弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

高松高裁で平成23年5月11日和解成立報道(肺塞栓,肺梗塞)

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写真は,青盛県の依頼者からいただいた「気になるリンゴ」です.パイの中には林檎が丸ごと1個入っていました.

先日の福岡高裁に続いて,地裁で請求棄却,高裁で過失を認め和解,というケースが報道されていますので,ご紹介いたします.私が担当したものではありません.

◆ 事案

患者は,平成12年3月に右変形性股関節症で入院し,手術を受けた患者(当時53歳)が,4月5日に容体が急変し,翌朝肺梗塞で死亡しました.

医師は,手術前に肺梗塞の可能性を予見していましたが、術後に,患者が脚のだるさなどを訴えたとき,検査を行いませんでした.

◆ 高松地裁判決

高松地裁は,平成22年3月,医師が治療義務を怠ったとは認められない,として遺族側の請求を棄却しました.

◆ 高松高裁の判断

高松高裁は,患者が「脚がだるい」などの症状を訴えていたことから,医師はそれに対処すべきだった,と判断し,和解を勧め,平成23年5月11日,裁判上の和解が成立しました.

(毎日新聞「日赤医療過誤訴訟:高松高裁で和解 /香川」ご参照)

◆ 感想

肺梗塞とは,肺塞栓症の結果,肺組織が壊死をおこした状態を言います.肺塞栓症とは,血液などが肺の血管に詰まる病気です.術後などに生じます.

本件は,術後安静⇒下肢静脈瘤⇒肺塞栓症⇒肺梗塞⇒呼吸停止⇒死亡,と理解できます.

下肢静脈瘤のため足がだるくなること,下肢静脈瘤から肺塞栓症がおきること,術後であることなどから,患者が「脚がだるい」などの症状を訴えた場合,医師は,下肢静脈瘤を疑い,肺塞栓症を警戒すべきでしょう.

高松高裁は,平成12年であっても,患者が「脚がだるい」などの症状を訴えた時点で検査を行うべきとしたものです.

判決ではありませんが,高裁が地裁の判断を是正したものとして,評価できます.

谷直樹
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by medical-law | 2011-05-12 18:49 | 医療事故・医療裁判