弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

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レーシック手術」を受けた患者9人が東京地裁に提訴(報道)

日テレ「レーシック手術で後遺症 患者ら病院側提訴」(2015年10月30日)は,次のとおり報じました.
 
「レーザーで目の角膜を削り視力を回復する「レーシック手術」を受けた患者9人が手術の結果、後遺症が残ったとして、7800万円余りの損害賠償の支払いを求め、集団提訴した。
 東京地裁に訴えを起こしたのは、「品川近視クリニック」と「錦糸眼科」で視力を回復するレーシック手術を受けた20代から50代の男女9人。
 訴状によると、原告らは、2つの病院でレーシック手術を受けた後、目の痛みや視界のぼやけ、目が乾くドライアイなどの症状が出たという。
 原告らは、2つの病院は事前に手術の後遺症について説明せず、日本眼科学会の定めるガイドラインに違反して角膜を削りすぎていたとして、総額7800万円余りの損害賠償の支払いを求めている。
 「品川近視クリニック」と「錦糸眼科」については、去年12月に既に患者12人が集団訴訟を起こしているが、弁護団によると、病院側は「事前にきちんと説明し、医学的にも問題はなかった」と全面的に争う姿勢を見せているという。」


ガイドライン違反の治療行為に因り後遺症が残ったとすれば,責任があるように思いますが,裁判所の判断に注目したいと思います.
なお,レーシック手術過誤事件は,当事務所では扱っていませんので,被害に遭われたと思われる方は医療問題弁護団(電話03 5698 8544)へご相談ください.


 谷直樹


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by medical-law | 2015-10-31 00:29 | 医療事故・医療裁判

急性弛緩性麻痺/急性弛緩性脊髄炎ならびに喘息様症状を認める急性呼吸不全症例の多発について

公益社団法人日本小児科学会予防接種・感染症対策委員会は, 平成27年10月23日,会員に「急性弛緩性麻痺/急性弛緩性脊髄炎ならびに喘息様症状を認める急性呼吸不全症例の多発について」を発しました.

「今年8月末頃から9月をピークに、全国各地で喘息様症状を呈する下気道炎患者が急増し、中にはICU入室、人工呼吸管理、ECMO管理が必要となる急性呼吸不全症例が発生しています。また、一部の症例からはEV-D68が検出されたとの報告があります。

また、上記とほぼ同時期に、急性弛緩性麻痺症状を呈する急性弛緩性脊髄炎症例が全国から相次いで報告され、日本小児神経学会を中心に情報共有と検討が進んでいます。一部の症例の咽頭ぬぐい液からはEV-D68が検出されており、エコーウイルス、コクサッキーウイルス等、その他のウイルスが検出されている症例もあり、感染拡大予防法、治療法等を確立するためには原因究明が急がれます。2015年9月の本学会雑誌には、2013年に発症したエンテロウイルスD68型が検出された急性呼吸不全と急性弛緩性麻痺を来した1例が症例報告されました。」


そこで,「2015年10月21日に厚生労働省から発出された下記「急性弛緩性麻痺(AFP)を認める症例の実態把握について(協力依頼)」をご確認いただき、このような患者さんを診療された会員におかれましては、最寄りの自治体(保健所)に別添の事務連絡の最後の頁にある「別添様式:医療機関記入様式」によりご連絡くださいますようお願い申し上げます。」と呼びかけています.
  
NHK「都内の病院 20人以上からエンテロウイルス」(2015年10月29日)は,次のとおり報じています.

「都立小児総合医療センターでは先月中旬から今月初めにかけて150人ほどの子どもがぜんそくに似た症状を訴えて入院し、これまでに20人以上から「エンテロウイルスD68」が検出されたということです。」
「子どもの治療にあたった都立小児総合医療センター感染症科の堀越裕歩医長は「呼吸器の症状を訴える子どもは、例年であれば秋から冬にかけてが多く、おかしいなと感じた。子どもたちの中には、数は少ないが集中治療室に入って人工呼吸器をつけなければならないケースもあった。パニックになる必要はないが、かかったことがない人は症状が重くなることもあるので、手洗いやせきエチケットなどの対策を徹底してほしい」と話していました。」


これから寒くなると,呼吸器の症状を訴える小児がふえ,小児科医はその対応に追われることになるでしょうが,EV-D68によるものを見逃さないようにお願いしたいと思います.患者側も,いったん帰されても症状が続く場合は,早めに再受診するほうがよいでしょう.


