弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

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週刊日本医事新報4866号(2017年7月29日号),「地方公務員の有給での兼業は可能か?」

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週刊日本医事新報4866号(2017年7月29日号)の質疑応答の頁に「地方公務員の有給での兼業は可能か?」を書きました(71頁)。
関心のある方は,ご一読お願いします。
なお,同誌には,東京都医師会会長の尾﨑治夫先生が,「都独自の罰則付き受動喫煙防止条例の制定がほぼ確実になったのではないか。問題は飲食店の扱いになるが、例外を認めず原則禁煙にすべき」と述べだ」と述べたことが報じられています(13頁).


谷直樹

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by medical-law | 2017-07-28 11:26 | 医療

公益社団法人日本産婦人科医会からの,無痛分娩事故の被害者遺族の要望書への回答

公益社団法人日本産婦人科医会から,無痛分娩事故の被害者遺族の要望書への回答が届きましたので,すぐにご遺族に伝えました.
ご回答ありがとうございます.
内容は以下のとおりです.

日本産婦人科医会の安全な無痛分娩に向けた取り組み

 A様からの要望書拝読いたしました。この度のA様の奥様およびお子様に起きた医療事故につきましては、衷心より哀悼の意と遺憾の意を表します。奥様には心よりお悔やみ申し上げますとともに、お子様にはご回復を心より祈念申し上げます。

 日本産婦人科医会(以下、本会という)に寄せられました要望書につきましては、本会役員一同、ご要望に沿えるよう、また、より安全な無痛分娩の提供に向けて、なお一層の努力を傾注してまいります。

 ご要望の医療事故等の調査及び公表につきましては、本会は、2004年より偶発事例報告事業(すべての会員から報告される重大な医療事故を分析し、再発防止、医療の質の向上に資する対策立案)、さらにこの事業から2010年には妊産婦死亡報告事業(すべての会員から報告される妊産婦死亡症例を集積し、再発防止に向けた提言集を作成)を独立させ、我が国における妊産婦死亡の全例を収集し、提言集として公表することで周産期医療の向上に努めてまいりました。

 今回の事例に関する報告を受けて以来、本会の安全な無痛分娩に関する取り組みと今後の対策につき報告いたします。

1)2017年4月16日開催されました第69回日本産科婦人科学会学術講演会にお いて、学会と本会の共同プログラムの中で、「無痛分娩の安全確保に関する緊 急提言」を説明し、会員へ安全への注意を喚起いたしました。

2) 2017年5月と6月に、全会員へ「無痛分娩に関する注意」を通知いたしました。

3) 2017年6月に、分娩を扱う全国すべての医療機関に、「無痛分娩に関するアンケート調査」を実施いたしました。回答の回収を待って、集計・分析し、医 療安全に向けた対策立案の資料といたします。

4)「母体安全への提言2016 (2017年8月に発刊、会員へ配布予定)」のテーマに「無痛分娩を提供する施設では、急速遂娩、器械分娩や産褥出血、麻酔合併症などに適切に対応できる体制を整える」という事項を盛り込みました。

5)厚生労働省科学研究「無痛分娩の実態把握及び安全管理体制の構築についての研究」を関係各団体と共同で実施し、より安全な無痛分娩を普及させることにつとめます。

6)母体救命普及事業における研修、特に、無痛分娩時に起きやすいトラブルへの対処法シナリオを作成し、全国の産科医等に普及させます。

 以上のとおり、ご要望のありました医療体制につきましても、本会は、積極的に改善に向けての努力を続けております。
 また、今後も、より安全な無痛分娩に向けて取り組んでまいりますので、何卒ご理解いただきたくお願い申し上げる次第です。

A様

平成29年7月26日

公益社団法人日本産婦人科医会
会 長  木 下 勝 之 」



今後とも真摯に取り組み安全な医療のための実効的な対策がとられることを期待いたします.


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by medical-law | 2017-07-27 15:46 | 医療事故・医療裁判

医療安全情報No.128(2017年7月)手術部位の左右の取り違え-脳神経外科手術-

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公益財団法人日本医療機能評価機は,医療安全情報No.128(2017年7月)「手術部位の左右の取り違え-脳神経外科手術-」を発表しました.

