弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

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日本大学医学部附属板橋病院,鎮静剤プレセデックスなどの投与ミス4件(報道)

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朝日新聞「日大板橋病院で投与ミス4件 一時、心肺停止の患者も」(2017年3月16日)は次のとおり報じました.

日本大学板橋病院(東京都、平山篤志院長)で2015~16年、患者3人に対し鎮静剤プレセデックスなどの投与ミスが4件相次いで起きたことが同大学への取材でわかった。このうち1件では患者が一時心肺停止になった。

 同病院は現在、プレセデックスの使用を停止し、薬の知識不足が背景にあるとして、医師や研修医に危険薬の使用方法を記した冊子の携帯を義務づけるなどの対策をとったという。厚生労働省が関係者から事情を聴いている。

 日大によると、誤投与が起きたのはいずれも救命救急センター。15年7月、入院中の70代男性に対し、看護師が医師の指示を受けずにプレセデックスの急速投与を実施し、一時心肺停止になった。プレセデックスの添付文書では、緩やかな持続投与が厳守とされている。男性は16年9月に口腔(こうくう)底がんで死亡したが、「薬が死亡の原因ではない」としている。

 16年5月には、救急搬送された80代男性に対し、研修医がプレセデックスの急速投与を指示し、看護師が実施。さらに16年12月にも入院していた当時2歳の女児に対し、看護師が点滴の設定を誤り通常の10倍のプレセデックスを投与し、別の看護師がミスに気づいて投与を中止。約10日後には、研修医の誤った指示で解熱剤アセリオが過量投与された。この3件について「健康被害はなかった」としている。


報道の件は,私が担当しているものではありません.
大学病院,特定機能病院でも,看護師による単純な投薬ミスがおきています.
添付文書を無視した投薬方法は危険です.


谷直樹

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by medical-law | 2017-03-17 23:49 | 医療事故・医療裁判

東京地裁,ノバルティスファーマの降圧剤ディオバンを巡る研究論文データ改ざん事件で無罪判決(報道)

b0206085_22174265.jpgNHK「論文データ改ざん事件 製薬会社と元社員に無罪判決 東京地裁」(2017年3月16日)は,次のとおり報じました.

「16日の判決で、東京地方裁判所の辻川靖夫裁判長は「元社員が臨床研究の数値を水増しし、意図的に改ざんしたデータを研究チームに提供したことは認められる」と指摘しました。そのうえで、「研究チームが発表し、雑誌に掲載された論文は一般の学術論文と異なるところがなく、薬事法で規制された治療薬の購入意欲を高めるための広告にはあたらない」として、ノバルティスファーマと元社員にいずれも無罪を言い渡しました。」

報道の件は,私が担当したものではありません.

降圧剤ディオバンを巡る研究論文データ改ざん事件で薬事法違反の刑事責任を問うことについての疑問は,以前,ブログにも書きました.

旧薬事法時代の「薬事法における医薬品等の広告の該当性について(平成10年9月29日医薬監第148号都道府県衛生主管部(局)長あて厚生省医薬安全局監視指導課長通知)」で,顧客を誘引する(顧客の購入意欲を昂進させる)意図が明確であること,特定医薬品等の商品名が明らかにされていること,一般人が認知できる状態であることが「広告」の要件とされています.
そこで,東京地裁判決は,科学的論文の体裁をとっている本件について,顧客を誘引する(顧客の購入意欲を昂進させる)意図が明確である広告ではない,と判断したのでしょう.
東京地裁判決は,科学的論文は「広告」ではないというだけで無罪とすることもできた筈なのですが,(上級審での審理も考えたのかもしれませんが)データを改竄した事実を認定しています.刑事弁護人は,このような傍論を苦々しく思うかもしれません.

