事例を紹介し、背景・要因、医療機関の改善策、専門分析班及び総合評価部会の議論を整理して示しています。」


◆ 皮膚反応によるアレルギーテスト実施時の試薬に関する事例(145~150頁)

「本報告書分析対象期間内に、薬剤の成分に含まれていた水酸化ナトリウムについて皮内テストを行ったところ皮膚壊死を起こした事例が報告されています。皮膚反応によるアレルギーテストは、微量でも患者へ大きな影響を及ぼす可能性のある化学物質を含むことがあり、アレルギーテスト実施時の試薬に関する事例に着目することは有用な情報となると考え、分析を行いました。
事業開始(平成16年10月)から本報告書分析対象期間までに、水溶性ハイドロコートン注射液の成分のひとつである水酸化ナトリウムを皮膚反応によるアレルギーテストの試薬としていた事例が2件報告されていました。事例を紹介するとともに、背景・要因や医療機関における改善策をまとめて示しています。」



◆ 内視鏡の洗浄・消毒に関連した事例(151~165頁)

「今回、本報告書分析対象期間において、内視鏡の使用後、適切に洗浄を行わなかったまま、次の患者に使用した事例の報告がありました。
そこで、内視鏡の洗浄・消毒に関連した事例に着目し、事業開始から本報告書分析対象期間までに報告された14件の事例を分析しました。
「洗浄・消毒したものと使用済のものの取り違え」の事例の背景・要因を詳しくみると、すべて院内のルールからの逸脱によるもので、洗浄・消毒したものと使用済のものが混在しない環境や手順を検討することの重要性が示唆されました。
また、「洗浄・消毒方法の誤り」「洗浄・消毒に使用する洗浄器の不具合」についても、主な背景・要因や医療機関の改善策を紹介しています。」


◆ 類似例

類似例は以下のとおりで、一部の医療機関の報告ではありますが、医療事故のおきやすい類型がわかります.

「これまでに提供した「医療安全情報」について、本報告書分析対象期間(平成26年7月~9月)に類似事例の内容は27であり事例数は53件であった。」とのことです.
「膀胱留置カテーテルによる尿道損傷」6件
「小児の輸液の血管外漏出」5件
「抜歯部位の取り違え」3件
「アレルギーのある食物の提供」3件
「グリセリン浣腸実施に伴う直腸穿孔」2件
「手術部位の左右の取り違えおよび手術部位の左右の取り違え(第2報)」2件
「MRI検査室への磁性体の持ち込みおよびMRI検査室への磁性体の持ち込み(第2報)」2件
「注射器に準備された薬剤の取り違え」2件
「湯たんぽ使用時の熱傷」2件
「未滅菌の医療材料の使用」2件
「アレルギーの既往がわかっている薬剤の投与」2件
「清拭用タオルによる熱傷」2件
「PTPシートの誤飲およびPTPシートの誤飲(第2報)」2件
「電気メスペンシルの誤った取り扱いによる熱傷」2件
「画像診断報告書の確認不足」2件
「病理診断報告書の確認忘れ」2件
「禁忌薬剤の投与」2件

「「共有すべき医療事故情報」について本報告書分析対象期間に類似事例が報告された共有すべき医療事故情報の内容は17であり、事例数は57件であった。」とのことです.
「『療養上の世話』において熱傷をきたした事例」8件
「熱傷に関する事例(療養上の世話以外)」7件
「ベッドのサイドレールや手すりに関連した事例」5件
「体内にガーゼが残存した事例」5件
「病理検体に関連した事例」5件
「ベッドなど患者の療養生活で使用されている用具に関連した事例」4件
「施設管理の事例」3件
「アレルギーの既往がわかっている薬剤を投与した事例」3件
「ベッドからベッドへの患者移動に関連した事例」3件
「眼内レンズに関係した事例」3件
「食物アレルギーに関連した事例」3件
「注射器に準備された薬剤の取り違えの事例(名前の記載あり)」2件
「注射器に準備された薬剤の取り違えの事例(名前の記載なし)」2件

