弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

<   2015年 04月 ( 37 )   > この月の画像一覧

群馬大学医学部附属病院第2外科での手術後死亡,18人だけではなかった

読売新聞「群馬大術後死、発表の18人以外にも…同じ執刀医」(2015年4月30日)は,次のとおりじました.

群馬大病院第二外科(当時)の肝臓手術では、10年12月~14年6月に腹腔鏡(ふくくうきょう)手術を受けた患者8人と、09年4月以降に開腹手術を受けた10人の計18人が死亡したことがわかっている。

 取材で新たに判明した死亡患者は群馬県在住の70歳代の女性。遺族によると、女性は肝門部胆管がんで、07年に群馬大病院で執刀医から肝臓などを切除する開腹手術を受け、約1週間後に突然死亡した。死因について執刀医は「原因不明だ」と説明したという。

 肝臓手術の診療内容を独自調査している遺族側の弁護団は「病院側の発表以外で、執刀医の手術を受けて家族が亡くなったという相談が複数寄せられている。群馬大病院は幅広く調べて全容を解明すべきだ」と話している。」


 このようなことが無ければ「手術の合併症」で終わっていたのでしょうが,病院は死亡に疑問を抱く遺族に対し(必要であれば調査を行って)説明すべきでしょう.


谷直樹


ブログランキングに参加しています.クリックをお願いします!
  ↓

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
にほんブログ村
by medical-law | 2015-04-30 23:42 | 医療事故・医療裁判

武田薬品工業株式会社、米国のアクトス製造物責任訴訟和解で3241億円を引当金計上

武田薬品工業株式会社は、米国時間4月28日、米国における2型糖尿病治療剤アクトスに起因する膀胱がんを主張する製造物責任訴訟を解決する和解に向けた合意に至った発表しました.

「当社は、和解金、本和解に参加しない訴訟の費用、他の関連訴訟の費用として、2015年3月期第4四半期に27億米ドル(3,241億円)を引当計上する予定です。本和解は、現在の原告およびクレーム提起者の95%がその受け入れを選択した場合に有効となり、その割合に達した際に、当社は23.7億米ドルを和解基金に支払います。現在の原告およびクレーム提起者の97%以上がその受け入れを選択した場合、和解基金への支払い金額は24億米ドルになります。」(武田薬品工業株式会社のサイトより)

これで、米国の約9000件のアクトス製造物責任訴訟は和解終了することになりますが、24億ドルの和解金と諸費用3億ドルの出費となります.これは、日本企業が支払った和解金の最高額を更新することになります.
武田薬品は、責任を認めて和解するわけではありませんので、米国以外で(たとえば日本で)同様の訴訟が起こされたとしたら、責任を争うのでしょうね.


谷直樹


ブログランキングに参加しています.クリックをお願いします!
  ↓

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
にほんブログ村
by medical-law | 2015-04-30 02:50 | 医療事故・医療裁判

国立大学附属病院長会議,大学病院の医療における「医の倫理」について

国立大学附属病院長会議は,以下のとおり「提言」をまとめ,公表すると発表しました.

 「○ 大学病院の医療における「医の倫理」について
昨今、大学病院において、診療に関わる「医の倫理」の欠如が起因と思われる事例があり、患者・ご家族に多大なご迷惑をお掛けするとともに、国民に対して不安を与えているため、国立大学附属病院長会議として「医の倫理」に係る教育、診療における患者人権保護の管理体制について、社会へ説明する責任があると考え、今後「提言」を取りまとめ、公表する予定です。」
(国立大学附属病院長会議のサイトより)

群馬大学医学部附属病院の件を受けてのことと思います.
群馬大学医学部附属病院の遺族側の声もよく聞いて,実効的具体的な「提言」をとりまとめることを期待いたします.

谷直樹


ブログランキングに参加しています.クリックをお願いします!
  ↓

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
にほんブログ村
by medical-law | 2015-04-29 20:45 | 医療事故・医療裁判

医療保険制度改革関連法案,衆議院本会議可決

「持続可能な医療保険制度等を構築するための国民健康保険法等の一部を改正する法律案」(医療保険制度改革関連法案)が,2015年4月24日に厚生労働委員会で可決され,4月28日に衆議院本会議で可決されました.
問題点についての討議が十分なされないまま,一括法案ということで拙速に可決された感があります.

なお,薬害オンブズパースン会議のサイトには「患者申出療養」に関する見解が公表されています.
「患者申出療養(仮称)への疑問と問題点」として次の7点をあげています.
 「1)例外措置にふさわしい対象患者の限定はあるか
  2)このシステムで安全性・有効性のチェックは本当に可能なのか
  3)エビデンスの質の確保や利益相反の管理はできるのか
  4)「患者申出」によるとあるが、誘導ではない本当の意味でのインフォームド・コンセントは可能か
  5)薬害を予防し、事後検証できるシステムとなっているか
  6)将来の承認への道筋はついているか
  7)未承認薬の適正な価格決定への手立ては明確になっているか」


谷直樹


ブログランキングに参加しています.クリックをお願いします!
  ↓

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
にほんブログ村
by medical-law | 2015-04-29 09:37 | 医療

伊田篤史十段と「ヒカルの碁」

21歳1月の伊田篤史八段が十段のタイトルを取りました.6年0月の最速記録で,最年少の十段が誕生しました.すごいですね.
伊田篤史十段は小学生のとき「ヒカルの碁」を読んで囲碁を始めた,とのことです.

