弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

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HPVワクチン薬害,63人4地裁で提訴(報道)

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NHK「子宮頸がんワクチンで副反応 国と製薬会社を提訴」(2016年7月27日)は,次のとおり報じました.

「子宮頸がんワクチンを接種したあと、原因不明の体の痛みなどを訴えた63人の患者が、安全性や有効性が十分に確認されていないのに、ワクチンの接種を勧めたのは違法だなどとして、国と製薬会社に治療費や慰謝料などを求める訴えを、27日に全国4つの裁判所に起こしました。

訴えを起こしたのは子宮頸がんワクチンを接種したあと、体の痛みや記憶力の低下などの副反応が出たと訴えている全国の15歳から22歳までの女性合わせて63人です。
訴えによりますと原告たちは、ワクチンの安全性が十分に確認されていないうえ、がんの発症を防ぐ効果が証明されていないのに、公費助成の対象にしたり定期接種にしたりして接種を勧めたのは違法だなどとして、国と製薬会社に対し、治療費や慰謝料など一人当たり1500万円以上の賠償を求めています。
弁護団によりますと27日は、東京や大阪、名古屋、それに福岡の合わせて4つの裁判所に訴えを起こしたということで、原告は、今後さらに増える見込みだということです。
子宮頸がんワクチンは、国内で7年前から接種が始まり、平成25年度からは定期接種に追加されましたが、接種後、体の痛みなどを訴える患者が相次ぎ、国が接種の積極的な呼びかけを3年以上も中止する異例の事態が続いています。

原告の一人で、埼玉県に住む酒井七海さん(21)は「今も外出には車いすが欠かせず、治療のため大学には半分以上通えない状況で、友達と出かけたりする学生らしい時間も過ごせずにいます。10代で取り残されていくようなつらさや、不安に苦しんだ時間は二度と戻ってきません。なぜ自分が被害を受けたのか、適切な医療を受けられなかったのかを知りたいです。今回の裁判で問題の背景が明らかになって、同じようなことが繰り返されないことを願っています」と話しています。
厚生労働省「支援を行うことが何より重要」

厚生労働省は「訴訟については現時点では報道されている内容以上のことは承知しておらず、コメントは差し控えたい」としたうえで「接種との因果関係は必ずしも明らかでないなか、長期に苦しんでいる方々がいることには非常に心を痛めており、寄り添いながら支援を行っていくことが何よりも重要と考えている」とコメントしています。
「主張に根拠はない」とコメントする製薬会社も

ワクチンを製造しているグラクソ・スミスクラインは「訴状を受け取っていないので裁判についてのコメントは差し控えます。症状によって苦しんでいる方々の、一日も早い回復をお祈りしています」などとするコメントを発表しました。

またMSDも「HPVワクチンは世界各国で承認を受けています。訴状を受け取りましたら、MSDは法廷で証拠を提出する考えです。原告の主張の内容に根拠はないと信じています」などとするコメントを発表しました。
日本産科婦人科学会「接種の呼びかけ再開すべき」

厚生労働省によりますと、子宮頸がんワクチンの接種を受けた人の割合は、定期接種化された平成25年は対象年齢の女性の15%に上りましたが、翌年は1%にまで下がり、その後も同じような状況が続いています。
ワクチン接種の積極的な呼びかけが3年以上にわたって中止されていることについて、日本産科婦人科学会の藤井知行理事長は「ワクチンを打たないことでヒトパピローマウイルスに感染し、先進国で日本のみ子宮頸がんの患者が減らない事態となることを懸念している。子宮頸がんの患者は今、30代がピークとなっていて、これから子育てを行う母親の世代に影響が出ることは非常に残念だと感じている」と話しています。
そのうえで「一連の症状とワクチンの成分との関係を科学的に肯定するデータは今のところない。学会としては症状の出た方に対応できる医療体制を継続して取っていくとともに、積極的な接種の呼びかけを再開すべきと考えていて、接種を呼びかけるポスターを配布するなど働きかけていきたい」と話しています。
中止から3年以上 なぜ接種の判断できないのか

