弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

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山鹿市民医療センター,カテーテルを誤って左心室に突き刺した事故で約256万円示談(報道)

毎日新聞「山鹿市が医療ミスで255万円の損害賠償」(2016年8月18日)は,次のとおり報じました. 
 
「山鹿市は17日、同市民医療センター(同市山鹿)で昨年8月に医療ミスがあり、損害賠償として255万8800円を70代女性に支払うことを明らかにした。25日開会の市議会9月定例会に関連議案を提案する。

 女性は昨年8月13日、腹腔(ふくくう)鏡手術を受けた際、肺を取り囲む胸膜に穴が開いて左肺の気圧が低下し、医師が胸部の気圧確保のために挿入したカテーテル(細い管)が誤って心臓の左心室に刺さった。女性に後遺症はない。市は「患者や家族にご迷惑をかけ、深くおわびする」とコメントした。」


これは私が担当した事件ではありません.
過失は明らかですが,後遺症がないため後遺症慰謝料・逸失利益が発生せず,治療費,休業損害,入通院慰謝料等だけになりますので,255万8800円の賠償金は適切と思います.


谷直樹


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by medical-law | 2016-08-20 09:28 | 医療事故・医療裁判

神戸市須磨区の病院が,高齢の入院患者に1人で食事させた誤嚥窒息死亡事故で,600万円和解(報道)

毎日新聞「誤嚥事故訴訟 病院側と和解 遺族に600万円」 (2016年8月13日)は,次のとおり報じました.
 
「神戸市須磨区の病院に入院していた認知症の女性(当時74歳)が看護の過失による誤嚥(ごえん)がきっかけで死亡したとして、女性の次女(54)が病院を運営する医療法人に損害賠償を求めていた訴訟は12日、神戸地裁(倉地康弘裁判長)で和解が成立した。原告側弁護士によると、医療法人が600万円を支払う内容という。

 訴状などによると、女性は2014年5月7日、高熱などの症状を訴えて入院。同19日に朝食を1人で食べた際、誤って気管に入れて窒息を起こし、急性循環不全で死亡した。同年8月に次女が慰謝料など770万円の支払いを求めて提訴していた。

 次女は「人手不足はあると思うが、事故をなくすための対策を医療機関で考えていってほしい」と話した。【井上卓也】」

この件は,私が担当したものではありません.
食事による誤嚥窒息事故では,医療機関が誤嚥の可能性をどの程度予見できたかが,問題になります.
600万円という金額は,過失を認めた,つまり予見義務があったことを認めた金額です.

提訴時の新聞報道によりますと,「朝食に1人でバナナ1本を食べた際、誤って気管に入れて窒息を起こし、急性循環不全で死亡した。原告側は「病院側は母親が入所していた老人ホームから、食事に全面介助が必要であるとの申し送りを受けていた」と指摘。「1人での食事は誤嚥の危険性が極めて高いことは予見可能だったのに、看護師は朝食提供後、別の場所に移動して(女性を)放置していた」と主張している。」(毎日新聞)とのことです.


谷直樹


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by medical-law | 2016-08-16 02:59 | 医療事故・医療裁判

長崎市立病院機構が心筋梗塞の見逃し事案で400万円和解(報道)

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毎日新聞「長崎市立市民病院訴訟 遺族へ和解金 長崎地裁」(2016年8月13日)は,次のとおり報じました.
 
「長崎市立市民病院(現・長崎みなとメディカルセンター市民病院)の医師が適切な診断を下さず、直後に亡くなったとして、2010年に急性心筋梗塞(こうそく)で死亡した女性(当時63歳)の遺族が同病院を運営する市立病院機構に約5300万円の損害賠償を求めた訴訟は長崎地裁(田中俊行裁判長)で和解が成立した。

 同病院の企画総務課によると、病院側が解決金400万円を支払うことで6月28日に和解した。病院側は和解協議の中で遺憾の意を示した上で、医療安全体制の構築を進めることを遺族側に伝えた。

 訴状によると、女性は10年9月26日夕、吐き気などを訴え同病院で受診。ウイルス性腸炎と診断され、整腸剤などを処方されたが病状は改善せず、翌朝、急性心筋梗塞で死亡した。遺族は「循環器専門医への相談や、経過観察などの義務を怠った」と主張していた。【今手麻衣】」


この件は,私が担当したものではありません.

