弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

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厚生労働省,ノバルティスファーマの3264例の副作用報告義務違反(遅延)で業務停止命令

厚生労働省は、2015年2月27日、ノバルティスファーマ株式会社に対し医薬品医療機器法第75条第1項の規定に基づき、第一種医薬品製造販売業の業務停止(平成27年3月5日(木)から同年3月19 日(木)までの15 日間)を命じました.但し,製造販売後安全管理業務及び国が開発を要請した医薬品に係る業務は除かれます.また,代替性が無く、出荷停止が患者に重大な影響を及ぼす可能性がある5品目(イラリス皮下注用150mg,サンディミュン点滴静注用250mg,シムレクト小児用静注用10mg,シムレクト静注用20mg,レギチーン注射液10mg)の出荷は業務停止の対象から除外されています.

厚生労働省よると,「今般の処分は、同社が製造販売する26品目の第一種医薬品(処方箋医薬品)について、昨年12月までの調査で3,264例の副作用報告義務違反(遅延)が判明したこと」によるもので,「医薬品の副作用報告義務違反としては初めて、第一種医薬品製造販売業の業務停止命令を行うものです。」とのことです.

15日間の業務停止命令はかなり重い処分です.
3264例の副作用報告義務違反(遅延)の重大性,悪質性を考慮した結果と思います.


  谷直樹

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by medical-law | 2015-02-28 09:28 | コンプライアンス

最判平成27年2月26日,セクシュアル・ハラスメントによる懲戒処分が懲戒権濫用にあたらない事例

最高裁判所第一小法廷平成27年2月26日判決は,職場における性的な発言等のセクシュアル・ハラスメント等を理由としてされた懲戒処分が懲戒権を濫用したものとして無効であるとはいえないとされた事例です.
判決全文は,http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=84883

以下,一部を抜粋します.

「(1) 本件各行為の内容についてみるに,被上告人X1は,営業部サービスチームの責任者の立場にありながら,別紙1のとおり,従業員Aが精算室において1人で勤務している際に,同人に対し,自らの不貞相手に関する性的な事柄や自らの性器,性欲等について殊更に具体的な話をするなど,極めて露骨で卑わいな発言等を繰り返すなどしたものであり,また,被上告人X2は,前記(5)のとおり上司から女性従業員に対する言動に気を付けるよう注意されていたにもかかわらず,別紙2のとおり,従業員Aの年齢や従業員Aらがいまだ結婚をしていないことなどを殊更に取り上げて著しく侮蔑的ないし下品な言辞で同人らを侮辱し又は困惑させる発言を繰り返し,派遣社員である従業員Aの給与が少なく夜間の副業が必要であるなどとやゆする発言をするなどしたものである。

このように,同一部署内において勤務していた従業員Aらに対し,被上告人らが職場において1年余にわたり繰り返した上記の発言等の内容は,いずれも女性従業員に対して強い不快感や嫌悪感ないし屈辱感等を与えるもので,職場における女性従業員に対する言動として極めて不適切なものであって,その執務環境を著しく害するものであったというべきであり,当該従業員らの就業意欲の低下や能力発揮の阻害を招来するものといえる。

しかも,上告人においては,職場におけるセクハラの防止を重要課題と位置付け,セクハラ禁止文書を作成してこれを従業員らに周知させるとともに,セクハラに関する研修への毎年の参加を全従業員に義務付けるなど,セクハラの防止のために種々の取組を行っていたのであり,被上告人らは,上記の研修を受けていただけでなく,上告人の管理職として上記のような上告人の方針や取組を十分に理解し,セクハラの防止のために部下職員を指導すべき立場にあったにもかかわらず,派遣労働者等の立場にある女性従業員らに対し,職場内において1年余にわたり上記のような多数回のセクハラ行為等を繰り返したものであって,その職責や立場に照らしても著しく不適切なものといわなければならない。

