弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

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山形市,救急車を出動させなかった事案について1500万円で裁判上の和解(報道)

朝日新聞「「救急車来ず、息子死亡」 山形市、母と和解 研修も」(2015年3月30日)は,次のとおり報じました.

「山形市で山形大学2年の大久保祐映(ゆうは)さん(当時19)が死亡したのは、119番通報をしたのに救急車が出動しなかったためだとして、母親が市に約1億円の損害賠償を求めた訴訟は30日、山形地裁で和解が成立した。市が原告に和解金1500万円を支払うことや、市がこの件を教訓として救急救命体制を整備していくことで合意した。また、職員研修のカリキュラムにこの件を取り入れることも盛り込まれた。

 母親は和解について、「祐映と同じような目に遭う人が二度と現れないよう強く願うばかりです」などとコメントを寄せた。

 訴状などによると、大久保さんは2011年10月、一人暮らしの自宅アパートから「体調が悪い」と119番通報し、救急車を要請した。だが、山形市消防本部は近くの病院にタクシーで行くよう促し、救急車を出動させなかった。大久保さんはその9日後、自室で遺体で発見された。」


NHK「119番通報の学生死亡 遺族と市が和解」(2015年3月30日)は,次のとおり報じました.

「山形地方裁判所は去年12月に和解を勧告し、30日、大久保さんの母親と山形市の市川昭男市長が出席して3回目の協議が行われました。
双方の弁護士によりますと、この中で、山形市が裁判所が示した案に従い、1500万円の解決金を支払うことやこの事例を消防職員の研修に取り入れ、教訓として生かすことなどを条件に和解が成立したということです。
大久保さんの母親は「『和解』は終わりではなく、これからも山形の救急体制が改善されていくかを見つめ続けます。同じような目に遭う人が二度と現れないよう強く願います」というコメントを出しました。」
「和解成立を受けて、原告側の藤木孝男弁護士は記者会見で「若い命が失われることが二度と起きないよう救急搬送体制を改善し、山形市から全国の消防本部に教訓として伝えてほしい」と述べました。
藤木弁護士によりますと、遺族は亡くなった祐映さんの写真を持って協議に臨み、冒頭、山形市の市川昭男市長が「今回のことを教訓として重く受け止めて改善策をきちんと実行したい」と述べたのに対して、母親はうなづいていたということです。
山形市の市川市長は記者会見で「すべての市民が不安を抱くことがないよう救急医療体制の整備や、消防職員の技術の向上に努めたい」と述べました。」


河北新報「<山大生死亡訴訟>遺族と市の和解が成立」(2015年3月31日)は,次のとおり報じました.

「ただ市長らの会見に関しては、内容をテレビで見たという原告弁護団長の藤木孝男弁護士が「何を教訓にし何をするのか見えない。あまりにも情けない会見だった」と、異例の追加コメントを発表した。市の態度は、原告側には最後まで誠実でないと映った。」


報道で知る範囲からですが,救急車不出動の判断が不適切であることは立証でき,ただ出動していれば救命できたという高度の蓋然性までは立証されていない事案(相当程度の可能性までは立証できている事案)で,裁判所が1500万円の和解勧告を行い,裁判上の和解が成立した例と思います.

軽症例でも常に救急車を出動させなければ違法というわけではありませんが,救急車出動・不出動の判断が不適切な場合,責任追及の余地があることが示されたとみてよいでしょう.なお,もし救急車搬送体制が整備されていないために出動判断が慎重になったとすれば,救急車搬送体制整備を怠った行政の責任が考えられるでしょう.

9日後に自室で遺体で発見された事案なので,救急車不出動と死亡との間の因果関係は推測になりますので,裁判所は相当程度の可能性にとどまると判断したと思います.相当程度の可能性でも1500万円で和解勧告がなされ和解が成立した事案とみるべきでしょう.


 谷直樹

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by medical-law | 2015-03-31 06:50

第三者検証委員会,千葉県がんセンターの腹腔鏡手術の死亡11例中10例に問題ありの報告

千葉県がんセンター11死亡例を検証していた第三者検証委員会は,2015年3月30日,千葉県に,11例中10例に問題があったとの報告書案を提出しました.