起訴については疑問も大きいのですが,たしかにもし検察が捜査,起訴しなければ,データ改竄に関する事実の解明は十分できなかった可能性もあります.厚労省の告発を受けて検察がある程度の無理を承知で勝負に出たのは,そのへんのことがあったのかもしれません.その意味では,ノバルティスファーマは, 「試合(裁判)に勝って勝負に負けた」と言えるかもしれません.

「坂の上の雲」で知られる秋山真之大日本帝国海軍中将は,「敗くるも目的を達することあり。 勝つも目的を達せざることあり。 真正の勝利は目的の達不達に存す。」(『天剣漫録』)と言っています.

データ偽造を現行薬事法で処罰できないとなれば,薬事法改正が課題になるでしょう.

【追記】

産経新聞「ノバルティス社無罪判決 検察幹部「不可思議としか言いようがない」」(2017年3月16日)は,次のとおり報じました.
 
「ノバルティスファーマの降圧剤ディオバンの臨床研究データ改竄事件で、薬事法違反の罪に問われた会社と元社員に無罪を言い渡した東京地裁判決。元社員がデータを意図的に改竄したと認定しながら、同法で規制された治療薬の購入意欲を高めるための広告には当たらないとした司法判断に、検察内では「不可思議としか言いようがない」「地検、高検、最高検の誰もが驚いている」と戸惑う声が相次いだ。東京地検は控訴も視野に、慎重に検討するもようだ。

 「データが意図的に改竄されていても、学術論文の形態を取っていれば、それで良いというのか」。検察幹部の一人はこう憤る。

 判決は、同法が規制した「誇大広告」ではないと判断したが、ある検察幹部は「元社員が改竄データを研究者に提供した目的は一つ。論文に掲載させ、薬の販売を促進するためだった。起訴自体に問題はない」と強調。別の幹部も「主務官庁の厚生労働省も薬事法で告発している。あまりに意外な判決。これから同様のケースを野放しにしてよいというのか」と語った。

 一方、厚労省は「個々の判決については差し控えたいが、臨床研究に対する国民の信頼を回復することが大切と考える。厚労省としては、臨床研究と製薬企業の活動の透明性確保のため臨床研究法案を国会に提出しており、臨床研究と製薬企業の活動の適正性確保に努めたい」としている。」




谷直樹

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by medical-law | 2017-03-16 22:09 | 医療事故・医療裁判

京都府立医科大学附属病院と虚偽診断書作成罪の成否~BKウイルス腎炎の併発の事実の有無~

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京都新聞「収監逃れ、疑惑解明遠く 京都府立医大強制捜査1ヵ月」(2017年03月14日)は,次のとおり報じました.


「指定暴力団A組系B一家(大津市)のC受刑者(60)は2014年7月当時は公判中で、腎臓疾患で人工透析を受け、保釈されていた。府立医大付属病院によると、同月に生体腎移植を受けた。D院長や講師はC受刑者の病状について、判決確定後の15年8月、検察庁からの照会に対し、腎疾患で「拘禁に耐えられない」と病院長名で回答書を作成し、提出した。


 京都新聞社が入手したこの回答書によると、検察側は、病名や治療状況、入院の必要性など13項目について質問している。病院側は病名を「移植腎拒絶反応」とし、拘禁に耐えられない理由に「BKウイルス腎炎の併発で、免疫抑制療法の厳重な調整を継続する必要があり、改善に2年を要する」などと記載。治療に必要なものとして、免疫抑制剤の血中濃度の測定装置や、血中・尿中ウイルスの定量検査などを挙げている。


 法務省は、C受刑者が収監された大阪刑務所など、全国の刑務所など矯正施設のうち約10カ所で人工透析治療装置を設置。腎疾患患者も収監しており、「病態によるが、移植患者だから収監できない、ということはない」としている。

 D院長は会見で、C受刑者が移植後約1年で入院した際、血中クレアチニン(アミノ酸の一種)の値が100ミリリットル当たり1・06ミリグラムから1・17ミリグラムに上昇したとのデータを示し、感染症の危険性を指摘。「テレビなどで想像し、衛生状態の不確かな刑事施設では感染症にかかる可能性が高いと考えた」と説明した。院長の代理人弁護士によると、収容施設の設備環境や診察態勢の詳細な説明は検察側からはなかったという。」



報道の件は,私が担当している案件ではありません.


