弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

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<シンポジウムのご案内>これでいいのか?「医療事故調査制度」 ~真実を共有できる環境を作るために~

<シンポジウムのご案内>
これでいいのか?「医療事故調査制度」~真実を共有できる環境を作るために~

日時:2015年2月28日(土) 13:30 ~ 16:45
場所:エル大阪(府立労働センター) 6階 606号室

(京阪電車または地下鉄谷町線「天満橋駅」下車、西へ徒歩約5分。℡06-6942-0001)

 2005年5月に被害者遺族も加わった厚労省検討会が、初めて「医療事故等事例の原因究明・分析に基づく再発防止対策の徹底」を目標としてから10年。紆余曲折した日本の医療事故調査制度は、ようやく昨年の医療法改正によって、今年10月1日から開始されることになりました。しかし、2月25日までに制度の詳細を決めるために開かれている厚労省の検討会では、一部の医療関係者から、これまでの医療訴訟や先進的な事故調査の取り組みに対する偏見や事実誤認の発言がなされるなど、議論が迷走している感があります。医療の質と、患者と医療者の信頼関係を高めるための事故調査制度のあり方について考えます。

【第1部】講演(13:30~15:00) 総合司会:山中裕子さん(「医療情報の公開・開示を求める市民の会」事務局長)
○医療事故調査制度の議論の経過と論点
 前村 聡さん(日本経済新聞大阪本社記者、元厚労記者クラブ担当、東京大学H-PACメンター)
○医療事故被害者は何を求めてきたのか
 篠原聖二さん(「医療過誤原告の会」副会長・関西支部長、「先端医療の落とし穴」著者)
○医療裁判の実情と海外の事故調査制度
 石川寛俊さん(弁護士、関西学院大学法科大学院教授、「医療と裁判」(岩波書店)著者)
○病院は事故にどのように対処すべきか
 北田淳子さん(阪南中央病院患者情報室医療対話推進者、NPO法人「架け橋」副理事長)
○なぜオネストトーキングが重要なのか
 岡本左和子さん(奈良県立医科大学医学部講師、元米国ペイシェント・アドボケイト)

【第2部】ディスカッション(15:15~16:45) コーディネーター:勝村久司さん(「医療情報の公開・開示を求める市民の会」世話人)
 5名の講演者の他、医療事故調査制度の厚労省検討会委員で医療事故遺族の永井裕之さんや、「医療情報の公開・開示を求める市民の会」世話人の岡本隆吉さんらを始め、会場の参加者の皆さんと共に質疑応答や意見交換をしながら、患者・医療者双方にとって意味のある医療事故調査制度のあり方について議論を深めていきます。

 予約不要で、どなた様でもご自由にご参加頂けます。(会場定員108名)
 受付:PM13時~、参加費:1000円(資料代込)、お問い合わせは下記まで。
 (URL) http://homepage1.nifty.com/hkr/simin/ (tel) 090-4546-4377
   
【同時開催】
医療事故等に関する弁護士無料相談会
日時:2015年2月28日(土) 11:00 ~ 12:30
場所:エル大阪(大阪府立労働センター)7階704室

主催:「医療情報の公開・開示を求める市民の会」
共催: 「医療過誤原告の会関西支部」「患者の視点で医療安全を考える連絡協議会」「薬害・医療被害をなくすための厚生労働省交渉実行委員会」ほか


谷直樹

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by medical-law | 2015-01-26 15:32 | 医療事故・医療裁判

ドラマ「流星ワゴン」

流星ワゴン」(TBS日曜夜9時)は,重松清さんの原作で,西島秀俊さん(中年太りとは無縁の鍛え上げた筋肉!),香川照之さん,井川遥さん(重松清さん原作の「ヒナゴン」の主役でした),吉岡秀隆さんはじめ演技派の俳優が出演しています.あの「半沢直樹」のスタッフが製作しています.

このドラマは,タイムトラベルものです.
不仲だった父親(香川照之さん)が主人公と同年齢になっていて,幽霊(吉岡秀隆さん)が運転するワゴンに一緒に乗って,大切な時間(ターニングポイント)に戻ってやり直そうとするのです.香川照之さんは市川猿翁さんとの和解を想起しますし,淡々とした語り口の吉岡秀隆さんは本当に適役です.