「手術部位の左右の取り違え」については,医療安全情報No.8(2007年7月),No.50(2011年1月)でも取り上げられていますが,その後、類似の事例が26件あり,そのうち11件は脳神経外科手術の事例であったことから,今回の医療安全情報No.128(2017年7月)となったとのことです.

「脳神経外科手術で手術部位の左右を取り違えた事例が11件報告されています。
○いずれも、画像は確認したがポジショニングなどを行う前に手術部位を確認しなかった事例です。
○4件は、執刀直前に医師が声に出した手術部位と執刀部位を照合しなかった事例です。」



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by medical-law | 2017-07-27 06:21 | 医療事故・医療裁判

東京慈恵会医科大学附属病院,がんの見落とし(診療情報共有改善検討委員会答申について)

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私は,癌の見落とし事案についての損害賠償請求事件を数多く担当してきましたが,その経験からすると,癌の見落としの多くは単純な連絡ミスであって,担当医が読影報告書を未読でスルーしているケースが目立つように思います.
読影ミスは過失が争われ裁判になって判例として残ることがありますが,連絡ミスは示談で解決するため判決に至らず,検討されることが少なかったように思います.

東京慈恵会医科大学附属病院が,平成29年7月20日に公表した,「診療情報共有改善検討委員会答申について」は,癌の見落とし防止に役立つ具体的な方策を提案しており,これを他院でも参考にして,癌の見落とし事故の再発を防止していただきたく思います.

答申によれば,
「2017年2月1日,マスコミ各社は,「肺がん疑い1年放置」「診断報告確認せず」などの見出しで,東京慈恵会医科大学附属病院(1075床。以下「附属病院」という)においてCT画像診断報告書の情報共有不全により肺がんの発見が遅れ患者が重篤な状態に陥っていることを報じた。
その後間もなく,同患者は肺がんの進行により死亡した。
附属病院においては,同患者の画像診断報告書の情報共有不全が判明した直後の2016年11月から院内の医療安全管理部を中心にワーキング・グループを立ち上げ,原因の究明と再発防止策の検討を始めていた。
しかし,画像診断報告書等の重要な診療情報が医師間で充分に共有されていなかった類似事案が過去にもあったこと,そして全国の他の病院でも類似事案が少なからず発生していることなどから,慈恵大学としては,この問題の重要性を改めて認識し,診療情報の共有不全の原因を客観的かつ徹底的に分析・検討し,より実効性のある再発防止策を策定するための外部委員を中心とする委員会(名称:診療情報共有改善検討委員会)を設置することになった。」

とのことです.

委員長は,弁護士(前東京地方裁判所長,元東京地裁医療集中部裁判官)の貝阿彌誠氏です.まさに適任です.
その他の外部委員は,時事通信社相談役(前社長)の西澤豊氏,東京医科歯科大学教授の高瀬浩造氏,富士通ヘルスケアシステム事業本部VPの高濱浩司氏です.外部委員が充実しています.

委員会は,診療情報共有不全を解消するため,大別以下の6つの方策を提言する,としています.
これは,他院でも参考になる内容です.

(1)画像診断報告書の重要情報を共有するための人的支援制度(情報共有のための「司令塔」制度)の導入
(2)患者への検査報告書の交付
(3)電子システム上の工夫
(4)画像診断部からの重要所見情報の発信強化
(5)「医師交代サマリー」のさらなる実施徹底とハンドオフシート制度の導入
(6)継続的な研修,教育


以下,上記6項目について要点を紹介します.

(1)画像診断報告書の重要情報を共有するための人的支援制度(情報共有のための「司令塔」制度)の導入

愛知県小牧市民病院では現にこのような制度がとられているとのことですが,「情報共有の司令塔となるべき部署が,画像診断報告書が作成された時点で速やかに,画像診断報告書を全件読み,重要情報を選別して,これを直接担当医に伝えるとともに,その後もその重要情報が診療に反映されているか(活かされているか)どうかをチェックし,反映されていない場合には,直接担当医に連絡して注意喚起するという人的支援制度(情報共有のための「司令塔」の制度)を導入する」ことを提言しています.