国が積極的な接種の呼びかけを中止してからすでに3年以上がたっていますが、なぜ、こうした事態がずっと続いているのでしょうか。
背景には、ワクチンの副反応を把握したり分析して判断したりするための仕組みの問題があると専門家は指摘しています。

ワクチンの接種後に起きた症状がワクチンと関係があるかどうかを調べる重要な方法の1つは、接種したグループと接種していないグループで症状のある人の数を比べる調査です。

日本より3年早く子宮頸がんワクチンを承認したアメリカは、医療機関が持つ900万人分のカルテなどの情報からワクチンの接種歴や症状の有無についてデータを集め分析するシステムを持っています。何か危険があればすぐに把握できるよう、アメリカではこのシステムを使って接種後に特定の症状が増えていないか毎週分析しているのです。子宮頸がんワクチンについても接種したグループだけに特定の症状が問題になるレベルで増える現象は確認されていないとして、接種が継続されています。

一方、こうしたシステムを持たない日本では、医療機関にアンケートを行うなど時間のかかる調査を一から始める必要があり、今回については調査のための専門家のグループが去年設立されましたが、最終的な分析結果をいつ出せるのか、見通しは立っていません。

ワクチンの副反応の分析などに詳しい京都大学医学部の川上浩司教授は、「ワクチンを継続するかどうかを判断するためにはデータを解析しなければならないが、日本には医療現場から情報を収集する仕組みが整っていないため、判断できないのが今起きている問題だ」と指摘しています。そのうえで「判断できない状況が続くことは国民に不利益をもたらすため、日本でも一刻も早く医療現場からデータを集めて解析する仕組みを整えるべきだ。ワクチンを安心して使えるようにするには副作用に関する情報をしっかりと可視化していくことが重要だ」と話しています。
大規模な調査の結果 見通し立たず

子宮の入口にできる子宮頸がんは、主に「ヒトパピローマウイルス」と呼ばれるウイルスの感染が原因で起きるがんです。高齢者を中心に年間およそ3000人が亡くなっていて、若い女性の間でも増えているがんです。

子宮頸がんワクチンは、この「ヒトパピローマウイルス」の感染を防ぐ効果があるとして7年前、日本でも承認されました。3年前の平成25年4月には、小学6年生から高校1年生までの女子を対象に、国と自治体が費用を負担する「定期接種」に追加され、これまでに推計340万人が接種を受けています。

しかし、接種後に原因不明の体の痛みなどを訴える患者が相次ぎ、厚生労働省は、定期接種となった僅か2か月後に、「接種との因果関係が否定できない」として積極的な接種の呼びかけを中止。その後、厚生労働省の専門家会議は「ワクチンそのものが原因ではなく、接種の際の不安などの心理的な要因によって症状が出た可能性がある」とする見解をまとめましたが、詳しい原因は解明されておらず、全国で接種を見合わせる動きが広がりました。

また去年10月には症状が回復しないままの人が、若い女性を中心に少なくとも186人いることが分かり、接種との因果関係が否定できない患者については、医療費などの救済も始まっています。

厚生労働省は、現在、積極的な接種の呼びかけを再開するかどうか判断するため、ワクチンの接種を受けた人と受けていない人の間で、体の痛みなどの症状の出方に違いがあるのかを調べる大規模な調査を進めています。しかし最終的な分析結果を、いつ出せるのか見通しは立っておらず、ワクチン接種の積極的な呼びかけを3年以上中止する異例の事態が今も続いています。



HPVワクチン薬害訴訟全国弁護団は,7月27日,以下の「HPVワクチン(子宮頸がんワクチン)薬害訴訟提訴にあたっての声明」を発表しました.

