弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

東京女子医大病院,プロポフォールの投与後の死亡新たに12人判明

毎日新聞「禁止鎮静剤投与:親の代理人「こんなに死亡例があるとは」(2014年06月12日)は,次のとおり報じました.
 
「東京女子医大病院(東京都新宿区)が禁止された鎮静剤プロポフォールを小児に投与していた問題で12日、新たに12人が死亡していたことが明らかになった。都内で記者会見した病院側は調査に乗り出す方針を示したものの、因果関係は否定した。子どもたちはなぜ命を落としたのか。既に死亡が発覚している2歳男児側の代理人や他の医療事故被害者たちは徹底した真相究明を求めた。

 亡くなった2歳男児の両親の代理人、貞友義典弁護士は「他にもこんなに死亡例があるとは……」と驚きをあらわにした。貞友弁護士によると、プロポフォールの投与後に男児の様子がおかしくなった際、医師は母親に「安全な薬なので安心してください」と答えたという。

 「尿の色や心電図など、明確な異常が何度もあり、適切な処置がなされれば助かったと思われる場面が何度もあった。多くの死亡例を医療スタッフが認識、共有していたら、亡くなることもなかったのでは」と述べた。

 医療過誤遺族らでつくる「医療過誤原告の会」の宮脇正和会長は「あぜんとするしかない。麻酔医は使ってはいけない鎮静剤と分かっていながら使用し、周りのスタッフも分かっていながら指摘せず、長年放置されていたのだろう。病院側は医療行為に責任を持つ体制ができていない」と批判した。

 医療事故で2003年に5歳の長男を亡くし、新葛飾病院(東京都葛飾区)で患者相談や医療安全管理に携わる豊田郁子さん(46)は「12人の死亡でプロポフォールとの因果関係がないと言われても、遺族は疑問を感じるだろう。遺族はまず何が起こったかを知りたいと考える。病院側は今からでも真摯(しんし)な対応が必要だ」と話した。

 記者会見で永井厚志病院長は、死亡した12人について「多くは感染症で亡くなられているので投与との関係がない可能性が高い。投与から亡くなられるまでに数年たっているケースもある」と説明。

 これまでに「(2歳男児以外の)死亡例がない」とした点については「あくまでも当該科が調べた結果なので、第三者の検証でより精査する必要がある」と述べた。【大迫麻記子、鳥井真平、金秀蓮】」


2009年1月から昨年12月までに15歳未満への使用が63人あったというだけでもひどい話ですが,死亡例がないと言っていたにもかかわらず,実は12人死亡していた,というのは,問題でしょう.12例のなかには因果関係のある例もすくなからずあるのではないか,という疑いを払拭できません.
これまで誠実な対応がなく,むしろこれまで死亡例を隠蔽していたとみられると,東京女子医大の信用は地に落ちてしまうことになるでしょう.残念です.

【追記】

産経新聞「厚労省と都が東京女子医大に立ち入り 禁止鎮静剤問題で」(2014年 6月14日)はm次のとおり報じました.

東京女子医大病院(東京都新宿区)で2月、男児(2)が手術後に鎮静剤「プロポフォール」の過剰投与で死亡した事故で、厚生労働省と東京都は13日、子供への使用が禁止される同鎮静剤が男児とは別の子供63人に投与された問題について、医療法に基づき同病院を立ち入り検査した。

 厚労省などによると、立ち入りは午前11時から、都と関東信越厚生局の担当者ら十数人態勢で実施。同病院が5月末に同省などに提出した調査報告書には、63人への投与についての記載がなく、病院の担当者から聞き取りを行うなどして事実確認を行った。

 問題は同大の吉岡俊正理事長らが12日に行った記者会見で判明。投与された63人のうち、12人が投与後3年以内に死亡していたことなどが明らかにされた。同病院は鎮静剤投与と死亡の因果関係を否定しているが、田村憲久厚労相は閣議後会見で「これだけ常態化して使われているのは特異な例」と指摘。都は「早期に調査を行い、結果を報告するよう病院側に求めた」としている。

