弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

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小久保孝雄高松高裁長官の後任に田村幸一氏

小久保孝雄高松高裁長官(司法修習33期)が本日定年退官しますが,後任には田村幸一東京家裁所長(司法修習30期)を任命することが報じられています.

路上喫煙者が表示が小さくて禁煙地区かわからなったとして争った裁判で,東京高裁平成26年6月26日判決は,「路上禁煙の取り組みは拡大しており,あえてたばこを吸う人は禁煙地区かどうか事前に確認する注意義務がある」として,横浜市の主張を認めましたが,そのときの裁判長です.
喫煙者側に厳しい判決を下した裁判長が高裁長官になるわけです.時代の推移を感じます.


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by medical-law | 2017-08-31 08:38 | 司法

甲府市立病院,鼻から内視鏡を引き抜く際右目付近の血管を傷つけ視野狭窄等の障害が残った件で示談(報道)

この件は,私が担当したものではありません.
甲府市立病院で,2014年9月9日に副鼻腔炎の手術を受けた,自営業の40代男性が,鼻から内視鏡を引き抜く際右目のくぼみにある血管を誤って傷つけられ,翌10日の手術で血腫を除去したが,視野狭窄,視力低下,複視の後遺症が残った事案で,示談が成立し,甲府市は1292万円を支払うと発表しました.
眼窩血腫をおこした事案でしょう.手術後の観察で眼瞼の腫脹,皮下出血があれば眼窩血腫としてすみやかに対処する必要があります.

朝日新聞「鼻の内視鏡手術で目に後遺症 市立甲府病院」(2017年8月29日)によれば,甲府市立病院では,耳の手術で難聴を悪化させた医療事故で1月末に2件(損害賠償金計850万円)、手首のこぶを取る治療で患部付近の神経を傷つけた医療事故で3月にも1件(同70万円)の示談が成立している,とのことです.


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by medical-law | 2017-08-31 07:40 | 医療事故・医療裁判

神戸市西区のクリニックの無痛分娩事故の男児死亡報道

神戸市西区のクリニックの無痛分娩事故の男児(平成27年9月2日生まれ)が平成29年8月15日に兵庫県小野市の病院で亡くなりました.神戸市西区のクリニックの産科医が硬膜外麻酔後の観察義務を怠った過失により,男児は搬先の病院で帝王切開で出産しましたが,重症新生児仮死及び低酸素性虚血性脳症の重篤な後遺障害を負い,意識がなく体が動かない状態が続き,2歳を待たずに亡くなりました.遺族(夫)は,母に一度も抱かれることなく亡くなった長男が,今はむこうの世界で二人一緒になり,母に抱かれている,と思うしかない,と言っていました.妻に続いて長男まで亡くした遺族(夫)は深い悲しみに沈んでいます.
このような事故は,二度と起こしてはいけないと思います.
厚生労働省の研究班の検討がはじまりましたが,医療体制の充実等につながる具体的成果を期待いたします.

読売新聞「無痛分娩の1歳男児死亡…出産時に重い障害」(2017年8月30日)は,次のとおり報じました.

「出産の痛みを麻酔で和らげる無痛分娩を巡り、神戸市西区の診療所で2015年に起きた事故で、重い障害を負って誕生した男児が今月15日に亡くなっていたことがわかった。1歳11か月だった。読売新聞の取材に遺族が明らかにした。同じく重い障害を負い意識不明だった母親は今年5月に35歳で死亡している。
 事故は15年9月、おかざきマタニティクリニックで起きた。母親が、無痛分娩の麻酔薬を注入された直後に急変。搬送先の大学病院で帝王切開により男児を出産したが、母子ともに意識不明の寝たきりになった。」


産経新聞「『無痛分娩』で意識不明の1歳長男も死亡 神戸のクリニック」(2017年8月30日)は,次のとおり報じました.

