弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

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日本の犯罪率が低いのは日本の解剖率が低いためである可能性

AFP「司法解剖率低い日本、犯罪死見逃す要因か」(2016年2月23日)は、次のとおり報じました.

「警察庁の統計によれば、2014年に死因不明の「異状死」のうち、解剖に回されたのは、わずか11.7%だった。」

「「解剖率が低ければ、犯罪発見ができない可能性は高くなります」と、千葉大学(Chiba University)法医学教室の岩瀬博太郎(Hirotaro Iwase)教授は言う。

 政府は解剖率を2016年までに20%に引き上げる目標を掲げるが、現実にはその半分程度にとどまっている。岩瀬教授は、その原因が法医学の専門家の人材不足と、司法解剖の大半が行われる国立大学の予算削減にあると指摘する。」

「警察によると、日本では2015年、殺人は未遂も含め933件発生し、その数は2004年から減少傾向にあるという。だが解剖率の低さが、本当の数字を隠している可能性があると、専門家たちは語る。

「犯罪死でないと考えられた場合でも、死因が明らかでない場合に解剖して死因を究明する制度があれば、一定の確率で見逃しは減るものと考える」と、福岡大学(Fukuoka University)法医学教室の久保真一(Shinichi Kubo)教授は語る。

 常磐大学(Tokiwa University)大学院の諸澤英道(Hidemichi Morosawa)教授は、推測の範囲としながら、問題の一端は大きな負担が強いられるために、警察が殺人事件にしたくないことにあるのではと見方を示し、犯罪を特定する機会を増やすためにも、警察は「できるだけ解剖するというのが基本原則だと思う」と述べた。」

「警察は今年の4月から全ての遺体について薬毒物が使われていないか検査する方針を固めた。」



青酸カリによる連続殺人が疑われた事件で死亡した交際相手の男性8人中6人が解剖されていなかったことは、日本の解剖率の低さを示唆します.
異状死の発見と解剖が諸外国並みに実施されるようになれば、日本の低い犯罪率は修正される可能性があるのではないでしょうか.



 谷直樹


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by medical-law | 2016-02-29 02:12 | 司法

仙台高判平成28年2月26日、山形県立河北病院の投薬再開義務違反を認め遺族の逆転勝訴(報道)

共同通信「投薬再開が遅れ死亡と認定 二審で逆転、山形県に賠償命令」(2016年2月26日)は、次のとおり報じました.

山形県立河北病院(河北町)で血液の病気の治療を受けていた女性=当時(51)=が死亡したのは、投薬治療が不適切だったためだとして、遺族3人が県に計約4700万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、仙台高裁は26日、請求を退けた一審山形地裁判決を変更し、計2365万円の賠償を県に命じた。

 病院は2002年12月に症状が改善したとして、治療に有効な薬の投与をやめた。小野洋一裁判長は判決理由で「03年2月時点で、検査結果から病気の再発は明らかで、投薬を再開する義務があったのに怠った」と指摘し、病院側の過失を認定した。」


これは、私が担当した裁判ではありませんので詳細は分かりませんが、検査結果が残っていると血液疾患の治療義務違反を認定しやすい、といえます。
なお、一般に、地裁の裁判官がしっかり審理し判断していれば、高裁で逆転することは少ないです.

【追記】

河北新報「<投薬中死亡訴訟>遺族勝利 山形県に賠償命令」(2016年2月27日)は、次のとおり報じました.

「山形県立河北病院(山形県河北町)に通院していた同県村山地方の女性会社員=当時(51)=が死亡したのは、病院が適切な投薬治療を怠ったためだとして、遺族が県に約4720万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、仙台高裁は26日、遺族の請求を棄却した山形地裁判決を変更し、県に約2360万円の支払いを命じた。
 小野洋一裁判長は「血液検査の結果は異常な数値を示していた。病院が適切に投薬治療を再開していれば生存していた可能性が高く、病院の過失は明らかだ」と述べた。
 遺族側は判決後、仙台市内で記者会見し、夫は「今回の判決を再発防止につなげ、一人でも多くの患者の命を救ってほしい」と語った。県立病院課は「判決を精査し、対応を検討したい」と話した。
 判決によると、女性は1994年、病院で赤血球などが減少する「再生不良性貧血」と診断された。投薬治療により快方に向かい、02年12月に投薬は中止されたが、約2カ月後に再発。03年10月に肺炎で死亡した。
 地裁は14年12月の判決で「投薬を再開すると、血流が阻害されるなど致命的な副作用が生じる恐れがあった」と判断し、遺族が控訴していた。」


【再追記】

毎日新聞「河北病院訴訟 賠償命令に不服 敗訴の県が上告」(2016年3月11日)によると,山形県は10日、病院の過失を認めて県に賠償を命じた仙台高裁判決を不服として、最高裁に上告したとのことです.