朝日新聞「千葉県がんセンターの腹腔鏡手術、倫理審査委諮らぬ例も」(2015年3月30日)は,次のとおり報じました.
 
 「難度が高く保険適用外の手術が少なくとも7例あったが、事前に安全性などを確認する倫理審査委員会に諮られなかった」
 「再発防止策として、倫理審査や手術前の検討体制の強化などを提言。また、検証委は2007~13年度にセンターで行われた膵(すい)頭十二指腸を切除する腹腔鏡手術の死亡率は6・2%で、日本外科学会調査による平均2・5%より高く、センター内の開腹手術の約15倍だったことも明らかにした。」


NHK「千葉県がんセンター10人の手術に問題」(2015年3月30日)は,次のとおり報じました.

「検証委員会が30日公表した報告書によりますと、調査対象の患者11人のうち10人について、手術方法の選択や手術中の対応などに問題があったと指摘しています。
また問題が指摘された10人のうち7人の患者については同じ男性医師が担当し、このうち平成25年1月に行われた74歳の男性の手術について、「本来必要のない静脈の切除が行われたことなどが死亡につながった。難しい手術にもかかわらず、腹くう鏡を使って行うという判断に問題があった」と指摘しています。
また、同じ医師が担当し平成24年9月に行われた76歳の女性の手術については、「出血した際に、腹くう鏡を使った止血にこだわり、適切な対応が遅れた」と指摘しています。
報告書では、がんセンターで行われたすい臓の一部や十二指腸を切除する手術のあと在院中または30日以内に死亡した率が腹くう鏡を使って行った場合、腹を開く開腹手術よりおよそ15倍高かったことも明らかにしており、腹くう鏡を使った手術のリスクが浮き彫りになったと指摘しています。
そして、難しい手術を病院内の倫理審査委員会に諮らずに行ったことや、患者への説明が不十分だったことも問題だとしています。」


 このように,術前・術中・術後の問題が指摘されています.
 医師は,標準的な医療を逸脱して,独善的な医療行為を行ってはなりませんし,もし仮にそのような医療行為を行おうとする医師がいれば,グループで治療にあたっている医師が止めなければなりません.医師と病院の問題がどこまで解明され,改善されるのか,注目したいと思います.

【追記】

千葉県がんセンターにおける腹腔鏡下手術の死亡事例に係る第三者検証委員会報告書(平成27年7月15日)」ご参照

 
 谷直樹

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by medical-law | 2015-03-31 00:02 | 医療事故・医療裁判

スキップをしながら前・上・後ろで(3拍子で)手を叩く

私の事務所の裏手にジャックの四谷教室があり,賢そうな幼児を連れたママ友集団を見かけます.
四谷教室には「雙葉小学校」「学習院初等科」のクラスがあり,雙葉小学校は募集人員の半数以上,学習院初等科は募集人員80名中78名という実績だそうです.

スキップをしながら前・上・後ろで(3拍子で)手を叩く.

これは,今年の学習院初等科の試験問題の1つです.
「くまあるき」よりはるかに難易度が高いです.

司法試験科目に「運動」がなくてよかったと思いました.


 谷直樹

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by medical-law | 2015-03-30 07:42 | 日常

最高裁と法務省,平成27年度から24法科大学院に裁判官・検察官を教員として派遣せず

 最高裁と法務省が司法試験の合格率が低いことなどを理由に平成27年度から24法科大学院に裁判官・検察官を教員として派遣しないことを決めたことが報じられています.
 24校のうち17校は新規募集停止ないし停止予定で,他の7校は北海学園大,専修大,金沢大,中京大,南山大,近畿大,福岡大とのことです.最高裁と法務省(と日弁連)に見限られた法科大学院には学生が集まらないでしょうし,先行きが危ぶまれます.
 これは,制度設計に基本的な誤りがあった結果でしょう.法科大学院修了と司法試験受験資格を完全に切り離し,司法試験受験資格を得るためには予備試験に合格しなければならないとすればよいのに...と個人的には思います.
 なお,米国のロースクールも,大手法律事務所が雇用を減らしている関係でロースクール卒業生の就職先が先細りし,他方でロースクルの学費が5~6万ドルかかることから,ロースクール進学希望が減りつつあると言われています.

