弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

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第10回がん診療連携拠点病院等の指定に関する検討会

3月13日に開かれた第10回がん診療連携拠点病院等の指定に関する検討会で,群馬大病医学部附属院,東京女子医科大学病院,千葉県がんセンターの指定更新が保留となり,最終的な判断は厚労相にゆだられました.
これら3医療機関は,医療事故が相次ぎ,医療事故を防止する有効な体制が構築されていなかったことが考慮されたものと思います.

  谷直樹

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by medical-law | 2015-03-14 04:46

逮捕される弁護士たち

今週,弁護士が逮捕されるという報道が相次ぎました.

横領の容疑で,札幌弁護士会所属の弁護士(56歳)が逮捕されました.相続財産管理人として預かっていた現金300万円を着服した疑いです.余罪も調べられているとのことです.
働き盛りの50代の弁護士がお金に困っていたとすれば,それは異常な事態と思います.また,どんなに困っても,他人のお金に手をつけるなんて,できることではありません.

自動車運転処罰法違反(過失傷害)の容疑で,第一東京弁護士会所属の弁護士(36歳)が逮捕されました.横断歩道を渡っていた86歳の女性を午前5時25分頃にはねたことは認めているそうです.呼気からは基準値を超えるアルコールが検出されており、道交法違反(酒気帯び運転)容疑でも調べると報じられています.
弁護士は,徹夜で書面を作成することの多い職業ですが,朝まで仕事をしていたときは(帰るとすれば)タクシーで帰るでしょう.ましてすこしでもお酒を飲んでいたら絶対に運転しないでしょう.そもそも,弁護士は,私を含めお酒を飲まない人が多いように思います.

強要未遂および証人等威迫の容疑で,第一東京弁護士会所属の弁護士(52歳)が逮捕されました.被害者の20代女性や母親などに被害届を取り下げるよう迫った疑いです.否認しているそうです.
弁護士は,弁護人として,加害者にできるだけ示談金を用意してもらい,被害者に示談が成立するよう働きかけるのが普通です.「強談威迫の行為」はありえません.

未だ容疑事実が認定されたわけではありませんが,このような報道に接するのは非常に残念です.

弁護士職務基本規程は次のとおり定めています.

(前文)
弁護士は、基本的人権の擁護と社会正義の実現を使命とする。
その使命達成のために、弁護士には職務の自由と独立が要請され、高度の自治が保障されている。
弁護士は、その使命を自覚し、自らの行動を規律する社会的責任を負う。
よって、ここに弁護士の職務に関する倫理と行為規範を明らかにするため、弁護士職務基本規程を制定する。

1 弁護士は、その使命が基本的人権の擁護と社会正義の実現にあることを自覚し、その使命の達成に努める。
2 弁護士は、職務の自由と独立を重んじる。
3 弁護士は、弁護士自治の意義を自覚し、その維持発展に努める。
4 弁護士は、司法の独立を擁護し、司法制度の健全な発展に寄与するように努める。
5 弁護士は、真実を尊重し、信義に従い、誠実かつ公正に職務を行うものとする。
6 弁護士は、名誉を重んじ、信用を維持するとともに、廉潔を保持し、常に品位を高めるように努める。
7 弁護士は、教養を深め、法令及び法律事務に精通するため、研鑽に努める。
8 弁護士は、その使命にふさわしい公益活動に参加し、実践するように努める。



  谷直樹

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by medical-law | 2015-03-14 00:43 | コンプライアンス

岐阜市が白杖シグナル運動のシンボルマークを策定

視覚に障がいのある方が「白杖」を垂直に頭上に掲げていたら、それは周囲の方に助けを求めるSOSのサイン(シグナル)です.
岐阜市は、白杖シグナル運動の普及啓発に取り組むため、視覚に障がいのある方が示す「SOSサイン(シグナル)」のイメージをわかりやすく伝えるマーク等のデザイン画を募集し、策定したとのことです.

NHK「視覚障害者SOSマーク策定」(2015年3月11日)は、「デザインが採用された青森県弘前市のデザイナー、工藤和久さんは「父親が耳が不自由で障害者が意思疎通を図る大変さを日ごろから感じていました。ハンデのある人にやさしい社会づくりに少しでも役立ちたい」と話していました。岐阜市は、ことし5月の「全国盲人福祉大会」でこのマークの利用を全国に呼びかけることにしています。」と伝えています.