「本日、HPVワクチン(子宮頸がんワクチン)の接種によって深刻な副反応被害を受けた63名の被害者が、国及び製薬会社(グラクソ・スミスクライン株式会社、MSD株式会社)に対して、損害賠償請求訴訟を東京、名古屋、大阪及び福岡の各地裁に提訴しました。

 この裁判の目的は、被告らの法的責任を明らかにすることによって、一日も早く被害者の健康を回復させ、将来にわたって安心して暮らせるようにすることであり、その真相を明らかにして、二度とこのような薬害が起こらないようにすることです。

 HPVワクチンは、子宮頸がんそのものを予防する効果は証明されていません。一方で、その接種による重篤な副反応(免疫系の異常による神経障害等)が多数報告されています。

 そもそも子宮頸がんは、原因ウイルスであるHPVに感染しても発症に至る確率は極めて低く、また、子宮頸がん検診によって、がんになる前の病変を発見し、負担の少ない治療で予防できる疾病です。にもかかわらず、有効性にも安全性にも問題のあるHPVワクチンの製造販売が承認されました。製薬会社は、接種推進を謳う専門家団体に巨額の寄付金を提供するなどして大々的なマーケティング活動を行い、承認から異例の短期間で公費助成、定期接種が実現しました。そして、公権力による接種勧奨によって300万人を超える中学生・高校生の女子に接種されたのです。

 副反応による被害はとても深刻です。多様な症状があり、それらが併発、重層化するため、身体的に多大な負担をもたらします。また、これらの症状は改善と悪化を繰り返す特徴があり、今後も発症の可能性があります。加えて、病院や学校などにおいて詐病であると言われるなど、無理解な対応によって苦しんでいる被害者も多数います。治療法も確立されておらず、将来に対する不安は計り知れません。多くの被害者の未来が奪われようとしています。

 私たちは、この裁判を通じて、被害者が接種前の健康を取り戻し、その未来が再び開かれるように裁判所そして社会に訴えかけます。そして、被告らに対し、その法的責任に基づく必要かつ十分な救済策を実施することを要求します。

 私たちの裁判に対する皆様の温かいご支援をお願い致します。 」


弁護団の連絡先は下記のとおりです.

HPVワクチン薬害訴訟全国弁護団・HPVワクチン薬害訴訟東京弁護団
連 絡 先: 〒102-0084東京都千代田区二番町12番地13セブネスビル3階樫の木総合法律事務所内 TEL:03-6268-9550

HPVワクチン薬害訴訟名古屋弁護団
連 絡 先: 〒460-0002名古屋市中区丸の内2丁目10番19号 市川ビル7階高岡・石塚法律事務所内 TEL:052-212-8006

HPVワクチン薬害訴訟大阪弁護団
連 絡 先: 〒530-0047大阪市北区西天満4丁目11番22号 阪神神明ビル9階902梅田新道法律事務所内 TEL: 06-6316-8824

HPVワクチン薬害訴訟九州弁護団
連 絡 先: 〒812-0011福岡市博多区博多駅前2丁目1番1号 福岡朝日ビル4階はかた法律事務所内 TEL:092-409-8333



 谷直樹


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by medical-law | 2016-07-29 09:26 | 医療事故・医療裁判

東京女子医大病院,16倍量の抗てんかん薬を投与し死亡した事案で法的非難を受ける理由はないと(報道)

毎日新聞「<東京女子医大病院>薬16倍投与、女性死亡…14年」(平成28年7月24日)は,次のとおり報じました.

「東京女子医科大病院(東京都新宿区)で2014年、脳腫瘍の女性が添付文書に書かれた量の16倍の抗てんかん薬を投与され、その後に重い副作用を起こし死亡していたことが分かった。病院の依頼で調査した第三者機関は、薬の投与を「標準的な医療と言えない」と指摘したが、病院側は「患者側の希望を考慮して決めた」と過失を否定。遺族は「副作用の説明は全くなかった」と反論している。

 ◇病院側は過失を否定

 同病院では、この約半年前にも原則禁止の鎮静剤投与で幼児が死亡する事故が起き、特定機能病院の承認取り消しにつながった。院内で医薬品の不適正使用が問題化していた中で、用法・用量を逸脱した処方が行われていたことになる。