先週の第1回では,主人公(西島秀俊さん)は会社をリストラされ無職,妻(井川遥さん)は男性と関係をもち家を出ていて,子どもは受験失敗でいじめられ引きこもりとなって暴れている,という設定で,妻から離婚届けが送られてきます.日本一嫁に厳しい条件を課した西島秀俊さんが,この役を演じているところがギャップです.
親権・財産をめぐる争いもなく簡単に離婚できる状況ですので素直に喜べばいいのに,と思うのですが...離婚すれば幸せになれるかもしれないのに...
人生のやり直しはこの時点からでもできるのに,主人公は,なぜか過去に戻ってやり直ししようとするのです.
過去の「失敗」を無いことにすると未来の「成功」も無いことになるかもしれません.離婚が無ければ再婚もありませんし,離職がなければ再就職もないでしょう.
破り捨てた離婚届が再生されているシーンがありました.過去を変えることはできず,現在も変わるものではない,という示唆なのかもしれません.
今週の「櫻井有吉アブナイ夜会」に西島秀俊さん,香川照之さん,井川遥さんが番宣のために出演していましたが,過去に戻りたいとは思わないと口々に言っていました.

重松清さん原作の映画では,石橋杏奈さん,北浦愛さん,吉高由里子さんが出演した「きみの友だち」が切なくて一番好きです.それぞれ足が不自由,腎臓疾患,心因性視力障害というハンディがある役です.「たとえいなくなったとしても,一生忘れない友だちが,一人,いればいい」 きわめてシンプルです.

【追記】

第2回をみましたが,動物虐待のシーンがあり,子犬が直接的に棒で叩かれる描写こそ無かったですが,いい気持ちはしませんでした.テレビには禁則事項があると思います.半沢直樹のような爽快感が感じられなかったので,視聴率は裏(行列)を超えられないのではないかと思いました.
ドラマを複数見る時間は私にはありませんので,今期のドラマは,日テレの「○○妻」一本に絞ります.


谷直樹

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by medical-law | 2015-01-25 10:29 | 休暇・休日

介護老人保健施設が救急車要請の遅れ等を理由に提訴される(報道)

神奈川新聞「介護施設の救急要請が遅れて死亡」遺族が提訴」(2015年1月24日)は,次のとおり報じました.

「介護施設を利用していた女性=当時(88)=が食事を喉に詰まらせて死亡したのは救急車の出動要請が遅れるなどしたためとして、女性の遺族が23日、施設を運営する医療法人花咲会(川崎市宮前区)に約4200万円の損害賠償を求める訴えを横浜地裁に起こした。

 提訴したのは、横浜市南区に住む女性の長男。訴えによると、女性は2012年3月、同区の介護老人保健施設をショートステイで利用。滞在3日目の夕食の際、食事を詰まらせて呼吸困難になり、翌朝死亡した。死因は窒息死だった。

 遺族側は、「のみ込む際に食べ物が口の中に残る」と施設に伝えていたのに、担当職員は特段の注意を払わなかったと主張。さらに、施設側が救急車を呼んだのは、意識がなくぐったりした状態の女性に気付いた約1時間後だったと指摘。搬送先の病院でいったん心拍が再開したことや、消防出張所が近隣にあることからも、遺族側は施設が速やかに救急車を要請していれば、女性の死亡は避けられた、と訴えている。」


高齢者は咀嚼・嚥下機能が弱っていますので,食物を喉に詰まらせて死亡するケースは結構あり,食事に何を提供したのかが問題になります.これについては,責任肯定・責任否定の両方の裁判例があります.
本件は,救急車を呼んだのが遅いという点を問題にしているようです.それを認めた裁判例もあります.
介護老人保健施設について,具体的に法的な注意義務がどこまで認められるか,は大変微妙な問題ですが,咀嚼・嚥下機能が弱っている高齢者を預かる以上,一般的には高度の安全配慮義務が求められると考えられるでしょう.施設側からすると厳しく感じるかもしれませんが,最小限速やかな救急車要請を徹底することは必要不可欠でしょう.
なお,速やかに救急車を呼んでいれば結果が変わっていたという因果関係立証は,仮定の話ですので,本件はともかく一般には決して容易ではありません.
患者側には頑張っていただき,よい判決を残していただきたいと思います.


ところで,ロックな弁護士つれづれ日記の「医療事件のお話〜医療事故調査制度と、近々提訴予定のある医療関連事故のこと」には,以下の記載があります.

