弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

平成23年3月1日~3日の医療事件の判決

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最近の医療事件の判決を,報道に基づき要約しご紹介します.

◆ 静岡地裁平成23年3月3日判決(子宮摘出手術で出血死)

清水市の産婦人科クリニック(廃院)で,患者(当時45歳)が,平成17年,子宮摘出などの手術中に大量出血し,翌日死亡した事案です.

被告らは「死因は失血死ではなく,手術中の急激な状態変化による死亡」と主張しました.静岡地裁は「手術中だけでなく手術前の出血量も考慮すれば,失血死と認めるのが相当」と認定しました.
静岡地裁は.元院長と執刀医が,手術前に相当量の出血があり手術中に危険な状態になることは予測できたとし,輸血の準備をせず手術を行い、容体急変後も総合病院に転院させるなどの措置を取らなかったため失血死したと認定し,約1億1千万円の支払いを命じました.
判決は,被告らが当時加入し,医療事故の保険金の支払いを拒否している日本医師会に対しても,被告と連帯して賠償するように求めた,とのことです.

なお,静岡地検は昨年7月診療行為全般や当時の医療水準を考慮すると過失責任を問うのは困難として嫌疑不十分で不起訴処分としていました.

手術中の過失認める 2005年9月、清水の失血死訴訟」(中日新聞)
産科医に1億円賠償命令、ミスで女性が失血死」(ZAKZAK)ご参照
中絶手術死「医師に過失」民事は認定…静岡地裁」(読売新聞)ご参照
静岡・子宮摘出手術死亡:損賠訴訟 医院側のミス認める 約1億円支払い命令 /静岡」(毎日新聞)ご参照

◆ 青森地裁弘前支部平成23年3月1日判決(無免許の医療行為)

弘前市のエステ会社の社長とその夫(医師,内科医であるとともに美容皮膚科も開業)が,共謀し,2009年2月~10年10月まで医師免許のない従業員3人に医療行為にあたるレーザー脱毛などをさせた事案です.
レーザー,光脱毛機器で毛根組織を破壊するのは明らかに医療行為です.

青森地裁弘前支部は,違法な医療行為で1年間に2500万円余りを売り上げたことを認定し、「利潤目的の犯行で、非難に値する」「美を求める乙女心に巧みにつけこみ、相当に悪質」とし,とくに夫については「現役の医師として刑責は重い」と指摘し,社長に懲役1年6月執行猶予3年,罰金100万円夫に懲役2年執行猶予3年,罰金100万円を言い渡しました.

無免許エステ 社長夫婦有罪」(読売新聞)ご参照

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谷直樹
by medical-law | 2011-03-06 10:49 | 医療事故・医療裁判