 亡くなったのは、川崎市の長浜裕美さん(当時43歳)。14年7月に同病院で脳腫瘍の再発の疑いと診断され、手術のための入院前の8月、けいれん発作を起こして錠剤の抗てんかん薬「ラミクタール」(一般名ラモトリギン)を処方された。その結果、全身の皮膚に障害が起こる中毒性表皮壊死(えし)症(TEN)を発症し、投与開始約3週間後に肺出血などを併発して死亡した。

 ラミクタールの添付文書では、別の薬も飲んでいた今回のようなケースの投与量を「2週目まで25ミリグラムを1日おき」(1日当たり12.5ミリグラム)と定め、用法・用量を超えた投与は皮膚障害が出やすくなると注意している。しかし、医療関連死の調査モデル事業としてこの件を調べた「日本医療安全調査機構」の報告書によると、担当医は16倍に当たる1日200ミリグラムを連日投与。院外薬局から量が正しいのか照会があったが、見直さなかった。

 報告書はラミクタールによるTEN発症が死因とした上で、今回の処方を「最良の選択肢とは言い難く、あえて選択するなら必要性やリスクを本人や家族に十分に説明して同意を得るのが望ましい」と指摘した。

 病院側は「患者が手術前に趣味のサンバ大会への参加を望んだため、確実な効果を期待した。リスクは話している」と主張し、代理人を通して遺族に「法的非難を受ける理由はない」との見解を伝えた。

 これに対し、遺族側代理人の安東宏三弁護士は「副作用の説明はなく、あれば処方を受けなかった」と訴える。報告書はこの点の結論を出していない。同大広報室は毎日新聞の取材に「弁護士で折衝中の事案で、コメントは控える」と回答した。【桐野耕一、伊藤直孝】

 ◇禁止鎮静剤投与事故

 2014年2月、東京女子医大病院で人工呼吸中の小児には投与してはいけない「禁忌」とされている鎮静剤「プロポフォール」を大量に投与された2歳男児が、副作用とみられる症状で死亡した。安全管理体制の不備を重く見た厚生労働省は15年6月、高度医療の提供により診療報酬が優遇される特定機能病院の承認を取り消した。」



患者遺族の代理人は,医療問題弁護団幹事長の安東宏三先生です.
きわめて杜撰な医療が行われたのですから,説明義務違反と悪しき結果との因果関係を立証するというハードルはありますが,道を切り開くために,裁判(判決)で決着をつけていただきたいと思います.

谷直樹


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by medical-law | 2016-07-24 08:51 | 医療事故・医療裁判

最高裁平成28年7月19日判決、患者側逆転敗訴、CT検査義務の期待権侵害を否定した事案(報道)

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時事通信「手術後後遺症で逆転敗訴=一部賠償命令の二審破棄-最高裁」(平成28年7月19日)は、次のとおり報じました.

「東京都台東区の病院で脳の外科手術後に後遺症が残った新潟市の男性(48)が、病院側に損害賠償を求めた訴訟の上告審判決で、最高裁第3小法廷(山崎敏充裁判長)は19日、一部賠償を認めた二審判決を破棄し、請求を棄却した。男性側逆転敗訴が確定した。
 判決によると、男性は2009年に手術を受けた直後に脳内出血し、手足の筋力が低下するなどして日常生活で介護が必要な状態となった。男性側は、医師らは出血の兆候が出た時点でコンピューター断層撮影(CT)検査をすべきだったのに怠ったとして提訴した。
 一審新潟地裁は請求を棄却。しかし、二審東京高裁は医師が注意を怠ったと認定した上で、男性は適切な治療を受けられず精神的苦痛を受けたとして、5000万円の請求に対して1100万円の賠償を命じた。
 これに対し第3小法廷は「患者が適切な医療を受けられなかった場合に医師が責任を負うかどうかは、その行為が著しく不適切な事案に限って検討する」と指摘。男性の場合は医師が経過観察を続けるなどしており、不適切なケースに当たらないと判断した。」


これは、私が担当した事件ではありません.
期待権侵害(適正な医療を受ける期待権の侵害)は、下級審では認められていますが、最高裁で肯定した事案はありません.