マークは岐阜市のサイトへ

  谷直樹

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by medical-law | 2015-03-12 02:00 | 福祉

吉永小百合さん朗読「第二楽章 福島への思い」

吉永小百合さんの朗読CD「第二楽章 福島への思い」が今日3月11日に発売になります
.第二章シリーズは、広島・長崎の原爆被災者の詩の朗読CDです.その延長線上に、福島の原発被災者の詩を朗読したのが「第二楽章 福島への思い」です.人類は原爆、原発と共存できない、というメッセージこめられた朗読CDです.

朝日新聞「吉永小百合さんが朗読 原発被災者らの詩をCDに」(2015年1月28日)で、吉永さんは製作のいきさつを次のとおり語っています.


「2011年3月の東日本大震災の後から、福島に関する詩を原爆詩の朗読と一緒に読むようになってきました。最初は6月に三宅一生さんから『東北の底力』という展示を東京ミッドタウンでやりたいんだけれども、その時に詩を朗読してもらいたいというご依頼がありました。

 一生さんは前から、原爆詩の朗読をしてほしいというご依頼をして下さっていたんですけれども、そのご依頼の時に、「こういう詩があるんだけど、読めないでしょうか」と言って、和合亮一さんの2冊の本を私に託されました。その中から初めて和合さんの詩をミッドタウンで読んだんです。

 そしてその後に、佐藤紫華子さんという女性の方が自費出版された「原発難民」という詩を送って頂いたり、子どもたちの詩を読む機会があったり、いろんな形で福島の詩と向き合ってきました。そして読んでいるうちに、これをCDにできたらという思いが募りました。

 その時に、このCDはやっぱり日本で今起きている、まだ解決していない、大変な苦しい思いをされている方たちの詩なので、日本の音楽をぜひご一緒にと思いました。それで(尺八演奏家の)藤原道山さんにお願いして音楽を付けて頂いたんです。」


若い方はご存じないかもしれませんが,吉永小百合さんは,今でいうと綾瀬はるかさん、新垣結衣さんのような人気女優でした.


  谷直樹

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by medical-law | 2015-03-11 02:53 | 脱原発

香川県、県立がん検診センターの乳がん見落としで訴訟上の和解(報道)

部活中の事故 検診見落とし/県、訴訟2件和解へ」(2015年3月10日)は、次のとおり報じました.

「03年12月、県内在住の60代の女性が、県立がん検診センターで受けた人間ドックで「異常なし」と診断されたにもかかわらず、翌年3月に同センターで受けた検査で乳がんが見つかったのは、人間ドックで見落としがあったためとして、県に慰謝料などを求めた訴訟。県は「過失がなかったとは言い切れない」として和解勧告を受け入れ、和解金150万円を支払うとしている。」


乳がんの見落としは因果関係立証のハードルが高く、賠償金額が低くなる傾向があるように思います.


  谷直樹

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by medical-law | 2015-03-11 00:45 | 医療事故・医療裁判

弁護士の肖像,奧野善彦先生

アトニーズマガジン2015年3月号の弁護士の肖像に,奧野総合法律事務所・外国法共同事業所長弁護士の奧野善彦先生(東京弁護士会・司法修習18期)が載っていました.
乳児のときの御写真と現在の御写真がそっくりで,雰囲気も似ています.
三つ子の魂百まで,栴檀は双葉より芳し,と言いますが,本当なんですね.

奧野善彦先生は,弁護士奧野彦六先生(元東京弁護士会会長)のご子息で,事業再生に強みを持つ法律事務所の所長で,株式会社整理回収機機構の代表取締役社長にも就いた先生なので,順風満帆の歩みと思っていましたが,口述試験で落ちて就職するなどご苦労をしていたことが分かりました.
その経験が,「人や社会を救う。弁護士は、その志を常に持っていなければならない。そして、どんな困難にも立ち向かわなければならない」という言葉につながるのでしょう.
学法石川の卒業生で,福島との絆を大事にしていることも分かり,福島県内からの依頼も多いことが納得できました.

奧野善彦先生は,中央大学正法会の大先輩でもあります.ちなみに,自民党副総裁の高村正彦先生(司法修習20期)も正法会の大先輩です.

一層のご活躍をお祈り申し上げます.