谷直樹


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by medical-law | 2015-10-30 07:40 | 医療

「子宮頸がん等ワクチン接種緊急促進事業」に基づく接種に係る医薬品副作用被害救済制度の5年の請求期限

厚生労働省健康局健康課と厚生労働省医薬・生活衛生局安全対策課は,平成27年10月22日,「「子宮頸がん等ワクチン接種緊急促進事業」に基づく接種に係る医薬品副作用被害救済制度の請求期限の周知について(依頼)」を発しました.

「医薬品副作用被害救済制度については、医薬品を適正な使用目的に従い適正に使用したにも関わらず発生した副作用により、入院治療が必要な程度の疾病や日常生活が著しく制限される程度の障害等の健康被害を受けた方の迅速な救済を図ることを目的として独立行政法人医薬品医療機器総合機構法(平成14 年法律第192 号)に基づき、運用されているところです。
当該制度の医療費及び医療手当の請求期限については、同法施行令(平成16 年政令第83 号)第4条及び第5条により、下記のとおりとなっております。
・医療費 :医療費の支給の対象となる費用の支払いが行われたときから5年以内
・医療手当:請求に係る医療が行われた日の属する月の翌月の初日から5年以内

予防接種法(昭和23 年法律第68 号)に基づく定期接種化以前に行われた「子宮頸がん等ワクチン接種緊急促進事業」(以下「基金事業」という。)に基づくヒトパピローマウイルスワクチン、ヒブワクチン及び小児用肺炎球菌ワクチンの接種については、医薬品副作用被害救済制度に基づく救済措置の対象となるものです。基金事業は、平成22 年11 月26 日付け健発1126 第8 号厚生労働省健康局長通知「子宮頸がん等ワクチン接種緊急促進臨時特例交付金の運営について」をもって開始されたことから、今後、上記5年の請求期限が順次到来することが発生し得るため、管内市町村(保健所を設置する市及び特別区を含む。)に対し、管内の対象者による請求に遺漏なきよう、対象者宛て十分に周知いただきたくよろしくお取り計らい願います。
また、請求に当たり、具体的な請求方法、必要書類、請求書類の様式やその記載方法等については、以下の独立行政法人医薬品医療機器総合機構の相談窓口に問い合わせていただくよう、併せて周知をお願いいたします。

【相談窓口】
独立行政法人医薬品医療機器総合機構 救済制度相談窓口
0120-149-931(フリーダイヤル)
※IP 電話等の方でフリーダイヤルが御利用になれない場合は、03-3506-9411(有料)を御利用
ください。
<受付時間>
月曜日から金曜日(祝日・年末年始を除く)午前9時から午後5時」


5年は早いですね.
請求期間の制限にご注意ください.


 谷直樹


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by medical-law | 2015-10-30 06:33 | 医療

薬害オンブズパースン会議,「ベンゾジアゼピン系薬物に関する要望書」提出

薬害オンブズパースン会議は,2015年10月28日,「ベンゾジアゼピン系薬物に関する要望書」を提出しました.要望内容は,以下のとおりです.

「1 関係各企業に対する要望
(1)ベンゾジアゼピン系薬物について、以下の点について添付文書を改訂すること
ア 常用量依存症と離脱症状、ベンゾジアゼピン系薬物同士の多剤併用の有害性を警告欄に明記すること
イ ジアゼパムの力価との等価換算値を記載すること
ウ 処方期間の継続に制限を設けること
(2)患者の自己決定権を保障するため、当該薬剤がベンソジアゼピン系薬物であること、ベンゾジアゼピン系薬物の依存性や離脱症状、適切な離脱方法を明記した患者向け説明文書を作成して、医療機関でベンゾジアゼピン系薬物を処方された全ての患者に交付させるとともに、同説明文書をインターネット上に公開すること

