札幌地裁平成23年4月20日判決(帝王切開の遅れ)

小樽の病院で,平成16年10月11日午後8時10分頃帝王切開決定,午後9時40分帝王切開により出産した男児に脳性麻痺の障がいが残り,その後身体障害者1級の認定を受けた事案です.地域周産期母子医療センターに指定されている産科救急医療の拠点病院で,年間500件程度の出産を扱っている病院です.
札幌地裁は「胎児の心拍数に異常が現れた午後6時15分の段階で仮死状態にあると診断できた」とし,帝王切開の決定が遅れたために胎児が長時間にわたって低酸素状態におかれ、脳性麻痺の原因になったとし,1億4000万円の賠償を命じました.
(毎日新聞平成23年4月21日 「裁判:帝王切開遅れで障害、小樽の病院に1億4000万円賠償命令」ご参照)
産科事故の事案では,帝王切開の遅れと脳性麻痺との因果関係が争われることがありますが,「訴訟上の因果関係の立証は,一点の疑義も許されない自然科学的証明ではなく,経験則に照らして全証拠を総合検討して,特定の事実が特定の結果発生を招来した関係を是認しうる高度の蓋然性を証明することであり,その判定は,通常人が疑いを差し挟まない程度に真実性の確信を持ちうるものであることを必要とし,かつ,それで足りるものである」(最高裁昭和50年10月24日判決)とされていますから,帝王切開の遅れと脳性麻痺との因果関係は特段の事情がない限り肯定できるでしょう.
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谷直樹