「神戸市西区の産婦人科医院「おかざきマタニティクリニック」で平成27年9月、麻酔で痛みを和らげる「無痛分娩」で長男を出産した女性に重い障害が残り、その後死亡した事故で、意識不明となっていた長男も今月15日に死亡していたことが30日、遺族の代理人弁護士への取材で分かった。1歳11カ月だった。
 弁護士によると、長男は出産直後から脳に障害を負い、肺炎を患うなど重篤な状態が続いていたという。
 女性は27年9月2日に出産。男性院長が背中から脊髄近くに細い管を入れ麻酔薬を注入して無痛分娩に臨んだが、院長が外来診察のため女性のそばを離れた後、呼吸困難になった。事故当時、院内に医師は院長1人だった。
 女性は大学病院に搬送され帝王切開で出産したが、母子ともに寝たきりの状態が続き、女性は今年5月に35歳で死亡した。クリニックは昨年12月、男性院長が麻酔注入直後に離れた過失を認め、示談金を支払った。


毎日新聞「無痛分娩事故 1歳長男も死亡 神戸」(2017年8月30日)は,(2017年8月30日)は,次のとおり報じました.

「麻酔で出産の痛みを和らげる無痛分娩(ぶんべん)を巡り、神戸市の産科診療所で2015年に起きた事故で、重い障害を負って生まれた男児(1歳11カ月)が今月15日に亡くなったことが遺族の代理人弁護士への取材で分かった。母親も重い障害で意識不明となり、今年5月に35歳で死亡している。
 事故は神戸市西区の「おかざきマタニティクリニック」で15年9月に発生。母親は背中から管を差し込み、麻酔薬を注入する「硬膜外麻酔」を受けた直後、容体が急変。搬送先の別の病院で帝王切開で生まれた長男は、母親とともに脳に大きなダメージを負い、意識不明の状態が続いていた。医院側は昨年12月にミスを認め、遺族に示談金を支払っている。
 無痛分娩については、京都府京田辺市や大阪府和泉市の医院でも母子が死亡したり、重い障害が残ったりする事故が起きている。【藤田愛夏】」


朝日新聞「無痛分娩の女性死亡事故、男児も死亡 神戸の産婦人科」(2017年8月30日)は,次のとおり報じました.

「神戸市の産婦人科医院で2015年、麻酔でお産の痛みを和らげる無痛分娩(ぶんべん)をした女性と生まれた男児が重い障害を負い、女性が今年5月に死亡した事故で、男児も今月15日に死亡した。1歳11カ月だった。
遺族によると、女性は神戸市西区の「おかざきマタニティクリニック」で無痛分娩のための麻酔を受けた直後に体調が急変。意識不明のまま今年5月に35歳で亡くなった。搬送先の病院で帝王切開で生まれた男児も、重い脳性まひとなり、意識不明の状態で入院していた。男児の症状は重く、肺炎にかかるなどしていたという。
 女性の夫は今夏、厚生労働相や関連する学会あてに、安全対策を設けることや、体制が整っていない施設での無痛分娩の実施制限の検討などを求める文書を出している。
 同医院の院長は「改善を積み重ね、外部の専門医に、十分な再発防止策は講じられていると判断された」などとするコメントを、8日に出している。(石塚翔子)」



共同通信「無痛分娩、神戸の1歳長男も死亡」(2017年8月30日)は,次のとおり報じました.

「神戸市西区の産婦人科医院「おかざきマタニティクリニック」で2015年9月、麻酔で痛みを和らげる「無痛分娩」で長男を出産した女性に重い障害が残り、その後死亡した事故で、意識不明となっていた長男も今月15日に死亡していたことが30日、遺族の代理人弁護士への取材で分かった。1歳11カ月だった。
 弁護士によると、長男は出産直後から脳に障害を負い、肺炎を患うなど重篤な状態が続いていたという。
 女性は15年9月2日に出産。男性院長が背中から脊髄近くに細い管を入れ麻酔薬を注入して無痛分娩に臨んだが、院長が外来診察のため女性のそばを離れた後、呼吸困難になった。」


毎日放送「無痛分娩で重い障害の男児も死亡 神戸の産婦人科医院」(2017年8月30日)は,次のとおり報じました.