そして,従業員Aは,被上告人らのこのような本件各行為が一因となって,本件水族館での勤務を辞めることを余儀なくされているのであり,管理職である被上告人らが女性従業員らに対して反復継続的に行った上記のような極めて不適切なセクハラ行為等が上告人の企業秩序や職場規律に及ぼした有害な影響は看過し難いものというべきである。

(2) 原審は,被上告人らが従業員Aから明白な拒否の姿勢を示されておらず,本件各行為のような言動も同人から許されていると誤信していたなどとして,これらを被上告人らに有利な事情としてしんしゃくするが,職場におけるセクハラ行為については,被害者が内心でこれに著しい不快感や嫌悪感等を抱きながらも,職場の人間関係の悪化等を懸念して,加害者に対する抗議や抵抗ないし会社に対する被害の申告を差し控えたりちゅうちょしたりすることが少なくないと考えられることや,上記(1)のような本件各行為の内容等に照らせば,仮に上記のような事情があったとしても,そのことをもって被上告人らに有利にしんしゃくすることは相当ではないというべきである。

また,原審は,被上告人らが懲戒を受ける前にセクハラに対する懲戒に関する上告人の具体的な方針を認識する機会がなく,事前に上告人から警告や注意等を受けていなかったなどとして,これらも被上告人らに有利な事情としてしんしゃくするが,上告人の管理職である被上告人らにおいて,セクハラの防止やこれに対する懲戒等に関する上記(1)のような上告人の方針や取組を当然に認識すべきであったといえることに加え,従業員Aらが上告人に対して被害の申告に及ぶまで1年余にわたり被上告人らが本件各行為を継続していたことや,本件各行為の多くが第三者のいない状況で行われており,従業員Aらから被害の申告を受ける前の時点において,上告人が被上告人らのセクハラ行為及びこれによる従業員Aらの被害の事実を具体的に認識して警告や注意等を行い得る機会があったとはうかがわれないことからすれば,被上告人らが懲戒を受ける前の経緯について被上告人らに有利にしんしゃくし得る事情があるとはいえない。

(3) 以上によれば,被上告人らが過去に懲戒処分を受けたことがなく,被上告人らが受けた各出勤停止処分がその結果として相応の給与上の不利益を伴うものであったことなどを考慮したとしても,被上告人X1を出勤停止30日, 被上告人X2を出勤停止10日とした各出勤停止処分が本件各行為を懲戒事由とする懲戒処分として重きに失し,社会通念上相当性を欠くということはできない。

したがって,上告人が被上告人らに対してした本件各行為を懲戒事由とする各出勤停止処分は,客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当であると認められない場合に当たるとはいえないから,上告人において懲戒権を濫用したものとはいえず,有効なものというべきである。


なお,発言内容は,以下のとおり,かなり強烈です.

別紙1 被上告人X1の行為一覧表
1 被上告人X1は,平成23年,従業員Aが精算室において1人で勤務している際,同人に対し,複数回,自らの不貞相手と称する女性(以下,単に「不貞相手」という。)の年齢(20代や30代)や職業(主婦や看護師等)の話をし,不貞相手とその夫との間の性生活の話をした。
2 被上告人X1は,平成23年秋頃,従業員Aが精算室において1人で勤務している際,同人に対し,「俺のん,でかくて太いらしいねん。やっぱり若い子はその方がいいんかなあ。」と言った。
3 被上告人X1は,平成23年,従業員Aが精算室において1人で勤務している際,同人に対し,複数回,「夫婦間はもう何年もセックスレスやねん。」,「でも俺の性欲は年々増すねん。なんでやろうな。」,「でも家庭サービスはきちんとやってるねん。切替えはしてるから。」と言った。
4 被上告人X1は,平成23年12月下旬,従業員Aが精算室において1人で勤務している際,同人に対し,不貞相手の話をした後,「こんな話をできるのも,あとちょっとやな。寂しくなるわ。」などと言った。
5 被上告人X1は,平成23年11月頃,従業員Aが精算室において1人で勤務している際,同人に対し,不貞相手が自動車で迎えに来ていたという話をする中で,「この前,カー何々してん。」と言い,従業員Aに「何々」のところをわざと言わせようとするように話を持ちかけた。
6 被上告人X1は,平成23年12月,従業員Aに対し,不貞相手からの「旦那にメールを見られた。」との内容の携帯電話のメールを見せた。
7 被上告人X1は,休憩室において,従業員Aに対し,被上告人X1の不貞相手と推測できる女性の写真をしばしば見せた。
8 被上告人X1は,従業員Aもいた休憩室において,本件水族館の女性客について,「今日のお母さんよかったわ…。」,「かがんで中見えたんラッキー。」,「好みの人がいたなあ。」などと言った。
以 上