2 厚生労働省に対する要望
(1)関係各企業に対し、上記1(1)のとおり添付文書を改訂するよう指導すること
(2)関連各企業に竍し、上記1(2)のとおり、患者の自己決定権を保障するための情報を積極的に告知するよう指導すること
(3)薬剤情報提供文書にベンゾジアゼピン系薬物の依存症が必ず記載されるための適切な施策を講ずること
(4)平成26年度「依存症治療拠点機関設置運営事業」において指定ざれた全国拠点機関及び5つの依存症治療拠点機関に、ベンゾジアゼピン系薬物依存症に特化した部門を設置して専門的な治療や研究を実施させるとともに、少なくとも各県に1医療機関をベンゾジアゼピン系薬物依存の専門的治療を実施できる治療拠点機関として指定すること

3 学会に対する要望
日本睡眠学会や日本精神神経学会は、ベンゾジアゼピン系薬物の依存性と多剤併用の有害性を周知啓発するため、所属学会員のみならずそれ以外の医療関係者をも対象とした研修を実施すること

4 文部科学省に対する要望
ベンゾジアゼピン系薬物の依存性と多剤併用の有害性について、医学部及び薬学部における教育を強化すること」


詳細は,薬害オンブズパースン会議のサイトをご参照ください.
なお,患者が自己判断で服薬を止めることは危険です.


 谷直樹


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by medical-law | 2015-10-29 06:36 | 医療

国際がん研究機関、加工肉を発がん物質グループ1に,赤肉をグループ2に指定

国際がん研究機関(IARC)は,加工肉をグループ1(ヒトに対して発がん性がある。)に指定しました.このカテゴリーは、ヒトにおいて「発がん性の十分な証拠」がある場合に用いられます.タバコ喫煙もこの分類です.ただし,加工肉はタバコ喫煙と同等の危険性があるわけではありません(タバコ喫煙のほうがより発がんの危険があります.).加工肉の摂取量が50g(ハム2枚分)増すごとにヒトが結腸がんになる相対リスクは18%高くなります。加工肉による発がんで年間3万4千人が死亡していると推定しています.
 
IARCは、牛や豚などの赤肉を,グループ2A(ヒトに対しておそらく発がん性がある)に指定しました.このカテゴリーは,ヒトにおいて発がん性の限定的な証拠があり,実験動物において発がん性の十分な証拠がある場合に用いられます.紫外線もこの分類です.赤肉の摂取量が100g増すごとにヒトが結腸がんになる相対リスクが17%高くなります.

赤身肉及び加工肉の1日あたり摂取量を70グラム以下に抑えることが推奨されています,
加工肉はできるだけ控え,赤身肉はほどほどに,ということでしょうか.
政府は,それぞれ具体的な摂取の上限,目安を示すべきでしょう.


 谷直樹


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by medical-law | 2015-10-28 05:19 | 日常

群馬大学医学部附属病院の改革委員会,中間報告

群馬大学医学部附属病院の改革委員会が2015年10月26日,中間報告をまとめたことが報じられています.

朝日新聞「組織体質・執刀医を批判 群馬大病院問題、改革委が中間まとめ」(2015年10月27日)は,次のとおり報じました.

「問題が起きた背景に、同じ治療をするのに別の2組織がそれぞれの指示系統で協力なく運営されていた点や、病院長や診療科長が指導力を発揮できない状況、改善されなかった診療体制、他部署から問題を指摘できないような安全管理体制や病院全体の風土も要因に挙げた。
 一方、執刀医については「医療行為は人間の尊厳を傷つけないもの。当該医師は人間の尊厳を全く尊重しているとは思われない。適格性を疑わざるを得ない」と非難している。
 病院では改善に向け、二つの外科は外科診療センターにまとめられたが、大学の研究体制は二つのまま維持されており、まとめでは「今後十分な機能を発揮できるかどうかについては大きな疑義がある」と指摘し、今後も徹底的な検討が必要だとした。」


産経新聞「群馬大病院の患者死亡問題 「低質な医療、認識できず」中間報告、組織改革の必要性指摘」(2015年10月27日)は,次のとおり報じました.