1997年に医療問題弁護団原作で「まんが医療過誤 するな! 泣き寝入り」を日本評論社が発行しましたが,残念ながら「ヒカルの碁」のような人気にはなりませんでした.
盤面に石を交互に置いていくだけの地味なゲームを題材にして,あれだけの人気漫画がつくられたのですから,どなたか,パソコンに向かっていっそう地味に起案しているだけの弁護士を題材にして小学生にも人気の漫画を描いていただくことはできないでしょうか.


谷直樹


ブログランキングに参加しています.クリックをお願いします!
  ↓

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
にほんブログ村
by medical-law | 2015-04-28 00:26 | 趣味

岐阜地裁平成27年4月27日判決,陽光クリニックの無資格医療事件で有罪判決(報道)

中日新聞「無資格医療事件で元代表ら有罪 岐阜地裁判決」(2015年4月27日)は,次のとおり報じました.

 「岐阜県羽島市の診療所「陽光クリニック」の無資格医療事件で、医師法違反などの罪に問われた元代表××××被告(49)らの判決公判が27日、岐阜地裁であった。四宮知彦裁判官は、××被告に懲役2年、執行猶予4年、罰金100万円(求刑懲役2年、罰金100万円)、元事務長▲▲▲▲被告(51)に懲役1年、執行猶予3年(求刑懲役1年)、診療所運営会社「陽光メディカル」に求刑通り罰金100万円を言い渡した。

 四宮裁判官は判決理由で「医師ではないのに頻繁に看護師らに注射を指示し、患者に健康被害を与える危険性があった。利益を優先した悪質な犯行で、強い非難に値する」と述べた。

 判決によると、両被告は2013年5~7月、医師の資格がないのに肝機能障害の薬を患者に注射するよう看護師らに指示。13年8月~14年2月には、薬の販売許可を得ないまま「がんなどに効く」とうたった国内未承認薬を患者2人に計14万円で販売した。

 診療所は13年5月に開院。同年9月に閉鎖した。」


無資格医師事件は,がんに罹患した患者を騙して無承認の物質を「未承認薬」として販売して利益をあげるのにならず,医師による標準的な医療を受ける機会を喪失させて疾患の進行等の健康被害を生じさせ得る,きわめて悪質な事件です.
私は,この事件とは別の医師資格のない偽医師らを被告に,東京地方裁判し立川支部で,民事の損害賠償請求訴訟を担当しています.

谷直樹


ブログランキングに参加しています.クリックをお願いします!
  ↓

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
にほんブログ村
by medical-law | 2015-04-27 20:20 | 医療事故・医療裁判

岡崎市民病院、脳梗塞の診断治療の遅れで791万円支払合意(報道)

朝日新聞「市民病院の診断ミス、791万円で合意」(2015年4月26日)は、次のとおり報じました.

「岡崎市は25日、市民病院で脳梗塞(こうそく)の治療が遅れて後遺症が残る過失があり、791万円の損害賠償金を支払うことで患者と合意したと発表した。市議会の6月定例会に議案を提出する。

 病院の説明では、患者は県内の50代の女性。2010年12月、顔のしびれなどを訴えて同病院の脳神経内科を訪れたが、担当した30代の男性専門医は、MRI検査で脳幹の一部に小さな影があったにもかかわらず帰宅させるなど、十分な措置をとらなかった。

 4日後、女性はめまいで救急車で搬送され、同病院で脳梗塞と診断されて入院したが、今も左半身のしびれが残っているという。

 女性側から調停による損害賠償の申し立てがあり、今月1日、病院が過失を認めて和解することで合意。病院は「年末の忙しい時期で慎重さを欠いた。当初の診断で、入院などの措置が必要だった」としている。」


MRIで脳幹の一部に小さな影があったとのことですが、一般に拡散強調画像(DWI)で白い影が描出されたなら、MRAで詰まった血管を特定し、発症後4時間半以内ならtPA(Tissue Plasminogen activator)を投与します.これができていたなら、後遺症を残すことはなかったでしょう.もし発症後4時間半を経過していたらステント治療を行います.脳梗塞は時間との勝負です.
本件は私が担当した事件ではありませんので、上記報道で知る範囲になりますが、MRIで脳幹の一部に小さな影があったにもかかわらず患者を帰したのは、医師として一般的な対応ではないと思います.


谷直樹


ブログランキングに参加しています.クリックをお願いします!
  ↓

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
にほんブログ村
by medical-law | 2015-04-26 19:23 | 医療事故・医療裁判

The first thing we do, let's kill all the lawyers.

「まず初めに、弁護士を皆殺しにしよう。」

ウイリアム・シェークスピアの「ヘンリー六世」の台詞です.