別紙2 被上告人X2の行為一覧表
1 被上告人X2は,平成22年11月,従業員Aに対し,「いくつになったん。」,「もうそんな歳になったん。結婚もせんでこんな所で何してんの。親泣くで。」と言った。
2 被上告人X2は,平成23年7月頃,従業員Aに対し,「30歳は,二十二,三歳の子から見たら,おばさんやで。」,「もうお局さんやで。怖がられてるんちゃうん。」,「精算室に従業員Aさんが来たときは22歳やろ。もう30歳になったんやから,あかんな。」などという発言を繰り返した。
3 被上告人X2は,平成23年12月下旬,従業員Aに対し,Cもいた精算室内で,「30歳になっても親のすねかじりながらのうのうと生きていけるから,仕事やめられていいなあ。うらやましいわ。」と言った。
4 被上告人X2は,平成22年11月以後,従業員Aに対し,「毎月,収入どれくらい。時給いくらなん。社員はもっとあるで。」,「お給料全部使うやろ。足りんやろ。夜の仕事とかせえへんのか。時給いいで。したらええやん。」,「実家に住んでるからそんなん言えるねん,独り暮らしの子は結構やってる。MPのテナントの子もやってるで。チケットブースの子とかもやってる子いてるんちゃう。」などと繰り返し言った。
5 被上告人X2は,平成23年秋頃,従業員A及び従業員Bに対し,具体的な男性従業員の名前を複数挙げて,「この中で誰か1人と絶対結婚しなあかんとしたら,誰を選ぶ。」,「地球に2人しかいなかったらどうする。」と聞いた。
6 被上告人X2は,セクハラに関する研修を受けた後,「あんなん言ってたら女の子としゃべられへんよなあ。」,「あんなん言われる奴は女の子に嫌われているんや。」という趣旨の発言をした。
以 上



セクハラの程度と懲戒処分の程度の均衡がとれているかの問題ですが,この最高裁判決は,認定事実を前提とすれば,きわめて常識的な適切な結論です.
原審の大阪高裁平成26年3月28日判決は,懲戒権の濫用とし,懲戒処分を取り消しましたが,疑問の多い判決と思います.
雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律第11条は,「事業主は、職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。」と定めています.
別紙の発言があったとすれば,X1・X2は,セクハラについての規範意識そのものが鈍磨していたのではないかと思います.自分の娘に言わないことを職場で女性に言うのは控えたほうがよいでしょう.


  谷直樹

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by medical-law | 2015-02-27 09:27 | 司法

ERCPに使われる十二指腸内視鏡によるLAの超細菌CRE感染,オリンパスが提訴される(報道)

ブルームバーグOlympus Sued by UCLA Superbug Patient Over Contaminated Endoscopes(2015年2月26日)は,「Olympus Corp.’s U.S. unit was sued by a Los Angeles hospital patient over contaminated endoscopes in what may the first lawsuit following a fatal “superbug” outbreak linked to the devices. 」と報じました.