 
 谷直樹

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by medical-law | 2015-03-29 19:56 | 司法

産科医療補償制度再発防止委員会の医師,子宮収縮薬使用量について日本産科婦人科学会の指針遵守を呼びかけ

NHK「「子宮収縮薬」 使用しすぎに注意を」(2015年3月28日)は,次のとおり報じました.

「人工的に子宮を収縮させる「子宮収縮薬」は少量でも陣痛が強くなりすぎ、赤ちゃんが低酸素状態になる場合がありますが、出産時に重い脳性まひになった子どものうち、この薬を使ったケースのおよそ3割で薬の使用量が学会の指針よりも多かったことが分かり、医師らで作る委員会が注意を呼びかけています。
これは、出産時に重い脳性まひになった子どもに補償金を支払う「産科医療補償制度」で再発防止策を検討している医師らの委員会が、27日に会見し、明らかにしたものです。
それによりますと、重い脳性まひになった子ども146人について、延べ180回、子宮収縮薬が使われていましたが、このうちのおよそ3割で日本産科婦人科学会の指針に定められた使用量よりも多かったということです。
子宮収縮薬を巡っては、使用量の逸脱が過去にも報告され、この委員会も4年前に注意を呼びかけていましたが、改善されていませんでした。
委員長を務める宮崎大学の池ノ上克名誉教授は、「指針を守るのは基本なので、引き続き注意喚起を続け、産科医療の向上に努めていきたい」と話しています。」


脳性麻痺事案で,子宮収縮薬(陣痛促進剤)を過量投与しているケースが多いのは事実です.
弁護士に相談,依頼される事案は,脳性麻痺等の悪しき結果が発生している事案なので,そうでない事案との比較検討はできませんが,弁護士に相談,依頼される事案ではガイドラインを遵守していないケースが多いと感じます.
すべての産科医がガイドラインを守り,一般的標準的な医療行為を行うようになれば,悪しき結果が生じるケースはだいぶ減るように思います.

 谷直樹

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by medical-law | 2015-03-28 06:27 | 医療事故・医療裁判

千葉県がんセンター,肝動脈化学塞栓療法における医療事故について

千葉県がんセンターは,平成27年3月26日,「肝動脈化学塞栓療法における医療事故について」を発表しました.

「本事故につきましては院内事故調査委員会を設置して、事故の原因・問題点及び対応策等の調査を行うこととします。また、調査結果は「千葉県がんセンター腹腔鏡下手術に係る第三者検証委員会」に報告し、情報提供にも努めてまいります。」

朝日新聞「抗がん剤治療後、男性患者が死亡 千葉県がんセンター」(2015年3月27日)は,次のとおり報じました.
 
「センターによると、患者は2009年8月から今年3月まで計12回、男性医師から血管に管を通して肝臓に抗がん剤を注入する治療を受けた。末期の患者だといい、今月16日に治療を受けたが、19日になって容体が急変して死亡。病理解剖したところ、肝細胞がんの破裂による出血が死因とみられるという。末期患者などでがんが破裂することはあるが、治療から死亡までの期間が短いことから、調査委員会で原因を調べる。
 センターでは昨年、腹腔鏡手術を受けたがん患者11人が術後間もなく死亡していたことが明らかになり、県の第三者検証委員会で検証している。男性医師は11例中8例の手術を担当。発覚後の昨年5月以降、1人を除き手術の担当から外れた。
 ただ、今回の患者ら10人程度の抗がん剤治療にはあたっていた。」


 調査結果がでるまで,残り9人の治療からも外れていただいたほうがよいのではないでしょうか.

東京新聞「千葉県がんセンター 腹腔鏡手術複数に「問題」」(2015年3月26日)は,次のとおり報じました.