「改革委の木村孟委員長は「一番の問題は低質な医療が提供され続けたことを病院が問題として認識できなかったことだ」と指摘し、病院だけでなく同大医学部医学系研究科も含めた組織改革の必要性を訴えた。
 改革委の提言は、執刀医を「医療従事者として適格性を疑われる医師」と指摘し、その上で、執刀医が所属していた旧第2外科の肝胆膵部署が閉鎖的・属人的で、体制的欠陥を伴っていたと問題の背景を分析した。旧第2外科と第1外科は肝臓など扱う臓器が同じでありながら、今年4月に統合されるまで、別々に組織運営されてきた。それは医学部の医学系研究科内で、専門が重複する外科学第一と外科学第二が存在したことに由来し、両科はそれぞれ、外科学第一、外科学第二を担当する教授の指揮命令系統に入っていた。
 提言は、この診療体制がスタッフ数に見合わない数の診療行為を行う背景にあり、加えて診療科長の指導力不足がカンファレンス(症例検討会)の機能不全やカルテの記載不十分などをもたらしたと説明した。
 木村委員長は病院のガバナンス(統治)の問題点として、診療科の独自性が非常に強いことを指摘しながら、「病院長も含め、指導をはじめからあきらめていたと見受けられる」とも述べた。その上で、現在も医学系研究科内で、診療体制とは矛盾する講座があることを指摘し、「根本的問題が積み残され、今後、十分機能を発揮できるか大きな疑義が残る」と強調した。」


読売新聞「群大術後死、指導力不足で医療の質低下…改革委」(2015年10月27日)は,次のとおり報じました.

 「改革委は、問題が起きた最大の要因として、患者の死亡が相次いだ第二外科と、第一外科が同じような手術を行いながら互いに協力せず、非効率で十分な安全管理がしづらい体制だったことを挙げた。指導力のない診療科長の下で、資質に欠ける医師が過剰な数の手術を一手に引き受けた結果、医療の質が低下し、死亡例が続発したと批判した。
 病院に安全管理部門はあったが、問題を把握できる仕組みになっていなかったと指摘。群馬大出身者が多く、閉鎖的で物を言えない風土もあったとして組織改革を進めるよう注文した。
 木村委員長は「病院長や診療科長が指導力を発揮しようとした証拠もなく、病院としての統率が取れていなかった」と批判した。
 田村遵一病院長は「指摘は非常に的を射ており、心から反省している。真摯に受け止め、早期に改革したい」と述べた。
「(問題点)
▽第一、第二外科が独立運営され協力体制がなかった
▽スタッフ数に見合わない数の手術を行っていた
▽適格性を疑われる医師が主要構成員として存在
▽病院長や診療科長(教授)が指導力不足だった」


WSJ「「発言しにくい風土」改善要求=群馬大病院の改革委が中間報告」(2015年10月27日)は,次のとおり報じました.

「改革委は、患者の診療方針が合議ではなく、担当教授のみによって決定されるなど、「医療行為が閉鎖的、属人的になっていた」と指摘。患者の死亡が相次いだ原因に「体制的欠陥」を挙げた。
 こうした問題の背景には、医師の多くが同大出身者で占められることに由来する特異な風土があるとした。師弟関係の中で口が出しづらい状況が生まれ、「改革ができず、患者本位の医療など時代の流れに取り残される結果となった」という。
 改革委は「現場の声、特に若手の意見を取り入れる」形での意識改革などを進めるよう提言。改善策の進捗(しんちょく)状況を公表することも求めた。」


TBS「群馬大病院改革委「背景に先輩に発言しにくい風土」」(2015年10月27日)は,次のとおり報じました.

「改革委員会は、背景に「医師の多くが大学出身者で占められ、大学特異の文化が構築され、先輩・恩師に対し発言しにくい風土が出来上がっていた」と指摘。「改革ができない状況が固定化し、チーム医療や患者本位の医療など、時代が要請する流れに取り残された」としています。」

共同通信「改革委、現場との意思疎通強化を 群馬大患者死亡で」(2015年10月27日)は,次のとおり報じました.