米食品医薬品局(FDA)は,2015年2月19日,ロサンゼルスで発生した超細菌カルバペネム耐性腸内細菌(CRE)感染は,適切に清浄することが困難な十二指腸内視鏡が原因である可能性が高いと警告しました.メーカーの指示通りに洗浄した場合でもCREの発生・感染例が認められるとのことです.
十二指腸内視鏡の汚染は,2009年にFDAが把握していて,2010年にはフランスの医師らが報告していたそうです.
十二指腸内視鏡の複雑なデザインに問題があることが指摘されていますが,メーカーの指示以上の方法で消毒すると感染を防止できるとのことですのでメーカーの指示にも問題があることになります.

ロイター「内視鏡で「スーパー耐性菌」感染、米当局は09年にリスク認識」(2015年2月20日)もご参照

FDAの警告の翌週には提訴ですから,アメリカの弁護士は仕事が早いですね.

 谷直樹

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by medical-law | 2015-02-27 05:17 | 医療事故・医療裁判

アルバイト1名募集します(時給1500円~)

業務多忙につき,事務局アルバイト1名募集します.

週3日程度勤務 10:00-17:00 (内休憩1時間 実働6時間程度・応相談)
時給1500円~(応相談・昇給有)

交通費 実費支給(上限月2万円)
勤務開始希望時期 即時(応相談)

■希望条件
大卒以上但し学生可。一般的なパソコン操作。(必須)
社会人実務経験のある方,法律事務所勤務経験有の方,一般企業での経理経験者優遇。
学校行事等考慮いたします

■業務内容 
患者側医療過誤事件のみを扱う法律事務所です。
業務多忙につき,アルバイトを募集いたします。

PC操作(一太郎・ワード・エクセル・弥生会計・PP)
一般事務,コピー,電話・来客応対,裁判所への書類提出,経理等
仕事に熱意を持って,てきぱきと単純事務作業を遂行でき、協調性のある方を希望します。

その他
扶養控除内勤務可

以下三点を郵送または,PDFファイルにてEメール添付。
(1) 履歴書(市販可)(自署・写真貼付)
(2) 職務経歴書(ワード等可)
(3) 「志望動機」と「自己PR」を任意様式で書いたものも提出してください。

谷直樹法律事務所
〒160-0003 東京都新宿区本塩町7番6号四谷ワイズビル1階

medicallawtani @ yahoo.co.jp  (@前後のスペースを詰めてください)

  谷直樹

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by medical-law | 2015-02-26 23:56 | 事務所

第6回医療事故調査制度の施行に係る検討会

2015年2月26日,「第6回医療事故調査制度の施行に係る検討会」が開かれました.

NHK「医療事故調査 指針巡り意見に隔たり」(2015年2月25日)は,次のとおり報じました.

「医療事故の再発防止を目的に事故の原因を医療機関だけでなく、第三者機関が調べる新たな制度の指針の素案が厚生労働省の検討会に示されました。
素案では調査の対象となる事故については医療機関が判断するなどとしていますが、情報の開示を求める遺族と、事故の調査によって医療現場の萎縮を懸念する一部の医師などとの間で意見の隔たりが埋まらず、議論はまとまりませんでした。

ことし10月に始まる新たな制度では患者が死亡する医療事故が起きた際、医療機関はみずから原因を調査することと、新たに設置される第三者機関への報告を義務づけられています。
遺族は調査結果に納得できなければ第三者機関に独自の調査を行うよう依頼することができます。
25日は医師や弁護士それに医療事故の遺族などで作る検討会が開かれ、新たな制度の運用指針の素案が示されました。
この中では調査の対象となる「死亡を予期しなかった事故」については、治療中などに死亡する危険性を患者に事前に説明したり、カルテに記載していたりすれば、対象から除くなど調査の範囲は医療機関が判断するとしています。
また遺族側が、難しい医療の専門用語を理解するためにも文書で受け取ることを求めていた調査結果は「口頭、または書面もしくはその双方で遺族が納得するかたちで説明する」としています。
素案について、一部の医師などが過度な調査によって医師の責任が追及されるなど医療現場が萎縮する懸念があると主張したのに対し、遺族側は全体的に制度の運用を医療機関の判断に委ねる内容で納得できないと主張し、両者の間で意見の隔たりは埋まらず議論はまとまりませんでした。
検討会は今後、座長が意見を調整し、まとまらなければ再度検討会を開き議論を続けることにしています。

