弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

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東博で等伯を観る

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東京国立博物館で長谷川等伯の最高傑作「松林図屛風」(国宝)を観てきました.
主題とか中心とかいうものが(おそらく)ない,墨だけで画かれた霞に浮かぶ(あるいは沈む)松林の不思議な画です.
牧谿という手本があっても,普通の画家なら,もっと画きこんでしまうことでしょう.
極限まで筆を抑え,霞で見え隠れさせることで,見えない松を想像させます.
「真田丸」と同時代を生きた絵師は,絢爛豪華な「松に秋草図屏風」なども画いていますが,この「松林図屛風」では絶品の背景のみを画き,人や動物は画きませんでした.
余計なものは何もありません.
伝統的な水墨画として必要なものもないのかもしれません.
下絵(草稿)であって完成ではないという説があるのもうなづけます.
観る者が画の中に容易に入りこめる(受け容れる)のは,これが大きな屏風画というだけではなく,主役がいない画だからかもしれません.
計算し尽くされた松林と空白を深く観る,深く感じる,深く考える.そういう画です.
強い筆致なのに,静寂で幽玄な世界です.
よいものを観ました.

古今和歌集(元永本) 上帖」(国宝)も展示されていました.
地の和紙とかな文字の優美さが際立ちます.

本阿弥光悦の「舟橋蒔絵硯箱」(国宝)も展示されていました.
地味派手な硯箱で結構大きいです.

新年恒例の東京国立博物館の「博物館に初もうで」ですが,通常展示に加えてこのような国宝を観ることができ,お得感があります.
「博物館に初もうで」は2017年1月29日(日) までですが,「松林図屛風」の展示は2017年1月15日(日) までです.

2017年2月5日(日)のNHKEテレ「日曜美術館」は,長谷川等伯の特集です.



谷直樹

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by medical-law | 2017-01-14 21:02 | 趣味

最高裁判事に天才刑法学者山口厚氏と元駐イギリス大使林景一氏,福岡高裁長官に小林昭彦東京高裁部総括判事

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櫻井龍子最高裁判所判所判事が1月15日に,大橋正春最高裁判所判事が3月30日に,それぞれ定年退官するのに伴い,最高裁判所は,1月27日に山口厚氏を,3月31日以降に林景一氏をそれぞれ最高裁判所判所判事に任命すると報じられました.
また,荒井勉福岡高裁長官が1月24日に定年退官するのに伴い,最高裁判所は,小林昭彦東京高裁部総括判事を1月27日付で福岡高裁長官に任命するとのことです.

山口厚氏の経歴は以下のとおりです.
東京都出身
東京教育大学附属駒場高等学校(現・筑波大学附属駒場高等学校),東京大学法学部卒業
3年生のときに司法試験合格
1992年 東京大学法学部教授
2014年 東京大学退職,早稲田大学法学学術院教授
2016年 弁護士登録(第一東京弁護士会,桃尾・松尾・難波法律事務所
数々の伝説がある天才刑法学者ですから,判決に期待がもてます.

林景一氏の経歴は以下のとおりです.
山口県出身
大阪府立天王寺高等学校,京都大学法学部卒業
1974年外務省入省
条約局条約課長,北米局外務参事官,在イギリス大使館公使,大臣官房審議官(条約局担当),条約局長,国際法局長,駐アイルランド大使,大臣官房長,内閣官房副長官補,駐イギリス大使


小林昭彦氏は,長野県出身,東北大学法学部卒業,司法修習33期です.

【追記】
福岡高裁長官荒井勉氏(29期)定年退官の玉突き人事(1月27日付)は,次のとおりです.
福岡高裁長官に小林昭彦氏(33期,東京高裁部総括判事)
東京高裁部総括判事に都築政則氏(37期,新潟地裁所長)
新潟地裁所長に足立哲氏(38期,東京地裁判事兼東京簡裁司法行政事務掌理者)
東京地裁判事兼東京簡裁司法行政事務掌理者に矢尾和子氏(39期,東京地裁部総括判事)
東京地裁部総括判事に佐藤哲治氏(44期,東京高裁判事)
東京地裁民事35部(医療集中部)にまで波及しました.佐藤哲治判事は,秋吉仁美判事編著「医療訴訟」の計画審理の章を執筆していました.