「個別テーマについて本報告書分析対象期間に類似事例が報告されたテーマは、7テーマであり、事例数は13件であった。」とのことです.
「画像診断報告書の内容が伝達されなかった事例」3件
「胸腔穿刺や胸腔ドレーン挿入時に左右を取り違えた事例」3件
「医薬品添付文書上【禁忌】の疾患や症状の患者へ薬剤を投与した事例」2件
「血液検査採取時、患者間において採血管を取り違えた事例」2件




谷直樹

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by medical-law | 2014-12-29 03:08 | 医療事故・医療裁判

溝口訴訟で熊本県側が提出した医師の意見書に関する文書を環境省が廃棄

朝日新聞「水俣病訴訟巡る文書廃棄 環境省、患者認定関連の意見書案」(2014年12月28日)は、次のとおり報じました.

「水俣病の患者認定の可否が争われた「溝口訴訟」で、被告の熊本県側が提出した医師の意見書に関する文書を、環境省が廃棄していたことがわかった。文書は情報公開法に基づき保存が必要だったもので、国の審査会は「誤った判断」と指摘し、適切な文書管理を同省に求めた。
イラスト:ALTタグ
裁判所に提出された医師の意見書の写し

 意見書は、原告が患者認定を求めた女性(故人)が水俣病ではないとする熊本県の主張を補強する内容。環境省の出先機関、国立水俣病総合研究センター(熊本県水俣市)の総合臨床室長の医師(51)の名前で、2010年6月に控訴審に提出された。その中で医師は女性について「水俣病である可能性は否定できないものの、医学的に水俣病だと診断できるだけの根拠に欠けることは確かである」と指摘した。

 この意見書作成について同年10月の証人尋問で、医師は「まず環境省の担当の方とどういった意見書を作成するかといった協議を行った。その後、文面は担当の方が作成し、それを私が修正するという過程を数回行った後に完成させた」と証言。原告側は「意見書に環境省の見解が反映されたのではないか」と反発し、客観的な内容とは言えないと問題視していた。

 原告側の支援者は、最高裁で原告の勝訴が確定した13年4月、情報公開法に基づき文案などの開示を請求。環境省は「意見書作成後に不要となり、保存されていない」との理由で不開示を決めた。原告側は異議を申し立て、内閣府の情報公開・個人情報保護審査会が調査。その結果、文案は環境省特殊疾病対策室の職員がパソコンで作り、医師にメールで送ったことが判明した。

 審査会は今春の答申で、文案などの廃棄を事実と認め、不開示決定は「妥当」とした。一方で、「(廃棄は)担当者が判断を誤ったものといわざるを得ない」と指摘。「行政文書として管理されるべき文書については(情報公開)法の趣旨に照らし、その保存、管理を的確に行い、行政機関としての説明責任を全うするよう適切に対応することが望まれる」と求めた。

 環境省は答申を受け、省内に文書管理の徹底を通知した。その中で「適切な保存期間の設定なしに廃棄したりすることがあれば、情報隠しとの批判も受けかねない」と注意を促した。

 小林秀幸・特殊疾病対策室長は取材に対し「審査会の答申を踏まえて適正な文書管理に努める」としている。」


おそらく国が意見書の下書きを作っているのは、溝口訴訟に限らないでしょう.


谷直樹

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by medical-law | 2014-12-29 02:42 | 司法

高血圧薬と似た名前の糖尿病薬投与で提訴(報道)

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毎日新聞「提訴:名前酷似の薬誤投与 女性死亡で遺族が」(2014年12月27日)は,次のとおり報じました.

「高血圧剤を投与すべき女性患者(当時89歳)に名前が似た別の糖尿病薬を誤って投与した結果、女性が死亡したとして、遺族が恵寿(けいじゅ)総合病院(七尾市)を経営する社会医療法人財団「董仙(とうせん)会」を相手取り、慰謝料など約7300万円を求める訴訟を起こした。26日、金沢地裁で第1回口頭弁論があった。
 訴状によると、女性は2010年1月、診療を受けていた同病...」


高齢者に糖尿病の薬を誤投与すると,昏睡状態となり死亡することもあり得るでしょうが,因果関係立証と損害額が争いになるでしょう.
89歳女性で,どんな計算を行えば7300万円の請求になるのでしょうか.