新たに設置される第三者機関とは

医療事故の再発防止を目的とした新たな制度では病院や診療所、それに助産所で患者や赤ちゃんが死亡する事故が起きた際、医療機関は新たに設置される第三者機関=「医療事故調査・支援センター」に報告するとともに、みずから原因を調査することが義務づけられます。
調査の対象となるのは「死亡を予期しなかった事故」です。
医療機関は調査結果を第三者機関に報告するとともに遺族にも説明します。
この調査結果に遺族が納得できない場合は第三者機関に独自の調査を依頼することができます。
医師などで構成される第三者機関は、各地の医療団体と連携して調査に出向きます。

調査対象の事故の範囲など焦点に

検討会で主に議論となったのは調査の対象となる医療事故の範囲や調査結果の説明方法です。
遺族側が医療事故の再発防止につなげるにはあらゆる事故の調査を徹底し、情報を文書で開示するすることが欠かせないと主張したのに対し、一部の医師などは調査によって医師の責任が追及されるなど医療現場が萎縮する懸念があると主張しました。
遺族側も医師側も新たな制度を設けること自体に異論はないものの、両者の間で意見の隔たりは埋まりませんでした。

新制度願う遺族は

医療事故で家族を亡くした遺族などは事故の原因を医療機関だけでなく第三者機関が調べる新たな制度の創設を長年、求めてきました。
その1人、千葉県浦安市に住む永井裕之さん(74)は16年前、医療事故で妻の悦子さん(当時58)を亡くしました。
リューマチの治療で入院した病院で、点滴中に誤って消毒液が投与されたことが原因でした。
しかし、病院は当初永井さんには「病死」と説明し、事故を隠しました。
看護師や医師らは刑事責任を問われ、永井さんも真相を求めて民事裁判を起こしました。
この医療事故は事故を隠蔽しようとする医療界の体質に厳しい目が注がれるきっかけの1つとなりました。
みずからの経験から永井さんは事故の原因を究明し、再発防止につなげるためには医療機関だけでなく第三者機関が調べる新たな制度が必要だと署名活動などを通じて訴えてきました。
新たな制度の運用について議論する検討会では永井さんは委員の1人として遺族の立場から「事故の再発防止のためには情報を隠すことなくオープンにし、遺族と医療側の信頼関係を築くことが必要だ」と繰り返し述べてきました。
永井さんは「個人を追及するというよりは、その事故から学んで再発防止につなげていくことが何よりも必要だ」と話しています。

医師「個人の責任追及され現場萎縮」

検討会で議論がまとまらなかったことについて医師側の委員で日本医療法人協会常務理事の小田原良治医師は「今回提出された素案の内容は評価できるもので、議論がまとまらなかったのは残念だ」と話しています。
そのうえで「医療現場としては今回出された案がギリギリの妥協点だ。説明のために文書を出せば裁判や捜査で個人の責任が追及されるおそれがあり、現場は萎縮してしまう。リスクの高い医療に現場が手を出せなくなると、いちばん迷惑を被るのは患者だ」と話しています。」


一部の医師が,事故隠し,責任追及回避のために,特殊な意見を述べているように聞こえてしまいます.
平均的な医師,普通の医師も同じように考えているのでしょうか.
医師の常識的な意見をききたいですね.

  谷直樹

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by medical-law | 2015-02-26 00:41 | 医療事故・医療裁判

医療事故調査制度 医師らが適切運用要望

NHK「医療事故調査制度 医師らが適切運用要望」(2015年2月24日)は、次のとおり報じました.

