弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

医療版事故調を考える(1)

医療版事故調を考える(1)_b0206085_13532966.jpg日本医師会の基本的提案を機に,再び,医療版事故調査委員会の法制化の機運が高まっています.
あらためて,医療版事故調について考えてみたいと思います.

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私は,事故調の設計は,事故原因を究明する本体部分と,医療側にとっての副作用対策部分からなると思います。

医療事故を減らすために事故原因を究明し再発防止策を講じる,さらに患者家族への説明責任を果たす.これが,事故調の目的であり,核心です。この部分が事故調の本体部分です.
本体部分の設計で重要なのは,専門性,公正性,透明性の確保,と思います.
そのために適切な人と財政的な裏付けが必要となります.多くの人と金が必要ですが,それだけの意義のある事業です.

専門性,公正性,透明性が確保された調査委員会の調査報告は,患者側・医療側双方に支持されるはずです.患者側と医療側が,事実についての共通の理解をもって,話し合えば,医事紛争は格段に解決しやすくなるはずです.

とは言っても,今まで表面化しなかった医療事故報告が噴出するでしょうから,そのことにより医師が不利益を被るのではないか,と心配する人たちもいます.
これについて,日本医師会は,医療ADRの活用,無過失補償制度,医師法21条の改正等の対策を考えています.
専門的な医療事故調査委員会の調査により,事実関係と責任の有無を争って民事裁判にするまでもなく,医療ADRを活用して損害賠償についても,おりあいを見出し解決するケースが増えるはずです.

無過失補償制度だけがあっても,事実究明が不充分であれば,民事裁判は減らないでしょう.
しかし,専門性,公正性,透明性が確保された調査委員会によって,事故原因の究明がなされれば,原因究明のためだけの民事裁判はなくなり,それにくわえて無過失補償制度があれば(金額にもよりますが)補償を求めての民事裁判も減るはずです.

なお,医師の刑事免責を主張する人たちもいます.
これについては,来週,(2)で書きたいと思います.

谷直樹
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by medical-law | 2011-08-05 09:03 | 医療事故・医療裁判