名古屋家裁部総括判事岩井隆義氏(39期)依願退官による玉突き人事(1月18日付,1月27日付)は,次のとおりです.
名古屋家裁部総括判事に手崎政人氏(38期,名古屋地家裁岡崎支部部総括判事)
名古屋地家裁岡崎支部部総括判事に鵜飼祐充氏(45期,名古屋地裁部総括判事)
名古屋地裁部総括判事に田辺三保子氏(41期,名古屋高裁判事)
藤井浩人美濃加茂市長の無罪判決が高裁で逆転有罪となり,無罪判決を書いた1審裁判長は本庁から支部へ転任になりました.逆転有罪と異動に関連性があるかはわかりませんが.


知財高裁所長設楽隆一氏(29期)定年退官に伴う玉突き人事(1月27日付)は,次のとおりです.
知財高裁所長に清水節氏(31期,知財高裁部総括判事)
知財高裁部総括判事に森義之氏(33期,大阪高裁部総括判事)
大阪高裁部総括判事に田中俊次氏(34期,福岡高裁部総括判事)
福岡高裁部総括判事に須田啓之氏(34期,宮崎地家裁所長)
宮崎地家裁所長に山之内紀行氏(38期,福岡高裁判事)


谷直樹

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by medical-law | 2017-01-13 20:36 | 司法

新判事補78人,1月16日付で発令

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2017(平成29)年1月16日に,新判事補78人が発令になります.
昨年と比較すると,司法修習を終えた人数は1766人から1762人と4人減っただけですが,判事補採用人数は91人から78人と13人減っています。とくに,女性は38人から30人と8人減っています。
出身法科大学院は21校から11校に減っています.
内訳は次のとおりで,京大法科大学院修了者がトッとなり,東大法科大学院修了者は9人減(ほぼ半減)で3位でした.予備試験合格者は1人増えて8人となりました.


京大法科大学院  14人→14人
一橋大法科大学院  8人→11人
東大法科大学院  19人→10人
慶應大法科大学院 13人→10人
中大法科大学院   8人→ 9人
予備試験   7人→ 8人


谷直樹

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by medical-law | 2017-01-13 10:00 | 司法

金沢医科大学病院,ラジオ波焼灼後の右横隔膜の損傷による出血死の事案で提訴される(報道)

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中日新聞「「術後処置遅れ出血死」 遺族、金沢医大を提訴」(2016年12月20日)は,次のとおり報じました.

「肝細胞がんの手術を受けた際に横隔膜を傷つけられ、石川県津幡町の七十代の男性が出血死したとして男性の遺族が十九日、金沢医科大病院(同県内灘町)を運営する金沢医科大に慰謝料など約四千万円を求め、金沢地裁に提訴した。

 訴状などによると、男性は昨年八月に金沢医科大病院で肝細胞がんが発見され、同年十一月十日、体内に差し込んだ針の先から高周波を放って腫瘍を焼く「ラジオ波焼灼(しょうしゃく)療法」の手術を受けた。

 手術後、男性は吐き気などを訴え、五時間後には血圧も低下。翌十一日午前七時ごろ死亡した。解剖で死因は右横隔膜の損傷による出血死だったことが分かり、遺族側は手術時に傷つけられたことが出血原因と主張している。

 遺族側は十一日未明に血液検査で血液中のヘモグロビンの急激な低下が確認され、体内の出血が疑われる状態にもかかわらず、当直医が適切な検査や止血などをしなかったとも指摘。さらに、容体が変わった夜間に、医師の間で情報共有がされておらず処置が遅れるなどいくつかの注意義務違反があったと訴えている。