「千葉県がんセンター(千葉市中央区)で、腹腔(ふくくう)鏡を使って膵(すい)臓や肝臓などの手術を受けた患者十一人が死亡した問題で、医学的な調査・検証を行った日本外科学会が、手術方法の選択に誤りがあったことや執刀医の技術水準が手術を担うレベルに達していなかったなど、複数の事例を問題視していることが関係者への本紙の取材で分かった。十一症例のうち、手術の技量や前後の措置を含め「問題ない」と判断した事例は二例にとどまる。

 同学会に調査を依頼した県の第三者検証委員会(会長=多田羅浩三・日本公衆衛生協会会長)は、こうした検証結果などをもとに二十六日にも最終報告書をまとめる。

 検証対象となっているのは、二〇〇八年六月~一四年二月に腹腔鏡下手術を受け死亡した事例。男女十一人のうち八人の手術を一人のベテラン男性医師が執刀、残り三人をそれぞれ別の三人の医師が担当した。

 一三年一月にベテラン医師が実施した肝門部胆管がんの男性=当時(74)=の手術について、「開腹手術でも難しい手術で腹腔鏡下で行ったことが最大の問題点」「挑戦的な選択だった」とそれぞれ批判した。

 さらに腫瘍が転移していない部分まで肝臓を切除したことなどが死亡につながったと判断。初めて行う手法を伴った手術にもかかわらず、倫理委員会で検討した記録がなく、「患者や家族への説明や、同意を得る過程も適切ではなかった」と結論づけた。

 同学会は、ベテラン医師について、腹腔鏡下手術の経験が豊富で「実績があり日本をリードする医師だった」と評価する。しかし一二年九月、手術中の出血による心筋虚血で亡くなった膵がんの女性=当時(76)=の場合は、大量出血時にしばらく腹腔鏡下で止血を試みており「腹腔鏡下での止血に固執したきらいがある」などと指摘した。

 〇八年十一月の胃がんの男性=当時(58)=の手術を担当した別の医師については、手術記録から「盲目的な手術操作が目立ち、手術を安全に実施できる水準に至っていなかった」と技量不足を指摘。

 一一年八月、さらに別の医師が執刀した肝細胞がんの男性=当時(72)=の手術では「胆のう管と他の管を誤認して切り離した」ため死因の肝不全につながったと分析した。

 県がんセンターを所管する県病院局は「第三者検証委員会の調査が最終段階に入っており、コメントは差し控えたい」としている。

◆「選択は誤り」「家族へ説明足りず」「技量不足」

 日本外科学会による千葉県がんセンターで行われた腹腔鏡下手術の事例検証からは、病院内の倫理委員会の審査を経ずに保険適用外の高難度の手術に踏み切るなど、患者八人が死亡した群馬大病院と類似点が浮かび上がる。

 一般的に保険適用外の腹腔鏡下の手術は難易度が高く、日本肝胆膵(すい)外科学会が二十三日に発表した調査でも、肝臓切除手術の死亡率は保険適用外の手術で保険適用の手術と比べ五・四倍高く、膵臓切除の場合は一〇・八倍に上った。

 千葉県がんセンターの場合も十一の症例中、保険適用外の手術は八例を占めた。このうち少なくとも五例で倫理委員会の審査を経ていなかった。一〇年七月に胆管がんの手術を受けた男性=当時(82)=のケースは、手術や術後の管理には問題がなかったものの、日本外科学会の検証結果は「倫理委員会の審査が行われないままに実施されたことに問題があった」と明確に指摘している。

 こうした危険度の高い手術だったにもかかわらず、倫理委員会の事前承認だけでなく、患者や家族に対しても、手術方法のメリットやデメリット、発症しうる合併症について説明をしたかどうか、すべての事例で十分な記録を残していなかったことも明らかになった。

 日本肝胆膵外科学会理事長の宮崎勝・千葉大教授は、同センターの死亡事例十一件のうち、保険適用外が八件に上ることについて「難しい症例に挑戦し過ぎたのかどうか、センターは調査で明らかにする責任がある」と指摘。

 センターを所管する県は第三者委員会の報告を受けた後、センターの過失の有無を含めて対応を協議する。

 <千葉県がんセンターの患者死亡問題> 昨年4月、腹腔鏡を使った手術で患者が相次いで死亡していたことが発覚。県は同6月に原因究明と再発防止を目的とする第三者検証委員会を設置。これまで8回開催され、死亡した11人の事例について、医療の専門的見地からの調査・検証を日本外科学会に委ねた。同センターは日本肝胆膵外科学会により、高度な手術例が多い「修練施設」として「A認定」されている。体に数カ所の穴を開け、カメラ(腹腔鏡)や操作器具を挿入して行う手術は開腹手術に比べて体の負担が少ないのが利点だが、高度な技術が必要とされる。」


 選択自体が誤りで,家族へ説明が足りず,技量不足だったというのでは,遺族としてはやりきれない気持ちでしょう.
 医療訴訟等による責任追及がなされると,医師が萎縮し難しいことに挑戦しなくなる,医療が崩壊する,という懸念が言われることがありますが,医師が技量をわきまえずに難しいことに挑戦するのも患者の安全を損ない,医療崩壊につながるのではないでしょうか.