(2)患者への検査報告書の交付

「検査報告書に記載された診療情報の共有不全による患者の病状見逃し事案が発生しているが,そもそも検査結果は患者自身に帰属する個人情報であって,検査結果に対して最も強い関心を有しているのは患者自身である。患者に検査報告書のコピーを交付することは,患者の権利の保障に資するものであり,交付すれば,患者ないしその家族は検査報告書を真剣に読むであろう。もし報告書に異常所見ないし速やかな対応が必要な所見が記載されていれば,患者側から主治医に対して所見への質問が寄せられることになり,その質問が多忙な主治医に対する注意喚起ともなり,結果として主治医の情報共有不全を防止する一つの手段になる。」

(3)電子システム上の工夫

標準設定に加えて,具体的な4つの提案を行っています.とくに次の①②は,システム特注ではなく電子カルテシステムに標準装備されることが望ましい,としています。

「①画像診断医が報告書作成時に,今後の対応必要性を平易かつ明示的に主治医側に伝達するために,緊急性・重要度に応じて,例えば「至急対応必要」「他科依頼」「3ヶ月後再検査」「半年後再検査」「異常なし」などの指示項目をリストボックスから選択できるようにする(報告書には,選択したとおりの重要度が表示される)。さらに,「至急対応必要」「他科依頼」「3ヶ月後再検査」「半年後再検査」が選択された場合,システム上自動的に,一定期間経過後の時点において主治医の注意喚起を促すアラートが表示される。
②主治医が報告書の既読ボタンをクリックする時に,治療方針を記載できるテンプレートを自動的に起動させ,テンプレートに何らかの治療方針を記載しない限り報告書を閉じることができないようにする。併せて,起動したテンプレートから他科に直接コンサルテーションオーダを発行できるようにする。」

(4)画像診断部からの重要所見情報の発信強化

「現在未整備の「要注意マーク」チェック基準を早急に決めるべきであり,その基準作りについては,画像診断部に任せるのではなく,各臨床科を含む病院全体で協議すべきである。基本的には,「より重症に判断する」というオーバートリアージの原則をベースにすべきであり,加えて,画像診断医が仮に「要注意マーク」を付け忘れる事例があったとしても,そのこと自体をとがめないルールが望ましい。それによって画像診断部からの重要所見情報の発信強化を期待することができる。」

(5)「医師交代サマリー」のさらなる実施徹底とハンドオフシート制度の導入

「2014年6月に導入され,2016年に3月にルール徹底を呼びかけた「医師交代時サマリー」シールは,利用
されれば交代医師間の情報共有のために有効な制度である。」
「あたかも商品配達時の「送り状」のような役割を果たす紙のハンドオフシートを患者に同送する制度の導入が考えられる。シートには,画像診断,内視鏡診断,病理診断などの施行・未施行,所見あり・なし,所見内容を含む患者の診療情報を明記する。患者を送り出す側はこのシートがないと送り出せず,受け取る側はこのシートがない限り患者を受け取らないとしてシート添付の必須化を目論むものである。」

(6)継続的な研修,教育

「担当医の意識の低さが事故発生の要因・背景となっており,画像診断報告書等の情報共有不全の解消のためには,コミュニケーション能力等のノンテクニカルスキルに関するものを含めて医師に対する研修,教育が必要不可欠である。人材の入れ替わりが頻繁にある大規模病院において,同種の事故を再発させないためには,研修,教育は,継続的に行うことと全ての医師に漏れなく受けさせることが必要である。」


NHK「がん疑いの5人の検査結果 慈恵医大医師が見落とし」(7月24日)は,次のとおり報じました.

「東京慈恵会医科大学附属病院で、平成26年までの6年間に合わせて5人の患者が、がんの疑いがあると診断されたにもかかわらず、主治医などが検査結果を見落とし、最も長い人で3年間治療が行われていなかったことがわかりました。このうち2人はその後がんで死亡していて、病院は患者や遺族に謝罪しました。

これは24日、東京慈恵会医科大学附属病院が記者会見して明らかにしたものです。それによりますと平成26年までの6年間に50代から80代の男女合わせて5人の患者が、CT検査などでがんの疑いがあると診断されたにもかかわらず主治医などが検査結果を見落とし、4か月から長い人では3年間治療が行われなかったということです。
5人のうち50代と70代の男性2人はその後肺がんで死亡していて、病院は患者や遺族に謝罪したということです。