「実は、事故が起きた後で、被害者の女性(依頼者の 母親にあたる)は、誤嚥事故が起きた食堂からご本人の自室に移されていた。
だから、家族が着いた時には、自室のベッドで寝かされていたのだ。
到着した家族の質問に対し、看護師は、あくまで「原因不明の心肺停止」と説明しており、夕食時の誤嚥の話はまったく出なかったそうだ。
そして、救急車を呼んでいないことを知った依頼者が、あらためて救急車を呼ぶよう求めても、なぜか、外出中の施設長に連絡を取り、家族には「本当に呼ぶんですか?」と確認していたりしていたのだ。
結局、介護施設にいる間、家族は、夕食中の誤嚥については一言も説明を受けておらず、そのため、家族は、母親が死亡してからも、母親は施設の自室内で「原因不明の心肺停止」を起こし、それによって死亡したと思い込んでいたという。
家族が誤嚥のことを知るのは、死後に行われた解剖の結果が記載された死体検案書を見た時だったのだ。
そこには、「誤嚥による窒息死」と書かれていた。」


つまり,当初誤嚥の事実にはまったくふれることなく「原因不明の心肺停止」と説明されたとのことなのです.
なんとなくおかしな印象をうける事案です.


谷直樹


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by medical-law | 2015-01-24 07:35 | 医療事故・医療裁判

名古屋高裁平成27年1月23日逆転判決,ステントグラフト挿入による動脈損傷について医師の過失否定(報道)

朝日新聞「遺族側が逆転敗訴 手術後の男性死亡事故で名古屋高裁」(2015年1月23日)は,次のとおり報じました.

「人工血管を取り付ける手術後に死亡した男性(当時76)の遺族が、愛知県豊橋市の豊橋市民病院に損害賠償を求めた訴訟で、名古屋高裁(林道春裁判長)は23日、病院に約5100万円の賠償を命じた一審・名古屋地裁判決を取り消し、訴えを棄却する判決を言い渡した。

 男性は2002年7月、脚の付け根から人工の血管を入れる手術を受けた際、腰付近の血管の損傷による出血性ショックの状態になり、8日後に死亡した。

 2011年の名古屋地裁の判決は、執刀医が血管の抵抗に応じて器具を挿入する注意義務を怠った過失があると認定した。これに対し、23日の高裁判決は、損傷は執刀医が抵抗を感じない程度の刺激で生じたもので、避けられなかったと認定。過失はなかったと結論づけた。」


これは,医師が大動脈解離を発症した76歳の男性患者にステントグラフトを挿入したところ動脈損傷による出血性ショックとなり,翌月患者が死亡した事案です.ステントグラフト挿入の際,医師は特段抵抗を感じなかったとのことです.

医師が抵抗を感じなかったと証言した場合,それは,医師に不注意があったからなのか,その患者の血管が脆弱になっていたからなのか,が争いになります.
医療行為が原因で動脈損傷が発生し,それについて病院が全く責任を負わないという判決は遺族にとっては容易に受け入れがたいものではないかと思います.しかし,他方,医師の側からすると,通常通り注意深く操作したのに悪い結果が生じたことで過失があるとされたのではたまったものではないと考えるでしょう.大動脈解離を発症した患者の動脈損傷は一筋縄ではいかない難しい事案です.

名古屋地裁平成23年10月28日判決は,血管の弾力性のデータなどに基づき抵抗を感じなかったのは医師が必要な注意を怠ったためと認定しました.
これに対し,名古屋高裁平成27年1月23日判決は,弱い刺激で損傷が起きたので医師の注意義務違反(過失)はなかったものと認定したわけです.地裁判決から高裁判決まで長い年月がかかっているので,おそらく鑑定書など追加の証拠が提出された結果なのでしょう.
判例集に公開されたら,判決文を熟読したいと思います.


谷直樹

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by medical-law | 2015-01-24 06:35 | 医療事故・医療裁判

大阪高裁平成27年1月22日逆転判決,熱中症を認定し兵庫県に約2億3700万円の賠償を命じる(報道)

2007年5月24日に兵庫県立龍野高校の女子テニス部キャプテンが練習中に倒れ心停止となり低酸素脳症による重度の意識障害が残った事案で,一審の神戸地裁がウイルス性の心筋炎の可能性をあげ請求棄却としたのに対し,大阪高裁(森宏司裁判長)は,熱中症と認定し,さらに,顧問の教諭の義務違反を認め,兵庫県に約2億3700万円の賠償を命じたとのことです.