 谷直樹

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by medical-law | 2015-03-27 09:47 | 医療事故・医療裁判

日本医療機能評価機構、医療事故情報収集等事業第40回報告書

公益財団法人日本医療機能評価機構は、2015年3月26日、医療事故情報収集等事業第40回報告書(平成26年10月~12月)を公表しました.
今回とりあげた個別のテーマは、「職種経験1年未満の看護師・准看護師に関連した医療事故」「カリウム製剤の急速静注に関連した事例」「放射線治療の照射部位の間違いに関連した事例」「口頭による情報の解釈の誤りに関連した事例」です.

◆ 職種経験1年未満の看護師・准看護師に関連した医療事故

報告書は、「職種経験1年未満の看護師・准看護師の事例には、「知識不足(経験不足)」「思い込みによる安易な実施」や「危険性の認識不足」といった職種経験1年未満の看護師・准看護師側の要因と、「知識・技術の評価体制の不備」「職場内のルールが曖昧または形骸化」といった職種経験1年未満の看護師・准看護師を取り巻く環境の2つの特徴があることが示唆された。」とまとめています.

環境の側の要因もある、という指摘は重要と思います.

◆ カリウム製剤の急速静注に関連した事例

報告書は、「カリウム製剤は、急速静注すると不整脈や心停止を起こすことがあるため、ハイリスク薬とされ
ている。急速静注は禁止であることだけでなく、なぜ禁止なのか、急速静注したらどうなるのかということまで含めた十分な知識を持つことの重要性が示唆された。また、投与方法・投与速度の指示を明確にすること、少しでも不明な点があれば確認するように習慣づけることが必要である。
急速静注できないようなプレフィルドシリンジ製剤などのキット製品を医療機関で採用することは改善策の一つであるが、医療者がその製剤の意味を理解した上で使用することが重要である。また、カリウム製剤によって販売名や薬液の色が異なることに注意が必要であり、自施設のカリウム製剤を確認しておくことの重要性が示唆された。
」とまとめています.

私は、以前、カリウム製剤の急速静注事案の訴訟を担当したことがあり(裁判上の和解で終了)、大変興味深く読みました.

◆ 放射線治療の照射部位の間違いに関連した事例

「照射部位の間違い 20
過剰照射 8
熱傷 5
患者取り違え 5
機器の不具合 4
機器の設定間違い 3
その他 3
合 計 48」


やはり、放射線部位の間違いが多いことがわかります.

報告書は、「放射線治療の照射部位の間違いに関連した事例20件について、外部照射14件と内部照射6件に分類し分析をした。外部照射は、ⅰ左右の取り違え5件、ⅱ照射範囲のずれ6件、ⅲ照射部位の取り違え1件、ⅳ照射範囲の過不足2件であり、事例の内容や主な背景・要因などを取りまとめた。
外部照射の照射範囲のずれの背景・要因から、医師、診療放射線技師、看護師など職種を超えたチームで情報を共有し、相互チェックができる仕組みを医療機関において検討する重要性が示唆された。
また、外部照射の照射部位の取り違えの背景・要因から、医療機関において、職種横断的な確認ができるシステムやルールを構築する必要性が示唆された。
内部照射はすべて線源やアプリケータの位置の間違いに関する事例であり、背景・要因から、線源の留置の確認の際に、チェックすべき事項を明示することや熟練した医師が確認する体制などを検討することが重要であることが示唆された。」
とまとめています.