「おととし9月、神戸の産婦人科医院で出産時の痛みを和らげる「無痛分娩」で出産後に母親が死亡し、自身も重い障害を負っていた1歳の長男が8月15日に死亡していたことがわかりました。
 おととし9月、神戸市西区の産婦人科医院「おかざきマタニティクリニック」で、出産時の痛みを和らげる「無痛分娩」で出産した母親が意識不明に陥り、今年5月に35歳で亡くなりました。遺族の代理人によりますと、生まれた長男も脳に重い障害を負って意識不明のままでしたが、8月15日に1歳11か月で亡くなったということです。
 無痛分娩をめぐっては、今年の春以降に母親や子どもが亡くなったり、障害を負ったりする重大事故が京都や大阪などで相次いで発覚していることを受けて、厚生労働省が実態調査などを進めています。 」


朝日放送「「無痛分娩」事故 1歳男児死亡 神戸」(2017年8月30日)は,次のとおり報じました.

「神戸市の産婦人科医院で「無痛分娩」をめぐって起きた事故で、意識不明だった1歳の男の子が、今月、亡くなっていたことがわかりました。
男の子の母親は、2015年9月、神戸市西区の「おかざきマタニティクリニック」で、麻酔を使って痛みを和らげる「無痛分娩」で出産に臨みました。しかし、背中から注入した麻酔が脊髄の中心近くにまで到達したため、呼吸困難に陥り、別の病院に緊急搬送されて男の子を出産しました。母子ともに意識不明の状態が続き、母親は今年5月に35歳で亡くなりましたが、今月15日に男の子も死亡していたことがわかりました。「無痛分娩」をめぐる事故は京都や大阪でも相次いでいて、遺族側は「医療体制の充実を図ってほしい」とする要望書を厚生労働省などに提出しています。」



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by medical-law | 2017-08-30 11:56 | 無痛分娩事故

右陪席と左陪席

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医療事件は3人の裁判官の合議体が担当することが常です.
法廷では,裁判長が中央に座り,裁判長の右側に右陪席の裁判官,裁判長の左側に左陪席の裁判官が座ります.
傍聴人からみると,左右が逆ですが,「右陪席」,「左陪席」は,裁判長から見たものなのです。京都の左京区,右京区と同じです.天帝は北辰に座して南面す,という陰陽五行説が流行った頃の中国の影響で,天皇陛下が南を向いて座ったときの視点で,左右が決められました.
東京地裁の「橘会」は,もちろん右近の橘にちなみ,右陪席裁判官の集まりです.

ところで,右陪席裁判官のほうが左陪席裁判官より経験がある先輩です.
つまり,右が上位です.
日本は伝統的に左上位で,今でも円卓では最上位の人の左側が第2順位の人の席,最上位の人の右側が第3順位の人の席となっています.
これに対し,西洋では右上位です.
裁判官の席が右上位なのは,西洋式(国際ルール)なのです.
そのため,日本式で左大臣のほうが右大臣より上位なのに,西洋式で右陪席裁判官のほうが左陪席裁判官より上位という事態が生じているのです.

最高裁では,裁判長が真ん中に座り,着任が古い裁判官が裁判長の右,次に古い裁判官が裁判長の左,その次に古い裁判官が右の右,その次に古い裁判官が左の左・・・というように右上位です.

ちなみに,外科手術では,普通,執刀医が患者の右側に立ち,第1助手が左側に立ち,第2助手が執刀医の横に立ちます.ベテラン医師が執刀医をつとめるとは限らず,助手としてサポートすることもあります.


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by medical-law | 2017-08-27 00:24 | 司法

「無痛分娩の実態把握及び安全管理体制の構築についての研究」班第1回公開検討会

本日,「無痛分娩の実情把握及び安全管理体制の構築についての研究」班第1回公開検討会が開かれましたので,傍聴いたしました.

研究代表者の海野信也氏から,本研究の概要について,次のとおり説明がありました.