以前、私も、、担当事件で、34時間のCT不実施について期待権侵害の主張を行ったことがありますが、その後、主張を変えて戦っています.予備的に「相当程度の可能性」「期待権侵害」を主張せざるをえない事案もありますが、基本的には悪しき結果との因果関係(高度の蓋然性)を立証することが王道の戦い方と考えています.裁判所が因果関係(高度の蓋然性)の認定について異常に厳格だった時期があるように思いますが、これもルンバール事件の原点に立ち戻って常識的な認定に戻すべきと思います.


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by medical-law | 2016-07-24 00:58 | 医療事故・医療裁判

たばこ対策に関する国際シンポジウム~スモークフリー日本のビジョン実現のために~

「たばこ対策に関する国際シンポジウム~スモークフリー日本のビジョン実現のために~」が7月30日に築地の国際交流会館で開催されます.


日時 2016年7月30日(土) 13:30-17:00
場所 国立がん研究センター 国際研究交流会館(東京都中央区築地5-1-1)3階会議場
定員 120名
参加費 無料
参加方法  メールまたはFAXにてお申し込みください。
・ メールアドレス:tobacco @ ml.res.ncc.go.jp
・ FAX:03-3547-8098 【国立がん研究センター たばこ政策支援部 宛】
共済 世界保健機関西太平洋事務局,厚生労働省,国立がん研究センター


基調講演
「オーストラリア等のたばこ対策から日本は何を学ぶのか」 ~サイモン・チャップマン(シドニー大学名誉教授)

日本の受動喫煙防止対策について
 ・ 国内のたばこ対策について
  ~中村 正和(地域医療振興協会 ヘルスプロモーション研究センター長)
 ・ 神奈川県受動喫煙防止条例について
 ~鈴木 慎一(神奈川県 保健福祉部 健康増進課長)

国際的な受動喫煙防止対策の好事例

詳細は,国立がん研究センターのサイトをご覧下さい.


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by medical-law | 2016-07-18 08:44 | タバコ

名古屋高裁長官に原優氏(司法修習31期)

山名学名古屋高裁長官(司法修習30期)の7月23日で定年退官しまう.、その後任は、原優千葉地裁所長とのことです(発令は7月29日). 順当な人事でしょう.
その玉突き人事で、傍田寛之東京高裁部総括判事が千葉地裁所長になり、白石史子京都家裁所長が東京高裁部総括判事になります.白石史子氏は、以前千葉地裁医療集中部の部総括判事でした.

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by medical-law | 2016-07-18 01:08 | 司法

名古屋地裁平成28年7月15日判決,チアミン不投与によるウェルニッケ脳症と後遺症の因果関係肯定(報道)

読売新聞「治療ミス1億2000万円賠償 名古屋地裁」(2016年7月16日)は,次のとおり報じました.

藤田保健衛生大病院(愛知県豊明市)で食道がんの手術を受けた際、医師が適切にビタミンB1を投与せず、運動障害などの後遺症が残ったとして、同県知多市の男性(60)が病院を運営する藤田学園らに約1億6600万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が15日、名古屋地裁であり、朝日貴浩裁判長は約1億2000万円の支払いを命じる判決を言い渡した。

 判決によると、男性は2009年7月に食道がんの手術を受けた後、めまいや意識障害などの症状を訴え、8月にビタミンB1の欠乏で生じる「ウェルニッケ脳症」と診断された。医師が縫合不全を疑い、男性は手術後絶食を指示され、輸液で栄養を摂取していたが、同病院は1か月余りビタミンB1を投与しなかった。男性は退院後も症状が進行。歩行が困難となり、日常生活のほとんどに介助が必要となった。