朝日新聞「部活中に熱中症で障害、県に過失 2.4億円賠償命令」(2015年1月22日)は,次のとおり報じました.

「事故時について森裁判長は「コートは30度前後で、地表はさらに10度前後高かった」「当時は定期試験の最終日で、女性は十分な睡眠がとれていなかった」と指摘。ウイルス性の心筋炎の可能性を踏まえた一審判決の認定を変え、女性は熱中症だったと認めた。

 正午から約30分間練習に立ち会い、出張でコートを離れた顧問の教諭について「キャプテンだった女性が指示された練習メニューをこなそうとすることは想定できた」と判断。軽度な練習にとどめるなどし、危険が生じないように配慮するべきだったとした。そのうえで将来の介護費用として約1億円、逸失利益として約6千万円などとする賠償額を算定した。」


毎日新聞「部活事故:高2女子に重い障害 兵庫県に逆転賠償命令」(2015年1月22日)は,次のとおり報じました.

「森裁判長は、顧問が出張のために練習に立ち会わない代わりに、練習内容を主将だった女性に指示していたことについて「熱中症に陥らないよう指導すべきだった」と指摘。安全配慮義務違反があったと認定した。

 判決によると、女性は2007年5月24日正午ごろ、学校近くの市営テニスコートで他の部員と練習を始めた。約3時間後、熱中症で倒れて一時心肺停止となり、低酸素脳症による意識障害に陥った。今も手足を動かすことや話すことができず、寝たきりの状態で生活している。

 判決は、当日の状況について(1)普段は夕方に部活動をしていたのに、日差しの強い日中に練習をした(2)定期試験の最終日に当たり、練習は10日ぶりで、部員は睡眠不足の可能性があった(3)女性にとって顧問が不在時に練習を仕切るのは初めてだった−−と大きな負担がかかる状況だったと指摘した。

 更に、顧問が指示した練習メニューは密度が濃く、これまでの練習ぶりから女性が率先してこなすことが予想できたと判断。「練習の様子を直接監督できない以上、部員の健康状態に配慮すべきだった」と述べ、練習を軽くしたり、水分補給の時間を設けたりし、熱中症になるのをあらかじめ防ぐべきだったと結論付けた。賠償額のうち将来の介護費用を約1億円と算定した。」


産経新聞「学校は安全な場所であってほしい」事故から8年…逆転勝訴に父訴え 部活熱中症裁判」(2015年1月22日)は,次のとおり報じました.

 「「おめでとう」。法廷を出た両親は車いすに近づき、会話できない娘の手を握りしめた。約8年前に高校の部活中に熱中症で倒れ、重度の障害が残った女性(24)と両親が兵庫県に損害賠償を求めた訴訟。22日の逆転勝訴判決後に会見した父親(52)は「学校は安全な場所であってほしい。二度と同じような事故を起こさないでほしいと願って娘と生きていきたい」と話した。

 平成19年5月24日、中間テストの最終日だった。午前2時過ぎまで勉強していた女性は寝不足のまま登校した。

 責任感の強い努力家。所属する硬式テニス部では部員の信頼が厚く、顧問直々に主将を任された。その日も顧問が考えた練習メニューをもとに、休憩を挟まず他の部員と練習を続けた。気温は25度を超えていた。

 倒れたのは、大阪高裁判決が「負荷は相当重い」とした練習メニューの終盤。部員の先頭を切ってランニング中に突然意識を失った。以降、女性は手足が動かず、言葉を発することもできなくなった。

 21年5月以降は在宅介護となり、夜は2時間おきに両親が交代で起床し、床ずれを起こさないよう女性の体勢を入れ替える。食事はチューブで胃に栄養を送っているが、リハビリの成果でようやくヨーグルトが食べられるまでになった。

学校側は事故後、原因を調査せず、謝罪もしていない。女性と両親は22年4月に提訴したが、1審の法廷では当時の校長が「調査が再発防止になるとは思わない。道義的責任で謝罪しても法的責任にすり替えられる」と証言したという。

 独立行政法人日本スポーツ振興センターによると、中学・高校生の熱中症は25年度までの3年間で約1万3400件発生。被害者による訴訟は全国で相次ぐが、原告側によると、高校生の部活は「生徒の自主的な判断で休めばいい」と判断される傾向があるという。