 遺族の代理人などによると、男性の死亡は、診療中の予期せぬ死亡事故を調べる国の「医療事故調査制度」の対象となり、病院と第三者機関が院内を調査。今年六月に出た調査報告書では、医師間の連携が取られなかったために出血の発見が遅れたことが指摘され、遺族にも報告された。

 金沢医科大病院の担当者は取材に「訴状が届いていないのでコメントは差し控える」と話した。」


報道の件は,私が担当したものではありません.
右横隔膜の損傷による出血死の原因は,ラジオ波焼灼によるものと考えるのが合理的でしょう.
医師間の連携が取られなかったために出血の発見が遅れたこと以外にも,注意義務違反(過失)は考えられるようです.
審理及び判決に注目したいと思います.


谷直樹

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by medical-law | 2017-01-12 23:40 | 医療事故・医療裁判

日弁連CM、武井咲さんの「突然の崖」篇で弁護士がイメージアップ?

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日本弁護士連合会(日弁連)のCM「突然の崖」篇が日弁連のサイトYouTube で見られます.
14日から22日まで地上波、BS放送、交通広告で流れます

〇地上波
「相葉マナブ」 1/15(⽇) 18:00〜18:30
「ヒルナンデス」 1/17(⽕) 11:55〜13:55
「おじゃMAP!!」 1/18(⽔) 19:00〜19:57
「バナナマンのせっかくグルメ」 1/22(⽇) 18:30〜19:00

〇BS放送
「プライムニュース」「所さんの世⽥⾕ベース」など 1/14(⼟)〜22(⽇)
「ワールドビジネスサテライト」「⽇経モーニングプラス」1/14(⼟)〜22(⽇)

逮捕、離婚、謝罪会見などで弁護士の助けを必要とした芸能人に出演してもらい,たとえばNHKの了解をとって「プロフェッショナル仕事の流儀」ふうにポーンのあとに黒地に白文字で「振り返って出てくる答えは感謝」,「やり直しがきかない人生 そんな中に人は生きてる」などと出すほうがインパクトがあると思うのですが、イメージアップCMということで、崖とは無縁の武井咲さんが出演する爽やかなCMです.
これを見て、世間の人はどのように思うのでしょうか?
これで弁護士のイメージがアップするのですかねぇ.
崖から落ちそうなのは弁護士だろう、という突っ込みがないことを願います.


谷直樹


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by medical-law | 2017-01-11 01:47 | 弁護士会

法務省など,司法予備試験、見直し議論(報道)

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共同通信「司法予備試験、見直し議論 「近道」対策で、法務省など」(2016年12月29日)は次のとおり報じました.


「法務、文部科学両省や最高裁などが近く協議会を開き、法科大学院を修了しなくても司法試験の受験資格を得られる予備試験制度の見直しを議論することが29日、関係者への取材で分かった。経済的理由などで法科大学院に進学できない人を救済するための制度が、法曹への「近道」に使われる傾向が強まったため。議論が受験資格の制限といった具体策にまで至るかは不透明だ。」


文部科学省の「中央教育審議会大学分科会法科大学院特別委員会」は,以前から「予備試験の受験者及び合格者の中に、学部在学生や法科大学院在学生といった本来プロセス養成を経て法曹を目指すことが期待されている層が大きな割合を占めていることについて、学部教育や法科大学院教育に与える影響や、予備試験の受験資格も含めて、その在り方を速やかに検討していくことが望ましいと考えられる」という考えですので,学部在学生や法科大学院在学生の予備試験受験資格を制限する動きがでてくることが考えられます.
しかし,法科大学院修了者より予備試験合格者のほうが就職に有利ですので,法科大学院在学生の予備試験受験資格を制限すると,予備試験を目指す者が増え,法科大学院を受験する者は減ることになるでしょう.