「木村孟委員長は問題の背景に関して「男性医師は死亡事故後も医療行為を続けており、適性を疑う。人間の尊厳を尊重していると思えない」と指摘。旧第1外科と旧第2外科が独立し、医師らの協力体制も整っていなかったと批判した。」
 これらを踏まえ、病院長や診療科長ら幹部が現場の医師や看護師らと積極的に意思疎通し、問題を指摘しやすい体制を作るよう提言した。」


毎日新聞「群馬大病院:「労働負担が大」患者死亡で改革委が中間提言」(2015年10月27日)は,次のとおり報じました.

「死亡例が集中した旧第2外科の肝胆膵(かんたんすい)チームについて「見合わない数の診療や手術をこなしていた。労働負担が大きかった可能性がある」と指摘した。

 改革委は外部の有識者7人で構成され、5月からヒアリングや現地調査を重ねてきた。提言では、病院の構造的問題として「群馬大出身者が多く、先輩や恩師に口を出しにくい閉鎖的な風土だった」とも指摘。記者会見した木村委員長は「執刀医はインフォームドコンセント(説明に基づく同意)が不十分で、死亡例が相次いでも手術をやめず、人間の尊厳を全く尊重していない」と述べ、執刀医の個人的責任にも言及した。」

 
群馬大学医学部附属病院の医療事故の背景が次第に分かってきました.
医学部医学系研究科の外科学第一,外科学第二に対応し,病院に外科が2つあり別々に組織運営されてきたという特殊事情は背景にあるようです.
大学病院では,その大学の出身者が多く,そのため閉鎖的な体質になりやすいとすれば,他の大学病院にも多かれ少なかれ当てはまるように思います.
また,人間の尊厳を全く尊重しているとは思われない適格性を疑わざるを得ない医師は,他の病院にも少数ですが存在するのではなかいかと思います.そのような医師を指導しただしていく体制が必要です.
法律家が医療の萎縮をおそれるあまり,医療過誤についてあまりに謙抑的消極的な対応を行っていると,医療における人間の尊厳が守られないことになります.
群馬大学医学部附属病院の問題から学ぶべきとは多いと思います.

【追記】

東京新聞「群大病院手術死問題 遺族ら会見「本当のこと知りたい」」(2015年12月21日)は、次のとおり報じました.

「 「本当のことを知りたい」-。前橋市の群馬大病院で同じ男性医師による腹腔(ふくくう)鏡や開腹手術を受けた患者が相次いで死亡した問題。十九日夜に高崎市で会見した遺族とその弁護団は、執刀医らに対し、手術について遺族に直接説明するか書面で質問に回答するようあらためて要望したと明らかにした。カルテの記載は不十分な点が多く、遺族らは真相解明に向けて当事者からの説明は欠かせないと主張。来年一月十三日までに回答がなければ民事訴訟も検討するという。 (川田篤志)
 弁護団は九月、執刀医と当時の診療科長、病院の三者に、遺族を対象に説明会を開くことなどを要望。だが、病院側は学識者らでつくる第三者の事故調査委員会が調査中であることを理由にするなどし、いまだに実現していないという。今月十八日付であらためて三者に通知書を送った。
 この日の会見には開腹手術を受けた患者三人の遺族が出席し、悲痛な思いを訴えた。
 六十代の父を失った男性は「元気だったおやじが何で死んでしまったのか。本当のことを知りたいという気持ちだけで動いている」と怒りをにじませた。
 別の六十代の父を失った女性は「母たちは術前、執刀医から『手術すれば十年は生きられる』と言われた。手術以外の選択の余地がなかった」と吐露。「今は後悔しか残っていない。執刀医に真実を直接聞きたい。それだけです」と言い切った。
 弁護団の梶浦明裕弁護士は「診療記録には記載がない部分が多い。執刀医の思考過程が分からず、記載に矛盾もある。当事者からの説明が不可欠だ」と指摘。「遺族に直接説明がないのは診療契約に基づく報告義務の不履行で、これ自体が違法。速やかに対応してほしい」と求めた。
 この日は病院側が設けた第三者調査委による遺族への聞き取りもあった。
 だが、問題が発覚した当初に公表された、男性医師の腹腔鏡手術を受けた八人と開腹手術の十人の計十八人の遺族が現時点での対象とみられ、病院側は今年八月、この医師が赴任した二〇〇七年までさかのぼり、調査委に対して新たに示した死亡事例十二人の遺族に聞き取りが行われるかは不透明。会見に出席した遺族で、二十代の妹を亡くした男性もそのうちの一人で、「公平に全ての事例を対象にするべきだ」と求めた。」