大日本住友製薬の高血圧薬「アルマール」(現在の「アロチノロール」)と間違えて,サノフィの糖尿病薬「アマリール」を投与した事案ではないでしょうか.サノフィの糖尿病薬「アマリール」が登場したことで,誤投薬が誘発されたことはよく知られています.
もし「アマリール」投与で訴えているなら,むしろサノフィに対する命名責任訴訟を検討してほしい気がします.
直接的には間違えた医療従事者の過失が否定できませんが,事故の根本原因は製薬会社の命名にあります.

ほかにも似た名称の薬剤は結構あります.
「サクシン」(現在「スキサメトニウム」)と「サクシゾン」
「セフゾン」と「セパゾン」
「タキソール」と「タキソテール」
「ノルバデックス」と「ノルバスク」

製薬企業は,既にある薬と似た名称をつけるべきではないでしょうし,厚労省は名称変更を指導すべきと思います.

谷直樹

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by medical-law | 2014-12-28 01:27 | 医療事故・医療裁判

大阪地裁の書記官が判決正本交付日の記載を誤ったことを保険会社の代理人弁護士が立証できた例(報道)

毎日新聞「大阪地裁:控訴期限を誤る 高裁「二重ミス」批判」(2014年12月24日)は,次のとおり報じました.

◇保険会社、却下の後に逆転勝訴
 
「保険金の支払いを保険会社に命じた2011年3月の大阪地裁判決を巡り、被告の保険会社の控訴が約3年半後にようやく認められた。当時は「控訴の締め切りに1日間に合わなかった」とされたが、大阪高裁は今年11月、締め切りの起算日を地裁が誤って記していたと判断した。控訴を受け入れた高裁は保険会社の逆転勝訴を言い渡し、確定した。訴訟の行方に影響した異例のミスが明らかになり、高裁は地裁を厳しく批判している。

 当時の控訴無効の判断に伴い、保険会社は約470万円を原告側に支払っており、保険会社は今後、返還を求めていくという。

 訴訟は、50代男性=大阪府=が車上荒らし被害に伴う保険金を損害保険会社に求めて地裁に提訴した。11年3月8日の地裁判決は保険会社に支払いを命じ、判決確定前でも強制的に執行できる「仮執行宣言」も付けた。

 今年11月の高裁判決によると、保険会社は地裁判決を不服として11年3月23日に地裁に控訴状を提出した。控訴できる期間は2週間で、民事訴訟の場合は判決文を受け取った日の翌日から数える。保険会社は、代理人弁護士事務所の担当者が地裁の書記官室で判決文を受け取ったのは3月9日としており、控訴期限は23日となる。

 しかし、地裁の報告書には、保険会社側に判決文を渡した日時は「3月8日午後3時5分」と記されていた。この記録によると、控訴期限は22日となるが、地裁は日付を確認せずに23日に控訴を受理、その後、高裁が気付いて控訴を却下した。

 判決は、地裁の報告書に「3月8日午後3時5分」と記載した書記官が同じ日の午後3時以降に休暇を取っていたと指摘。弁護士事務所が保険会社に判決文をファクス送信したのも3月9日だったことから、書記官が9日なのに8日と勘違いして記したと判断、控訴を有効と結論付けた。

 判決は「チェック体制が万全だったと言い難い」と二重のミスをした地裁を厳しく批判した。その上で、車上荒らしは自作自演だとして地裁判決を取り消し、保険会社の勝訴とした。原告側は上告せず、確定した。

 訴訟を巡っては、控訴を却下した当時の高裁判断を不服として保険会社が上告。最高裁が昨年7月、「地裁のミスの可能性がある」と審理を高裁に差し戻した。一方、保険会社は仮執行宣言に基づき約470万円を原告側に払っており、地裁のミスが影響した形だ。


大阪地裁に限らず書記官の記載ミスはあり得ることですが,記載ミスを想定した仕組みが作られていませんので,書記官の記載ミスを立証することは事実上困難です.
報道の件は,その記載ミスを立証できた希有な例と思います.
法律事務所が保険会社に判決文をファクス送信したのが3月9日であっても,その法律事務所が判決正本受領後ただちに送信せず翌日送信したと認定される可能性があります.
この例でも,もし当該書記官が休暇をとらずに勤務していたら,日付けの記載ミスを立証することはできなかったのではないか,と思います.