谷直樹

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by medical-law | 2017-01-10 01:26 | 司法

吹田市の有料老人ホームで准看護師が呼吸器電源入れ忘れ女性死亡(報道)

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朝日新聞「人工呼吸器の電源入れ忘れ、ホーム入居者を死なせた疑い」(2017年1月5日)は,次のとおり報じました.

「大阪府吹田市の有料老人ホーム「メディカル・リハビリホームくらら吹田」で昨年8月20日夜、入所中の重病の女性(68)が付けていた人工呼吸器の電源を入れ忘れて、窒息死させたとして、大阪府警は5日、施設長の女(36)=同府茨木市=と准看護師の女(53)=兵庫県伊丹市=を業務上過失致死の疑いで書類送検し、発表した。共に容疑を認めているという。

 捜査1課によると、准看護師は「たんの吸引の際にアラーム音が鳴るのが煩わしく、普段から電源を切っていた」、施設長は「医療行為は医師や看護師に任せていた」と供述している。

 女性は筋肉が萎縮する重病で、自発呼吸が困難だった。昨年6月にも別の看護師が女性の人工呼吸器の電源を約30分入れ忘れていたが、女性の家族には伝えていなかったという。

 遺族は「入居者の安全という根本的なことが軽視され、企業の都合が優先されたことが残念でならない。二度と同じような事故を起こさないでほしいと強く願う」との談話を出した。」


産経新聞「呼吸器電源入れ忘れ女性死亡、老人ホーム施設長ら2人書類送検…ベネッセ系運営 大阪府警」(2017年1月5日)は,次のとおり報じました.

「大阪府吹田市の介護付き有料老人ホームで昨年8月、人工呼吸器が停止して入所女性(68)が死亡した問題で、大阪府警捜査1課は5日、たんの吸引作業後も呼吸器の電源を入れ忘れたまま放置していたとして、業務上過失致死容疑で女性施設長(36)と女性准看護師(53)を書類送検した。いずれも容疑を認めている。

 府警によると、死亡した女性は寝たきり状態で、昨年6月にも別の看護師が呼吸器の電源を入れ忘れ、約30分間停止する事故が起きていた。施設長は女性の家族や運営会社に事故を知らせず、再発防止策も取っていなかったという。

 書類送検容疑は昨年8月20日午後7時20分ごろ、吹田市朝日が丘町の「メディカル・リハビリホームくらら吹田」で、入所女性のたんを吸引した後、呼吸器の電源を入れ直すのを怠って放置し、女性を窒息死させたなどとしている。

 同課によると、本来は吸引作業中も電源を切ってはならないが、准看護師は「電源を入れたまま吸引作業をするとアラーム音がしてわずらわしく、頻繁に電源を切っていた」と供述している。

施設はベネッセコーポレーションの関連会社「ベネッセスタイルケア」が運営。同社の老松孝晃取締役は「深くお詫びする。責任を痛切に感じている」と話した。一方、女性の遺族は「入居者の安全が軽視され残念。介護事業者には安全管理を徹底してほしい」とのコメントを出した。」


NHK「老人ホーム女性死亡 准看護師が呼吸器電源入れ忘れか」(2017年1月5日)は,次のとおり報じました.

「去年8月、大阪・吹田市の介護付き有料老人ホームで、入居者の女性が死亡しているのが見つかり、警察は、女性に着けられていた人工呼吸器の電源を准看護師が切ったあと入れ忘れたとして、この准看護師など2人を業務上過失致死の疑いで書類送検しました。

去年8月、大阪・吹田市朝日が丘町の介護付き有料老人ホーム「メディカル・リハビリホームくらら吹田」で、入居していた68歳の女性が死亡しているのが見つかりました。
警察が調べたところ、この女性は病気のため自分で呼吸できず人工呼吸器を着けていましたが、担当の53歳の准看護師がたんを吸引する際、呼吸器の電源を切ったあと入れ忘れたと見られることがわかったということです。
警察は、安全管理が不十分だったとして、准看護師と36歳の施設長の2人を業務上過失致死の疑いで書類送検しました。