 プロポフォール 手術時の全身麻酔や、術後管理時の鎮静などに使う薬。海外で子供の死亡例が報告されたのを受け、厚生労働省が平成13年、集中治療下での人工呼吸中の子供への投与を「禁忌」とするよう製薬会社に指示し、添付文書が改訂された。投与中にまれに起きる循環不全などの特有の重い副作用症状は「プロポフォール注入症候群」と呼ばれる。」


【追記】

東京新聞「医大内紛遺族置き去り 院内調査疑問に答えず」(2014年6月19日) は,次のとおり報じました.

「鎮静剤死亡問題
「子どもの死、道具に」

 東京女子医大病院で二月、人工呼吸中の子どもへの使用が禁止されている鎮静剤プロポフォールを投与された埼玉県の二歳男児が死亡した問題で、両親が病院側に対する不信感を強めている。病院と、手術に関わった一部医師ら大学側が別々に会見し、身内批判も出る異常事態となっているからだ。肝心の調査も不十分なまま。病院側の会見から十九日で一週間となるが、憤りは消えないままだ。 (福田真悟、唐沢裕亮)

 「子どもの死が対立の道具に使われている」。両親は十三日、本紙の取材に痛切なコメントを寄せた。

 前日の十二日には、病院を経営する法人トップの吉岡俊正理事長らが会見し、プロポフォール投与が男児の死因であることをようやく認めた。

 しかし、大学の笠貫宏学長らも同日別途会見し、吉岡理事長らを批判。五日には、医学部長の教授らも会見で「死亡から四カ月もたつのに、会見を開かない理事長は説明責任を果たしていない」と糾弾した。こうした内紛は、幼いわが子を奪われた両親にとって不毛な「対立」としか映らなかった。

 遺族側が病院のミスとして主に訴えてきたのは、鎮静剤投与のインフォームドコンセント(十分な説明と同意)が不十分▽投与後に親が指摘した顔のむくみや尿の変色といった異常を放置▽院内の病理解剖で「自然死・病死」と診断書に記載し、異状死体の場合に医師法が求める警察への通報が遅れ、司法解剖がされなかった-の三点。

 病院は男児の死亡を受け、原因究明を目指す院内調査に着手。厚生労働省に提出する中間報告書をまとめ、三日に遺族側に示した。しかし「遺族が重要と考える問題について触れられておらず、極めて不十分」(代理人弁護士)な内容にとどまった。男児以外に病院でプロポフォールを投与された十二人の子どもが死亡した事実にも言及していなかった。

 「なぜこんなことが起きたのか。解明したいという気持ちだけ」。涙ながらに訴えた両親の思いとはほど遠い調査結果に加え、被害者を差し置いて身内同士の争いに走る病院や大学トップたちの姿が、不信感を増幅させた格好だ。

 「医療過誤原告の会」の宮脇正和会長は「別々に会見する理事長側と大学側の関係を見ると、一体どこを向いているのかと感じる。病院内がばらばらでは患者の安全は守れない」と指摘している。」


【追記】

NHK「東京女子医大事故 異変気づかず投薬続ける」(2014年6月30日)は,次のとおり報じました.

「東京女子医科大学病院でことし2月、当時2歳の男の子が人工呼吸器を付けた子どもへの使用が原則、禁止されている鎮静薬を投与され死亡した医療事故で、医師らは男の子の異変に気づかず4日間にわたって薬の投与を続けていたことが、病院の関係者への取材で分かりました。