「24日は東京と福島の医師など6人が厚生労働省を訪れ、橋本岳政務官に制度が適切に運用されるよう要望書を手渡しました。
この中で、現在行われている制度の運用方針を議論する厚生労働省の検討会で、遺族などの委員が、難しい医療の専門用語を理解するためにも調査結果は文書で受け取ることを求めているのに対し、文書を渡せば裁判や捜査に利用され医師の責任が追及されるおそれがあるとして口頭での説明にとどめるよう求めています。
また、調査報告書に再発防止策を書き込むことも責任追及につながるとして反対しています。
14年前に起きた医療事故で刑事責任を問われ無罪が確定した佐藤一樹医師は「今回の制度は医療安全の向上を目的としたもので、医師の責任が問われれば現場が萎縮し医療は崩壊する」と話しています。」


今度は、逆に、東京と福島の医師など6人からの要望です.

調査結果を文書を渡せば裁判や捜査に利用され医師の責任が追及されるおそれある、医師の責任が追及されれば現場は萎縮し、医療は崩壊する、という主張はよくききます.
しかし、これは本当でしょうか.

責任があると考えられる事案は、文書があってもなくても、責任追及されるのではないでしょうか.
責任があると考えられる事案で責任追及されるのは、悪いことなのでしょうか.
責任がある人が責任を負わない社会は良い社会なのでしょうか.
責任ある人が責任を負うことで、医療現場は萎縮するのでしょうか.

起訴されて無罪なる人は、数は少ないのですが、たしかにいます.
しかし、だからと言って、すべて起訴すべきではない、という考える人は、少数でしょう.

責任追及につながる可能性がすこしでもあるからという理由で、調査の透明性を損なう制度設計を行うことのほうが、医療にとってマイナスの結果を生じるではないでしょうか.
責任追及につながるとして調査報告書に再発防止策を書き込むことも反対とのことですが、それでは調査の意義は大幅に失われるのではないでしょうか.

むしろ、隠されたほうが不信感を生じ、紛争化しやすいように思います.
オープンにすることが信頼につながるでしょうし、オープンにした結果、責任を負うべきものは責任を負い、責任を負わないものは責任を負わない、という当然の結果につながるとすれば、それは悪いことなのでしょうか.


  谷直樹

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by medical-law | 2015-02-25 03:31 | 医療事故・医療裁判

中立性・透明性・公正性を確保した医療事故調査制度の施行を求める要望書

NHK「医療事故調査制度始まる前に遺族らが要望」(2015年2月21日)は,次のとおり報じました.

「患者が死亡した医療事故を第三者機関が調査する新たな制度がことし10月から始まるのを前に、医療事故の遺族たちが厚生労働省を訪れ、事故の再発を防止するという制度の目的に沿った運用を行うよう要望しました。

ことし10月から始まる新たな制度では、患者が死亡する医療事故が起きた際、病院に対し新たに設置される第三者機関への報告と、みずから原因を調査することを義務づけています。
遺族は、病院の調査結果に納得できなければ、第三者機関に独自の調査を行うよう依頼することができます。
20日には、医療事故の遺族などで作る団体のメンバーおよそ10人が厚生労働省を訪れ、橋本岳政務官に制度が適切に運用されるよう要望書を手渡しました。
この中では、現在行われている制度の運用方針を議論する厚生労働省の検討会で、医療側の一部の委員が「薬剤の取り違えなど単純なミスによる事故は調査の対象外とするべきだ」などと主張していることを踏まえ、病院が第三者機関に事故を報告しなければ制度は機能しないとして、事故の再発を防止するという制度の趣旨に沿った運用方針をまとめるよう求めています。
団体の代表を務める勝村久司さんは「事故の再発を防止するためには事故を隠すことを決して許す制度ではあってはならない」と話しています。」


要望したのは,医療過誤原告の会,医療情報の公開・開示を求める市民の会,患者の視点で医療安全を考える連絡協議会,陣痛促進剤による被害を考える会,全国薬害被害者団体連絡協議会富士見産婦人科病院被害者同盟,薬害・医療被害をなくすための厚労省交渉団の7団体です.