急性心筋梗塞で虚血がおきると,心臓下壁の副交感神経が刺激され,吐き気,むかつきなどの症状がでることがあります.このことはよく知られています.
とくに上記報道の件は女性で,女性の心筋梗塞は男性の心筋梗塞に比べると,典型的な胸痛を訴えないことが多いことも考慮すべきでしょう.
吐き気の症状が整腸剤で改善しないときは,急性心筋梗塞なども疑うべきだったでしょう.

400万円という金額からすると,過失が認められるが,過失がなかったとして救命できたか(因果関係)については相当程度の可能性にとどまるということでしょう..
因果関係が相当程度にとどまるとしても,過失が認められる以上は,謝罪し再発防止に努めるのは,当然のことですが,謝罪条項と再発防止条項をいれたことも,和解成立につながったのでしょう.


谷直樹


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by medical-law | 2016-08-15 22:24 | 医療事故・医療裁判

短期入所施設が医薬品使用介助で経口血糖値降下薬を取り違えたとして提訴される(報道)

河北新報「誤投薬で入所者が死亡」遺族が施設を提訴」(2016年8月11日)は,次のとおり報じました.

「登米市の短期入所施設で生活していた宮城県美里町の女性=当時(93)=が死亡したのは、施設側が他の入所者の薬を誤って服用させたためだとして、遺族が10日までに、同市の運営法人に計2530万円の損害賠償を求める訴えを仙台地裁に起こした。
 訴えによると、女性は2012年10月、施設と短期入所契約を締結。約1カ月半後、施設内で意識を失い、救急搬送先の病院で「糖尿病の薬を飲んだことが原因と考えられる」と指摘された。女性は意識が戻らず、13年2月に死亡した。」


この件は,私が担当したものではありません.

医薬品使用介助自体は,「医業」ででゃなりませんが,安全に行わう注意義務があります.

厚生労働省は,平成26年10月1日,「老人福祉施設等における医薬品の使用の介助について(老人福祉施設等への注意喚起及び周知徹底依頼)」を通知しています.
通知では,

「 1. 老人福祉施設等を利用しようとする者に対しては、医薬品の使用の有無及び当該医薬品を処方した医療機関からの留意点等の説明の有無について、本人又は家族に確認するとともに、必要に応じて当該処方医療機関にも留意点等の確認を行うこと。また、医師、歯科医師又は看護職員の配置がある場合には、使用している医薬品に関して確認された内容について当該職員等は把握のうえ必要な対応を行うこと。
より、本人確認の徹底を行うこと。
2.利用者に対して老人福祉施設等の職員が医薬品の使用を介助することになった場合には、その使用目的、取り違えその他の誤使用を防止する方策、適正に使用する方法等について、従業者に対し、改めて周知徹底すること。また、看護職員の配置がある場合には、医薬品の使用の介助については看護職員によって実施されることが望ましく、また、その配置がある場合には、その指導の下で実施されるべきであること。
3.医薬品の使用の介助に当たっては、「医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の解釈について(平成17年7月26日付け・医政発0726005号)」(別添1)や、また特別養護老人ホームについては平成24年度厚生労働省老人保健事業推進費等補助金による「特別養護老人ホームにおける介護事故予防ガイドライン」(別添2)を参考にすること。特に、医薬品の取り違えについては、利用者の入れ替わりや職員の入れ替わりなどで起きる可能性が高まることを踏まえて、日頃から職員の声かけなどにより、本人確認の徹底を行うこと。」


とされています.

医薬品使用介助における薬を取り違えは,注意義務違反となるでしょう.

また,糖尿病ではない人が経口血糖降下薬をのむと,血糖値が下がり,意識不明となり死亡することがありますので,上記報道の範囲でしか事情は分かりませんが,因果関係もあるのではないでしょうか.

谷直樹


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by medical-law | 2016-08-12 01:52 | 医療事故・医療裁判

東京地裁平成28年8月10日判決、認知症患者が病院から失踪しのたのは原発事故によるものと認定(報道)

朝日新聞「原発事故後に病院から患者失踪、東電に賠償命じる判決」(2016年8月10日)は、次のとおり報じました.