現在私が示談交渉・医療ADRを依頼されている事案のなかにも放射線誤照射事案がありますので、とくに関心をもって読みました.、

◆ 口頭による情報の解釈の誤りに関連した事例

報告書は、「口頭による情報の解釈の誤りに関連した事例30件について、薬剤、治療・処置、検査、療養上の世話に分類し、事例の内容や主な背景要因等を取りまとめた。
薬剤の事例のうち、情報を伝える側と、受け取る側の薬剤の希釈に関する解釈の誤りは10件、薬剤の単位の誤りは7件と多く、投与量の誤りが5件、薬剤の投与方法は2件、その他は3件であった。
薬剤の事例では、経験の浅い研修医や看護師が口頭による情報の解釈を間違えた事例が多かった。
特に経験が浅いスタッフに対しては、当然に分かっているであろう院内ルールや略語についても、内容が理解できるよう情報を提供する必要があることが示唆された。医療機関では口頭指示の場合、単位は略さずに行うことを取り決めていることもあるが、日常から薬剤の単位を略さずに表現し、習慣付けておくことの重要性が示唆された。  
治療・処置、検査、療養上の世話の事例では、医療者の想定する言葉と患者がイメージする言葉の違いが起きる可能性があるため、医療者は患者に説明する際には、医療者の質問の意図が伝わるように、具体的に話すことの重要性が示唆された。
」とまとめています.

医療事故・医療過誤の大半は、シンプルなミスによるものです.
その対策もシンプルです.

 谷直樹

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by medical-law | 2015-03-27 01:42 | 医療事故・医療裁判

「3月31日子宮頸がんワクチン副反応被害問題の全面解決を求める院内集会」のお知らせ

子宮頸がんワクチン副反応被害問題の全面解決を求める院内集会」が3月31日開催されるとのことです.
チラシの内容は以下のとおりです.

HPVワクチン(子宮頸がんワクチン)は、2011年11月から接種緊急促進事業によって公費助成が開始され、2013年4月から定期接種の対象となりました。

しかし、重篤な副反応報告が相次いだことから、定期接種化からわずか2か月あまりの2013年6月、厚生労働省は、HPVワクチンの積極的な接種勧奨を差し控えるよう自治体に通知し、現在に至っています。

接種前には健康で活発な学校生活を送っていた女子中高生が、ハンマーで殴られるような痛みに襲われ、車椅子の毎日を過ごし、簡単な計算もできなくなり、共に暮らす母親を認識できなくなるなど、通学、進学はもちろん日常の生活において大変悲惨な被害に遭っています。

全国子宮頸がんワクチン被害者連絡会は、国及びHPVワクチン製造販売企業に対して全面解決要求書を提出すると共に、全面解決を求める院内集会を開催します。

是非とも、ご参加くださいますようお願いいたします。

【日時】2015年3月31日(火)17時~19時(16時30分開場)

【場所】参議院議員会館講堂(東京メトロ永田町駅徒歩4分)

【主なプログラム】
● 被害者連絡会による全面解決要求書のご説明
● 薬害対策弁護士連絡会による法律意見書のご説明
● 出席頂いた国会議員からのお言葉 など

<主催>
全国子宮頸がんワクチン被害者連絡会
薬害対策弁護士連絡会
薬害オンブズパースン会議

<連絡先>
薬害対策弁護士連絡会
(樫の木総合法律事務所内 担当:関口、牛島)
TEL:03-5357-1212


 谷直樹

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by medical-law | 2015-03-26 20:40 | 医療

医療法施行規則の一部を改正する省令案に関する意見の募集について

厚生労働省は、第6回医療事故調査制度の施行に係る検討会の後,事務局と座長で調整した結果をとりまとめ公表しました.その内容はコチラ

もちろん,その内容が最終決定ではありません.
厚生労働省医政局総務課医療安全推進室は,平成27年3月23日(月)~平成27年4月21日(火)(必着)の期間,医療法施行規則の一部を改正する省令案に関する意見を募集しています.

「医療法施行規則の一部を改正する省令案概要」と「医療法施行規則の一部を改正する省令案新旧対照表」が意見募集のサイトにPDFで掲載されています.

・「当該管理者が予期しなかったものとして厚生労働省令で定めるもの」の要件
・医療事故発生時の医療事故調査・支援センターへの報告方法、報告事項
・医療事故発生時の遺族への説明事項
・医療事故調査の方法
・医療事故調査後の医療事故調査・支援センターへの報告方法、報告事項
・医療事故調査後の遺族への説明事項
については,検討会でもとくに意見対立のあったところです.