結核の集団感染は,学校でも事業所でもときどき起きていましたが,2015年3月1日に,NHKが「札幌刑務所などで結核の集団感染」を報じていました.そのようなテレビを見て刑事施設では感染症にかかる可能性が高いと考えたのかもしれません.
ただ,免疫抑制薬の使用量が多い移植後3ヶ月以内がとくに感染症に注意を要する時期です,
それ以降は,一生,血中・尿中ウイルスの定量検査を行い,血中濃度を測定してカルシニューリン阻害剤を必要最小限に調整していきます.それは,刑務所に収容してもできることではないでしょうか.(そうでないと,移植を受けた人を刑務所に収容することができなくなります.)


2年とした理由は,報道からすると,「BKウイルス腎炎の併発」のようです.
BKウイルス自体は多くの人がもっており,免疫抑制薬の使用により活性化することがあり,BKウイルス腎炎を発症すると治療は困難です.
もし,BKウイルス腎炎併発が真実であれば,虚偽診断書作成罪は成立しないでしょう.
もし,BKウイルス腎炎併発が虚偽であれば,虚偽診断書作成罪の成立が問われ得るでしょう.


血中クレアチニン値の基準値の成人男性0.66~1.13 mg/dlなどとされており,本件の1.17 mg/dlはそれを越えていますが,軽度です.血中クレアチニン値は,筋肉量などによって個人差があり,食事によっても左右されます.1.06 mg/dlが1.17 mg/dlに上昇したことだけでは腎炎の疑いをもつことはできてもBKウイルス腎炎と診断はできないでしょう.
そもそも,BKウイルスの量は,診断当時どれくらいで推移していたのでしょうか.
診断から2年たたない2017年2月14日に大阪刑務所に収容されたそうですが,BKウイルス腎炎治療はどのように行われ,BKウイルスの量は,診断当時からどのように変化し,BKウイルス腎炎はどうなっていたのでしょうか.病態が改善し収容可能となった可能性も考えられます.医学的に厳正な調査が必要でしょう.


なお,学長が学長室でC総長と会い先斗町と祇園で接待を受けていたことが診断書の記載に影響した可能性も疑われますが、診断書の内容が虚偽でなければ、虚偽診断書作成罪は成立しません.


指定暴力団A組系B一家のC総長は、京都市に本部を置く指定暴力団E会の四代目組長の長男で大学を卒業し民族系金融機関に就職しB一家を起こした人で,その影響力が大きなことが推測できますが、犯罪構成要件は厳正に判断されねばなりません.


谷直樹

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by medical-law | 2017-03-15 06:59 | 医療事故・医療裁判

鹿児島地判平成29年3月14日,数日前から症状があった急性肺血栓塞栓症で霧島記念病院に賠償命令

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産経新聞 「「治療怠る」患者死亡で病院に賠償命令 鹿児島地裁」(2017年31月14日)は,つぎのとおり報じました.
 
「医療法人健康会が開設する霧島記念病院(鹿児島県霧島市)が、肺に血栓が詰まる肺塞栓の検査や治療を怠ったとして、死亡した男性患者=当時(76)=の遺族が計約4270万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、鹿児島地裁(鎌野真敬裁判長)は14日、病院側に計約2470万円の支払いを命じた。平成24年11月13日、脳内出血で同病院に搬送されて入院、翌月に急性肺血栓塞栓症で死亡した。

 鎌野裁判長は判決で「遅くとも死亡の数日前までには症状が認められたのに、必要な検査と治療を怠る過失があった」と指摘した。」



これは私が担当したものではありません.
肺血栓塞栓症についてはこのように治療の不作為について責任が認められるケースがあります.
発症確率が低くても,警戒すべき疾患についてその兆候を見逃した場合,注意義務違反が問われると考えるべきでしょう.また,予防,治療の付実施との因果関係についても高度の蓋然性が認められるケースが増えているように思います.