警察によりますと、この施設では去年6月にも、同じ入居者に着けられた人工呼吸器の電源を、別の看護師が一時、入れ忘れましたが、施設長は具体的な再発防止策を取っていなかったということです。

警察によりますと、2人は容疑を認め、准看護師は「電源をつけたままだとアラーム音が鳴るので、切って作業していた」と話し、施設長は「医者や看護師に任せきりになっていた」などと話しているということです。

遺族「企業の利益優先 安全管理徹底を

死亡した女性の長女と次女は、代理人の弁護士を通じてコメントを出し、「看護職員のほとんどが人工呼吸器の適切な使い方を知らず、過去にあった同様の事故についても対策や報告が行われていなかった。入居者の安全が軽視され企業の都合や利益が優先されていたことが残念でならない。安全管理を徹底し、二度と同じような事故を起こさないでほしい」と指摘しています。

一方、施設を運営する「ベネッセスタイルケア」の老松孝晃取締役は「あってはならないミスで人命が失われ、大変重く受け止めています。亡くなった入居者とご遺族に深くおわび申し上げます。全国の事業所に急いで再発防止策を示していきたい」と話しています。」



人工呼吸器の電源入れ忘れ事故は,病院などでも以前から結構起きています.
スイッチの入れ忘れによる事故について,以下の裁判例があります.

○看護師3名がアイセル病の患者を入浴させた後,人工呼吸器のアラームのスイッチをオンにするのを忘れ,その後人工呼吸器の接続部がはずれて患者Aが呼吸困難の状態に陥ったがアラームが鳴らなかったために気付くのが遅れ,患者が死亡した事案
「人工呼吸器がAの体からはずれると同人の生命自体が脅かされる状況にあったのであるから,担当看護師が負っていた人工呼吸器のアラームのスイッチを入れておくべき注意義務は,きわめて重大かつ基本的義務であるとともに,わずかの注意さえ払えばこれを履行することができる初歩的な義務であるということができる。この注意義務を怠ったこと自体,重大な過失であるし,さらに,以前にも同様の事故があり,病院側も本件のような事故が生じる可能性を十分に認識し得たにもかかわらず,再び本件事故を惹起したのであるから,その責任は重大である。」と判示されました.
(神戸地判平成5年12月24日 判タ868・231)。

○准看護師が,清拭後人工呼吸器のメインスイッチをオンに戻さず患者を死亡させた事案
「人工呼吸器のメインスイッチをオンの状態にするのはもとより,そのフロントパネルの表示を目視し,同女の胸郭を観察するなどして,清拭後も右人工呼吸器が正常に作動して同女への空気の供給が正常に為されていることを確認し,事故の発生を未然に防止すべき業務上の注意義務」が認められました.
准看護師は罰金50万円
(松江簡略式命令平成13年1月9日,飯田英男ら『刑事医療過誤Ⅱ増補版』561頁)

○准看護師が人工呼吸器の加温加湿装置の給水後に人工呼吸器を作動させず患者を死亡させた事案
「給水作業後は,人工呼吸器を作動させ,その気道内圧計及び同人の胸郭の観察等を行い,同人への酸素の供給が正常になされていることを確認し,事故の発生を未然に防止すべき業務上の注意義務」が認められました.准看護師は禁錮8月,執行猶予2年に処せられました.(盛岡地一関支判平成15年11月28日(飯田英男ら『刑事医療過誤Ⅱ増補版』594頁)
仙台高裁平成16年10月14日判決は控訴棄却,さらに上告棄却で確定しました.

○看護師が平成14年1月人工呼吸器の加湿器の蒸留水を交換した際,一時的に切った電源を入れ忘れ,患者が死亡した事案
札幌地判平成19年4月25日は,看護師の過失を認めました。
看護師は,平成17年,小樽簡裁で罰金50万円の略式命令を受けました(毎日新聞2007年4月26日).

