弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

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国立国際医療研究センター病院,ウログラフィンを脊髄の投与し患者を死亡させた医師が書類送検(報道)

NHK「造影剤投与で患者死亡 医師を書類送検」(2014年12月3日)は次のとおり報じました.

「ことし4月、東京・新宿区にある「国立国際医療研究センター病院」で、女性の患者が造影剤を投与されて死亡した医療事故で、警視庁は、30歳の医師が脊髄への投与が禁止されていることを知らずに誤って投与したことが死亡につながったとして、業務上過失致死の疑いで書類送検しました。

書類送検されたのは、東京・新宿区の国立国際医療研究センター病院の整形外科の30歳の女性医師です。
この病院では、ことし4月、腰などの痛みを訴えて入院した78歳の女性が、「ウログラフィン」という造影剤を投与されたあとに意識を失い、6時間後に急性呼吸不全で死亡する医療事故があり、警視庁が業務上過失致死の疑いで捜査していました。
投与されたウログラフィンという造影剤は、脊髄に投与すると重篤な副作用を引き起こすおそれがあるため投与が禁止されていますが、警視庁によりますと、担当していた女性医師は禁止されていることを知らないまま、誤って投与していたということです。
調べに対し、医師は容疑を認め、「ウログラフィン以外の造影剤を知らなかったので使ってしまった」と供述しているということです。国立国際医療研究センター病院は、「事故を2度と起こさないよう、安全体制の強化と教育・研修を徹底し、再発防止に取り組みます」とコメントしています。」


書類送検されたのは,直接の担当医師のみです.
はじめて造影剤を脊髄に投与する医師を誰もチェックしない体制だったのですから,上級医,管理者の責任も検討されるべきではないかと思います.

近代刑法は,故意犯のみならず過失犯を罰するという方向で進化してきましたので,故意の殺人より刑は格段に軽いのですが,業務上過失致死罪が日本刑法にも定められています.
なお,このような刑事手続きが医療崩壊を招いているという見方もありますが,かといって悪質なもの,隠蔽が行われたものもありますので,業務上過失致死の案件を医師だけ特別に不問に付するというわけには流石にいかないでしょう.
そこで医師を守るために過失犯の規定そのものを刑法から削除する考えも主張されています.
ただ,その場合,「過失犯罪」は無くなりますが,「過失による被害」が無くなるわけではありませんので(依然として医師のミスにより亡くなる人はいますので),被害者救済制度の確立と過失行為者の再教育プログラムと管理体制の点検等自浄作用が期待できる体制ができることが非犯罪化の合意が成立するためのの前提条件となるのではないでしょうか.


谷直樹

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by medical-law | 2014-12-04 07:12 | 医療事故・医療裁判

市立甲府病院 採血ミスによる神経損傷で125万円で示談(報道)

朝日新聞「125万円支払い 示談が成立」(2014年11月28日)は,次のとおり報じました.

「甲府市は26日、市立甲府病院で昨年に男性患者から採血する際にミスがあり、神経に後遺症が残ったため、男性側に約125万円の損害賠償を支払い、示談したことを明らかにした。

 病院によると、昨年1月、内科外来を受診した中央市の70代男性の右腕から検査技師が採血した際、男…」



採血により神経損傷は少なくない数の相談がありますが,立証が難しいケースも結構多いです.
報道の事案のように示談で解決できればよいですが,解決できない紛争も多数ありますので,無過失補償の制度が必要なのではないでしょうか.


谷直樹

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by medical-law | 2014-12-02 19:09

大崎市民病院,B型肝炎の既往がある患者に肝臓に影響のある薬を投与し劇症肝炎で死亡した例で和解(報道)

河北新報「医療ミスで女性死亡 遺族に4000万賠償へ」(2014年)12月2日)は,次のとおり報じました.

「大崎市民病院本院でことし2月、通院治療を受けていた女性患者が医療ミスが原因で死亡したことが1日、分かった。遺族との間で、市側が約4000万円の損害賠償を支払うことで和解が成立したという。
 市は、市議会12月定例会に提出する2014年度病院事業会計補正予算案に、女性患者の遺族に支払う損害賠償を計上したことを明らかにした。市はこれまで事実を公表していなかった。
 同病院総務課によると、死亡したのは栗原市の50代女性。2008年に関節リウマチの治療を始め、肝機能に影響が出る治療薬の処方を受けた。病院側は女性にB型肝炎の既往症があることを把握していたが、状態が安定していたため、投薬を続けたという。
 女性は13年12月に体調を崩し、ことし2月に入院先の東北大病院で劇症肝炎で死亡した。大崎市民病院の医療安全管理委員会は3月、病院側が経過観察を十分にすれば劇症肝炎の発症は防げたと認めて補償を決定。10月末に和解が成立した。
 市は同日、市議会12月定例会に提出する議案を記者発表し、報道機関の指摘で事実を説明した。」