 「東京電力福島第一原発の事故後、入院していた双葉病院(福島県大熊町)から行方不明になり、後に失踪宣告を受けた女性(当時88)の家族が、「失踪は原発事故が原因だ」として4400万円の損害賠償を東電に求めた訴訟の判決で、東京地裁(水野有子裁判長)は10日、東電に2200万円の支払いを命じた。

 判決は「大震災の発生後も病院は患者の十分な見守りをしており、原発事故がなければ失踪は防げた」と述べた。家族の代理人弁護士によると、原発事故と失踪の因果関係を認めた判決は初めてとみられる。

 判決によると、女性は認知症で同病院に入院。2011年3月12日に原発事故による避難指示が出された後、14日までは院内で姿が確認されていたが、16日に自衛隊が救助を完了した際には見当たらず、捜索しても発見されなかった。家族が申し立てた失踪宣告が13年9月に認められ、法律上は死亡が確定した。

 東電側は訴訟で「原発事故ではなく、震災による混乱が主な原因だ」と主張した。だが判決は、「病院の院長らは混乱の中でも徘徊(はいかい)癖のあった女性の外出防止に相当な注意を払っており、原発事故で避難を強いられなければ、見守りを続けられた」と指摘。その上で「女性は過酷な状況で、住民もいなくなった地域を放浪して死亡したと考えられる」と述べ、慰謝料は2千万円と判断した。

 東電は「判決の内容を確認した上で、引き続き真摯(しんし)に対応して参ります」との談話を出した。(千葉雄高)」


水野有子判事は、以前、医療集中部にいたことがあり、病院の院長らは混乱の中でも徘徊(はいかい)癖のあった女性の外出防止に相当な注意を払っており、原発事故で避難を強いられなければ、見守りを続けられた」という認定は説得力があります.

谷直樹


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by medical-law | 2016-08-11 02:02 | 脱原発

通知「サリドマイド、レナリドミド及びポマリドミド製剤の院内処方薬の取扱いについて」

厚生労働省は。平成28年8月4日、医政総発 0804第 1号,薬生安発 0804第 3号「サリドマイド、レナリドミド及びポマリドミド製剤の院内処方薬の取扱いについて(医療機関への注意喚起及び周知徹底依頼)」を発しました.
医療機関において、レナリドミド製剤(販売名:レプラミドカプセル5mg)を院内処方した際、投与すべき入院患者とは別の入院患者へ誤投与した事故が判明いたとのことです.

「サリドマイド、レナリドミド及び、ポマリドミド製剤は、 「サリドマイド製剤安全管理手順(TERMS) J又は「レプラミド・ポマリスト適正管理手順(RevMate) Jにより、その販売、管理、使用等の適正な管理が求められる製剤であることから、下記について、貴管下医療機関への周知徹底及び指導方お願いします。

1. 患者への医薬品の使用にあたっては、各医療機関で定める医薬品の安全使用のための業務に関する手順書を確認すること。特に、医薬品の誤投与等を防止する方策や適正に使用する方法等について、従業者に対し、改めて周知徹底すること。

2. 医薬品に起因する医療事故等が発生した際には、各医療機関の医療安全管理者、医薬品安全管理責任者等に対して速やかに報告するとともに、医療機関内で情報の共有・注意喚起を行うなど必要な安全管理対策を講じること。

3. サリドマイド、レナリドミド及びポマリドミド製剤を取り扱う際は、全ての関係者がTERMS又はRevMateを遵守することが求められていることに鑑み、教育、研修等を通じて、従業者に対してこれらの製剤の取扱い方法を改めて周知徹底すること。」




谷直樹


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by medical-law | 2016-08-10 01:01 | 医療事故・医療裁判

『大妖怪展 土偶から妖怪ウォッチまで』

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東京両国の江戸東京博物館で,『大妖怪展 土偶から妖怪ウォッチまで』が8月28日(日)まで開かれています.ただし,月曜休館です.
入れ替え,巻き替えがあります.
なお,9月10日(土)から 11月6日(日)まで,大阪天王寺のあべのハルカス美術館でも開催されます.