 谷直樹

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by medical-law | 2015-03-10 02:06 | 人権

2015年3月14日、鈴木利廣氏の講演「私の約40年間の弁護士活動からみた日本の医療の課題」

鈴木利廣氏の講演「私の約40年間の弁護士活動からみた日本の医療の課題」
2015年3月14日(土)14:30~16:30,
JR総武線・飯田橋駅に隣接する 「セントラルプラザ」 の10階「東京ボランティア・市民活動センター」A会議室

主催 患者の権利オンブズマン東京

 群馬大学医学部付属病院、東京女子医大病院などにみるように、患者の安全が危険にさらされる事態が報道されています.薬の安全性、医師主導の臨床試験に関する疑惑報道が相次いでいます.生命倫理に関する深刻な問題も現実に起きています.
 患者の権利を中心とした医療基本法の制定を求める声が高まり、医療者もまじえ、法律の制定に向けた動きが活性化しています.
 また、2015年10月には、改正医療法に基づいた医療事故調査制度が発足するため、激しい議論が戦わされています.
 長年にわたって医療と人権の問題に取り組んできた,私が尊敬する弁護士鈴木利廣先生(司法修習28期)から、その40年の活動からみた日本の医療の課題についてご講演いただきます.

【鈴木利廣先生の経歴】
1947(昭和22)年東京都生まれ
1965(昭和40)年法政第一高等学校卒業
1969(昭和44)年中央大学法学部卒業
1974(昭和49)年司法研修所入所
1976(昭和51)年弁護士登録(東京弁護士会)
その後、勤務弁護士(2年)、個人事務所開設(4年)、協同事務所開設(6年)、個人事務所開設(16年)を経て、2004年にすずかけ法律事務所開設に参加。
2004(平成16)年明治大学法科大学院教授(医事法担当)

【鈴木利廣先生の所属】
・医療問題弁護団(代表)
・東京HIV訴訟弁護団(事務局長)
・薬害オンブズパースン会議(代表)
・薬害肝炎全国弁護団(代表)
・日本医事法学会(理事)
・日本生命倫理学会(監事)
・患者の権利オンブズマン全国連絡委員会(共同代表)

【鈴木利廣先生の著書】
「医薬品の安全性と法-薬事法学のすすめ」(共編著・エイデル研究所)
「医療事故の法律相談」(監修/共編/共著・学陽書房)
「人権を考える本(1)医療・消費者と人権」(共著・岩崎書店)
「医者と患者の法律相談」(共著・青林書院)
「人権ガイドブック」(共編/共著・花伝社)
「患者の権利とは何か」(岩波ブックレット)
「判例評釈・医療事故と患者の権利」(共編/共著・エイデル研究所)

 是非、ご参加を!(参加費無料)
 事前申し込みは、きのした法律事務所へTEL:03-5921-2766 / FAX:03-5921-2765


  谷直樹

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by medical-law | 2015-03-09 01:34 | オンブズマン

福島地裁郡山支部平成27年3月6日判決,1歳児のうつぶせ寝で無認可保育所に賠償を命じる(報道)

読売新聞「保育所側の過失認定、賠償命じる…うつぶせ寝死」(2015年3月6日)は,次のとおり報じました.

「福島県郡山市の無認可保育所で5年前、当時1歳の女児が死亡したのは、うつぶせで寝かされ毛布で覆われるなどして窒息したためだとして、両親が当時の園長や保育士らに計約6600万円の損害賠償を求める訴訟があり、福島地裁郡山支部は6日、保育所側の過失を認め、約5700万円の賠償を命じる判決を言い渡した。

 亡くなったのは、同県須賀川市の会社員津久井利広さん(44)と妻れいさん(35)の長女りのちゃん。上拂(うえはらい)大作裁判長は「うつぶせ寝の危険性は保育関係者の間では周知されていたが、日常的にうつぶせに寝かせる重大な怠慢があった」と指摘。りのちゃんは毛布などの重さで寝返りが難しい状況にあったとして、死因は窒息死と認定した。

 判決によると、りのちゃんは2010年1月8日昼、泣き始めたため、保育士が布団にうつぶせに寝かせた。バスタオルのほか、全身を覆うように四つ折りの大人用毛布をかけ、背中や腰には円筒形に巻いたタオルケット二つを置いた。約40分後、ぐったりしているところを発見され、搬送先の病院で死亡が確認された。」


河北新報「郡山・園児うつぶせ寝死亡 施設側に賠償命令」(2015年3月6日)は,次のとおり報じました.