明らかに無理な上告,上告受理申立はすべきではないと思います.

【再々追記】
              
毎日新聞「河北病院女性死亡訴訟 県の敗訴確定 上告不受理」(2016年7月15日)は次のとおり報じました.

 「県立河北病院(河北町)で血液の病気の治療を受け2003年に死亡した女性=当時(51)=の遺族が県に損害賠償を求めた訴訟で、最高裁第3小法廷(木内道祥裁判長)は14日までに、県の上告を受理しない決定をした。12日付。病院のミスを認め県に約2300万円の支払いを命じた2審判決が確定した。

 確定判決によると、女性は難病の再生不良性貧血で投薬治療を受けていた。病院は検査数値が改善したとして02年12月に一部の薬の投与をやめたところ、症状が再発。03年4月に投与を再開したが、同10月に合併症の肺炎で死亡した。1審山形地裁判決は請求を棄却。2審仙台高裁は、病院が03年2月の検査で再発を見落とし、その時点で投薬を再開しなかったため死亡したと判断、遺族逆転勝訴の判決を言い渡した。」


最高裁の判断は正しいと思います.


谷直樹


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by medical-law | 2016-02-27 00:04 | 医療事故・医療裁判

エシックによる患者日誌改ざんに続き、イーピーミントも血圧測定時刻を改ざん

薬事日報によると、「担当CRCは血圧を測定し、その後採血すると治験実施計画書に規定された業務を、採血後に血圧を測定する逆の手順で行ってしまった。さらに、CRCは血圧測定を手順通り採血前に実施したことにするため、実際には測定していない事実と違う時刻をワークシートに記載し続けていた。こうした不正行為は、2013年12月に治験が開始された当初から行われており、CRCは最初から手順を間違え、それを隠すために血圧測定時刻を改ざんした模様だ。この治験は不正を行ったCRCが1人で担当していたことから、事件の発覚が遅れ、昨年12月にサブ担当の別のCRCがつき、被験者対応を行った時にようやく表面化した。」とのことです.

このように、エシックによる患者日誌改ざんに続き、イーピーミントも血圧測定時刻を改ざんしていたことが報道されました.
SMOの不正が相次いで発覚しています.
治験の信頼性を揺るがしかねない事態です.


谷直樹



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by medical-law | 2016-02-26 01:19 | コンプライアンス

奈良地判平成28年2月25日、記録の読み違いで胃癌を告知されずに死亡した事案で病院に賠償命令(報道)

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産経新聞「胃がん告知ミスで病院側に約6200万円賠償命令 奈良地裁」(2016年2月25日)は、次のとおり報じました.

「がんの告知ミスで早期治療の機会を奪われ死亡したとして、奈良県橿原市の男性=当時(53)=の遺族らが社会医療法人健生会「土庫病院」(同県大和高田市)などに約1億4千万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が25日、奈良地裁であり、木太伸広裁判長は治療費など計約6200万円の支払いを命じた。

 木太裁判長は判決理由で、「ミスがなく適切な治療を受ければ、男性は67歳ごろまで延命できた」と病院側の過失を認めたが、男性が受けた先進治療については「有効性は医学的に裏付けられておらず、必要性は認められない」とし、先進医療の治療費などの請求は退けた。

 判決によると男性は平成22年9月、土庫病院での検査で胃がんが判明したが、副院長は胃潰瘍と告知。23年9月に同病院で人間ドックを受けた際に告知ミスが判明し、先進治療も受けたが24年7月に死亡した。」


毎日新聞「<がん告知ミス>「適切なら延命できた」奈良地裁が賠償命令」(2016年2月25日)は、次のとおり報じました.

「10年2月に他の病院で胃潰瘍と診断され、同9月に土庫病院を受診。検査で胃がんと判明したが、医師が2月の検査結果を見て誤って胃潰瘍と告げた。11年9月に告知ミスが判明したが、既に末期がんで12年7月に亡くなった。」

これは、私が担当した裁判ではありません.
せっかく検査で癌を見つけることができたのに、残念なことです.
癌の診断・治療の遅れは、医療法律相談のなかでも少なくない類型です.
こおn類型は、過失が明らかなので裁判前に解決することが多く、判決になるのは少ないです.
その意味で、貴重な判決です.


谷直樹


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by medical-law | 2016-02-25 23:49 | 医療事故・医療裁判

「医師法第21条の規定の見直しに関する日医の見解について」

日本医師会は,2016年2月24日,日本医師会医事法関係検討委員会の「医師法第21条の規定の見直しに関する日医の見解について」(平成28年2月)を公表しました

日本医師会医事法関係検討委員会の提唱する改正案は,以下のとおりです.