谷直樹


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by medical-law | 2015-10-28 03:09 | 医療事故・医療裁判

禁煙の中学校内で校長らが隠れ喫煙し、教員のタバコの火から出火

産経新聞「教員が隠れて喫煙 学校ぼや、校長や教頭も喫煙」(2015 年10月24日)は、次のとおり報じました.

「福岡県久留米市立北野中学校で22日午後8時半ごろ、教員のたばこの不始末が原因で、職員更衣室の壁の一部やごみ箱が焼けるぼやがあった。市教育委員会によると、学校敷地内は禁煙だが、校長や教頭も喫煙していた。

 市教委によると、火災は校内にいた教員が消火器で消し止めた。警察や消防の調査で、出火原因はごみ箱に捨てられていた空き缶内の吸い殻と判明。更衣室で喫煙していた教員のものとみられる。

 市教委は2005年から、市立小、中、高校と特別支援学校を禁煙としていた。しかし市議会の指摘を受けて今月調査したところ、66校のうち、北野中を含む15校で教員が喫煙していた。

 ×××校長(58)は「中心になって禁煙をひっぱっていく立場にもかかわらず喫煙していたことへの痛切な反省から、禁煙を始めた。ヘビースモーカーなのでいらいらするときもあるだろうが、教職員である以上、強い意志でたばこをやめる」と話した。」

 
10年前から禁煙になっているのに、未だに隠れて喫煙していたのですね.
飲酒運転なみの処分がくだってもおかしくありません.
タバコには強い依存性があります.校長ら4人の教員には禁煙外来を受診することをお奨めします.


 谷直樹


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by medical-law | 2015-10-27 02:17 | タバコ

片山律先生が喫煙18歳引き下げ論について語る

マイナビニュース「飲酒・喫煙「18歳」引き下げ 根強い反対論の背景とは?」(2015年10月25日)で,片山律先生が次のとおり語っています.

「日本禁煙学会の理事を務める片山律弁護士は次のように指摘します。

「まず挙げられるは健康被害です。『喫煙と健康問題に関する実態調査』(平成10年度厚生労働省)には、吸い始める年齢が若いほどニコチン依存度が高い人が増えるとの報告があります。20年後30年後に、禁煙できるかどうかや、がんなどになっているかもしれないと想像して、喫煙を始めるかどうかを決めるのは難しいですよね。18歳で選挙権があるからといって、たばこを吸うか吸わないかの自由もあるだろうというのはナンセンスです。

厚労省によると、喫煙の開始時期を“青少年期”と“成人後”で比べると、青少年期に始めた方が虚血性心疾患やがんなどの危険性が高くなるデータもあります。肺がんでは、20歳未満で喫煙を開始した場合の死亡率は、非喫煙者に比べて5.5倍となっています。

 アルコール依存症に関しても、青年期の飲酒が深く関わっています。同省には、「15歳以下から」と「21歳以上から」で、お酒を飲み始めた場合を比べると、アルコール依存症になる確率が3倍以上に上がるという調査や、未成年のうちから飲酒しているとアルコール依存症のリスクが高まることが報告されています。科学的な根拠として、早期の飲酒喫煙の開始の危険性が認められているのです。

「そのほか現実的に問題があると思われるのは、学校教育の場面ではないでしょうか。校則では禁止されている一方、法律では許可されるというねじれた状況は、教師が困ることになるのは想像できます。生徒は3年生の途中から順番に18歳に達していくので、一律に喫煙を禁止する指導ができません。法律で喫煙が認められていても、校則で喫煙禁止を規定することはできますが、現実問題として生徒にどうして駄目なのかを問われた場合に、『校則だから』としか言えず説得力に欠けます。教育現場の混乱を招くでしょう」(片山弁護士)