東京・新宿区の東京女子医科大学病院ではことし2月、首の腫瘍の手術を受けた当時2歳の男の子が、人工呼吸器を付け、集中治療が行われている子どもへの使用が原則、禁止されている鎮静薬「プロポフォール」を投与され死亡し、警視庁が業務上過失致死の疑いで捜査を進めています。
病院の関係者によりますと、男の子には手術が終了したおよそ50分後から安静を保つためにプロポフォールが投与されましたが、翌日の午後から複数回男の子の心電図の波形に異常が現れていたことが分かりました。
しかし、医師らは当時、男の子の異変に気付かず薬の投与を続けていたということです。
さらに、医師は、薬の累積の投与量を把握しておらず、薬剤師も初めは薬の投与量が多いと指摘したものの、その後は医師の判断に任せていたということで、薬の投与は男の子が亡くなった日の朝まで4日間にわたって続けられていました。
これについて東京女子医科大学病院は、「多くの職種が関わる集中治療室ではスタッフの連携やコミュニケーションが非常に重要だがうまくいかなかった」と説明しています。
また、男の子の母親は「子どもの状態を誰も把握していなかったことがショックです。病院には何が起きたのか真相を明らかにしてほしい」と話しています。」

【追記】

毎日新聞「東京女子医大:2歳児遺族に「投与中止後に透析なら生存」」(2014年7月2日)は,次のとおり報じました.

「 ◇担当医らが心電図異常を見落として投与継続経緯も判明

 東京女子医大病院(東京都新宿区)で今年2月、人工呼吸中の子供への使用が原則禁止されている鎮静剤「プロポフォール」を投与された男児(当時2歳)が死亡した医療事故で、病院が遺族側に対し「投与を中止した日の朝に人工透析をしていれば助かった可能性がある」と説明していたことが関係者への取材でわかった。担当医らが心電図の異常を見落として投与を継続した詳しい経緯も初めて判明した。警視庁は担当医らが救命のために必要な処置を怠った可能性があるとみて業務上過失致死の疑いで捜査を進めている。

 関係者らによると、男児は2月18日午前、首の腫瘍の手術を受けた。終了の約50分後から、集中治療室(ICU)で安静を保つためにプロポフォールを投与された。19日午後から複数回、心電図の波形に異常が表れたが、担当医らは気付かず、投与を続けた。

 担当医らは20日午前になって初めて心電図の異常に気付き、エコー検査を行ったものの、「心臓の動きに異常はない」と判断。同日午後には別の医師が尿の変色を指摘したが、対応は取られなかった。

 その後、21日朝になって詳しい心電図を取って異変に気付き、ようやく投与を中止した。血液検査でも異常が見られたが、担当医らは有効な対策を取らなかった。男児はその後に容体が急変して、同日午後8時前に急性循環不全で死亡した。

 病院は遺族側に、プロポフォールの長期投与で腎機能が低下して死亡に至った疑いがあると説明した上で、「21日朝の投与中止後にすぐ人工透析をしていれば、助かった可能性がある」と伝えたという。透析を実施しなかったのは、担当医らが男児の異常をプロポフォール投与による副作用と認識しなかったためとみられる。

 東京女子医大広報室は毎日新聞の取材に「調査内容は遺族の了解がなければコメントできない」としている。【神保圭作】

 ◇プロポフォール

 手術時の麻酔や、集中治療室で人工呼吸中の患者が動かないようにするための鎮静剤として使われる。効果がすぐに表れ、目覚めも良い利点があるとされる。海外での死亡例報告を受け、厚生労働省は2001年、医師向けの説明文書で、集中治療室で人工呼吸中の子供への使用を原則禁じたが、法的な規制はない。子供向けの鎮静剤が少ないという事情もあることから厳格な安全管理の下で投与している病院もある。」


【追記】

宮崎日々新聞「社説 禁止鎮静剤投与」(2014年7月9日)は,次のとおり報じました.