「【医師法】
○医師法第21条
「医師は、死体又は妊娠四月以上の死産児を検案して犯罪と関係ある異状があると認めたときは、二十四時間以内に所轄警察署に届け出なければならない。」
(参照)現行条文:医師は、死体又は妊娠四月以上の死産児を検案して異状があると認めたときは、二十四時間以内に所轄警察署に届け出なければならない。
○ 同第33条の2(罰則)から第21条違反を削除

【保健師助産師看護師法】
○ 保健師助産師看護師法第41条
「助産師は、妊娠四月以上の死産児を検案して犯罪と関係ある異状があると認めたときは、二十四時間以内に所轄警察署にその旨を届け出なければならない。」
(参照)現行条文:助産師は、妊娠四月以上の死産児を検案して異常があると認めたときは、二十四時間以内に所轄警察署にその旨を届け出なければならない。
○ 同第45条(罰則)から第41条違反を削除」



業務上過失致死罪ももちろん「犯罪」ですから,例えば薬の取り違えによる患者の死亡が疑われるとき,外科手術の過誤による死亡が疑われるときなどは,検案して業務上過失致死罪と関係ある異状があると認めたときにあたり,届出義務があることになります.
日本医師会医事法関係検討委員会は,医師法第21条の立法目的が犯罪捜査の端緒を警察に提供するという公益上の要請から医師に課されたものであることを認めつつ,たとえ犯罪の端緒を提供するだけの届出でもそれを契機に刑事訴追に発展する可能性のある場合には届出を拒否できる権利があるべきとする考えから,罰金刑を背景とする義務ではなくて倫理上の義務に止めるべきと主張しています.

さらに,「当委員会は、この機会に政府に対して、次の段階として、死亡診断、死体検案の概念の整理を含めた医師法全体の見直し作業およびさらには、生命・身体傷害を伴う医療事故全てに業務上過失致死罪を適用することの相当性(例えば過失の程度が重くない事案を親告罪とする工夫なども含めて)につき、時代にあった法律改正作業を一刻も早く開始することを強く希求するものである。」と結んでいます.

(1)届出義務のある範囲を明確化することと(2)届出義務違反が処罰されないようにすることは,別個のことです.
異状死として届出がなく,問題のある外科手術が繰り返され,多くの患者が亡くなった事案についてどのように考えるのでしょうか.
日本医師会医事法関係検討委員会の提唱する上記改正案は,医師の支持は得られても,国民の共感・支持を得るのは難しい内容となっているのではないでしょうか.


谷直樹


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by medical-law | 2016-02-25 01:02 | 医療事故・医療裁判

一宮市民病院,嘔吐が始まった朝以降に血液検査を行わなかった過失を認め和解,説明義務違反で示談(報道)

中京テレビ「医療過誤で計5100万円賠償 一宮市」(2016年2月23日)は,次のとおり報じました.
 
「愛知県一宮市の市民病院で医療過誤があったとして、一宮市は計5100万円の賠償金を患者の遺族に支払うことで合意したと発表した。

一宮市によると、一宮市民病院では2010年4月、当時10歳の男の子に対し急性虫垂炎の緊急手術を行った。手術は成功したが、その後に容体が急変し死亡した。担当医師が血液検査を行わなかったなど、判断にミスがあったとして、遺族側に5000万円の賠償金を支払うことで和解したという。

また、3年前の2月には、当時40歳だった末期腎不全の女性に対し、透析のカテーテルを足から首に付け替える処置を行ったが、処置中に意識がなくなり、その後、死亡した。カテーテルを付け替える処置の同意を患者に文書で求めておらず、100万円を支払うことで遺族と合意したという。」



共同通信「10歳男児の医療過誤死亡で5000万円和解」(2016年2月23日)は,次のとおり報じました.
 
「愛知県一宮市が運営する一宮市民病院で2010年、県内在住の男児=当時(10)=が急性虫垂炎の手術後に死亡したことについて、市は23日までに医療過誤を認め、両親に5千万円を支払うことで和解した。

 病院によると、男児は10年4月22日、虫垂を切除する緊急手術を受け成功した。しかし手術中に原因不明の大量の腹水が見つかり、24日朝から嘔吐(おうと)するようになり、25日に死亡した。

 12年、早期に血液検査をして適切な処置を取らなかったとして、両親が市に約7千万円の損害賠償を求め名古屋地裁に提訴。

 和解に向けた協議の結果、市は、嘔吐が始まった24日朝以降に血液検査をせずに輸血をした過失を認めた。」


上記報道の件はいずれも私が担当したものではありません.
 
100万円の示談は,説明義務違反によるものです.結果と関係しない説明義務違反は100万円前後のことが多いですが,多くの場合,示談で解決し,裁判になることはほとんどありません.