要望事項は,以下の4点です.
1 公的な医療事故調査制度は、中立性・透明性・公正性を必ず確保して施行すること。
2 事実経過に関して、事故直後に遺族側と情報の受渡と共有を行い、齟齬をなくすこと。
3 被害者や被害者遺族への偏見の流布や偏見に基づく制度設計は絶対に行わないこと。
4 「日本医療法人協会医療事故調ガイドライン」の内容を採用した制度にしないこと

いずれもきわめて当然の内容です.
このような当然のことを要望せざるをえないということは,検討会での医療事故調査の仕組みをめぐる議論がおかしなことになっていることを意味するでしょう.中立性を欠く・透明性を欠く・公正性を欠く仕組みが作られようとしているものと考えざるをえません.
実際,上記要望書は,「厚生労働省の「医療事故調査制度の施行に係る検討会」に資料として提出されている「日本医療法人協会医療事故調ガイドライン」が、中立性、透明性及び公正性の確保に反する内容であることに大きな不信感を持っています。」と書いています.

  谷直樹

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by medical-law | 2015-02-23 23:36 | 医療事故・医療裁判

兵庫県立加古川医療センター脳神経外科,開頭の際に細い刃を使い折れた先端部を残しため再手術(報道)

NHK「手術使用のドリル 刃の先端が頭の中に残る」(2015年2月20日)は,次のとおり報じました.

「去年、兵庫県加古川市の県立加古川医療センターで、女性患者が頭の手術を受けた際に手術に使われていたドリルが折れ、刃の先端が頭の中に残ったままになっていたことが分かり、病院はミスを認めて謝罪しました。

兵庫県病院局によりますと、去年9月、県立加古川医療センターの脳神経外科で、神戸市に住む60代の女性がくも膜下出血の手術を受けた際に、頭蓋骨を切るためにドリルが使われましたが、その際、ドリルの刃の先端が折れて頭の中に残ったままになっていたということです。
2か月後に検査を行った際に直径1.1ミリ、長さが5ミリほどの刃の先端が後頭部に残っていることが分かり、病院は女性に謝罪したうえで再手術を行って取り除いたということです。
今のところ女性の容体に異変はないということです。
県病院局によりますと、こうした手術では通常太い刃を使いますが、今回は医師らが事前の確認を怠り、細い刃を使用した結果、刃が折れたとみられ、手術後に刃の破損の有無も確認していなかったということです。
県病院局は「このような事案が発生し大変申し訳ない。ドリルを使った際には刃が破損していないかを必ずチェックするなどの再発防止策を徹底する」と話しています。」


開頭は,脳神経外科手術の基本的手技です.開頭は,専用のドリルで小さな穴をいくつか開け,これをつなぐ形で電気鋸のような器具で穴をつないで頭蓋骨を切りとり,骨窓をつくります.報道からすると,この開頭の際に,ドリルの種類を間違え,確認を怠ったために起きた事故のようです.
再手術を行い,刃の先端部を取り除き身体に影響を残さなかったことは,よかったと思います.
また,謝罪したのも正しい対応と思います.

なお,私は,今,関東の裁判所で,脳神経外科の或る医師が,開窓部を広げるために開窓部の傍にドリルで新規の穴をあけようとして,回転しているドリルを脳実質内に滑り落とし脳を損傷した事案の裁判を担当しています.ドリルを脳実質内に滑り落とさない注意義務は,結果を生じさせないという注意義務になってしまいますので,裁判は,具体的にどのような注意をはらえばドリルを脳実質内に滑り落とさないですむのか,が問題になります.その病院は,ドリルが滑り落ちることはどのように注意しても回避できない,と主張しています.そこで,裁判は,開窓部を広げる場合に,ヤスリの様なドリル(ダイヤモンド・ドリル)などで骨縁を削り取り窓を大きくすべき注意義務(開窓部の傍にドリルを用いて新規の穴をあけようとしない注意義務)があるか否かが争われています.その病院は,そのような注意義務があることを否定し,謝罪もしません.
そのような対応に比べると,加古川医療センターの対応は立派にみえます.