谷直樹


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by medical-law | 2016-08-07 17:44 | 趣味

井上弘通氏が大阪高裁長官に

大阪高裁長官の菅野博之氏が最高裁判事に任命されたため,後任の大阪高裁長官には,東京高裁部総括判事の井上弘通氏(司法修習29期)があてられることになりました.発令は9月5日です.最高裁刑事局が長く,最高裁上席調査官を経ていますので,順当な人事でしょう.九州大学卒の長官は珍しいですが.
なお,後任の東京高裁部総括判事には,現前橋地裁所長の合田悦三氏が,後任の前橋地裁所長には,現東京地裁部総括判事の八木一洋氏が,それぞれあてられます.
合田悦三氏も,最高裁刑事局が長い判事です.
八木一洋氏は,東京地裁交通部,東京地裁行政部,内閣法制局参事官,司法試験考査委員などを歴任しています.

これで高裁長官の異動はこれで一段落し,次のとおりとなりました(高裁格順).

東京高裁長官 戸倉三郎氏(34期)
大阪高裁長官 井上弘通氏(29期)
名古屋高裁長官 原優氏(31期)
広島高裁長官 川合昌幸氏(29期)
福岡高裁長官 荒井勉氏(29期)
仙台高裁長官 河合健司氏(32期)
札幌高裁長官 綿引万里子氏(32期)
高松高裁長官 小久保孝雄氏(33期)


谷直樹


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by medical-law | 2016-08-04 12:10 | 司法

広島地裁福山支部平成28年8月3日判決,陣痛促進剤過量投与帝王切開遅れを認定し賠償命じる(報道)

山陽新聞「院長の陣痛促進剤過剰投与は過失 地裁福山、1.4億円賠償命令」(2016年8月4日)は次のとおり報じました.

 
「福山市新涯町の産婦人科医院「よしだレディースクリニック」で2008年に出産した際、陣痛促進剤の過剰投与により、長男(8)が障害を負ったとして、福山市の両親と長男が同クリニックの吉田壮一院長に約1億5200万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、広島地裁福山支部は3日、「慎重に投与する義務を怠った」などと吉田院長の過失を認め、約1億4200万円の支払いを命じた。

 判決理由で古賀輝郎裁判長は、使用上の注意事項を守らずに一度に多くの量を投与したと認定。薬の増量後に胎児の心拍数が低下したのに適切な処置を施さず、それにより長男は少なくとも約3時間半、低酸素状態が続き、仮死状態で生まれて脳性まひによる障害が残ったと判断した。

 「順調に分娩(ぶんべん)を進行するため」として、請求棄却を求めていたクリニック側の主張は「合理的理由があるとは認められない」と退けた。

 判決によると、吉田院長は08年6月、陣痛促進剤の注意事項に可能な限り少量から始めるなどとあったにもかかわらず、最初から用量を超えて投与。長男は脳性まひによる体幹機能障害を負った。

 父親(37)は「ほぼ主張が認められ良かった。私たち家族と同じような事例が無くなればうれしい」。同クリニックは「判決内容を確認していないのでコメントできない」としている。


朝日新聞「「出産時の過失で脳性まひ」医師に1億4千万円賠償命令」(2016年8月4日)は次のとおり報じました.

「分娩(ぶんべん)時に適切な対応を取らなかったため、脳性まひになったとして、広島県福山市に住む30代の両親と長男(8)が、市内の産婦人科クリニックの医師に損害賠償を求めた訴訟の判決が3日、広島地裁福山支部であった。古賀輝郎裁判長は医師の過失を認め、計約1億4200万円の支払いを命じた。

 長男は2008年、新生児仮死の状態で生まれ、蘇生後に低酸素脳症に陥り、脳性まひと診断された。訴訟では分娩時に投与された陣痛促進剤の量が適切だったかや、緊急帝王切開などの処置を取るべきだったかが争われた。

 判決は、陣痛促進剤の過量投与は胎児仮死が起こる恐れがあるのに、医師は理由なく使用上の注意事項に反するなど慎重に投与すべき義務を怠ったと判断。さらに心拍数を示す波形が悪化したのに帝王切開などをしなかったとし、注意義務違反と脳性まひに因果関係があるとした。

 判決を受け、父親は「今後このような事例がなくなってほしい」と述べ、クリニックの担当者は「判決内容を確認していないのでコメントできない」としている。」


この件は,私が担当したものではありません.
2008年の出生ですから,産科医療補償制度の適用のない事案ですから.産科医療補償の3000万円が損益相殺されません.そのため約1億4000万円の賠償が命じられたわけです.
判決が確定し,判例雑誌等に掲載されたら,是非,判決文を読んでみたいと思います.