「郡山市の認可外保育施設「東北ラサール幼知園」で2010年1月、園児の津久井りのちゃん=当時(1)=がうつぶせ寝で死亡し、両親が施設側と郡山市などに計約6680万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、福島地裁郡山支部は6日、施設側に計約5776万円の支払いを命じた。市と死体検案書を作成した医師への請求は棄却した。
 判決は、当時死因とされた乳幼児突然死症候群(SIDS)の疑いを否定し、うつぶせ寝による窒息死と断定。担当の女性保育士と、日常的なうつぶせ寝を容認した元園長、元副園長の注意義務違反を認定した。元園長と元副園長は自己破産しているが、破産法に定める「重大な過失」があったとして、損害賠償は免責にならないと判断した。
 判決によると、りのちゃんは布団にうつぶせに寝かされ頭から毛布で覆われた状態で約40分間放置されて呼吸困難に陥り死亡した。
 判決後、りのちゃんの母れいさん(35)は記者会見し「本来ならこの春に小学校に入学するはずだった。親の義務は果たせたと思う」と語った。
 両親は当初、元園長らを業務上過失致死容疑で告訴したが、福島地検郡山支部は12年9月に不起訴処分とした。これに対し郡山検察審査会は13年7月に不起訴不当と議決。福島地検は嫌疑不十分で不起訴処分としたため、元園長ら3人を保護責任者遺棄致死の疑いで再び告訴している。」

 うつぶせ寝の児が死亡した場合,窒息か否かが争われますが,保育所の責任を認める判決のほうがが多いようです また,重過失を認定し損害賠償債務は免責にならないと判断した点も,今後の参考になると思います.
 なお,上拂大作判事(支部長)は,修習49期です.49期も各裁判所で重責を負う地位に就くようになったわけです.なお,49期で最も有名な人物は橋下徹大阪市長ですが.

  谷直樹

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by medical-law | 2015-03-07 19:44 | 司法

群馬大学医学部附属病院の医療過誤被害対策弁護団,病院の調査は不十分と指摘(報道)

共同通信「群大手術、悪質医療過誤で告訴も 遺族弁護団」(2015年3月6日)は,次のとおり報じました.

「群馬大病院で腹腔鏡手術を受けた患者8人が死亡した問題で、うち2遺族の依頼を受けた被害対策弁護団が6日、前橋市内で記者会見し「医師の刑事、行政処分も考慮すべき重大かつ悪質な医療過誤で、病院の最終報告は不十分」と不満を表明した。遺族と弁護団は告訴や告発を今後検討するとしている。時期などは現時点では未定という。

 弁護団によると、依頼したのは80代の男性患者と70代の女性患者の遺族。執刀医は手術前、女性患者と家族に「すごく簡単な手術だから大丈夫」と説明、同意書には「腹腔鏡手術」という記載はなかった。女性は術後約1カ月で死亡した。」


上記記事には,安東宏三先生,梶浦明裕先生,川見未華先生らの会見の模様の動画,写真も載っています.

共同通信「【群馬大病院】 「手技は稚拙」と専門医 弁護団報告、体制も問題視」(2015年3月7日)は,次のとおり報じました.

「群馬大病院で 腹腔 (ふくくう) 鏡手術を受けた患者8人が死亡した問題で、遺族側の弁護団は6日に「中間報告」を公表し、事前検査の不備など執刀医の対応を問題視したほか、刑事告訴を検討する可能性も示した。独自調査で話を聞いた専門医が「執刀医の手技は稚拙」とした意見も紹介。2人目以降の死亡例は「執刀医の報告の欠落と病院の体制の問題による過誤」とした。

 3日公表の病院側の最終報告は「手術適応や術式決定に際し、術前評価が不十分と判断される」とし、日々の診療録の記載が乏しく、執刀医の思考過程に不明な点が多いとした。

 弁護団は中間報告で、事前検査を実施せず手術に及んだことは極めて異常と指摘。「『思考過程が不明』とは、手術適応、検査や治療方針決定の判断をせずに手術を行ったということで、違法性が極めて高いと言わざるを得ない」とした。