5000万円の和解のほうは,この金額から,病院側が過失と因果関係を認めたものと考えられます.
炎症に伴う腹水,小腸の出血,嘔吐,バイタルの変化があれば,普通,少なくとも血液検査は行うでしょう.ですから,それを行わなかった過失は明らかです.
ただ,過失と結果との因果関係が争われると,血液検査を行った場合にどのような結果だったかを原告が立証することは血液検査を実施していないので難しく,したがって血液検査により原因が判明し,治療して治癒したという立証が難しく,因果関係立証が高度の蓋然性に足りないとして少額の賠償金しか認められないこともあり得ますが,被告の過失が大きいがゆえに原告の立証ができずそのために原告に不利な結果になるとすれば明らかに不合理・不正義ですので,このような和解解決が適切です.



谷直樹


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by medical-law | 2016-02-23 19:56 | 医療事故・医療裁判

田主丸中央病院で局所麻酔薬専用冷蔵庫に一時保管していたインスリンを局所麻酔薬と誤認し投与

 田主丸中央病院のサイトに,医療事故発生のお詫びが掲載されました.

  西日本新聞「久留米市の病院、麻酔と誤りインスリン 30代女性救急搬送 糖尿治療の数十倍」(2016年2月22日)は,次のとおり報じました. 

「福岡県久留米市の田主丸中央病院で昨年末、非常勤の医師が糖尿病ではない30代の女性患者に、麻酔薬と誤ってインスリン2ミリリットルを投与していたことが分かった。短時間に糖尿病患者が通常投与する10~50倍を投与しており、病院側は「命に関わる」として大学病院に救急搬送。命に別条はなかったが、病院側はミスを認めて謝罪した。

 病院や関係者によると、女性は昨年12月に皮膚科を受診。医師は局所麻酔薬と誤ってインスリン1ミリリットルを注射した。数分たっても効かないため、再び同量を注射。それでも効果がなく、ようやく容器を確認して気付いたという。

 インスリンは血糖値を下げる効果があり、同病院や製薬会社は「健康な人に多量に投与すると、低血糖症に陥って命を落とす恐れもある」としている。女性も投与直後、強い寒けに襲われて座っていられなくなり、久留米大病院に救急搬送。6日間、入院した。

 病院によると、局所麻酔薬の専用冷蔵庫に使いかけのインスリンを保管していた▽看護師が麻酔薬と思い込んで取り出した▽医師は看護師が手に持った容器から薬品を注射器に吸い入れた際、互いに薬品名を確認する基本動作を怠った-などミスが重なったという。

 女性は「手足にだるさが残った」と話しており、病院側は謝罪。田主丸中央病院の鬼塚一郎院長は取材に対し「大変申し訳なかった。再発防止を徹底する」、非常勤医師を派遣した久留米大医学部皮膚科学講座は「非常に危険な行為。二度とミスを犯さないよう指導していく」としている。」


 局所麻酔薬専用の冷蔵庫に局所麻酔薬以外のものを(一時)保管したのが間違いでしょう.


谷直樹


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by medical-law | 2016-02-22 21:43

救急功労者表彰(総務大臣表彰)を受けはった院長の病院の手術室が物干し場としても使われていた!

京都新聞「手術室は物干し、名ばかり救急外科 京都市から補助金」(2016年2月20日)は,次のとおり報じました.

「外科を標ぼうし、入院治療を担う二次救急医療の輪番制に加わっている京都市下京区の京都四条病院が、手術室を衣服干しなど別用途に使い、手術のできない状態が続いていたことが19日、病院への取材で分かった。輪番制に加わる病院に補助金を支出する市は「別の用途の使用は不適切。事実であれば行政指導の対象となる」とし、近く病院に事実確認する方針。病院は「認識がまずかったのかもしれないが、手術が必要な救急患者は引き受けていなかった」としている。

 二次救急医療を統括する京都府や市による施設の運用状況などのチェックが十分ではなく、地域の救急医療体制のあり方が問われそうだ。

 同病院によると、過去には全身麻酔下の手術をしていたが常勤麻酔科医が退職し、段階的にしなくなった。「手術室」と表示する部屋はあるが、衣服を干したり入院患者の着替え場所に使ったりしていたという。

 同病院の説明では、少なくとも20年以上前から京都市と乙訓地域の病院でつくる輪番制に加わっている。同病院は2012~14年度に年間22~26日の当番日があった。市は計276万4千円を交付してきたが、「病院の善意を信じる」(医務衛生課)として、手術室の確認はしてこなかった。

 ××××院長(58)は「手術室の不適切な利用があったのは事実。取材を受けて消毒し、現在は手術できる体制になっている」と話している。

 京都四条病院は1962年に設立。60床で、外科や脳神経外科など8科を標ぼうする。医療法の施行規則によると、外科や脳神経外科の標ぼうには手術室を備える必要がある。

 <輪番制病院>救急医療を実施できる病院同士が輪番制で当番を分担し、休日や夜間に重症の救急患者を受け入れる仕組み。当番日は病床や医師数を確保していなければならない。京都府内では「京都・乙訓医療圏」と「山城北医療圏」で輪番制を組んでいる。」



京都新聞「手術室の目的外使用「4~5年」 京都四条病院、輪番制脱退へ」(2016年2月20日)は,次のとおり報じました.