片山弁護士は、そもそも立法の趣旨が公職選挙法や民法の成人年齢とは違うとも指摘します。

「法律の立法趣旨からも賛成できません。未成年者喫煙禁止法や未成年者飲酒禁止法の第1条は、『満20年に至らざる者は…』と規定されており、『“成年”に至らざるもの』としていません。選挙権や成年の年齢引き下げと、飲酒喫煙の年齢を引き下げる話はその立法趣旨が異なるので一緒に検討すべきものではないのです。『早いうちから政治に関心を持つ』という趣旨での引き下げはわかるが、『若者の健康を守る』という趣旨からすると、こちらはスライドする必要はなく、むしろ引き上げたっていいとも思います」」

「片山弁護士は「事実、今規定されている法律がすべて正しいわけではありません」と指摘し、現在の世界各国の基準に合わせるべきではないとしています。飲酒喫煙に関する世界の潮流の変化や健康被害に関するデータも揃ってきましたので、解禁年齢の引き下げは慎重に進める必要があるでしょう。(ライター・重野真)」


年齢引き下げ論は,選挙権とのバランス,18歳から喫煙飲酒を許している国もある,というだけの理由にすぎません.片山律先生が指摘するとおり,健康被害が科学的に明らかになっていること,海外でもニューヨークなど年齢引き上げの動きがあることを考えると,年齢引き下げ論は暴論というべきでしょう.
とくに喫煙については,生年による規制を考えるべきでしょう.例えば,2000年1月1月以降に生まれた者は喫煙してはならない,2000年1月1月以降に生まれた者が喫煙したときは50万円以下の罰金に処する,という法律を2020年1月1日から施行すれば,いずれタバコを吸う人はいなくなるでしょう.


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by medical-law | 2015-10-26 18:39 | タバコ

鶴図下絵和歌巻

京都国立博物館の『鶴図下絵和歌巻』(つるずしたえわかかん)は,琳派発祥の代表作品です.
俵屋宗達の絵と本阿弥光悦の筆は,奇跡のコラボです.
多数の鶴が,金泥と銀泥で豪華に,シンプルかつ多角的な視点で(飛ぶ鶴をさらに上からの視点から描くなど)描かれています.これを見るだけでも,十分に,俵屋宗達の福と富が感じられます.
群鶴は,山辺赤人の「若の浦に潮満ち来れば潟を無み葦辺を指して鶴鳴き渡る」の情景であり,玉津島の神に奉納する趣向です.
その群鶴の上に,本阿弥光悦は,柿本人丸の「ほのゞゝと明石の浦の朝霧に しまかくれ行ふねをしぞ思ふ」から中務の「秋かぜの吹につけても問ぬかな おぎの葉ならばおとはしてまし」まで,36歌仙の和歌を書いています.
書は,読めたほうがよいのでしょうが,文字のリズムを見るだけでも面白いです.
「秋のかたみ」が「秋の涙」になっていたり,、「わするゝ」を「なくさむ」に訂正していたり,誤記,脱字がいくつかあるようですが,気にするほどのことではありません.
target="_blank">京都国立博物館のサイトには拡大図がアップされています.


京都国立博物館平成知新館で,「琳派誕生400年記念 琳派 京(みやこ)を彩る」が平成27年10月10日~11月23日まで開かれています.
『鶴図下絵和歌巻』は,上記展覧会の全期間,全巻全長13.56メートルが公開されるとのことです.


 谷直樹


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by medical-law | 2015-10-26 01:17 | 趣味

さいたま地裁平成27年10月23日判決,呼吸器症状が現れた時点で抗リウマチ薬投与を中止すべき(報道)

埼玉新聞「治療中の夫死亡…さいたま地裁、病院側の過失認定 妻「再発防止を」」(2015年10月23日)は,次のとおり報じました.