 同学園は、脳症の診断後にビタミンB1を大量投与し、退院までに症状は改善したと主張したが、判決では、「男性がめまいなどの症状を訴えた後すみやかに投与せず、後遺症が残った」とし、原告の請求を認めた。

 同学園は「判決内容を検討した上で、今後の対応を考えたい」とした。」


この件は,私が担当したものではありません.
ウェルニッケ脳症の判決は久々です.高カロリー輸液でビタミンB1を投与しないなどということが2009年にあったことに驚きました.
歩行が困難となり日常生活のほとんどに介助が必要となった原因は,食道がんとは考え難いので,ウェルニッケ脳症によるものと認定されたのでしょう.

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by medical-law | 2016-07-16 08:39 | 医療事故・医療裁判

下腹部痛の女性が回腸子宮内膜症による敗血症性ショックで死亡した事案で横手市が提訴される(報道)

河北新報「下腹部痛の診断ミスで死亡 遺族ら提訴」(2016年7月15日)は次のとおり報じました.

「下腹部痛を訴えて秋田県横手市立横手病院を受診した秋田県南部の40代女性が死亡したのは医療ミスが原因だとして、女性の夫らが14日までに、市に約1億900万円の損害賠償を求める訴えを秋田地裁に起こした。
 訴状によると、女性は2014年6月、下腹部痛などから消化器内科を受診し、腸閉塞(へいそく)と診断された。女性は痛みを訴えて入退院を繰り返し、月経との関連を主張したが医師は子宮内膜症の可能性を考慮しなかった。女性が同年8月に死亡した後、秋田大病院で行った病理解剖の結果、死因は回腸子宮内膜症による敗血症性ショックと判明した。
 女性の夫は「子宮内膜症を念頭に置いて鑑別診断していれば妻は迅速に手術を受けられ、死亡することはなかった」と医師らの注意義務違反を主張している。
 同病院は「担当者が不在でコメントできない」と話している。」


これは私が担当した事件ではありませんので,詳細はわかりませんが,解剖しなければ回腸子宮内膜症による敗血症性ショックと判明しなかったわけですので,解剖は重要と思います.
遺体を傷付けたくないという心情も理解できますが,死因等に疑問があり真実を知りたいときは解剖することも必要と思います.

【追記】
正確には,回腸子宮内膜症により回腸末端部が屈曲捻転し,それに伴うイレウス症状を来し,小腸全壊死を来し,敗血症を来した,とのことです.


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by medical-law | 2016-07-15 16:32 | 医療事故・医療裁判

群馬大学医学部附属病院、手術ミスで50代男性が右手足麻痺(報道)

朝日新聞「群馬大病院で医療事故 男性が右手足まひ」(2016年7月9日)は、次のとおり報じました.

「群馬大病院(前橋市)は8日、50代男性の頸椎(けいつい)を金具で固定する手術をした際、過って脊髄(せきずい)を圧迫し、右手足のまひなどが残ったと発表した。また、同病院では腹腔(ふくくう)鏡による肝臓手術などで患者が死亡する事故が相次いだため、改善策として術前説明の徹底やカルテの詳細な書き方を決めていたが、この男性の手術については守られていなかったという。

 病院によると、男性は首の骨が変形するなどして神経が圧迫され、歩行困難や手の筋力低下などの症状があった。昨年11月の手術の際、担当医師が一部の金具の差し込む位置を間違え、脊髄を圧迫。現在も人工呼吸器が必要な状態で、回復するかどうかの判断は1年ほど経過をみる必要があるという。

 院内の事故調査委員会が調査した結果、まひなどの症状は手術による神経障害によるものとされた。田村遵一病院長は「患者や家族に深くおわびし、全力で治療を尽くしていく」と謝罪した。」


上毛新聞「手術で右半身まひ 整形外科で50代男性 群馬大病院 」(2016年7月9日) は、次のとおり報じました.
 