「二次救急医療の輪番制に加わる京都四条病院が、手術室を衣服干しなどに使って手術できない状態を続けていた問題で、××××院長(58)が20日、京都市下京区の同病院で記者会見し、「不適切な行為だった」として輪番制から外れる方針を示した。手術室の別用途利用は少なくとも4~5年前には行われていたことも明らかにした。

 ××院長によると、週1~2回は洗濯物を干し、週2~4回は患者の着替えに使っていた。別用途に使っていた時期でも、部屋を消毒後、月1~2回程度、局所麻酔下で、できものなどの切除を実施していたという。「手術室以外でできる内容だが、衛生面などで手術室が適すると判断した」と説明した。別用途利用のきっかけとなった常勤麻酔科医の退職は約15年前という。

 手術室については「取材を受け、半日かけて改善した」と強調。しかし医師確保の点で、全身麻酔下での手術ができる見込みは立っていないという。

 会見では「大変反省している」としながらも、「対応できる救急患者は受け入れており、京都の救急医療の一端を担ってきた」と訴え、謝罪はしなかった。輪番制病院として交付を受けていた補助金については「市民感情として受け入れられないのであれば、返すことも検討する」と話した。」


外科医の院長(副理事長)は,京都府推薦で,長年にわたる京都府の救急医療体制拡充への貢献に対し,平成27年度総務省の救急功労者表彰(総務大臣表彰)を受けました.ちなみに,理事長は脳神経外科医です.
この病院は,内科・消化器内科・消化器外科・外科・整形外科・脳神経外科・神経内科・麻酔科を標榜し,手術以外の患者には2次救急の輪番制病院として,対応してきたそうです.

洗濯物の干し場になっていても,「手術室」という名前の部屋があることは,嘘ではなかったのですが,釈然としません.
医療法施行規則20条2号は,「手術室は、診療科名中に外科、整形外科、形成外科、美容外科、脳神経外科、呼吸器外科、心臓血管外科、小児外科、皮膚科、泌尿器科、産婦人科、産科、婦人科、眼科及び耳鼻いんこう科の一を有する病院又は歯科医業についての診療科名のみを診療科名とする病院においてはこれを有しなければならない。」と定めています.
同3号は「手術室は、なるべく準備室を附設しじんあいの入らないようにし、その内壁全部を不浸透質のもので覆い、適当な暖房及び照明の設備を有し、清潔な手洗いの設備を附属して有しなければならない。」としています.
規則には,手術室を洗濯物の干し場にしてはならないと書いてはいませんが,規則の趣旨からすると,手術室を洗濯物の干し場として別途利用するのは,(消毒するとはいえ)不適切と考えられます.

脳神経外科医である理事長,外科医である副理事長は,手術室を洗濯物の干し場として別途利用することについてどのように考えていたのでしょうか.

また,常勤麻酔科医の退職後,体制を充実して,名実ともに2次救急医療の一角を担うという前向きの方向にすすむことはできなかったのでしょうか.


谷直樹


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by medical-law | 2016-02-21 11:23 | 医療

黒は美しい

マルコムX氏は,Black is beautiful と言いました.

日本では,ブラック企業,ブラックリストなどブラックを悪い意味で使う人たちがいます.
もうそろそろ,「ホワイトが善で,ブラックが悪」という刷り込みから解放されませんか.

1965年2月21日は,スピーチ中のマルコムX氏が15発の銃弾を受け亡くなくなった日です.
映画『マルコムX』をお奨めします.

Truth is on the side of the oppressed.(真実は、虐げられる側にある)
これも,マルコムX氏の言葉です.


谷直樹


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by medical-law | 2016-02-21 03:21 | 人権

訃報,元最高裁判事田原睦夫氏

元最高裁判事・弁護士の田原睦夫氏が19日食道がんのため京都市内の病院で死去されたとのことです.
謹んでご冥福をお祈りいたします.

最高裁平成23年6月14日判決の,以下の反対意見が印象的でした.