書記官の記載ミスはあり得ることにもかかわらず,記載ミスがないという前提で一人の書記官の記載のみで判決正本交付日を認定している(点検・確認の仕組みがない)ため,法律事務所側が記載ミスを立証する手段が乏しいことを考えると,法律事務所が(郵送ではなく)交付の方法で判決正本を受領したときは,交付日ではなく判決日から起算して14日内に控訴状を提出するのが安全でしょう.
なお,私は,判決日から遅くとも10日くらいで控訴状・上告状兼上告受理申立書を出すようにしています.


谷直樹

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by medical-law | 2014-12-26 01:18 | 司法

新潟県立新発田病院,ガーゼ遺残事故

時事通信「体内にガーゼ27年間放置=手術で執刀医ミス―新潟・新発田病院」(2014年12月25日)は,次のとおり報じました.

「新潟県立新発田病院(新発田市)は25日、新潟市内に住む60代の女性の体内に、手術の際に使ったガーゼを27年間放置する医療事故があったと発表した。
 病院によると、女性は1987年5月、右足太ももの骨髄の部分に鉄の棒を入れ、骨を矯正する手術を受けたが、執刀医は血液を拭き取るガーゼを体内に放置したままだった。毎年1回定期検査を受けていたが、今年8月の受診時に右膝裏に痛みを訴え、検査の結果しこりが見つかった。
 悪性腫瘍の可能性があるとして今月17日に手術したところ、「肉芽腫」と呼ばれるしこりの中からガーゼが見つかった。女性は近く退院予定だという。
 新発田病院では2002年と11年にも患者の体内にガーゼを置き忘れる事故が発覚。今後は手術で使うガーゼの数の把握を徹底するほか、手術終了後にレントゲン撮影を行い患部を確認するなどの再発防止策を取るという。」 


生体が遺残されたガーゼを異物と認識して肉芽腫が形成されたのでしょう.
謝罪はもちろんですが,適正な賠償も必要でしょう.

谷直樹

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by medical-law | 2014-12-25 21:40 | 医療事故・医療裁判

Christmas Carols

Kings College Choir のChristmas Carolsは定盤です.
Christmas Carolsに期待するイメージどおりの演奏です.

谷直樹

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by medical-law | 2014-12-25 02:19 | 趣味

最高裁調査、「特別法廷」問題でハンセン病元患者証言

NHK「ハンセン病元患者 特別法廷を証言」(2014年12月24日)は、次のとおり報じました.

「かつてハンセン病の患者の裁判が隔離された療養所などの「特別法廷」で行われていた問題で、熊本県の療養所の元患者などが、最高裁判所の聞き取り調査に対して差別的な扱いのもとで審理が行われた当時の様子を証言しました。

かつてハンセン病の患者に対する裁判が隔離された療養所などに設けられた「特別法廷」で行われたことについて、最高裁判所は「差別的な扱いだった可能性がある」として、23日から九州や沖縄に担当者を派遣して元患者などへの聞き取り調査を行っています。
2日目の24日は、午前中、熊本県合志市の療養所、「菊池恵楓園」で、昭和30年代に行われた特別法廷に立ち会った福岡市の元弁護士、稲澤智多夫さん(95)が「裁判の前に消毒を受けさせられ、法廷では裁判官や検察官が感染を恐れて、審理を早く終わらせようとしていた」と当時の様子を証言しました。
午後からは「菊池恵楓園」で、元患者の杉野芳武さん(83)への聞き取りが行われました。
杉野さんは、特別法廷の裁判は期日の告知もなく、周囲に幕が張られて傍聴できないようにしていたなどと説明したということです。
聞き取り調査は25日まで続けられ、最高裁は、来年の夏ごろには検証結果をまとめて公表したいとしています。