研究の概要
・無痛分娩については、平成21年度に厚生労働科学研究「妊産婦死亡及び乳幼児死亡の原因究明と予防策に関する研究」において、分担研究「全国の分娩取り扱い施設における麻酔科診療実態調査」により調査が行われているが、これ以後に無痛分娩に関する全国施設調査は行われておらず、その現状は不明である。しかしながら、無痛分娩時に発生した重篤事例が報告されているため、実態把握と安全管理体制の構築が急務である。
・現状の実態把握と分析を行い安心・安全な管理体制を構築することが緊急に必要である。
・具体的には、日本産婦人科医会と連携して無痛分娩の実態に関する実態把握および正常分娩と比較した際の安全性などについての分析を行い,それを元に安全管理に関する研究を行う。 
・研究組織としては、産婦人科・麻酔・周産期領域など、無痛分娩に関わる職種に幅広く参加してもらうことで、迅速な分析と適切な安全管理体制の構築を進めていく。


研究班の基本方針
・特に,検討のプロセスの公開・透明化に配慮して研究を進める。
・「今回の事故報道等に関連して日本社会に生じている無痛分娩の安全性に関する懸念」を,診療内容の透明化,公開,共有を通じて払拭していくための方策を立案,共有する。
・「医療安全に関してはダブルスタンダードは社会的に許容されない」という認識のもと、世界標準と同等のレベルの、病院・診療所で共通の安全対策の標準的方法に関するコンセンサス形成をはかる。

研究班の任務
・課題の抽出
 -医会調査の評価
 -諸外国のガイドライン等の検討
・無痛分娩施設の診療実態の透明化推進
・安全対策に関するコンセンサスの形成→標準的方法の提示
・安全な無痛分娩体制構築の前提となるチーム医療推進のための研修体制の構築
・公開フォーラムの開催等による社会への情報提供

研究の進め方
・本研究課題の性質上、検討内容が専門性の高いものとならざるを得ない。しかし、その一方で、社会的関心の強さを考慮すると、検討過程を可能な限り透明化することも必要となっている。今年度に限定された特別研究であり、迅速に進める必要がある。
・そこで,本研究では,「公開検討会」と「作業部会」という構成で、平行して検討を進める
 -「公開検討会」:構成員を絞り,情報の共有と課題の整理,対策のとりまとめを中心とする
 -「作業部会」:調査分析と対策案の立案等の専門性の高い検討を行う平行して検討を進める。
・検討過程で早期実施が妥当とされた対策については,とりまとめを待たずに,適宜,実施を提言する。
・研究班の締めくくりとして「公開フォーラム」等を開催して情報の共有を行う。


■ 研究の方法について
公開検討会のメンバーは,各団体,学会の推薦を受けた人が中心で,それぞれの団体,学会の考えを検討会に反映し,検討会の内容を各団体,学会に持ち帰ることが期待されています.
日本産婦人科医会(石渡勇氏,前田津紀夫氏),日本産婦人科学会(板倉敦夫氏),日本麻酔科学会(飯田宏樹氏),日本産科麻酔科学会(海野信也氏),日本医師会(温泉川(ゆのかわ)梅代氏),日本助産師会(石川紀子氏),日本医療機能評価機構産科医療補償(後信氏)が網羅されています.知ろう小児医療守ろう子ども達の会の阿真京子氏もメンバーです.

作業部会のメンバーは,臨床で無痛分娩に携わっている医師が中心です.
安全管理体制の構築のためには,①医会調査の評価・課題抽出,②諸外国のガイドライン検討を含めて諸外外国との比較,③日本における安全性向上の方策,④国民への情報発信の方法について検討するようです.
作業部会のメンバーは,天野完氏,池田智明氏,奥富俊之氏,角倉弘行氏,照井克生氏,永松健氏,橋井康二氏ですので,成果を期待できます.

■ 無痛分娩の実情把握について
無痛分娩の実情把握は,基本的に医会のアンケート調査に依るようですが,医会のアンケート調査は,約60%の回収率です.そして,安全な無痛分娩が行われず,事故が起きているのが,アンケートを返してこない40%のほうにあるとすれば,医会調査には,大きな限界があることになります.
神戸市西区のクリニックの無痛分娩事故は,事故から死亡まで1年を超えている関係で無痛分娩後の妊産婦死亡14例に含まれていませんし,このクリニックが医会の調査に応じていないとすれば,実態が把握できていないことになるでしょう.