「裁判官田原睦夫の反対意見は,次のとおりである。

私は,多数意見が本件上告のうち,東京都人事委員会がした裁決の取消請求に関する部分を却下するとの点については異論はない。しかし,多数意見が,本件各職務命令は上告人らの思想及び良心の自由についての間接的な制約となる面はあるものの,職務命令の目的及び内容並びにその制約の態様等を総合的に較量すれば,その制約を許容し得る程度の必要性及び合理性が認められるとして,本件各職務命令は,上告人らの思想及び良心の自由を侵すものとして憲法19条に違反するとはいえないと解するのが相当であるとして,上告人らのその余の上告を棄却するとする点については,以下に述べるとおり,賛成し難く,本件は更に審理を尽くさせるべく,原審に差し戻すのが相当であると考える。

第1 本件各職務命令と憲法19条との関係について

1 本件各職務命令の内容

上告人らに対して各学校長からなされた本件各職務命令の内容は,入学式又は卒業式における国歌斉唱の際に「起立して斉唱すること」というものである(多数意見は,本件各職務命令の内容を「起立斉唱行為」を命ずる旨の職務命令として,起立行為と斉唱行為とを一括りにしているが,私は,次項以下に述べるとおり,本件各職務命令と憲法19条との関係を検討するに当たっては,「起立行為」と「斉唱行為」とを分けてそれぞれにつき検討すべきものと考えるので,多数意見のように本件各職務命令の内容を「起立斉唱行為」として一括りにして論ずるのは相当ではないと考える。)。なお,多数意見にても指摘されているとおり,本件町田市通達には「教職員は式典会場の指定された席で国旗に向かって起立し国歌を斉唱すること」も含まれていたが,X1に対する職務命令には,「国旗に向かって」の部分は含まれていない。
この「起立して斉唱すること」という本件各職務命令の内容をなす「起立行為」と「斉唱行為」とは,社会的事実としてはそれぞれ別個の行為であるが,原判決の認定した事実関係によれば,本件各職務命令は,それら二つの行為を一体として命じているように見える。
しかし,上記のとおり起立行為と斉唱行為とは別個の行為であって,国歌斉唱時に「起立すること」(以下「起立命令」という。)と「斉唱すること」(以下「斉唱命令」という。)の二つの職務命令が同時に発令されたものであると解することもできる。
そして,本件各職務命令に違反する行為としては,①起立も斉唱もしない行為,②起立はするが斉唱しない行為(これには,口を開けて唱っている恰好はするが,実際には唱わない行為も含まれる。),③起立はしないが斉唱する行為,がそれぞれあり得るところ,本件の各懲戒処分(以下「本件各懲戒処分」という。)では,上告人らが本件各職務命令に反して国歌斉唱時に起立しなかった点のみが処分理由として取り上げられ,上告人らが国歌を斉唱したか否かという点は,記録によっても,本件各懲戒処分手続の過程において,事実認定もなされていないのである。
そこで以下では,本件各職務命令を「起立命令」部分と「斉唱命令」部分とに分けて,その憲法19条との関係について検討するとともに,本件各職務命令における両命令の関係について見てみることとする。

2 起立命令について

私は,多数意見が述べるとおり,公立中学校における儀式的行事である卒業式等の式典における,国歌斉唱の際の教職員等の起立行為は,一般的,客観的に見て,これらの式典における慣例上の儀礼的な所作としての性質を有するものというべきであって,上告人らの主張する歴史観ないし世界観を否定することと不可分に結び付くものではなく,したがって,上告人らに対して,学校の卒業式等の式典における国歌斉唱の際に起立を求めることを内容とする職務命令を発することは,直ちに上告人らの歴史観ないし世界観を否定するものではないと考える。
また,「起立命令」に限っていえば,多数意見が述べるとおり,上告人らの思想及び良心の自由についての間接的な制約となる面はあるものの,職務命令の目的及び内容並びにその制約の態様等を総合的に較量すれば,なお,若干の疑念は存するものの,その制約を許容し得る程度の必要性及び合理性を有することを肯認できると考える。
しかし,後に検討する本件各職務命令における起立命令と斉唱命令との関係からすれば,本件各職務命令の内容をなす起立命令の点のみを捉えて,その憲法19条との関係を論議することは相当ではなく,本件各職務命令の他の内容をなす斉唱命令との関係を踏まえて論ずべきものと考える。

3 斉唱命令について

(1) 斉唱命令と内心の核心的部分に対する侵害

国歌斉唱は,今日,各種の公的式典の際に広く行われており,かかる式典の参加者が国歌斉唱をなすこと自体が,斉唱者の思想,信条の告白という意義まで有するものでないことは,前項で述べた起立の場合と同様である。また,多数意見が指摘するように,本件各職務命令当時,公立中学校の卒業式等の式典において国歌斉唱が広く行われていたことが認められる。
しかし,「斉唱」は,斉唱者が積極的に声を出して「唱う」ものであるから,国歌に対して否定的な歴史観や世界観を有する者にとっては,その歴史観,世界観と真っ向から対立する行為をなすことに他ならず,同人らにとっては,各種の公的式典への参加に伴う儀礼的行為と評価することができないものであるといわざるを得ない。
また,音楽専科以外の教諭である上告人らにおいて,学校の卒業式等の式典における国歌斉唱時に「斉唱」することは,その職務上当然に期待されている行為であると解することもできないものである。なお,多数意見の指摘するとおり,学習指導要領では,「入学式や卒業式などにおいては,その意義を踏まえ,国旗を掲揚するとともに,国歌を斉唱するよう指導するものとする」と定めているが,その故をもって,音楽専科以外の教諭である上告人らにおいて,入学式や卒業式における国歌斉唱時に,自ら国歌を「唱う」こと迄が職務上求められているということはできない。
以上の点よりすれば,国歌に対して否定的な歴史観や世界観を有する者に対し,
国歌を「唱う」ことを職務命令をもって強制することは,それらの者の思想,信条に係る内心の核心的部分を侵害するものであると評価され得るということができる。

