弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

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福岡高判平成28年11月24日,施設診療経過改竄と脳出血入所者の搬送遅れを認定,100万円賠償(報道)

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朝日新聞「脳出血での搬送遅れ認め、高齢者住宅運営側に賠償命令」(2016年11月30日)は,次のとおり報じました.

「熊本市の高齢者専用住宅で入居女性に後遺症が残ったのは、脳出血の発症時に速やかに病院に搬送しなかったからだとして、女性の家族が、住宅を運営する桜十字(熊本市)に1700万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が福岡高裁であった。佐藤明裁判長は請求を退けた一審判決を変更し、慰謝料100万円の支払いを命じた。24日付。

 判決によると、女性は2010年12月27日、病院に搬送されて脳出血と診断され、左半身まひなどの後遺症が残った。

 女性側は同25日夜に脳出血を発症していたとして、治療が必要な際の対応を定めた契約に基づく病院への搬送義務違反と主張。今年3月の一審・熊本地裁判決は、職員が記した「施設介護経過」などから、発症は26日から27日午前8時ごろと判断。女性側の請求を棄却した。

 高裁判決は「施設介護経過」の内容が、診断した医師のカルテと矛盾することなどから「信用しがたい」とし、診断結果を知った後に都合良く入力した改ざんの可能性を示唆。医師の証言などから25日夜には脳出血を発症したと判断し、「速やかに女性を搬送しなかったことは債務不履行に当たる」とした。搬送の遅れと後遺症との因果関係については退けた。

 桜十字の担当者は「因果関係を争う主張の大局は認められたが、介護経過の記録は故意に改ざんしたものではない」とコメント。上告を検討しているとした。」


この報道の件は,私が担当したものではありません.
医療裁判では,過失(医療ミス)があっても,搬送の遅れがなければ,早期治療が可能で結果が異なったという立証ができない場合,因果関係が立証できていないことになり,損害賠償が認められないか,認められたとしても損害賠償額は低額になります.
一般に,施設の記録をそのまま事実であると認定すれば,多くの事案では搬送の遅れなどないことになります.高裁判決が,記録の改竄を認め,発症時間を認定したことは,高く評価されるべきでしょう.


谷直樹

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by medical-law | 2016-11-30 11:47 | 医療事故・医療裁判

高砂市民病院,検体を取り違え乳房切除の事案で約620万支払い和解へ(報道)

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読売新聞「乳房切除ミス、620万円支払いで市と和解へ」(2016年11月29日)は,次のとおり報じました.

「乳がんの検体を取り違えられ、乳房の一部を誤って切除されたとして、20歳代の女性が高砂市民病院(兵庫県高砂市)を運営する同市を相手取り、慰謝料など約1850万円の損害賠償を求めた訴訟で、市は28日、女性と和解する方針を明らかにした。

 市は女性に謝罪し、和解金など計約620万円を支払うという。

 訴状などによると、女性は2014年4月、同病院で病理検査を受け、右胸の乳がんと診断された。翌月、別の病院で切除の手術を受けたが、がん細胞は検出されず、診断時に50歳代女性の検体と取り違えられていたことが判明。高砂市民病院側は原因を「特定できなかった」とする報告書をまとめるなどしたため、女性は今年1月、大阪地裁に提訴した。市などによると、今月15日に同地裁が和解案を示し、双方が合意した。女性は取材に「原因が不明のままで、100%納得したわけではないが、謝罪の言葉が入っていたので和解することにした。二度とミスが起こらない体制にしてほしい」と話した。市は「大変申し訳ない。再発防止策をきっちりと行う」としている。」

この報道の件は,私が担当したものではありません.
裁判上の和解成立には,賠償金額のみならず,謝罪条項も重要なことがあります.
後遺症の基準が労働能力に重きを置いたものになっているため,賠償金額が一般社会の感覚とはずれることがあります.裁判所には,賠償額が一般社会の感覚に整合するよう,少しづつでも修正をはかっていただきたく思います.