無痛分娩の実施率が年々高まり,診療所のほうが病院より高率に無痛分娩が行われていることを明らかにした点で医会調査は評価できますが,調査に限界がある以上,医会調査を補充し,実態を把握する手段も必要でしょう.

愛知の無痛分娩事故の遺族は,次のような要望をだしています

1 国は、日本医師会、日本産科婦人科学会、日本産婦人科医会及び日本産科麻 酔学会(以下、「関係団体」)と協力し、日本における無痛分娩の実情(年間実施件数、実施医療機関の規模、急変時対応準備の有無、インシデント・アクシデントの件数等)を調査し、安全実現に向けた対策を立案して、速やかに実行して下さい。
2 前項の調査の際には、被害実態を十分に把握するために、医療機関からの聞き取り調査だけではなく、被害者・遺族からの情報を直接受け付ける窓口を設置して下さい。
3 日本医師会は、第1項の調査のために、日本医師会医師損害賠償請求保険において、過去に無痛分娩による母体死亡で保険金を支払った症例を抽出する等の方法で、事故実態の把握に協力して下さい。
4 国、日本医療機能評価機構及び関係団体は、産科医療補償制度において、無痛分娩時の母体死亡を含むすべての母体死亡についても補償を実施し、その原因分析と再発防止策の立案を行うことができるよう、制度の見直しを行って下さい。

これは,医会調査を補充し,実態を把握する方法として,検討に値するのではないでしょうか

また,実際におきた事故の実態を把握し,原因を分析することは,端的に実態を把握し,安全管理体制の脆弱な点を知るために必要でしょう.

今日の検討会では,複数の研究会メンバーから,上記のような医会調査の限界を指摘する発言もありましたが,医会を代表するメンバーから明確な説明がなく,医会調査を補充する実態調査の方法について検討されなかったのは残念です.今後に期待します.

■ 安全管理体制の構築について
医師の研修システムが変わって,今は麻酔科研修を十分受けないで産科医になる医師も少なからずいることが話題になりました.
北里大学のようなところでしっかり無痛分娩を勉強した医師が,開業医として無痛分娩を行っている限りは無痛分娩は安全ですが,無痛分娩実施率が高まり,多くの施設で行われるようになってくると安全ではなくなってくる,という問題意識はメンバーに共有されたように思います.

妊婦としては安全な施設とそうでない施設を見分けることができればよいのですが,今はそれはできません.それができない以上は,無痛分娩を希望する妊婦は,とりあえず規模の大きな施設を選ぶでしょう.高次医療機関に妊婦が集中すると,本来ハイリスク妊婦に対応すべき高次医療機関がハイリスク妊婦に対応できなくなりかねません.
そうならないように,妊婦がら無痛分娩を行う施設の診療実態が見えるようにすることは緊急の課題でしょう.

第1回で深い検討はありませんでしたが,現状の問題点が浮かび上がり,おぼろげながらも,安全管理体制構築の方向性が見えてきたようです.
今後に期待します.


谷直樹

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by medical-law | 2017-08-23 23:18 | 無痛分娩事故

腸管狭窄と高度の便秘と腎機能障害を有する83歳の男性に経口腸管洗浄剤を服用させた事案の第1回期日

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今週は,裁判期日が4件入っています.
その1つが,腸管狭窄と高度の便秘と腎機能障害を有する83歳の男性に経口腸管洗浄剤を投与した事案の第1回期日です.
京都地裁,8月24日(木曜)午前11時00分です.

医療事故により亡くなった患者は,京都市の83歳の男性でした.1級技能士資格及び職業訓練指導員免許をもつベテラン表具師で,元氣に仕事をしていました.
原告は,京都市在住の患者の妻,長男と仙台市在住の次男です.
被告の病院は,京都市中京区の総合病院(公的病院)です.

【事案】
大腸検査前処置の医療過誤です.
医師は,大腸検査の前夜に下剤ラキソベロンを服用し,検査当日に経口腸管洗浄剤ムーベンを服用する,という手順を指示しました.
83歳の男性は,腸管狭窄と高度の便秘と腎機能障害があり,検査前夜に指示に従い下剤ラキソベロンを服用しましたが,排便はありませんでした.