B型肝炎の既往のある患者に或る種の薬を投与すると劇症肝炎を発症することがあることはよく知られています.そのような薬を不注意に投与すると医療過誤となる場合が多いと思います.また,投与後の対応も問題になります.
本件は,経過観察に問題のあるケースのようです.

谷直樹

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by medical-law | 2014-12-02 18:39 | 医療事故・医療裁判

東京入国管理局,胸痛を訴えたスリランカ人を医師にみせず,死亡

NHK「入管施設でまた収容の外国人が死亡」(2014年12月1日)は,次のとおり報じました.

「東京入国管理局に収容されていたスリランカ人の男性が先月、体調不良を訴えたのに、医師の診察を受けられないまま死亡したことが支援団体の調査で分かりました。
ことし3月にも茨城県の入管施設で外国人2人が死亡していて、支援団体は医療面の対応を早急に改善するよう法務省に申し入れることにしています。

死亡したのは先月中旬に来日したものの滞在を許可されずに東京・港区の東京入国管理局に収容されていた57歳のスリランカ人の男性です。
男性は先月22日の午後1時ごろ、収容されていた部屋で意識不明の状態で発見され、搬送された病院で死亡が確認されました。
外国人の支援団体によりますと、男性は当日の朝から激しい胸の痛みを訴えたにもかかわらず、入管が医師の診察を受けさせるなどの対応を取っていなかったことがほかの収容者への聞き取りで分かったということです。
入管施設を巡っては、ことし3月に茨城県の東日本入国管理センターに収容されていた外国人の男性2人が相次いで死亡していて、法務省はこのうち1人について、医療面の対応に不備があったと先月20日に発表したばかりでした。
支援団体は「入管の姿勢は外国人の人権を著しく軽視するものだ」として、早急に対応を改善するよう法務省に申し入れることにしています。

遺族「信じられない問題」

支援団体とともに会見した死亡したスリランカ人の親族の男性は、「いまだに亡くなったことが信じられない。男性の妻も、精神的に激しく動揺していて、『日本でこんな問題が起きたことが信じられない』と話していた」と述べ、入管の対応の検証や医療体制の改善を訴えました。

入管「対応に不備はない」

収容されていた男性が死亡したことについて東京入国管理局は、「男性を一般の部屋から単独の部屋に移して職員が様子を確認していて、対応に不備はなかったと考えている。現時点では死因が特定されておらず、それ以上のことは申し上げられない」とコメントしています。」


朝日新聞「入管でスリランカ人男性死亡 胸の痛み訴えるが診察せず」(2014年12月1日)は,次のとおり報じました.

「東京入国管理局の東京都内の施設に収容されたスリランカ人男性(57)が11月22日、胸の痛みを訴えたのに医師の診察を受けられず、死亡していたことが分かった。遺族が1日会見し「入管が放置したのが死亡した原因だ」と訴えた。

 遺族や法務省によると、男性は11月12日に1人で来日。観光目的だったというが、所持金が少ないなどの理由で入国できず、入管に収容された。同月22日朝に胸の痛みを訴え、同日午後1時ごろ、意識不明の状態で見つかり、搬送先の病院で死亡が確認された。死因は調査中だという。

 同日朝に男性を救急搬送しなかった理由について、法務省は「重篤な状況ではないと判断したため」と説明している。

 入管施設では、外国人の死亡が相次いでいる。施設の医師不足が深刻になっており、同省は11月20日、常勤医の確保や民間医師の判断を聞くなどの改善策を公表したばかりだ。」


医師ではない者が様子をみただけで,急性心筋梗塞等重篤な病気か否かがわかるはずはありません.
胸痛を訴えたらまず医師にみせるべきです.


【追記】

日本弁護士連合会(日弁連)は、2015年1月14日、以下の「東京入国管理局における被収容者の死亡事件に関する会長声明」を発表しました.

