大学病院,「異型輸血事故に関する医療事故調査報告書」発表
外部委員を含めた医療事故調査委員会により,大阪市立大学医学部附属病院における異型輸血事故に関する医療事故調査報告書が,平成23年6月10日,完成しました.
調査報告書の概要は,以下のとおりです,
◆ 事案
患者は,50才男性.
結腸静脈瘤からの下血で近医受診するも出血源が特定できず,平成23年1月14日に市大病院に転院.
同月18日,血管造影室において,B-RTO実施中に大量の下血があり,治療を行っていた救命救急センターの医師がECUにいた医師に血液製剤(B型:RCC)を持って来るよう指示しました.
その際,ECUの看護師が保冷庫から別患者の血液製剤(A型:RCC)を誤って取り出し,連絡を受けた医師が血管造影室へ運びました.
その後,血管造影室の看護師が,患者の血液製剤であることを確認しないまま輸血(2単位:280CC)を投与しました.
◆ 事故原因
本件事故は,事故防止のために設けている複数の確認手順が全く実施されなかったため,発生したものです.
その原因は,事故当時者の単なる注意不足だけではなく,その背景には様々なヒューマンファクター,病院情報システム,マニュアルや職員研修などの要因が影響していることが分かりました.
◆ 再発防止のための提言
事故発生後,各種の再発防止策が実施されていますが,調査委員会は,さらに以下の再発防止策について提言を行いました.
①医療者2名によるダブルチェックの実施
②血液製剤の保管方法の統一
③電子カルテの研修体制についての見直し
④電子カルテの認証作業と実施入力の分離
⑤血管造影室の看護師配置の見直し
⑥チーム医療におけるコミュニケーションの確立
◆ 感想
マニュアルが定められていますが,異型輸血事故はあとを絶ちません.
今回の事故報告書と提言が,今後の事故防止に役立つことを切に願います.
なお,事故調査は,異型輸血事故がなかったらその患者が生きられたのか,という因果関係を調べることが目的ではありません.また,医学的科学的な厳密な因果関係が不明でも,法的な因果関係の判断はそれとは別です.
谷直樹
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