「肺がん手術における説明義務」(ドクターズマガジン2011年4・5月合併号)
◆ 事案
患者亡A(歯科医師)が,肺癌の疑いがあると診断され,平成8年9月9日,東京都立駒込病院に入院し,同月18日に肺葉切除手術を受け,同年11月14日に気管支断端瘻の閉鎖及び右有瘻性膿胸に対する手術を受け,平成11年2月24日に死亡した事案です.
客観的には亡Aの肺がんは,ⅢB期でした.欧米をはじめ世界各国の趨勢は,ⅢB期は全く手術適応外とみなされていましたが,日本では,当時,ⅢB期についても根治的切除ができ予後が比較的良好と判断されるものについては積極的に手術を試みるという状況でした.
亡Aは,被控訴人病院入院前から,癌が進行癌で手術をしても治る可能性が低い場合には手術を受けたくないと考えていました.このことを担当医師らは十分に理解していました.
術中の病理検査で,がんの肺内転移が確認でき,ⅢB期であることが判明しましたが,担当医師らはそのまま手術を続行しました.
◆ 判決
東京地裁平成15年10月9日判決は,術前,術中の説明義務違反を認めましたが,説明義務違反と死亡結果との間の因果関係を否定しました.
これに対し,東京高裁平成16年10月28日判決は,術前の説明義務違反を否定し,術中の説明義務違反を認め,その説明義務違反と死亡結果との間の因果関係を肯定しました.
説明義務違反について重要な示唆が含まれている判決です.
ご一読いただけたら幸いです.
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谷直樹