「2014年11月22日、東京入国管理局に収容されていた57歳のスリランカ人男性が死亡するという事件が発生した。新聞報道によれば、男性は同日朝に胸の痛みを訴えたが、医師の診察を受けられなかったところ、午後1時頃に意識不明の状態で見つかり、搬送先の病院で死亡が確認されたとのことである。

入管収容施設では、2014年3月にも、東日本入国管理センターに収容されていたイラン人男性とカメルーン人男性が相次いで死亡するという事件が発生していたところである。これを受け、法務省は、同年11月20日には、常駐医の不在などの問題があったとして、常勤医の確保に向けた努力を継続することとし、診療申出から受診までの手続・手順の見直しや検査結果の迅速な回付、容態観察中の対応について、処遇改善の方針を示していた。

当連合会は、入管収容施設における医療問題に関する被収容者からの人権救済申立てについて、2014年11月7日、東京入国管理局及び東日本入国管理センターが、社会一般の水準と同様の水準の医療の提供を怠り、そのような医療へアクセスすることを阻害したことなどから、同人らの医療を受ける権利を侵害したとして、今後の侵害の防止について適切な措置を採るよう勧告していた。そして、このような適切な措置として、被収容者の症状に照らし緊急を要する場合には直ちに医師による診療を受けることができるようにすること、入管収容施設の医師の意見を聴取することが困難な場合には速やかに外部医療機関での診療を行うべきことなどを求めていた。

今回の事件は、その後間もなくして発生したものであり、当連合会による勧告の内容に照らしても、また、法務省自身が示していた処遇改善の方針に照らしても、甚だ遺憾であるといわざるを得ない。

 
当連合会は、相次ぐ死亡事故という事態の重大さに鑑み、法務省入国管理局及び東京入国管理局に対し、今回の事件が発生するに至った原因について、入国者収容所等視察委員会など第三者機関による調査を含めた徹底的かつ迅速な調査を実施し、その調査結果を公表するよう求める。また、今後このような事件が再発することのないよう、医療関係への重点的な人員配置や医療の必要な者への仮放免の柔軟な実施など直ちに採りうる対策を講じるとともに、当連合会が勧告した適切な医療体制の構築など、具体的かつ実効的な再発防止の措置を速やかに講じるよう強く求めるものである。」


  

谷直樹

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by medical-law | 2014-12-02 08:41 | 医療

沖縄タイムス社説「[二つの「隔離」]排除の歴史 繰り返すな」

沖縄タイムスは,2014年12月1日,精神障がいとハンセン病について社説「[二つの「隔離」]排除の歴史 繰り返すな」を掲載し,精神障がい者を病院の敷地内に退院させるのはおかしな話である,と論じました.

29日のシンポジウムで,八尋光秀さんは「人生被害」という言葉を使い、「二つの問題は全然違うが、隔離によって人権を侵害し、人生を奪うということでは同じだ」と語った,とのことです.


谷直樹

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by medical-law | 2014-12-01 20:43 | 医療

インスリン投与の必要がない患者に故意にインスリンを投与した容疑で玉川病院の看護師逮捕

医療現場で,医療従事者が誤って患者を傷つけたり死なせたりすることはありますが、故意に患者を傷つけたり死なせたりすることはほとんどありえないことだと思っていました.
ところが,ドイツのデルメンホルストの病院に勤務していた看護師が退屈しのぎに患者を重篤な容体にしたうえで蘇生させようとしたが蘇生できずに186人を死亡させたことが報じられました.
また,日本でも看護師が傷害容疑で逮捕されました.
逮捕容疑は4月3日、6日、9日の3回にわたりインスリン投与の必要のない患者にインスリンを投与して低血糖状態にしたというものです.
公益財団法人日産厚生会玉川病院は,平成26年12月1日,「警察届け出をおこなった事例に関して逮捕者が出た件についての御報告とお詫び」を発表しました.

NHK「故意にインスリン投与の疑い 看護師を逮捕」(2014年12月1日)は,次のとおり報じました.