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by medical-law | 2017-03-15 03:57 | 医療事故・医療裁判

受動喫煙対策:厚生労働省の原案に賛同署名を!!

一般社団法人日本禁煙学会(理事長作田学)は,つぎのとおり,厚生労働省の原案に賛同署名を呼びかけています.
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2月 8日付けの新聞報道により ますと 「30平方メ‐ト ル以下のキャバレー ・バー ・スナックを受動喫煙対策の例外とする」 としています。 これは、厚労省の 「健康増進法改正案」 をなし崩じ的 に意味のないものとするだけではなく 、 「タバコのないオリ ンピックを目指す」IOCと WHOの協定に も違反しています。

海外ではスペインで 100平方メート ルで分ける政策が一時行われましたが、公平性の欠落と、 従業員の受動喫煙被害などを理由に修正され、全店舗を禁煙としました。 その結果何ら問題は起 こりませんでした。メディ アでは、 「禁煙になつたら店が潰れる」 という飲食店業界幹部の一方的な 発言ばかり が宣伝されていますが、世界中のいずれの国でもそのようなことは起きており ません。

3月 2日 に公開された九州看護大学の川俣幹雄教授のグループは10,051人のアンケート 調査 を行った結果、実に73.1%が厚労省の原案(面積基準なしで一律の禁煙)に賛成でした。反対はわずか9.8%でした。
受動喫煙の害から国民を守ること(国民の健康ファースト )、 分煙は不十分で あるという観点から、 皆さまの賛同署名をよろしくお願い申し上げます。



谷直樹

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by medical-law | 2017-03-14 04:29 | タバコ

トランプ大統領とシリコンバレーと訴訟

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ロイター掲載の「コラム:トランプ政権下で変わるシリコンバレー企業の勢力図」(2017年 3月 13日)によれば,アップル社,グーグル社はトランプ大統領の政策に反対していますが,他方で,一般大衆との接点が少ないオラクル社,クアルコム社はトランプ大統領寄りとのことです.
コラムニストは,アップル社とクアルコ社ムとの訴訟,グーグル社とオラクル社との訴訟に,政権交代が影響を及ぼしそう,とみていますが,果たしてそこまでトランプ大統領は強力でしょうか.

ところで,私はスティーブ・ジョブズ氏の次の言葉が好きです.
Quality is more important than quantity. One home run is much better than two doubles.
二塁打2本より1本のホームラン,できれば2本のホームランですね.

谷直樹

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by medical-law | 2017-03-13 13:55 | 司法

2013年10月までのプレベナーを接種した子どもへのプレベナー13の補助的追加接種

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2013年10月まで,小児用肺炎球菌ワクチンは7種の菌種に対応する「プレベナー(沈降7価肺炎球菌結合型ワクチン)」が接種されていました.
プレベナー接種後73%の患者減少がみられましたが,7種以外の菌種による感染症が増え,2013年11月1日から13の菌種に対応した「プレベナー13(沈降13価肺炎球菌結合型ワクチン)」が接種されるようになりました.


そこで,プレベナーを接種していた子どもへの,プレベナー13の補助的追加接種が問題になります.
プレベナー13の補助的追加接種により,追加6種類に対する抗体が上昇すると報告されています.
現在,希望者が任意で補助的追加接種ができますが,定期接種の扱いにはなりません.

ファイザーが5歳の子どもを持つ母親2,793人に子どもの肺炎球菌ワクチン接種の実態を調査したところ,8割以上の母親が、お子さんが補助的追加接種*の対象であることを知らなかった,しかし、医師などから勧められれば接種したいという人は半数以上いた,とのことです.
子どもの肺炎球菌ワクチン接種に関する意識調査≫参照


厚労省の「小児用肺炎球菌ワクチンの切替えに関するQ&A」のQ9には,次のとおり記載されています.