 また執刀医の技量に関しては専門医の評価を引用。「手技はかなり稚拙」「術野も出血で汚染されており、血の海の中で手術をしているような状態」との声を中間報告に盛り込んだ。

 なぜ同じ執刀医の腹腔鏡手術で8人もの死者が出たのか―。病院側の組織的対応のありようも今回の問題の大きな焦点になっている。

 弁護団は「1例目で報告されていれば、ほか7例の死亡が回避できた可能性があるが、この点に十分言及していない」と病院側の最終報告を批判。「主治医の報告の欠落と(上司である)診療科長の看過の問題による過誤で死亡したのであり、2人の独自の過失が認められる」と指摘した。

 病院側によると、執刀医の所属する第2外科は、難易度の高い腹腔鏡手術を2010年に導入後、1年未満に患者4人が死亡していた。弁護団の中間報告で専門医は「通常の大学病院では、予期せぬ死亡があった場合、医療安全委員会が開かれ検討する。同じことが起きないようにルールを作る」「1年間で4人も死亡したら手術停止となる」とし、病院側の姿勢を批判している。

 弁護団は、病院側にさらなる調査を求める考えで、団長を務める 安東宏三 (あんどう・こうぞう) 弁護士は「死亡症例が続いたことの解明が不十分。これで腹腔鏡手術に関する調査を終えるのであれば拙速だ」と指摘。一方、この執刀医による開腹手術では、過去5年間に10人が死亡したことも判明しており「総合的に検討して結論を出すべきだ」と述べた。」


読売新聞「群大病院調査「不十分」…弁護団、刑事告訴検討」(2015年3月7日)は,次のとおり報じました.

「遺族側の弁護団は、医療事故の被害者救済などを行う医療問題弁護団の弁護士8人が2月初旬に結成。これまで、腹腔(ふくくう)鏡(きょう)手術、開腹手術を受けて死亡した患者の遺族から相談を受けてきた。このうち正式依頼を受けた2人について、腹腔鏡手術に詳しい東京都内の大学病院消化器外科専門医の協力を得て独自に調査してきた。

 その結果、弁護団は、病院側がまとめた腹腔鏡手術に関する調査報告書に対し、〈1〉執刀医と教授に対する病院の聴取が不十分〈2〉報告書とカルテの記載内容に食い違いが複数あり、調査全体の信用性に疑問――などの問題を挙げた。」


m3.com「調査不十分、悪質な医療過誤」群大被害者弁護団」によれば,弁護団が指摘する群大病院の最終報告書の問題点は,次のとおりです.

1 執刀医、第2外科部長の科長からの説明・聴取が不十分
執刀医、診療科長から遺族に対する説明がないまま調査を終結することは問題である。

2 遺族からの聴取が不十分
遺族への聴取は一定程度されているが、不十分である。

3 カルテ記載欠落・虚偽記載は「刑事罰に値し得る」程度のもの
開腹術で死亡した患者の保険書類に虚偽の病名を書いたことは、虚偽有印公文書作成罪に該当する極めて悪質な行為。国公立病院の医師が作成するものは公文書であるとされ、過去には都立病院の病院長が担当医師と共謀して、医療事故により死亡した患者の死亡診断書および死亡証明書の作成の際、死因を病死としたことについて、虚偽有印公文書作成罪が成立したこともある。鑑定を依頼した専門医は「ご遺族に癌と伝えないことはあり得ないし、虚偽記載は相当悪質だ。誤診を隠したかったとしか考えられない。それ以外に動機が見当たらない」と指摘している。

4 術前評価の前例欠落は「重大な過誤の連続」であるのに解明不十分
専門医は「容量計算、IGC15分停滞率検査をせずに手術適応や術式選択をすることは不可能であり、あり得ないことである。医師100人に聞けば100人がしないことはあり得ないと答えるであろう。肝臓を専門としない外科の医師でもしている余りに基本的な事項である」と指摘している。

5 インフォームドコンセント欠落(同意なき違法な侵襲行為)の評価が不十分
遺族によると、執刀医の説明は「今手術をしないと死んでしまうよ、という説明だった。難しい手術という説明はなく、慣れているという印象を持った」「すごく簡単な手術だから大丈夫。体力的に今が限界とも言われた」というものだった。