元患者「大きな汚点」
最高裁判所の担当者に「菊池恵楓園」で行われた特別法廷の様子を説明した元患者の杉野芳武さんは、「法の番人である裁判所がハンセン病の患者が置かれている状況にそっぽを向いてきたのは大きな汚点だ。裁判官も患者に対して誤った認識を持っていたのか検証してほしいと伝えた」と話していました。

えん罪と主張する裁判も
24日聞き取り調査が行われた熊本県の療養所、「菊池恵楓園」では、元患者などで作る団体が、えん罪の疑いがあると主張している殺人事件の裁判も行われました。
昭和26年から27年に、現在の熊本県菊池市で起きたいわゆる「菊池事件」です。
ハンセン病患者が殺人などの罪に問われたこの事件の裁判は「菊池恵楓園」などに設置された「特別法廷」で行われ、被告の家族を除いては傍聴できませんでした。
被告は無実を訴えましたが、死刑判決を受け、昭和37年に死刑が執行されました。
元患者の団体は、この特別法廷では裁判所の職員が提出された調書などを箸で挟んで示したり、裁判官が早く審理を終えるよう求めたりして、公正な審理が行われなかったと主張して裁判のやり直しを求める活動を続けています。」

ハンセン病元患者は、高齢化していますので、今回の聞き取り調査は事実上最後の機会です.
司法・裁判の問題が真摯に検証されることを期待します.


谷直樹

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by medical-law | 2014-12-25 01:15 | 人権

山梨大学医学部附属病院,看護師が鎮痛剤の点滴を止める操作を誤り患者が一時心肺停止となる(報道)

山梨大学医学部附属病院は,平成26年12月22日,「12月13日(土)に発生した医療事故について」を発表しました.

「【概要】

1. 12月13日(土)、午前5時40分、受け持ち看護師は、鎮痛剤の投与を中止する目的で、ポンプを 停止し、点滴回路をはずす操作を行いました。
 この際、メインルートに通じる鎮痛薬を含んだ点滴回路が、遮断されていると思い込み操作して いたところ、遮断されておらず、この状態が約10分間継続し、静脈内に過量の鎮痛薬の投与がされ 、一時心肺停止の状態に至りました。

2. 午前5時50分頃、看護師が患者様の病室に戻った時に異変に気づき、患者様に、心肺蘇生およ び昇圧剤投与等の集中治療を行い、心拍・呼吸は再開しました。ただし、重篤な低酸素脳症は続い ており、現在も予断を許さない状態が続いております。

3. このため、静脈内への過量投与と患者様の容体との関連について12月15日午前9時、緊急安全 管理委員会を開催し調査検討を行ったところ、医療事故(医療過誤)であると判断しました。

4. 12月14日、15日、18日、22日にこれらの事実につき、患者様のご家族に説明すると同時に謝罪 いたしました。

5. 本事例の重大性に鑑み、再発防止への対策を直ちに開始いたしました。
 1)夜間、早朝のポンプの取り外し作業は実施しないことの徹底
 2)看護師が患者様のベッドサイドでは、このポンプから、輸液のルートを取り外さない様、厳重に注意喚起
 3)鎮痛剤使用時のポンプの取り扱いについての再指導等

6. なお、日本医療機能評価機構、厚生労働省関東信越厚生局、山梨県福祉保健部、中北保健所、 南甲府警察署、文部科学省等の関係諸機関にはすでに報告いたしました。」


本件事故は,看護師が点滴の管の栓を閉めていなかったことが原因です.
点滴ポンプの誤操作による事故はいくつも報告され,注意喚起されています.