ミスの原因について、病院が設置した外部の検討委員会は検査を行った医師と主治医との連携不足や主治医が交代するときの引き継ぎが十分でなかったことなどを指摘しています。

病院ではこのほかにも70代の男性が、肺がんの疑いがあると診断されたにもかかわらず、1年以上治療が行われず、ことし2月に死亡したことが明らかになっています。

東京慈恵会医科大学附属病院の丸毛啓史病院長は「医師の意識改革を行うなどして病院一丸となって再発防止に当たりたい」と話しています。」



谷直樹

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by medical-law | 2017-07-26 17:33 | 医療事故・医療裁判

週刊女性2017年8月8日号,妻は死去・1歳の息子はいまだに意識不明、相次ぐ無痛分娩事故に夫が心中告白」

b0206085_6524151.jpg先日,週刊女性の取材があり,質問に答えました.それが記事になりました.

週刊女性「妻は死去・1歳の息子はいまだに意識不明、相次ぐ無痛分娩事故に夫が心中告白」(2017年8月8日号,2017年7月25日)は,次のとおり伝えました.

「出産の痛みを麻酔でやわらげ、出産時やその後の疲労などを軽減する無痛分娩。

 ここ数年、神戸、京都、大阪で起こっていた無痛分娩が原因の事故が最近になり、相次いで発覚した。

 医療事故問題に詳しい弁護士の谷直樹氏は、

「表に出てこないだけで、事故は起きています。以前から事故の報道がされていて、リスクや危険性の認識があれば、医師側も注意深くなったでしょうし、妊婦も慎重になり、新たな事故が防げたかもしれない。問題を隠すとうずもれてしまい、また繰り返す」

 と表面化しないことのリスクを指摘。無痛分娩について、

「無痛分娩にもルールはあり、ルールを守り手順を踏めば安全なはずです。ルールを守らない、守れない医師が同じような事故を起こしている」

 と、経験や勘に頼りすぎる医師のスキルを疑問視する。

 無痛分娩にはいくつかの方法があるが、そのひとつが硬膜外麻酔(下の図参照)。脊髄の近くに薬を投与し、痛みを和らげる方法だ。気をつけなければいけないのは硬膜を破り、その奥のくも膜下に針が到達したときだ。くも膜下腔に麻酔が誤注入されると効きが強すぎて、妊婦は急速に意識をなくし、処置が遅れれば呼吸停止、心停止に至る。

 前出の谷弁護士は訴える。

「くも膜下腔に麻酔薬が入っても、異変に気づきその後の注入を止めれば、全身脊椎麻酔になることはまずない。ただ、観察しなければ異変に気づけない」

(中略)

「怒りは消えることはありません。どうか目の届かないところに消えてほしい。本当だったら今ごろ、1歳半になった子どもと家族3人で暮らしていたんです、妻と一緒に、ほらしゃべったとか、立った、とか喜んでいたのに……。悔しいです」(大輔さん)

 今回、家族は「第2、第3の被害者を出してはいけない」と公表を決意。厚生労働大臣などにも無痛分娩の医療事故の実態調査などを要望した。

「私たちは無痛分娩を否定するわけじゃない。お産を考えている人は、食事や施設などの表面的なことよりも、医療としてのレベルやリスク管理、そして妊婦ひとりひとりに真摯に向き合ってくれている病院なのか。それを調べたうえで病院や分娩方法を決めてもらいたい」(大輔さん)

 命を取り上げる医師の過失で家族は多くを失った。悲しみが残り、医師の怠慢さが癒えることのない傷を作った。

 当該クリニックにも取材を申し込み1週間以上待ったが、連絡はなかった。


上記記事の「大輔さん」は仮名です.


谷直樹

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by medical-law | 2017-07-26 06:02 | 医療事故・医療裁判

新潟県厚生連糸魚川総合病院,ERCP後の膵炎発症で3800万円支払いの裁判上の和解(報道)

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朝日新聞「内視鏡検査後に男性死亡 遺族と病院3800万円で和解」(2017年7月21日)は,次のとおり報じました.