谷直樹

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by medical-law | 2016-11-29 16:06 | 医療事故・医療裁判

新潟県立新発田病院、鎮痛薬投与下の術後患者の心電図モニター不継続事案で2000万円支払いへ(報道)

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新潟県は、2016年11月25日、県立新発田病院の医療事故に係る民事調停案件について、下記のとおり、裁判所の調停案に双方が同意する見込みとなったことを発表しました.

1 病院名  県立新発田病院

2 患 者  胎内市在住の女性(当時60歳代)

3 事故概要
(1) 平成27年6月5日、全身麻酔下で馬尾神経(脊髄の下端から伸びている神経の束 )腫瘍摘出術を実施し、術後疼痛に対して鎮痛薬を投与していた。
(2) 翌々日の7日、患者が心肺停止状態となり、救命措置を行ったが、8日、死亡確認。
(3) 平成28年7月、解決を図るため民事調停手続を開始。(新発田簡易裁判所)
(4) 鎮痛薬投与下でもあり、心電図モニター観察を6日以降も継続していれば救命できた可能性を否定できないとした裁判所の調停案が同年10月に提示され、遺族が同意する旨意思表示。

※議決後、早期に民事調停が成立する予定。

4 損害賠償額(平成28年12月議会提案予定)
 20,000,000円


この報道の件は,私が担当したものではありません.
過失が明らかで,因果関係・損害評価のみが問題となる事案では,訴訟前に解決が望ましいと思います.
裁判では,「救命できた可能性を否定できない」という程度では足りず,時間と費用をかけて救命できた高度の蓋然性を立証することが求められますが,事案の落ち着く所が見えていれば,双方の姿勢にもよりますが,基本的に訴訟前の解決が可能です.


谷直樹

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by medical-law | 2016-11-27 01:00 | 医療事故・医療裁判

さいたま市立病院,救急搬送患者に適切な処置を行わなかった事案で約1億3985万円支払和解へ(報道)

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埼玉新聞「後遺症の男性、さいたま市立病院を提訴 1・4億円賠償で和解へ」(2016年11月25日)は,次のとおり報じました.

「低酸素脳症を発症して後遺症が残ったのは適切な処置を怠ったためとして、さいたま市立病院(さいたま市緑区三室)を運営する同市を相手取り東京地裁に損害賠償請求訴訟を起こしていた元入院患者との和解案に合意し、市が和解金約1億3985万円を支払う議案を提案することが25日、分かった。30日開会の市議会12月定例会に提案する。

 同病院庶務課によると、原告は2009年8月24日に同病院で低酸素脳症を発症した浦和区の30代男性。男性は20代だった同年8月13日に救急搬送されて同病院に入院した。11日後の24日に低酸素脳症を発症。同課は治療の経過や「後遺症が残った」こと以外を公表していないが、原告側は「病院が適切な処置を取らなかった」と主張し、同市に対し約2億3722万円の損害賠償を求め、14年5月に民事提訴していた。

 市側は争っていたが、同地裁が今年8月に提案した和解条項案に今月7日に合意した。市側は過失の有無についての認識を一切示さず、市立病院は「医療行為中に起きたことで、後遺症が残ったことに対し遺憾に思っている」とコメント。今回の和解について、清水勇人市長は25日の定例会見で「誠に遺憾。今後起こらないよう、しっかり対応していきたい」と述べた。」


この報道の件は,私が担当したものではありません.
約1億4000万円を支払っての和解ですから,過失と因果関係が認められる事案です.市は,直裁に過失を認め謝罪すべきと思います.


谷直樹

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by medical-law | 2016-11-25 23:33 | 医療事故・医療裁判

豊橋市民病院,整形外科医が誤って神経を切断した事案で4189万円支払和解へ(報道)

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毎日新聞「医療過誤 豊橋市民病院、男性側と賠償支払いで合意」(2016年11月25日)は,次のとおり報じました.