 谷直樹


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by medical-law | 2016-08-04 07:14 | 医療事故・医療裁判

群馬大学医学部附属病院医療事故調査委員会報告書

群馬大学医学部附属病院医療事故調査委員会の最終報告書が公表されました.

群馬大学の医学部附属病院医療事故調査委員会専用ページはコチラです.

読売新聞「群大病院の医師、問題意識なく執刀…収益優先で手術数競う」(2016年8月1日)は次のとおり報じました.

「1年近い検証作業を経て、調査結果がまとめられた群馬大学病院の手術死問題。一連の調査からは、一つの診療科で顕在化した問題の根本に、質の低い医療が繰り返されるのを許した病院組織のひずみがあることが浮き彫りになった。

■「死亡防げた」

 「適切な対応をしていれば、その後の死亡の続発は防げた可能性がある」

 調査を担った第三者委員会は、2009年度1年で患者8人の死亡が集中した旧第二外科や病院の対応を問題視した。担当したのは同じ執刀医だった。

 執刀医は、上司である教授がその職に就いた翌年の07年4月、群馬大病院に赴任した。先輩医師が別の病院に移った09年春から肝胆 膵すい (肝臓、胆道、膵臓)手術を主導するようになり、死亡が集中した。同年度の死亡数は、着任当初2年間の年間死亡数の約2倍だった。

 「重症の患者であり、術後の合併症による死亡で、やむを得ない」

 調査によると、執刀医に問題の認識はなかった。手術が一時中断されたこともあったが、有効な改善策もなく再開。死亡が集中した翌年度には、高度な技術が必要な 腹腔ふくくう 鏡手術を導入した。その後、14年までに開腹も含め少なくとも15人の死亡が相次いだ。

■最重要課題

 群馬大病院は、国立大の法人化で自立した経営が求められるようになってから、収益のため手術数増が最重要課題となった。100床当たりの手術数は10年度、全国の国立大病院中1位。11年度は3位、12~14年度は2位と上位を占めた。

 特に旧第二外科の肝胆膵分野は、医師が1~2人と不足状態だったにもかかわらず手術数を増やした。旧第一外科でも同じ分野の手術を手がけており、3~6人の医師が診療していたが両科が連携することはなく、競い合うように同規模の手術数をこなしていた。

 肝胆膵外科の専門家は「手術だけでなく術後の管理や突発的な出来事に対応することも考えると10人は必要ではないか」と驚く。こうした旧第二外科の状況について、調査は「著しく許容量の限界に近かった」と問題視した。

■カルテにうそ

 旧第二外科の診療を巡っては、虚偽とみられる記録も見つかった。

 旧第二外科の教授は記録上、多くの手術に名前が記載されていたが、実際は参加していなかったこともあった。教授は12年、日本肝胆膵外科学会が高い手術実績を持つ医師として認定する高度技能指導医の資格を専門外であるにもかかわらず、取得していたが、資格に見合う技量があったか疑問視されている。

 腹腔鏡手術を導入した10年から1年間の手術成績をまとめた学術論文では、実際より死亡数を少なく発表していた。

 不正確なカルテ記載も数多く見つかっている。

 調査では、死因究明のために解剖を求めた遺族が執刀医に「こういう場合は解剖しない」などと断られたが、カルテには遺族が拒否したかのような記載があったことも明らかになった。

 第三者委の聞き取り対象外だった遺族の男性も取材に対し「実際にはされた覚えのない病状の説明がカルテ上ではされたことになっており、不信感を持った」と話した。」


 予想はされていましたが,やはり,相当に深刻な問題があったことが明らかになりました.
 今後,根本的で実効的な改善が必要です.また,遺族に対する適正な賠償も必要と思います.


谷直樹


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by medical-law | 2016-08-02 01:11 | 医療事故・医療裁判