「東京・世田谷区の病院でことし4月、糖尿病ではない女性患者が血糖値を下げるインスリンを投与され、意識がもうろうとなった事件で、警視庁は25歳の看護師の女が故意にインスリンを投与した疑いが強まったとして、傷害の疑いで逮捕しました。
看護師は容疑を否認しているということです。

逮捕されたのは、東京・世田谷区の看護師、××××容疑者(25)です。
この事件は、東京・世田谷区の「日産厚生会玉川病院」でことし4月、入院中の91歳の女性患者が低血糖症になって意識がもうろうとする発作を3回起こしたもので、女性の血液からは血糖値を下げるインスリンが高い濃度で検出されました。
女性は糖尿病ではなかったことから警視庁が捜査したところ、発作に気付いたと話していた××容疑者が、医師に報告せずに血糖値の検査をするなど不審な行動をしていたことなどから、故意にインスリンを投与した疑いが強まったとして、傷害の疑いで逮捕しました。
病院内の棚からインスリンの瓶2本が無くなっていたということで、警視庁が詳しい経緯を調べています。
警視庁によりますと、××容疑者は容疑を否認しているということです。」


逮捕の段階で,否認していますので,本当にこの看護師の犯罪かは不明ですが,誰かが患者にインスリンを投与したのは事実です.真相の解明を期待します.

【追記】
テレビ朝日「“インスリン投与”の女 初公判で無罪を主張」(2015年6月10日)は,次のとおりじました.

「東京・世田谷区の病院で、女性患者にインスリンを大量に投与して低血糖症に陥らせたとして傷害罪に問われた看護師の女が初公判で無罪を主張しました。

 ××××被告(26)は去年4月、世田谷区の日産厚生会玉川病院で入院中の糖尿病でない女性患者(91)に、3回にわたって故意にインスリンを投与し、低血糖症に陥らせたとして傷害の罪で起訴されました。女性患者は突然、手足が震えるなどの発作を起こしましたが、その後、回復しました。10日の初公判に黒のスーツで入廷した××被告は終始、うつむき加減で、消え入るような小さな声で「インスリン投与はしていません」と起訴内容を否認しました。検察側は冒頭陳述で、××被告が患者に近付こうとした他の看護師に対して「暴れるので近付かないように」と警告するなど、犯人でないと説明できない不合理な行動があったと指摘しました。一方、弁護側は「証拠は皆無で、投与の方法すら明らかになっていない。被告以外の看護師にも投与する機会があった」などと主張しました。」

【再追記】
産経新聞「患者に不要なインスリン投与、看護師に懲役2年6月判決 無罪主張退ける」(2015年12月15日)は,次のとおり報じました.

「東京都世田谷区の玉川病院で入院患者の女性=当時(91)、退院=に必要のないインスリンを大量に投与し一時的に意識を失わせたとして、傷害罪に問われた横浜市の看護師、××××被告(26)の判決公判が15日、東京地裁で開かれた。江見健一裁判長は「無防備な患者に看護師の立場を悪用して危害を加えた卑劣な犯行だ」として、懲役2年6月(求刑同4年)の実刑判決を言い渡した。

 弁護側は「犯行は××被告以外にも可能で、別人によるものだ」と無罪を主張していたが、江見裁判長は「単独犯かつ同一人物の犯行と推認される上、犯行の機会を考慮すると、××被告が犯人だと認められる」とし、弁護側主張を退けた。弁護側は判決後、控訴する意向を示した。

 判決によると、高柳被告は平成26年4月3、6、9日、患者女性に必要のないインスリンを投与し、低血糖発作で意識を失わせた。」


WSJ「不要インスリン投与で実刑=看護師の女に、患者昏睡—東京地裁」(2015年12月15日)は,次のとおり報じました.

「東京都世田谷区の「日産厚生会玉川病院」で昨年4月、患者に不要なインスリンを大量投与し、一時昏睡(こんすい)状態に陥らせたとして、傷害罪に問われた看護師××××被告(26)の判決が15日、東京地裁であった。江見健一裁判長は××被告の犯行と認定し、懲役2年6月(求刑懲役4年)を言い渡した。同被告は無罪を主張しており、即日控訴した。

 何者かがインスリンを投与した点に争いはなかったが、××被告は「自分ではない」と主張。目撃証言や明確な物証はなく、状況証拠の評価が争点だった。

 江見裁判長は、××被告が患者に異変のあった3日間とも看護を担当し、他の誰よりも犯行は容易だったと指摘。看護記録に虚偽の血糖値を記載したことなどから、「犯人と強く推認される」と認定した。その上で、「安全管理を担う立場や医療技術を悪用した卑劣な犯行」と述べ、実刑が相当と判断した。

 弁護側は「投与方法すら明らかでなく、動機も解明されていない。立証は不十分だ」と反論したが、退けられた。

 判決によると、××被告は昨年4月、入院中の女性に3回にわたり、糖尿病治療薬のインスリンを大量投与し、低血糖発作を引き起こした。 [時事通信社]」




谷直樹

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by medical-law | 2014-12-01 20:16 | 医療事故・医療裁判