「愛知県豊橋市民病院は25日、2014年に男性患者(当時47歳)の左膝骨折を治療する手術をした際、誤って神経を切断したことを明らかにした。男性は左足に後遺症が残った。同病院は男性側と損害賠償金4189万円を支払うことで合意、関連議案を28日開会の市議会に提出する。

 同病院によると、男性は13年12月、左膝を骨折し、患部をボルトとプレートで固定する手術を受けた。約1年後にボルトなどを外し、膝が動くようにする手術をした際、20代の整形外科医が誤って神経を切断した。男性は翌日、神経にまひの症状が見られたため、リハビリを続け、1週間後に退院。その後も症状が改善しないため、別の病院で受診し、神経の切断が判明した。

 男性は15年6月に神経の移植手術を受けたが、足首をうまく動かせず、歩行が不自由な状態という。」

 同病院の黒釜直樹事務局長は「医師の手術の修練を重ね、再発防止につなげたい」と話した。【石塚誠】」


この報道の件は,私が担当したものではありません.
手術手技による障害について不可避の合併症のであるという主張がなされることがありますが,整形外科医による神経切断は一般に十分注意すれ回避可能なことが多いでしょう.


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by medical-law | 2016-11-25 23:30 | 医療事故・医療裁判

小牧市民病院,救急搬送患者の急性肺血栓塞栓による死亡事案で1700万円支払い和解へ(報道) 

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毎日新聞「医療過誤 小牧市民病院が和解 遺族に賠償金 /愛知」(2016年11月25日)は,次のとおり報じました.


 「小牧市は24日、同市民病院で医療過誤があり、30代男性が急性肺血栓塞栓(そくせん)症で死亡したとして、遺族に1700万円を支払うことで和解したと発表した。

 同市によると、男性は2014年10月24日、意識を失って同病院に救急搬送され、心臓内の右心室の壁に肥大が見られたが、緊急性はないと判断された。」


この報道の件は,私が担当したものではありません.肺塞栓症に特異的な症状はありません.意識消失は肺塞栓症の症状の1つですので,意識消失の原因疾患の1つとして肺塞栓症を疑って検査を行うことが重要です.心エコーの右心室壁の肥大所見があったのですから,肺塞栓症の疑いが高いと判断すべきことになるでしょう.


谷直樹

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by medical-law | 2016-11-25 23:29 | 医療事故・医療裁判

名古屋地裁平成26年11月25日判決,中津川市民病院の誤診で9774万円支払いを命じる(報道)

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毎日新聞「誤診でまひ 中津川市民病院側に賠償命令 名古屋地裁」(2016年11月25日)は,次のとおり報じました.

「病院の誤診で下半身にまひが残ったとして、岐阜県恵那市の男性(51)が中津川市民病院を運営する同県中津川市に約2億5000万円の損害賠償を求めた訴訟で、名古屋地裁は25日、市に9774万円の支払いを命じた。朝日貴浩裁判長は、後遺障害の慰謝料や障害がなければ得られたはずの収入などを認めた。」


この報道の件は,私が担当したものではありません.判決ですので,判例雑誌,裁判所サイトなどに載ったら読んでみたいと思います.


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by medical-law | 2016-11-25 23:27 | 医療事故・医療裁判

一宮市立市民病院,皮膚がんの切除手術後の定期検査で転移性肺がんの見落としで和解(報道)

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東京新聞「肺がん見落とし、21歳男性死亡 愛知・一宮市立病院、遺族と和解」(2016年11月24日)は,次のとおり報じました.