○国立H病院母子医療センターの看護師Xが三方活栓の空気抜き後にシリンジポンプの輸液流量の設定値を0に戻さず,かつその流路を三方活栓で遮断せず,看護師Yが当該シリンジポンプを起動させる際,輸液量の設定値の確認を怠りイノバン希釈液を過量投与し患者を死亡させた事案
看護師Xについて,「三方活栓内の空気を抜いた後は,同設定値を0に戻し,医師の指示に基づき同液の投与を開始するまでは,その流路を三方活栓で遮断して,同液の過量投与を防止すべき業務上の注意義務」に違反したとして,看護師Yについて,「同シリンジポンプの輸液流量の設定値を確認して同液の過量投与を防止すべき業務上の注意義務」が認められました.
看護師Xは罰金30万円,看護師Yは罰金50万円に処せられました.
(弘前簡略式命令平成15年1月31日,飯田英男ら『刑事医療過誤Ⅱ増補版』578頁)


谷直樹

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by medical-law | 2017-01-09 02:12 | 医療事故・医療裁判

アメリカ国立衛生研究所,生後4~6カ月からピーナツを含む食品を食べさせた方がよいとする指針を発表

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朝日新聞「生後4~6カ月でピーナツを アレルギー予防へ米国指針」(2017年1月6日)は,次のとおり報じました
 
「米国立保健研究所(NIH)は5日、ピーナツアレルギーを防ぐため、医師に相談した上で生後4~6カ月からピーナツを含む食品を食べさせた方がよいとする指針を発表した。

 指針によると、強い卵アレルギーや皮膚炎がある乳児には、医療機関で検査を受けて問題なければ生後4~6カ月にピーナツ成分を含む食品を与え始める。軽い皮膚炎のある乳児には6カ月ごろから与え、特にアレルギー体質でない乳児は自由に食べてよいとした。

 米英の研究チームが2015年に発表したアレルギー体質の乳児600人以上を対象にした調査で、ピーナツ成分を含む食品を食べて育った方がアレルギーを発症する割合が約8割少なかったことを踏まえた。

 米国では米小児科学会が00年に出した指針で、食物アレルギーの恐れが高い乳児は3歳までピーナツなどを避けるよう勧めていたが、その後研究が進み、指針は08年に撤回されていた。」


ピーナツ成分を含む食品を制限したほうがかえってアレルギーを発症する割合が高かったという調査に基づくものです.卵についても同様の報告があります.


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by medical-law | 2017-01-08 23:44 | 日常

東京高裁に始まり東京高裁に終わる玉突き人事

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東京高裁部総括判事青野洋士氏(司法修習34期)が平成29年1月1日依願退官し,それに伴う人事が同日発令されました.

東京高裁部総括判事に尾島明氏(37期,静岡地裁所長)
静岡地裁所長に廣谷章雄氏(37期,鹿児島地家裁所長)
鹿児島地家裁所長に松井英隆氏(37期,横浜地裁部総括判事)
横浜地裁部総括判事に鹿子木康氏(38期,千葉地裁部総括判事)
千葉地裁部総括判事に高瀬順久氏(42期,東京高裁判事)
がそれぞれ異動になりました.

なお,廣谷章雄判事は,平成26年3月31日まで東京地裁民事30部(医療集中部)の部総括判事で,意欲的に医療事件に取り組んでおられました.東京地裁部総括判事の年数は長かったのですが,その後千葉地裁部総括判事→鹿児島地家裁所長→静岡地裁所長は比較的短期間で異動となっています.


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by medical-law | 2017-01-07 03:48 | 司法

今津赤十字病院の看護助手にトイレで2時間放置された見守りが必要な難病患者が心肺停止となり死亡(報道)

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朝日新聞「トイレに難病患者2時間放置、1カ月後死亡 福岡の病院」(2017年1月1日)は,次のとおり報じました.
 