「ハムレット」の墓堀りの場面にも,次の台詞があります.

There's another: why may not that be the skull of a lawyer? Where be his quiddities now, his quillets, his cases, his tenures, and his tricks?

 (skull 頭蓋骨 quiddities 本質 quillets 詭弁 cases 事件 tenures 保有不動産 tricks 策略)

シェークスピアは弁護士がお気に召さなかったのでしょうか.
それとも,弁護士は王侯貴族に嫌われる職業だったのでしょうか.


谷直樹


ブログランキングに参加しています.クリックをお願いします!
  ↓

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
にほんブログ村
by medical-law | 2015-04-26 03:40 | 弁護士会

5年生存率低下による死の恐怖の慰謝料

朝日新聞掲載の,長尾和宏氏の「《1830》「がん治療に殺された」という人」に,次の記載があります.

 「胸部X線検査で1センチ大の異常陰影が見落とされました。
  1年後、他院にてステージⅡbの肺がんと診断され手術を受けました。

  5年生存率の低下を理由に患者が損害賠償請求しました。
  死への恐怖が高まったという理由が認められ病院側に約4500万円の
  損害賠償請求が命じられました。

  1センチの陰影を1年間放置しただけで、4500万円のペナルテイー。
  これががんの診断遅れに関する医療訴訟の現実です。」


これは,東京地裁平成18年4月26日判決(「医療訴訟ケースファイルvol.3」140頁)のことを言っているのだと思いますが,東京地裁平成18年4月26日判決であれば,5年生存率低下による慰謝料等は4500万円ではなく,450万円です.

 医療過誤事件の判決について,医療に素人の裁判官が下したトンデモ判決話が流布していますが,ほとんど都市伝説にちかいもので,実際の判決は決して患者側に甘いものではありません.患者側が専門的な「過失」「因果関係」「損害」について立証責任を負うのですから,医療訴訟の立証は大変です.
 癌の見落としというミス(過誤)があっても,因果関係立証の壁に阻まれて低額の賠償に終わることもあり,そのようななかで,上記東京地裁判決は,発見治療が遅れ癌が進行してからの切除になったために被った不利益を法的にどのように評価したらよいかを考え,死への恐怖という立証可能な事実(損害)に着目して慰謝料400万円と弁護士費用50万円を認めた判決です,医師資格のある裁判官がよく考えぬいて書いた判決です.

なお,東京高裁で550万円の和解で確定しています.

1桁違うと,10倍違うことになりますので,朝日新聞掲載の,長尾和宏氏の「《1830》「がん治療に殺された」という人」では死亡慰謝料より高額の賠償を認めた判決となり,うける印象はだいぶ違います.


 谷直樹

ブログランキングに参加しています.クリックをお願いします!
  ↓

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
にほんブログ村
by medical-law | 2015-04-25 19:51 | 医療事故・医療裁判

フィラデルフィアの連邦裁判所,NFLが元選手の慢性外傷性脳症(CTE)で10億ドル和解へ

日本経済新聞「NFL集団訴訟、健康被害で和解 賠償金計1200億円」(2015年4月23日)は,次のとおり報じました.

「【ニューヨーク=共同】米プロフットボール、NFLの元選手が現役時代のプレーで脳に健康被害が生じたとしてリーグに損害賠償を求めていた集団訴訟が22日、フィラデルフィアの連邦裁判所で和解に達し、総額で10億ドル(約1200億円)にも上る賠償金がNFLから支払われる見通しとなった。訴訟では5千人以上が原告となっていた。AP通信など米メディアが報じた。

 NFLを引退した約2万人のうち、将来的に6千人がアルツハイマー病や認知症になる恐れがあると推定されている。和解案では1人平均19万ドル(約2280万円)の賠償金を受け取る。30代や40代でパーキンソン病と診断された場合や、脳の損傷が死因だった元選手には最高で500万ドル(約6億円)が補償される。」

頭部への繰り返される衝撃に因り,タウ蛋白陽性の神経原線維変化が進行し,パンチドランカー同様の脳障害を引き起こすことが知られています.
この慢性外傷性脳症(Chronic traumatic encephalopathy)は,生存中にタウ蛋白を調べることが難しく,解剖しないと正確な診断ができません.
NFL(National Football League)は,頭部への繰り返される衝撃が脳障害を引き起こすことを知っていました.NFLは,豊富な資金で研究者にアメリカンフットボールとの因果関係を否定する報告を発表させました.しかし,結局,因果関係を否定する見解は多数とはなりませんでした.
そして,裁判所で,このような和解が成立する見通しとなったわけです.

ボクシング,アメリカンフットボール以外でも頭部への衝撃が繰り返されるスポーツでは,同様のことが起こり得ます.
認知症等のリスクを減らしたければ,頭部が衝撃を受ける危険のあることは,極力さけたほうがよいと思います.


 谷直樹

ブログランキングに参加しています.クリックをお願いします!
  ↓

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
にほんブログ村
by medical-law | 2015-04-24 02:18 | 司法