「このような接種方法の定期接種化について専門家会議で検討が行われましたが、現在の我が国での発生状況を踏まえると、「プレベナー(沈降7価肺炎球菌結合型ワクチン)」の接種完了者全員に対し、更に「プレベナー13(沈降13価肺炎球菌結合型ワクチン)」の接種を行うことで得られる社会全体の利益は限定的であることから、定期接種の対象とはせず、希望者が任意で接種することとなりました。
 なお、「プレベナー(沈降7価肺炎球菌結合型ワクチン)」による定期接種完了後に、「プレベナー13(沈降13価肺炎球菌結合型ワクチン)」を任意で接種し、「プレベナー13(沈降13価肺炎球菌結合型ワクチン)」による副反応が発生した際にも、独立行政法人医薬品医療機器総合機構法による救済の対象となり得ます。」


発症するのは5歳までが多いこともあり,補助的追加接種による社会全体の利益は限られるとされています.
なお,プレベナー13の補助的追加接種は,定期接種の扱いではありませんが,自治体によっては補助があるようです.

谷直樹

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by medical-law | 2017-03-13 02:07 | 医療

宮崎地裁平成29年3月10日判決,宮崎大病院に誤って皮内注射し壊死が生じた件で10万円支払を命じる

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宮崎地裁(藤田光代裁判長)は,2017年3月10日,医師が鎮静目的で左太ももに筋肉注射を打つ際,誤って皮内に注射し1センチ大の壊死が生じたことを認定し,宮崎大医学部付属病院に慰謝料10万円の支払いを命じました

毎日新聞「宮崎大付属病院に10万円支払い命令 地裁判決」(2017年3月11日)参照

この件は私が担当したものではありません
注射の角度を小さくしてしまったために皮下注射になってしまった事案のように思います.

注射には,皮内注射,皮下注射,筋肉注射があります.
筋肉注射は,血流にのって早く全身にいきわたります .
高濃度の薬液が皮内注射,皮下にたまったりすると,局所痛・局所障害をもたらすことがあります.
とくに,酸性度が高い薬液は,筋肉注射とされています.
添付文書に,筋肉注射と指示されているものを皮内注射,皮下注射すると,上記報道のように薬液により壊死が生じることがあります.

麻酔における刺激が原因で,気管支閉塞となることがあります.加圧呼吸で対処することが多いのですが,裁判所は,気管チューブを挿入しても空気が行き渡らないと予見するのは困難だった,として,低酸素脳症については,請求を認めませんでした.

谷直樹

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by medical-law | 2017-03-12 22:37 | 医療事故・医療裁判

安全で適切な医療提供の確保を推進するため,医療法等の一部を改正する法律案,第193回国会提出

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医療法等の一部を改正する法律案が,平成29年3月10日,第193回国会(常会)に提出されました.その趣旨は,安全で適切な医療提供の確保を推進することにあります.
医療法等の一部を改正する法律案の概要は,以下のとおりです.


1.検体検査の精度の確保(医療法、臨床検査技師等に関する法律)
ゲノム医療の実用化に向けた遺伝子関連検査の精度の確保等に取り組む必要があるため、以下を実施
(1)医療機関、衛生検査所等の医療機関が検体検査業務を委託する者の精度管理の基準の明確化
(2)医療技術の進歩に合わせて検体検査の分類を柔軟に見直すため、検査の分類を厚生労働省令で定めることを規定

2.特定機能病院におけるガバナンス体制の強化(医療法)
特定機能病院における医療安全に関する重大事案が発生したことを踏まえ、特定機能病院が医療の高度の安全を確保する必要があることを明記するとともに、病院の管理運営の重要事項を合議体の決議に基づき行うことや、開設者による管理者権限の明確化、管理者の選任方法の透明化、監査委員会の設置などの措置を講ずることを義務付け