「群馬大医学部附属病院(前橋市)は8日、県内の50代男性が手術後に右半身がまひして人工呼吸器が必要な状態になる医療事故を起こしたと発表した。手術の安全性を高める準備や、患者への事前説明が不十分だったという。旧第2外科で手術を受けた患者が相次いで死亡した問題を受け、患者への十分な説明と、記録を残すことを周知していたが、今回のケースでは十分に行われていなかった。

【説明不十分 認める】

 同病院が記者会見して明らかにした。病院は男性に謝罪し、今後補償を含めて対応する。

 病院によると、頸椎けいついが脊髄を圧迫して運動機能が低下した男性が昨年11月、症状の進行を止めるために整形外科で手術を受けた。医療用ねじで頸椎を固定する手術を医師3人で行った。ねじの位置がずれて脊髄を圧迫したため再手術をしたが、男性は右半身まひになった。

 学外有識者2人を入れた事故調査委員会が4月、手術は難易度が高く、ねじを挿入する位置を複数の方法で確認するなど、できる限り慎重に準備するべきだったとする報告書をまとめた。男性への説明が不十分だったことも問題視された。担当医が男性にリスクについて十分に説明していなかったとみられる。

 田村遵一病院長は「信頼回復に向けて取り組む中、新たな医療事故が起きてしまい、本当に申し訳ない」と謝罪した。」



 手術ミスのみならず、インフォームドコンセントがおろそかにされていたのは、群馬大学医学部附属病院の体質なのでしょうか. 


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by medical-law | 2016-07-10 00:58 | 医療事故・医療裁判

因果関係が否定できない急性腎不全が9人、うち1人死亡のため、「ヴィキラックス配合錠」の添付文書改訂

オムビタスビル水和物・パリタプレビル水和物・リトナビルの添付文書が以下のとおり改訂されました.

[重要な基本的注意]の項に
「本剤投与前及び投与開始後は定期的に腎機能検査(血清クレアチニン、BUN等)を行うこと。特に、腎機能が低下している患者、Ca拮抗剤を併用している患者では、急激に腎機能が悪化することがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には、投与を中止するなど適切な処置を行うこと。」
を追記.

[副作用]の「重大な副作用」の項に
「急性腎不全:急性腎不全があらわれることがあるので、定期的に腎機能検査を行うなど観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。」
を追記.

2015年11月の発売から2016年4月までに約3000人が使用し、急性腎不全関連症例 14 例中、薬との因果関係が否定できない急性腎不全が9例報告され、うち1人が死亡したためです.

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by medical-law | 2016-07-07 01:02 | 医療

脊椎手術で神経損傷したとして独立行政法人労働者健康安全機構が訴えられる(報道)

毎日新聞「賠償提訴 「医療過誤」でまひ、中2ら提訴 地裁小倉」(2016年7月5日)は、次の通り報じました. 

「脊椎(せきつい)の手術で神経を損傷したため全身まひなどが残ったとして、岡垣町の中学2年の男子生徒(13)と両親が4日、飯塚市の「総合せき損センター」を運営する独立行政法人「労働者健康安全機構」に対し介護費や慰謝料など約1億4500万円を求める訴訟を地裁小倉支部に起こした。

 訴状によると、生徒には生まれつき下半身まひの障害があり、2013年ごろから手指が冷たくなるなどの症状が出たため14年3月27日、同センターで手術を受けた。

その直後から全身まひ、呼吸困難などの症状が出て、今も首から下がまひしているという。

 4日、記者会見した生徒らの代理人弁護士は「当初から病院は過失を認めていたが賠償には応じてもらえず、提訴に至った」と説明。病院の担当者は「訴状を確認できていないのでコメントできない」と話した。【木村敦彦】」



これは、私が担当しtものではありません.
独立行政法人労働者健康安全機構が相手のときは、有責が明白な事案でも訴訟となることが多い印象があります.


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by medical-law | 2016-07-07 00:34 | 事務局