平成23年3月23日の医療事件の判決

◆ 横浜地裁平成23年3月23日判決(出産直後の産婦死亡)
2003年12月,横浜市の病院で長女を出産した女性(当時37歳)が死亡した事案です.
出血初期の段階で別患者を診療していた医師は,看護師から出血の連絡を受けて約15~25分後に治療を再開しています.
横浜地裁は,出血の報告は緊急性が高くなく,別の患者の診療をしたことは不適切とはいえないと過失を否定し,その後の止血も適切で.担当医の処置と死亡との因果関係は認められない,と判断し,医師の責任を否定しました.
「産婦死亡訴訟、「医師の過失認められない」とし遺族の賠償請求を棄却/横浜地裁」(神奈川新聞)ご参照
◆ 東京地裁平成23年3月23日判決(イレッサ薬害)
肺がん治療薬イレッサの副作用で間質性肺炎を発症するなどして死亡した3患者の遺族が,輸入を承認した国と輸入販売元のアストラゼネカ社に損害賠償を求めた事案です.
東京地裁は,2002年10月の文書改訂後に服用して死亡した2患者の遺族の請求を認め.国とアストラゼネカ社に計1760万円の賠償を命じました.
東京地裁は,「国は承認前の時点で副作用による間質性肺炎で死に至る可能性があると認識していた」と認定し,「安全性確保のための必要な記載がない場合,国は記載するよう行政指導する責務がある」とし,間質性肺炎の危険性を目立つように記載するよう指導しなかった国の対応を違法と判断しました.
アストラゼネカ社に対しては添付文書の記載不十分とし,製造物責任法上の欠陥があるとしました.
国の責任を認めた点で,大阪判決を一歩進めた判決です.
「イレッサ副作用死:投薬訴訟 国の賠償責任認める 東京地裁判決「行政指導怠る」」(毎日新聞)ご参照
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谷直樹