 原告代理人の渡部吉泰弁護士は「判決は女性の真面目な性格や体調までをも考慮して学校現場に対応を求めており、かなり踏み込んだ判断だ」と評価した。」


神戸地裁の裁判官は,他原因(ウイルス性の心筋炎)の可能性を完全に排斥できないことから熱中症による心停止という患者側主張の機序が認定できないと判断したのでしょうが,他原因の可能性を厳密に排除するところまで患者側に求めると,ほとんどの場合患者側の敗訴となってしまいます.裁判所には,証拠から合理的な事実認定を行うことが求められています.
顧問の教諭の義務違反についても,どこまで求められるのか,が問題になります.
同じ事実を前にしても,裁判官により判断が分かれることがありますが,本件は,大阪高裁の判決のほうが適切な方法で事実と義務違反を認定し,社会通念に合致した結論を導いたものと考えます.

医療事件でも,心停止の事案では低酸素脳症から遷延性意識障害となる例があり,性別・年齢によっても異なりますが,本件の賠償金額は参考となると思います.

谷直樹


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by medical-law | 2015-01-23 03:08 | 司法

岩手県立中央病院、採血の際の神経損傷で提訴される(報道)

テレビ岩手「医療過誤で岩手県に損害賠償請求」(2015年1月21日)は、次のとおり報じました.

「盛岡市に住む21歳の女性が、県立病院の研修医による採血の失敗で足に麻痺が残ったとして21日、県に対し慰謝料など270万円余りの損害賠償を求める訴えを盛岡地方裁判所に起こした。
訴えを起こしたのは、盛岡市に住む元飲食店店員、吉田愛加さん21歳。
訴えによると吉田さんは、虫垂炎の疑いで去年6月、盛岡市の県立中央病院の救急センターで受診した際研修医2人が行った採血が失敗し、その直後から右足にしびれや麻痺が生じたという。
その後、吉田さんは、右太ももの神経損傷と診断され、2か月半入院したが右あしに麻痺が残り、現在別の病院でリハビリを行っている。
また、県立中央病院の副院長の対応も不誠実だったと主張し、慰謝料など270万円余りの損害賠償を求めている。これに対し、県医療局では、「訴状の内容が分からない状態でコメント出来る段階で無い」と話している。」


採血時,770人に1人が神経に触れ,14000人に1人が後遺症を残す,と言われています.表面化しているのはごく一部で,立証の壁が大きく立ちはだかっています.
採血の際の神経訴訟については、注射と神経損傷の事実が立証できれば、過失の有無を問わず補償する制度が必要なように思います.

谷直樹


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by medical-law | 2015-01-22 01:15 | 医療事故・医療裁判

四日市立四日市病院、労働基準法違反で2年分割増賃金等3億円支払いへ

四日市立四日市病院で、2014年12月16日、医師への割増賃金の未払いや時間外労働があり、労働基準法に違反するとして四日市労働基準監督署から是正勧告を受けていたとのことです.未払いは金利を含めて2年分で3億円に上り、市は追加支給するとのことです.医師等の増員が必要でしょう.

中日新聞「医師手当3億円未払い 労基署、四日市病院に是正勧告」(2015年1月21日)参照
読売新聞「市立四日市病院 時間外手当支払い不足」(2015年1月21日)参照

谷直樹


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by medical-law | 2015-01-22 00:50 | コンプライアンス

「厚生労働分野の研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン」

厚生労働分野の研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン」(平成 27 年 1 月 16 日科発 0116 第 1 号厚生科学課長決定)が制定されました.
本ガイドラインは平成27年4月1日から適用する。第3節及び第4節については、平成27年度当初予算以降(継続を含む。)における厚生労働省の予算の配分又は措置により行われる全ての研究活動を対象とする。
なお、平成27年3月31日までを本ガイドラインの適用のための集中改革期間とし、関係機関において実効性のある運用に向けた準備を集中的に進める。
」とのことです.

研究活動における不正行為とは,「具体的には、論文、学会発表、成果報告書などの形で発表された研究成果、及び研究資金獲得のための研究計画書における意図的な「ねつ造」、「改ざん」、「盗用」が該当する。その他にも、研究活動を弱体化させる不適切・無責任な行為としては、研究データの管理不足による紛失、危険な研究方法の採用、不適切なオーサーシップ、論文の分割など論文数を不適切に増す行為、論文・研究提案書の査読における不適切行為(意図的な遅延、研究上の観点から逸脱した過大な要求)が指摘されている。」と記載しています.