6 手術手技は執刀医・助手ともに「稚拙」「技量が悪い」がその点の評価が不十分
専門医は「(本件執刀医の)手技はかなり稚拙である。鉗子のハンドリングもよくなく、剥離操作、止血操作にしても全部悪い。相当下手。術野も出血で汚染されており、血の海の中で手術をしているような状態。腹腔鏡の技量についてはかなり悪いと言える。無用に肝臓に火傷をさせるなど、愛護的操作がない。助手のカメラ操作も下手」と指摘している。

7 診療体制の問題も著しく、「2例目以降の7例は回避できた死亡」であるが解明が不十分
専門医は「通常の大学病院では、予期せぬ死亡があった場合、医療安全委員会が開かれて検討する。通常は1例で何か事件が起きれば、反省して改善案を検討していく。次に同じことが起きないようにルールを作る。診療科長が何らかの処置をとるのが通常である。診療科長がしっかりマネジメントできていなかったと言わざるを得ない。1年間で4人も腹腔鏡下で死亡したのであれば、通常の大学病院ではそれ自体で手術停止となる。腹腔鏡下で1例死亡したのであれば、腹腔鏡下での術式を中止することも考えられる。1例目が出た段階で検討していれば、ICGを実施していない点について相当叱責された上で改善策が取られたであろう」と指摘している。

8 開腹手術の問題
開腹手術事案の調査報告を待たずに本腹腔鏡事案を切り離して最終報告、最終合意することはできない。」


m3.com「調査不十分、悪質な医療過誤」群大被害者弁護団」によれば,弁護団が公表した遺族のコメント (全文)は,次のとおりです.

「群大だということで先生を信じていた。(医療のことは)難しいことで分からないが先生を信頼して命を預けた。母自身も死ぬまで信じていた。今回のような思いはしたくなかった」
「担当医(執刀医)の言葉があまりになさ過ぎる。謝りに来たこともないし、こういう言葉を発していたということすら、(間接的にも)届かない(決まった担当者が事務的な連絡のために来ただけ)」
「世の中の一番の信仰は医学ではないか。初めて会った人に命を預けるのだから。しかも群大ということで先生もそろっていると考えられているから先生の言うことは否定できない。生死を左右する医療の仕事に携わっていると普通の人よりも死への感情は薄れる部分はあるかもしれないが、患者が命を預けるということと生死を左右する職業であるという意識を持ってしっかりやってもらいたい。執刀医に直接会ってこのことを伝えたい」
「執刀医も問題だが、教授(診療科長)がより問題ではないか」
「(保険請求の問題や診断書の嘘の記載のことを踏まえると)実験台にされたのではないかとも思う」
「同じこと、この家族の悲しみを繰り返したくない。自分たちで最後に。他の人にこういうことが起きないように。今後同じような犠牲者が出ないようにしてほしい」


m3.com「調査不十分、悪質な医療過誤」群大被害者弁護団」は,会見内容を,次のとおり伝えています.
 
「弁護団は真相究明や再発防止に対する群大病院の姿勢については、「遺族も弁護団も評価している」と説明。安東氏は今年10月から開始が予定される医療事故調査制度に関連し、「(厚生労働省の検討会では)事故調査の結果公表は不要、報告書作成不要、遺族に渡すことは控えるべきという意見が一部の委員から出ている。そういう状況と対比すると、調査し、公表し、遺族に伝えた群大病院の姿勢は評価できる。そうしたことがなければ、遺族は現状程度の納得もなかったはず」と指摘した。

 ただ、調査状況を公開する姿勢は評しつつ、「調査・解明が不十分なまま『最終』報告とすることについては、遺族と早期に示談を成立させることで、特定機能病院の承認取消回避、医師個人に対する刑事罰あるいは行政処分を回避する目的のために早期収拾を図ろうとしているとの疑いを抱かざるを得ない」と述べた。

 遺族に提供されたカルテの記載と最終報告書の内容が違う点などもあることなどから、群大病院に対してさらなる調査を求める一方、弁護団として執刀医、診療科長に聞き取りを求めている。弁護団の調査報告の結論は、聞き取りが済んでから出す予定で、医療的鑑定についても他の専門家に協力を求めていくとしている。」

 
 医療過誤は,過失,損害,因果関係の3要件を充たすものをいいます.
 過失は,具体的な予見可能性と具体的な回避義務が認められるものです.
 医療裁判では,単に「下手であること」は,過失にはなりません.
 そこで,外科手術についても細分化された特定の後行為について,具体的な予見可能性と具体的な回避義務が検討されることになります.