たとえば,国立H病院母子医療センターの看護師Xが三方活栓の空気抜き後にシリンジポンプの輸液流量の設定値を0に戻さず,かつその流路を三方活栓で遮断せず,看護師Yが当該シリンジポンプを起動させる際,輸液量の設定値の確認を怠りイノバン希釈液を過量投与し患者を死亡させた事案で,看護師Xについて,「三方活栓内の空気を抜いた後は,同設定値を0に戻し,医師の指示に基づき同液の投与を開始するまでは,その流路を三方活栓で遮断して,同液の過量投与を防止すべき業務上の注意義務」に違反したとして,看護師Yについて,「同シリンジポンプの輸液流量の設定値を確認して同液の過量投与を防止すべき業務上の注意義務」が認められ,看護師Xは罰金30万円,看護師Yは罰金50万円にそれぞれ処せられています.(弘前簡略式命令平成15年1月31日,飯田英男ら『刑事医療過誤Ⅱ増補版』578頁参照)


谷直樹

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by medical-law | 2014-12-23 05:30 | 医療事故・医療裁判

群馬大学医学部附属病院,開腹手術でも84人中10人が死亡

NHK「同じ医師 開腹手術でも10人死亡 群馬大附属病院」(2014年12月22日)は,次のとおり報じました.

「群馬大学医学部附属病院で腹くう鏡を使って肝臓の手術を受けた患者8人が死亡していた問題で、病院が調べたところ、執刀した同じ医師が過去5年間に行った腹部を切り開く開腹手術でも、84人の患者のうち10人が死亡していたことが分かりました。

病院の説明によりますと、一連の問題で腹くう鏡を使った手術をした40代の男性医師が執刀した手術について調べたところ、平成22年からことしまでの5年間に腹部をメスで切り開いて肝臓の開腹手術を行った84人の患者のうち、10人が手術後3か月以内に死亡していたということです。
肝臓の開腹手術は一般的に広く行われていますが、この医師が行った手術後の死亡率は10%余りに上っていたということです。病院は、手術と患者が死亡した関連性は分からないとしながらも、厚生労働省に調査の途中経過を報告したということです。
群馬大学医学部附属病院の総務課の尾内仁志副課長は「今後さらに調査したうえで、きちんと調査結果を公表していきたい」と話しています。
厚生労働省が立ち入り検査へ

群馬大学医学部附属病院で、腹くう鏡を使った手術で患者8人が死亡していた問題では、死因がよく分からないにもかかわらず、手術の内容などが検証されず、同じ手術が繰り返されていたことが明らかになっています。
このため、厚生労働省は、来月にも、病院に対して医療法に基づく立ち入り検査を行い、再発防止の対策が十分に取られているかどうかなどを確認することにしています。
「明らかに高すぎる」

これについて、日本大学医学部の高山忠利教授は「肝臓は血管の数が多いので手術が難しいが、専門家が行えばそれほど頻繁に患者が亡くなるようなことはない。手術件数が多く経験が豊富な医療機関の中には手術に関連する死亡は全体の1%以下のところもあり、10%を超えるというのは明らかに高すぎる」と指摘しています。
そのうえで、高山教授は「死亡率が高い理由は、手術中のミスや術後のケアの不足といった技術的な問題や、本来は手術をするべきでない難しい状態の患者に行うといった問題があるからだと考えられる。手術を行うべきかどうか、院内のほかの部署が事前にチェックできる体制をまず整える必要がある」と話しています。」


病院内部ではこの医師の手術の死亡率が高いことはわかっていたのではないでしょうか.

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by medical-law | 2014-12-22 21:25 | 医療事故・医療裁判

『あなたが寝てる間に…』(While You Were Sleeping)

約20年前の映画です.シカゴの地下鉄の職員が,クリスマスイブの朝に,線路に転落した片思いの弁護士の命を救います。昏睡状態の弁護士の家族にfianceeと誤解されて,それを言い出せないまま,家族の一員として扱われる女性をサンドラ・ブロックさんが演じています.
数あるクリスマス映画の中でも,いい映画だと思います.

谷直樹

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by medical-law | 2014-12-21 16:53 | 趣味