具体的に,次の責務を明示しています.

<<研究機関が実施する事項>>
○ 「研究倫理教育責任者」の設置などの必要な体制整備を図り、広く研究活動に関わる者を対象に定期的に研究倫理教育を実施すること

<<配分機関が実施する事項>>
○ 所管する競争的資金等の配分により行われる研究活動に参画する全ての研究者に研究倫理教育に関するプログラムを受講させ、研究倫理教育責任者の知識・能力の向上のための支援その他の研究倫理教育の普及・定着や高度化に関する取組を実施すること

<<研究機関が実施する事項>>
○ 研究者に対して一定期間研究データを保存し、必要な場合に開示することを義務付ける規程を整備し、その適切かつ実効的な運用を行うこと

<<厚生労働省が実施する事項>>
○ 特定不正行為が行われたと確認された事案について、その概要及び研究・配分機関における対応などを一覧化して公開すること

<<研究・配分機関が実施する事項>>
○ 研究・配分機関は、特定不正行為の疑惑が生じたときの調査手続や方法等に関する規程等を適切に整備し、これを公表すること
○ その際、
・ 研究・配分機関は、研究活動における不正行為に対応するための責任者を明確にし責任者の役割や責任の範囲を定めること
・ 研究・配分機関は、告発者を含む関係者の秘密保持の徹底や告発後の具体的な手続を明確にすること
・ 研究・配分機関は、特定不正行為の疑惑が生じた事案について本調査の実施の決定その他の報告を当該事案に係る配分機関等及び厚生労働省に行うよう規定すること
・ 研究・配分機関は、特定不正行為の疑惑に関し公表する調査結果の内容(項目等)を定めること
・ 研究機関は、「研究倫理教育責任者」の設置などの必要な体制整備を図り、広く研究活動に関わる者を対象に定期的に研究倫理教育を実施すること【再掲】

<<配分機関等が実施する事項>>
○ 調査機関から本調査の実施の決定その他の報告を受けた場合は、関係機関に対して必要な指示等を行うこと
○ 特定不正行為に対する研究者、研究機関への措置を講じることができるよう、配分機関等の規程等を整備すること、及び配分機関等が講じる措置の内容や措置の対象となる研究者の範囲について、競争的資金等の公募要領や委託契約書(付属資料を含む。)等に記載し、研究者及び研究機関がそれをあらかじめ承知して応募又は契約するように取り計らうこと

<<配分機関が実施する事項>>
○ 組織としての管理責任に対する研究機関への措置を講じることができるよう、配分機関の規程等を整備すること、及び配分機関が講じる措置の内容について、競争的資金の公募要領や委託契約書(付属資料を含む。)等に記載し、研究機関がそれをあらかじめ承知して応募又は契約するように取り計らうこと



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by medical-law | 2015-01-21 09:22 | コンプライアンス

医療安全情報No.98(2015年1月)「カリウム製剤の投与方法間違い」

公益財団法人日本医療機能評価機構は,2015年1月15日,医療安全情報No.98(2015年1月)「カリウム製剤の投与方法間違い」を発表しました.

急速静注が禁止されているカリウム製剤を、静脈ラインから急速静注した事例が5件報告されています(集計期間:2011年1月1日~2014年11月30日)。

事 例 1
医師はシリンジポンプで5mL/hで持続投与を意図し、「CV内頚 側管1 K.C.L.点滴液15%(40mEq/20mL)+生理食塩液(20mL)1日3回」と指示したが、投与速度、投与方法の指示はしていなかった。看護師はアンプルに記載してある『点滴専用 薄めて点滴』という表示を見て、指示内容を確認するため手術室に電話した。手術室看護師に「オーダ通りに投与していいか」と手術中の医師に聞いてもらったところ、医師はシリンジポンプを使用すると思っていたため、「いいです」と返答があった。看護師は指示通りに調製し、モニタを見ながら中心静脈ラインの側管からカリウム製剤の調製液を注入した。残量が6mLのところでSpO2低下のアラームが鳴ったため、注入を中止した。
事 例 2
上級医は「患者の補液(ソルデム3A)に、KCL10mL追加」と口頭で指示した。看護師は、KCL注20mEqキット(プレフィルドシリンジ型製剤)に専用針を付けず、注射器に10mL吸い取って研修医に渡した。研修医は、カリウム製剤の投与は初めてであったため不安になり、上級医に「静注でいいですか」と確認したところ、「やっておいて」と回答があった。研修医は、静脈ラインの側管に注射器を接続し、KCL注10mLの注入を開始した。


かなり前からカリウム製剤の急速静注で死亡事故が起きています.その都度注意喚起が行われているのに,未だにカリウム製剤の急速静注事故が起きています.