「福岡市西区の今津赤十字病院(藤井弘二院長)で昨年、難病で入院していた福岡県糸島市の女性(当時68)がトイレで約2時間放置されて心肺停止になり、約1カ月後に死亡していたことが、同病院への取材でわかった。

 病院によると、女性は脳の神経細胞の変異から筋肉のこわばりを起こす指定難病「多系統萎縮症」の患者で、昨年8月8日に入院。左半身にまひがあるため車いすを使い、会話も難しかったという。院内では、移動時に付き添いが必要との申し送りがされていた。

 8月12日午前10時ごろ、女性看護助手に付き添われてトイレに行き、正午過ぎ、心肺停止になっているのを別の職員が見つけた。放置されている間に血圧が低下し、心肺停止になったという。女性は9月9日に亡くなった。

 この看護助手は別の業務のためその場を離れ、女性には「終わったらナースコールで呼ぶように」と伝えていたという。

 看護助手は当初、病院に「5~10分おきに様子を見に行った」と説明し、病院も家族にそう伝えた。だが数日後、実際には約2時間離れていたと看護助手が説明を翻したため、病院は8月18日に再度家族へ説明し、謝罪したという。

 この看護助手は11月に依願退職した。同病院の武田義夫事務部長は「深くおわび申し上げます」と話した。再発防止として、見守りの必要な患者の移動時には、ベッドに行き先を書いた札を置く措置を講じたという。(鈴木峻)」

産経新聞「難病女性をトイレに放置、死亡 福岡の病院「5~10分おきに様子見ていた」虚偽説明」(2016年1月3日)は次のとおり報じました.

病院によると、女性は脳の神経細胞が変性して筋肉のこわばりを起こす指定難病「多系統萎縮症」で昨年8月8日に入院。同月12日、看護助手に付き添われてトイレに行った後一人で残され、約2時間後に心肺停止の状態で発見された。低血圧で意識を失ったとみられ、9月9日に死亡した。女性は以前もトイレで意識を失ったことがあり、見守りが必要と院内で申し送りをしていたが、十分伝わっていなかった。

 病院側は家族に対し、看護助手への聞き取りを基に断続的に見守っていたと説明していたが後日、誤りがあることが判明して謝罪した。看護助手は11月に依願退職した。

 事故調査委員会を設置し、詳しい事故原因を調べている。同院は「深くおわびする。信頼回復のため、再発防止に一層の対策を講じたい」としている。」


この件は私が担当したものではありません.

平成 24 年度社会保険診療報酬改定により,看護職員の業務を補助する職員の配置に対してより手厚い評価がなされました.その後,看護補助者(看護助手)を増員する病院が増えています.
しかし,看護補助者の研修,情報共有,業務の適正な分担については,問題もあるようです.
看護補助者の資質,経験,研修の程度に応じて,本来,任せられる業務の範囲,任せ方が異なるはずです.

報道の件は,この患者が以前もトイレで意識を失ったことがあり見守りが必要なことが当該看護補助者には十分伝わっていなかったことがそもそもの問題です.
病室で看護師の見ているところで看護補助者が業務にあたるときは看護師の目がとどきますが,それ以外の場合,トイレ,浴室のような場所で看護補助者が単独で業務にあたる場合には,病院は事故が起きないように,リスクを十分に認識し適切に対応できる体制にしておく必要があります.
報道の件は,当該看護補助者がその患者をトイレに運んでいく業務のリスクを十分認識していなかった原因を検討する必要があるでしょう.
また,当該看護補助者が虚偽の説明を述べた背景事情も検討すべきでしょう.
事故調査委員会の報告はホームページで公表していただきたく思います.

看護補助者(看護助手)は平成24年以降増えていますが,病院の看護補助者(看護助手)に対する研修,管理の体制が不十分であると事故が起きるリスクがあります.そのリスクは,この病院だけの問題ではないのではないかと思います.


谷直樹

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by medical-law | 2017-01-06 08:17 | 医療事故・医療裁判