(2) 斉唱命令と内心の核心的部分の外縁との関係

憲法19条が保障する思想及び良心の自由には,内心の核心的部分を形成する思想や信条に反する行為を強制されない自由が含まれることは当然である。
また,それには,自らの思想,信条に反する行為を他者に求めることを強制されない自由も含まれると解すべきものと思われる。そして,その延長として,第三者が他者に対して,その思想,信条に反する行為を強制的に求めることは許されるべきではなく,その求めている行為が自らの思想,信条と一致するか否かにかかわらず,その強制的行為に加担する行為(加担すると外部から捉えられる行為を含む。)はしないとする強い考え,あるいは信条を有することがあり得る。
上記のような強い考え,あるいは信条は,憲法19条が保障する思想,信条に係る内心の核心的部分そのものを形成するものではないが,その外縁を形成するものとして位置付けることができるのであり,かかる強い考え,あるいは信条を抱く者における,その確信の内容を含む,上記外縁におけるその位置付けの如何によっては,憲法19条の保障の範囲に含まれることもあり得るということができると考える(最高裁平成16年(行ツ)第328号同19年2月27日第三小法廷判決・民集61巻1号291頁(以下「ピアノ伴奏事件判決」という。)における藤田宙靖裁判官の反対意見参照)。
ところで本件では,「斉唱命令」と憲法19条との関係が問われているのであり,(1)で論じたとおり,「斉唱命令」は上告人らの内心の核心的部分を侵害するものと評価し得るものと考えるが,仮に,本件各職務命令の対象者が,国歌については価値中立的な見解を有していても,国歌の法的評価を巡り学説や世論が対立している下で(国旗及び国歌に関する法律の制定過程における国会での議論の際の関係大臣等の答弁等から明らかなとおり,同法は慣習であるものを法文化したものにすぎず,また,同法の制定によって,国旗国歌を強制するものではないとされている。),公的機関が一定の価値観を強制することは許されないとの信条を有している場合には,かかる信条も思想及び良心の自由の外縁を成すものとして憲法19条の保障の範囲に含まれ得ると考える。

4 本件各職務命令と起立命令,斉唱命令との関係

1に述べたとおり,本件各職務命令は,「起立命令」と「斉唱命令」の二つの職務命令が同時に発令され,本件各懲戒処分では,「斉唱命令」違反の点は一切問われていないことからして,そのうちの「起立命令」違反のみを捉えてなされたものと解し得る余地が一応存する。
しかし,原判決が認定する本件各職務命令が発令されるに至った経緯からする
と,本件各職務命令は「起立して斉唱すること」を不可分一体の行為と捉えて発せられたものであることがうかがわれ,また,上告人らもそのようなものとして捉えていたものと推認される。
そして,上告人らにとっては,2,3において検討したとおり,上告人らの思
想,信条に係る内心の核心的部分との関係においては,「起立命令」と「斉唱命令」とは明らかに異なった位置を占めると解されるところ,本件各職務命令が,上記のとおり「起立して斉唱すること」を不可分一体のものとして発せられたものであると上告人らが解しているときに,その命令を受けた上告人らとしては,「斉唱命令」に服することによる上告人らの信条に係る内心の核心的部分に対する侵害を回避すべく,その職務命令の一部を構成する起立を命ずる部分についても従わなかったと解し得る余地がある(本件では,上告人らが,国歌を「斉唱」する行為につき如何なる考えを抱いていたか,国歌斉唱の際の起立行為と斉唱行為との関係をどのように関係付けていたかについて,原審までに審理が尽くされていない。)。
また,仮に本件各職務命令が「起立命令」と「斉唱命令」の二つの職務命令を合体して発令されたものであり,二つの職務命令を別々に評価することが論理的に可能であるとしても,本件各職務命令が発令された経緯からして,上告人らが本件各職務命令が「起立して斉唱すること」を不可分一体のものとして命じたものと捉えたとしても無理からぬものがあり,本件上告人らとの関係において,本件各職務命令違反の有無の検討に当たって,本件各職務命令を「起立命令」と「斉唱命令」とに分けることは相当ではないといわなければならない。