  谷直樹

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by medical-law | 2015-02-22 05:31 | 医療事故・医療裁判

亀山市立医療センター,カテーテル感染症から化膿性脊椎炎による四肢麻痺の事案で6000万円示談(報道)

中日新聞「亀山市6000万円支払い 医療事故、男性側と和解」(2015年2月20日)は,次のとおり報じました.

「三重県亀山市は19日、2011年に市立医療センターで、県内の男性が手術後の感染症で後遺症を負う医療事故があり、男性側に6千万円の損害賠償を支払うことを決めたと発表した。26日開会の3月定例市議会に関連議案を提出する。

 市によると、男性は11年1月に同センターで人工肛門の閉鎖手術を受けた後、栄養補給用のカテーテルから感染症を発症した。3月にいったん退院したが、直後に体調不良で別の病院に入院。化膿(かのう)性脊椎炎による四肢まひの後遺症を負ったという。男性側は昨年2月、市に損害賠償を求め、双方の弁護士による協議で今月13日付で和解に合意した。桜井義之市長は「事故の防止に努め、安心して医療を受けてもらえるよう万全を期したい」と話した。(鈴木智重)」


血管内カテーテル関連感染症の米国のガイドラインを参考に,日本の病院でも感染症対策が行われています.
感染症の医療事故は,行うべきことを行っていないケース(不作為型)がほとんどで,注意義務違反が認められますが,仮に注意義違反がなかったとしたら結果を回避できた可能性がどの程度あったかが争点になり,徹底的に争うと裁判が長期化することもありますので,訴訟前に双方が歩み寄って適切な示談解決を実現するのが良いでしょう.
この男性の年齢が不明ですが,四肢麻痺の損害賠償額は介護費用を含む関係で一般に高額になりますので,6000万円という数字は双方が歩み寄った金額と思います.

  谷直樹

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by medical-law | 2015-02-21 11:23 | 医療事故・医療裁判

水戸地裁平成27年2月19日判決,救急搬送先病院の診断ミスと転院先病院の無承諾検査に賠償を命じる(報道)

産経新聞「尿管結石患者死亡 「診断ミス」と病院側に3千万円賠償命令 水戸地裁」(2015年2月19日)は,次のとおり報じました.

「救急搬送先の病院での診断ミスと転院先での検査で女性患者が死亡したとして、遺族が双方の病院側に計約6千万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、水戸地裁は19日、診断ミスによる死亡と認め、救急搬送先の石岡第一病院(茨城県石岡市)側に約3千万円の支払いを命じた。

 検査は脳死かどうかを調べる「無呼吸テスト」で、死亡との因果関係は認められないとしたが、新谷晋司裁判長は「家族の承諾を得ておらず、患者の人格的利益を違法に侵害した」と認定。転院先の土浦協同病院(同県土浦市)側に約60万円の支払いを命じた。

 判決によると、平成23年2月、女性=当時(56)=は尿管結石で救急搬送され入院した。その後、容体が悪化して転院。自発呼吸がない状態で、無呼吸テストを受けた。同年3月、敗血症性ショックが原因の低酸素脳症で死亡した。」


 報道では経緯がよくわかりませんが,敗血症性ショックが原因の低酸素脳症で死亡したとのことですから,土浦協同病院の診断ミス(過失)はおそらく敗血症の見逃しで,それがなければ敗血症性ショックが原因の低酸素脳症で死亡することはなかったと因果関係を認定し,約3000万円の賠償を認めたのでしょう.この判決は,立証のハードルが高い敗血症性ショックについて参考になるでしょう.
2つの病院に賠償を命じるのは多いことではありません.無承諾の検査について人格権侵害を認めた点も今後の事案に参考となります.

  谷直樹

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by medical-law | 2015-02-19 19:30 | 医療事故・医療裁判