イレッサ,厚労省が案を書いた医学会声明

医学会は,イレッサについて和解に反対の声明文を発表していましたが,厚労省が医学会に声明文の案を送っていたことが報じられています.
「イレッサ副作用死:投薬訴訟 国が声明文案提供 医学会に『和解勧告を懸念』 」(毎日新聞)
「毎日新聞が入手したのは、厚労省が作成した『肺がん治療薬イレッサ(の訴訟にかかる和解勧告)に対する声明文』。文案では『(和解勧告は)医薬品の開発期間がむやみに延長し、必要としているがん患者のアクセスを阻害することになりかねない』などと指摘。『医薬品にはリスクはあり、それを理解した上で医師は医薬品を使用している。(和解勧告の)決定は、医師の役割を軽んじるものだ』として懸念を示す内容になっている。」
「医薬食品局の佐藤大作・安全対策課安全使用推進室長は「日本医学会の会長が和解勧告に懸念を表明する意向であると聞いたため、サービスとして提供しただけ」と釈明した。
一方、毎日新聞の取材に対し、高久会長は『全く要請していないのに厚労省が文書を持ってきた。私の見解は独自に作成しており、(産科で導入されているような)無過失補償制度を作る必要性を強調したものになっている』とコメントした。」(毎日新聞)
高久会長は独自に作成と言っていますが,報道された表現は医学会の声明文と同じで,全体のトーンも同じです.医学会は,厚労省のシナリオどおり,和解反対の声明を発表したと言えるでしょう.
自ら声明案を作成し,医学会に声明を発表させて,和解を潰していく,というのが,厚労省のやり方だったんですね.
「原告団の水口真寿美弁護士は『日本医学会以外にも文案を提供していた可能性がある。自分たちの主張にあう世論形成のため、厚労省が医療界に働きかけたと思われても仕方がない』と批判した。」(産経「イレッサ訴訟 厚労省が医学会に働きかけ 和解勧告批判の文案作成」)とのことです.
【追記】
2011年02月24日 20:40 キャリアブレイン 「イレッサ和解勧告の見解,『厚労に頼まれた』 医学会-高久会長」は,以下の点を報じています.
高久会長は、「厚労省側が面会を申し入れてきて、『これで見解を出してくれないか』と文書を持ってきた」といい、見解を発表したのは厚労省からの依頼があったためだと説明。「それまで出すつもりはなかったが、長い付き合いもあり、もともと関心のある問題でもあったので」見解を出すことにしたという。依頼の意図について、厚労省側から特に説明はなかったというが、「和解勧告が厳しい内容だったので、和らげてほしかったのではないかと思う」と述べた。
細川律夫厚労相は2月24日の衆院予算委員会でこの問題に触れ、「指摘されたような事実があるかどうか、しっかり調査したい。その結果に基づいてわたしなりの判断をしたい」と述べた。共産党の高橋千鶴子氏の質問に答えた。(以上,キャリアブレインの記事より)
【再追記】
小林正夫政務官を責任者に.足立信也前厚労政務官,同省監察本部外部有識者の柳志郎弁護士(元日弁連事務局次長)による検証チームをが置されました.
更新の励みになりますので下記バナーのクリックをお願いします.
↓

にほんブログ村
谷直樹