その状態で,経口腸管洗浄剤ムーベンを服用させるのは大変危険です.
ムーベンの添付文書の警告欄には,【禁忌(次の患者には投与しないこと)】として,「腸管に閉塞のある患者又はその疑いのある患者(大腸検査前処置に用いる場合)[腸管蠕動運動の亢進により腸管の閉塞による症状が増悪し、腸管穿孔に至るおそれがある.]」と記載されています.
医学文献 「腸疾患診療-プロセスとノウハウ」には,「腸管に狭窄病変のある患者に投与すると腸閉塞や腸管穿孔を起こし,重篤な状態を引き起こす可能性があり,投与前の問診や診察が重要である」(125~126頁)と記載されています.

患者に腸管狭窄と高度の便秘と腎機能障害があることを医師は知っていたはずですから,医師にはムーベン投与前に問診,診察を行ない,とくに排便状況について把握し,ムーベンを投与しない注意義務があったはずです.
にもかかわらず,医師は,ムーベン投与前に問診,診察を行いませんでした.
そのために,患者がムーベンによる糞便大腸イレウスを発症してショック状態となり,腸管虚血が遷延し,S状結腸の穿孔を来し,穿孔により汎発性腹膜炎を発症し,死亡しました.

この件は,医療事故調査が行われており,平成28年5月12日の「医療事故調査報告書」にも,「本患者のように慎重投与例に対しての排便状況の把握は不十分だった.また,詳細な手順書は整備されていなかった」,「ムーベン服用を契機に糞便による大腸イレウスを発症しショック状態となった.その後,腸管虚血が遷延し,S状結腸の穿孔を来し汎発性腹膜炎を発症,死亡に至った」と書かれています.

本件患者がショック状態に陥った後,被告病院は,すみやかに近くに住む妻と長男に連絡しなかったので.家族は,午後2時頃急変している状況を知らずに訪室し,本件患者が苦痛表情を呈していた姿を見て,いっそう大きな精神的苦痛を被りました.
事故後の対応にも問題のある事案と思います.

この裁判が適正に解決し,医療事故の再発防止に役立つよう,力を尽くしたいと思います.


谷直樹

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by medical-law | 2017-08-22 06:10 | 医療事故・医療裁判

全国薬害被害者団体連絡協議会などが実効性のある医薬品行政監視・評価する第三者組織の設置を求める

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薬害肝炎検証委員会の最終提言は,実効性のある医薬品行政監視・評価する第三者組織の設置を求めていました.政府もそれを約束していました.
ところが,実効性のある医薬品行政監視・評価する第三者組織設立は,監視・評価される側の反対が強く,未だに設置されていません.

毎日新聞「薬害防止 第三者組織創設 厚労相の約束、放置 被害者、実現求める」(2017年8月20日)は, 次のとおり報じました.

「第三者組織の規模や権限などで考えが一致せず法改正のめどは立っていない。
 今年7月の大臣協議でも前向きな回答がなく、原告団代表の山口美智子さん(61)は「国民の命の置き去りは許されない」と訴えたという。寺野理事長は「約束を放置したままなのは、意図的か怠慢かのいずれかだ。第三者組織の必要性は今も変わっていない」と憤る。」
 
「エイズ訴訟などを手掛けてきた医療問題弁護団顧問の鈴木利広弁護士は「振り返れば、国は被告席から一度も外れたことがない。繰り返される謝罪が政治的な判断で、官僚組織の中に反省が行き届いていない表れだ」と指摘。その上で「必要なのは対立ではなく、官民の対話による再発防止の仕組み作り」と訴える。その一つが、被害者も参加した第三者組織だという。

 全国薬害被害者団体連絡協議会などは24日、厚労省の前庭に建つ「薬害根絶誓いの碑」の前で集会を開き、第三者組織の早期設置などを訴える予定だ。」


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by medical-law | 2017-08-20 11:01 | 医療

デイリー新潮,あくまで、体制が整っていない病院での無痛分娩が危険であるという話

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デイリー新潮「無痛分娩は本当に高リスク? フランスで出産した女性「無痛分娩は、“産まれてからの日々のスタート”のためにある」」(2017年8月18日)は,「長い痛みに苦しまず出産した母親は、すぐに子供を笑顔で抱きしめる余力を持てる。無痛分娩は、“産まれてからの日々のスタート”のためにあるのです」というフランスの医師の言葉を,高崎順子さんの『フランスはどう少子化を克服したか』から引用しています.