「安易使用は子どもに危険だ

「東京女子医大病院が人工呼吸中の子どもへの投与が禁じられた鎮静剤プロポフォールを頻繁に使用し、死亡者を出した問題が波紋を広げている。

 投与が禁止された「禁忌薬」でも、治療上の必要性から医師の裁量で使うことはあり得る。しかし今回の女子医大のような常態化は異様だ。安易な使い方ではなかったのか。事故の原因や背景の早急な解明が望まれる。

■効果や安全性未確認■

 一方、この問題では6日、病院側の対応を批判していた学長が解任されたが、内紛劇を演じている場合ではない。女子医大はしっかり真相追究に取り組むべきだ。

 問題発覚のきっかけは今年2月、首の手術をした2歳男児が集中治療室(ICU)で人工呼吸器を装着中、プロポフォールを約70時間にわたって投与され、3日後に急性循環不全で死亡した事故だ。病院は院内調査の結果、死亡は投与が原因との見方を示した。

 その後、同病院が過去5年間、63人の子どもに投与を繰り返していたことも判明。病院は投与との因果関係を否定しているが、このうち12人が亡くなっていた。

 プロポフォールは「使い勝手の良さ」が高く評価され、手術時の麻酔薬として子どもにも使われている。だが、長時間、大量の投与になりやすいICUでの使用はリスクが高く、海外で子どもの死亡が報告されたのを機に、添付文書に「禁忌」と明記された。

 医療現場では、添付文書に記載されている効能や効果、用法、用量の範囲外で薬を使うことがある。「適応外使用」と呼ばれ、禁忌薬の使用もこれに含まれる。禁忌といっても法律で禁止されているわけではない。使用の判断は、医師の裁量権の範囲内とされる。

 とくに小児医療は適応外使用なしでは成り立たない実情がある。薬の開発段階で行われる臨床試験(治験)の多くが大人だけを対象とし、子どもでの効果や安全性が確認された薬が少ないためだ。

■問われる医療側意識■

 1999年に厚生省研究班(当時)が国立大病院などを対象に行った調査では、子どもに処方された薬のうち、添付文書に小児への用法・用量が明示されていたのはわずか23.4%。残る76.6%は適応外使用で「禁忌」「原則禁忌」などの薬も4.8%あった。

 多くは、ほかに薬の選択肢がなかったり、最善の治療を行うためにやむを得なかったりしたケースだろう。代替薬があるのに使い勝手という医療側の都合で、漫然と禁忌薬を使い続けるのは疑問だ。

 日本小児科学会や日本小児麻酔学会は昨年、子どもに磁気共鳴画像装置(MRI)の検査を行う際の鎮静法について提言をまとめた。その中に「鎮静薬は気道、呼吸、循環のコントロールという生命を守る機能に作用する。どの鎮静薬も危険」という記述がある。女子医大にはこうした安全への意識が欠けていたのではないか。」


【追記】

NHK「“禁忌”鎮静薬 約20%の病院が使用」(2014年7月14日)は、次のとおり報じました.


「東京女子医科大学病院で、ことし2月、人工呼吸器を付けた子どもへの使用が原則禁止されている鎮静薬を投与された男の子が死亡した医療事故を受け、日本集中治療医学会が、集中治療室を持つ全国の病院を対象に調べたところ、全体のおよそ20%の病院が同じ薬を使用していることが分かりました。
学会は、研究班を立ち上げ、薬を使用する際の安全性などについて検討を進めることにしています。

東京・新宿区の東京女子医科大学病院では、ことし2月、当時2歳の男の子が、人工呼吸器を付け集中治療が行われている子どもへの使用が原則禁止されている鎮静薬「プロポフォール」を投与され、死亡しました。
これを受け、日本集中治療医学会では、集中治療室を持つ全国307の病院を対象に同じ薬の使用状況などについてアンケート調査を行い、106の施設から回答を得ました。
その結果、全体の19%に当たる20の病院でプロポフォールを使用していると回答しました。
子どもの集中治療を専門に行っている病院に限ってみると、37%の病院が使用していました。
薬を使っている病院のうち80%は具体的なルールを設けておらず、使用にあたって親の同意を取っていない病院も85%に上りました。
日本集中治療医学会の氏家良人理事長は「薬の使用実態が初めて明らかになった。研究班を立ち上げて、薬を使用する際の安全性などについて検討したい」と話しています。」



谷直樹

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# by medical-law | 2014-06-12 20:38 | 医療事故・医療裁判