患者側で事件を担当している弁護士は,医療事故の真相解明,原因究明,再発防止にも強い関心をいだいているはずです.調査制度の具体的な内容は医療法施行規則改正で定められることになりますので,個別にそれぞれのご意見を送られるとよいと思います.

 谷直樹

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by medical-law | 2015-03-25 03:57 | 医療事故・医療裁判

関西電力,裁判官忌避却下の抗告期限末日に即時抗告

産経新聞「裁判官忌避却下で関電が即時抗告 高浜原発差し止め仮処分めぐり」(2015年3月20日)は次のとおり報じました.

「関西電力高浜原発3,4号機(福井県高浜町)などの再稼働差し止めを求めて周辺の住民らが申し立てた仮処分をめぐり,関電は20日,樋口英明裁判長ら担当裁判官3人の交代を求めた忌避申し立てが福井地裁で却下されたことを不服とし,名古屋高裁金沢支部に即時抗告した。」

この件は報道で知っただけなのですが,関電の強引な引き延ばし作戦だと思います.

民訴法第24条は,「裁判官について裁判の公正を妨げるべき事情があるときは,当事者は,その裁判官を忌避することができる。」と定めています.
「裁判官について裁判の公正を妨げるべき事情」はよほどのことです.大飯原発3,4号機の運転差し止めを命じた裁判官が高浜原発3,4号機についても同様の判断を下すだろうとみるのは,理解できます.ただ,同種事件の判断は忌避事由にあたりません.表向きは別の理由をあげるのでしょうが,忌避が簡単に却下されていることからも,関電の忌避は明らかに濫用と考えられます.

民訴法第26条本文は「除斥又は忌避の申立てがあったときは,その申立てについての決定が確定するまで訴訟手続を停止しなければならない。」と定めています.
樋口英明裁判長は,福井地裁に来て4月1日で3年になります.裁判官は3年程度で異動になることが多いので,また即時抗告が抗告期限末日の3月20日に行われたことからも,関電は,3月いっぱい引き延ばそうとしているものと思われます.
高裁のすみやかな審理を期待します.

【追記】

朝日新聞「高浜原発再稼働を差し止め 福井地裁が仮処分決定」(2015年4月14日)は,次のとおり報じました.

「関西電力高浜原発3、4号機(福井県高浜町、定期検査中)について、福井地裁の樋口英明裁判長は14日、再稼働を差し止める仮処分決定を出した。原発の運転をただちに禁じる司法判断は初めて。2基の原発は当面動かせず、関電がめざす11月の再稼働も難しくなる可能性がある。

「新基準は合理性欠く」仮処分決定要旨

 仮処分を申し立てたのは福井、京都、大阪、兵庫4府県の住民9人。

 住民側は、高浜原発の使用済み核燃料プールは原子炉のように堅固な施設に囲われていないなどとして、その安全性は「確たる根拠がない脆弱(ぜいじゃく)なものだ」と主張。「重大事故が起きれば、生存権を基礎とする住民らの人格権が侵害される」と訴えていた。

 一方、関電側は、津波の被害を受けても原子炉の冷却ができるよう発電装置を準備していることなどを挙げ、安全性を強調。「具体的な危険はない」と申し立ての却下を求めていた。

 樋口裁判長は昨年5月、関電大飯原発3、4号機(福井県おおい町)の運転をめぐる訴訟で差し止めを命じる判決を出した。だが、関電が控訴して判決は確定せず、原子力規制委員会が新規制基準にすべて適合すると判断すれば再稼働できる状態にある。

 このため住民らは昨年12月、より法的な即効力がある仮処分の手続きをとり、大飯、高浜両原発の再稼働差し止めを求めて訴えた。樋口裁判長は、再稼働に向けた規制委の審査に今年2月に合格した高浜原発についての判断を先行させる考えを表明。慎重な検討を求める関電側の主張を退け、3月に審理を打ち切っていた。(室矢英樹、太田航)」


 谷直樹

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by medical-law | 2015-03-24 02:25 | 脱原発