「新潟県厚生連が運営する糸魚川総合病院(糸魚川市)で内視鏡検査を受けた糸魚川市内の男性(当時71)が4日後に死亡したのは、病院側の過失によるものだとして、男性の遺族が損害賠償と慰謝料を求める訴訟を新潟地裁に起こし、同病院が3800万円を支払うことで20日に和解が成立した。関係者への取材で分かった。

 県厚生連は朝日新聞の取材に「相手方もあり、何もコメントできない」とし、男性が死亡した経緯などの説明を一切しなかった。原告側は「3800万円を支払うということは、病院が医療過誤を認めたということだ」と話している。

 訴状などによると、男性は膵(すい)臓がんの疑いがあり、2015年10月に同病院で「ERCP」と呼ばれる内視鏡検査を受けた。しかし、検査による合併症ですい炎を発症し、4日後に死亡した。

 男性の遺族は昨年、同病院に対し、損害賠償と慰謝料計約5700万円の支払いを求めて提訴。男性が検査の1時間後に腹痛を訴えていたのに、担当医が適切な措置をしなかったとし、「医師の過失と患者の死亡に因果関係がある」と主張していた。」


報道の件は,私が担当したものではありません.
3800万円の裁判上の和解は,過失と因果関係を認めたものと理解するのは正しいと思います.


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by medical-law | 2017-07-24 09:17 | 医療事故・医療裁判

西神戸医療センター,医師が適切な検査を怠ったため脳幹梗塞により重い後遺症を負った事案で和解(報道)

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神戸新聞「適切な検査受けられず重い後遺症 医療訴訟で和解」(2017年7月21日)は次のとおり報じました.

「脳幹梗塞により重い後遺症を負ったのは、西神戸医療センター(神戸市西区)の医師が適切な検査を怠ったためとして、同区内の40代女性と両親が病院側に慰謝料など約2億円の損害賠償を求めた訴訟が21日までに、神戸地裁で和解した。同病院を運営する地方独立行政法人「神戸市民病院機構」(同市中央区)が女性らに2千万円を支払う。

 和解は14日付。病院側が過失を認め、「女性を介護する両親の負担軽減に協力する」といった内容が盛り込まれた。

 訴状などによると、女性は2009年9月、左半身のしびれや気分不良などを訴え、同センターを受診。医師は検尿や採血など適切な検査や診断をほとんどせず、女性を帰宅させた。女性はその後、症状が悪化。別の病院で脳幹梗塞と診断され、約1年間入院したが、言語機能喪失や手足の重い障害を負い、寝たきりの生活となった。

 女性らは14年5月、損害賠償を求め神戸地裁に提訴。「医師が適切な検査で病変を見逃していなければ、重い後遺症は残らなかった」などと主張していた。」


報道の件は私が担当したものではありません.
「左半身のしびれ」は,脳血管障害を疑う症状です.
医師が検査や診断をほとんどせず帰宅させることは,普通ないことです.

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by medical-law | 2017-07-22 16:24 | 医療事故・医療裁判

日本産婦人科医会の全国調査,2016年の分娩中無痛分娩が5.2%,その58%が診療所(報道)

b0206085_12573053.jpg日本産婦人科医会が,6月に,全国の分娩を扱う約2400の医療機関に過去3年間の実施状況を聞いたところ約4割から回答があったとのことで,その内容が公表されました.

無痛分娩の実施率;
2014年度は3.9%
2015年度は4.5%
2016年度は5.2%

2016年度の無痛分娩による出産約2万1000のうち
病院での実施は約8850件(病院での出産数の4.7%)
診療所(医院)での実施は約1万2150件(診療所での出産数の5.6%)

NHK「無痛分べんの約6割 診療所で実施」(7月20日)によれば,「日本産婦人科医会の石渡勇常務理事は「無痛分べんは適切に行えば安全だが、麻酔による中毒症状や合併症を引き起こす可能性がある。診療所では対応しきれないケースがあるので、地域の医療機関と連携する態勢づくりが必要だ」と話しています。」とのことです.