 本件で,第三者の医師は,「(本件執刀医の)手技はかなり稚拙である。鉗子のハンドリングもよくなく、剥離操作、止血操作にしても全部悪い。相当下手。術野も出血で汚染されており、血の海の中で手術をしているような状態。腹腔鏡の技量についてはかなり悪いと言える。無用に肝臓に火傷をさせるなど、愛護的操作がない。助手のカメラ操作も下手」と指摘しています.
 つまり,医師の臨床感覚からは,手術のどこに過失があるかというなら,全部としか言いようがない事案ということになります.

 下手というだけでは医療過誤にはなりませんが,法律家とくに裁判官は,相当下手な外科医の手術で連続して事故が起きているとき,一つ一つの手術のどこが問題というより,相当に下手な外科医が手術を行っていること自体が問題である,という視点から具体的な事案をみることが大切と思います.法律的な医療過誤という枠組みにのせて検討する以前の,とんでもない手術が行われた事案なのですから.

 弁護団長の安東先生は,相当に下手で事故が連続した東京医大事件を担当した弁護士ですので,適任と思います.
 弁護団の活動に期待します.

 谷直樹

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れも東京の医療問題弁護団の弁護士です.」

by medical-law | 2015-03-07 17:49 | 医療事故・医療裁判

最高裁裁判官人事,金築誠志最高裁判事退官へ

平成27年3月31日付で定年退官する金築誠志最高裁判事の後任は,東京高裁長官の小池裕判事と閣議決定されたことが報じられています
2月に就任した大谷直人最高裁判事(修習29期)は,前職が大阪高裁長官でしたので,次は東京高裁長官の小池裕判事(修習29期)とみられていましたので,予想通りの人事です.小池裕判事については別の機会に書くことにし,今回は金築誠志最高裁判事について書きます.

金築誠志最高裁判事は,補足意見を頻繁に書かれていた印象があります.
パブリシティ権侵害に該当する場合を限定的に解した最高裁第一小法廷平成24年2月2日判決(ピンク・レディ事件)の補足意見等.

DNA型鑑定と親子関係不存在確認の訴えについて判断した3つの最高裁第一小法廷平成26年7月17日判決における反対意見も有名です.

民法722条が,生物学的父子関係(DNA型鑑定)より,身分関係の法的安定性を重視した立法であることから親子関係不存在確認の訴えを認めない多数意見に対し,金築誠志裁判官は,次の反対意見を書きました.長文なのでごく一部を抜粋します.

「もし親子関係不存在確認の訴えが認められないとすれば,Bとの法律上の親子関係を解消することはできず,Cとの間で法律上の実親子関係を成立させることができない。血縁関係のある父が分かっており,その父と生活しているのに,法律上の父はBであるという状態が継続するのである。果たして,これは自然な状態であろうか,安定した関係といえるであろうか。確かに親子は血縁だけの結び付きではないが,本件のように,血縁関係にあり同居している父とそうでない父とが現れている場面においては,通常,前者の父子関係の方が,より安定的,永続的といってよいであろう。」
「さらに,Bとの法律上の父子関係が解消されない限り,Cに認知を求めるという方法で,子が自らのイニシアチヴによりCとの法律上の父子関係を構築することはできないのであって,Bに対する親子関係不存在確認の訴えを認めないことは,子から,そうした父を求める権利を奪っているという面があることを軽視すべきでないと思う。」
「私は,科学的証拠により生物学上の父子関係が否定された場合は,それだけで親子関係不存在確認の訴えを認めてよいとするものではなく,本件のように,夫婦関係が破綻して子の出生の秘密が露わになっており,かつ,生物学上の父との間で法律上の親子関係を確保できる状況にあるという要件を満たす場合に,これを認めようとするものである。」
「身分法においては,何よりも法的安定性を重んずるべきであり,法の規定からの乖離はできるだけ避けるべきだという意見があることは十分理解できるが,事案の解決の具体的妥当性は裁判の生命であって,本件のようなケースについて,一般的,抽象的な法的安定性の維持を優先させることがよいとは思われない。」


「事案の解決の具体的妥当性は裁判の生命」と言い切るところは,裁判官の鑑と思います.

  谷直樹

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by medical-law | 2015-03-06 00:39 | 司法