「春日部市立病院でリウマチ治療中の夫=当時(75)=が死亡したのは、病院側の投薬判断が原因として、遺族が病院に約6253万円の損害賠償を求めた訴訟で、さいたま地裁(高野輝久裁判長)は22日、病院側の過失を一部認め約660万円の支払いを命じた。

 訴状などによると、夫はリウマチのため、2011年3月に同病院の整形外科に通院。5月10日から呼吸器内科で治療していたが、呼吸器症状が現れ肺炎を発症、9月6日に死亡した。裁判で原告側は、5月上旬から投与された抗リウマチ薬により、薬剤性の間質性肺炎を発症しており、病院は薬の投与を中断すべきだったと主張していた。

 判決で高野裁判長は、抗リウマチ薬の投与中に呼吸器症状が現れた際は、肺炎の確定診断の前に、投与を中止すべきとする診療ガイドラインなどを重視。病院側の「さまざまな症状や検査結果を踏まえて、投与中止の要否を判断すべき」という主張を退け、「病院側の義務違反がなければ、9月6日の時点でなお生存していた相当程度の可能性があると認められる」と判断した。

 判決に、妻(78)は「病院側の問題点を適切に判断してくれてありがたく思う。今後、このようなことが起こらぬよう、再発防止を図ってほしい」とコメントした。同病院の小谷昭夫病院事業管理者は「現時点では判決の内容を承知していないため、判決文が届き次第、対応を検討する」としている。」


本件は,私が担当したものではありませんので報道で知る範囲での判断ですが,判決が過失を認めた点は正しく,因果関係の認定を相当程度にとどめた点は疑問です.

◆ 過失について

メトトレキサート (MTX)については,「骨髄障害、間質性肺炎、感染症などの重篤な副作用については、危険因子の評価と予防対策を実施し、発生時には適切な対処をすみやかに行う。」(診療ガイドライン)とされています.男性関節リウマチ患者の新規のMTX肺炎の年間発症率は,0.67%と報告されています.
MTXによる間質性肺炎(MTX肺炎)は危険因子がない症例での発生も少なくないので,予防対策として,「患者にMTX 肺炎の初期症状を説明し、症状が急性あるいは亜急性に出現した場合のMTX の中止、医療機関への連絡、および可及的速やかな受診を指示しておく」(診療ガイドライン)とされています.
「① MTX を直ちに中止した後、専門医療機関に紹介し、MTX 肺炎、呼吸器感染症、RA に伴う肺病変を鑑別する。必要に応じ呼吸器専門医にコンサルトする。② MTX 肺炎が疑われた場合はMTX を中止後、直ちに副腎皮質ステロイド大量療法をおこなう。重症度に応じて副腎皮質ステロイドパルス療法を併用する。③ 必要に応じて、スルファメトキサゾール・トリメトプリム、抗菌薬などを併用する。状況に応じて、真菌性・ウイルス性肺炎に対する治療も開始する。④ 副腎皮質ステロイドにて加療中には、新規の肺感染症に留意する。
⑤ MTX の再投与は行わない。その後のRA 治療薬による薬剤性肺炎の発現にも十分留意する。」(診療ガイドライン)とされています.
診療ガイドラインにそった診療が行われるべきであり,当該事例について上記診療ガイドラインにそった診療を行わないことについての臨床医学的合理性が認められない場合には,中止義務違反となるでしょう.
したがって,判決が過失を認めた点は正しいと考えます.

◆ 因果関係について

仮に診療ガイドラインにそった適切な診療を行ってもMTX 肺炎による死亡が回避できる高度の蓋然性がないとすれば,MTXは安全な使用法が存在しない薬剤ということになり,承認が違法ということになるでしょうが,MTX が承認されているということは,診療ガイドラインにそった適切な診療を行っていれば,MTX 肺炎による死亡が回避できる確率が高いことを意味します.
つまり,本件について,MTX 肺炎の初期症状が現れた時点でMTXの投薬を中止し診療ガイドラインにそった適切な診療を行っていれば,MTX 肺炎による死亡は回避できたと考えるべきでしょう.したがって,判決が相当程度の可能性にとどめた点は疑問です.


  谷直樹


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by medical-law | 2015-10-24 08:47 | 医療事故・医療裁判