3.医療に関する広告規制の見直し(医療法)
美容医療サービスに関する消費者トラブルの相談件数の増加等を踏まえ、医療機関のウェブサイト等を適正化するため、虚偽又は誇大等の不適切な内容を禁止

4.持分なし医療法人への移行計画認定制度の延長(良質な医療を提供する体制の確立を図るための医療法等の一部を改正する法律)
持分あり医療法人から持分なし医療法人への移行促進及び法人経営の透明化等のため、
(1)移行計画の認定要件を見直した上で、(2)認定を受けられる期間を平成32年9月30日まで3年間延長
※出資者に係る相続税の猶予・免除、持分あり医療法人が持分なし医療法人に移行する際に生ずる贈与税の非課税を措置

5.その他
医療法人と同様に、都道府県知事等が医療機関の開設者の事務所にも立入検査を行う権限等を創設等


いずれも重要な改正ですが,とくに特定機能病院におけるガバナンス体制の強化,医療に関する広告規制の見直しはとくに重要です.


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by medical-law | 2017-03-11 00:40 | 医療

医師が認知症患者について認知症でないという診断書を書いた場合の責任など

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医師が結果的に誤った診断をしても,その診断がその時点の患者の身体所見,検査データ等から臨床医学的に適切な診断であれば,医師に過失はなく,損害賠償責任を負うことはありません.また,過失があっても,その過失によって損害が発生したことを患者側が立証できなければ,損害賠償責任を負いません.

公務所に提出すべき診断書,検案書又は死亡証書に医師が意図的に虚偽の記載をすると,虚偽診断書等作成罪(刑法160条)の刑事責任を負うことになります.虚偽診断書等作成罪(刑法160条)の「虚偽の記載」とは,客観的な真実に反する内容の記載をすることです.

ところで,75歳以上人は3年に1度の運転免許更新の前に,認知機能検査を受け,その結果,認知症の疑いありと判断されると,医師の診断を受けねばなりません.そこで,医師が認知症と診断すると,免許取り消しまたは停止の処分が下されます.

医師が認知症患者を認知症と診断するのは,(認知症患者は自分が認知症であることの自覚がない人が多いため文句を言われることがあるでしょうが)正しい行為です.

もし医師が認知症患者について認知症でないという診断書を作成すると,虚偽診断書作成罪(刑法160条)の刑事責任を負うことになります. 
虚偽診断書等作成罪(刑法160条)の「虚偽の記載」とは,客観的な真実に反する内容の記載をすることです。認知症の診断には,定められた手順と診断基準がありますので,その手順と基準を無視した場合,医師の裁量という言い訳は通用しません.

医師が認知症でないと診断した人が事故を起こしたときに民事の損害賠償責任を問われるのではないか,という問題があります.
医師が診断した時点で,その人が認知症だったか否かが論点になります.
医師が定められた手順と診断基準にそって認知症でないと診断していれば,診断の時点ではその人が認知症ではなかったと認められることから,仮に診断の1か月に後に事故を起こしたとしても,医師がその事故の責任を問われることはないでしょう.

なお,認知症患者はとっさの判断力が劣り,認知症患者の6人に1人が事故を起こしているという報告もありますので,認知症患者であることと事故との因果関係は推定されますので,もし医師が定められた手順と診断基準を無視して認知症患者について認知症でないと診断した場合は,たとえ事故が診断から2年後であっても民事責任を問われる可能性があります.

つまり,医師が定められた手順と診断基準にそって診断していれば,民事責任,刑事責任を問われることはないと思われます.
なお,医師にその診断能力がないときは,認知症専門医を紹介するのが適切です.
認知症の診断業務のために,認知症専門医が多忙となり,日常診療業務を生じる懸念がありますので,認知症専門医を要請し増員する必要がでてくるでしょう.

谷直樹

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by medical-law | 2017-03-10 00:28 | 医療