「海外では既に無痛分娩が主流でさえあり、米国で6割、フランスでは8割の人が無痛分娩を選択するという。」

「実は無痛分娩自体はリスクが高いわけではない。あくまで、体制が整っていない病院での無痛分娩が危険であるという話である。」


今朝のNHK「おはよう日本」でも無痛分娩についての放送があったそうです

無痛分娩は素晴らしい医療技術です.産科医療体制を整えて,日本でも無痛分娩を増やすことが望まれると思います.
産科医療事故を減らすためにも,この機会に,日本の産科医療は医師一人の医院でよいのか,議論していただきたいと思います.


谷直樹

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by medical-law | 2017-08-18 16:10 | 無痛分娩事故

平成28年の医事関係訴訟,提訴は878件,審理期間は23,2月,認容率(患者側勝訴率)は17.6%

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裁判所の集計によると,平成28年の医事関係訴訟(新受)は878件(前年より52件増加)でした.平成20年の水準に戻ったと言えます.
医療ADRなど裁判外の紛争解決手段が充実してきたにもかかわらず,平成28年に提訴された医事関係訴訟が878件もあったということは,(1)医療過誤の疑いのあるケースが表面化することが増えてきたためと(2)医療過誤の疑いをもった場合に弁護士に相談する事例が増えてきたためではないか,と思います.

平均審理期間は23,2月です.
平成25年以降,審理期間は2年を切っています.
ただ,あくまで平均であって,被告側(医療側)が徹底抗戦の姿勢で争ってくれば,2年以上の時間がかかります.

平成28年の地裁民事第一審通常訴訟事件・医事関係訴訟事件の認容率(原告=患者側が勝訴した率)は,17.6%と著しく低率です.
20%を切ったのは,平成11年以降はじめてです.
通常訴訟の認容率が80%を超えているのに比べると,医事訴訟の認容率の低さが際立ちます.
医療においては,原告(患者側)が過失・因果関係を立証するのは難しいことが分かります.
ただ,それにしても,17.6%は低すぎます.
医事裁判では原告側(患者側)の主張立証の巧拙が結果に影響することも多々ありますので,弁護士が増え従前医療過誤事件を取り扱わなかった人たちが取り扱うようになったために患者側代理人の力量が低下してきたのでしょうか.また,高裁で逆転判決の報道もいくつかみられることから,地裁裁判官の力量不足によるものなのでしょうか.どこかで,医事敗訴判決の研究を行っていただけると,大変有意義だと思います.

判決で終了するのは34.1%,和解で終わるのは51.1%です.
和解内容は,判決以上に担当弁護士の力量を反映します.原告側(患者側),被告側(医療側)双方に力量のある弁護士がつくと,先が見えるので,和解で終わることが多いように思います.


谷直樹

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by medical-law | 2017-08-18 14:46 | 医療事故・医療裁判

歯科医師の資質向上等に関する検討会(第6回),8月31日開催

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1.日時
平成29年8月31日(木)14:00~16:00
2.場所
経済産業省別館3階312各省庁共用会議室
(東京都千代田区霞ヶ関1丁目3番1号)
傍聴申込書は厚労省サイト

ちなみに高梨滋雄先生(高梨滋雄法律事務所)も検討会構成員です.

口腔ケアは,誤嚥性肺炎の発症予防になりますので,入院患者の口腔ケアを充実させてほしいと思います.
また,周術期に口腔管理を行うことにより入院日数が減少することも知られています.口腔ケアは重要です.

高血糖は歯周病のリスクであり,歯周病はインスリンの働きを妨げますので糖尿病のリスクです.
そこで,糖尿病患者,その予備群は,定期的に歯科を受診する必要があります.


谷直樹

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by medical-law | 2017-08-16 23:52 | 医療