「愛知県一宮市の市立市民病院は24日、悪性腫瘍の肺転移を調べる精査を怠り、2013年に当時21歳の男性患者が肺がんで死亡したと明らかにした。市は医療ミスを認め、男性の両親に約2400万円の損害賠償金を支払うことで和解した。

 病院事務局によると、男性は03年、12歳の時に県内の病院で皮膚がんの切除手術を行った。その後、市民病院の定期検査で09年と10年に肺に影が見つかったが、がん検出のための検査で異常がないと判断し、定期的な受診を求めなかった。

 12年、別の病院から転移性肺がんの疑いを指摘され、精密検査で既に病状が進行していたことが判明した。
(共同)」


この報道の件は,私が担当したものではありません.
皮膚癌の見落としの事案,肺がんの見落としの事案は扱ったことがあります.
癌の見落としは,検査記録が残っている場合過失が明らかなことが多く,因果関係と賠償金額が主要な争点となります.肺がんの種類,ステージは分かりませんが,9年と10年に見逃し,12年に別の病院で発見されたという経緯からは,因果関係と損害が認められる事案のように思います.


谷直樹

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by medical-law | 2016-11-24 13:34 | 医療事故・医療裁判

京都市立美術館,「生誕300年 若冲の京都 KYOTOの若冲」

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京都市立美術館で,10月4日(火)から12月4日(日)まで「生誕300年 若冲の京都 KYOTOの若冲」展が開かれています.
先日見に行きましたが,何度見ても若冲は良いです.
地元京都でも若冲は人気で,それなりに混雑していましたが,東京よりは遥かに人が少なく,ゆっくり画を見ることができました.

狩野博幸氏の監修で,
Ⅰ障壁画,Ⅱ拓版画,Ⅲ花鳥Ⅰ,Ⅳ人物像,Ⅵ吉祥,Ⅶ花鳥Ⅱ,Ⅷ植物
で構成されていました.
鯉図も並べてみると共通点と相違がよく分かります.
いまさらですが,墨の濃淡,筆の技法を使い分けて動植物を描いていることがよくわかります.
果蔬涅槃図は,仏教では釈迦如来を二股大根で表現していたとのことで,大根=釈迦如来は若冲の独創ではないそうですが,弟子らもすべてを果蔬で表現したのはユニークで見事と思います.


谷直樹

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by medical-law | 2016-11-23 00:55 | 趣味

上越地域医療センター病院,たんが詰まって死亡した事案で巡回等の頻度が少なかったことを認め賠償(報道)

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上越タウンジャーナル「上越地域医療センター病院でたん詰まり死亡 市が2200万円支払い和解へ」(2016年11月22日)は,次のとおり報じました.

「新潟県上越市営の上越地域医療センター病院で昨年(2015年)1月、短期入所を利用していた市内の成人女性が、たんがのどに詰まったことにより心肺停止となり、その後に死亡した。市は見回りなどの頻度が少なかったことなどにより、結果として死亡という事態に至ったとして、女性の遺族に損害賠償金2200万円を支払う。関連議案を来月の市議会に提案する。

女性は、宿泊を伴う短期入所を利用していたが、たんが詰まって心肺が停止している状態で発見された。救命措置で心拍が再開したものの、自発呼吸ができない状態だったため、県立中央病院に転院搬送されたが、4日後に死亡した。

市によると、女性が短期入所を利用する際には、頻回に見回りをしてたんの吸引を行うということだったが、実際には巡回やたんの吸引の頻度が少なかったことなどから、市は「結果として死亡という重大な事態に至った」と責任を認め、謝罪と再発防止、2200万円の損害賠償金の支払いなどを内容に和解する。

来月の市議会12定例会での議決後は、速やかに示談する予定だという。」

上記報道の件は私が担当したものではありません.
上記報道のケースは,頻回に見回りをしてたんの吸引を行うことが契約内容(契約上の義務)となっていたと考えられます.
また,救命措置で心拍が再開したということは,もう少し早く異変を発見し対処していれば救命できたと考えられます.
たんが詰まって死亡するケースは少なくありませんが,上記報道のようなケースであれば,病院に賠償すべき責任があると考えられるでしょう.


谷直樹

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by medical-law | 2016-11-22 22:59 | 医療事故・医療裁判