5 小括

以上検討したとおり,本件各職務命令は,「起立して斉唱すること」を一体不可分のものとして発せられたものと解されるところ,上告人らの主張する歴史観ないし世界観に基づく信条との関係においては,本件各職務命令のうち「起立」を求める部分については,その職務命令の合理性を肯認することができるが,「斉唱」を求める部分については上告人らの信条に係る内心の核心的部分を侵害し,あるいは,内心の核心的部分に近接する外縁部分を侵害する可能性が存するものであるといわざるを得ない。
本件において,上告人らが本件各職務命令にかかわらず,入学式又は卒業式の国歌斉唱の際に起立しないという行為(不作為)を行った理由が,国歌斉唱行為により上告人らの信条に係る内心の核心的部分(あるいは,内心の核心的部分に近接する外縁部分)に対する侵害を回避する趣旨でなされたものであるとするならば,かかる行為(不作為)の,憲法19条により保障される思想及び良心の自由を守るための行為としての相当性の有無が問われることとなる。
しかし,原審までの審理においては,「起立命令」,「斉唱命令」と上告人らの
主張する信条との関係につきそれぞれを分けて検討することはなく,殊に「斉唱命令」と上告人らの信条との関係について殆ど審理されていないのであり,また,本件各職務命令と「起立命令」,「斉唱命令」との関係や,「斉唱命令」に従わないこと(不作為)と「起立命令」との関係,更には,上告人らの主張する信条に係る内心の核心的部分(あるいはその外縁部分)の侵害を回避するための行為として,上告人らとして如何なる行為(不作為)をなすことが許されるのかについての審理は,全くなされていないといわざるを得ない。(以下略)


また,誤嚥は,嚥下した物が食道にではなく気管に入ることをいうのであり,身体の外部からの作用を当然に伴っているのであって,その作用によるものというべきであるから,本件約款(傷害保険普通保険約款)にいう外来の事故に該当すると解することが相当である,とした最高裁平成25年4月16日判決は,保険実務に影響を与えました.


「3 原審は,本件保険契約における保険金の支払事由である外来の事故は,外部からの作用が直接の原因となって生じた事故をいい,薬物,アルコール,ウイルス,細菌等が外部から体内に摂取され,又は侵入し,これによって生じた身体の異変や不調によって生じた事故を含まないとした上,Aの窒息の原因となった気道反射の著しい低下は,体内に摂取したアルコールや服用していた上記薬物の影響による中枢神経の抑制及び知覚,運動機能等の低下によるものであるから,Aの窒息は外部からの作用が直接の原因となって生じたものとはいえないと判断して,上告人らの請求を棄却した。

4  しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。
本件約款は,保険金の支払事由を,被保険者が急激かつ偶然な外来の事故によってその身体に傷害を被ったことと定めている。ここにいう外来の事故とは,その文言上,被保険者の身体の外部からの作用による事故をいうものであると解される(最高裁平成19年(受)第95号同年7月6日第二小法廷判決・民集61巻5号1955頁参照)。
本件約款において,保険金の支払事由である事故は,これにより被保険者の身体に傷害を被ることのあるものとされているのであるから,本件においては,Aの窒息をもたらした吐物の誤嚥がこれに当たるというべきである。そして,誤嚥は,嚥下した物が食道にではなく気管に入ることをいうのであり,身体の外部からの作用を当然に伴っているのであって,その作用によるものというべきであるから,本件約款にいう外来の事故に該当すると解することが相当である。この理は,誤嚥による気道閉塞を生じさせた物がもともと被保険者の胃の内容物であった吐物であるとしても,同様である。
5 以上と異なり,Aの窒息は外来の事故による傷害に当たらないとした原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨はこの趣旨をいうものとして理由があり,原判決は破棄を免れない。そして,保険金支払の可否を判断すべく,更に審理を尽くさせるため,本件を原審に差し戻すこととする。
よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。なお,裁判官田原睦夫の補足意見がある。

裁判官田原睦夫の補足意見は,次のとおりである。
誤嚥は,通常経口摂取したものによって惹起されるところ,本件では,誤嚥の対象物が吐瀉物であったところから,原判決はその外来事故性に疑問を抱いたものと思われる。
しかし,誤嚥とは,一般的な医学用語辞典によれば,本来口腔から咽頭を通って食道に嚥下されるべき液体又は固体が,嚥下時に気管に入ることをいうものであって,誤嚥自体が外来の事故であり,誤嚥の対象物が口腔に達するに至った経緯の如何,即ち経口摂取か,吐瀉物(吐物,吐血を含む。)か,口腔内の原因(口腔内出血,破折歯片等)によるかは問わないものである。」


谷直樹


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by medical-law | 2016-02-19 23:45 | 司法