読売新聞「無痛分娩 6割が診療所、16年度調査…欧米は大病院主流」(7月20日)によれば,「無痛分娩が普及する欧米では、産科医、麻酔科医、新生児科医がそろった大病院で行うのが主流だが、国内では小規模な医療機関に広がっていた。無痛分娩を巡っては、最近、大阪、兵庫、京都の4医療機関で計6件の産科麻酔を巡る事故が発覚したが、6件のうち5件が診療所での事例だった。」「無痛分娩を巡り重大事故が相次ぎ発覚する中、小規模な医療機関でより多く行われている実態が判明し、安全な体制整備の必要性が浮き彫りになった。調査結果は近く発足する厚生労働省研究班で分析し、安全対策に生かす。」とのことです.

この調査により,問題の所在が浮かび上がってきたようです.
研究班の検討に注目したいと思います.

谷直樹

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by medical-law | 2017-07-20 22:20 | 医療事故・医療裁判

公益社団法人日本産科婦人科学会回答,ご要望について本会のなかで十分に議論して対応を検討していきたい

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公益社団法人日本産科婦人科学会より,7月10日付けの下記書面が,遺族の連絡先である当事務所に届きました.
なお,原文の夫名は,Aと表記しました。

「このたびの、A様の奥様に起きた医療事故について、心よりお悔やみ申し上げます。また、お子様の病状が快方に向かわれることを心より祈念しております。
 今回、A様から「無痛分娩事故の遺族(夫)よりの要望書」をお送りいただき、大変ありがとうございます。ご要望について、本会のなかで十分に議論して対応を検討していきたいと考えています。どうぞよろしくお願いいたします。」


メールで直ちに遺族に伝えました.
日本産科婦人科学会のすみやかな回答に感謝し,真摯で実効的な対応を期待いたします.

谷直樹

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by medical-law | 2017-07-11 18:00 | 医療事故・医療裁判

名古屋高裁平成29年7月7日判決,カテーテルアブレーション後の脳梗塞で患者側逆転勝訴(報道)

読売新聞「後遺症、病院の過失認定 名古屋高裁が賠償命令」(2017年7月8日)は,次のとおり報じました.

「適切な対応を怠った病院側の過失により、手術後に後遺症が残ったとして、名古屋市北区の男性(70)が愛知県一宮市の社会医療法人「杏嶺会」に約1億4400万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が7日、名古屋高裁であった。孝橋宏裁判長は男性側の請求を退けた1審・名古屋地裁判決を変更し、杏嶺会側に約7900万円の支払いを命じる逆転判決を言い渡した。

 判決によると、男性は2010年、同会が運営する「一宮西病院」(一宮市)で、不整脈治療のため「カテーテルアブレーション」と呼ばれる方法で心臓の手術を受けた後、脳梗塞を発症し、左半身不随などの後遺症が残った。一方、この手術方法は、心臓に血栓がある場合や、あることが疑われる場合には採用しないこととされている。

 裁判では、手術前に担当医師が血栓の有無を確認したかどうかや、脳梗塞の原因が心臓の血栓によるものかどうかなどが争われた。同会側は「コンピューター断層撮影法(CT)画像などで血栓は確認できなかった」と主張したが、判決は「CT画像の陰影から、血栓が存在したことが強く疑われる」としたうえで、手術によって脳に移動した血栓が脳梗塞を引き起こしたと考えられると指摘。担当医師は注意義務を尽くしていなかったとして、病院側の過失を認めた。」


これは,私が担当した事件ではありません.
カテーテルアブレーション(経皮的カテーテル心筋焼灼術)の実施件数は年々増加しています.
「カテーテルアブレーションの適応と手技に関するガイドライン」には,「血栓塞栓症の発生頻度は,0.1~2.8%と報告され,広範な脳梗塞は周術期死亡の原因ともなる. 多くは24時間以内の発生が多い. カテーテルシースの血栓形成,アブレーションカテーテル電極への凝血塊付着,アブレーション部位の血栓形成,左房内既存血栓の遊離などが主な原因である.」と記載されています.
CT画像で左房内既存血栓の疑いがあればカテーテルアブレーション実施は禁忌です.
高裁で逆転したということは,CT画像についての専門家医師の所見が提出され,判決に採用されたものと考えます.
不当な判決について控訴はすべきで,また高裁は一回結審も多いのですが,地裁判決に疑問を覚えた場合はとくに専門家医師の所見が新しく提出されたなら重視した審理を行うべきと思います.

谷直樹

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by medical-law | 2017-07-11 08:32