弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

小田原市の病院、5720万円で和解(肺血栓塞栓死亡事故)報道

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平成22年8月に,小田原市民病院で子宮全部摘出手術を受けた40代の女性患者が,術後肺血栓塞栓症を発症し,当直医が適切な措置を講じることが遅れたため死亡しました.
この医療事故について,小田原市は,責任を認め,遺族に対して5720万円を支払うことで和解し,6月補正予算案に計上しました.

手術後の肺血栓塞栓症は当然警戒しなければならないもので,適切な措置が遅れたことは医師の注意義務違反になります.
事故から比較的早期に適切な解決に至ったことは,評価できます.早期に適切な解決をすることは,病院側,患者側双方にとって,良いことです.

なお,「和解」と報道されていますが,「裁判上の和解」ではなく,裁判外の「示談」かもしれません.

神奈川新聞「術後の合併症で女性患者死亡、市立病院の医療事故で和解/小田原市」ご参照

【追記】
毎日新聞「医療事故:遺族に慰謝料払い和解 小田原市が5720万円 /神奈川」によれば,

 「手術後に酸素飽和度の低下などの症状が見られ、酸素投与などをしながら経過観察していたが、翌朝に心肺停止となり、死亡した。死因は下肢の静脈などで生じた血栓が心臓を経由、肺の血管をふさぐ「肺血栓塞栓(そくせん)症」と分かった。
 病院側は「血栓予防の措置はしていた。手術が長かったことも一要因とみられるが、死因を予見することは不可能だった」と医療ミスではないとしながら、「結果的に十分な対応ができず、亡くなった責任の一端はあり、和解することにした」と話している。」

とのことです.

読売新聞「手術後死亡5720万円で和解…小田原市立病院  40代女性の遺族と 肺血栓と気づかず」によれば,

 「女性は子宮腺筋症で、手術は昨年8月中旬に行われた。午後2時15分に手術が終わり、女性は病室に戻ったが、深夜に「息苦しい」と訴え、血液中の酸素の濃度が低下する症状がみられた。酸素を投与しながら経過観察したが、翌午前8時30分頃、容体が急変し、2時間後に死亡した。
 病理解剖の結果、死因は肺血栓塞栓症とわかった。
 記者会見した安野憲一副院長は「痛みなどは術後にみられる症状と判断し、肺血栓塞栓症に思い至らなかったようだ」と説明。「深夜の段階では、血栓が出ていたとしても小さいもので、急変した時に大きい血栓が肺に飛んだと考えられる」と述べた。
 中島麓院長は「十分な対応が取れず、重大な結果となり、心からおわびする」としたうえで、「医療ミスではない」と強調した。肺血栓塞栓症は、突然発症して短時間で重大な結果になることがあるためという。」

とのことです.

つまり,医師・患者の感覚は,法的な責任要件を充たした場合にだけ損害賠償すればよい,というものではありません.昨今の裁判所の厳格な判断は,当事者の感覚(社会常識)から乖離しているように思います.

谷直樹
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by medical-law | 2011-05-25 23:31 | 医療事故・医療裁判