谷直樹


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by medical-law | 2015-01-20 18:52 | 医療事故・医療裁判

北里大学病院、右頸部血腫の気道圧迫により窒息に至った医療事故の報告書

北里大学病院は、2015年1月19日、「右頸部血腫の気道圧迫により窒息に至った医療事故の報告書」を公表しました.

◆ 原因分析

「 【お亡くなりになった直接の要因】
① 右頸部に生じた巨大血腫が気道を圧迫し、このために気管内挿管が困難となり、気道確保までが遅れたため、低酸素脳症、多臓器不全に至ったこと。

【血腫の形成・増大を来たした要因】
① 自己末梢血造血幹細胞採取目的のカテーテル操作の際に、右頸部の動脈を穿刺したこと。
② カテーテル内の血液が固まってしまうことを防ぐため、薬剤(へパリン)を用いた際、体内に過剰のへパリンが入ったこと。

【この医療事故を起こした背景要因】
① 当該科の診療体制、教育指導体制に不備があったこと。
② 処置を担当する医師、看護師など、医療従事者相互の情報共有やコミュニケーションが不十分であったこと。

【具体的な問題点】
① 処置を実施する場合には、指導医や上級者は事前に実施手順を確認し、準備状態を確認し実施させることや、指導医や上級者が責任を持って支援するという体制が整備されていなかった。
② リスクの高い処置を開始する前に、処置に関わる医療従事者間で情報を共有し、具体的な基準、手順、とくに注意すべき点、起こりうる危険、問題が生じた場合の対応等についてのブリーフィングや確認が行われていなかった。」


◆ 外部委員の提言

「調査検討会(外部調査)委員の提言は、下記の通りでした。
(1) 組織として、リスクの高い処置について、リスクを低減化するプロセスの共有と手順の遵守。
① 北里大学病院で行われている医療処置の中で、リスクの高い処置は何かを関連部門の職員が共有し、その処置について、5WIH の考え方で基準を定め、手順書を作成する。
② 処置の実施に当たっては、経験や記憶に頼らず、基準、手順に従い確実に実施するように習慣化する。
③ 処置の実施にあっては、手順や起こりうる危険について共有し、問題が生じた場合の対処方法を共有し、処置終了後に最終確認を行うことを手順に含めておく。

(2) 全職員が、チームとして情報共有のための技術を高め、ルールを定めて問題や課題を協同して解決する姿勢を養う。
① お互いが感じ、考えている懸念や問題について常に情報交換を行い、問題が大きくなる前に、発見し対処できるようにする。
② チームSTEPPS などの手法を用いて具体的なコミュニケーション技術を身につける。また、コミュニケーションが上手くいかない場合のルールも定めておく。

(3) リスクの高い医療行為を、安全を確保して確実に実施できる技術を身につけられる体制を整える。
① 研修医及び新人教育体制を確立する。
② 医療技術や知識の習熟レベルに応じて、実施可能な医療行為を明確にする。
③ リスクの高い医療行為が実施可能な基準を定めて、習熟していないスタッフが処置を実施する場合には、指導医や上級者が事前に実施手順を確認し、準備状態を確認して実施させる。
④ 習熟するまで、指導医や上級者が責任をもって支援する体制を作る。

(4) 安全文化の醸成
① 北里大学病院において、侵襲的な処置を実施する際には、処置を担当する医療者相互がリスクを共有し、患者安全が確保された手順書に従って実施することを最優先とする安全文化を育てる。」


北里に限らず大学病院にありがちな背景事情と思います.
医療事故が起きたときは、このように調査検討会(外部委員)による調査・検討が原因の究明と再発防止に役立ちます.


谷直樹


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by medical-law | 2015-01-19 23:42 | 医療事故・医療裁判